JP4380822B2 - トリフェニルボロン化合物と有機窒素化合物を含有する水中防汚塗料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、養殖または定置用の漁網やこれらに使用される浮き子、ロープなどの資材、さらに船底、水中構築物などに対して海棲汚損生物の付着を防止する漁網防汚剤や船底防汚塗料など水中防汚塗料の有効成分として有用なトリフェニルボロン骨格を含有する化合物の分解を防止し、効果が持続する漁網防汚剤や船底防汚塗料などの水中防汚塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
養殖用または定置用の漁網類や船底、水中構築物などは海水中に長時間保持されるために、海藻類、フジツボ、セルプラ、コケムシ、ヒドロ虫、軟体動物類などの海棲汚損生物の付着が激しく、これらの経済的運用を妨げており、それらの保守に多大の労力と費用をかけているのが現状である。この対策として種々の提案がなされている。従来は、一連の有機錫化合物が実用化され広く使用されてきたが、有機錫化合物は皮膚刺激性が強くこれらを含有する商品を不用意に取り扱うと取扱者に障害を及ぼす恐れがあり、また環境に与える影響から、水中防汚塗料として使用することが禁止されるようになった。
【0003】
また、亜酸化銅やロダン銅は、船底塗料に広く用いられいる化合物であり、一部漁網防汚剤においても、使用されている。
【0004】
トリフェニルボロン骨格を有する化合物は、水中付着生物、とりわけ海棲汚損生物に対しても広いスペクトルを示し、海水中に生存するフジツボ、セルプラ、ホヤ、コケムシ、藻類、ヒドロ虫などに効果を有する有用な化合物である。特に、腔腸動物であるヒドロ虫に対して抜群の効力を発揮することが知られている。
【0005】
例えば、特開平8−295608号公報、特開平8−295609号公報には、トリフェニル(アルキルアミン)ボロンを有効成分とする水中防汚剤が、特開平9−3366号公報には、トリフェニル(ピリジン)ボロンを有効成分とする水中防汚剤が、国際出願公開WO97/27254号公報には、トリフェニル(ロジンアミン)ボロンが、さらに国際出願公開WO98/33829号公報には、トリフェニルボロン含有ポリマーが記載されている。
【0006】
また、漁網防汚剤や船底防汚塗料などの水中防汚剤は、異なった種類の有効成分を組み合わせて使用することが通常行われている。これによって、さらにその効力を増強したり、さらに広範囲の海棲汚損生物への効果を得たりすることができる。トリフェニルボロン骨格を有する化合物も、他の有効成分と併せて使用することもできる。
【0007】
しかしながら、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物は、亜酸化銅やロダン銅と混合することにより、あるいは亜酸化銅やロダン銅と接触することにより、トリフェニルボロン骨格が容易に分解するため、水中防汚塗料の有効成分として効果を逸する欠点を有している。
【0008】
したがって、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物は、船底防汚塗料の主な有効成分である亜酸化銅やロダン銅と併用することが出来ない現状となっている。また、亜酸化銅やロダン銅を含有する漁網防汚剤で処理した後に使用された網に対しても、残存する銅化合物の影響によってトリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する漁網防汚剤で処理しても、時として十分な効果が発揮されない現状も生じている。
【0009】
このトリフェニルボロン骨格を持つ化合物の特徴は、船底防汚塗料や漁網防汚剤である水中防汚剤を製造する上で、大きな問題となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物が、亜酸化銅やロダン銅などの銅化合物と混合したり、接触したりしても、防汚効果を維持できるような方策が求められていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる状況に鑑み、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚塗料に、−CONH−構造を分子内に持つ化合物および3個以上の窒素原子を持つ複素環を分子内に持つ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することにより、上記課題を解決することを見出したものである。
【0012】
すなわち、本発明は、(1):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅および/またはロダン銅とを含有する水中防汚塗料に、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚塗料;
【0013】
(2):トリアゾール化合物が、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールである(1)記載の水中防汚塗料;
【0014】
(3):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚塗料に、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚塗料;
【0015】
(4):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物が、トリフェニル(アルキルアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロン、トリフェニルボロン含有ポリマーである(1)から(3)のいずれか1項記載の水中防汚塗料;
【0016】
(5):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅および/またはロダン銅とを含有する水中防汚用組成物に、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚用組成物;
【0017】
(6):トリアゾール化合物が、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールである(5)記載の水中防汚用組成物;
【0018】
(7):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚用組成物に、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚用組成物;
【0019】
(8)トリフェニルボロン骨格を持つ化合物が、トリフェニル(アルキルアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロン、トリフェニルボロン含有ポリマーである(5)から(7)のいずれか1項記載の水中防汚用組成物;
【0020】
(9):トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する組成物が、亜酸化銅および/またはロダン銅と混合する場合、あるいは亜酸化銅および/またはロダン銅と接触する場合において、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する組成物に配合することを特徴とするトリフェニルボロン骨格を持つ化合物の分解を防止する方法に関する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0022】
トリフェニルボロン骨格を持つ化合物としては、トリフェニル(アルキルアミン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニルボロン含有ポリマーなどがあげられ、具体的には、トリフェニル(n−プロピルアミン)ボロン、トリフェニル(イソプロピルアミン)ボロン、トリフェニル(n−ブチルアミン)ボロン、トリフェニル(イソブチルアミン)ボロン、トリフェニル(sec−ブチルアミン)ボロン、トリフェニル(n−アミルアミン)ボロン、トリフェニル(イソアミルアミン)ボロン、トリフェニル(n−ヘキシルアミン)ボロン、トリフェニル(n−オクチルアミン)ボロン、トリフェニル(2−エチルヘキシルアミン)ボロン、トリフェニル(ドデシルアミン)ボロン、トリフェニル(n−オクタデシルアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
トリフェニルボロン骨格を持つ化合物の配合量は、水中防汚塗料の適用対象物、適用環境によって選択でき、特に限定されるものではないが、水中防汚塗料に対して、1重量部〜30重量部、好ましくは2重量部〜15重量部、さらに好ましくは3重量部〜10重量部である。
【0024】
本発明に用いる−CONH−構造を分子内に持つ化合物および3個以上の窒素原子を持つ複素環を分子内に持つ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、これらの化合物を本発明にて用いる窒素化合物ともいう。)について説明する。
【0025】
−CONH−構造を分子内に持つ化合物としては、オキサミド化合物およびジホルミルヒドラジン化合物などが挙げられる。
【0026】
オキサミド化合物は、−NHCOCONH−結合を分子内に持つ化合物であり、例えば、N,N−ビス{2−[3−(3,5−ジ第3級ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}オキサミドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
ジホルミルヒドラジン化合物は、−CONHNHCO−結合を分子内に持つ化合物であり、例えば、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、シュウ酸ビスベンジリデンヒドラジド、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N,N−ビス[3−(3,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
3個以上の窒素原子を持つ複素環を分子内に持つ化合物としては、トリアゾール化合物およびトリアジン化合物などが挙げられる。
【0029】
トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
トリルトリアゾールとしては、各種異性体の混合物であってもよく、例えば4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾールの混合物であってもよい。
【0031】
トリアジン化合物としては、例えば、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミンともいう。)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
−CONH−構造を分子内に持つ化合物および3個以上の窒素原子を持つ複素環を分子内に持つ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物として、トリアゾール化合物が好ましい。
【0033】
これらの本発明に用いる窒素含有化合物の配合量は、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物の0.01重量%〜30重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%である。
【0034】
また、目的に応じてトリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、他の防汚有効成分とを混合することもできる。
【0035】
他の防汚有効成分としては、2−(チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、テトラクロロイソフタロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィッド、テトラエチルチウラムジスルフィッド、テトライソプロピルチウラムジスルフィッド、テトラ−n−ブチルチウラムジスルフィッドなどのチウラムジスルフィッド化合物、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−n−デシル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(4−クロロベンジル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(4−クロロフェニル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−n−ヘキシル−3−イソチアゾロン、4,5−ジクロロ−2−(2−メトキシ−3−クロロフェニル)−3−イソチアゾロン、4,5−ジブロモ−2−(4−クロロベンジル)−3−イソチアゾロン、4−メチル−5−クロロ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソチアゾロン、5−クロロ−2−(3,4−ジクロロフェニル)−3−イソチアゾロンなどのイソチアゾロン化合物、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、トリス(ジメチルジチオカルバミン酸)鉄、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)銅、ビス(ジブチルジチオカルバミン酸)亜鉛、エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、エチレンビスジチオカルバミン酸マンガン、ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛、ビス(ジメチルチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸マンガンなどのカーバメート化合物、ピリチオン亜鉛(ジンクピリチオン、ZPTともいう。)、ピリチオン銅、ピリチオンマンガン、ピリチオン鉄、ピリチオンコバルトなどのピリチオン化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
上記のさらに配合してもよい各有効成分の配合量は、水中防汚塗料に対して、1重量%〜30重量%ましくは、2重量%〜10重量%である。
【0037】
有効成分を長期にわたり徐々に溶出させる溶出調整剤としては、ジ第3級ノニルペンタスルフィッド、ジ第3級ドデシルペンタスルフィッドなどのポリスルフィッド化合物、平均分子量が200〜1000のポリブテン、ワセリン、パラフィンなどがあげられる。溶出調整剤の配合量は、水中防汚塗料に対して、1重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%である。
【0038】
本発明の水中防汚塗料は、通例、塗料や溶液の形態で使用され通常の方法で容易に製造できる。たとえば、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、必要に応じて防汚有効成分の1種以上、本発明にて用いる窒素含有化合物、1種類以上の溶出調整剤、樹脂、溶剤を加えて溶解またはボールミルなどで粉砕混合すればよい。
【0039】
また、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅やロダン銅、必要に応じて防汚有効成分の1種以上、本発明にて用いる窒素含有化合物、1種類以上の溶出調整剤、樹脂、溶剤、体質含量を加えてボールミルなどで粉砕混合すればよい。
【0040】
ここで使用される溶剤としては、キシレン、ソルベントナフサ、プソイドクメン、メチルイソブチルケトン、酢酸−n−ブチルなどがあげられる。
【0041】
ここで使用される樹脂としては、アクリル、ポリブテン、塩化ゴム、塩化ビニール、アルキッド、クマロン、エチレン−酢酸ビニル樹脂などがあげられる。
【0042】
体質顔料としては、弁柄、タルク、硫酸バリウムなどがあげられる。
【0043】
【実施例】
次に本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。
【0044】
参考例1 トリフェニルボロンを骨格に持つ化合物を含有する溶液の分解性試験
【0045】
表1に示した配合により組成物を調製し、30℃において7日間撹拌した。その後、このトリフェニルボロンを骨格に持つ化合物の残存量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により定量分析し、分解率を求めた。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した結果から、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物は、亜酸化銅またはロダン銅と混合するだけで分解することがわかる。
【0048】
実施例1
表2の実施処方例1〜12記載の通りの割合で、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅またはロダン銅と、キシレンと、化合物A、B、またはC(以下に記載。)とを、配合し、組成物を調製し、表2に記載した試験温度で、表2に記載した試験時間、攪拌した。その後、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により定量分析し、分解率を求めた。同様に、比較処方例1〜6記載の配合により化合物A、B、またはCを配合しない組成物を調製し同様にして、分解率を求めた。
【0049】
化合物A、B、またはCについて、以下に示した。
【0050】
化合物A:トリルトリアゾール(シプロ化成株式会社製、商品名「SETECT.T」)
【0051】
化合物B:3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(旭電化工業株式会社製、商品名「MarkCDA−1」)
【0052】
化合物C:1,2,3−ベンゾトリアゾール(シプロ化成株式会社製、商品名「SEETEC B.T」)
【0053】
また、表中、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物の種類を、そのアミン部分の名称のみを記載した。
【0054】
すなわち、
オクタデシルアミンとの記載は、トリフェニル(オクタデシルアミン)ボロンを用いたことを示し、
ピリジンとの記載は、トリフェニル(ピリジン)ボロンを用いたことを示し、
ロジンアミンとの記載は、トリフェニル(ロジンアミン)ボロンを用いたことを示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示した結果から、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅またはロダン銅との組成物は、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を顕著に分解するが、トリルトリアゾール(化合物A)、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(化合物B)、または1,2,3−ベンゾトリアゾール(化合物C)を配合することによりほとんど分解しないことがわかる。
【0057】
実施例2
【0058】
表3に示した実施処方例1〜4、比較処方例1〜4に示した配合により漁網防汚剤を調製し、40℃において恒温槽に1ヶ月間保存した後、トリフェニルボロンを骨格に持つ化合物の残存量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により定量分析し、分解率を求めた。
【0059】
表3に示した実施処方例5〜8、比較処方例5〜8に示した配合により船底防汚塗料を調製し、同様に、40℃において恒温槽に1ヶ月間保存した後、トリフェニルボロンを骨格に持つ化合物の残存量を高速液体クロマトグラフ(HPLC)により定量分析し、分解率を求めた。
【0060】
トリルトリアゾールは実施例1に用いた化合物Aを、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾールは実施例1に用いた化合物Bを、1,2,3−ベンゾトリアゾールは実施例1に用いた化合物Cを、実施例2においても用いた。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示した結果から、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅やロダン銅とを含有する漁網防汚剤や船底防汚塗料である水中防汚塗料は大半が分解するものの、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、あるいは1,2,3−ベンゾトリアゾールを配合した水中防汚塗料は分解率が3%以下であり顕著な効果を示していることがわかる。
【0063】
実施例3
【0064】
実施例2の実施処方例1〜4、比較処方例1〜4に示した配合により漁網防汚剤を調製し、40℃の恒温槽に1ヶ月間保存した漁網防汚剤を、それぞれ、ポリエチレン製無結節網(6節、400デニール/60本)に浸漬塗布し風乾した後に、平成10年4月から高知県宿毛湾内の海面下約50cmに浸海保持し、網に対する汚損生物の付着状況を調査した結果を以下の基準により評価した。
【0065】
A:付着物なし。
B:付着物がわずかに付着しているが実用上差し支えない。
C:付着物が多く養殖用網として使用に耐えない。
D:付着物が著しく多量に付着している。
【0066】
その結果を表4に示した。
【0067】
【表4】
【0068】
表4に示した結果から、トリルトリアゾール(化合物A)、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(化合物B)、または1,2,3−ベンゾトリアゾール(化合物C)を配合した漁網防汚剤は持続性のある実用的な効果を示すが、これらを配合しない漁網防汚剤は充分な効果を示さないことが判明した。
【0069】
実施例4
【0070】
実施例2の実施処方例5〜8、比較処方例5〜8に示した配合により、船底防汚塗料を調製し、40℃の恒温槽に1ヶ月間保存した船底防汚塗料を、防錆塗料を塗布した試験鋼板に刷毛で均一に2回塗布して風乾した。得られた試験鋼板を高知県宿毛湾内の海面下1.5mの海中に平成9年7月から1年間浸海保持し、2ヶ月毎に各試験鋼板について汚損生物の付着状況を調査した。
【0071】
その結果を表5に示した。表中の数字は、水棲汚損付着生物の付着面積%を示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示した結果から、トリルトリアゾール(化合物A)、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(化合物B)、または1,2,3−ベンゾトリアゾール(化合物C)を配合した船底防汚塗料は持続性のある実用的な効果を示すが、これらを配合しない船底防汚塗料は充分な効果を示さないことが判明した。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と亜酸化銅またはロダン銅とを併用した水中防汚塗料、あるいはトリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚塗料に関して、−CONH−構造を分子内に持つ化合物および3個以上の窒素原子を持つ複素環を分子内に持つ化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を配合することにより、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物の分解抑制することができ、水中防汚剤を長期保存を図ることができるともとに、長期間の防汚効果を得ることができる。
Claims (9)
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅および/またはロダン銅とを含有する水中防汚塗料に、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚塗料。
- トリアゾール化合物が、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールである請求項1記載の水中防汚塗料。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚塗料に、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚塗料。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物が、トリフェニル(アルキルアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロン、トリフェニルボロン含有ポリマーである請求項1から3のいずれか1項記載の水中防汚塗料。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物と、亜酸化銅および/またはロダン銅とを含有する水中防汚用組成物に、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚用組成物。
- トリアゾール化合物が、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールである請求項5記載の水中防汚用組成物。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する水中防汚用組成物に、トリルトリアゾール、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、および1,2,3−ベンゾトリアゾールから選ばれる少なくとも1種の化合物を、配合することを特徴とする水中防汚用組成物。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物が、トリフェニル(アルキルアミン)ボロン、トリフェニル(ピリジン)ボロン、トリフェニル(ロジンアミン)ボロン、トリフェニルボロン含有ポリマーである請求項5から7のいずれか1項記載の水中防汚用組成物。
- トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する組成物が、亜酸化銅および/またはロダン銅と混合する場合、あるいは亜酸化銅および/またはロダン銅と接触する場合において、トリアゾール化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を、トリフェニルボロン骨格を持つ化合物を含有する組成物に配合することを特徴とするトリフェニルボロン骨格を持つ化合物の分解を防止する方法。
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