JP4382221B2 - 水没式切削装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を水中で切削するようにした水没式切削装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェーハ、セラミックス等の被加工物を切削するには、従来例えば図8に示すような構成の切削装置が使用されている。この切削装置によれば、被加工物Wは保持手段のチャックテーブルAに保持され、顕微鏡Bの下方でアライメントが遂行された後、切削領域C−2へ移動される。この切削領域C−2では、ノズルDから被加工物W上に切削水が供給され、スピンドルEの先端に取り付けた回転ブレードFにより被加工物Wに対して所望の切削(切断、溝入れ等)が実行される。回転ブレードFは、ホイールカバーG内に収められており、回転ブレードFの両側には切削水を供給するための前記ノズルDが配設されていて、充分な切削水が被加工物Wと回転ブレードFに供給されて切削が遂行される。
しかし、切削水を被加工物Wと回転ブレードFとに充分供給しながら切削を行っても、切粉の混ざった切削水が回転ブレードFの高速回転に伴って勢いよく跳ね上がり、これがホイールカバーG内で流動して下方に向かい、被加工物Wの表面を強く叩いて傷付けてしまう場合があった。又、飛散した切粉等が乾燥して被加工物Wの表面に強固に付着するといった汚染の問題もあった。被加工物Wが半導体ウェーハの場合には、表面にIC回路が形成されているため、その表面が破損したり汚染されたりするとICチップが不良となって損害が発生する。
そこで、被加工物Wの表面が水の層で保護されていれば上記のような問題が解決されることから、被加工物Wを水没させた状態で切削する技術が開発されている。その一例としては、図9(a)、(b)のように円筒形の枠体HをチャックテーブルAの上面外周に沿って着脱自在に取り付け、この枠体HとチャックテーブルAとで構成される貯水槽に切削水を溜め、その切削水中で被加工物Wを切削するようにした水没式切削装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の水没式切削装置によれば、チャックテーブルA上に被加工物Wを囲むように円筒形の枠体Hを載置して貯水槽を形成しているので、切削時においてはこの枠体H内に切削水が供給され、被加工物Wを水没させることはできるが、枠体H内に溜まっている切削水を排水するには、図9(b)のようにオペレータが枠体HをチャックテーブルAから取り外す必要があり、その着脱には煩に耐えないものがある。
又、被加工物着脱領域C−1において切削済みの被加工物WをチャックテーブルAから外して新たな被加工物をセットする場合や、切削の途中で切削溝を前記顕微鏡Bで検査する場合においては、枠体H内に溜まっている切削水を一旦排水する必要があり、オペレータはその都度枠体Hの取り外し及び据付作業をしなければならず、作業効率が著しく低下する原因になっている。勿論、バキューム手段を新たに設け、枠体H内の切削水を吸引して排出するように構成したり、或は枠体H内の底部に開閉可能な排出口を設けて排水するといった手段も考えられるが、バキューム手段の場合には機構が大掛かりになるという問題が生じ、排出口の場合にはその開口面積が自ずと限定されることから切削水の排水速度が遅くなり、スループットが低下するといった問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような従来技術の事態に鑑みてなされたもので、大掛かりな機構を用いることなく、取り扱いが簡単で且つ迅速に切削水を排水できるようにした水没式切削装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための技術的手段として、本発明は、被加工物を保持する保持手段と、この保持手段に保持された被加工物を切削する切削手段と、切削水を供給する切削水供給手段と、この切削水供給手段からの切削水を貯水し保持手段のチャックテーブルに保持された被加工物を水没状態に貯水する貯水槽と、を少なくとも含む水没式切削装置において、
前記貯水槽は、4枚の側壁を立設して箱状に形成されて前記チャックテーブルを囲繞すると共に上端部がチャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも高い位置に位置付けられる枠体と、チャックテーブルを含む底部とから構成されており、
前記枠体の全部又はオペレータに面した一枚の側壁が閉位置と開位置とに位置付けられ、この枠体が閉位置に位置付けられた時は、切削水を貯水し前記チャックテーブルに保持された被加工物を水没状態に維持し、枠体が開位置に位置付けられた時は、前記貯水槽の切削水が排水され、チャックテーブルに保持された被加工物が表出することを特徴とする水没式切削装置を要旨とする。
又、この水没式切削装置において、前記枠体は上下動し、この枠体の上端部が前記チャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも高い閉位置と、チャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも低い開位置とに位置付けられること、
前記枠体はヒンジによって貯水槽の外部と連結しており、この枠体はヒンジを回転中心として回動し閉位置と開位置とに位置付けられること、
前記枠体には駆動源が連結されていて、この駆動源の駆動によって枠体が閉位置と開位置とに位置付けられること、
を要旨とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る水没式切削装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、水没式切削装置のアライメント領域及び切削領域を含む作動部の概略斜視図であり、1は装置本体側に固定された廃液トレイであり、その中央部に長手方向に沿って開口部1aが設けられ、この開口部1aの両側縁に沿って一対のガイド片1bが立設されると共に、両端縁には取付片1cが立設され、更に角隅部には排水孔1dが形成されてフレキシブルな排水管2が接続されている。
【0007】
3は廃液トレイ1の開口部1aの下方に配設された移動手段であり、開口部1aの長手方向に沿って形成された一対のテーブルガイド片3aと、このテーブルガイド片3aに係合して移動する移動テーブル3bと、この移動テーブル3bを駆動するねじ棒3cとモータ3dとから構成されている。
【0008】
移動手段3のねじ棒3cには、前記移動テーブル3bの底部に取り付けられたボルト(図示せず)が螺合しており、モータ3bによりねじ棒3cを回転させると、ボルトを介して移動テーブル3bがテーブルガイド片3aに沿って平行移動する。
【0009】
更に、移動手段3の移動テーブル3b上には、保持手段であるチャックテーブル4が、保持筒5を介して前記廃液トレイ1の開口部1aから突出して軸回転可能に装着され、このチャックテーブル4を囲繞するようにして貯水槽6が形成されている。
【0010】
貯水槽6は、前記廃液トレイ1のガイド片1bに跨るようにして保持筒5の上部に固定されたウォータカバー6aと、その外周縁に沿って立設された枠体6bとにより構成され、箱状の枠体6bを形成する4枚の側壁の上端部は、チャックテーブル4上に吸着保持される被加工物W(図略)の上部よりも高い位置に設定されている。
【0011】
更に、枠体6bの側壁のうちオペレータに面する手前の側壁7は、上下動可能に形成されている。即ち、前記ウォータカバー6aの手前の側面に駆動源8が取り付けられ、その上下動するシャフト8aの先端部が側壁7の下端部中央に取り付けられており、この駆動源8によって側壁7が上下動して閉位置と開位置とに位置付けられる。
【0012】
図2のように駆動源8のシャフト8aが上昇した状態では、側壁7は閉位置に位置付けられ枠体6bを閉じているが、図3のようにシャフト8aが下降した状態では、側壁7は開位置に位置付けられ枠体6bを開く。8bはウォータカバー6aに取り付けられた一対のガイド片であり、側壁7の両端部に係合して側壁7の上下動が円滑にできるようにしてある。
【0013】
図1において、9,10は門型に形成された伸縮自在の蛇腹カバーであり、いずれも中間部にはガイドプレート9a、10aが設けられると共に、その両側の下端部にはローラ9b、10bがそれぞれ取り付けられ、両端部には固定用フレーム9c、10cがそれぞれ取り付けられている。
【0014】
この蛇腹カバー9,10は、前記廃液トレイ1のガイド片1bを跨ぐようにしてウォータカバー6aの両側に取り付けられる。即ち、蛇腹カバー9は、一方の固定用フレーム9cを廃液トレイ1に固定された取付板11にビス止めすると共に、他方の固定用フレーム9cをウォータカバー6aの右側部にビス止めし、蛇腹カバー10は、同様に一方の固定用フレーム10cを廃液トレイ1に固定された取付板12にビス止めすると共に、他方の固定用フレーム10cをウォータカバー6aの左側部にビス止めする。
【0015】
これにより、ウォータカバー6aとその両側に取り付けられた蛇腹カバー9,10とは一連に接続され、廃液トレイ1の開口部1aを閉塞する。又、前記移動手段3による移動テーブル3bの移動に伴ってウォータカバー6aが左右に動くと、蛇腹カバー9,10の伸縮(一方が伸びると他方が縮む)により廃液トレイ1の開口部1aを常に閉塞状態に保持することができる。
【0016】
この時、蛇腹カバー9,10における前記ローラ9b、10bは、廃液トレイ1のガイド片1bにそれぞれ転動可能に当接しており、前記ウォータカバー6aの動きに伴う蛇腹カバー9,10の伸縮動作がガイド片1bに沿って円滑になされる。
【0017】
このように構成された水没式切削装置は、被加工物着脱領域C−1において前記チャックテーブル4上に被加工物W(図略)を吸着保持し、顕微鏡Bでアライメントした後に切削領域C−2に移動し、ノズルDから貯水槽6に切削水を供給して被加工物Wを水没状態とし、この水没状態にて前記回転ブレードFにより切削加工が遂行される。
【0018】
この時、貯水槽6の枠体6bは閉位置に保持されており、前記のようにその上端が被加工物Wより上位に位置しているため、貯水槽6に供給された切削水により被加工物Wを水没状態に保持することができる。
【0019】
この水没状態にて被加工物Wに所要の切削加工が施された後、側壁7は駆動源8により下降されて開位置に位置付けられる。この結果、貯水槽6の枠体6bはオペレータ側が開口し、この開口面積は大きいため貯水槽6内の切削水はほぼ全量が速やかに排水される。排水された切削水は、切削屑等の不純物が混入しており、前記廃液トレイ1に受け止されると共に排水孔1dから排水管2に流れ込んで排水される。一方、加工済みの被加工物は切削水の排水によって貯水槽6内で表出状態となる。
【0020】
この後、被加工物着脱領域C−1において、加工済みの被加工物をチャックテーブル4から外して新たな被加工物Wをチャックテーブル4上に吸着保持させる。この際、側壁7は開位置に位置付けられているので、開口面積が大きいため被加工物の交換を容易に行うことができる。そして、駆動源8により側壁7を上昇させて枠体6bを再び閉位置に位置付ける。
【0021】
次いで、新たな被加工物Wを前記顕微鏡Bでアライメントした後、移動手段3によりチャックテーブル4を切削領域C−2まで移動し、前記のようにノズルDから貯水槽6に切削水を供給して被加工物Wを水没させ、回転ブレードFにより加工を遂行する。このような一連の作業を繰り返し行う。
【0022】
図4は、本発明の他の実施形態を示すものであり、前記側壁7に代えて回転側壁13を設けた構成に特徴を有する。即ち、ウォータカバー6aのオペレータ側の面(手前の面)に取付片14を固定し、この取付片14に対しヒンジ15を介して回転側壁13を取り付け、このヒンジ15を回転中心として回動することで閉位置と開位置とに位置付ける。この場合も、図4に示す閉位置にて貯水槽6に切削水を供給し、被加工物W(図略)を水没させて回転ブレードFにて加工を施す。
【0023】
加工終了後は、図5に示すように回転側壁13を180度回動させて開位置に位置付け、貯水槽6内の使用済み切削水を排水する。この場合も貯水槽6の枠体6bの開口面積が大きいため、使用済みの切削水をほぼ全量速やかに廃液トレイ1に排水することができ、被加工物の交換も容易にできる。その後の取り扱いは前記と同様であるから説明を省略する。
【0024】
但し、回転側壁13を閉位置に戻した際に、その閉位置を保持するため例えば回転側壁13に当接する側壁の端面に磁石16を装着して回転側壁13を磁着により固定することが好ましい。枠体6bが非鉄金属又は合成樹脂等で形成されている場合には、磁石16の代わりに回転側壁13と側壁とが係止する適宜の止め具(図略)を設けることで、回転側壁13の閉位置を維持することが可能である。
【0025】
前記回転側壁13はオペレータが手動により操作するものであるが、図6のように回転駆動源17を設けて、回転側壁18を機械的に回動するように構成することもできる。即ち、ウォータカバー6aのオペレータ側の面に回転駆動源17を取り付け、その回転軸17aに回転側壁18の下端部を固定し、回転軸17aを回転中心として回動することで閉位置と開位置とに位置付ける。
【0026】
図6は、回転側壁18を閉位置にした状態を示し、この閉位置にて貯水槽6に切削水を供給して被加工物W(図略)を水没させ、回転ブレードFにて加工を施す。加工後は、図7のように回転駆動源17により回転側壁18を180度回動させて開位置に位置付け、枠体6bを開いて貯水槽6内の使用済み切削水を排水する。この場合も枠体6bの開口面積が大きいため、使用済みの切削水を速やかに廃液トレイ1に排水することができ、被加工物の交換作業も容易にできる。その後の取り扱いは前記と同様であるから説明を省略する。
【0027】
尚、上記実施形態では、いずれも貯水槽6における枠体6bの一側壁のみ開閉可能に構成したものであったが、複数の側壁又は側壁全部を開閉可能に構成して実施することも可能である。又、加工後に枠体6bを開口するのみならず、切削の途中で被加工物Wの切削溝を前記顕微鏡Bで検査する場合等においては、貯水槽6内の切削水を一旦排水する必要があるが、そのような場合にも枠体6bを開口することで容易に排水することができ、しかも従来の枠体Hのようにオペレータがその都度取り外したり据え付けたりする作業は不要となる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、水没式切削装置において、貯水槽を構成する枠体の全部又は一部の側壁を閉位置と開位置とに位置付けるだけで、枠体を閉開し切削水の貯水と排水ができるように構成したので、バキューム手段等の大掛かりな機構を用いることなく、取り扱いが簡単で且つ迅速に切削水を排水することができ、従来の如くオペレータが枠体を着脱する必要がなく、作業効率が向上する等の優れた効果を奏する。
又、枠体の側壁のうちオペレータに面した側壁が、閉位置と開位置とに位置付けられるように構成することで、チャックテーブルへの被加工物の交換作業が容易になり、作業性が著しく向上する。更に、枠体の側壁を閉位置と開位置とに位置付けるための駆動源を設けることで、自動化が図れると共に生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水没式切削装置の実施形態を示す要部の概略分解斜視図
【図2】貯水槽の枠体が閉位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図3】その枠体が開位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図4】手動式の回転側壁を設けた実施形態を示すもので、貯水槽の枠体が閉位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図5】その枠体が開位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図6】駆動式の回転側壁を設けた実施形態を示すもので、貯水槽の枠体が閉位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図7】その枠体が開位置に位置付けられた状態での拡大斜視図
【図8】被加工物の切削装置の一例を示す斜視図
【図9】従来の水没式切削装置の一例を示すもので、(a)は水没切削時の状態、(b)は枠体を外した時の状態をそれぞれ示す説明図
【符号の説明】
1…廃液トレイ
2…排水管
3…移動手段
4…チャックテーブル
5…保持筒
6…貯水槽
6a…ウォータカバー
6b…枠体
7…側壁
8…駆動源
9、10…蛇腹カバー
11,12…取付板
13…回転側壁
14…取付片
15…ヒンジ
16…磁石
17…回転駆動源
18…回転側壁

Claims (4)

  1. 被加工物を保持する保持手段と、この保持手段に保持された被加工物を切削する切削手段と、切削水を供給する切削水供給手段と、この切削水供給手段からの切削水を貯水し保持手段のチャックテーブルに保持された被加工物を水没状態に貯水する貯水槽と、を少なくとも含む水没式切削装置において、
    前記貯水槽は、4枚の側壁を立設して箱状に形成されて前記チャックテーブルを囲繞すると共に上端部がチャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも高い位置に位置付けられる枠体と、チャックテーブルを含む底部とから構成されており、
    前記枠体の全部又はオペレータに面した一枚の側壁が閉位置と開位置とに位置付けられ、この枠体が閉位置に位置付けられた時は、切削水を貯水し前記チャックテーブルに保持された被加工物を水没状態に維持し、枠体が開位置に位置付けられた時は、前記貯水槽の切削水が排水され、チャックテーブルに保持された被加工物が表出することを特徴とする水没式切削装置。
  2. 前記枠体は上下動し、この枠体の上端部が前記チャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも高い閉位置と、チャックテーブルに保持された被加工物の上部よりも低い開位置とに位置付けられる請求項1記載の水没式切削装置。
  3. 前記枠体はヒンジによって貯水槽の外部と連結しており、この枠体はヒンジを回転中心として回動し閉位置と開位置とに位置付けられる請求項1記載の水没式切削装置。
  4. 前記枠体には駆動源が連結されていて、この駆動源の駆動によって枠体が閉位置と開位置とに位置付けられる請求項1,2,又は3記載の水没式切削装置。
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