JP4381194B2 - シュー皮 - Google Patents

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本発明は、卵殻粉からなるシュー皮用の品質改良材、及び卵殻粉を含有したシュー皮に関する。更に詳しくは、シュー皮に卵殻粉を含有させることにより、焼き上がったシュー皮が適度な硬さを有しサクサクとした歯切れのよい食感であり且つクリーム充填後もサクサクとした食感を持続させることのできる卵殻粉からなる品質改良材及び卵殻粉を含有したシュー皮に関する発明である。
シュー皮は、水と油脂類を共存下に沸騰させた後、小麦粉を加えて練り上げ、卵を加えて適度な硬さに調製して、オーブンで焼成することにより製造される。このようにして調製されるシュー皮は、サクサクとした歯切れのよい食感を特徴とし、その食感が好まれている。
しかし、シュー皮はオーブンで焼成した後しばらく保管すると空気中の水分を吸収してしまう。そのために、サクサクとした歯切れの良い食感が失われたり、また、適度な硬さを失いフィリング充填用の口金が差し込みにくくなってしまうという問題があった。さらに、シュー皮にカスタードクリーム、生クリーム、チョコレートクリーム等のフィリングを充填して保管すると、充填後の保管時間の経過とともに、フィリングの水分がシュー皮に移行し、シュー皮のサクサク感はさらに失われてしまうという問題もあった。
したがって、上記シュー皮の問題点を解決するために、フィリング充填前のシュー皮はもちろんのこと、フィリング充填後もサクサクとした歯切れの良い食感を持続するシュー皮の開発が求められている。
上述したような問題点を解決するために、製菓店では、シュー皮を焼き上げた後、空気中の水分量を調整した乾燥室等に保管しておき、販売直前にクリームを充填する等の対策を行なっている。これによりサクサクとした歯切れのよいシュー皮を用いた製品を購買者に提供できる。しかし、販売直前にクリーム充填する方法では、クリーム充填の手間がかかるばかりでなく、購買者が喫食するまでに時間を要した場合は以前としてサクサクとした歯切れのよい食感が持続されないという問題があった。
また、シュー皮を製造する技術としては、炭酸カルシウムを膨張剤としてシュー皮に含有させる技術(特許文献1及び2)、平均粒子径が20μm以下の増粘安定剤を含有させる技術(特許文献3)、サクサクとした軽い食感のシュー皮を調製するために、シュー皮生地に内部が空洞のカップ状耐熱容器を被せて焼成する技術(特許文献4)が提案されている。
特開平2−9333号公報 特開平6−253723号公報 特開2002−291396号公報 特開平7−194292号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2のようにシュー皮に炭酸カルシウムを添加した場合、膨化するものの、炭酸カルシウムだけを添加してもサクサクとした食感のシュー皮が得られないので望ましくない。 また、特許文献1乃至4は、焼成後のサクサク感があったとしても、シュー生地にフィリングを充填した後のフィリングの水分移行を防ぐことができないため、サクサク感を持続することができないため望ましくない。
そこで、本発明では、シュー皮がサクサクとした歯切れの良い食感となり、且つフィリング充填に適した適度な硬さとなり、さらにフィリング充填後もサクサクとした歯切れのよい食感を持続することができる品質改良材、及び、このような性質のシュー皮を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため種々検討した結果本発明に到達した。すなわち本発明は、(1)シュー皮全体の乾燥重量に対して、卵殻粉を0.2%〜5%含有してなるシュー皮、である。
本発明により、サクサクとした歯切れの良いシュー皮が得られる。
さらに、製造直後及び保管後もサクサクとして歯切れがよく、且つ適度な硬さのあるシュー皮を得ることができるのでフィリング充填用の口金が差し込みやすくなり充填作業が容易となる。また、フィリング充填後もサクサクとした歯切れの良い食感を持続するシュー皮を得ることができるので、販売直前にフィリングを充填する必要がなくなるため、シュー皮の製品を販売する際の煩雑な作業が軽減される。
以下本発明を詳細に説明する。本発明において「%」はすべて「質量%」を意味する。
本発明のシュー皮用品質改良材は、卵殻粉からなる。卵殻粉からなる品質改良材は、シュー皮に添加すると、サクサクとした歯切れがよく、且つフィリング充填に適した適度な硬さのあるシュー皮及びフィリング充填後もサクサクとした食感を持続したシュー皮を得ることができる。
ここで、本発明で用いる卵殻粉は、鶏卵を割卵して卵黄と卵白を取り出し、洗浄、乾燥、粉砕したものであり、通常食品に用いられているものであればよい。卵殻粉の大きさは、特にこだわるものではないが、細かいほうがシュー生地と混ざりやすく、また、舌触りが滑らかとなるため、平均粒子径が20μm以下の粉末を用いると望ましく、10μm以下の粉末を用いるとより望ましい。
なお、本発明のシュー皮用品質改良材は、本発明の効果を損なわない範囲で、デキストリン、デキストリンアルコール、澱粉等の賦形剤や他の品質改良材を添加してもよい。
本発明のシュー皮は、シューパフともよばれるいわゆるシュークリームやエクレアの外皮のことであり、特に作り方にこだわるものではない。一般的な作り方としては、清水と油脂類を加熱沸騰させ、加熱を止めた後小麦粉等の粉類を混合し、さらに液卵を加えて滑らかとなるまで混合し成型した後、オーブンで焼成する方法がある。卵殻の添加方法は、特に問うものではないが、小麦粉等の粉類を混合する際に同時に添加すると均一に混合しやすいため望ましい。また、本発明のシュー皮に、パイ皮やクッキー生地等を被せたり、載せたりして焼成して調製してもよい。
シュー皮は卵殻粉を含有していれば、サクサクとして歯切れのよい食感となり、適度な硬さとなり、かつ、フィリング充填後のシュー皮への水分移行も起こり難くなるという効果が得られる。さらにこのような効果が得られ易いことから、卵殻粉の含有量はシュー皮全体の乾燥重量に対して0.2%以上、0.5%以上であるとより望ましい。なお、卵殻粉の含有量を多くし過ぎるとシュー皮が膨張しにくくなる傾向があるため、5%以下が望ましく、2.5%以下がより望ましい。
本発明のシュー皮に用いる油脂類は、通常食品に用いられているものであればよく、市販のバター、マーガリンやショートニングの他、乳化剤入りの油脂等を用いてもよく、また、コーン油、大豆油、菜種油等の液状油、牛脂、ラード等の半固体油を用いてもよい。さらに液状油や半固体油の硬化油を用いてもよい。
また、シュー皮に用いる小麦粉は、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒紛等適宜用いてもよい。
本発明のシュー皮に用いる液卵は、液全卵、液卵白、液卵黄、あるいは液卵黄と液全卵を全卵と異なる割合で組み合わせたものである。また、それらの液卵は、冷凍解凍したもの、乾燥して水戻ししたもの、酵素処理したもの、殺菌したもの等を用いてもよい。
本発明のシュー生地は、本発明の効果を損なわない範囲で、コーンスターチ、米粉等の澱粉類、グアーガム、ペクチン、キサンタンガム等の増粘剤、砂糖、糖アルコール、デキストリンアルコール、水飴等の糖類、重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の膨張剤、バターフレーバー、バニラフレーバー等の香料、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、その他クエン酸、リン酸ナトリウム、ビタミンE、ソルビン酸K、カゼインナトリウム、食塩等を添加してもよい。
本発明の品質改良材及びシュー皮の代表的な製造方法を以下に説明するが、これらの方法に限定するものではない。
まず、卵殻粉を用意する。卵殻粉は、卵を割卵して内容卵液を除去したのち、卵殻を粗粉砕し、卵殻膜を取り除いた後、よく洗浄して乾燥する。乾燥後の卵殻の水分含量は約5%以下になるようにするのが望ましい。次いでハンマーミル等の粉砕機にかけて微粉末化する。卵殻は、微粉砕にかける時間、回数により、卵殻微粉末の粒子径を調節することができる。卵殻粉の平均粒子径は20μm以下であると望ましく、10μm以下であるとより望ましい。
次に、シュー皮を調製する。シュー皮は、清水とバター、マーガリン等の油脂類とを加熱し油脂類を溶解させた後、加熱を止めて小麦粉、卵殻粉等の粉体を投入し、生地が滑らかとなるまで攪拌混合し、生地温度が 60℃程度以下になったら液卵を数回にわけて投入して攪拌混合し、生地が滑らかになったら、絞り口付きの袋に詰めて、天板に搾り出し、オーブン約200℃で20分間程度焼成して調製する。なお、清水と油脂類を加熱する方法は特に問うものではなく、直火、電子レンジ、オーブン等を用いてもよく、また、ここで用いる清水は牛乳等の乳製品や豆乳を用いてもよい。
また、焼成前のシュー生地にパイ生地やクッキー生地等を被せたりして焼成してもよい。
次に、本発明を実施例及び試験例に基づき、さらに詳細に説明する。
<実施例1>
ミキサーボールに油脂296g(月島食品工業社製、シューファンデDX)、清水200gを加え、加熱して沸騰させた。沸騰したら加熱を止め、薄力粉98g、強力粉98g、得られた卵殻粉10g(キユーピー社製カルホープ)を投入して攪拌混合し生地が滑らかとなり生地温度が60℃程度以下になったら、液全卵394gを投入し生地全体がまとまって滑らかとなるまで攪拌混合を行なった。攪拌後の生地の粘度は38℃、B型粘度計、ローターNo.6、回転数2rpmで測定したところ、450Pa・sであった。丸口金13番をつけた絞り袋に生地を詰め、1個20gになるように天板に搾り出し、オーブンに入れ、200℃で20分間焼成してシュー皮を得た。得られたシュー皮の粗熱が取れたら、市販のカスタードクリームを1個40gとなるように充填し、試食した。
なお、シュー皮乾燥重量全体に対して卵殻粉は1.7%であり、卵殻粉の平均粒子径は8μmであった。また、ここでの卵殻粉の平均粒子径の値は、島津製作所製、レーザー回析式粒度分布測定装置SALD-2000Aを用いて測定したメディアン径である。
得られたシュー皮はサクサクとして歯切れがよくて適度な硬さを有ししっかりしていたためカスタードクリームを充填しやすく、また、カスタードクリーム充填後もサクサクとした歯切れの良い食感であった。
<試験例1>
卵殻粉の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にしてシュー皮を調製した。シュー皮の乾燥重量に対する卵殻の含有量は1)0.1%、2)0.2%、3)0.5%、4)1.0%、5)1.7%、6)2.5%、7)5.0%、8)7.0%となるように調製した。
なお、対照として卵殻を含有していないシュー皮も同様にして調製した。
A.フィリングを充填せず、24時間保管したシュー皮の食感を調べた。
得られたシュー皮の粗熱を取った後24時間常温で保管し、保管後のシュー皮の破断応力及び圧縮距離を測定することにより、シュー皮の食感を調べた。
破断応力及び圧縮距離の測定値は、シュー皮をそのままレオメーター(不動工業社製)の台座に載せ、直径3mmの円柱プランジャーで6cm/minにて測定した値10個分の平均値である。圧縮距離は、プランジャーがシュー皮に接触してからシュー皮を破るまでに動いた距離であり、破断応力は、プランジャーがシュー皮を破るために必要とした力である。破断応力が大きいほどシュー皮が硬さを有していることになり、圧縮距離が短いほど、歯切れがよくサクサクとした食感となることを意味する。容積の測定値は、菜種を用いた容積置換法により測定したシュー皮の10個分の平均値であり、数値が大きいほどシュー皮がより膨らんでいることを意味する。
Figure 0004381194
表1より、卵殻を含有していない対照のシュー皮は、圧縮距離が長くて破断応力が小さいことから、サクサクとした歯切れのよい食感ではないことがわかる。また、シュー皮が適度な硬さを有していないためカスタードクリーム充填用の口金が刺さり難くカスタードクリームを充填し難く作業性が悪かった。
これに対して、卵殻を含有しているシュー皮(1)〜8))は、圧縮距離が短くて破断応力が大きくなっていることから、シュー皮が適度な硬さを有ししっかりとしていながらもサクサクとして歯切れがよいシュー皮になっていることがわかる、また、適度な硬さを有しているのでカスタードクリーム充填用の口金が刺さりやすくカスタードクリーム充填しやすく作業性が良好であった。
さらに、シュー皮全体の乾燥重量に対する卵殻の割合が0.2%以上、より望ましくは0.5%以上であると、破断応力が大きくなり圧縮距離が短いことからサクサクとして歯切れがよくより適度な硬さを有したしっかりとしたシュー皮が得られることがわかる。また、卵殻の含有量を多くしすぎるとシュー皮が膨張し難くなる傾向となることが読み取れるので、シュー皮全体の乾燥重量に対する卵殻の割合が5.0%以下であると望ましく、2.5%以下であるとより望ましい。
B.フィリングを充填した後、24時間保管したシュー皮の食感を調べた。
得られたシュー皮の粗熱を取った後、市販のカスタードクリームを1個40gとなるように充填し、5℃にて24時間保管し、保管後のシュー皮の圧縮距離を測定した。
圧縮距離の測定値は、5℃で保管したシュー皮をそのままレオメーター(不動工業社製)の台座にのせ、直径3mmの円柱プランジャーを用いて6cm/minにて測定した値10個分の平均値である。
Figure 0004381194
表2より、卵殻を含有していない対照のシュー皮は、圧縮距離が長いことからシュー皮がサクサクとせず歯切れが悪くなっていることがわかり、これはカスタードクリームの水分が移行して伸縮性のあるシュー皮になっていること推定できる。
これに対して、卵殻を含有しているシュー皮(1)〜8))は、圧縮距離が短いことから、シュー皮がサクサクとして歯切れがよいことがわかり、これはカスタードクリームの水分移行があまりなく、サクサクとして歯切れがよいシュー皮が保たれていることが推定できる。
さらに、シュー皮全体の乾燥重量に対する卵殻の割合が0.2%以上より望ましくは0.5%以上であると、圧縮距離がより短くなっていることから、よりサクサクとして歯切れの良いシュー皮が得られることが理解できる。
<試験例2>
卵殻を含有したシュー皮と炭酸カルシウムを含有したシュー皮の食感を比較した。実施例1と同様の方法にて、卵殻を含有したシュー皮を調製し、また、比較品として、実施例1の卵殻を炭酸カルシウムに置き換えた他は、実施例1と同様にしてシュー皮を調製し、対照として、卵殻を含有しないシュー皮を調製した。
得られた各シュー皮の粗熱を取り、市販のカスタードクリームを1個あたり40gずつ充填し、5℃で24時間保管後、試食し、下記評価基準に基づいて評価を行なった。
Figure 0004381194
表3より、カスタードクリーム充填し24時間保管後の食感において、炭酸カルシウムを添加したシュー皮はサクサクと感じなくなってしまっており、これはカスタードクリームの水分が移行してしまったものと推定できる。これに対して、卵殻を添加したシュー皮はサクサクとして歯切れがよく美味しいものであり、これはカスタードクリームの水分移行を防ぐことができたものであると推定できる。

Claims (1)

  1. シュー皮全体の乾燥重量に対して、卵殻粉を0.2%〜5%含有してなるシュー皮。
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