JP4385103B2 - 酸化鉄粉およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化鉄粉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
湿式亜鉛製錬を実施すると、亜鉛浸出残渣が副製する。この亜鉛浸出残渣を還元性雰囲気下で酸により浸出し、得られた浸出液を予備中和し、次いでこの予備中和液へさらに中和剤を添加し、かつ酸化性ガスを吹き込んだあと固液分離する。この酸化性ガスの吹き込みと固液分離とによって、中和液中の第1鉄の一部を酸化すると同時に、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)およびヒ素の一部を鉄と共沈物として液から分離させる。そして共沈澱を分離したあとの溶液に、銅イオンの存在下で亜鉛末を添加することによって、溶液中のヒ素を砒化銅の形態で沈澱させた後、150℃の温度以下で酸化性ガスと反応させ、溶液中の鉄を水酸化鉄とし、次いでこれを酸化して酸化鉄を得る製造方法が、特許文献1に提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−21717号公報
【0004】
一方、製造された酸化鉄粉の用途として、セメント、フェライト、顔料、触媒等の用途が挙げられる。近年、環境の配慮から酸化鉄に含まれる不純物は、少ないことがのぞまれ、特に水銀(Hg)、砒素(As)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)等の環境規制物質、及び塩素(Cl)成分がより少ない酸化鉄が望まれている。
ところが、従来の技術に係る方法では、水銀、鉛、塩素の除去は十分に行えるものの、カドミウム、砒素においては、近年の厳しい要求水準に対応することが難しくなってきていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の要請を鑑みてなされたものであり、例えば、湿式亜鉛製錬にて副製する亜鉛浸出残渣から製造される中和液のような、鉄、砒素、カドミウムを含む溶液より、砒素、カドミウムの含有量が少ない酸化鉄粉を製造する方法、および、砒素、カドミウムの含有量が少ない酸化鉄粉を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明者らが研究をおこなった結果、砒素、カドミウムを含む鉄の酸性溶液から酸化鉄粉を製造する際に、当該溶液の温度と酸化還元電位とpHとを制御することにより、選択的に砒素とカドミウムを除去する方法と、この方法により一旦除去されたカドミウムの再溶解を防ぐ方法とを創出し、さらに当該方法を実施することで、従来の方法では除去することが困難であった酸化鉄粉中のマンガンをも削減できることが判明した。この結果、不純物の少ない酸化鉄粉を得ることができたものである。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
【0007】
(構成1) 鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液から酸化鉄粉を製造する方法であって、
前記溶液を60℃以下とし、還元剤を添加し前記溶液の酸化還元電位を−500mV以下とした後に、酸を添加してpHを4以下に調整して得られた固液混合体から、第1の溶液を分離する第1の工程と、
前記第1の溶液に酸を添加し、酸化性雰囲気下において加熱して得られた固液混合体から、第2の澱物を分離する第2の工程と、
前記第2の澱物に水を添加して得られた固液混合体から、第3の澱物を分離する第3の工程と、を有することを特徴とする酸化鉄粉の製造方法である。
【0008】
(構成2) 前記溶液とは、亜鉛精鉱を酸化処理した焼鉱に酸を加えて得られた浸出液へ、所定の処理を施して得られた、鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液であることを特徴とする構成1に記載の酸化鉄粉の製造方法である。
【0009】
(構成3)カドミウム、砒素の含有量がそれぞれ1ppm以下、且つマンガンの含有量が100ppm以下であることを特徴とする酸化鉄粉である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態例について、鉄、砒素およびカドミウムを含む原料溶液として、硫化鉱からの亜鉛精鉱を酸化処理した焼鉱へ酸を加え亜鉛浸出を行って得られた浸出液を用いた場合を例とし、図面を参照しながら説明する。
図1は、硫化鉱からの亜鉛精鉱の浸出液から、精製された酸化鉄粉を得るまでの工程例のフロー図である。
亜鉛製錬では、亜鉛鉱石より亜鉛を得るものであるが、例えば、硫化物からなる亜鉛精鉱11を焙焼炉により焙焼51し、亜鉛酸化物である亜鉛焼鉱12とする。この亜鉛焼鉱12を硫酸31等により酸浸出52し、金属を含む浸出液13と残渣32とを生成する。この浸出液13から、所望の金属である亜鉛等を得るため亜鉛電解採取に適した液組成が精製される。この際、亜鉛精鉱11に含まれていた鉄も同様に浸出液13中に存在する。このため亜鉛製錬の工程の中には、当該鉄を除去する工程も含まれ、この工程を活用することで酸化鉄粉材料が得られる。
【0011】
浸出液13は、亜鉛電解採取の際に阻害となる金属を、複数の工程を経て除去する。例えば、浸出液13を、亜硫酸ガス雰囲気下のオートクレーブで温度110℃に加熱し、中和剤33として亜鉛と鉄とを溶解させて第1回中和53を行い、難溶解となった銅、貴金属、鉛などを澱物34として分離し、浸出ろ液14を得る。
【0012】
この浸出ろ液14へ、酸濃度及び銅イオン濃度を調整しながら亜鉛粉末35等の還元剤を添加し、これを還元して脱砒素54し、砒素等の不純物を沈澱させて澱物36とし、これを固液分離して低砒素液15を得る。次にこの低砒素液15へ、中和剤37を添加し、多く含まれる遊離硫酸を第2回中和55する。この第2回中和55において、中和剤37として炭酸カルシウム等を用い、低砒素液15をpH4〜5まで中和処理して、液中のケイ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の不純物を石膏と共に澱物38として分離し、中和液16を得る。
ここまでは、従来の亜鉛精錬工程と同様である。
【0013】
以下、本発明に係る第1の工程について説明する。
中和液16には、カドミウム(Cd)、砒素(As)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)と雑多な金属が含有されている。これら雑多な元素が含まれている中和液から純度の高い酸化鉄粉材料である酸化鉄粉を得るために、還元56を行う。還元56においては、中和液16からの砒素、カドミウム除去を目的に、亜鉛粉末39等の還元剤を添加し、反応中の中和液16の酸化還元電位を−500mV以下とし、酸40を添加し、pHを4.0以下に調整する。また、本明細書において、例えば「酸化還元電位−500mV以下」と記載した場合は、「酸化還元電位が−500mVを超えることなく、−500mV付近の電位にある。」ことを意味して用いている。
【0014】
ここで亜鉛粉末39を添加するのは、酸化還元電位を調整するのに好適であることに加え、添加されるものが亜鉛であれば、これは添加前より中和液16に含まれる成分であるため、新たな不純物となり得ないことにより、後工程への影響を最小限にできることによる。さらに加えて、理由は未だ定かではないが、亜鉛粉末39を添加することで、砒素、カドミウム除去を効果的に行うことができるためである。亜鉛粉末39の形態は、亜鉛を主成分とする粉状であって、粒径は細かい方が望ましいが、1μm〜1000μm程度で良い。また、酸40としては硫酸が好ましい。
【0015】
ここで、中和液16への亜鉛粉末39、酸40の添加による、砒素、カドミウムの除去効果について、図2〜図5を用いて詳細に説明する。
【0016】
1.[中和液16への、亜鉛粉末39の添加による砒素、カドミウムの除去の検討]
本発明者らは、中和液16(その組成例を表1に示す。)へ、適宜な条件にて亜鉛粉末39を添加することで、中和液16中の砒素、カドミウムを除去できることを見出した。この解明の過程について説明する。
【0017】
【表1】
【0018】
まず、表1のその組成を示す中和液16へ、表2に示す2水準の条件で、反応温度の制御と、亜鉛粉末の添加とをおこなった。
【0019】
【表2】
【0020】
このときの中和液16の挙動を、図2を参照しながら説明する。
図2は、縦軸に中和液16中のカドミウム濃度を採り、横軸に反応時間を採ったグラフである。当該グラフにおいて、水準1は破線で、水準2は実線で示した。尚、添加した亜鉛粉末濃度が2g/lのとき、中和液16の酸化還元電位は−500mV以下、pHは3.0となり、添加した亜鉛粉末濃度が3g/lのとき、酸化還元電位は−700mV以下、pHは4.0となった。
【0021】
結果は図2に示すように、水準1では、反応時間の進行とともに、一旦は液中のカドミウム濃度は下がるが再び上昇する。これは、カドミウムが、一旦は澱物となるが再び液中に溶出してしまうためであると考えられる。これに対し、水準2では、カドミウム濃度は時間とともに減少する。これは、一旦、澱物となったカドミウムが、再び溶解するのを抑制できるためであると考えられる。
【0022】
このことから、本発明者らは、中和液16中の酸化還元電位を−700mV以下となるように亜鉛粉末39の添加量を調整し、さらには液温を制御することで、カドミウムを中和液16から除去でき、カドミウム含有量の低い脱カドミウム液17を得られることに想到した。そして、カドミウム除去が可能であるなら、中和液16中にて、カドミウムと類似の挙動をとる砒素の除去も同時に可能であることに想到した。
【0023】
2.[液温制御の検討]
表1に記載したものと同様の中和液16を用い、反応温度条件を、20℃、30℃、40℃の3水準とし、中和液16からのカドミウムの除去を行った。尚、亜鉛粉末の添加量は3g/lとし、酸化還元電位は−700mV以下となった。
このときの、中和液16の挙動を図3に示す。但し、図3は、図2と同様のグラフであり、20℃の水準を一点鎖線で、30℃の水準を実線で、40℃の水準を2点鎖線で示した。
上述の結果より、各温度においてもカドミウム濃度が反応時間とともに減少することがわかり、反応時の液温は、60℃以下が好ましく、さらには20〜40℃が適温であることが判明した。そして、この場合も、中和液16中にて、カドミウムと類似の挙動をとる砒素の除去も同時に可能であることに想到した。
【0024】
3.[酸化還元電位制御の検討]
表1に記載したものと同様の中和液16を用い、亜鉛粉末添加濃度を制御することで酸化還元電位を−500mVおよび−800mVの2水準とし、中和液16からのカドミウムの除去を行った。尚、液温は60℃とした。
このときの、中和液16の挙動を図4に示す。但し、図4は、図2と同様のグラフであり−500mVの水準を一点鎖線で、−800mVの水準を実線で示した。
【0025】
図4から明らかなように、酸化還元電位が−500mVのとき、カドミウムの濃度は反応時間の経過と共に下がり、60分後以降はほぼ一定値となった。一方、酸化還元電位が−800mVでは、その濃度が反応時間の経過と共に下がり、遂には、ほぼ0になることが判明した。この結果から、酸化還元電位が−800mVであれば十分に脱カドミウム効果が得られることがわかり、少なくとも酸化還元電位が−500mV以下であることが好ましいと思われる。そして、この場合も、中和液16中にて、カドミウムと類似の挙動をとる砒素の除去も同時に可能であることに想到した。
【0026】
4.[pH制御の検討]
表1に記載したものと同様の中和液16を用い、pHの水準を2.0、3.0、4.0の3水準とし、中和液16からのカドミウムの除去を行った。尚、液温は60℃とし、酸化還元電位は−500mV以下とした。
このときの、中和液16の挙動を図5に示す。但し、図5は、図2と同様のグラフでありpH2.0の水準を一点鎖線で、pH3.0の水準を実線で、pH4.0の水準を2点鎖線で示した。
【0027】
図5から明らかなように、pHが2.0では、カドミウムの濃度は、反応時間の経過と共に、一旦、減少するが、またすぐに濃度が上昇してしまう。pHが3.0では、その濃度が反応時間の経過と共に減少し10mg/l程度までは減少するが、それ以降は、反応時間の経過と共にその濃度が上昇してしまう。一方、pH4.0では、反応時間の経過と共に、その濃度がほぼ0になることから、pHは3.0以上であれば十分に脱カドミウム効果が得られることがわかり、さらにはpHが4.0以上であればさらに効果的である。そして、この場合も、中和液16中にて、カドミウムと類似の挙動をとる砒素の除去も同時に可能であることに想到した。
【0028】
ここで再び図1に戻り、上述した、1〜4の検討事項を要約する。
亜鉛粉末39は、主に中和液16の酸化還元電位を調整するために用いるが、その添加量は、中和液16の酸化還元電位を−500mV以下とする添加量が好ましく、−800mV以下とする添加量がさらに好ましい。中和液16の酸化還元電位を−500mV以下とすることで、カドミウム、砒素沈澱除去及び澱物41の中和液16への再溶解を防ぐことができる。特に、酸化還元電位を−800mV以下とすると、さらにカドミウム、砒素の沈澱除去に効果的である。
【0029】
還元56において中和液16のpHは、2〜4に調整することが好ましい。これはカドミウム、砒素が、中和液16へ再溶解するのを抑制するためであり、特に、pH3〜4であるとカドミウム、砒素の除去に効果的である。
反応時おける液温は、60℃以下が好ましいが、特に、20〜40℃が好ましい。これは液温が高すぎると、一度は沈澱したカドミウム、砒素が再溶解するためであり、液温が低すぎると、反応の進行が遅いためである。
この処理後、得られた固液混合体からカドミウム、砒素を含んだ第1の澱物41を固液分離し、脱カドミウム、脱砒素を終えた第1の溶液である脱カドミウム溶液17を得る。ここで、本発明に係る第1の工程を完了する。
【0030】
次に、本発明に係る第2の工程について説明する。
本発明に係る第1の溶液である脱カドミウム溶液17は、含有する亜鉛と鉄とを分離するため脱鉄57工程を経る。
本発明者らは、この脱鉄57工程において、脱カドミウム溶液17中の遊離酸の濃度を規定することで、亜鉛と鉄との溶解度差により鉄を分離することができることに想到した。ここで、遊離酸濃度の検討について説明する。
【0031】
5.[遊離酸濃度の検討]
表1に記載したものと同様の中和液16を用い、遊離酸の濃度の水準を10g/l、30g/lの2水準とし、亜鉛と鉄との分離について検討した。尚、液温は120℃とした。尚、このとき添加する酸として硫酸を用いると、鉄と適宜な形成して澱物を形成するので好ましい。
この結果を表3に示す。遊離酸濃度が10g/lの場合は、鉄残渣中の亜鉛は8000ppm、鉄は68wt%であり、遊離酸濃度が30g/lの場合は、亜鉛は1200ppm、鉄は70wt%であった。すなわち、遊離酸濃度を適宜に設定することで、亜鉛と鉄とを分離できることが判明した。
【0032】
【表3】
【0033】
ここで、再び図1に戻り、5の検討事項を要約する。
例えばオートクレーブを用いて、硫酸42を脱カドミウム溶液17に添加して遊離酸濃度を10〜30g/l程度に調整し、反応温度を120℃程度、雰囲気を酸素分圧を0.3MPa程度の酸化性雰囲気とすることで、鉄と硫酸との化合物を形成させて、本発明に係る第2の澱物である鉄残渣18を生成させることが好ましい。遊離酸濃度を30g/l以下とするのは、遊離酸濃度が高いと亜鉛の脱カドミウム溶液17への溶解度が上がり、亜鉛との分離性が低下するためである。鉄残渣18は、酸化鉄や水酸化鉄等の種々のジャロサイト化合物の混合物である。ここで、得られた固液混合体から、ろ液43を分離し、種々のジャロサイト化合物である鉄残渣18を回収して本発明に係る第2の工程を完了する。尚、ろ液43は、亜鉛の製錬工程へ進めることができる。
【0034】
次に、本発明に係る第3の工程を説明する。
本発明に係る第2の澱物である鉄残渣18は、そのままでは、酸や金属イオンが付着しているため、それらを洗い落とすため、水44等により洗浄58する。水44は、塩素を含まない用水が好ましい。塩素が含まれる水では鉄残渣18に塩素分が付着するため、酸化鉄粉の成分に影響を与えるためである。水44の添加は、鉄残渣18がリパルプできる程度よい。得られた固液混合体から、ろ液45を除去するための固液分離と水44の添加とを繰り返し、本発明に係る第3の澱物である洗浄された鉄残渣19を得る。こうして、本発明に係る第3の工程を完了する。
【0035】
洗浄された鉄残渣19の成分の多くは酸化鉄であるが、酸化鉄としての酸化状態が不充分である場合は、さらに酸化処理を行うために焙焼59を施す。焙焼59は、焙焼炉などを用いて、温度700℃以上にて酸素含有の酸化性ガス雰囲気中にて行えば良い。この焙焼59により、組成としては99.9%以上の酸化鉄粉材料20が得られる。この酸化鉄粉材料20が、酸化鉄粉23の原材となる。ここで得た酸化鉄粉材料20は、後工程での粉砕により用途に応じて粒径を変えこともでき、粒径を問わない工程への材料として用いることができる。
【0036】
焙焼工程を経た酸化鉄粉材料20は、前述の水洗工程と同様に、水46により洗浄60処理し、澱物21とろ液47とに分離後、澱物21を乾燥61して乾燥物22とし、所望の粒径にするため粉砕機等により粉砕62して、酸化鉄粉23を得る。
尚、本実施の形態例の説明において、鉄、砒素およびカドミウムを含む原料溶液として、亜鉛精鉱を酸化処理した焼鉱に酸を加えて亜鉛浸出を行って得られた浸出液を用いた場合を例としたが、本発明は、これに限られるものではなく、種々の鉄、砒素および/またはカドミウムを含む溶液に適用することができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を参照しながら、本発明をより具体的説明する。
(実施例1)
硫化鉱からの亜鉛精鉱を酸化焙焼して亜鉛焼鉱とし、ついで硫酸により酸浸出し、浸出液をオートクレーブで温度110℃に加熱し、さらに亜硫酸ガス雰囲気下において亜鉛と鉄を溶解させ、難溶解である銅、貴金属、鉛などを残渣として浸出ろ液と分離する。
この浸出ろ液において、酸濃度及び銅イオン濃度を調整しながら亜鉛末等の還元剤で還元される砒素等の不純物を沈澱させ低砒素液と残渣に固液分離する。次にこの低砒素液に多く含まれる遊離硫酸をカルシウム塩によりpHを4に中和した中和液を1m3(1,000l)採取した。このときの中和液の液組成例を、表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
組成は、砒素1mg/l、カドミウム 476mg/l、亜鉛 83mg/l、鉄 46g/l、硫黄 77g/l、カルシウム 557mg/lm、マンガン4g/lであった。なお、分析は化学分析を用い、以下同様な分析手法によった。
この中和液に、中和液に対して亜鉛粉により酸化還元電位が−800mV以下になるように3.0g/lの配合量で添加した。また硫酸を添加することで、pHを4.0となるように液を調整しながら、液温を30℃とし、90分間の反応を行い、還元工程を行った。
次いで、液中に発生した澱物と脱カドミウム液との固液分離を行った。
【0040】
これを繰り返し、液量が約15m3となるまで実施した。このときの脱カドミウム液の組成測定例を、表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
組成は、砒素 未検出(1mg/l以下)、カドミウム 未検出(1mg/l以下)、Zn 65g/l、Fe 37g/l、S 62g/l、Ca 415mg/l、マンガン 1mg/lであった。
【0043】
この液に硫酸を添加し、遊離酸濃度を30g/l以上とした。そして、この遊離酸濃度を維持しながらオートクレーブにて液温を120℃とし、雰囲気を酸素分圧PO20.3MPaとし、2時間の反応を行った。次いで、固液分離をおこない鉄残渣を得た。
【0044】
得られた鉄残渣に水を加えてリパルプし、固液分離することで、鉄残渣の水洗浄を行った。この水洗浄後の鉄残渣の組成測定例、及びBET法により測定した比表面積を、表6に示す。
【0045】
【表6】
【0046】
鉄残渣の組成は、乾燥状態で、Fe2O3 49wt%、砒素 未検出(1ppm以下)、カドミウム 未検出(1ppm以下)、Zn 730ppm、S 132200ppm、Mn 18ppm、Cl 未検出(10ppm以下)であった。また、BET法により測定した比表面積は0.59m2/gであった。
【0047】
水洗浄後の残渣を焙焼炉に投入し、焙焼温度を900℃で4時間、雰囲気を大気として酸化させ、酸化鉄粉材料を得た。この酸化鉄粉材料の組成例、及びBET法により測定した比表面積を、表7に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
酸化鉄粉材料の組成例は乾燥状態で、Fe2O3 99.96wt%、砒素 未検出(1ppm以下)、カドミウム 未検出(1ppm以下)、Zn 1400ppm、S 136ppm、Mn 21ppm、Cl 未検出(10ppm以下)、という純度の高い酸化鉄粉材料が得られた。特に、砒素、カドミウム、Mn、Clは低濃度であった。また、BET法により測定した比表面積は0.6m2/gであった。
【0050】
酸化鉄粉材料へ水を添加し、リパルプ後、固液分離することにより水洗浄を行った。水洗浄後の残渣を乾燥し、乾燥後に粉砕機へ投入して粉砕し、精製された酸化鉄粉が得られた。粉砕は、振動ミルで行い、ボール充填率70%にて60分間実施した。
得られた精製された酸化鉄粉の組成例、及びBET法により測定した比表面積を、表8に示す。
【0051】
【表8】
【0052】
精製された酸化鉄粉の組成は、乾燥状態で、Fe2O3 99.96wt%、砒素 未検出(1ppm以下)、カドミウム 未検出(1ppm以下)、Zn 1400ppm、S 136ppm、Mn 21ppm、Cl 未検出(10ppm以下)であった。また、BET法により測定した比表面積は2.36m2/gであった。
当該酸化鉄粉の製造方法によれば、純度を保持したまま粒度を制御でき、純度が高く、より細かい酸化鉄粉を得ることが可能となった。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液から酸化鉄粉を製造する方法であって、
前記溶液を60℃以下とし、還元剤を添加し前記溶液の酸化還元電位を−500mV以下とした後に、酸を添加してpHを4以下に調整して得られた固液混合体から、第1の溶液を分離する第1の工程と、
前記第1の溶液に酸を添加し、酸化性雰囲気下において加熱して得られた固液混合体から、第2の澱物を分離する第2の工程と、
前記第2の澱物に水を添加して得られた固液混合体から、第3の澱物を分離する第3の工程と、を有する酸化鉄粉の製造方法であり、当該製造方法により、鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液から、砒素、カドミウムの含有量が少ない酸化鉄粉を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】亜鉛精鉱の浸出液から精製された酸化鉄粉を得るまでの工程フロー図である。
【図2】反応温度条件および酸化還元電位を変化させた時の、中和液の挙動を示したグラフである。
【図3】反応温度条件を変化させた時の、中和液の挙動を示したグラフである。
【図4】酸化還元電位を変化させた時の、中和液の挙動を示したグラフである。
【図5】pHを変化させた時の、中和液の挙動を示したグラフである。
【符号の説明】
17.脱カドミウム液(第1の溶液)
18.鉄残査(第2の澱物)
19.洗浄された鉄残査(第3の澱物)
Claims (4)
- 鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液から酸化鉄粉を製造する方法であって、前記溶液を60℃以下とし、還元剤を添加し前記溶液の酸化還元電位を−500mV以下とした後に、酸を添加してpHを4以下に調整して得られた固液混合体から、第1の溶液を分離する第1の工程と、
前記第1の溶液に酸を添加し、酸化性雰囲気下において加熱して得られた固液混合体から、第2の澱物を分離する第2の工程と、
前記第2の澱物に水を添加して得られた固液混合体から、第3の澱物を分離する第3の工程と、を有することを特徴とする酸化鉄粉の製造方法。 - 前記溶液とは、亜鉛精鉱を酸化処理した焼鉱に酸を加えて得られた浸出液へ、所定の処理を施して得られた、鉄、砒素およびカドミウムを含む溶液であることを特徴とする請求項1に記載の酸化鉄粉の製造方法。
- 請求項1または2に記載の酸化鉄粉の製造方法により製造され、
カドミウム、砒素の含有量がそれぞれ1ppm以下、且つマンガンの含有量が100ppm以下であることを特徴とする酸化鉄粉。 - カドミウム、砒素の含有量がそれぞれ1ppm以下、マンガンの含有量が100ppm以下、且つ、塩素の含有量が10ppm以下であることを特徴とする酸化鉄粉。
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