JP4765062B2 - 亜鉛浸出残渣の湿式処理方法 - Google Patents

亜鉛浸出残渣の湿式処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法に関し、特に、湿式亜鉛製錬の亜鉛浸出工程で分離された亜鉛浸出残渣に残存する亜鉛を回収するために亜鉛浸出残渣から主に鉄をヘマタイトとして除いて亜鉛浸出工程に戻す、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法に関する。
湿式亜鉛製錬の原料鉱石は、通常1〜12%の鉄を含んでおり、焙焼炉内で鉄分に相当するジンクフェライトを形成する。このジンクフェライトは、通常の焼鉱(焙焼された鉱石)の浸出条件では不溶性であるため、湿式亜鉛製錬において亜鉛を浸出した際に、亜鉛浸出残渣として亜鉛以外の他の成分とともに除かれる。
この亜鉛浸出残渣には、浸出しきれなかった亜鉛や、鉄や有価金属を含む他の様々な元素が混入しているので、亜鉛浸出残渣に残存する亜鉛を回収するために、亜鉛浸出残渣から亜鉛以外の鉄や有価金属を除去して回収した後に、この処理済液を亜鉛製錬の亜鉛浸出工程に戻している。
このような亜鉛浸出残渣(ジンクフェライト)から亜鉛を回収するために鉄を分離して除去する方法として、従来から、生成鉄残渣の化学名からジャロサイトプロセス、ゲーサイトプロセスおよびヘマタイトプロセスと呼ばれている3つのプロセスが実操業化されている。
これらの3つのプロセスのうち、ジャロサイトプロセスおよびゲーサイトプロセスでは、生成した鉄澱物を有効にリサイクルしている例は殆どなく、鉄澱物を廃棄物ではなく有価金属として利用するには、ヘマタイトプロセスが最も適していると考えられる。しかし、従来のヘマタイトプロセスでは、生成するヘマタイト(Fe)中の不純物の量を満足するレベルまで低減することができなかった。
そのため、湿式亜鉛製錬の亜鉛浸出残渣をヘマタイトプロセスにより処理する際に生じるヘマタイト中の不純物の量を低減してヘマタイトを回収することができるとともに、鉄以外の金、銀、銅または鉛などの有価金属も効果的に分離して回収することができる、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、湿式亜鉛製錬で焼鉱を浸出して固液分離することにより固形分として除かれた亜鉛浸出残渣に、湿式亜鉛製錬における電解尾液を加えてパルプ状にした後に還元雰囲気で浸出して固液分離し、主成分として鉛と銀を含む固形分と、その他の成分を含む浸出液に分離し(浸出工程)、この浸出液に炭酸カルシウムを加え、浸出液中の遊離硫酸を中和して固液分離し、石膏を主成分とする固形分と、その他の成分を含む中和液に分離し(第1段中和工程)、この中和液に亜鉛末を加えて固液分離し、主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分と、その他の成分を含む液に分離し(脱砒工程)、この脱砒工程で砒化銅を分離した後の液に炭酸カルシウムを加えながらpHを上げて固液分離し、アルミニウムを主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離し(第2段中和工程)、この第2段中和工程でアルミニウムを分離した後の液を、ヘマタイト生成温度領域で鉄を酸化しながら加水分解した後に固形分離し、鉄をヘマタイトとして含む固形分と、亜鉛を含む液に分離(脱鉄工程)した後、この脱砒鉄液を亜鉛製錬の浸出工程に戻している。
特開2002−30355号公報(段落番号0006−0012)
特許文献1に提案された方法では、第1段中和工程で得られた中和液中の銅イオンの量が少な過ぎると、脱砒工程で得られる主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分中のインジウム(In)などのレアメタルの品位が高くなり、レアメタルの回収率が低下する。従来、この銅イオン源は、鉱石中の不可避的に存在する銅源物質によって賄うことができたが、近年の鉱石の組成(原料構成)の変化により銅源物質を添加する必要がある場合が生じ、湿式亜鉛製錬の原料鉱石を焙焼する前に銅源物質を添加していた。しかし、銅源物質を添加する必要がないような原料鉱石を使用する場合にも銅源物質を添加することになり、また、銅源物質の添加量を決定することができないために添加量が多過ぎてしまうと、コストが増大する。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の脱砒工程で得られる主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分中のインジウム(In)などのレアメタルの品位の低減に必要な銅源物質の添加量を容易に決定してコストの増大を抑えることができる、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する際に、この中和液に亜鉛末の他に銅イオン源物質を添加することにより、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の脱砒工程で得られる主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分中のインジウム(In)などのレアメタルの品位の低減に必要な銅源物質の添加量を容易に決定してコストの増大を抑えることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法は、湿式亜鉛製錬で焼鉱を浸出して固液分離することにより固形分として除かれた亜鉛浸出残渣を、酸で浸出して固液分離する浸出工程と、この浸出工程で得られた浸出液を中和して固液分離する第1段中和工程と、この第1段中和工程で得られた中和液を脱砒して固液分離する脱砒工程と、この脱砒工程で得られた液を中和して固液分離する第2段中和工程と、この第2段中和工程で得られた中和液を脱鉄して固液分離する脱鉄工程とを備えた亜鉛浸出残渣の湿式処理方法において、第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する際に、この中和液に亜鉛末と硫酸銅などの銅イオン源物質とを添加することを特徴とする。
この亜鉛浸出残渣の湿式処理方法において、銅イオン源物質の添加量が、第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する反応槽内のAsの濃度に対するCuの濃度の比(Cu/As比)に基づいて決定されるのが好ましく、このCu/As比が1.5以上になるように決定されるのが好ましい。あるいは、銅イオン源物質の添加量が、第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する反応槽内の電位に基づいて決定されるのが好ましく、この電位が−320mV以上になるように決定されるのが好ましく、−300mV以上になるように決定されるのがさらに好ましい。
また、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法において、亜鉛浸出残渣から金、銀、銅、鉄および鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の有価金属を分離して回収するのが好ましい。浸出工程は、湿式亜鉛製錬における電解尾液を亜鉛浸出残渣に加えてパルプ状にした後に還元雰囲気で浸出して固液分離し、主成分として鉛と銀を含む固形分と、その他の成分を含む浸出液に分離する工程であるのが好ましい。第1段中和工程は、浸出工程で得られた浸出液に炭酸カルシウムを加え、浸出液中の遊離硫酸を中和して固液分離し、石膏を主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であるのが好ましい。脱砒工程は、第1段中和工程で得られた中和液に亜鉛末と銅イオン源物質を加えて固液分離し、主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であるのが好ましい。第2段中和工程は、脱砒工程で砒化銅を分離した後の液に炭酸カルシウムを加えながらpHを上げて固液分離し、アルミニウムを主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であるのが好ましい。脱鉄工程は、第2段中和工程でアルミニウムを分離した後の液を、ヘマタイト生成温度領域で鉄を酸化しながら加水分解した後に固形分離し、鉄をヘマタイトとして含む固形分と、亜鉛を含む液に分離する工程であるのが好ましい。また、第2段中和工程と前記脱鉄工程との間に、第2段中和工程で得られた液に亜鉛末を加えて固液分離し、主成分として砒素、カドミウムおよび鉛を含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する第2段脱砒工程を備えてもよい。さらに、浸出工程で得られた浸出液中の銅の量を砒素1モルに対して3モル以上とし、この浸出液を脱砒工程において砒素と反応させて砒化銅を形成させるのが好ましい。
本発明によれば、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の脱砒工程で得られる主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分中のインジウム(In)などのレアメタルの品位の低減に必要な銅源物質の添加量を容易に決定してコストの増大を抑えることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態の工程を概略的に示している。図1に示すように、本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態では、湿式亜鉛製錬で焼鉱を浸出して固液分離することにより固形分として除かれた亜鉛浸出残渣に、浸出工程、第1段中和工程、脱砒工程、第2段中和工程および脱鉄工程からなる処理を施した後、脱砒鉄液を亜鉛製錬の浸出工程に戻して使用する。以下、これらの各工程について説明する。
まず、湿式亜鉛製錬では、鉱石を焙焼して得られた焼鉱を浸出して固液分離(固体(S)と液体(L)に分離)を行って、亜鉛を多く含む浸出液と、鉄、銅、金、銀、鉛などを含む固形分としての亜鉛浸出残渣に分離する。この固液分離により得られた浸出液に浄液処理を施した後、電解工程により亜鉛を回収する。この電解工程により亜鉛が回収された後の液(電解尾液)は、上記の亜鉛製錬の浸出工程および浄液工程に戻されて使用されるとともに、後述する亜鉛浸出残渣の浸出工程にも供給されて再利用される。
(1)浸出工程
この浸出工程では、上記の湿式亜鉛製錬で得られる亜鉛浸出残渣に、上記の亜鉛製錬の電解尾液を加えてパルプ状にした後、SOなどによる還元雰囲気で浸出して固液分離し、主成分として鉛と銀を含む固形分と、その他の成分を含む浸出液に分離する。具体的には、湿式亜鉛製錬で得られる亜鉛浸出残渣に、上記の亜鉛製錬の電解尾液を加えて、150〜250g/Lのパルプ状にする。次に、SO分圧0.15〜0.25MPa、温度80℃以上、好ましくは100℃以上で還元浸出を行なう。このSO浸出により以下の脱銅反応が起こる。
ZnS+HSO=ZnSO+H
2ZnS+2HSO+SO=2ZnSO+2HO+3S
CuSO+S+SO+2HO=CuS+2HSO
CuSO+HS=CuS+HSO
この浸出工程では、亜鉛浸出残渣にZnSやSを加えないで、SOなどによる還元雰囲気で浸出する。このようにして浸出することにより、得られる浸出液中の銅の量を砒素1モルに対して3モル以上として、後の脱砒工程において砒素と反応させて砒化銅(CuAs)を形成するのに十分な濃度の銅を確保することができる。これにより、脱砒工程における脱砒がより完全に進むようになり、脱鉄工程で回収される酸化鉄を主とする固形物中の砒素の量をより低減することができる。一方、浸出工程において亜鉛浸出残渣にZnSやSを加えて浸出液中の銅を沈殿させて含銅残渣にすると、後の脱砒工程における脱砒が難しくなり、脱鉄工程で回収される酸化鉄を主とする固形物中の不純物濃度を低減するのが困難になる。
次工程に送られる浸出液(L)は、30〜40g/Lの遊離硫酸と、60〜100g/LのZnと、30〜50g/LのFeと、2〜3g/LのCuと、0.5〜1g/LのAsとを含んでいる。一方、分離されて除去される澱物である固形分(S)は、鉛、シリカ、金、銀などの難溶性の塩などを含んでおり、鉛製錬の原料として使用される。
(2)第1段中和工程
この第1段中和工程では、上記の浸出工程で得られた浸出液に炭酸カルシウムを加えて、浸出液中の遊離硫酸を中和して固液分離し、石膏を主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する。この中和工程は、上記の浸出工程後の浸出液が後の脱鉄工程におけるヘマタイトの生成を著しく阻害する程度の遊離硫酸を含むので、これを中和するために行われる。中和後の遊離硫酸の濃度は3〜10g/Lに調整され、反応後のスラリーを固液分離することによって石膏を得る。鉄の沈殿による石膏の着色などを防止して販売可能な石膏を得るためには、遊離硫酸の濃度が3g/L未満にならない程度に中和するのがよい。
(3)脱砒工程
この脱砒工程では、上記の第1段中和工程で得られた中和液に、銀/塩化銀電極で測定しながら−300mVになるように亜鉛末(ZnD(zinc dust))を加えて固液分離し、主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する。この脱砒工程では、液中の砒素を完全には取り除かない。砒素を完全に取り除くことを優先すると、カドミウムも沈殿してしまい、このカドミウムを回収することが困難になるからである。
このように、第1段中和工程で主として石膏を除いた後に、第2段中和工程前に、脱砒工程において砒素を除くことにより、後の脱鉄工程で回収される酸化鉄を主とする固形物中に所定量以上の不純物が含まないようにすることができる。これにより、回収された主成分として酸化鉄を含む固形物を廃棄物とすることなく、セメントの製造原料などとして利用することができる。
また、この脱砒工程では、この脱砒工程で得られる主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分中のインジウム(In)などのレアメタルの品位を少なくしてレアメタルの回収率を上げるように、脱砒反応槽に亜鉛末の他に、必要な量の硫酸銅溶液を添加する。この硫酸銅の添加量を決定するため、脱砒反応槽内の電位とCu/As比(Asの濃度に対するCuの濃度の比)との関係と、脱砒反応槽内の電位と脱砒残渣中のインジウムの品位との関係を調べることにより、脱砒反応槽内のCu/As比と脱砒残渣中のインジウムの品位との関係を調べた。これらの結果を図2〜図4に示す。図4からわかるように、脱砒反応槽内のCu/As比を1.5以上に維持することができれば、脱砒残渣中のインジウムの品位の上昇(脱砒工程におけるインジウムの沈殿量の上昇)を抑えて、次工程で回収するインジウムの回収率を上げることができるとともに、酸化鉄(ヘマタイト)中のAsの品位を低位で維持管理することができる。また、図2からわかるように、脱砒反応槽内のCu/As比を1.5以上に維持すると、脱砒反応槽内の電位管理値が−300mV以上(理想的には−200mV前後)で推移し、図3からわかるように、脱砒反応槽内の電位管理値が−300mV以上で推移すると、脱砒残渣中のインジウムの品位の上昇を抑えることができる。これらの結果から、脱砒反応槽内のCu/As比を1.5以上に維持し、あるいは脱砒反応槽内の電位管理値を−300mV以上に維持するように、硫酸銅の添加量を決定すればよいのがわかる。
なお、ここで添加する硫酸銅としては、銅と鉛の製錬において鉄スクラップを使用して銅を沈殿させることにより得られる沈殿銅または清浄銅残渣を湿式亜鉛製錬の電解尾液で浸出することによって製造することができる。但し、銅のままでは浸出されないので、亜鉛の電解採取工程からのMn澱物を含む澱物スラリーを浸出槽に加えるのが好ましい。マンガンは、不純物浄液や亜鉛の電解採取などにおいて必要な元素であり、繰返し浸出される。このように、亜鉛製錬の物量のバランス内でマンガンを利用して銅を浸出し、脱砒残渣中のインジウムの品位を低下させ、また、マンガンも浸出されるので、系内のマンガンのバランスも正常に保つことができる。
この脱砒工程により、液中のCuの濃度が2g/Lから5mg/Lまで低減し、Asの濃度が750mg/Lから15mg/Lまで低減する。液中から除去された砒化銅は、銅製錬に送られる。この銅製錬では、通常、銅および砒素を含有する溶液から銅のみを分離した後に、砒素を砒酸鉄として固定化するプロセスが採用されている。砒化銅は、酸化雰囲気下で容易に溶解することができるため、このプロセスで簡単に処理することができる。このプロセスによる銅の回収率は、浸出工程または後の工程として脱銅工程を備えた従来のヘマタイトプロセスによる回収率と比較しても何ら遜色はない。
(4)第2段中和工程
この第2段中和工程では、上記の脱砒工程で砒化銅を分離した後の液に炭酸カルシウムを加えながらpHを4〜4.6に上げて固液分離し、アルミニウムを主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する。アルミニウムもヘマタイトの生成の阻害因子の一つであるので除去する。pHを4〜4.6にするのは、pH4未満ではアルミニウムの分離が不十分であり、pH4.6を超えるとZnおよびFeの沈殿が始まるからである。
(5)脱鉄工程
この脱鉄工程では、上記の第2段中和工程でアルミニウムを分離した後の液を、ヘマタイト生成温度領域で鉄を酸化しながら加水分解した後に固形分離し、鉄をヘマタイトとして含む固形分と、亜鉛を含む液に分離する。具体的には、上記の第2段中和工程により得られた液を平衡論的にヘマタイトが沈殿する温度である190℃以上まで昇温し、O分圧0.1〜0.3MPaの酸化雰囲気中で反応させた後に、減圧して濾別することによってヘマタイトを得る。反応後の液は、Znの含有率が60〜100g/Lのまま保たれるが、Feの含有率は6g/L以下まで減少する。この脱鉄工程後の液は再び亜鉛製錬の浸出工程に送られ、亜鉛回収の原料として使用される。
なお、上記の第2段中和工程と脱鉄工程の間に第2段脱砒工程を加えてもよい。この第2段脱砒工程では、第2段中和工程で得られた液に亜鉛末を加えて固液分離し、主成分として砒素、カドミウムおよび鉛を含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する。具体的には、第2段中和工程で得られた液に硫酸を添加してpHを3.0〜3.5に調整し、亜鉛粉末2g/Lを加える。pHを3.0〜3.5に調整するのは、この第2段脱砒工程における処理液中には多量の鉄が存在するので、第2段中和工程で得られた液のpHのままでは、鉄水酸化物の生成によって濾過性が著しく阻害されるからである。この第2段脱砒工程により、砒素、カドミウムおよび鉛などの不純物をほぼ完全に除去した液を次の脱鉄工程に送ることができる。したがって、次の脱鉄工程で回収される酸化鉄に含まれる不純物の量を著しく少なくすることができ、セメントの製造などに有効に利用することができる。
このように、第2段中和工程後、脱鉄工程前の第2段脱砒工程において、脱鉄工程で回収される酸化鉄を主とする固形物中に砒素がほぼ完全に含まれないようにすることができるとともに、カドミウムや鉛などの不純物の量も低減することができる。
本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態を概略的に示す工程図である。 本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態において、脱砒反応槽内の電位とCu/As比との関係を示すグラフである。 本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態において、脱砒反応槽内の電位と脱砒残渣中のインジウムの品位との関係を示すグラフである。 本発明による亜鉛浸出残渣の湿式処理方法の実施の形態において、脱砒反応槽のCu/As比と脱砒残渣中のインジウムの品位との関係を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 湿式亜鉛製錬で焼鉱を浸出して固液分離することにより固形分として除かれた亜鉛浸出残渣を、酸で浸出して固液分離する浸出工程と、この浸出工程で得られた浸出液を中和して固液分離する第1段中和工程と、この第1段中和工程で得られた中和液を脱砒して固液分離する脱砒工程と、この脱砒工程で得られた液を中和して固液分離する第2段中和工程と、この第2段中和工程で得られた中和液を脱鉄して固液分離する脱鉄工程とを備えた亜鉛浸出残渣の湿式処理方法において、前記浸出工程で得られた浸出液がインジウムを含み、前記第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する際に、この中和液に亜鉛末と銅イオン源物質を添加し、この銅イオン源物質の添加量が、前記第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する反応槽内のAsの濃度に対するCuの濃度の比(Cu/As比)が1.5以上になるように決定されることを特徴とする、亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  2. 前記銅イオン源物質が硫酸銅であることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  3. 前記銅イオン源物質の添加量が、前記第1段中和工程で得られた中和液を脱砒する反応槽内の電位に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  4. 前記銅イオン源物質の添加量が、前記電位が−320mV以上になるように決定されることを特徴とする、請求項に記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  5. 前記亜鉛浸出残渣から金、銀、銅、鉄および鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の有価金属を分離して回収することを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  6. 前記浸出工程が、湿式亜鉛製錬における電解尾液を前記亜鉛浸出残渣に加えてパルプ状にした後に還元雰囲気で浸出して固液分離し、主成分として鉛と銀を含む固形分と、その他の成分を含む浸出液に分離する工程であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  7. 前記第1段中和工程が、前記浸出工程で得られた浸出液に炭酸カルシウムを加え、前記浸出液中の遊離硫酸を中和して固液分離し、石膏を主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  8. 前記脱砒工程が、前記第1段中和工程で得られた中和液に亜鉛末と銅イオン源物質を加えて固液分離し、主に銅および砒素を砒化銅として含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  9. 前記第2段中和工程が、前記脱砒工程で砒化銅を分離した後の液に炭酸カルシウムを加えながらpHを上げて固液分離し、アルミニウムを主成分とする固形分と、その他の成分を含む液に分離する工程であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  10. 前記脱鉄工程が、前記第2段中和工程でアルミニウムを分離した後の液を、ヘマタイト生成温度領域で鉄を酸化しながら加水分解した後に固形分離し、鉄をヘマタイトとして含む固形分と、亜鉛を含む液に分離する工程であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  11. 前記第2段中和工程と前記脱鉄工程との間に、前記第2段中和工程で得られた液に亜鉛末を加えて固液分離し、主成分として砒素、カドミウムおよび鉛を含む固形分と、その他の成分を含む液に分離する第2段脱砒工程を備えたことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
  12. 前記浸出工程で得られた浸出液中の銅の量を砒素1モルに対して3モル以上とし、この浸出液を前記脱砒工程において砒素と反応させて砒化銅を形成させることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の亜鉛浸出残渣の湿式処理方法。
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