ところで、特許文献1のペダル支持構造の場合、前面衝突時に、ワイヤ部材を、車体側部材であるカウルパネル側に引き込むことで、第二ブラケットを車両後方側に引っ張り、ペダル踏面の後方移動を抑制している。
このため、ワイヤ部材を、前面衝突時に車体側部材側に十分に引き込むことができない場合には、所望のペダル挙動が得られないおそれがある。
すなわち、車両前方側から斜め上方に突き上げるような衝突荷重が入力された場合には、ダッシュパネルも含め第一ブラケット、第二ブラケットが車両後方斜め上方側に移動して、車体側部材であるカウルパネル側に移動(近接)するため、第一ブラケットのワイヤガイド部とカウルパネルの相対距離が、衝突前後でほとんど変化せず、衝突時に相対距離が大きくなることを前提に、ワイヤ部材を車体側部材側に引き込むように構成している特許文献1のペダル支持構造では、ワイヤ部材を、車体側部材側に十分に引き込むことができず、所望のペダル挙動が得られないおそれが生じるのである。
そこで、この発明は、車両のペダル支持構造において、車両前方側から斜め上方に突き上げるような衝突荷重が入力される前面衝突時に、確実に第一ブラケットのワイヤガイド部と車体側部材との相対距離が大きくなるように構成して、ペダル踏面の後方移動を確実に抑制することができる車両のペダル支持構造を提供することを目的とする。
この発明の車両のペダル支持構造は、車両のダッシュパネル後方に配設する操作ペダルの支持構造であって、前端を前記ダッシュパネルに固定して、後端を前面衝突時ダッシュパネルに比較して後退量の小さい車体側部材に離脱可能に締結した第一ブラケットと、前端下部を該第一ブラケットに揺動自在に枢着するとともに後端上部を前記車体側部材に離脱可能に締結し、操作ペダルを揺動可能に枢着する第二ブラケットと、一端を前記車体側部材に係止して他端を前記第一ブラケットの後端に設けたワイヤガイド部を経由して前記第二ブラケットに係止し、前面衝突時には、第一ブラケットの後方移動により第二ブラケットの後端を第一ブラケットとの枢着点を中心として後下方へ回動させ、前記操作ペダル上部を上下方向略中央に設けた支点を中心として後下方に回動させるワイヤ部材と、前面衝突時に前記第一ブラケットが前記車体側部材から離脱後、第一ブラケットのワイヤガイド部の車両上方への移動を規制する上方移動規制手段とを設けたものである。
上記構成によれば、前面衝突時に、第一ブラケットと第二ブラケットは、共に車体側部材から離脱して車両後方側に移動する。この後方移動の際に、上方移動規制手段が、第一ブラケットのワイヤガイド部の上方移動を規制する。そして、後方移動が進行すると、車体側部材に一端を係止したワイヤ部材が、上方移動の規制されたワイヤガイド部を経由して、確実に他端に係止した第二ブラケットを、後方側に引き込んで後下方へ回動させ、操作ペダル上部を略中央に設けた支点を中心として後下方に回動させることになる。
このように、第一ブラケットのワイヤガイド部は、上方移動規制手段によって車両上方側へ移動が規制されるため、車両前方側から斜め上方に突き上げるような衝突荷重が入力された場合でも、確実に車両後方側に移動して、車体側部材との相対距離を大きくすることができる。
すなわち、上方移動規制手段によって、第一ブラケットのワイヤガイド部の上方移動を規制することで、確実に前面衝突時の第一ブラケットのワイヤガイド部と車体側部材との相対距離を大きくできるのである。
なお、この上方移動規制手段は、第一ブラケットのワイヤガイド部の車両上方への移動が規制できれば、ワイヤガイド部をそのまま水平方向又は下方に移動させるものであってもよい。
また、上方移動規制手段の具体的形態としては、例えば、第一ブラケットの後方移動軌跡を規定する当接面を有するブラケット部材、ワイヤガイド部を前面衝突時に車両下方側に引き込むように構成したワイヤ部材、又はリンク部材等であってもよい。
さらに、適用される操作ペダルについても、吊下げ式の操作ペダルであれば、ブレーキペダルのほか、クラッチペダル、パーキングブレーキペダル等であってもよい。
この発明の一実施態様においては、前記上方移動規制手段を、前記第一ブラケットに設けた、前記車体側部材と干渉するように上方へ突出する突出部材で構成したものである。
上記構成によれば、第一ブラケットに設けた、車体側部材と干渉するように上方へ突出する突出部材で、第一ブラケットのワイヤガイド部の上方への移動を規制することになる。
このため、第一ブラケットが前面衝突時に、車両側部材側のどの位置に後方移動しても、突出部材は、必ず車体側部材に干渉することができる。
よって、より確実に第一ブラケットのワイヤガイド部の上方移動を規制して、ペダル踏面の後方移動を抑制することができる。
この発明の一実施態様においては、前記上方移動規制手段を、前記第一ブラケットが所定量後方移動したときに前記車体側部材と干渉するように設定したものである。
上記構成によれば、第一ブラケットが所定量後方移動したときに、初めて上方移動規制手段が車体側部材と干渉することになる。
このため、上方移動規制手段は、衝突初期には車体側部材と干渉しないため、衝突初期の第一ブラケットの車体側部材からの離脱を、上方移動規制手段が阻害することなく、確実に行わせることができる。
よって、第一ブラケットの離脱によって始まる一連のペダル挙動を阻害することなく、確実に第一ブラケットの上方移動を規制することができる。
なお、この所定量は、第一ブラケットの車体側部材からの離脱を阻害しない程度の量であればよく、特に限定されるものではない。
この発明の一実施態様においては、前記上方移動規制手段を、前記第一ブラケットの後方移動量が大きいほど、第一ブラケットを大きく下方へ移動させるように設定したものである。
上記構成によれば、第一ブラケットの後方移動量が大きいほど、第一ブラケットが大きく下方へ移動することになる。
このため、大きな衝突であればある程、第一ブラケットを大きく下方へ移動させて、操作ペダルを大きく後下方に回動させることができる。
よって、大きな衝突の場合には、より操作ペダルの回動挙動を増進させることで、さらにペダル踏面の後方移動を抑制することができる。
この発明の一実施態様においては、前記上方移動規制手段を、第一ブラケットの上方移動を規制するように前記車体側部材に設けた規制部材で構成したものである。
上記構成によれば、車体側部材に設けた規制部材で第一ブラケットの上方移動を規制して、第一ブラケットのワイヤガイド部の上方移動を規制することになる。
このため、第一ブラケット側には、さほど大きな上方移動規制手段を設ける必要がなく、第一ブラケット側の移動体を軽量に構成することができる。
よって、第一ブラケットの挙動をコントロールしやすくなり、一連のペダル挙動をスムーズに行わせることができる。
この発明の一実施態様においては、前記規制部材に車両前後方向に延びるガイド溝を形成し、前記突出部材に該ガイド溝に係合する係合部を形成して、第一ブラケットの車幅方向の移動を規制したものである。
上記構成によれば、規制部材に形成した車両前後方向に延びるガイド溝に、突出部材に形成した係合部を衝突時に係合させることで、第一ブラケットの車幅方向の移動を規制することになる。
このため、例えば、車両の前面オフセット衝突等、斜め前方から衝突荷重が入力した場合でも、第一ブラケットは、傾斜することなく車両の後方に向かって確実に後方移動する。
よって、車両前方の衝突に対し、広い範囲において確実に上方移動規制手段の効果を得ることができる。
この発明によれば、上方移動規制手段によって第一ブラケットのワイヤガイド部の上方への移動を規制することで、確実に前面衝突時の第一ブラケットのワイヤガイド部と車体側部材との相対距離を大きくできる。
したがって、車両のペダル支持構造において、車両前方側から斜め上方に突き上げるような衝突荷重が入力される前面衝突時に、確実に第一ブラケットのワイヤガイド部と車体側部材との相対距離を大きくすることができ、ペダル踏面の後方移動を確実に抑制することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
まず、図1〜図3で本実施形態の車両のペダル支持構造の全体構造について説明する。図1は操作ペダルとしてのブレーキペダル1の支持構造の全体図、図2はこの支持構造をカウルパネル2下方から見た要部斜視図、図3は図1のA−A線矢視断面図である。
本実施形態のブレーキペダル1の支持構造は、図1に示すように、エンジンルームEと車室Cを仕切るダッシュパネル3の車両後方側(車室C側)に配置しており、ダッシュパネル3とその上方の車体側部材としてのカウルパネル2との間に締結固定している。
ダッシュパネル3のエンジンルームE側には、ブレーキ装置のマスターバッグ4を装着し、このマスターバッグ4の装着位置に対応する車室C側に、第一ブラケット10、第二ブラケット20等からなる支持構造によってブレーキペダル1を吊下げ支持している。なお、5はダッシュパネル3の車室C側面に接合した車幅方向に延びるダッシュクロスメンバーである。
前述の第一ブラケット10は、ダッシュパネル3後面にボルト部材6,6により固定した略板状の固定部11と、この固定部11から車両後側上方に向かって延びかつ下側を開放する断面略コ字形状の支持部12とを備えている。また、この支持部12の後端上部には後述のワイヤ部材30を挿通するガイド穴13aを後端に穿設したワイヤガイド部13を接合している。
この第一ブラケット10は、前述のように前端をダッシュパネル3にボルト部材6,6で強固に締結固定し、後部上端を取付けブラケット40を介してカウルパネル2に締結固定している。このうち、後部上端の取付けブラケット40の締結固定は、前面衝突の際、前方から所定値以上の荷重を受けた場合には、第一ブラケット10が取付けブラケット40から離脱する離脱構造を採用している。なお、この離脱構造の詳細は後述する。
前述の第二ブラケット20は、第一ブラケット10の支持部12と同様に下側を開放した断面コ字形状の側面視略矩形形状のブラケット部材で構成している。
この第二ブラケット20は、前端下部を、第一ブラケット10の前端下部で車幅方向に延びるかしめピン14によって車両前後方向に揺動可能に枢着固定し、後端上部を、第一ブラケット10と共に取付けブラケット40を介してカウルパネル2に締結固定している。また、この後部上端の締結固定も、前面衝突の際、前方から所定値以上の荷重を受けた場合には、取付けブラケット40から離脱する離脱構造を採用している。
この第二ブラケット20は、第一ブラケット10の支持部12内において、車両側面視でこの支持部12と略重なる位置で締結固定している。
また、第二ブラケット20内には、車幅方向に延びるペダル支持軸21を掛け渡し、このペダル支持軸21で、ブレーキペダル1を車両前後方向に揺動可能に吊下げ支持している。
前述のブレーキペダル1は、車両上下方向に延びるペダル本体1aと、その上端に設けた軸支穴1bと、その下端に設けたペダル踏面1cと、ペダル本体1aの上下方向中央に設けたプッシュロッド連結部1dとを備えている。
このブレーキペダル1は、ペダル踏面1cをドライバーが足を載せて踏込むことで、ペダル支持軸21を中心としてペダル本体1aを車両前方に回動させて、プッシュロッド連結部1dを前方に移行させることで、プッシュロッド4aからマスターバッグ4にドライバーのブレーキ操作力を与えるように構成している。
このように、このブレーキペダル1の支持構造は、上端のペダル支持軸21を回動支点して、中央のプッシュロッド連結部1dを作用点とすることで、吊下げ式の操作ペダルを構成している。
しかし、こうした吊下げ式の操作ペダルの場合、前面衝突の際、前方から荷重を受けた場合には、中央の作用点等から操作ペダルに荷重が入力し、上部を回動支点として、ペダル踏面が後方に移動することになる。
よって、本実施形態では、ペダル踏面1cの後方移動を防止するため、前述の第一ブラケット10、第二ブラケット20の離脱構造やその他の構造を採用している。
次に、この第一ブラケット10、第二ブラケット20の離脱構造やその他ペダル踏面1cの後方移動を防止する構造について、図2、図3を中心に詳述する。
第一ブラケット10、第二ブラケット20をカウルパネル2に締結固定する取付けブラケット40は、車幅方向両側部で上方に突出して斜め後方に延びる車体側締結部41,41と、車幅方向中央で第一ブラケット10の幅と略一致する長さを有するブラケット側締結部42とを備えている。この取付けブラケット40は、平面視でちょうど羽を開いた「蝶」のような形状をし、第一ブラケット10とカウルパネル2の間に位置して両者を締結固定している(図3参照)。
両側部の車体側締結部41,41は、カウルパネル2の下面に接合した車両前後方向に延びる左右の取付け補強メンバ2a,2bにそれぞれ締結ボルト43,43を介して締結固定している。一方、中央のブラケット側締結部42は、二本の締結ボルト44,44によって第一ブラケット10の支持部12の後端上部上壁部12a、及び第二ブラケット20の後端上部上壁部22を重合して共締め固定している(図3参照)。
もっとも、取付けブラケット40と第一ブラケット10のそれぞれの締結穴には、車両後方側を開放した切欠部45、15を形成している。このため、車両前方側から所定値以上の荷重が作用すると、締結ボルト44,44が取付けブラケット40の切欠部45から外れ、第一ブラケット10及び第二ブラケット20が離脱する構成となっている。また、第一ブラケット10と第二ブラケット20との間に相対変位が生じると第一ブラケット10の切欠部15からの締結ボルト44,44が外れ、第二ブラケット20が第一ブラケット10からも離脱する構成となっている。
また、取付けブラケット40のブラケット側締結部42には、ワイヤ部材30の一端に設けたピン31を係止する係止プレート46を設け、ワイヤ部材30の一端を係止固定している。
このワイヤ部材30は、一端を取付けブラケット40に係止固定して、他端をワイヤガイド部13のガイド穴13aを経由させて、第二ブラケット20のペダル支持軸21に環状部32として係止固定することで、取付けブラケット40と第二ブラケット20を連結している。なお、図示はしないが、このワイヤ部材30に合成樹脂製のチューブを被覆して、ワイヤ部材30の引き込みの際の摺動抵抗を低下するようにしてもよい(図2参照)。
このワイヤ部材30は、第二ブラケット20を積極的に回動させる回転促進部材としての機能を有する。なお、この回動促進部材としての機能については後述する。
前述のペダル支持軸21は、ペダル本体1aに接合した円筒状の外側ペダル支軸21aと軸状の内側ペダル支軸21bの二重構造で構成するとともに、両者と第二ブラケット20との間に筒状のラバーブッシュ21cを介装することで、支持剛性を確保している。
この実施形態では、ワイヤ部材30が回動促進部材としての機能を確実に発揮できるように、ワイヤガイド部13の上方移動を規制する上方移動規制手段として、突出板状部材50とガイドブラケット60を設けている。
この突出板状部材50は、上方に突出したコ字形状のブラケット部材で構成し、第一ブラケット10のワイヤガイド部13の上端側面に接合している。そして、その後面側には前上方側に徐々に傾斜する傾斜面51を形成している。また、この突出板状部材50の上端52は、その車両後方側に設けたガイドブラケット60の下端よりも上方に突出するように設定している(図1参照)。
このように、ガイドブラケット60の下端よりも上方に突出するように設定したことで、第一ブラケット10が後退した場合には、突出板状部材50を確実にガイドブラケット60に干渉させることができる。
一方、ガイドブラケット60は、車両前後方向に延びる二条の隆起部61,61を設けたブラケット部材で構成し、前端と後端でカウルパネル2の下面に接合している。この接合位置は、突出板状部材50から車両後方側に所定量S(例えば55mm)離間した位置に設定している。
ガイドブラケット60に二条の隆起部61,61を設けたのは、突出板状部材50が干渉した際に、容易にガイドブラケット60が変形しないように剛性を確保するためである。
また、所定量S離間して接合しているのは、第一ブラケット10が後方移動する際に、衝突初期に突出板状部材50がガイドブラケット60に干渉して、第一ブラケット10が離脱するのを阻害するのを防止するためである。
なお、この突出板状部材50は、図2に示すように、ちょうど、カウルパネル2の下面に接合した二つの取付け補強メンバ2a,2bの間に位置することになる。このため、両側に位置する取付け補強メンバ2a,2bが、突出板状部材50の後方移動を案内してガイドブラケット60との干渉を確実なものとすることができる。
以上のように構成したペダル支持構造の衝突時の挙動について、図4〜図6に示す挙動図で説明する。図4は衝突前通常時のペダル支持構造の側面図、図5は衝突初期のペダル支持構造の挙動を示す側面図、図6は衝突後期のペダル支持構造の挙動を示す側面図である。なお、各構成要素については、前述の符号を付して説明を省略する。
まず、通常時のペダル支持構造では、前述のように第一ブラケット10も第二ブラケット20も取付けブラケット40を介してカウルパネル2に締結固定されているため、強固にブレーキペダル1を吊下げ支持している(図4参照)。
なお、この状態で、突出板状部材50とガイドブラケット60の間には前述したように所定量Sの間隔を設定し、突出板状部材50とガイドブラケット60がすぐに干渉しないように設定している。
また、ワイヤ部材30も、ある程度緩んだ状態で、取付けブラケット40と第二ブラケット20のペダル支持軸21の間に位置している。
衝突によりダッシュパネル3が後退してくると、衝突初期には、図5に示すように第一ブラケット10と第二ブラケット20が取付けブラケット40から離脱する。
すなわち、取付けブラケット40を固定したカウルパネル2は、ダッシュパネル3に比較してその剛性が高く、ほとんど後退しないため、前面衝突が生じた場合には、ダッシュパネル3が後退することで、第一ブラケット10、第二ブラケット20がスライド後退し、取付けブラケット40との締結固定が離脱するのである。
この後、突出板状部材50がガイドブラケット60に干渉する。これにより、第一ブラケット10は車両上方側への移動が規制され、ワイヤガイド部13の上方移動も規制される。
また、ワイヤ部材30は、ワイヤガイド部13のガイド穴13aが中間部を車両後方側に引っ張ることにより、緊張状態となる。
さらに、ダッシュパネル3の後退が進んで、衝突後期になると、図6に示すように第二ブラケット20が、第一ブラケット10の前端下部のかしめピン14を中心に後下方に回動して、ペダル踏面1cが前方に移行する。
すなわち、ワイヤ部材30の一端が取付けブラケット40に係止されているため、第一ブラケット10が後退すると、ワイヤガイド部13のガイド穴13aを経由しているワイヤ部材30が、他端に係止した第二ブラケット20のペダル支持軸21を車両後方側に引っ張り、第二ブラケット20にかしめピン14を中心とした後下方の回動を生じさせるのである。
よって、第二ブラケット20に軸支したブレーキペダル1が、プッシュロッド連結部1dを中心に後下方に回動して、ペダル踏面1cを前方に移行するのである。
このとき、突出板状部材50は、ガイドブラケット60によって、車両下方に案内されるため、下向きの力をワイヤガイド部13に与えることになる。よって、さらにワイヤ部材30の回転促進機能を増幅することができる。
なお、図7は、図6のB−B線矢視断面図である。この図に示すように、突出板状部材50の上端52が、ガイドブラケット60で車両下方に案内されるため、カウルパネル2に直接干渉せず、第一ブラケット10のワイヤガイド部13を下側位置に案内できる。また、カウルパネル2側に下側に延びるガイドブラケット60を設けているため、その分、突出板状部材50を大きくする必要がないため、第一ブラケット10側を軽量に構成することができ、第一ブラケット10の挙動をよりスムーズにすることができる。
図8に、この突出板状部材50とガイドブラケット60を設けなかった場合の挙動を模式的に表した図を示す。上から支持構造の通常時、後上方移動時、後方平行移動時を示した図である。なお、これらの図において、実線の四角は第一ブラケット10、破線の四角は第二ブラケット20、上部の剛体はカウルパネル2(車体側部材)、30はワイヤ部材、21はペダル支持軸、14はかしめピン、13はワイヤガイド部、13aはそのガイド穴である。
支持構造の通常時には、ワイヤ部材30は、カウルパネル2からワイヤガイド部13のガイド穴13aまで所定長さLaとワイヤガイド部13のガイド穴13aからペダル支持軸21まで所定長さLbを有する。
支持構造が後上方移動した時には、このワイヤ部材30の所定長さは、La1とLb1に変化する。しかし、この場合は、上方に変位していることから、カウルパネル2からワイヤガイド部13のガイド穴13aまでの所定長さは、ほとんど変化しないため、La≒La1となる。よって、ワイヤ部材30は、第二ブラケット20を後方側に引き込むことができず、第二ブラケット20をかしめピン14廻りに回動させることができない。
支持構造が後方平行移動した時には、ワイヤ部材30の所定長さはLa2とLb2に変化する。この場合には、La2>Laとなるため、確実にワイヤ部材30は、第二ブラケット20を後方側に引き込むことができ、第二ブラケット20をかしめピン14廻りに回動させることができる。
なお、図示しないが、支持構造が後下方移動した場合も、同様にワイヤ部材30の所定長さはLaよりも長く変化するため、ワイヤ部材30は、第二ブラケット20をかしめピン14廻りに回動させることができる。
このように、ワイヤ部材30を使用して、第二ブラケット20を回動させる場合には、支持構造が後上方側に移動すると、第二ブラケット20が回動しない可能性がある。すなわち、カウルパネル2からワイヤガイド部13のガイド穴13aまでの相対距離(長さ)が変化しない場合には、ワイヤ部材30が、第二ブラケット20を回動させることができない可能性が生じるのである。
そこで、本実施形態では、突出板状部材50とガイドブラケット60を設けることで、第一ブラケット10等が後上方側に移動しないように設定して、確実にカウルパネル2からワイヤガイド部13のガイド穴13aまでの相対距離が変化するようにしているのである。
こうすることで、より確実にワイヤ部材30に第二ブラケット20の回動を行わせることができ、ペダル踏面1cの後方移動を確実に抑制することができるのである。
以上のように、本実施形態では、突出板状部材50とガイドブラケット60によって、第一ブラケット10のワイヤガイド部13の上方移動を規制することで、車両前方側から斜め上方に突き上げるような衝突荷重が入力された場合でも、カウルパネル2からワイヤガイド部13のガイド穴13aまでの相対距離を大きく変化させることができる。
よって、前面衝突時に、確実に第一ブラケット10のワイヤガイド部13とカウルパネル2との相対距離を大きくすることができ、ペダル踏面1cの後方移動を確実に抑制することができる。
また、第一ブラケット10側に突出板状部材50を設けているため、第一ブラケット10がカウルパネル2のどの位置に後方移動したとしても、必ず突出板状部材50をカウルパネル2に干渉させることができる。
なお、この突出板状部材50は、後方移動した際に、カウルパネル2側の部材と干渉するように設定されていれば、このような板状部材で構成しなくてもよく、例えば閉断面を構成するメンバ部材であっても、単なる平板部材であってもよい。
次に、図9に示す第二の実施形態について説明する。この図は前述の実施形態の図7に対応する図である。なお、その他の構成要素は前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態では、突出板状部材150の上端152に上方に突出する前後方向に延びる突出部153を形成している。また、この突出部153は、板状突出部材の後方移動時に、ガイドブラケット60の二条の隆起部61,61の間に位置するように設定している。
このように、突出部153を設定することで、二条の隆起部61,61の間を前後方向に延びるガイド溝154として、突出部153をそのガイド溝154に係合する係合部とすることができる。よって、突出板状部材150の後方移動時には、両者が係合して、第一ブラケット10の車幅方向の移動を規制することができる。
したがって、この第二の実施形態によると、例えば、前面オフセット衝突等、斜め前方から衝突荷重が入力された場合でも、第一ブラケット10は、車両の後方に向かって確実に後方移動するため、前面衝突の広い範囲で、突出板状部材150とガイドブラケット60によるペダル踏面1cの後方移動を確実に抑制できるという効果を確実に得ることができる。
次に、図10に示す第三の実施形態について説明する。この図は、ガイドブラケット160を車両側方から見た側方断面図である。なお、この実施形態も、その他の構成要素は前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
このガイドブラケット160では、突出板状部材50との当接面161(車両前方側の壁面)を、車両後方側に行くに従って下方側により傾斜するように設定している。
このように設定することにより、突出板状部材50の後方移動量が大きいほど、突出板状部材50を下方に移行させることができ、第一ブラケット10のワイヤガイド部13を大きく下方へ移動させることができる。
よって、この第三の実施形態によると、大きな衝突の場合には、よりブレーキペダル1の回動挙動を増進させることができ、さらにペダル踏面1cの後方移動を抑制することができる。
なお、この当接面161の傾斜角は、曲面で傾斜角を緩やかに変化するように設定することで、急激にペダル挙動が変化するのを防止している。
次に、図11に示す第四の実施形態について説明する。この図も図10同様、ガイドブラケット60の車両側方から見た側方断面図である。なお、この実施形態も、その他の構成要素は前述の実施形態と同様であるため説明を省略する。
このガイドブラケット260では、突出板状部材250との当接部(車両前方側の壁面)をクランク状に屈曲した角部261に設定し、突出板状部材250側の当接面(車両後方側の壁面)を、緩やかな傾斜の第一傾斜面251と急な傾斜の第二傾斜面252とで構成している。
このように、ガイドブラケット260と突出板状部材250を構成しても、第三の実施形態と同様に、突出板状部材250の後方移動量が大きいほど、突出板状部材250を下方に移行させることができ、第一ブラケット10のワイヤガイド部13を大きく下方へ移動させることができる。
よって、この第四の実施形態によっても、大きな衝突の場合には、よりブレーキペダル1の回動挙動を増進させて、さらにペダル踏面1cの後方移動を抑制することができる。
以上、複数の実施形態について説明したが、この発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、前面衝突時、第一ブラケット10のワイヤガイド部13の上方移動を規制するものであれば、どのような実施形態であってもよい。
例えば、中間部を下部車体(フロアパネル等)に設けた支点を経由させて、一端を第一ブラケット10の前端に係止して、他端をワイヤガイド部13に係止するワイヤ部材を設けることで、第一ブラケット10のワイヤガイド部13の上方移動を規制してもよい。
また、同様にリンク部材等を、さらに追加して、第一ブラケット10のワイヤガイド部13の上方移動を規制するように構成してもよい。
さらに、適用される操作ペダルについても、吊下げ式の操作ペダルであれば、ブレーキペダル1以外にも、クラッチペダル、パーキングブレーキペダルなどであってもよい。
以上、この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の操作ペダルは、実施形態のブレーキペダル1に対応し、
以下同様に、
車体側部材は、ダッシュパネル2、取付けブラケット40に対応し、
上方移動規制手段は、突出板状部材50,150,250、ガイドブラケット60,160,260に対応し、
突出部材は、突出板状部材50,150,250に対応し、
規制部材は、ガイドブラケット60,160,260に対応するも、
この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、全ての車両のペダル支持構造に適用する実施形態を含むものである。