JP4382913B2 - 重荷重用空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、重荷重用空気入りラジアルタイヤ、より詳細にはトラック及びバスなどの重車両の使途に供するタイヤに関し、特に、軽量化のためベルトを3層のゴム被覆コード層により構成し、かつ、3層構成のベルト重量を更に軽量とすると共に、良路走行でのベルトの耐カット性を向上させた重荷重用空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
トラック及びバスなどの重車両に使用する重荷重用空気入りラジアルタイヤは、図3に示すように、一般に、トレッド部39のベルト40は4層のゴム被覆コード層41〜44により構成し、カーカス2に最も近く位置する第一コード層41のコードは、トレッド部39の円周を含む平面(タイヤ赤道面Eと平行な平面)に対して比較的大きな傾斜角度で配列し、第二コード層42及び第三コード43のコードは、上記平面を挟んで交差する配列とし、この故をもって第二コード層42及び第三コード43はコード交差層45と呼び、交差層45のコードは上記平面に対しより小さな傾斜角度で配列し、そして第四コード層44のコードは、第三コード層43のコードと同じ向きの配列とし、かつ傾斜角度も第三コード層43のコードとほぼ同じとする。なおベルト40のコード層41〜44のコードにはスチールコードを適用するものであり、以下同じである。
【0003】
上記のベルト40を備えるタイヤが、小石や金属片などの異物が散在する路面を荷重負荷の下で転動すると、たまたま小石や金属片などの鋭い角縁部を踏みつけたトレッド部39は、往々にしてベルト40に達するカット傷を受けることがある。そのため、カットによるベルト損傷が致命傷となるのを少しでも回避することを狙い、ベルトのカット受傷を最外コード層の第四コード層44で止めるように、第四コード層44の主たる役割を保護層とする構成が提案されている。
【0004】
その一方で、乗用車用空気入りラジアルタイヤなどと同様に、重荷重用空気入りラジアルタイヤにも軽量化の要請が強まり、そのためタイヤ重量のなかで大きな割合を占めるベルトを4層のコード層から3層のコード層とすることが提案されている。この3層コード層のベルトは、カーカスに最も近い第一コード層のコードを、先に述べた平面に対し比較的大きな傾斜角度で配列し、第二コード層と第三コード層を先に触れたコード交差層とし、このコード交差層それぞれのコードを上記の平面に対し比較的小さな傾斜角度で配列するものである。
【0005】
この種の3層ベルト構成をもつタイヤについて、例えば特開平7−186613号公報が開示するタイヤは、ベルトを3枚のブレーカ(先に述べたコード層を指す)で構成し、カーカスから数えて3番目の第三ブレーカの強力が最も不足するという知見の下で、第三ブレーカの単位幅当りの強力を第一、第二ブレーカの強力に比しより高める、というものである。これによりタイヤのトレッド部が砕石や小岩石などの異物に乗り上げたとき、せいぜい第三ブレーカのコード切れに止め、バーストなどの致命的故障を、安価にかつ有効に阻止することができる、としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報が開示するタイヤについて実際に検証した結果、このタイヤのベルトは第二コード層と第三コード層とを交差コード層とし、かつこれら各層のコードの交差角度を比較的小さくしているため、タイヤに所定内圧を充てんした際、第二及び第三コード層の各層のコードには大きな張力が作用し、第三コード層の単位幅当りのコード強力(具体的には引張強さ、以下同じ)を折角高めていても、小石や金属片などの異物によるコード切れを十分に抑制することができないことが分かった。なぜなら大きな張力が作用しているコードは、カット入力に対し対抗する余力が大幅に減少しているからである。
【0007】
また、図4に荷重負荷の下で転動するタイヤの正面の一部を模式図として示すように、タイヤのトレッド部が路面30上に存在する、ある程度大きな石又は金属片などの突起異物31に乗り上げたとき、ベルト29には矢印32の向きの曲げ力が作用する結果、最外コード層28のコードは局部的な座屈(バックリング)現象が生じ易く、この座屈が繰り返し生じるとコードの疲労が進み、結局コード切れに至る故障も見られる。
【0008】
さらにまた、荷重負荷の下で転動するタイヤのトレッド部が小石や金属片に乗り上げるとき、トレッド部にパターンを形成するためトレッドゴムに設けた溝のうち、特に、トレッド部の周方向延びる周方向溝に小石や金属片が食い込むと、周方向溝底からベルトまでのトレッドゴム厚さが薄いため、小石や金属片の鋭い角縁部は比較的容易にトレッドゴムを貫通してベルトに至り、容易に貫通するだけに小石や金属片の鋭い角縁部はベルトを切断し易くする。よってこの周方向溝におけるベルトのカット受傷の問題も解決しなければならない。
【0009】
その一方で、タイヤ軽量化の要請は益々強まる傾向にあり、例えば、特開平7−186613号公報が開示する3層のコード層からなるベルトを備えるタイヤであっても、必ずしも軽量化の要請に応えることができず、よって、最外コード層コードの耐座屈疲労性向上を含め、トレッド部の耐カット性向上と、一層の軽量化とを達成することができるタイヤが強く要望されているのが現状である。
【0010】
従って、この出願発明の請求項1〜3に記載した発明は、ベルトの耐セパレーション性及びコーナリング性能などの諸性能を4層のコード層のベルトを備える従来タイヤと同等以上に保持した上で、ベルトを3層のコード層で構成し、4層ベルトの従来タイヤと同等以上のトレッド部の耐カット性を発揮すると共にタイヤの一層の軽量化を実現し、合わせてベルトの最外コード層コードの耐疲労性を向上させることができる、長寿命で、かつ、より一層軽量な重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この出願の請求項1に記載した発明は、一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア相互間にわたり一対のサイドウォール部とトレッド部とを補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードになるカーカスと、カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトは3層のゴム被覆コード層を有し、これらコード層のうち最内コード層と中間コード層とはコード交差層を形成してなり、最内コード層及び中間コード層のそれぞれのコードは、トレッド部円周を含む平面に対し10〜25°の範囲内の傾斜角度を有し、最外コード層のコードは、中間コード層コードの上記平面からの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って上記平面に対し45〜115°の範囲内の傾斜角度を有し、トレッド部は少なくとも両側領域で互いに対をなす周方向ショルダ溝を備える重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、最外コード層は、上記の互いに対をなす周方向ショルダ溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下の幅を有することを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤである。
【0012】
ここに、上記のトレッド部の両側領域とは、トレッド部の踏面幅を4等分した、その1/4幅をタイヤ赤道面の両側に振り分けた中央領域の両側領域をいう。
【0013】
請求項1に記載した発明を更に発展させたタイヤとして、請求項2に記載した発明のように、上記トレッド部両側領域に挟まれる中央領域に、タイヤ赤道面を挟んで延びる2本の周方向中央溝を有し、最外コード層は、2本の周方向中央溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面から最も遠い溝縁相互間の幅以上の幅を有するものとする。
【0014】
また、最外コード層コードの耐座屈疲労性向上として、請求項3に記載した発明のように、最外コード層のコード被覆ゴムは、200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率を有するのが適合する。
【0015】
ここに上記の圧縮弾性率は以下に述べる方法に従い算出した値を用いるものとする。すなわち、図5に示すように、直径dが14mm、高さhが28mmの円柱状の空洞部をもつ金属製、例えばスチール製の治具33の空洞部にゴム試験片34を隙間なく充てんし、この治具33を、図6に示すように、圧縮試験機35にセットし、ゴム試験片34の上下面に対し速度0.6mm/分で荷重Wを負荷させ、このときのゴム試験片34の変位量をレーザー変位計36で測定し、荷重Wと変位との関係から圧縮弾性率を算出する。
【0016】
前述のカーカスのプライコード及びベルト各層のコードはいずれもスチールコードが適合する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1及び図2に基づき説明する。
図1は、この発明による重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の一部を取り出し、トレッドゴムの一部を切り取り、ベルト及びカーカスを露出させた斜視図であり、
図2は、図1に示すタイヤのトレッド部の一部の正面展開を示し、トレッドゴムを切り取りステップダウンカットを施したベルト展開図と、トレッドパターン展開図とを合わせ示す説明図である。
【0018】
図1において、重荷重用空気入りラジアルタイヤ(以下タイヤという)1は、一対のビード部(図示省略)及び一対のサイドウォール部(図示省略)と、両サイドウォール部に連なるトレッド部2とを有し、トレッド部2は踏面側にトレッドゴム3を備える。またタイヤ1は、一対のビード部内に埋設したビードコア(図示省略)相互間にわたり一対のビード部、一対のサイドウォール部及びトレッド部2を補強する1プライ以上、図示例は1プライのゴム被覆ラジアル配列コードのカーカス4と、カーカス4の外周でトレッド部2を強化するベルト5とを備える。
【0019】
図1及び図2を合わせ参照し、ベルト5は3層のゴム被覆スチールコード層(以下コード層という)6、7、8により構成し、カーカス4に最も近い最内コード層6及び中間コード層7それぞれのコード6a、7aはトレッド部2の円周を含む平面P、各図ではタイヤ赤道面Pを挟み互いに交差する配列とし、最内コード層6と中間コード層7とはコード交差層9を形成する。最内コード層6のコード6aと、中間コード層7のコード7aとは、平面Pに対し10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内の傾斜配列とする。コード6aの平面Pに対する傾斜角度δの測定方向を矢印で示し、コード7aの平面Pに対する傾斜角度αの測定方向を矢印で示す。図1、2に示す平面Pはタイヤ赤道面上に存在するが、後述する例のように、平面Pはトレッド部2のいずれに位置しても良い。
【0020】
図2の下方図を参照して、最外コード層8のコード8aは、中間コード層7のコード7aの、平面Pからの傾斜角度αを測る向き(図の矢印の向き)と同じ向き(図の矢印の向き)に測って、平面Pに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内の傾斜角度βを有するものとし、最外コード層8のコード8aの被覆ゴム8bは200kgf/cm2以上の圧縮弾性率を有する。この圧縮弾性率は先に述べた試験方法に従い求めた値である。
【0021】
図2の上方に示すトレッドパターンの展開図を参照し、図2に示すトレッド部2は、その全領域のトレッドゴム3(図1参照)に形成したブロックパターンの例であるが、この発明のトレッド部2は、少なくとも両側領域(先に定義した領域)Rsに1本以上の周方向ショルダ溝を有するものとし、図示例は1本の周方向に直状に延びる周方向ショルダ溝10を有し、また、図示例のトレッド部2は、中央領域(先に定義した領域)Rcに、タイヤ赤道面Pを挟む両側に直状の周方向中央溝11を備える。なお、図2に示すトレッド部2展開図における、トレッド部2踏面3t端縁TE間の展開幅wで言えば、中央領域Rcは、タイヤ赤道面Pを挟む両側の(1/4)×w幅の領域であり、両側領域Rsは、中央領域Rc両側の(1/4)×w宛の幅の領域である。
【0022】
このタイヤのトレッドパターンは、互いに隣り合う周方向中央溝11、11相互間にわたり各溝11に開口する多数本の横方向溝12と、周方向ショルダ溝10と周方向中央溝11との相互間にわたり溝10、溝11にそれぞれ開口する多数本の横方向溝13、14とを有し、これら多数本の横方向溝12、13、14とにより区画形成した各ブロック15、16、17のブロック列をトレッド部2の中央領域Rcに備え、トレッド部の両側領域Rsには周方向溝10とこれに開口する多数本の横方向溝18とにより区画形成したブロック19の列を備える。
【0023】
但し、他の例では、中央領域Rcをブロック以外のリブなどの陸部とし、トレッド部2の両側領域Rsも同様のリブとすることを可とし、トレッド部2を全てリブパターンとする場合と、リブとブロックとの組み合わせパターンとすることができる。なお図示例の周方向溝10、11は直状溝であるが、これ以外にジグザグ状溝とすることもできる。
【0024】
ここで、最外コード層8は、トレッド部2の両側領域Rsにて対をなす周方向ショルダ溝のうち、タイヤ赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝、ここでは周方向ショルダ溝10の両溝縁のなかでタイヤ赤道面Pに最も近い溝縁相互間の幅以下の幅、すなわち、図2の展開図では展開幅Lg1 以下の幅とする。換言すれば、最外コード層の幅端8Eを、タイヤ赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝10の両溝縁のうち、赤道面Pに最も近い溝縁位置と赤道面Pとの間に位置させることである。
【0025】
また、最外コード層8は、タイヤ赤道面P両側の中央領域Rcの周方向中央溝11の溝縁のうち、タイヤ赤道面Pから最も離れた溝縁相互間の幅以上の幅、すなわち、図2の展開図では展開幅Lg2 以上の幅とする。換言すれば、最外コード層の幅端8Eを、赤道面Pに最も近い周方向ショルダ溝10溝縁と、タイヤ赤道面Pから最も離れた周方向中央溝11溝縁との間に位置させるということである。
【0026】
さて、先に述べたように、最内コード層6のコード6aと、中間コード層7のコード7aとは、平面Pに対し10〜25°の範囲内、好ましくは15〜22°の範囲内の傾斜配列とする一方、最外コード層8のコード8aは、中間コード層7のコード7aの平面Pからの傾斜角度αを測る向きと同じ向きに測って、平面Pに対し45〜115°の範囲内、好ましくは50〜100°の範囲内の傾斜角度βとすることにより、図2の下方に矢印Fxで示すように、タイヤ1に内圧を充てんした際にベルト5に生じるトレッド部2の周方向張力Fxは、平面Pに対し傾斜角度が小さなコード交差層9を形成する最内コード層6及び中間コード層7のコード6a及びコード7aが主として負担し、最外コード層8が負担すべき張力を大幅に減少させることができる。
【0027】
このことにより、荷重負荷の下で転動するタイヤ1のトレッド部2が鋭利な角縁を有する小石や金属片などの異物に乗り上げたとき、たとえ角縁がトレッドゴム3を貫通してベルト5に達したとしても、最外コード層8のコード8aは切れ難くなり、耐カット性に基づくタイヤ1の耐久性が向上する。
【0028】
また、図2を参照して、タイヤ1に内圧を充てんしたときベルト5に生じる張力Fxにより、ベルト5はタイヤ1の放射方向に張り出す傾向を有し、その結果ベルト5は全体として矢印で示す幅方向内側に収縮し、ベルト5の各層6、7、8のコード6a、7a、8aはそれぞれ傾斜角度δ、α、βが減少する方向へ変化しようとする。しかしこのベルト5の構成下では、最外コード層8のコード8aは、その傾斜角度βが最内コード層6及び中間コード層7それぞれのコード6a、7aの傾斜角度に比し著しく大きいため、傾斜角度減少度合いがコード6a、7aに比し極めて少なく、その結果、最外コード層8は幅方向への収縮が生じ難い傾向を示す。
【0029】
このことは、最外コード層8がコード交差層9の幅方向収縮を抑制するように働くことに外ならず、それというのも最外コード層8のコード8aがコード交差層9に対しいわばつっかえ棒のような作用を及ぼしているからである。幅方向収縮を抑制されるコード交差層9はトレッド部2の周方向剛性が増大し、その結果、3層構成のベルト5を備えるタイヤ1でもコーナリングパワ(以下CPという)が向上して従来の4層構成のベルトを備えるタイヤと同等以上のコーナリング性能を発揮することができる。さらにコード交差層9の周方向剛性増大は、タイヤ1への内圧充てん時のタイヤの径成長を抑制し、この抑制はベルト5の端部、特にコード交差層9端部の耐セパレーション性向上に大きく貢献する。
【0030】
なお最内コード層6及び中間コード層7それぞれのコード6a、7aの平面P、P1 、P2 に対する傾斜角度δ、αは互いにほぼ等しくするのが、コード6a、7aに均等に張力を負担させる上で好ましい。またコード6a、7aの傾斜角度δ、αを10〜25°の範囲内としたのは、傾斜角度δ、αが10°未満では最内コード層6と中間コード層7との端部に生じる層間せん断ひずみが大きくなり過ぎ、この端部にセパレーション故障を発生し易くする一方、傾斜角度α、δが25°を超えると内圧充てんタイヤ1でベルト5に作用する張力Fxにより、最外コード層8の幅方向収縮抑制が十分に効果を発揮することができなくなり、コード交差層9としての周方向剛性が著しく低下してCP特性の劣化とタイヤの径成長増加とをもたらすからである。
【0031】
さらに、図7に、ベルト5を備えるタイヤ1と、図3に示す、従来の4層コード層41〜44構成のベルト40を備えるタイヤのCP特性の比較線図を示すように、ベルト5の最外コード層8のコード8aの傾斜角度βを種々に変えたとき、従来タイヤのCPを100とする指数で示すレベル以上のCP指数を示す傾斜角度βが適正範囲であり、この適正傾斜角度βは45〜115°の範囲内であることが分かる。傾斜角度βが45°未満でも傾斜角度βが115°を超えても従来タイヤよりCP特性が低下するので不可である。このことから、最外コード層8のコード8aが、コード交差層9の幅方向収縮に対しつっかえ棒状の役を果し、コード交差層9の周方向剛性を高めていることが裏付けられる。
【0032】
また、小石や金属片などの異物が疎らに存在する良路をタイヤが荷重負荷の下で転動するとき、これら異物によるトレッド部のカット受傷位置を多数本のタイヤにつき測定集計し、統計的に解析したところ、良路が舗装路面であるか非舗装路面であるかの別なく、カット受傷位置は、タイヤ赤道面Pを中央軸として中央領域Rcにほぼ正規分布状に集中していることを解明した。よって、良路走行に供する機会が殆ど全てであるタイヤ1は、少なくとも中央領域Rcに最外コード層8を備えていれば、異物によるベルト5のカット損傷に起因する故障が生じるうれいは少ない。
【0033】
但し、図1、2に示すように、トレッド部2の両側領域Rsに周方向ショルダ溝10を備えているタイヤ1の場合は、最外コード層8の幅を、周方向ショルダ溝10の両溝縁のなかでタイヤ赤道面Pに最も近い溝縁相互間の幅以下とすることにより、カット受傷機会をより一層少なくすることができ、実際上、カット受傷に基づくベルト故障が生じることはない。最外コード層8の幅を上記のように、従来の最外コード層の幅より一層狭くすることでタイヤの一層の軽量化を達成することができる。
【0034】
また、図1、2に示すように、トレッド部2の中央領域Rcに周方向中央溝11を備えているタイヤ1の場合は、最外コード層8の幅を、周方向中央溝11の溝縁のうち、タイヤ赤道面Pから最も離れた溝縁相互間の幅以上の幅とすることにより、カット受傷機会が多い中央領域Rcの周方向中央溝11の溝底に受けるカットに対し、中間コード層7や最内コード層6のカット保護層の役を最外コード層8に担わせることができ、ベルト5の十分な耐カット性を保証する。
【0035】
なぜなら、たとえ異物の角縁が、周方向中央溝11の溝底下の薄いトレッドゴム3を貫通してベルト5に達したとしても、そこには必ず最外コード層8の多数本のコード8aが存在し、これらコード8aが以下に述べるようにカット入力に対し十分な抵抗力を示す。
【0036】
異物の角縁が周方向中央溝11の溝底に沿って食い込むとき、異物の角縁の先に最外コード層8の多数本のコード8aが存在するのは、周方向中央溝11が直状溝であれば、溝底と最外コード層8のコード8aとがなす角度は45°以上であるからであり、この点で周方向中央溝11がジグザグ状溝であれば、溝の平面P1 、P2 に対する傾斜角度と最外コード層8のコード8aの傾斜角度差は、傾斜角度βを測る向きと同じ向きに測って20°以上とするのが良い。なぜなら傾斜角度差が20°未満では異物の角縁の進入を受け止めるコード8a本数が少なくなり過ぎるからである。
【0037】
トレッド部2の中央領域Rcに周方向中央溝11のような溝を備えていないタイヤ1の場合は、最外コード層8の幅を、中間コード層7の幅の25〜70%の範囲内とするのが適合する。なぜなら、中間コード層7は最内コード層6と協働してトレッド部2が備えるべき剛性をタイヤ1に付与させる必要があり、そのため中間コード層7は、トレッド部2の踏面3t(図1参照)の幅に近い幅をもつことが必要であり、よって最外コード層8の幅が、中間コード層7の幅の25%未満では中央領域Rcのカットに対し抵抗し得ない領域が広くなり過ぎ、70%を超えては軽量化の意味がなく、いずれも不適合だからである。
【0038】
いずれにしても異物の鋭利な角縁のカット入力を受け止める最外コード層8のコード8aは、張力負担率が僅かであるからカットに対抗する十分な余力を有しているので、異物の角縁の進入は最外コード層8で止めることができ、中間コード層7のコード7a切断を阻止することができるのである。このため、どうしても最外コード層8の幅は周方向中央溝11の最外側溝縁を超える幅を有する必要がある。周方向溝11がジグザグ状溝であれば、最外コード層8は山形をなす最外側位置の溝縁頂点をタイヤ1の外側方向へ超えて延びる幅を有するものとする。
【0039】
さらに、比較的大きな石や金属片などの異物が疎らに存在する路面上をタイヤ1が転動し、これら大きな異物に乗り上げたとき、図4に基づき先に説明したように、ベルト5の最外コード層8は大きな曲率での曲げ変形が強いられる結果、局所的に大きな圧縮力が作用し、最外コード層8のコード8aには座屈が生じるところ、最外コード層8のコード8aの被覆ゴム8bには200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率をもつゴムを適用することにより、被覆ゴム8bの圧縮抵抗力を増大させ、最外コード層8のコード8aの座屈変形を阻止させることが可能となる。その結果、タイヤ1が比較的大きな異物にしばしば乗り上げても、最外コード層8のコード8aの座屈疲労によるコード切れ発生を阻止することができる。圧縮弾性率が200kgf/cm2 未満ではこの効果が不十分であり、不可である。
【0040】
【実施例】
トラック及びバス用ラジアルプライタイヤで、サイズが11R22.5であり、図1及び図2に示す構成に従い、トレッド部2は一対の周方向ショルダ溝10と、一対の周方向中央溝11とを有し、図2に示す展開幅Lg1 に相当する、タイヤでの周方向ショルダ溝10に関する溝縁相互間の幅は100mmであり、図2に示す展開幅Lg2 に相当する、タイヤでの周方向中央溝11に関する溝縁相互間の幅は35mmである。
【0041】
ベルト5は3層の最内コード層6、中間コード層7、最外コード層8からなり、最内コード層6と中間コード層7とでコード交差層9を形成する。コード層6、7、8のコード6a、7a、8aはいずれも1×0.34+6×0.34のスチールコードであり、コード打込数は18.0本/50mmであり、最外コード層8のスチールコード被覆ゴムの圧縮弾性率は350kgf/cm2 であり、最内コード層6と中間コード層7とのスチールコード被覆ゴムの圧縮弾性率は170kgf/cm2 である。
【0042】
ベルト5の各コード層6、7、8のコード傾斜角度δ(°)、α(°)、β(°)及び各コード層6、7、8の幅(mm)を表1に示す。表1には従来例タイヤ及び比較例タイヤを含めるため、コード傾斜角度δ(°)、α(°)、β(°)は、カーカス4側から順に符号1B、2B、3B、4B(但し4Bは実施例には存在しない)を付したコード層のコード傾斜角度及び層幅として示した。また傾斜角度の数値の前に付した符号Rはコードが右上がり配列をあらわし、符号Lはコードが左上がり配列をあらわす。
【0043】
カーカス4は1プライであり、この1プライは(3+9+15)×0.175のスチールコードのラジアル配列のゴム被覆になる。その他の構成は慣例に従うものとした。以上の構成をもつ実施例1〜4のタイヤを準備すると同時に、これら実施例タイヤを評価するため、ベルトを4層のコード層で構成した他は全て実施例タイヤに合わせた図3に示す従来例タイヤと、最外コード層8の幅が異なる他は全て実施例1〜4のタイヤに合わせた比較例1〜4のタイヤとも併せ製造し、これらタイヤ全てについて上記内容を表1に記載した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1〜4のタイヤ、従来例タイヤ及び比較例1〜4のタイヤを供試タイヤとして、ベルトのカット試験を実施した。カット試験方法は、周方向中央溝11の溝底に沿わせ、90°の角度の刃形先端部をもつスチール製プランジャの先端を押し当て、刃形先端部が周方向中央溝11の溝底に接触したときからトレッド部2を貫通するまでに要したエネルギをカットエネルギとして算出するものである。各供試タイヤには7.5kgf/cm2 の内圧を充てんしておく。このカットエネルギは、従来例タイヤを100とする指数にてあらわし、これら指数値を表1に記載した。
【0046】
表1が示す結果から、実施例1〜4のタイヤは、ベルト5が3層のコード層6、7、8構成であるにもかかわらず、4層のコード層構成になる従来例タイヤに比し同等以上のカットエネルギを有し、このことはとりもなおさず、耐カット性に優れていることが分かり、これに対し最外コード層8の幅が、実施例タイヤ対比狭すぎたり、広すぎる比較例タイヤ1〜4は、いずれも従来例タイヤより耐カット性が低下していることが分かる。
【0047】
また、タイヤ重量の測定結果では、実施例1〜4のタイヤのなかで最も重い実施例4のタイヤで、従来例タイヤより、約3.7%も軽量化されていて、比較例4のタイヤに対しても約0.4%軽量化されていること、CP測定結果では、実施例1〜4のタイヤは従来例タイヤと同等以上のCP特性が得られていること、そしてベルトの耐セパレーション性試験結果も、実施例1〜4のタイヤは従来例タイヤと同等以上の耐久性を有していることも併せ確かめている。
【0048】
【発明の効果】
この出願の請求項1〜3に記載した発明によれば、ベルトを3層のコード層で構成し、ベルトの耐セパレーション性及びコーナリング性能などの諸性能を4層のコード層構成の従来タイヤと同等以上に保持した上で、従来タイヤと同等以上のトレッド部の耐カット性を発揮することができ、合わせて従来タイプの3層のコード層構成のタイヤに比し、より一層の軽量化を実現することができる、長寿命で軽量な重荷重用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による重荷重用空気入りラジアルタイヤのトレッド部の構成の一部の斜視図である。
【図2】 図1に示すタイヤのトレッド部の一部の正面を展開した説明図である。
【図3】 従来タイヤの要部左半断面図である。
【図4】 大きな異物に乗り上げたときのタイヤのベルト変形状態の説明図である。
【図5】 この発明によるゴムの圧縮弾性率測定用治具の斜視図である。
【図6】 図5に示す治具を装着した圧縮試験機の正面図である。
【図7】 この発明による最外コード層のコード傾斜角度とCPとの関係をあらわす線図である。
【符号の説明】
1 重荷重用空気入りラジアルタイヤ
2 トレッド部
3 トレッドゴム
3t トレッド部踏面
4 カーカス
5 ベルト
6 最内コード層
6a 最内コード層のコード
7 中間コード層
7a 中間コード層のコード
8 最外コード層
8a 最外コード層のコード
8b 最外コード層のコード被覆ゴム
8E 最外コード層の幅端
9 コード交差層
10 周方向ショルダ溝
11 周方向中央溝
12、13、14、18 横方向溝
15、16、17、19 ブロック
P、P1 、P2 トレッド部円周を含む平面
α、δ コード交差層コードの傾斜角度
β 最外コード層のコード傾斜角度
Lg1 周方向ショルダ溝の最内側溝縁間展開幅
Lg2 周方向中央溝の最外側溝縁間展開幅
Lb 最外コード層の展開幅
Rc トレッド部中央領域
Rs トレッド部両側領域
w トレッド部展開幅
TE トレッド部踏面端縁
Fx 張力
Claims (3)
- 一対のビード部内にそれぞれ埋設したビードコア相互間にわたり一対のサイドウォール部とトレッド部とを補強する1プライ以上のゴム被覆ラジアル配列コードになるカーカスと、カーカスの外周でトレッド部を強化するベルトとを備え、該ベルトは3層のゴム被覆コード層を有し、これらコード層のうち最内コード層と中間コード層とはコード交差層を形成してなり、最内コード層及び中間コード層のそれぞれのコードは、トレッド部円周を含む平面に対し10〜25°の範囲内の傾斜角度を有し、最外コード層のコードは、中間コード層コードの上記平面からの傾斜角度を測る向きと同じ向きに測って上記平面に対し45〜115°の範囲内の傾斜角度を有し、トレッド部は少なくとも両側領域で互いに対をなす周方向ショルダ溝を備える重荷重用空気入りラジアルタイヤにおいて、
最外コード層は、上記の互いに対をなす周方向ショルダ溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面に最も近い溝縁相互間の幅以下の幅を有することを特徴とする重荷重用空気入りラジアルタイヤ。 - 上記トレッド部両側領域に挟まれる中央領域に、タイヤ赤道面を挟んで延びる2本の周方向中央溝を有し、最外コード層は、2本の周方向中央溝の溝縁のうち、タイヤ赤道面から最も遠い溝縁相互間の幅以上の幅を有する請求項1に記載したタイヤ。
- 最外コード層のコード被覆ゴムは、200kgf/cm2 以上の圧縮弾性率を有する請求項1又は2に記載したタイヤ。
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