JP3569575B2 - 水中防汚塗料 - Google Patents
水中防汚塗料 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3569575B2 JP3569575B2 JP23383595A JP23383595A JP3569575B2 JP 3569575 B2 JP3569575 B2 JP 3569575B2 JP 23383595 A JP23383595 A JP 23383595A JP 23383595 A JP23383595 A JP 23383595A JP 3569575 B2 JP3569575 B2 JP 3569575B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compound
- antifouling
- paint
- general formula
- antifouling paint
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
- 0 CC=C(C)C=CC=C(*N)C(C)=C Chemical compound CC=C(C)C=CC=C(*N)C(C)=C 0.000 description 1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリフェニルボランとヒドロキシアルキルアミンとの錯体化合物を有効成分として含有し、低毒性であってしかも長期間にわたる防汚効果の持続性を有する水中防汚塗料に関する。特に本発明は船舶、養殖網、定置網、海底油田の掘削機、海底基地、ブイ、発電所の水路の設備、橋梁などのような構築物に塗装するのに用いられて、これらの構築物の水中部分の表面に付着して生育する水棲生物の付着を防止するのに好適である低毒性の水中防汚塗料に関する。したがって、本発明は、化学工業並びに造船業、魚網製造業などの分野で広く使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の水中防汚塗料が開発され、また実用されている。本発明の水中防汚塗料で防汚性有効成分として用いるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物に近似する化学構造を有する既知の化合物の例には、下記に例示した化合物が挙げられる。
【0003】
▲1▼ 米国特許第 3211679号明細書には、防汚性化合物として次の一般式
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、アミド基又はヘテロ環式基、などを示す)で表わされるトリフェニルボランと置換又は非置換ピリジン又は脂肪族アミンとの錯体化合物が記載される。
【0004】
▲2▼ 特開昭62−277307号公報には、殺虫、殺ダニ、殺線虫性化合物として次の一般式
〔式中、X,Yは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を、Zは式R1 R2 NHの化合物、又は含窒素複素環化合物(低級アルキル基で置換されてもよい)を表わす。但し、R1 ,R2 は各々が独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基(ハロゲン原子、又はメチル基で置換されてもよい)、又は複素環式基を表わす〕で示されるホウ素化合物錯体が記載されている。
【0005】
▲3▼ 特公昭39− 28579号公報には、微生物生長阻止性の化合物として、トリフェニルボラン(ただし、フェニル基はハロまたは低級アルコキシ置換基をパラ位に有していてもよい)、あるいはトリトリルボランまたはトリナフチルボランとpkb 値が約10以下のアミン化合物との錯体化合物が記載されている。
【0006】
▲4▼ 特公昭54−1571号公報には防汚性化合物として、次の一般式
(式中、Xはカリウム原子、アンモニウム基または第四級化された有機の窒素含有基を表すが、さらに前記の有機窒素含有基は窒素原子を含む複素環を形成してもよい)で示されるテトラフェニルボロン化合物錯体が記載される。
【0007】
▲5▼ 特公昭62− 25710号公報には、防汚性化合物として次の一般式
(式中、R1 は水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し、R2 はハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルケニル基を示し、R3 はヘテロ環アミンを示す)で示されるテトラアリールボロン−アンモニウム又は複素環化合物錯体が記載される。
【0008】
▲6▼ 特公昭62− 24022号公報には、水中防汚塗料の防汚性化合物として次の一般式
(式中、Rは低級アルキル基を示す)で示されるテトラフェニルボロン誘導体が記載される。
【0009】
▲7▼ 特開平7−138265号公報には、次の一般式
〔式中、X及びYはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ基などであり、m及びnはそれぞれ独立して0,1,2又は3の整数であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R1 ,R2 及びR3 はそれぞれ独立して水素、アルキル、ハロアルキル基などを示すか、又はR2 及びR3 が一緒になってR2 R3 が構造:−(CH2 )p により示される環を形成することができ、pは3又は4の整数を示す〕などで表されるジアリール(ピリジニオ及びイソキノリニオ)ホウ素化合物が記載れ、これらがリンゴ腐敗病、ぶどうべと病などに活性を有することが記載されている。
【0010】
▲8▼ 特開平7−133207号公報には、トリフェニルボロンピリジンを必須成分とする魚網具防汚剤が記載されている。
【0011】
一方、フジツボ、ホヤ、セルプラ、ムラサキガイ、カラスガイ、フサコケムシ、アオノリ、アオサなどの水棲生物は水中構築物の表面に付着し、生育して種々の被害をもたらす。例えば、船舶の船体に水棲生物が付着して生育すると、船舶の速度が低下して燃費が増大する。また水中もしくは水面に固定した港湾施設などの水中構築物に水棲生物が付着すると、これら装置の有する個々の機能が十分に発揮されにくくなる。さらに、それら水棲生物が養殖網、定置網などの漁網に付着すると、網目がつまり魚類を致死させることがあることも知られる。
【0012】
従来、水中構築物に水棲生物が付着、生育するのを防止するために水中防汚塗料では、防汚性有効成分として有機スズ化合物が多用されてきた。しかし、この有機スズ化合物は環境を汚染するため、使用禁止となっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなことから、哺乳類に対して低い毒性を示し、安全に使用できてかつ長期にわたって優れた防汚効果を持続できる新規な水中防汚塗料の開発が望まれている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記した要望に合致した水中防汚塗料を開発するため鋭意研究した。その研究に関連して広範囲の各種の化合物を種々の試験に供試し、それら化合物の生理活性を検討した。その結果、本発明者らは後記の一般式(I)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物がすぐれた防汚活性を有し且つ低毒性であることを見いだした。しかも一般式(I)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物を水中防汚塗料用の塗料基剤に配合して調製される塗料はすぐれた防汚効果を示すのみならず、防汚効果の持続性がすぐれていることを見いだした。
【0015】
従って、本発明の要旨とするところは次の一般式
(式中、Xはヒドロキシアルキル基を示し、nは1から3までの整数を示す)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物を有効成分として含有することを特徴とする、水中防汚塗料にある。
【0016】
本発明の塗料に配合される一般式(I)の錯体化合物において、Xのヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜4を含むものであり、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。これらのヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、1−エチル−2−ヒドロキシエチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基が挙げられる。
【0017】
本発明の水中防汚塗料に配合される一般式(I)の錯体化合物として有用な化合物の具体例の化合物構造を化合物No. とともに次の表1に示すが、本発明で用いる錯体化合物は、表1に示す錯体化合物に限定されるものではない。また、表1に示す化合物No. は後記の実施例および試験例でも参照される。
【0018】
【0019】
次に、本発明の塗料で用いる一般式(I)の錯体化合物の製造方法について説明する。
【0020】
一般式(I)の錯体化合物は、下記の反応式に示すように、式(II)のトリフェニルボランと一般式(III) のヒドロキシアルキルアミンとを有機溶媒中で反応させることにより製造できる。
【0021】
この反応式においてn及びXは前記と同じ意味である。
【0022】
詳しくは、式(II)のトリフェニルボランと一般式(III) のヒドロキシアルキルアミンとを、等モル比で、あるいは実質的に等モル比の割合で用い、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などの有機溶媒に溶解して、得られた溶液を、空気を排除して窒素などの不活性ガスの雰囲気下に0〜60℃で30分間から2日間攪拌することにより反応は終了して、目的の錯体化合物を生成できる。
【0023】
上記の反応に用いる溶媒としては、前記の溶媒の単独でもよいが、複数の溶媒を混合して使用してもよい。反応生成物として目的の錯体化合物が結晶として反応液中に析出した場合には、それを濾別することもできる。しかし、通常は反応液から溶媒を留去して濃縮した後、結晶を濾別し、少量の溶媒で洗浄し乾燥すると、高純度の生成物として一般式(I)のトリフェニルボラン−ヒドロキシルアルキルアミン錯体を得る。こうして得られた一般式(I)の錯体化合物は、必要に応じてさらにメタノール、エタノール、クロロホルム、トルエンなどの溶媒で再結晶化して、さらに精製することができる。
【0024】
なお、上記の製造方法で原料として用いられる式(II)のトリフェニルボランは、一般に知られている化合物であり、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体と3倍量のフェニルリチウム試薬もしくはフェニルグリニャール試薬の反応などで得られる。
また、一般式(III) のヒドロキシアルキルアミン類も公知である。
【0025】
以下に、一般式(I)の錯体化合物の代表的な化合物について合成例を参考例1〜3で説明する。
【0026】
参考例1 トリフェニルボラン−モノエタノールアミン錯体(化合物 No.1)の
合成
窒素ガスを流して酸素と水分を追い出したグローブボックス内で、トリフェニルボラン 2.42g(10ミリミル)を50mlのテトラヒドロフラン−ベンゼン(1:1)混合溶媒に溶かし、そのトリフェニルボラン溶液を 100ml容量の分液ロートに入れた。別に、温度計、攪拌機、窒素導入口をつけた 200ml容量の四つ口フラスコに、モノエタノールアミン 0.61g(10ミリモル)と上記のテトラヒドロフラン−ベンゼン混合溶媒50mlとをいれ、かきまぜて溶かした。窒素導入口より窒素ガスを流してフラスコ内を窒素ガスで置換した。攪拌しながら上記の分液ロートより10分間かけて室温でトリフェニルボラン溶液を滴下し、同温で5時間かきまぜて反応させた。
【0027】
反応終了後、有機溶媒を減圧下に留去し、白色固体を得た。この白色固体を、ジクロロメタン−n−ヘキサン(1:2)混合溶媒から再結晶させ、濾過、乾燥して、表題化合物2.89g(収率95.4%)を白色固体として得た。このものの融点は 151.5〜 153.5℃であり、それの元素分析値は次のとおりであった。
【0028】
【0029】
参考例2 トリフェニルボラン−ジエタノールアミン錯体(化合物 No.2)の合
成
トリフェニルボラン 2.42g(10ミリモル)およびジエタノールアミン 1.06g(10ミリモル)を実施例1に準じて反応させた。再結晶も実施例1と同様に実施し、白色結晶と表題化合物の3.36g(収率96.7%)を得た。これの融点は 208〜 221℃であり、またこれの元素分析値は次のとおりであった。
【0030】
【0031】
参考例3 トリフェニルボラン−トリエタノールアミン(化合物 No.3)の合成トリフェニルボラン 2.42g(10ミリモル)とトリエタノールアミン 1.49g(10ミリモル)を実施例1に準じて反応させた。再結晶も実施例1と同様に実施し、白色結晶と表題化合物の3.71g(収率94.8%)を得た。これの融点は 235〜 237℃であり、またこれの元素分析値は次のとおりであった。
【0032】
【0033】
【発明の実施の形態】
さらに、本発明の水中防汚塗料について詳説する。
本発明の防汚塗料を調製するには、防汚性有効成分として用いる一般式(I)の錯体化合物の少くとも1種を、防汚性にするべき塗料組成物に通常の手段で配合するのが適当である。このような有効成分化合物を配合する手段としては、有効成分化合物を溶解する有機溶媒に溶解するか、または適当な有機溶媒がない場合には、有効成分化合物を粉体のまま混合粉砕器、例えばアトマイザー等により機械的に均一に粉砕混合する。このように得られた有効成分化合物の溶液、あるいは有効成分化合物の粉末に対して塗料用の有機溶剤、界面活性剤、塗料用樹脂、可塑剤、顔料及びその他の所要な塗料用補助成分を添加し均一に混和することにより防汚塗料を製剤化することが可能である。
【0034】
本発明の水中防汚塗料に使用しうる塗料用樹脂は、基材表面に塗膜を形成するための塗膜形成性樹脂であって、従来の水中防汚塗料に通常用いられている樹脂と同様のものが使用できる。例えば、その樹脂としては塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−ビニルイソブチルエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、塩化ゴム系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、石油系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、合成ゴム、エポキシ系樹脂、シリコンゴム、シリコン系樹脂、テフロン系樹脂、ロジン樹脂等があげられる。
【0035】
本発明の水中防汚塗料において、一般式(I)の錯体化合物の配合量は塗料用樹脂 100重量部に対し、 0.1〜 350重量部の範囲であり、好ましくは約1〜 150重量部の範囲が適当である。
【0036】
さらに、上記の可塑剤は塗料用樹脂 100重量部あたり20重量部又はそれ以下の量で配合することが望ましい。
【0037】
本発明の水中防汚塗料には、必要に応じて着色顔料又は着色料、例えば、チタン白、ベンガラ、カーボン、シアンブルー、シアニングリーン等、または体質顔料、例えばタルク、バリタ、亜鉛華等を配合できる。さらに塗料の粘度を調整するために、水または有機溶剤を配合できる。使用する有機溶剤の種類は、前記の塗料用樹脂及びその他の配合すべき各成分を溶解もしくは分散しうるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0038】
そのような有機溶剤としては例えばアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど)、芳香族系炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン、クメン、メチルナフタレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンなど)、エーテル類(エチルエーテル、エチレンオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテート、酢酸アミルなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、アミン類(エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、イソブチルアミンなど)、脂肪族または脂環族炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサンなど)、工業用ガゾリン(石油エーテル、ソルベントナフサなど)及び石油留分(パラフィン類、灯油、軽油など)、などがあげられる。
【0039】
また、本発明の水中防汚塗料には、製剤化に当って、乳化、分散、湿潤、発泡、拡展の目的で界面活性剤を配合できる。このような界面活性剤としては、後記のものがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0040】
(a) 非イオン型界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルなど、
(b) 陰イオン型界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルフォネート、アルキルスルフォサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルフォネートなど、
(c) 陽イオン型界面活性剤、例えばアルキルアミン類としてラウリルアミン、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど、
(d) 両性型界面活性剤、例えばベタイン型化合物の硫酸エステルなど。
【0041】
また、前記の配合成分の他に、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビヤゴム、ポリビニルアセテート、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダなどの各種補助剤が本発明の防汚塗料に配合できる。
【0042】
本発明の水中防汚塗料には一般式(I)の錯体化合物の1種または2種以上を防汚性有効成分として配合するだけでも十分な防汚効果は発揮されるが、必要に応じて、従来一般に公知の防汚防カビ防藻剤、たとえばジンクジメチルジチオカーバメイト、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N′−ジメチル−N′−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジスルファイド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンク、エチレンビスジチオカーバメート、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−テトラブチル−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン及びこれらの塩類及びエステル類などの1種あるいは2種を追加して配合してもよい。
【0043】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。これらの実施例において部はすべて重量部である。
【0044】
実施例1
化合物 No.1 20部、ビニル系樹脂ワニス 30部、ロジン 5部、塩素化イソプロピレンゴム 5部、亜鉛華 10部、ベンガラ 5部、コロイド状シリカ 3部、タルク 10部、キシレン 5部、メチルイソブチルケトン 5部、n−ブチルアルコール 2部の合計 100部をボールミル中で5時間転動混合することによって分散処理し、均質な塗料を得た。
【0045】
実施例2〜8及び比較例1〜2
実施例1と同様の調製方法に従い、後記の表2に示す塗料の配合組成に従って配合成分を混合して実施例2〜8の塗料、ならびに比較のための防汚性化合物として比較化合物AまたはBを配合された比較例1〜2の塗料を調製した。
これら調製された塗料の配合組成を、実施例1の塗料を含めて、表2に要約して示す。
【0046】
【0047】
なお、表2に示される、比較化合物Aは米国特許第 3211679号明細書に防汚性化合物として記載される次式
で示されるトリフェニルボラン・ピリジン錯体(以下、「比較化合物A」という)であり、また比較化合物Bは次式
で示されるトリフェニルボラン・ピリジン錯体(以下、「比較化合物B」というである。
【0048】
実施例9
化合物 No.1 25部、ビニルブチラール樹脂 2.5部およびイソプロピルアルコール 72.5部を攪拌混合して、魚網用防汚塗料を調製した。
【0049】
なお、このように調製した塗料に対して着色剤として通常の顔料や染料、また可塑剤としてジオクチルフタレートやトリクレジルホスフェート等を追加して配合でき、このようにして作られた塗料組成物に、漁網を浸漬し、10分後取出し風乾すると、漁網が十分な防汚処理を受けた。このように処理できる漁網は、ポリエチレン繊維製やポリビニルアルコール繊維製や、ナイロン繊維製をはじめとする各種の養魚用の漁網であることができた。
【0050】
実施例 10
化合物 No.2 40部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(ユニオンカーバイド社製「YAHHタイプ」、塩化ビニル/酢酸ビニル=86/14(重量比))4部、ジオクチルフタレート 0.4部およびメチルイソブチルケトン 55.6部を攪拌混合して、漁網用防汚塗料を調製した。
【0051】
かかる塗料を用いて実施例9と同様に漁網を防汚処理することにより、防汚成分の良好な付着性および防汚性を付与することができた。
なお、実施例9および10において化合物 No.1および No.2に代えて表1に記載の各種の化合物を配合した場合にも、実施例9と同様にして漁網用の防汚塗料組成物を調製できる。
【0052】
試験例1〜8及び比較試験例1〜2
サンドブラスト処理鋼板に予め通常の防錆塗料を塗布しておき、その乾燥した塗膜の上から、実施例1〜8あるいは比較例1〜2の塗料を2回刷毛塗りして防汚塗料の乾燥塗料膜厚が約 100μmになるようにした試験板(100mm×300mm)を作った。このようにして得た試験板を神奈川県三浦市油壺湾内において深度 1.5mの海中に24か月間浸漬し、下記の表3に示した期間の各月ごとに水棲生物の付着面積を測定した。そして下記の計算式により防汚効果を百分率(%)で示した。その試験結果を表3に示した。
【0053】
【0054】
表3の結果から明らかなように、本発明による防汚性有効成分として各種の錯体化合物(I)を配合された実施例1〜8の塗料を塗布された試験板は、浸漬18か月目でも防汚効果の率が95〜 100%台を維持しており、24か月目でも大部分が95〜 100%台であった。これに比べて、本発明によらない防汚性化合物を配合された比較例1〜2の塗料を塗布された比較の試験板は浸漬12か月目ですでに防汚効果の率が80〜90%台に低下した。
【0055】
試験例9 漁網防汚試験
実施例10で調製した漁網防汚用塗料を塗着して処理したポリエチレン製漁網をそれぞれ、神奈川県油壺湾内の海面下2m以内の海中に懸垂せしめ、1か月〜6か月にわたる水棲生物の付着程度を調べた。その結果を次の表4に示す。なお、比較のため、塗料を塗着されなかった未処理の漁網で得た結果も併記する。
【0056】
表4に示す生物の付着程度の評価基準は以下の通りである。
【0057】
0:水棲生物の付着なし
0.5: 〃 10%程度
1: 〃 20% 〃
2: 〃 40% 〃
3: 〃 60% 〃
4: 〃 80% 〃
5: 〃 100% 〃
【0058】
【0059】
上記の表4の結果から、表1の化合物 No.1〜 No.8の錯体化合物を有効成分とした防汚用塗料を塗着された漁網はほゞ6か月以上の防汚効果を示すことが認められた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の水中防汚塗料は、これを水中構築物に塗着することにより、水棲生物のフジツボ、ホヤ、セルプラ、ムラサキガイ、カラスガイ、フサコケムシ、アオノリ、アオサ等の付着を長期間に亘って防止できて優れた防汚効果を発揮することができる。そして、本発明の防汚塗料の防汚効果とそれの持続期間は、従来多用される防汚性有効成分化合物を配合された塗料を使用をする場合をはるかに上まわるものである。また本発明の防汚塗料に配合される防汚性の有効成分である一般式(I)の錯体化合物は人畜、魚介類に対して低毒性であり本発明の防汚塗料は安全に使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリフェニルボランとヒドロキシアルキルアミンとの錯体化合物を有効成分として含有し、低毒性であってしかも長期間にわたる防汚効果の持続性を有する水中防汚塗料に関する。特に本発明は船舶、養殖網、定置網、海底油田の掘削機、海底基地、ブイ、発電所の水路の設備、橋梁などのような構築物に塗装するのに用いられて、これらの構築物の水中部分の表面に付着して生育する水棲生物の付着を防止するのに好適である低毒性の水中防汚塗料に関する。したがって、本発明は、化学工業並びに造船業、魚網製造業などの分野で広く使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の水中防汚塗料が開発され、また実用されている。本発明の水中防汚塗料で防汚性有効成分として用いるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物に近似する化学構造を有する既知の化合物の例には、下記に例示した化合物が挙げられる。
【0003】
▲1▼ 米国特許第 3211679号明細書には、防汚性化合物として次の一般式
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、アミド基又はヘテロ環式基、などを示す)で表わされるトリフェニルボランと置換又は非置換ピリジン又は脂肪族アミンとの錯体化合物が記載される。
【0004】
▲2▼ 特開昭62−277307号公報には、殺虫、殺ダニ、殺線虫性化合物として次の一般式
〔式中、X,Yは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基を、Zは式R1 R2 NHの化合物、又は含窒素複素環化合物(低級アルキル基で置換されてもよい)を表わす。但し、R1 ,R2 は各々が独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基(ハロゲン原子、又はメチル基で置換されてもよい)、又は複素環式基を表わす〕で示されるホウ素化合物錯体が記載されている。
【0005】
▲3▼ 特公昭39− 28579号公報には、微生物生長阻止性の化合物として、トリフェニルボラン(ただし、フェニル基はハロまたは低級アルコキシ置換基をパラ位に有していてもよい)、あるいはトリトリルボランまたはトリナフチルボランとpkb 値が約10以下のアミン化合物との錯体化合物が記載されている。
【0006】
▲4▼ 特公昭54−1571号公報には防汚性化合物として、次の一般式
(式中、Xはカリウム原子、アンモニウム基または第四級化された有機の窒素含有基を表すが、さらに前記の有機窒素含有基は窒素原子を含む複素環を形成してもよい)で示されるテトラフェニルボロン化合物錯体が記載される。
【0007】
▲5▼ 特公昭62− 25710号公報には、防汚性化合物として次の一般式
(式中、R1 は水素原子、ハロゲン原子または低級アルキル基を示し、R2 はハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルケニル基を示し、R3 はヘテロ環アミンを示す)で示されるテトラアリールボロン−アンモニウム又は複素環化合物錯体が記載される。
【0008】
▲6▼ 特公昭62− 24022号公報には、水中防汚塗料の防汚性化合物として次の一般式
(式中、Rは低級アルキル基を示す)で示されるテトラフェニルボロン誘導体が記載される。
【0009】
▲7▼ 特開平7−138265号公報には、次の一般式
〔式中、X及びYはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ基などであり、m及びnはそれぞれ独立して0,1,2又は3の整数であり、Rはアルキル、アルコキシ、ハロゲン又はヒドロキシ基であり、R1 ,R2 及びR3 はそれぞれ独立して水素、アルキル、ハロアルキル基などを示すか、又はR2 及びR3 が一緒になってR2 R3 が構造:−(CH2 )p により示される環を形成することができ、pは3又は4の整数を示す〕などで表されるジアリール(ピリジニオ及びイソキノリニオ)ホウ素化合物が記載れ、これらがリンゴ腐敗病、ぶどうべと病などに活性を有することが記載されている。
【0010】
▲8▼ 特開平7−133207号公報には、トリフェニルボロンピリジンを必須成分とする魚網具防汚剤が記載されている。
【0011】
一方、フジツボ、ホヤ、セルプラ、ムラサキガイ、カラスガイ、フサコケムシ、アオノリ、アオサなどの水棲生物は水中構築物の表面に付着し、生育して種々の被害をもたらす。例えば、船舶の船体に水棲生物が付着して生育すると、船舶の速度が低下して燃費が増大する。また水中もしくは水面に固定した港湾施設などの水中構築物に水棲生物が付着すると、これら装置の有する個々の機能が十分に発揮されにくくなる。さらに、それら水棲生物が養殖網、定置網などの漁網に付着すると、網目がつまり魚類を致死させることがあることも知られる。
【0012】
従来、水中構築物に水棲生物が付着、生育するのを防止するために水中防汚塗料では、防汚性有効成分として有機スズ化合物が多用されてきた。しかし、この有機スズ化合物は環境を汚染するため、使用禁止となっている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなことから、哺乳類に対して低い毒性を示し、安全に使用できてかつ長期にわたって優れた防汚効果を持続できる新規な水中防汚塗料の開発が望まれている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記した要望に合致した水中防汚塗料を開発するため鋭意研究した。その研究に関連して広範囲の各種の化合物を種々の試験に供試し、それら化合物の生理活性を検討した。その結果、本発明者らは後記の一般式(I)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物がすぐれた防汚活性を有し且つ低毒性であることを見いだした。しかも一般式(I)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物を水中防汚塗料用の塗料基剤に配合して調製される塗料はすぐれた防汚効果を示すのみならず、防汚効果の持続性がすぐれていることを見いだした。
【0015】
従って、本発明の要旨とするところは次の一般式
(式中、Xはヒドロキシアルキル基を示し、nは1から3までの整数を示す)で表されるトリフェニルボランとヒドロキシルアルキルアミンとの錯体化合物を有効成分として含有することを特徴とする、水中防汚塗料にある。
【0016】
本発明の塗料に配合される一般式(I)の錯体化合物において、Xのヒドロキシアルキル基は、炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜4を含むものであり、直鎖状もしくは分岐鎖状であってもよい。これらのヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−メチル−2−ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基、1−エチル−2−ヒドロキシエチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基が挙げられる。
【0017】
本発明の水中防汚塗料に配合される一般式(I)の錯体化合物として有用な化合物の具体例の化合物構造を化合物No. とともに次の表1に示すが、本発明で用いる錯体化合物は、表1に示す錯体化合物に限定されるものではない。また、表1に示す化合物No. は後記の実施例および試験例でも参照される。
【0018】
【0019】
次に、本発明の塗料で用いる一般式(I)の錯体化合物の製造方法について説明する。
【0020】
一般式(I)の錯体化合物は、下記の反応式に示すように、式(II)のトリフェニルボランと一般式(III) のヒドロキシアルキルアミンとを有機溶媒中で反応させることにより製造できる。
【0021】
この反応式においてn及びXは前記と同じ意味である。
【0022】
詳しくは、式(II)のトリフェニルボランと一般式(III) のヒドロキシアルキルアミンとを、等モル比で、あるいは実質的に等モル比の割合で用い、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール、アセトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などの有機溶媒に溶解して、得られた溶液を、空気を排除して窒素などの不活性ガスの雰囲気下に0〜60℃で30分間から2日間攪拌することにより反応は終了して、目的の錯体化合物を生成できる。
【0023】
上記の反応に用いる溶媒としては、前記の溶媒の単独でもよいが、複数の溶媒を混合して使用してもよい。反応生成物として目的の錯体化合物が結晶として反応液中に析出した場合には、それを濾別することもできる。しかし、通常は反応液から溶媒を留去して濃縮した後、結晶を濾別し、少量の溶媒で洗浄し乾燥すると、高純度の生成物として一般式(I)のトリフェニルボラン−ヒドロキシルアルキルアミン錯体を得る。こうして得られた一般式(I)の錯体化合物は、必要に応じてさらにメタノール、エタノール、クロロホルム、トルエンなどの溶媒で再結晶化して、さらに精製することができる。
【0024】
なお、上記の製造方法で原料として用いられる式(II)のトリフェニルボランは、一般に知られている化合物であり、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体と3倍量のフェニルリチウム試薬もしくはフェニルグリニャール試薬の反応などで得られる。
また、一般式(III) のヒドロキシアルキルアミン類も公知である。
【0025】
以下に、一般式(I)の錯体化合物の代表的な化合物について合成例を参考例1〜3で説明する。
【0026】
参考例1 トリフェニルボラン−モノエタノールアミン錯体(化合物 No.1)の
合成
窒素ガスを流して酸素と水分を追い出したグローブボックス内で、トリフェニルボラン 2.42g(10ミリミル)を50mlのテトラヒドロフラン−ベンゼン(1:1)混合溶媒に溶かし、そのトリフェニルボラン溶液を 100ml容量の分液ロートに入れた。別に、温度計、攪拌機、窒素導入口をつけた 200ml容量の四つ口フラスコに、モノエタノールアミン 0.61g(10ミリモル)と上記のテトラヒドロフラン−ベンゼン混合溶媒50mlとをいれ、かきまぜて溶かした。窒素導入口より窒素ガスを流してフラスコ内を窒素ガスで置換した。攪拌しながら上記の分液ロートより10分間かけて室温でトリフェニルボラン溶液を滴下し、同温で5時間かきまぜて反応させた。
【0027】
反応終了後、有機溶媒を減圧下に留去し、白色固体を得た。この白色固体を、ジクロロメタン−n−ヘキサン(1:2)混合溶媒から再結晶させ、濾過、乾燥して、表題化合物2.89g(収率95.4%)を白色固体として得た。このものの融点は 151.5〜 153.5℃であり、それの元素分析値は次のとおりであった。
【0028】
【0029】
参考例2 トリフェニルボラン−ジエタノールアミン錯体(化合物 No.2)の合
成
トリフェニルボラン 2.42g(10ミリモル)およびジエタノールアミン 1.06g(10ミリモル)を実施例1に準じて反応させた。再結晶も実施例1と同様に実施し、白色結晶と表題化合物の3.36g(収率96.7%)を得た。これの融点は 208〜 221℃であり、またこれの元素分析値は次のとおりであった。
【0030】
【0031】
参考例3 トリフェニルボラン−トリエタノールアミン(化合物 No.3)の合成トリフェニルボラン 2.42g(10ミリモル)とトリエタノールアミン 1.49g(10ミリモル)を実施例1に準じて反応させた。再結晶も実施例1と同様に実施し、白色結晶と表題化合物の3.71g(収率94.8%)を得た。これの融点は 235〜 237℃であり、またこれの元素分析値は次のとおりであった。
【0032】
【0033】
【発明の実施の形態】
さらに、本発明の水中防汚塗料について詳説する。
本発明の防汚塗料を調製するには、防汚性有効成分として用いる一般式(I)の錯体化合物の少くとも1種を、防汚性にするべき塗料組成物に通常の手段で配合するのが適当である。このような有効成分化合物を配合する手段としては、有効成分化合物を溶解する有機溶媒に溶解するか、または適当な有機溶媒がない場合には、有効成分化合物を粉体のまま混合粉砕器、例えばアトマイザー等により機械的に均一に粉砕混合する。このように得られた有効成分化合物の溶液、あるいは有効成分化合物の粉末に対して塗料用の有機溶剤、界面活性剤、塗料用樹脂、可塑剤、顔料及びその他の所要な塗料用補助成分を添加し均一に混和することにより防汚塗料を製剤化することが可能である。
【0034】
本発明の水中防汚塗料に使用しうる塗料用樹脂は、基材表面に塗膜を形成するための塗膜形成性樹脂であって、従来の水中防汚塗料に通常用いられている樹脂と同様のものが使用できる。例えば、その樹脂としては塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−ビニルイソブチルエーテル共重合体、スチレン−ブタジエン系共重合体、塩化ゴム系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、石油系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、合成ゴム、エポキシ系樹脂、シリコンゴム、シリコン系樹脂、テフロン系樹脂、ロジン樹脂等があげられる。
【0035】
本発明の水中防汚塗料において、一般式(I)の錯体化合物の配合量は塗料用樹脂 100重量部に対し、 0.1〜 350重量部の範囲であり、好ましくは約1〜 150重量部の範囲が適当である。
【0036】
さらに、上記の可塑剤は塗料用樹脂 100重量部あたり20重量部又はそれ以下の量で配合することが望ましい。
【0037】
本発明の水中防汚塗料には、必要に応じて着色顔料又は着色料、例えば、チタン白、ベンガラ、カーボン、シアンブルー、シアニングリーン等、または体質顔料、例えばタルク、バリタ、亜鉛華等を配合できる。さらに塗料の粘度を調整するために、水または有機溶剤を配合できる。使用する有機溶剤の種類は、前記の塗料用樹脂及びその他の配合すべき各成分を溶解もしくは分散しうるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0038】
そのような有機溶剤としては例えばアルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコールなど)、芳香族系炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロルベンゼン、クメン、メチルナフタレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンなど)、エーテル類(エチルエーテル、エチレンオキシド、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールアセテート、酢酸アミルなど)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)、アミン類(エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、イソブチルアミンなど)、脂肪族または脂環族炭化水素類(n−ヘキサン、シクロヘキサンなど)、工業用ガゾリン(石油エーテル、ソルベントナフサなど)及び石油留分(パラフィン類、灯油、軽油など)、などがあげられる。
【0039】
また、本発明の水中防汚塗料には、製剤化に当って、乳化、分散、湿潤、発泡、拡展の目的で界面活性剤を配合できる。このような界面活性剤としては、後記のものがあげられるが、これらの例示のみに限定されるものではない。
【0040】
(a) 非イオン型界面活性剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステルなど、
(b) 陰イオン型界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルフォネート、アルキルスルフォサクシネート、アルキルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート、アリールスルフォネートなど、
(c) 陽イオン型界面活性剤、例えばアルキルアミン類としてラウリルアミン、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど、
(d) 両性型界面活性剤、例えばベタイン型化合物の硫酸エステルなど。
【0041】
また、前記の配合成分の他に、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アラビヤゴム、ポリビニルアセテート、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダなどの各種補助剤が本発明の防汚塗料に配合できる。
【0042】
本発明の水中防汚塗料には一般式(I)の錯体化合物の1種または2種以上を防汚性有効成分として配合するだけでも十分な防汚効果は発揮されるが、必要に応じて、従来一般に公知の防汚防カビ防藻剤、たとえばジンクジメチルジチオカーバメイト、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)イソチアゾリン、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N′−ジメチル−N′−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、テトラメチルチウラムジスルファイド、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチルパラトリルスルホン、ビスジメチルジチオカルバモイルジンク、エチレンビスジチオカーバメート、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−テトラブチル−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン及びこれらの塩類及びエステル類などの1種あるいは2種を追加して配合してもよい。
【0043】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。これらの実施例において部はすべて重量部である。
【0044】
実施例1
化合物 No.1 20部、ビニル系樹脂ワニス 30部、ロジン 5部、塩素化イソプロピレンゴム 5部、亜鉛華 10部、ベンガラ 5部、コロイド状シリカ 3部、タルク 10部、キシレン 5部、メチルイソブチルケトン 5部、n−ブチルアルコール 2部の合計 100部をボールミル中で5時間転動混合することによって分散処理し、均質な塗料を得た。
【0045】
実施例2〜8及び比較例1〜2
実施例1と同様の調製方法に従い、後記の表2に示す塗料の配合組成に従って配合成分を混合して実施例2〜8の塗料、ならびに比較のための防汚性化合物として比較化合物AまたはBを配合された比較例1〜2の塗料を調製した。
これら調製された塗料の配合組成を、実施例1の塗料を含めて、表2に要約して示す。
【0046】
【0047】
なお、表2に示される、比較化合物Aは米国特許第 3211679号明細書に防汚性化合物として記載される次式
で示されるトリフェニルボラン・ピリジン錯体(以下、「比較化合物A」という)であり、また比較化合物Bは次式
で示されるトリフェニルボラン・ピリジン錯体(以下、「比較化合物B」というである。
【0048】
実施例9
化合物 No.1 25部、ビニルブチラール樹脂 2.5部およびイソプロピルアルコール 72.5部を攪拌混合して、魚網用防汚塗料を調製した。
【0049】
なお、このように調製した塗料に対して着色剤として通常の顔料や染料、また可塑剤としてジオクチルフタレートやトリクレジルホスフェート等を追加して配合でき、このようにして作られた塗料組成物に、漁網を浸漬し、10分後取出し風乾すると、漁網が十分な防汚処理を受けた。このように処理できる漁網は、ポリエチレン繊維製やポリビニルアルコール繊維製や、ナイロン繊維製をはじめとする各種の養魚用の漁網であることができた。
【0050】
実施例 10
化合物 No.2 40部、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(ユニオンカーバイド社製「YAHHタイプ」、塩化ビニル/酢酸ビニル=86/14(重量比))4部、ジオクチルフタレート 0.4部およびメチルイソブチルケトン 55.6部を攪拌混合して、漁網用防汚塗料を調製した。
【0051】
かかる塗料を用いて実施例9と同様に漁網を防汚処理することにより、防汚成分の良好な付着性および防汚性を付与することができた。
なお、実施例9および10において化合物 No.1および No.2に代えて表1に記載の各種の化合物を配合した場合にも、実施例9と同様にして漁網用の防汚塗料組成物を調製できる。
【0052】
試験例1〜8及び比較試験例1〜2
サンドブラスト処理鋼板に予め通常の防錆塗料を塗布しておき、その乾燥した塗膜の上から、実施例1〜8あるいは比較例1〜2の塗料を2回刷毛塗りして防汚塗料の乾燥塗料膜厚が約 100μmになるようにした試験板(100mm×300mm)を作った。このようにして得た試験板を神奈川県三浦市油壺湾内において深度 1.5mの海中に24か月間浸漬し、下記の表3に示した期間の各月ごとに水棲生物の付着面積を測定した。そして下記の計算式により防汚効果を百分率(%)で示した。その試験結果を表3に示した。
【0053】
【0054】
表3の結果から明らかなように、本発明による防汚性有効成分として各種の錯体化合物(I)を配合された実施例1〜8の塗料を塗布された試験板は、浸漬18か月目でも防汚効果の率が95〜 100%台を維持しており、24か月目でも大部分が95〜 100%台であった。これに比べて、本発明によらない防汚性化合物を配合された比較例1〜2の塗料を塗布された比較の試験板は浸漬12か月目ですでに防汚効果の率が80〜90%台に低下した。
【0055】
試験例9 漁網防汚試験
実施例10で調製した漁網防汚用塗料を塗着して処理したポリエチレン製漁網をそれぞれ、神奈川県油壺湾内の海面下2m以内の海中に懸垂せしめ、1か月〜6か月にわたる水棲生物の付着程度を調べた。その結果を次の表4に示す。なお、比較のため、塗料を塗着されなかった未処理の漁網で得た結果も併記する。
【0056】
表4に示す生物の付着程度の評価基準は以下の通りである。
【0057】
0:水棲生物の付着なし
0.5: 〃 10%程度
1: 〃 20% 〃
2: 〃 40% 〃
3: 〃 60% 〃
4: 〃 80% 〃
5: 〃 100% 〃
【0058】
【0059】
上記の表4の結果から、表1の化合物 No.1〜 No.8の錯体化合物を有効成分とした防汚用塗料を塗着された漁網はほゞ6か月以上の防汚効果を示すことが認められた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の水中防汚塗料は、これを水中構築物に塗着することにより、水棲生物のフジツボ、ホヤ、セルプラ、ムラサキガイ、カラスガイ、フサコケムシ、アオノリ、アオサ等の付着を長期間に亘って防止できて優れた防汚効果を発揮することができる。そして、本発明の防汚塗料の防汚効果とそれの持続期間は、従来多用される防汚性有効成分化合物を配合された塗料を使用をする場合をはるかに上まわるものである。また本発明の防汚塗料に配合される防汚性の有効成分である一般式(I)の錯体化合物は人畜、魚介類に対して低毒性であり本発明の防汚塗料は安全に使用できる。
Claims (1)
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23383595A JP3569575B2 (ja) | 1995-09-12 | 1995-09-12 | 水中防汚塗料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23383595A JP3569575B2 (ja) | 1995-09-12 | 1995-09-12 | 水中防汚塗料 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0978007A JPH0978007A (ja) | 1997-03-25 |
JP3569575B2 true JP3569575B2 (ja) | 2004-09-22 |
Family
ID=16961318
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23383595A Expired - Fee Related JP3569575B2 (ja) | 1995-09-12 | 1995-09-12 | 水中防汚塗料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3569575B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1997027254A1 (fr) * | 1996-01-26 | 1997-07-31 | Yoshitomi Fine Chemicals, Ltd. | Produit d'addition triphenylborane-colophane amine et son utilisation |
JP4106393B2 (ja) * | 1997-10-31 | 2008-06-25 | 株式会社片山化学工業研究所 | 工業用殺菌剤および工業的殺菌方法 |
EP2006336A1 (en) | 2007-06-21 | 2008-12-24 | SigmaKalon B.V. | Antifouling coating, resin composition and methods of production thereof |
EP2199349A1 (en) | 2008-12-19 | 2010-06-23 | Ppg B.V. | Resin composition, antifouling coating comprising barnacle antifoulant and processes of production thereof |
-
1995
- 1995-09-12 JP JP23383595A patent/JP3569575B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0978007A (ja) | 1997-03-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3404558B2 (ja) | 水中付着生物防汚剤 | |
JP3569575B2 (ja) | 水中防汚塗料 | |
JP2873141B2 (ja) | 水中防汚塗料組成物 | |
AU771014B2 (en) | Rosin amine anti-fouling agents | |
JP4380822B2 (ja) | トリフェニルボロン化合物と有機窒素化合物を含有する水中防汚塗料 | |
JPH09323909A (ja) | 有害水中生物防除剤、水中防汚塗料および漁網処理剤 | |
JP2000143672A (ja) | トリフェニル(アルキレンジアミン)ボロン含有水中防汚塗料 | |
JPH08295829A (ja) | 水中防汚塗料 | |
JP2000290317A (ja) | アンモニウム−テトラアリールボレート系重合体、その製造方法、およびそれを含有する水中防汚剤 | |
KR19990081985A (ko) | 트리페닐보란-로진 아민 부가 화합물 및 이의 용도 | |
JP2899093B2 (ja) | 水中生物付着防止剤 | |
JP2000297118A (ja) | トリアリールボラン−ヘテロ環状アミン化合物、トリアリールボラン−ヘテロ環状アミン系(共)重合体とその製造方法、およびこれらの用途 | |
JP2000143673A (ja) | トリアリ―ルボラン―アミン化合物、トリアリ―ルボラン―アミン系(共)重合体およびこれらを有効成分とする水中防汚剤 | |
JP2000226394A (ja) | アンモニウム−テトラアリールボレート化合物およびそれを含有する水中防汚剤 | |
JP4037772B2 (ja) | 安定性が改良された(4−イソプロピルピリジニオ)メチルジフェニルボロン含有組成物 | |
JPH1192307A (ja) | 防汚剤 | |
JPH0525408A (ja) | 水中防汚塗料組成物 | |
JP4338023B2 (ja) | イソチオシアネート系水中生物付着防止剤および生物付着防止塗料 | |
JP3241107B2 (ja) | 安定な水中防汚剤 | |
CA2216765A1 (en) | Halopropargyl compounds as marine antifouling agents | |
JP2002356475A (ja) | 新規なトリフェニル(アルキレンジアミン)ボロンとピリチオンとの付加塩及びその用途 | |
JPH0820508A (ja) | 漁網防汚剤 | |
JPS6058885B2 (ja) | 水中生物忌避剤 | |
JP2840965B2 (ja) | 漁網防汚剤 | |
JPH06128508A (ja) | 海棲生物付着防止塗料 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040514 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040525 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040621 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |