以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るペダル支持構造Aの概略図、図2はペダル支持構造Aが適用された左ハンドル車の車室前部の概略を示す図である。ダッシュパネル1は、エンジン2が収容されたエンジンルーム3と車室4とを区画形成するように配設されている。ダッシュパネル1の車両後方側にはインストルメントパネル(図示せず)が設けられ、その内部を車幅方向にインパネリーンフォースメント5が設けられており、インストルメントパネル内の各構成物を支持するように構成されている。インパネリーンフォースメント5は、車体左右に設けられた一対のフロントピラー6により支持されている。また、インパネリーンフォースメント5にはステアリングコラム8を支持するハンガブラケット7が取付けられている。ステアリングコラム8にはステアリングシャフト9が挿通しており、その端部にはステアリングホイール10が取付けられている。ハンガブラケット7の下方には、アクセルペダル11とブレーキペダル100とが配設されている。本実施形態のペダル支持構造Aはこのブレーキペダル100について適用される。
以下、図1及び図3を参照してペダル支持構造Aの構成を詳述する。図3はペダル支持構造Aの構成部品の分解図(一部破断)である。ペダル支持構造Aはブレーキペダル100と、ブレーキペダル100を回動自在に支持するペダルブラケット200と、を備え、これらがブレーキペダルユニットを構成している。ブレーキペダル100はアーム部101とアーム部101の下端部に取付けられたパッド部102とを備える。ペダル100はそのアーム部101の上端部において軸103を介してペダルブラケット200に回動自在に支持されており、運転者によるパッド部102の踏み込みに応じて車両前後方向に揺動する。本実施形態の場合、軸103はアーム部101に固定されており、ペダルブラケット200に設けられた穴201aにこの軸103が挿入され、支持するように構成されている。
アーム部101の中程にはリターンスプリング12の一方の端部が取付けられている。このリターンスプリング12はブレーキペダル100に対して、図1における反時計回りの回動力を与えるように設けられており、運転者がパッド部102を踏み込んだ後、パッド部102が車両後方側へ戻るようにするための構成である。アーム部101の中程には、また、オペレーティングロッド13の一方の端部が回動自在に取付けられている。このオペレーティングロッド13はダッシュボード1に設けられた穴1aを通過し、その他方の端部がエンジンルーム3内に配設されたマスタシリンダ(図示せず)にマスタバック14を介して連結されている。ペダル部102を踏み込んでブレーキペダル100を図1の時計回り方向に回動させると、オペレーティングロッド13に押されてマスタバック14が作動し、マスタバック14によりマスタシリンダに対する押圧力が増大する。そして、マスタシリンダからの油圧により車輪にブレーキがかけられることになる。
ペダルブラケット200は、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部201と、側板部201の車両後方側の上部に形成された上板部202と、側板部201の車両後方側に形成された後端部203と、側板部201の車両前方側に形成された前端部204と、を備える。ペダルブラケット200は前端部204においてダッシュパネル1に固定されている。ペダルブラケット200は、例えば、ダッシュパネル1を前端部204とマスタバック14とで挟み込むようにしてマスタバック14に対してボルト等により締結することでダッシュパネル1に固定される。次に、側板部201にはブレーキペダル100の軸103が挿入される穴201aが設けられており、ブレーキペダル100のアーム部101の上部は側板部201間に配置される。また、軸103は側板部201から側方に一定量突出するように設定されており、これが後述する当接部を構成する。次に、後端部203は弧状の曲面をなしており上板部202と滑らかに連続している。この後端部203も後述する当接部を構成する。上板部202は、車両方向前方に開放するスロット202aが2列設けられている。ペダルブラケット200は、後述するとおり、このスロット202aを介して案内部材250を構成する第1案内部材300に固定される。つまり、本実施形態においてペダルブラケット200はダッシュボードと第1案内部材300とにより2箇所で固定されることになる。
第1案内部材300は、ペダルブラケット200に対して車両後方側に配設されており、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部301と、棚板部302と、側板部201の車両後方側上部に形成され、第1案内部材300を第2案内部材400に取付けるための取付面303と、を有する。取付面303は、その面方向が車幅方向で、かつ、所定の角度で車両の上下方向に向いて形成されている。本実施形態の場合、この取付面303は車両後方へ向かって下方に傾斜している。側板部301は、その車両前方側の縁が外側に曲折されており、その曲折された部分の下面が第1案内面301aを構成している。この第1案内面301aは、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側に移動した場合に、第1当接部となる軸103が当接して摺動する案内面として機能するものであり、本実施形態では軸103に対して車両後方側に配置されると共に、車両後方に向かって下方に直線的に傾斜するように形成されている。
次に、第1案内部材300の棚板部302にはペダルブラケット200を固定するための固定部302aが設けられている。以下、図4(a)を参照して第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定構造について説明する。図4(a)は通常時(つまり、正面衝突等が発生していない状態)における第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定構造を示す破断図である。固定部302aには上下方向に貫通してねじ穴が設けられており、このねじ穴の下の棚板部302にも穴が設けられている。
しかして、この固定部302aの下にペダルブラケット200のスロット202aが位置するようにペダルブラケット200の上板部202が第1案内部材300の棚板部302の下に重ね合わせられ、ペダルブラケット200の上板部202の下側から2本のボルト15が各スロット202a及び棚板部302の穴を通過するように差し込まれる。そして、ボルト15を固定部302aのねじ穴に螺合し、締結することでペダルブラケット200が第1案内部材300に固定される。また、同図に示すように本実施形態では第1当接部となる軸103は案内面301aに当接せず、これと離隔した状態でペダルブラケット200は固定されている。なお、ペダルブラケット200の車両後方側部分は、第1案内部材300の側板部301間に配置された状態となる。
次に、図4(b)を参照して、第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が解除される場合の作用について説明する。図4(b)は、図4(a)の状態から第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が解除される場合の作用を示した図である。同図の矢印に示すように、ペダルブラケット200に対して車両後方側に向けて荷重が作用すると、これに付勢されてペダルブラケット200は第1案内部材300に対して相対的に車両後方側へ移動しようとする。この時、ボルト15と固定部302aとの間の締結により、ペダルブラケット200の移動は規制されるが、スロット202aの車両前方側が開放しているので、ペダルブラケット200に対する荷重が一定の範囲を超えると、第1案内部材300の棚板部302の下面をペダルブラケット200の上板部202が滑るようにして、ペダルブラケット200は第1案内部材300に対して相対的に車両後方側へ移動する。
その後、ボルト15がスロット202aを通過して、第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が完全に解除されることになる。本実施形態では軸103と第1案内面301aとが離隔した状態から当接するようにしているので、ペダルブラケット200の固定を解除するにあたり、第1案内面301aがペダルブラケット200の移動を拘束しない。従って、ペダルブラケット200の固定を確実に解除することができる。軸103と第1案内面301aとを離隔させる距離は、例えば、軸103が第1案内面301aに到達したときにボルト15がスロット202aを通過する程度に定めることができる。このような構成により、本実施形態では、通常時においては、第1案内部材300によりペダルブラケット200を、いわば一時的に固定しておく一方で、ペダルブラケット200に対して車両後方側に向けて一定の荷重が作用すると、固定を解除してペダルブラケット200が車両後方側へ移動することが許容されるように構成している。尤も、軸103と第1案内面301aとを離隔した状態から当接するのではなく、当初から軸103を第1案内面301aに当接しておいてもよい。
次に、図1及び図3に戻り、第2案内部材400について説明する。第2案内部材400はペダルブラケット200に対して第1案内部材300よりも更に車両後方側に配設されており、ハンガブラケット7に対する取付面となる車両後方側の取付面401と、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部402と、車両前方側に形成され、第1案内部材300が取り付けられる取付面403と、車両前方側に形成された第2案内面404と、を備える。取付面403は取付面303と同じ方向で同様に傾斜している。
第2案内面404は、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側に移動した場合に、第2当接部となるペダルブラケット200の後端部203が当接して摺動する案内面として機能するものである。本実施形態では第2案内面404は後端部203に対して車両後方側に配置されると共に、車両後方に向かって下方に直線的に傾斜するように形成されている。また、第2案内面404は第1案内面301aの車両後方側に、これと水平に並ぶように配置されており、両者は車両の前後方向に並んで配置されている。こうすることで、第1及び第2案内面301a、404の車両上下方向の占有スペースを縮小することができ、コンパクト化が図れる。
そして、軸103、後端部203、第1案内面301a及び第2案内面404は、ペダルブラケット200が車体に対して相対的に車両後方側へ移動した場合に、最初に軸103が第1案内面301aに当接して摺動し、その摺動途中又は摺動終了後に後端部203が第2案内面404に当接して摺動するように、相互の配置関係が設定されている。つまり、本実施形態では、2つの案内面301a及び404を用いて、いわば2段階でペダルユニットの姿勢の変化を案内するようにしている。
2つの案内面301a及び404の傾斜角度は、略同一にしてもよいが、第1案内面301aの傾斜角度は、ペダルブラケット200が初期変形を生じるようにする一方で、軸103の当接時の衝撃荷重が主インパネリーンフォースメント5に過剰に作用しないように第2案内面404よりも水平方向に、第2案内面404の傾斜角度はペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形させ、パッド部102が車両後方側へ移動することの抑制を確実にすべく比較的垂直に設定することもでき、それぞれ目的とする機能に応じて設定することができる。このように本実施形態では、当接部(軸103、後端部203)及び案内面(第1案内面301a及び第2案内面404)を2組設けることで、1組の場合よりもレイアウトの自由度を高めることができる。特に、当接部と案内面とを1組とした場合よりも、案内面の上下方向の長さを短くしてより長い摺動距離を得ることができる。更に、1つの当接部が2つの案内面を摺動するのではなく、当接部と案内面とをそれぞれ2つづつ設けることで、2つの案内面の位置をそれぞれ独立して設定することができ、よりレイアウトの自由度を向上できる。
また、本実施形態では、軸103と後端部203とが車両前後方向に配置されており、第1案内面301aと第2案内面404とが車両前後方向に配置されている。更に、車両前方から正面視すると、軸103のうち第1案内面301aに当接する部分(ペダルブラケット200の側板部201から突出する部分)が、後端部203の左右に位置しており、これらは車幅方向にずれて配置されている。そして、軸103の当接部分と後端部203の位置に対応して、第1案内面301aが第2案内面404の左右に位置しており、これらも車幅方向にずれて配置されている。
このような構造の利点は以下の通りである。まず、自動車の正面衝突等によりペダルブラケット200は車両後方へ移動した時、軸103と後端部203とは同じ方向(車両後方側)へ移動するが、軸103が第2案内面404に、又は、後端部203が第1案内面301aに当接してしまうといった本来予定していない事態を回避できる。しかも、これらの各構成の車両前後方向の間隔を詰めたレイアウトが可能となるのでコンパクト化が図れる。更に、これらの各構成を略水平方向に直線的に配置することができるので、上下方向のスペースも小さくなるため、結局全体として極めてコンパクト化が図れる。
また、これらの各構成を略水平方向に配置することができるので、ペダルブラケット200は、これらの各構成を上下方向に配置するレイアウトの場合よりも車両前後方向の長さをより大きくとれる。自動車の正面衝突等が生じた場合、ペダルブラケット200は、その前端部204から概ね車両前後方向に衝撃荷重を受ける一方、軸103又は後端部203を介して第1案内面301a又は第2案内面404から反力を受けることで、曲げモーメントが加えられるが、ペダルブラケット200の車両前後方向の長さを大きくとれると、衝撃荷重が加わる位置と反力が加わる位置とが長くなり、より大きな曲げモーメントが作用する。この結果、ペダルブラケット200を折り曲げることが容易化する。更に、図1等で示したように、ペダルブラケット200は、ダッシュパネル1と固定部302aとの2箇所で固定されるが、これらの距離をより大きくとれるので通常時において前記ブラケットをより安定して支持することも可能となる。
次に、第1案内部材300と第2案内部材400とは、取付面303と取付面403を面接触させて、この部位のみにおいてボルト等の締結具により固定することで、一体化されている。また、第2案内部材400は、取付面401をボルト等の締結具によりハンガブラケット7に固定することで、ハンガブラケット7を介してインパネリーンフォースメント5に支持されている。このため、第1案内部材300及び第2案内部材400全体がインパネリーンフォースメント5に支持されることになる。尤も、第1案内部材300をハンガブラケット7に固定するようにしてもよいし、第1案内部材300と第2案内部材400の双方を個別にハンガブラケット7に固定するようにしてもよい。
次に、インパネリーンフォースメント5と、各当接部(103、203)及び各案内面(301a、404)と、の配置関係について図6を参照して説明する。本実施形態では、軸103の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向(図6(a)の矢線d1)が、インパネリーンフォースメント5の軸心Pを通過しないように設定されている。初期当接位置とは、本実施形態のように当初軸103を第1案内面301aから離隔させた構成の場合は、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側へ移動した時に軸103が第1案内面301aに当接する位置を意味し、衝突荷重が入力される位置となる。なお、衝撃荷重の方向は、必ずしも一定ではないため、初期当接位置には若干のばらつきが予想されるが、概ね一定のエリアにおさまる。また、本実施形態では採用しないが当初から軸103を第1案内面301aに当接しておく構成を採用した場合は、その位置が初期当接位置となる。
しかして、衝撃荷重の第1案内面301aに平行な方向な成分は、直交する方向の成分との関係においては無視できる程小さいので,衝撃荷重の向きは、同図の矢線d1に示す、第1案内面301aに略直交する方向となる。そこで、第1案内面301aの傾斜角度を、同図に示すように、軸103の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向(矢線d1)が、インパネリーンフォースメント5の軸心Pを通過しないように設定されている。この構成により、衝撃荷重の方向がインパネリーンフォースメント5の軸心を通過しないようにすることで、インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重をいなして緩和し、曲げ荷重をより小さくすることができ、その折損等を免れる。とりわけ、本実施形態では、軸103の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向(矢線d1)が、軸心Pのみならずインパネリーンフォースメント5を通過しないようにしているので、衝撃荷重が同図に示すようにインパネリーンフォースメント5の断面に作用せず、一層衝撃荷重をいなして緩和することができる。
このように本実施形態では、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重を緩和することができるので、その構造的補強が要求されないばかりか、主インパネリーンフォースメント5が同じ構成であれば、第1案内面300の傾斜をより垂直にすることができる。このため、第1案内面300の車両前後方向の幅や第2案内面404との間隔をより狭くでき、コンパクト化が図れると共にペダルブラケット200をより曲げ易くなる。
次に、衝突時の初期段階を経過した後について説明する。正面衝突等の初期の段階では、衝撃荷重の入力によりインパネリーンフォースメント5に作用する荷重がピークとなるが、第1案内面301aを軸103が摺動し始めると、当該荷重も徐々に安定していくことになる。この場合、インパネリーンフォースメント5を折損するまでには至らないと考えられるから、第1案内面301aが軸103から受ける荷重をむしろインパネリーンフォースメント5で十分に受け止め、ペダルブラケット200の曲げの反力に抵抗できるようにすることが望ましい。このようにすれば、インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重を緩和しながらペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形してペダル100のパッド部102が車両後方へ相対移動することを抑制することが可能となる。
そこで、本実施形態では軸103が第1案内面301aを摺動するに従って、その摺動箇所における第1案内面301aに直交する方向が、インパネリーンフォースメント5の軸心に徐々に近づくように設定されている。図6(b)は軸103が第1案内面301aを摺動している途中の場合を示した図である。図6(b)において、矢線d2は軸103の摺動箇所における第1案内面301aに直交する方向を示しており、これは同時に軸103から第1案内面301aが受ける荷重の向きを示している。図6(b)の場合、軸心Pに対する矢線d2のオフセット量(軸心Pから矢線d2の線分に垂線を引いた場合のその長さ)が、図6(a)における軸心Pに対する矢線d1のオフセット量よりも小さくなっている。つまり、第1案内面301aに直交する方向が軸心Pに近づいていることにある。このため、衝突時の初期の段階においてはインパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重をいなして緩和し、その後においては第1案内面301aが軸103から受ける荷重をインパネリーンフォースメント5によって十分に受け止めることができ、ペダルブラケット5の曲げを促進することが可能となる。
本実施形態では、第1案内面301aが車両後方に向かって下方に直線的に傾斜されるように形成されると共に、第1案内面301aがインパネリーンフォースメント5の軸心よりも車両前方で下方に配置されている。また、図6(a)に示すように、矢線d1はインパネリーンフォースメント5の上側を通過している。このため、軸103が第1案内面301aを摺動して下方に移動するに従って、各摺動箇所における第1案内面301aに直交する方向(つまり第1案内面301aが軸103から受ける荷重の作用方向)も略平行に下方に移動し、インパネリーンフォースメント5を通過し、その断面に荷重が作用することになる。これにより第1案内面301aが軸103から受ける荷重をインパネリーンフォースメント5で十分に受け止めることができ、ペダルブラケット200の曲げ、特に、初期変形をより確実に生じさせることができる。
次に、後端部203が第2案内面404を摺動している場合について説明する。図6(c)は後端部203が第2案内面404を摺動している場合を示す。本実施形態では、第2案内面404は、その任意の位置において第2案内面404に直交する方向がインパネリーンフォースメント5を通過するように設定されている。図6(c)において、矢線d3は後端部203の摺動箇所における第2案内面404に直交する方向を示しており、これは同時に後端部203から第2案内面404が受ける荷重の向きを示している。矢線d3はインパネリーンフォースメント5を通過しているので、後端部203から第2案内面404が受ける荷重は、インパネリーンフォースメント5の断面に作用する。矢線d3は第2案内面404上のある一点における第2案内面404に直交する方向を示しているが、任意の位置において、第2案内面404に直交する方向はインパネリーンフォースメント5を通過する。本実施形態の場合、第2案内面404が車両後方に向かって下方に直線的に傾斜されるように形成されているので、第1案内面301aの場合と同様に、後端部203が第2案内面404を摺動して下方に移動するに従って、各摺動箇所における第2案内面404に直交する方向も略平行に下方に移動することになる。
本実施形態では、図6(a)の矢線d1がインパネリーンフォースメント5の上方を通過しているので、軸心Pに対する図6(c)の矢線d3のオフセット量は、図6(a)における軸心Pに対する矢線d1のオフセット量よりも当然小さくなっており、衝撃荷重入力時よりもインパネリーンフォースメント5に対して荷重がかかり易くなっている。更に、第2案内面404の任意の位置において、第2案内面404に直交する方向はインパネリーンフォースメント5を通過するので、荷重はインパネリーンフォースメント5の断面に作用し、より一層荷重がかかり易い。つまり、第2案内面404を後端部203が摺動する場合に、第2案内面404が後端部203から受ける荷重が常時インパネリーンフォースメント5の断面に作用するので、第2案内面404が後端部203から受ける荷重をインパネリーンフォースメント5によって十分に受け止めることができ、ペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形することができる。このように本実施形態では、衝撃荷重の入力時における、インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重を緩和してその折損等を防止しつつ、ペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形することができる。
次に、係る構成からなるペダル支持構造Aについて、正面衝突時の作用について図5を参照して説明する。図5(a)は通常時の態様を示しており、軸103と第1案内面301a及び後端部203と第2案内面404は、それぞれ離隔した状態にあり、また、ペダルブラケット200が第1案内部材300の固定部302aに固定された状態にある。ここで、ペダル支持構造Aが適用された自動車が障害物と正面衝突等を生じ、ペダルブラケット200に車両後方側に向けて衝撃荷重が作用した場合、図4を参照して説明したように、固定部302aによるペダルブラケット200の固定が解除されて、ペダルブラケット200及びペダル100が若干車両後方側へ移動し、軸103が第1案内面301aに当接する(図5(b))。後端部203と第2案内面404とは未だ離隔したままである。この時、図6(a)を参照して説明した通り、インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重はいなされて緩和されるので、その折損等が防止される。
その後、図5(c)に示すように、軸103が第1案内面301aに案内されてこれを摺動し、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢を変化させる。より具体的には、ペダルブラケット200及びペダル100は、車両後方側に向かって下方に移動すると共に、ペダルブラケット200が曲がり始めてペダルブラケット200の車両後方側の部分が同図の時計回りに回動し始める。この時、図6(b)を参照して説明した通り、インパネリーンフォースメント5に荷重が作用し易くなるので、ペダルブラケット200からの反力がインパネリーンフォースメント5により十分に受け止められ、ペダルブラケット200の曲げが促進される。この結果、ペダル100のパッド部102はペダルブラケット200が車両後方側に移動しているにも関わらず、図5(a)に示す通常時の位置か、或いは、車両前方側に移動し、車両後方側への移動が抑制される。
ペダルブラケット200が更に車両後方側へ移動すると、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢が更に変化してパッド部102を車両前方側に移動させると共に、軸103が第1案内面301aから外れて後端部203が第2案内面404に当接し、摺動する(図5(d))。この時、図6(c)を参照して説明した通り、インパネリーンフォースメント5に荷重が作用し易い状態が継続されるので、ペダルブラケット200からの反力がインパネリーンフォースメント5により十分に受け止められ、ペダルブラケット200を狙った量だけ確実に曲げることができる。このような過程の途中でペダルブラケット200はより一層曲がり、やがて弾性限界に達して折れることになる。また、同図には図示していないが、オペレーションロッド13も曲がることになる。
その後、ペダルブラケット200及びペダル100は、後端部203が第2案内面404を摺動することによって、その姿勢が変化され、パッド部102をより車両前方へ導くことになる。本実施形態では、後端部203は弧状の曲面をなしており上板部202と滑らかに連続しているため、後端部203が第2案内面404の下端部の摺動終端点に至った後も、上板部202が第2案内面404の下端部に当接して摺動する(図5(e))。このため、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢の変化の案内がより長く継続される。このように本実施形態では、正面衝突等が生じた場合にも、運転者のフットスペースを確保することができる。
次に、第1案内面301aに衝突荷重が入力された場合に、第1案内部材300が車両の上下方向に逃げる作用について説明する。なお、本実施形態では以下に説明するように第1案内部材300を車両の上方向に逃がす構成としているが下方向へ逃がす構成としてもよい。
図7(a)に示すように通常時の態様においてペダルブラケット200に対して衝撃荷重が右上方の向きに入力されると、第1案内部材300は、固定部302aを介して或いは固定部302aによる固定解除後には第1案内面301aを介して、ペダルブラケット200から車両後方で上方の向きの衝撃荷重を受ける。第1案内部材300は取付面303において第2案内部材400の取付面403に固定されているため上方への移動が規制されるが、衝撃荷重が一定の範囲を超えると、取付面303の面方向が所定の角度で車両の上下方向に向いて形成されているため、取付面303が取付面403上を摺動するようにして第1案内部材300が、図7(b)に示すように上方へ僅かに逃げる。このように第1案内部材300を上方へ僅かに逃がすためには、例えば、取付面303と取付面403との間をボルトにより固定する場合、そのボルトが挿通する穴をやや大きめに設けておくことで可能である。また、ボルト等の締結具の変形を利用してもよい。
このようにして第1案内部材300が上方へ僅かに逃げることで衝撃荷重の緩衝作用が働き、インパネリーンフォースメント5に作用する衝突荷重を緩和することができる。第1案内部材300が上方へ逃げることにより、第1案内部材300が僅かに回動して第1案内面301aの傾斜角度が変化する畏れがあるが、本実施形態では取付面303が車両後方へ向かって下方へ傾斜しているので、第1案内部材300はこの取付面303の傾斜に案内され、第1案内部材300の上部には車両前方で上方へ向く反力が働く。従って、第1案内部材300は同図の反時計回りに僅かに回動し、第1案内面301aの傾斜角度は当初の角度よりも僅かに緩やかになり、その傾斜が急になる場合よりも軸103の摺動を円滑に行える。このように取付面303の傾斜を適宜設定することで、第1案内部材300の逃げ方の制御が可能となり、第1案内面301aの傾斜角度に対する影響を制御することができる。
また、第1案内部材300が上方へ僅かに逃げることで、第1案内面301aが僅かに上昇するので第1案内面301aに対する軸103の摺動距離が短くなり、第1案内面301aの案内によるペダル100及びペダルブラケット200の姿勢の変化量が小さくなる可能性があるが、本実施形態では、軸103が第1案内面301aを摺動した後、後端部203が第2案内面404を摺動し、ペダル100及びペダルブラケット200の最終的な姿勢の変化は第2案内面404に依存するので、ペダル100及びペダルブラケット200の姿勢の変化を十分に得られることになる。
<他の実施形態>
上記実施形態では各案内面(301a、404)を直線状に傾斜するように構成したが曲線的な面であってもよい。更に、上記実施形態では軸103及び後端部203を当接部としたが、当接部の位置はこれに限られず、ペダル100及びペダルブラケット200の任意の位置に適宜設定することができ、また、ペダル100又はペダルブラケット200とは別の部材をこれに一体に固定することで当接部を形成してもよい。