以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1は自動車のペダル支持構造が設けられた左ハンドル車の前部車室内を示す。図2に示すように、1は自動車の車体の一部を構成するダッシュパネルで、その前側にはエンジン2が収容されるエンジンルーム3が、また後側には車室5がそれぞれ区画形成されている。このダッシュパネル1の上部後方における車室5の前端部のインストルメントパネル(図示せず)内には、左右方向に延びるインパネメンバ9が設けられている。
インパネメンバ9は、車体左右のフロントピラー7,7間に接続され、自動車の衝突時に車室5内の乗員のスペースを確保するための強度メンバとして構成されており、このインパネメンバ9にはステアリングシャフト11が固定されている。このステアリングシャフト11を挟むように、その右側にアクセルペダル13が配設され、左側にブレーキペダル15が配設されている。このアクセルペダル13及びブレーキペダル15は、運転席(図示せず)に着座したドライバによって踏み込み操作される。上記アクセルペダル13及びブレーキペダル15は、細長い板状のもので、その下端部にはドライバが足を載せて踏み込むペダル部14,16が設けられている。
図2に示すように、上記ダッシュパネル1の上部4の後面にはブレーキペダル15を支持するペダルブラケット17がボルト部材により固定されている。このボルト部材はマスタバック33をダッシュパネル1の前面に取り付けることにも兼用されており、ダッシュパネル1を貫通してその後面に突出している。
図3に示すように、ペダルブラケット17の後端部にブレーキペダル15が車体左右方向に延びるペダル軸41によって前後に揺動できるように支持されている。ペダル軸41は円柱体の丸棒からなる。ブレーキペダル15は、リターンスプリング(図示せず)によって車体後方側へ戻るように付勢されている。ブレーキペダル15の中間部にはオペレーティングロッド31(シリンダ側のロッド)が連結されている。このオペレーティングロッド31は、ペダルブラケット17及びダッシュパネル1の上部4を貫通してエンジンルーム3の後端部のマスタシリンダ(図示せず)にマスタバック33(倍力装置)を介して連結されている。
上記ブレーキペダル15のペダル部16を踏み込んでブレーキペダル15を図2で時計回り方向に回動させると、オペレーティングロッド31に押されてマスタバック33が作動し、そのマスタバック33によりマスタシリンダに対する押圧力が増大し、該マスタシリンダからの油圧により車輪にブレーキがかけられる。
次に、自動車の衝突時にペダルブラケット17の姿勢を変化させてブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制するために採用した構造を説明する。
図2に示すように、インパネメンバ9には前側に向かって斜め下方に延びるブラケット51が固定され、このブラケット51の下部の前面にガイド部材53が固定されている。
図3に示すように、ペダルブラケット17とガイド部材53とは、ペダルブラケット17の車体後方への離脱を可能とする締結機構40によって締結されている。また、ペダルブラケット17のペダル軸41及びガイド部材53は、ペダルブラケット17が車体後方へ移動するとき、ブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制するようにペダルブラケット17の姿勢を変化させるガイド機構を構成している。
図4に示すように、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1の上部4に取り付けられた矩形板状の固定部19と、この固定部19から後側に向かって斜め上方へ延びる支持部21とを備えている。支持部21は下側が開口したチャンネル形に形成されている。支持部21の基端(前端)の上端には、該支持部21の両側壁の上部に切欠き21aが設けられて下方へ折れ曲がり易い脆弱部、すなわち、ペダルブラケット17が姿勢変化をするときの折曲げ起点22が形成されている。
まず、締結機構40について説明すると、図3に示すように、ペダルブラケット17の支持部21の後端上部23には、左右に並んで前後方向に平行に延びる2本のスロット25,25が形成されている。この両スロット25,25の前端は支持部21に形成された開放部27に連通している。
一方、ガイド部材53は、下側が開口したチャンネル形のものであって車体前後方向に延び、その前部がペダルブラケット17の支持部21の後端部に上から外嵌めされている。そうして、各スロット25,25及びガイド部材53の前端上部59のボルト挿入孔(図示せず)に通したボルト61,61にナット(図示せず)を適用して、当該ペダルブラケット17とガイド部材53とが締結されている。
従って、ペダルブラケット17は、その前端がダッシュパネル1に結合され、その後端上部23が上記締結機構40によってインパネメンバ9側のガイド部材53に結合されているので、自動車の非衝突時にはブレーキペダル15を強固に支持する剛性メンバとして機能する。一方、ペダルブラケット17は、自動車の衝突に伴って車体後方へ強く押されると、ボルト61,61がスロット25,25の前端開口から抜けることによってガイド部材53との締結が外れ、後方へ離脱することになる。
次にガイド機構について説明する。図3に示すように、ペダルブラケット17のペダル軸41は、支持部21の左右の側壁を貫通してその両外側に突出しており、この両突出部43が自動車の衝突(前突)時にインパネメンバ9側のガイド部材53に当接するようになっている。すなわち、本例のペダル軸41の突出部43はガイド機構の当接部を構成している。
ガイド部材53は、左右側壁部55の下端に外側に張り出したフランジを備え、このフランジの下面はペダル軸41の両突出部43が当接して摺動するガイド面57に形成されている。このガイド面57は図4にも示すように車体後方へ向かうほど低くなるように傾斜している。
次に、上記実施形態1に係る自動車のペダル支持構造の作用について説明する。ドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が衝突(前突)すると、車体前部が潰れながら後退するため、エンジンルーム3内のエンジン2が後退し、このエンジン2に押されてマスタシリンダ、マスタバック33及びオペレーティングロッド31が後退移動し、このオペレーティングロッド31に連結されているブレーキペダル15も後退し始める。
このとき、図3及び図4に示す状態から、ダッシュパネル1が後方に移動してペダルブラケット17も後方に移動する。そして、ガイド部材53の前端上部59のボルト61,61がペダルブラケット17の後端上部23のスロット25,25から開放部27へ抜け出し、ペダルブラケット17がガイド部材53から後方へ離脱する。このことで、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1側のみが固定された片持ち状態になり、この状態で変形されながら車体後方へ移動する。
次いで、図5に示すように、上記ペダルブラケット17の後部に設けたペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に当接する。このとき、自動車の衝突前にはガイド部材53のガイド面57と非接触状態にあるペダル軸41が、ダッシュパネル1の移動に伴って加速されてからガイド面57に当接する。なお、図5及び図6では、ダッシュパネル1を省略している。
次に、ペダルブラケット17の前部がダッシュパネル1に押圧されながら、ペダル軸41の両端部43,43はガイド部材53のガイド面57を摺動する。このとき、ペダルブラケット17は折曲げ起点22を折れ曲がり点として積極的に破壊され、その折曲げ起点22とガイド面57を摺動するペダル軸41との位置関係からペダルブラケット17が折曲げ起点22を中心に後回りに(ペダルブラケット17の後部が下方に向かうように)回転する。このため、ペダルブラケット17を車両後方へ押圧する力の成分のうち、その大部分はペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に沿って摺動する方向に向けられ、ペダル軸41はガイド面57を滑らかに摺動する。これに伴い、ペダルブラケット17に支持されるブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制することができる。
本実施形態の自動車のペダル支持構造は、ペダルブラケット17に設けた円柱状又は円筒状のペダル軸41をインパネメンバ9に固定したガイド部材53のガイド面57に線接触させて該ガイド面57を摺動させたことにより、ガイド部材53を小型化してインストルメントパネル内のレイアウトを容易にすることができるとともに、摩擦抵抗を軽減してインパネメンバ9への衝撃荷重を軽減させることができる。
本実施形態では、ペダルブラケット17の後端上部23を覆うガイド部材53の下端部のガイド面57にペダルブラケット17の支持部21から外側へ突出するペダル軸41を当接させたことにより、ペダルブラケット17をガイド面57に沿って確実に移動させることができる。
本実施形態では、ペダルブラケット17の後端上部23とガイド部材53の前端上部59とを離脱可能に連結したことにより、部品点数が増えず、インストルメントパネル内のレイアウトが容易になる。
本実施形態では、ブレーキペダル15を支持するペダル軸41をガイド部材53のガイド面57に当接させている。このため、別途ガイド部材53に当接する当接部を設ける必要はなく、コスト面及びレイアウト面で有利である。
本実施形態では、ブレーキペダル15に本発明を適用している。自動車の衝突時には、その衝突を回避するためにドライバがブレーキペダル15を踏んで自動車を制動しているので、ドライバの足に負担がかかり易いが、本実施形態によると、運転席の足下に大きなスペースを維持することができるため、ドライバの足を保護することができる。
−実施形態1のその他の実施形態−
本発明は、上記実施形態1について、以下のような構成としてもよい。すなわち、図7に示すように、締結機構40として、ガイド部材53の前端上部59に左右に並ぶように一定の距離を空けて前後方向に平行に延びる長細い2本のスロット125,125と、該スロット125,125の後端に連通する開放部127とを貫通形成する一方、ペダルブラケット17の後端上部23に上記ガイド部材53のスロット125,125と同じ間隔を空けてボルト挿入孔(図示せず)を設けてもよい。
(実施形態2)
本実施形態については図8〜図11に示されている。なお、以下の各実施形態では、図1〜図7と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。本実施形態では、当接部材としてさらに当接ピン42が設けられている点で上記実施形態1と異なる。
すなわち、当接ピン42は、ペダル軸41よりも車体前方側に配置されていて、車体左右方向に延びてペダルブラケット17の左右の側壁に支持されているとともに、両端部47がこの左右の側壁を貫通してその両外側に突出している。この当接ピン42の両端突出部47は、ガイド部材53に当接する第2当接部を構成している。当接ピン42も円柱体のピン部材からなる。図9に示すように、ペダルブラケット17の折曲げ起点22から当接ピン(第2当接部)42までの長さは、該折曲げ起点22からペダル軸(第1当接部)41までの長さよりも短くなっている。
そして、上記ペダル軸41及び当接ピン42は、ペダルブラケット17の車体後方への移動に伴って上記ガイド面57に順次当接し、このガイド面57を摺動することによってペダルブラケット17の姿勢を変化させるようになっている。
次に、本実施形態に係る自動車のペダル支持構造の作用について説明する。ドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が衝突(前突)すると、車体前部が潰れながら後退するため、エンジンルーム3内のエンジン2が後退し、このエンジン2に押されてマスタシリンダ、マスタバック33及びオペレーティングロッド31が後退移動し、このオペレーティングロッド31に連結されているブレーキペダル15も後退し始める。
このとき、図8及び図9に示す状態から、ダッシュパネル1が後方に移動してペダルブラケット17も後方に移動する。そして、ガイド部材53の前端上部59のボルト61,61がペダルブラケット17の後端上部23のスロット25,25から開放部27へ抜け出し、ペダルブラケット17がガイド部材53から後方へ離脱する。このことで、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1側のみが固定された片持ち状態になり、この状態で変形されながら車体後方へ移動する。
次いで、図10に示すように、上記ペダルブラケット17の後部に設けられたペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に当接する。このとき、自動車の衝突前にはガイド部材53のガイド面57と非接触状態にあるペダル軸41が、ダッシュパネル1の移動に伴って加速されてからガイド面57に当接する。なお、図9及び図10では、ダッシュパネル1を省略している。
次に、ペダルブラケット17の前部がダッシュパネル1に押圧されながら、ペダル軸41の両端部43,43はガイド部材53のガイド面57を摺動する。このとき、ペダルブラケット17は、基端側の折曲げ起点22で折れ曲がることにより、この折曲げ起点22とガイド面57を摺動するペダル軸41との位置関係からペダルブラケット17が緩やかに折曲げ起点22を中心に後回りに(ペダルブラケット17の前部が上方に且つ後部が下方に向かうように)回転する。このため、ペダルブラケット17を車両後方へ押圧する力の成分のうち、その大部分はペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に沿って摺動する方向に向けられ、ペダル軸41はガイド面57を滑らかに摺動する。
次いで、図11に示すように、ペダル軸41がガイド部材53のガイド面57から離脱し、その後、当接ピン42がガイド面57に当接する。このため、当接ピン42は加速されてからガイド面57に当接する。
次に、当接ピン42がガイド部材53のガイド面57を摺動しているときには、折曲げ起点22とガイド面57を摺動する当接ピン42との距離が上記ペダル軸41がガイド面57を摺動しているときに比べて短くなり、折曲げ起点22を中心にペダルブラケット17がより一層大きく後回りに回転する。このため、ペダルブラケット17に支持されるブレーキペダル15のペダル部16の車体後方への移動が抑制される。
本実施形態の自動車のペダル支持構造は、衝突時のペダルブラケット17の移動に伴って、ペダル軸41と当接ピン42とをガイド部材53のガイド面57に順次当接させている。また、ペダル軸41の離脱後に当接ピン42がガイド部材53のガイド面57を摺接しているとき、ペダルブラケット17を折曲げ起点22を中心に大きく後回りに回転させている。このため、ガイド部材53を小型化しても確実にブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制して、運転席の足下に大きなスペースを維持することができる。また、ガイド部材53を小型化してもインパネメンバ9への衝撃荷重を軽減させることができる。
また、本実施形態では、ペダル軸41をガイド部材53のガイド面57より離脱させた後、当接ピン42をガイド面57に当接させている。このため、滑らかにペダルブラケット17の姿勢が変化するとともに、摩擦抵抗が軽減されてインパネメンバ9への荷重を緩和させることができる。
本実施形態では、ペダル軸41と当接ピン42とを円柱状のピン部材としている。このため、ペダル軸41と当接ピン42とがガイド部材53のガイド面57に対して線接触することができるので、従来のような面同士の接触に比べてガイド面57との摩擦抵抗を軽減することができる。また、レイアウト上有利であり、ペダル軸41と当接ピン42との位置関係の調整が容易でペダルブラケット17の姿勢の変化の度合いを調整し易い。
本実施形態では、ブレーキペダル15を支持するペダル軸41を第1当接部としている。このため、別途第1当接部を設ける必要はないので、コスト面及びレイアウト面で有利である。
本実施形態では、ブレーキペダル15に本発明を適用している。自動車の衝突時には、その衝突を回避するためにドライバがブレーキペダル15を踏んで自動車を制動しているので、ドライバの足に負担がかかり易いが、本実施形態によると、運転席の足下に大きなスペースを維持することができるため、ドライバの足を保護することができる。
次に、具体的にペダル軸41と当接ピン42の位置を検討した例について図12〜図14を用いて説明する。なお、本実施例では、自動車の衝突時にダッシュパネル1が水平方向後側へ変位すると仮定している。
比較例として、上記実施形態2に係る自動車のペダル支持構造とは、ペダルブラケット17に当接ピン42を設けずにペダル軸41のみを設けた点で異なるものを使用した。この比較例において、自動車の衝突時のペダルブラケット17が折曲げ起点22を中心に回転されながら移動する様子を図12に示す。破線はペダル軸41の動きを示す。ペダル軸41はガイド面57に平行にしか移動していないことが判る。
運転席の足下に大きなスペースを維持するために、ペダル軸41を下方へ落ち込み量hだけ移動させてペダルブラケット17を後回りに回転させる場合を考えると、ガイド部材53のガイド面57を図の太線の長さにまで延ばす必要がある。このようにガイド面57が長くなるとインストルメントパネル内のレイアウト面で問題があった。
次に、実施例1として上記実施形態2に係る自動車のペダル支持構造を使用した。図13は、実施例1におけるペダルブラケット17の移動する様子を解析した結果を示すものである。上記比較例と同じ落ち込み量hだけペダル軸41を下方に移動させるためのガイド面57の長さは、明らかに比較例よりも短くできることが判った。
まず、ペダル軸41の両端部43,43がガイド部材53のガイド面57を摺動しながら、ペダルブラケット17が緩やかに折曲げ起点22を中心に後回りに回転する。次に、当接ピン42がガイド部材53のガイド面57に当接して摺動しているときに、同図で一点鎖線で示すように、ペダル軸41はガイド面57から離れていくことが判った。このとき、ダッシュパネル1側を折曲げ起点22としてペダルブラケット17がより一層大きく後回りに回転するので、ペダル軸41の下方への移動量を大きく稼ぐことができることが判った。
次いで、実施例2として、上記実施例1における当接ピン42の位置よりも前側且つ若干下側に当接ピン42を設けたものを使用した。図14は、実施例2におけるペダルブラケット17の移動する様子を解析した結果を示すものである。ペダルブラケット17の後端が実施例1と同じ位置まで来たときのペダル軸41の下方への落ち込み量h’は上記実施例1の落ち込み量hよりも小さくなっている。つまり、当接ピン42をペダル軸41よりも前方に離すほど折曲げ起点22を中心にペダルブラケット17の回転する度合いが大きくなるタイミングが遅れ、そのことで落ち込み量h’が減ることが判った。また、当接ピン42をペダル軸41よりも下方に配置するとペダルブラケット17が回転する度合いが小さくなり、落ち込み量h’が減ることが判った。
よって、当接ピン42を、インパネメンバ9に大きな荷重がかからない程度にペダル軸41に近いペダル軸41前方に、且つ当接ピン42がガイド面57に当接せずにガイド部材53の前端上部59に引っ掛からない程度にペダル軸41の上方に位置付けると、落ち込み量hを大きく稼ぐことができることが判った。このように、ペダル軸41と当接ピン42との位置関係を調整することでペダルブラケット17の姿勢の変化の度合いを容易にコントロールできることが判った。
−実施形態2のその他の実施形態−
また、当接ピン42がガイド部材53のガイド面57に当接した後に、ペダル軸41がガイド面57から離脱するように構成してもよい。このことで、ペダル軸41と当接ピン42とが同時にガイド部材53のガイド面57に当接するときがあるので、その間、ペダル軸41と当接ピン42とでその負荷を分担することができ、当接ピン42に係る荷重を軽減することができる。よって、当接ピン42の軽量化が行える。
上記実施形態2では、当接部を2つ設けたが、3つ以上設けてもよい。こうすることで、ペダルブラケット17の姿勢の変化の度合いをさらにコントロールし易くなる。
(実施形態3)
本実施形態については図15〜図20に示されている。本実施形態では、ガイド部材としてさらに第2ガイド部材54が設けられている点で上記実施形態2と異なる。
すなわち、図15に示すように、インパネメンバ9には前側に向かって斜め下方に延びるブラケット51が固定され、このブラケット51の下部の前面に第1ガイド部材53が固定され、ブラケット51の下端面に第2ガイド部材54が固定されている。
ペダルブラケット17のペダル軸41、当接ピン42及び両ガイド部材53,54は、ペダルブラケット17が車体後方へ移動するとき、ブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制するようにペダルブラケット17の姿勢を変化させるガイド機構を構成している。
次にガイド機構について説明する。第2ガイド部材54は、第1ガイド部材53の下方に配置されていて、インパネメンバ9のブラケット51の下面より車体前方へ延びる左右の側壁を備え、この左右の側壁の下端に外側に張り出したフランジを備えている。このフランジの下面はペダルブラケット17の当接ピン(第2当接部)が当接して摺動する第2ガイド面58に形成されている。この第2ガイド面58も第1ガイド面57と同様に車体後方へ向かうほど低くなるように傾斜している。
また、第1ガイド面57と第2ガイド面58とは平面視で互いにオーバラップする関係になるように配置されている。つまり、第1ガイド面57と第2ガイド面58とは車体前後方向において略同じ位置にあって上下に配設されている。本実施形態では、第1ガイド面57と第2ガイド面58とは略平行になっている。すなわち、両ガイド面57,58の傾斜角度は略同じである。
以上のようなペダル支持構造において、ドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が障害物に衝突(前突)すると、車体前部が潰れていき、エンジンルーム3内のエンジン2が後退してくる。従って、ペダルブラケット17は、エンジン2によりマスタバック33及びダッシュパネル1を介して後方へ押される。
上記エンジン2による押圧力が、締結機構40によるペダルブラケット17と第1ガイド部材53との締結力よりも大きいときは、ペダルブラケット17は、第1ガイド部材53に対して車体後方への移動する。これにより、締結機構40のボルト61がスロット25の後端から前部側に移動して開放部27に抜ける。すなわち、ペダルブラケット17は第1ガイド部材53との締結が外れて後方へ離脱する。
しかる後に、ペダル軸(当接部)41の突出部43が第1ガイド部材53の下向きになって傾斜した第1ガイド面57に当接し、該第1ガイド面57を摺動し始める。
このように、締結機構40による締結が離脱した後に、ペダル軸41が第1ガイド面57に当接するから、ガイド機構が締結機構40の締結の離脱を妨げることはなく、当該離脱が円滑なものになる。
また、ペダル軸41は車体後方へ移動しながら第1ガイド面57に当接するから、摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることがなく、その摺動が円滑なものになる。従って、ペダル軸41が第1ガイド面57に当接したときに、第1ガイド部材53に大きな衝撃荷重が加わることが避けられる。
また、第1ガイド部材53はインパネメンバ9より下方へ延びたブラケット51の前面部に配置されているから、仮に第1ガイド部材53に加わる荷重が大きくなった場合でも、その荷重はブラケット51を介してインパネメンバ9を捩じる力として働く。従って、インパネメンバ9に対して大きな曲げ力が加わることがなく、その折損が避けられる。
そうして、図16に示すように、ペダル軸41の第1ガイド面57での摺動により、ペダルブラケット17は、その後端部が強制的に下方へ押されることになり、基端側の折曲げ起点22で折れ曲がることにより、該折曲げ起点22を中心に下方へ回転していく。
この場合、第1ガイド面57の傾斜は緩やかであるから、第1ガイド部材53を介してインパネメンバ9に加わる反力も大きくはならず、このインパネメンバ9の折損防止に有利に働く。
図17に示すように、ペダル軸41が第1ガイド面57を摺動し終えた後、今度は当接ピン(第2当接部)42が第2ガイド部材54の下向きになって傾斜した第2ガイド面58に当接し、この第2ガイド面58を摺動していく。このときは、ペダル軸41は第1ガイド面57に当接していないから、第2ガイド面58での当接ピン42の摺動の妨げとはならない。
第2ガイド面58の傾斜角度は第1ガイド面57と略同じであるが、ペダルブラケット17の折曲げ起点22から当接ピン42までの距離は第1当接部であるペダル軸41までの距離よりも短い。従って、当接ピン42が第2ガイド面58を摺動するときのペダルブラケット17の回転角度は、第1ガイド面57の場合よりも大きくなり、その結果、ブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制できる。
また、当接ピン42は車体後方へ移動しながら第2ガイド面58に当接するから、その摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることはなく、その摺動が円滑になるとともに、第2ガイド部材54及びインパネメンバ9に大きな衝撃荷重を与えることが避けられる。
また、仮に当接ピン42が第2ガイド面58に当接するまでに第1ガイド部材53が変形し或いは破損しても、第2ガイド部材54は第1ガイド部材53とは別に成形されて別の場所に配置されているから、第1ガイド部材53の変形ないしは破損の影響を受け難い。すなわち、当接ピン42を第2ガイド部材54の第2ガイド面58に確実に当接させて摺動させることができる。
よって、自動車が障害物に衝突してエンジン2が後退してくることがあっても、ドライバの足下に大きなフットスペースが確保され、ペダル部16を踏んでいるドライバの足に対して大きな負荷が加わることが防止される。
なお、ペダル軸41は締結機構40による締結が離脱する前に第1ガイド面57に当接するようにしてもよい。この場合でも、ペダルブラケット17の車体後方の移動によって締結機構40のボルト61がスロット25から離脱しつつある状態でペダル軸41が第1ガイド面57に当接することになるから、その当接が当該離脱に大きな抵抗になることはない。しかも、第1ガイド面57は傾斜が緩やかであるから、ペダル軸41が第1ガイド面57を摺動するときの抵抗も小さい。よって、当該離脱が妨げられことは避けられる。
−実施形態3のその他の実施形態−
その他の実施形態は、図18に示すように、第2ガイド部材54の第2ガイド面58の傾斜を、第1ガイド部材53の第1ガイド面57との傾斜よりも急にした点が実施形態3と相違し、他は実施形態3と同じである。
従って、図19に示すように、当接ピン(第2当接部)42が第2ガイド面58を摺動するときは、該ガイド面58の傾斜が急である分、ペダルブラケット17は実施形態3の場合よりも姿勢がさらに大きく下方へ変化する。すなわち、本実施形態の場合は、ペダルブラケット17の折曲げ起点22から当接ピン42までの距離が短いことと、第2ガイド面58の傾斜が急であることとの両効果により、ペダルブラケット17の姿勢が下方へ大きく変化することになり、ブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを抑制する上で有利になる。
別の実施形態については図20に示されている。本実施形態では、下側に第1ガイド面70を有する第1ガイド部材67が配置され、上側に第2ガイド面71を有する第2ガイド部材68が配置されている。この両ガイド部材67,68の構成は実施形態3のものと実質的に同じである。そうして、下側の第1ガイド面70に当接して摺動する第1当接ピン65がペダルブラケット17の後部下側に配置され、上側の第2ガイド面71に当接して摺動する第2当接ピン66がペダルブラケット17の前端側上部に配置されている。
両当接ピン65,66は、ペダルブラケット17の折曲げ起点22から第1当接ピン65までの距離よりも、該折曲げ起点22から第2当接ピン66までの距離の方が短くなるように配置されている。
本実施形態の場合、ペダルブラケット17が車体後方へ移動するとき、まず、下側に配置された第1当接ピン65が下側の第1ガイド面70に当接してこれを摺動する。これにより、ペダルブラケット17は、折曲げ起点22で折曲げられて、その姿勢が下方へ回転変化する。
上記第1ガイド面70での第1当接ピン65の摺動が終わった後、今度は上側に配置された第2当接ピン66が上側の第2ガイド面71に当接してこれを摺動する。これにより、ペダルブラケット17は、折曲げ起点22でさらに折曲げられて、その姿勢が下方へ大きく回転変化する。
本実施形態の場合も、折曲げ起点22から第2当接ピン66までの距離の方が、該折曲げ起点22から第1当接ピン65までの距離よりも短いから、第2当接ピン66が第2ガイド面71を摺動するときは、第1当接ピン65が第1ガイド面70を摺動するときよりも、ペダルブラケット17の姿勢変化が大きくなる。その他の作用効果は実施形態3と同じである。
第1ガイド面及び第2ガイド面は、上記実施形態では平坦な傾斜面に形成されているが、曲面にしてもよい。
(実施形態4)
本実施形態については図21〜図24に示されている。本実施形態では、ガイド部材としてさらに第2ガイド部材54が設けられている点で上記実施形態1と異なる。
図21に示すように、インパネメンバ9には前側に向かって斜め下方に延びるブラケット51が固定され、このブラケット51の下部の前面に第1ガイド部材53が固定され、ブラケット51の下端面に第2ガイド部材54が固定されている。
第2ガイド部材54は、第1ガイド部材53と同様に下側が開口したチャンネル形のものであって車体前後方向に延び、左右の側壁の下端に外側に張り出したフランジを備えている。このフランジの下面はペダル軸41の両突出部43が当接して摺動する第2ガイド面58に形成されている。この第2ガイド面58も第1ガイド面57と同様に車体後方へ向かうほど低くなるように傾斜しているが、その傾斜は第1ガイド面57の傾斜よりも急になっている。また、第2ガイド面58は第1ガイド面57の後端の最低部位よりも下方へ延びている。
以上のようなペダル支持構造において、ドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が障害物に衝突(前突)すると、車体前部が潰れていき、エンジンルーム3内のエンジン2が後退してくる。従って、ペダルブラケット17は、エンジン2によりマスタバック33及びダッシュパネル1を介して後方へ押される。
上記エンジン2による押圧力が、締結機構40によるペダルブラケット17と第1ガイド部材53との締結力よりも大きいときは、ペダルブラケット17は、第1ガイド部材53に対して車体後方へ移動する。これにより、締結機構40のボルト61がスロット25の後端から前部側に移動して開放部27に抜ける。すなわち、ペダルブラケット17は第1ガイド部材53との締結が外れて後方へ離脱する。
しかる後に、ペダル軸(当接部)41の突出部43が第1ガイド部材53の下向きになって傾斜した第1ガイド面57に当接し、該第1ガイド面57を摺動し始める。
このように、締結機構40による締結が離脱した後に、ペダル軸41が第1ガイド面57に当接するから、ガイド機構が締結機構40の締結の離脱を妨げることはなく、当該離脱が円滑なものになる。
また、ペダル軸41は車体後方へ移動しながら第1ガイド面57に当接するから、摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることがなく、その摺動が円滑なものになる。従って、ペダル軸41が第1ガイド面57に当接したときに、第1ガイド部材53に大きな衝撃荷重が加わることが避けられる。
また、第1ガイド部材53はインパネメンバ9より下方へ延びたブラケット51の前面部に配置されているから、仮に第1ガイド部材53に加わる荷重が大きくなった場合でも、その荷重はブラケット51を介してインパネメンバ9を捩じる力として働く。従って、インパネメンバ9に対して大きな曲げ力が加わることがなく、その折損が避けられる。
そうして、ペダル軸41の第1ガイド面57での摺動により、ペダルブラケット17は、その後端部が強制的に下方へ押されることになり、ダッシュパネル1に固定された基端側が折れ曲がって、下方へ回転していく。
この場合、第1ガイド面57の傾斜は緩やかであるから、第1ガイド部材53を介してインパネメンバ9に加わる反力も大きくはならず、このインパネメンバ9の折損防止に有利に働く。
ペダル軸41は第1ガイド面57を摺動し終えた後、今度は図22に示すように第2ガイド部材54の下向きになって傾斜した第2ガイド面58に当接し、この第2ガイド面58を摺動していく。この第2ガイド面58は第1ガイド面57よりも低位置にあり且つ傾斜が急であるから、ペダルブラケット17はその後端部を大きく押し下げられることになる。すなわち、ペダルブラケット17は、その基端側を中心として下方へ大きく回転し、その結果、ブレーキペダル15のペダル部16の車体後方への移動が抑制される。
また、ペダル軸41は車体後方へ移動しながら第2ガイド面58に当接するから、その摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることはなく、その摺動が円滑になるとともに、第2ガイド部材54及びインパネメンバ9に大きな衝撃荷重を与えることが避けられる。
また、仮にペダル軸41が第2ガイド面58に当接するまでに第1ガイド部材53が変形し或いは破損しても、第2ガイド部材54は第1ガイド部材53とは別に成形されて別の場所に配置されているから、第1ガイド部材53の変形ないしは破損の影響を受け難い。すなわち、ペダル軸41を第2ガイド部材54の第2ガイド面58に当接させて摺動させ、ペダルブラケット17の姿勢を確実に変化させることができる。
よって、自動車が障害物に衝突してエンジン2が後退してくることがあっても、ドライバの足下に大きなフットスペースが確保され、ペダル部16を踏んでいるドライバの足に対して大きな負荷が加わることが防止される。
なお、ペダル軸41は締結機構40による締結が離脱する前に第1ガイド面57に当接するようにしてもよい。この場合でも、ペダルブラケット17の車体後方の移動によって締結機構40のボルト61がスロット25から離脱しつつある状態でペダル軸41が第1ガイド面57に当接することになるから、その当接が当該離脱に大きな抵抗になることはない。しかも、第1ガイド面57は傾斜が緩やかであるから、ペダル軸41が第1ガイド面57を摺動するときの抵抗も小さい。よって、当該離脱が妨げられことは避けられる。
−実施形態4のその他の実施形態−
本形態については図23及び図24に示されている。図23に示すように、インパネメンバ9には前側に向かって斜め下方に延びるブラケット63が固定されている。このブラケット63は後側が開口したチャンネル形のものであって、その下部の前面に第1ガイド部材53が固定されている。ブラケット63の下端部は後側に向かって斜め下方に延長されており、この延長部の下面が第2ガイド面64に形成されている。従って、本実施形態の場合はブラケット63が第2ガイド部材を構成している。
第1ガイド部材53に対しては実施形態4と同様にペダル軸41が第1ガイド面57に当接して摺動するように設けられているが、第2ガイド面64は第1ガイド部材53のチャンネル溝に対応する位置にあり、この第2ガイド面64に対してはペダルブラケット17の支持部21の後端上部23が当接して摺動するようになっている。
第1ガイド面57及び第2ガイド面64は車体後方に向かうほど低くなるように傾斜しているが、第2ガイド面64の方が第1ガイド面57よりも傾斜が急になっている。また、第2ガイド面64は第1ガイド面57の最も低くなった後端よりも下方へ延びている。
ペダルブラケット17と第1ガイド部材53とは実施形態4と同様の締結機構40によって離脱可能に締結されている。
従って、本実施形態の場合、自動車の衝突(前突)に伴ってペダルブラケット17が車体後方へ移動すると、締結機構40による第1ガイド部材53に対する締結が離脱した後、ペダル軸41が第1ガイド面57に当接しこれを摺動する。この点は、実施形態4と同じであり、同様の作用効果が得られる。
ペダル軸41が第1ガイド面57を摺動し終えた後、今度は図24に示すようにペダルブラケット17の後端上部23が第2ガイド面64に当接し、この第2ガイド面64を摺動していく。この第2ガイド面64は第1ガイド面57よりも低くなっているから、ペダルブラケット17はその後端部がさらに押し下げられ、その結果、ブレーキペダル15のペダル部16の車体後方への移動が抑制される。
本実施形態の場合も、ペダルブラケット17は車体後方へ移動しながら第2ガイド面64に当接するから、その摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることはなく、その摺動が円滑になるとともに、第2ガイド部材であるブラケット63及びインパネメンバ9に大きな衝撃荷重を与えることが避けられる。
また、ペダル軸41が第1ガイド面57を摺動し終えた後にペダルブラケット17の後端上部(当接部)23が第2ガイド面64に当接するから、すなわち、ペダル軸41とペダルブラケット17とは、同時にガイド面57,62に当接した状態は生じないから、互いに干渉し合うことがなく、各々の摺動は円滑になる。
また、本実施形態の場合、仮にペダル軸41が第1ガイド面57に当接し摺動する過程で変形することがあっても、第2ガイド面64に当接するのはペダルブラケット17の後端部であるから、第2ガイド面64によるペダルブラケット17の姿勢変化にはペダル軸41の変形の影響が出ず、ペダルブラケット17の姿勢を確実に変化させることができる。
よって、ドライバの足下に大きなフットスペースが確保され、ペダル部16を踏んでいるドライバの足に対して大きな負荷が加わることが防止される。
(実施形態5)
本実施形態については図25〜図27に示されている。本実施形態では、締結機構40の構造が異なる点で上記実施形態1と異なる。
図25及び図26に示すように、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1の上部4に取り付けられた矩形板状の固定部と、この固定部から後側に向かって斜め上方へ延びる支持部21とを備えている。支持部21は下側が開口したチャンネル形に形成されており、その車体左右方向に相対する側壁間にブレーキペダル15が配置され、このブレーキペダル15を支持するペダル軸41はペダルブラケット17の両側壁に渡されている。また、ペダルブラケット17の後端部は上壁がなく上下に開口している。
一方、ガイド部材53は、下側が開口したチャンネル形のものであって車体前後方向に延びている。ガイド部材53の両側壁の下面は左右で対をなすガイド面57に形成されている。この両ガイド面57は、ペダル軸41が当接して摺動するものであって、車体後方へ向かうほど低くなるように傾斜している。
また、ガイド部材53の両側壁には、車体後方へ向かって開口し且つ車体左右の両側が開放された凹部155が左右で対をなすように形成されている。この凹部155は、ガイド部材53の前端近傍より車体後方へ上下幅が漸次拡大しながら略水平に延び、さらにこの略水平に延びる部分に続いて上下幅が拡大しながら斜め下方へ延びている。
そうして、ガイド部材53は、その前端部がペダルブラケット17の両側壁の後端部間に挿入されており、上記凹部155に配置したピン状の連結部材56によってペダルブラケット17の後端部に連結されている。すなわち、連結部材56は、ペダルブラケット17の後端部(ペダル軸41よりも車体後方側の部位)において両側壁に渡されており、ペダルブラケット17が車体後方へ移動するときに離脱するように上記凹部155においてガイド部材53に係合している。また、ガイド部材53の両側壁の前端部はブレーキペダル15を挟むようにその両側に配置されている。
本例の場合、ペダルブラケット17の両側壁に渡した連結部材と、この連結部材が係合するガイド部材53の凹部とが締結機構40を構成していることになる。
従って、以上のようなペダル支持構造においては、ブレーキペダル15の操作等によってペダルブラケット17に車体前後方向の大きな荷重が加わっても、ペダルブラケット17は前端部がダッシュパネル1に固定されているだけでなく、後端部が連結部材56を介してガイド部材53に連結されているから、その荷重はガイド部材53を介してインパネメンバ9によって受けられる。また、ペダルブラケット17の後端部に車体左右方向の荷重が加わったときは、その側壁がガイド部材53に当たることにより、その荷重はガイド部材53を介してインパネメンバ9によって受けられる。よって、ペダルブラケット17によるブレーキペダル15の支持強度は高いものになる。
次にドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が障害物に衝突(前突)すると、車体前部が潰れていき、エンジンルーム3内のエンジン2が後退してくる。従って、ペダルブラケット17は、エンジン2によりマスタバック33及びダッシュパネル1を介して後方へ押される。
ペダルブラケット17がガイド部材53に対して車体後方へ移動すると、その後端の連結部材56がガイド部材53から離れて凹部155を後方へ移動する。これにより、ペダルブラケット17とガイド部材53との係合が外れる。しかる後に、ペダル軸(当接部)41がガイド部材53のガイド面57に当接し、該ガイド面57を摺動し始める。
このように、ペダルブラケット17とガイド部材53との係合が外れた後に、ペダル軸41がガイド面57に当接するから、ガイド機構が上記係合の離脱を妨げることはなく、当該離脱が円滑なものになる。また、ペダル軸41は車体後方へ移動しながらガイド面57に当接するから、摺動初期の摩擦抵抗が大きくなることがなく、その摺動が円滑なものになる。従って、ペダル軸41がガイド面57に当接したときに、ガイド部材53及びインパネメンバ9に大きな衝撃荷重が加わることが避けられる。
また、ガイド部材53はインパネメンバ9より下方へ延びたブラケット51の前面部に配置されているから、仮にガイド部材53に加わる荷重が大きくなった場合でも、その荷重はブラケット51を介してインパネメンバ9を捩じる力として働く。従って、インパネメンバ9に対して大きな曲げ力が加わることがなく、その折損が避けられる。
また、自動車の衝突時にペダルブラケット17に対して車体後方へ押圧する荷重だけでなく、車体側方へ押圧する荷重が加わっても、ペダルブラケット17の側壁がガイド部材53に当たるため、ペダル軸41はガイド面57から側方へ逸れることはなく、該ガイド面57を摺動することになる。
そうして、図27に示すように、ペダル軸41のガイド面57での摺動により、ペダルブラケット17は、その後端部が強制的に下方へ押されることになり、ダッシュパネル1に固定された基端側が折れ曲がって下方へ回転していく。その結果、ブレーキペダル15のペダル部16の車体後方への移動が抑制される。
よって、自動車が障害物に衝突してエンジン2が後退してくることがあっても、ドライバの足下に広いフットスペースが確保され、ペダル部16を踏んでいるドライバの足に対して大きな負荷が加わることが防止される。
(実施形態6)
本実施形態については図28〜図32に示されている。本実施形態では、締結機構40の構造が異なる点で上記実施形態1と異なる。
図28に示すように、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1の上部4に取り付けられた矩形板状の固定部19と、この固定部19から後側に向かって斜め上方へ延びる支持部21とを備えている。この支持部21には、上側を開放して延長された一対の延長部29,29が形成されている。
締結機構40について説明すると、図28に示すように、ペダルブラケット17の延長部29,29の上面からそれぞれ左右方向外側へ延びるように取付部73,73が折曲げて形成されている。
一方、ガイド部材53は、下側が開口したチャンネル形のものであって車体前後方向に延び、その前部がペダルブラケット17の支持部21の延長部29,29間に挿入されている。ガイド部材53の前端上部59には、左右方向外側に水平に延び、上記各取付部73,73に対応する位置に後方へ開放された開放部83,83を有する矩形板状の連結板81が取り付けられている。開放部83は、例えば後方に向かって徐々にその幅が拡がっているものとすればよい。この連結板81は、2つの開放部83,83間の中央部にビス挿通孔(図示せず)を有し、このビス挿通孔にビス82を挿通してガイド部材53の前端上部59に締結することで、連結板81がビス82を中心に回動可能に取り付けられている。
図29に示すように、上記ペダルブラケット17の各取付部73には、開放部83に対応する位置にボルト挿入孔75が貫通形成されている。
そして、上記ペダルブラケット17の延長部29,29間にガイド部材53の前端部が挿入され、上記連結板81の開放部83,83及びペダルブラケット17の取付部73,73のボルト挿入孔75,75にボルト61,61を挿通してナット(図示せず)で下側から締め付けることで、ペダルブラケット17とガイド部材53とが離脱可能に連結されている。
このようにして、ペダルブラケット17の取付部73,73と、ガイド部材53の前端上部59に取り付けられた連結板81とに締結機構40を形成し、この締結機構40によって、ペダルブラケット17をガイド部材53に離脱可能に連結している。
従って、ペダルブラケット17は、その前端がダッシュパネル1に結合され、その後端上部23が上記締結機構40によってインパネメンバ9側のガイド部材53に結合されているので、自動車の非衝突時にはブレーキペダル15を強固に支持する剛性メンバとして機能する。一方、ペダルブラケット17は、自動車の衝突に伴って車体後方へ強く押されると、ボルト61,61が連結板81の開放部83,83から抜けることによってガイド部材53との締結が外れ、後方へ離脱することになる。
図28に示すように、上記ペダルブラケット17の取付部73,73の下方にペダル軸41が掛け渡されている。このペダル軸41は、当接部を構成し、延長部29,29間をつなぐように左右方向に水平に設けられている。このペダル軸41が自動車の衝突(前突)時にインパネメンバ9側のガイド部材53に当接するようになっている。
次に、上記実施形態に係る自動車のペダル支持構造の作用について説明する。ドライバがブレーキペダル15を踏み込んだ制動状態のまま自動車が衝突(前突)すると、車体前部が潰れながら後退するため、エンジンルーム3内のエンジン2が後退し、このエンジン2に押されてマスタシリンダ、マスタバック33及びオペレーティングロッド31が後退移動し、このオペレーティングロッド31に連結されているブレーキペダル15も後退し始める。
このとき、図28及び図30に示す状態から、ダッシュパネル1が後方に移動してペダルブラケット17も後方に移動する。そして、ペダルブラケット17の取付部73,73のボルト61,61が連結板81の開放部83,83から抜け出し、ペダルブラケット17がガイド部材53から後方へ離脱する。このことで、ペダルブラケット17は、ダッシュパネル1側のみが固定された片持ち状態になり、この状態で変形されながら車体後方へ移動する。
次いで、図30に示すように、上記ペダルブラケット17の後部に設けたペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に当接する。このとき、自動車の衝突前にはガイド部材53のガイド面57と非接触状態にあるペダル軸41が、ダッシュパネル1の移動に伴って加速されてからガイド面57に当接する。なお、図31及び図32では、ダッシュパネル1を省略している。
次に、図31及び図32に示すように、ペダルブラケット17の前部がダッシュパネル1に押圧されながら、ペダル軸41はガイド部材53のガイド面57を摺動する。この押圧力による反力をガイド面57より受けて、ペダルブラケット17はダッシュパネル1側の折曲げ起点22を中心に積極的に破壊され、その折曲げ起点22とガイド面57を摺動するペダル軸41との位置関係からペダルブラケット17がダッシュパネル1側を中心に後回りに(ペダルブラケット17の後部が下方に向かうように)回転する。このため、ペダルブラケット17を車両後方へ押圧する力の成分のうち、その大部分はペダル軸41がガイド部材53のガイド面57に沿って摺動する方向に向けられ、ペダル軸41はガイド面57を滑らかに摺動する。これに伴い、ペダルブラケット17に支持されるブレーキペダル15のペダル部16の車体後方への移動が抑制される。
本実施形態の自動車のペダル支持構造は、ペダルブラケット17の延長部29,29間にペダル軸41を設け、このペダル軸41よりも上方に設けた取付部73,73と、ガイド部材53の上壁部に取り付けた連結板81とを締結してペダルブラケット17とガイド部材53とを離脱可能に連結している。このため、自動車の衝突時にペダルブラケット17をガイド部材53から離脱し易くし、ブレーキペダル15のペダル部16が車体後方へ移動するのを確実に抑制する安価な自動車のペダル支持構造が得られる。
本実施形態では、ブレーキペダル15を支持するペダル軸41をガイド部材53のガイド面57に当接させている。このため、別途ガイド部材53に当接する当接部を設ける必要はなく、コスト面及びレイアウト面で有利である。
本実施形態では、ガイド部材53の左右側壁部55の下端部にガイド面57を設けている。このため、ブレーキペダル15がガイド部材53に干渉することなくペダル軸41がガイド面57に当接して摺動することができる。
本実施形態では、ペダルブラケット17がガイド部材53から離脱後にペダル軸41をガイド面57に当接させている。このため、摩擦抵抗が軽減され、インパネメンバ9への荷重が軽減される。
本実施形態では、連結板81を2つの開放部83,83間の中央部でガイド部材53の前端上部59に回転可能に取り付けている。このため、ボルト61,61が連結板81の開放部83,83から容易に離脱することができ、インパネメンバ9にかかる荷重が軽減される。
本実施形態では、ブレーキペダル15に本発明を適用している。自動車の衝突時には、その衝突を回避するためにドライバがブレーキペダル15を踏んで自動車を制動しているので、ドライバの足に負担がかかり易いが、本実施形態によると、運転席の足下に大きなスペースを維持することができるため、ドライバの足を保護することができる。
(その他の実施形態)
上記実施形態1〜6では、操作ペダルをブレーキペダル15としているが、本発明は、その他の自動車のダッシュパネル後方に配置される操作ペダルの支持構造についても適用することができる。例えば、クラッチペダルやパーキングブレーキに適用できる。さらに、当接部(第1当接部)は自動車の非衝突時においてガイド部材(第1ガイド部材)に当接(接触)しているものであってもよい。
さらに、上記実施形態1〜4では、ペダルブラケット17の後端上部23をインパネメンバ9に設けたガイド部材53の前端上部59に離脱可能に連結したが、カウルメンバ側に離脱可能に連結してもよい。
また、ペダル軸41や当接ピン42の形状を円柱体ではなく、中空の円筒体としてもよい。なお、当接部は、円柱体又は円筒体であれば、レイアウト上有利で、当接部の位置関係を調整し易く、一層ペダルブラケット17の姿勢の変化の度合いをコントロールし易い。