ここで、特許文献1のようなペダル支持構造では、案内面に対して衝撃荷重が入力されると、これがインパネリーンフォースメントに作用するが、過剰に作用すると場合によってはインパネリーンフォースメントが折損し、ペダルブラケットを折り曲げる際の反力をインパネリーンフォースメントが受け止めることができなくなる。これではペダルブラケットを狙った量だけ確実に変形させ、その姿勢の変化を十分に得られず、ペダルのパッド部が車両後方へ相対移動することを十分に抑制できなくなる事態を生じ得る。
これを回避するするためにはインパネリーンフォースメントを構造的に強化することが挙げられるが、その大型化、高重量化を招くため望ましくない。また、インパネリーンフォースメントに作用する衝撃荷重を緩和するためには、案内面の前半部分の傾斜を比較的緩く設定することが挙げられる。例えば、特許文献1においても、車体側摺動部材の案内面はその前半部分においてはインパネリーンフォースメントに対する衝突荷重の軽減とペダルブラケットの固定の円滑な解除のために比較的傾斜が緩く、その後半部分においてはペダルブラケットの大きな姿勢変化を得るべく傾斜が急になるように設定されている。しかし、この構成では案内面が長くなって大型化し、レイアウト上必ずしも好ましくない。
従って、本発明の目的は、案内面のレイアウトの自由度を向上すると共に、衝撃荷重の入力時における、インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を緩和してその折損等を防止しつつ、ペダルブラケットを狙った量だけ確実に変形してペダルのパッド部が車両後方へ相対移動することを抑制することにある。
本発明によれば、ペダル及び該ペダルを回動自在に支持するブラケットを有するペダルユニットと、前記ペダルユニットに設けられた当接部が摺動する案内面を有する案内部材と、を備え、前記ブラケットが車両後方側へ移動した場合に、前記当接部が前記案内面を摺動することにより前記ペダルユニットの姿勢を変化させ、前記ペダルのパッド部が車両後方側に移動することを抑制するように前記案内面が設定された車両用ペダル支持構造において、前記当接部として前記ペダルに設けた第1の当接部と前記ブラケットに設けた第2の当接部とを備え、前記案内部材が、車両後方へ向かって下方へ傾斜すると共に前記第1の当接部が摺動する第1の案内面を有する第1の案内部材と、前記第1の案内部材の車両後方側に配設され、車両後方へ向かって下方へ傾斜すると共に前記第2の当接部が摺動する第2の案内面を有する第2の案内部材と、から構成され、前記第1及び第2の当接部と前記第1及び第2の案内面とが、前記ブラケットが車両後方側へ移動した場合に、前記第1の案内面に対する前記第1の当接部の摺動開始後に前記第2の当接部が前記2の案内面に当接するように設定され、前記案内部材を、車両のステアリングシャフトが挿通したステアリングコラムを支持するシャフト支持部材を介して車両の主インパネリーンフォースメントで支持し、前記第1の案内面は、前記第1当接部の初期当接位置において当該第1の案内面に直交する方向が、前記主インパネリーンフォースメントの軸心を通過しないように設定され、前記シャフト支持部材は、前記主インパネリーンフォースメントに加えて、当該主インパネリーンフォースメントから離隔して配設された副インパネリーンフォースメントに支持され、前記主インパネリーンフォースメントの両端部及び前記副インパネリーンフォースメントの両端部が、それぞれ、車両の左右のフロントピラーに支持されていることを特徴とする車両用ペダル支持構造が提供される。
本発明の車両用ペダル支持構造では、前記第1及び第2の当接部、及び、前記第1及び第2の案内面を設けることで、摺動箇所を2箇所で構成し、前記第1の案内面に対する前記第1の当接部の摺動開始後に前記第2の当接部が前記2の案内面に当接するようにしている。従って、前記第1の案内面については、前記ペダルユニットからの前記主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を軽減し、また、前記ブラケットの初期変形を生じるように、前記第2の案内面については前記ブラケットを狙った量だけ確実に変形させ、前記ペダルのパッド部が車両後方側へ移動することの抑制を確実なものにする、といったように各摺動箇所の機能が割り当てられ、それぞれ第1及び第2の案内面を別々に設定できるので、レイアウトの自由度を向上することができる。
この構成の場合、前記第1の案内面に衝撃荷重が入力されるが、本発明では、前記案内部材が前記シャフト支持部材を介して前記主インパネリーンフォースメントに支持されているので、前記案内部材に対する車両後方への荷重に対して前記ステアリングシャフトが抵抗する。従って、前記主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重が緩和される。加えて、前記第1の案内面は、前記第1当接部の初期当接位置において当該第1の案内面に直交する方向が、前記主インパネリーンフォースメントの軸心を通過しないように設定されているので、当該主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重がいなされ、曲げ荷重をより小さくできる。つまり、衝撃荷重の前記第1の案内面に平行な方向な成分は、直交する方向の成分との関係においては、無視できる程小さいので衝撃荷重の向きは、前記第1の案内面に略直交する方向となる。そこで、上記構成により衝撃荷重が前記主インパネリーンフォースメントの軸心を通過しないようにすることで、衝撃荷重をいなし、曲げ荷重をより小さくすることができる。
このように本発明では、前記主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を緩和することができるので、その構造的補強が要求されないばかりか、前記第1の案内面の傾斜をより垂直にすることができるので、当該第1の案内面の車両前後方向の幅や前記第2の案内面との間隔をより狭くでき、コンパクト化が図れると共に前記ブラケットをより曲げ易くなる。
ここで、衝撃荷重が前記主インパネリーンフォースメントの軸心を通過しないように構成すると、前記主インパネリーンフォースメントにはねじりが加わる。前記主インパネリーンフォースメントがねじれると、前記シャフト支持部材が僅かに回動し、これに支持された前記案内部材も僅かに回動する可能性がある。前記案内部材が回動すると前記第2の案内面の傾斜が変わり、前記ブラケットを狙った量だけ確実に変形させることが妨げられる場合がある。
しかし、本発明では、前記シャフト支持部材は、前記主インパネリーンフォースメントに加えて、当該主インパネリーンフォースメントから離隔して配設された副インパネリーンフォースメントに支持されているので、当該副インパネリーンフォースメントが前記シャフト支持部材の回動に抵抗する。このため、前記案内部材の回動も抑制され、前記第2の案内面の傾斜が変わらない。したがって、上述したような問題は生じず、前記ブラケットを狙った量だけ確実に変形させることができる。前記副インパネリーンフォースメントは前記主インパネリーンフォースメントから離隔すればする程、より低剛性で前記シャフト支持部材の回動に抵抗することが可能となる。
このように本発明のペダル支持構造では、案内面のレイアウトの自由度を向上すると共に、衝撃荷重の入力時における、インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を緩和してその折損等を防止しつつ、ペダルブラケットを狙った量だけ確実に変形してペダルのパッド部が車両後方へ相対移動することを抑制することができる。
本発明においては、前記シャフト支持部材は、前記ステアリングシャフトと略平行に延在して形成され、前記第1の案内面は、前記第1当接部の初期当接位置において当該第1の案内面に直交する方向が、前記ステアリングシャフトと略平行に、かつ、前記シャフト支持部材を通過するように設定されていてもよい。
この構成によれば、前記第1の案内面に加わる衝撃荷重が前記ステアリングシャフトと略平行になり、かつ、前記シャフト支持部材を通過するため、衝撃荷重が前記ステアリングシャフトに効果的に伝達され、その抵抗力を最大限利用することができ、前記主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を一層緩和できる。
この場合、前記シャフト支持部材は、前記案内部材が取付けられる車両前方側の断面が、車両後方側の断面よりも大きくてもよい。この構成によれば、衝撃荷重を前記シャフト支持部材に入力し易くなると共に、その大型化を防止できる。 また、この場合、前記シャフト支持部材は、前記案内部材が取付けられる車両前方側の端面を有し、当該端面が前記ステアリングシャフトと略直交するように設定されていてもよい。この構成によれば、前記端面が前記ステアリングシャフト及び前記シャフト支持部材の長手方向の双方と略直交することになるので、前記シャフト支持部材の剛性を効果的に活用できると共に前記ステアリングシャフトに衝撃荷重を効果的に伝達することができる。
更に、前記第1の案内面は、前記第1当接部の初期当接位置において当該第1の案内面に直交する方向が、前記端面の略中心を通過するように設定されていれば、前記シャフト支持部材の剛性を最も効果的に活用することができる。
また、本発明においては、前記第1及び第2の当接部を車幅方向にずらして配置すると共に、前記第1及び第2の案内面を、前記第1及び第2の当接部の位置に対応して、車幅方向にずらして配置することで、前記第1及び前記第2の案内面を略水平に並べて配置することもできる。この構成により、前記第1及び第2の案内面の上下方向の配置スペースを縮小でき、コンパクト化を図ることができる。
また、本発明においては、前記第1の案内面は、前記第1の当接部が当該第1の案内面を摺動するのに従って、当該第1の案内面に直交する方向が、前記主インパネリーンフォースメントの軸心に近づくように設定されていてもよい。この構成によれば、衝突時の初期の段階においては前記主インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重をいなして緩和し、その後においては前記第1の案内面が前記第1の当接部から受ける荷重を前記主インパネリーンフォースメントによって十分に受け止めることができ、前記ブラケットの曲げを促進することが可能となり、前記ブラケットを狙った量だけ確実に変形してペダルのパッド部が車両後方へ相対移動することをより確実に抑制することができる。
以上述べた通り、本発明によれば、衝撃荷重の入力時における、インパネリーンフォースメントに対する衝撃荷重を緩和してその折損等を防止しつつ、ペダルブラケットを狙った量だけ確実に変形してペダルのパッド部が車両後方へ相対移動することを抑制することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るペダル支持構造Aの概略図、図2はペダル支持構造Aが適用された左ハンドル車の車室前部の概略を示す図である。ダッシュパネル1は、エンジン2が収容されたエンジンルーム3と車室4とを区画形成するように配設されている。ダッシュパネル1の車両後方側にはインストルメントパネル(図示せず)が設けられ、その内部を車幅方向に主インパネリーンフォースメント5が設けられており、インストルメントパネル内の各構成物を支持するように構成されている。主インパネリーンフォースメント5は、車体左右に設けられた一対のフロントピラー6により支持されている。また、主インパネリーンフォースメント5には、ステアリングコラム8を介してステアリングシャフト9を支持するシャフト支持部材7が取付けられている。
シャフト支持部材7はステアリングシャフト9と略平行に延在しており、その長手方向がステアリングシャフト9と略平行でかつ車両前後方向に向いている。また、シャフト支持部材7は、車両前方側の断面が、車両後方側の断面よりも大きく設定されており、車両後方側へ向かって断面が概ね徐々に小さくなるように構成されている。ステアリングコラム8にはステアリングシャフト9が挿通しており、その車両後方側端部にはステアリングホイール10が取付けられている。ステアリングシャフト9の車両前方側端部はエンジンルーム3においてステアリング装置(図示しない)に連結されている。シャフト支持部材7の下方には、アクセルペダル11とブレーキペダル100とが配設されている。本実施形態のペダル支持構造Aはこのブレーキペダル100について適用される。
副インパネリーンフォースメント16は、本来的にはインストルメントパネル内の構成物を支持するための部材であって、当該構成物を支持するためにインストルメントパネル内に配設されたいくつかの支持部材の1つに過ぎないものを適用することができる。本実施形態ではこれをシャフト支持部材7を支持するためにも用いており、主インパネリーンフォースメント5から車両後方側へ離隔して配設されている。副インパネリーンフォースメント16は、主インパネリーンフォースメント5と同様にフロントピラー6により支持されているものでもよいが、主インパネリーンフォースメント5程の剛性は必ずしも要求されないので、必ずしもフロントピラー6に支持されているものである必要はない。
以下、図1及び図3を参照してペダル支持構造Aの構成を詳述する。図3はペダル支持構造Aの構成部品の分解図(一部破断)である。ペダル支持構造Aはブレーキペダル100と、ブレーキペダル100を回動自在に支持するペダルブラケット200と、を備え、これらがブレーキペダルユニットを構成している。ブレーキペダル100はアーム部101とアーム部101の下端部に取付けられたパッド部102とを備える。ペダル100はそのアーム部101の上端部において軸103を介してペダルブラケット200に回動自在に支持されており、運転者によるパッド部102の踏み込みに応じて車両前後方向に揺動する。本実施形態の場合、軸103はアーム部101に一体的に固定されており、ペダルブラケット200に設けられた穴201aにこの軸103が挿入され、支持するように構成されている。
アーム部101の中程にはリターンスプリング12の一方の端部が取付けられている。このリターンスプリング12はブレーキペダル100に対して、図1における反時計回りの回動力を与えるように設けられており、運転者がパッド部102を踏み込んだ後、パッド部102が車両後方側へ戻るようにするための構成である。アーム部101の中程には、また、オペレーティングロッド13の一方の端部が回動自在に取付けられている。このオペレーティングロッド13はダッシュボード1に設けられた穴1aを通過し、その他方の端部がエンジンルーム3内に配設されたマスタシリンダ(図示せず)にマスタバック14を介して連結されている。ペダル部102を踏み込んでブレーキペダル100を図1の時計回り方向に回動させると、オペレーティングロッド13に押されてマスタバック14が作動し、マスタバック14によりマスタシリンダに対する押圧力が増大する。そして、マスタシリンダからの油圧により車輪にブレーキがかけられることになる。
ペダルブラケット200は、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部201と、側板部201の車両後方側の上部に形成された上板部202と、側板部201の車両後方側の端部である後端部に形成された後端面203と、側板部201の車両前方側に形成された前端部204と、を備える。ペダルブラケット200は前端部204においてダッシュパネル1に固定されている。ペダルブラケット200は、例えば、ダッシュパネル1を前端部204とマスタバック14とで挟み込むようにしてマスタバック14に対してボルト等により締結することでダッシュパネル1に固定される。次に、側板部201にはブレーキペダル100の軸103が挿入される穴201aが、ペダルブラケット200の後端部において設けられており、ブレーキペダル100のアーム部101の上部は側板部201間に配置される。また、軸103は側板部201から側方に一定量突出するように設定されており、これが後述する当接部を構成する。次に、後端面203は、上端部202の上端面と連続する弧状の曲面を形成している。この後端面203も後述する当接部を構成する。上板部202は、車両方向前方に開放するスロット202aが2列設けられている。ペダルブラケット200は、後述するとおり、このスロット202aを介して案内部材250を構成する第1案内部材300に固定される。つまり、本実施形態においてペダルブラケット200はダッシュボードと第1案内部材300とにより2箇所で固定されることになる。
第1案内部材300は、ペダルブラケット200に対して車両後方側に配設されており、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部301と、棚板部302と、側板部301の車両後方側上部に形成され、第1案内部材300を第2案内部材400に取付けるための取付面303と、を有する。側板部301は、その車両前方側の縁が外側に曲折されており、その曲折された部分の下面が第1案内面301aを構成している。この第1案内面301aは、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側に移動した場合に、第1当接部となる軸103が当接して摺動する案内面として機能するものであり、本実施形態では軸103に対して車両後方側に配置されると共に、車両後方に向かって下方に直線的に傾斜するように形成されている。一対の側板部301は間隔をおいて形成されているので、側板部301間には下方が開放した空間が形成されている。このため、ペダルブラケット200の後端面203周辺の部分が側板部301間に進入した状態となっている。
次に、第1案内部材300の棚板部302にはペダルブラケット200を固定するための固定部302aが設けられている。以下、図4(a)を参照して第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定構造について説明する。図4(a)は通常時(つまり、正面衝突等が発生していない状態)における第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定構造を示す破断図である。固定部302aには上下方向に貫通してねじ穴が設けられており、このねじ穴の下の棚板部302にも穴が設けられている。
しかして、この固定部302aの下にペダルブラケット200のスロット202aが位置するようにペダルブラケット200の上板部202が第1案内部材300の棚板部302の下に重ね合わせられ、ペダルブラケット200の上板部202の下側から2本のボルト15が各スロット202a及び棚板部302の穴を通過するように差し込まれる。そして、ボルト15を固定部302aのねじ穴に螺合し、締結することでペダルブラケット200が第1案内部材300に固定される。また、同図に示すように本実施形態では第1当接部となる軸103は案内面301aに当接せず、これと離隔した状態でペダルブラケット200は固定されている。なお、ペダルブラケット200の車両後方側部分は、第1案内部材300の側板部301間に配置された状態となる。
次に、図4(b)を参照して、第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が解除される場合の作用について説明する。図4(b)は、図4(a)の状態から第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が解除される場合の作用を示した図である。同図の矢印に示すように、ペダルブラケット200に対して車両後方側に向けて荷重が作用すると、これに付勢されてペダルブラケット200は第1案内部材300に対して相対的に車両後方側へ移動しようとする。この時、ボルト15と固定部302aとの間の締結により、ペダルブラケット200の移動は規制されるが、スロット202aの車両前方側が開放しているので、ペダルブラケット200に対する荷重が一定の範囲を超えると、第1案内部材300の棚板部302の下面をペダルブラケット200の上板部202が滑るようにして、ペダルブラケット200は第1案内部材300に対して相対的に車両後方側へ移動する。
その後、ボルト15がスロット202aを通過して、第1案内部材300によるペダルブラケット200の固定が完全に解除されることになる。本実施形態では軸103と第1案内面301aとが離隔した状態から当接するようにしているので、ペダルブラケット200の固定を解除するにあたり、第1案内面301aがペダルブラケット200の移動を拘束しない。従って、ペダルブラケット200の固定を確実に解除することができる。軸103と第1案内面301aとを離隔させる距離は、例えば、軸103が第1案内面301aに到達したときにボルト15がスロット202aを通過する程度に定めることができる。このような構成により、本実施形態では、通常時においては、第1案内部材300によりペダルブラケット200を、いわば一時的に固定しておく一方で、ペダルブラケット200に対して車両後方側に向けて一定の荷重が作用すると、固定を解除してペダルブラケット200が車両後方側へ移動することが許容されるように構成している。尤も、軸103と第1案内面301aとを離隔した状態から当接するのではなく、当初から軸103を第1案内面301aに当接しておいてもよい。
次に、図1及び図3に戻り、第2案内部材400について説明する。第2案内部材400はペダルブラケット200に対して第1案内部材300よりも更に車両後方側に配設されており、シャフト支持部材7の前端面7aに対する取付面となる車両後方側の取付面405と、車幅方向に間隔を置いて形成された一対の側板部401及び402と、車両前方側に形成され、第1案内部材300が取り付けられる取付面403と、車両前方側に形成された第2案内面404と、を備える。側板部401は、シャフト支持部材7の側面に対する取付面にもなっている。
第2案内面404は、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側に移動した場合に、第2当接部となるペダルブラケット200の後端面203が当接して摺動する案内面として機能するものである。本実施形態では第2案内面404は後端面203に対して車両後方側に配置されると共に、車両後方に向かって下方に直線的に傾斜するように形成されている。また、第2案内面404は第1案内面301aの車両後方側に、これと水平に並ぶように配置されており、両者は車両の前後方向に並んで配置されている。こうすることで、第1及び第2案内面301a、404の車両上下方向の占有スペースを縮小することができ、コンパクト化が図れる。
そして、軸103、後端面203、第1案内面301a及び第2案内面404は、ペダルブラケット200が車体に対して相対的に車両後方側へ移動した場合に、最初に軸103が第1案内面301aに当接して摺動し、その摺動途中又は摺動終了後に後端面203が第2案内面404に当接して摺動するように、相互の配置関係が設定されている。つまり、本実施形態では、2つの案内面301a及び404を用いて、いわば2段階でペダルユニットの姿勢の変化を案内するようにしている。
2つの案内面301a及び404の傾斜角度は、略同一にしてもよいが、第1案内面301aの傾斜角度は、ペダルブラケット200が初期変形を生じるようにする一方で、軸103の当接時の衝撃荷重が主インパネリーンフォースメント5に過剰に作用しないように第2案内面404よりも水平方向に、第2案内面404の傾斜角度はペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形させ、パッド部102が車両後方側へ移動することの抑制を確実にすべく比較的垂直に設定することもでき、それぞれ目的とする機能に応じて設定することができる。このように本実施形態では、当接部(軸103、後端面203)及び案内面(第1案内面301a及び第2案内面404)を2組設けることで、1組の場合よりもレイアウトの自由度を高めることができる。特に、当接部と案内面とを1組とした場合よりも、案内面の上下方向の長さを短くしてより長い摺動距離を得ることができる。更に、1つの当接部が2つの案内面を摺動するのではなく、当接部と案内面とをそれぞれ2つづつ設けることで、2つの案内面の位置をそれぞれ独立して設定することができ、よりレイアウトの自由度を向上できる。
また、本実施形態では、軸103と後端面203とが車両前後方向に配置されており、第1案内面301aと第2案内面404とが車両前後方向に配置されている。更に、車両前方から正面視すると、軸103のうち第1案内面301aに当接する部分(ペダルブラケット200の側板部201から突出する部分)が、後端面203の左右に位置しており、これらは車幅方向にずれて配置されている。そして、軸103の当接部分と後端面203の位置に対応して、第1案内面301aが第2案内面404の左右に位置しており、これらも車幅方向にずれて配置されている。
このような構造の利点は以下の通りである。まず、自動車の正面衝突等によりペダルブラケット200は車両後方へ移動した時、軸103と後端面203とは同じ方向(車両後方側)へ移動するが、軸103が第2案内面404に、又は、後端面203が第1案内面301aに当接してしまうといった本来予定していない事態を回避できる。しかも、これらの各構成の車両前後方向の間隔を詰めたレイアウトが可能となるのでコンパクト化が図れる。更に、これらの各構成を略水平方向に直線的に配置することができるので、上下方向のスペースも小さくなるため、結局全体として極めてコンパクト化が図れる。
また、これらの各構成を略水平方向に配置することができるので、ペダルブラケット200は、これらの各構成を上下方向に配置するレイアウトの場合よりも車両前後方向の長さをより大きくとれる。自動車の正面衝突等が生じた場合、ペダルブラケット200は、その前端部204から概ね車両前後方向に衝撃荷重を受ける一方、軸103又は後端面203を介して第1案内面301a又は第2案内面404から反力を受けることで、曲げモーメントが加えられるが、ペダルブラケット200の車両前後方向の長さを大きくとれると、衝撃荷重が加わる位置と反力が加わる位置とが長くなり、より大きな曲げモーメントが作用する。この結果、ペダルブラケット200を折り曲げることが容易化する。更に、図1等で示したように、ペダルブラケット200は、ダッシュパネル1と固定部302aとの2箇所で固定されるが、これらの距離をより大きくとれるので通常時において前記ブラケットをより安定して支持することも可能となる。
次に、本実施形態では、2つの当接部のうち、一方を後端面203に、他方をペダル100と一体の軸103に設定している。この構成によれば、ペダルブラケット200のコンパクト化が図れ、ひいて支持構造A全体のコンパクト化を図ることができる。つまり、当接部には衝撃荷重が作用するため、高い剛性が要求されるところ、ペダルブラケット200には一方の当接部(後端面203)だけを割り当てることにより、剛性を高くする部位も1箇所で足り、双方の当接部を割り当てる場合よりも、剛性を高くすべき部位が減るので、ペダルブラケット200の小型化ができる。また、全体として剛性を下げられるため、より小さな荷重で曲げることが可能となる。なお、ペダル100は本来的に剛性が高く設計されるので、軸103を当接部としても既存のペダル100を用いることができ、その大型化は招かない。
次に、第1案内部材300と第2案内部材400とは、取付面303と取付面403を面接触させて、ボルト等の締結具により固定することで、一体化されている。また、第2案内部材400は、取付面401をボルト等の締結具によりシャフト支持部材7に固定することで、シャフト支持部材7を介して主インパネリーンフォースメント5に支持されている。このため、第1案内部材300及び第2案内部材400全体が主インパネリーンフォースメント5に支持されることになる。尤も、第1案内部材300をシャフト支持部材7に固定するようにしてもよいし、第1案内部材300と第2案内部材400の双方を個別にシャフト支持部材7に固定するようにしてもよい。シャフト支持部材7と第2案内部材とは、前端面7aと取付面405を面接触させてボルト等の締結具により固定されている。前端面7aは、シャフト支持部材7の長手方向に略直交するように形成されており、その結果、ステアリングシャフト9と略直交するように設定されていることになる。
次に、本実施形態のペダル支持構造Aにおける主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重の緩和機能及びその構成について説明する。図6はその説明図であり、自動車の正面衝突等に伴って軸103が第1案内面301aに当接した瞬間を示す図である。本実施形態では、各案内部材(300、400)がシャフト支持部材7を介して主インパネリーンフォースメント5に支持されている。ここで、シャフト支持部材7はステアリングシャフト9を支持する部材であるため、自動車の正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側へ移動し、軸103が第1案内面301aに作用(図6の矢印d1)すると、車両後方側へ向かう衝撃荷重がシャフト支持部材7を介してステアリングシャフト9に作用するが、ステアリングシャフト9の車両前方側の端部はエンジンルーム3のステアリング装置(図示せず)に連結されているため、ステアリングシャフト9が引張力を受けて引張力を受けてこの衝撃荷重に抵抗する(図6の矢印d2)。ステアリングシャフト9は一般にその剛性が高い。従って、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重が緩和される。
次に、本実施形態では、軸103の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向(矢印d1)が、主インパネリーンフォースメント5の軸心Pを通過しないように設定されている。初期当接位置とは、本実施形態のように当初軸103を第1案内面301aから離隔させた構成の場合は、正面衝突等によりペダルブラケット200が車両後方側へ移動した時に軸103が第1案内面301aに当接する位置を意味し、衝突荷重が入力される位置となる。なお、衝撃荷重の方向は、必ずしも一定ではないため、初期当接位置には若干のばらつきが予想されるが、概ね一定のエリアにおさまる。また、本実施形態では採用しないが当初から軸103を第1案内面301aに当接しておく構成を採用した場合は、その位置が初期当接位置となる。
しかして、衝撃荷重の第1案内面301aに平行な方向な成分は、直交する方向の成分との関係においては無視できる程小さいので,衝撃荷重の向きは、同図の矢印d1に示す、第1案内面301aに略直交する方向となる。そこで、第1案内面301aの傾斜角度を、同図に示すように、軸103の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向(矢印d1)が、主インパネリーンフォースメント5の軸心Pを通過しないように設定されている。この構成により、衝撃荷重の方向が主インパネリーンフォースメント5の軸心を通過しないようにすることで、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重をいなして緩和し、曲げ荷重をより小さくすることができ、その折損等を免れる。
このように本実施形態では、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重を緩和することができるので、その構造的補強が要求されないばかりか、主インパネリーンフォースメント5が同じ構成であれば、第1案内面300の傾斜をより垂直にすることができる。このため、第1案内面300の車両前後方向の幅や第2案内面404との間隔をより狭くでき、コンパクト化が図れると共にペダルブラケット200をより曲げ易くなる。
ここで、衝撃荷重の方向が主インパネリーンフォースメント5の軸心を通過しないように構成すると、主インパネリーンフォースメント5にはねじりが加わる。主インパネリーンフォースメント5がねじれると、シャフト支持部材7が僅かに回動し、これに支持された案内部材(300、400)も僅かに回動する可能性がある。図6の例では時計と反対方向に回動することになる。案内部材(300、400)が回動すると第2案内面404の傾斜角度が変わり、ペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形させることが妨げられる場合がある。しかし、本実施形態では、シャフト支持部材7は、主インパネリーンフォースメント5に加えて、主インパネリーンフォースメント5から離隔して配設された副インパネリーンフォースメント16に支持されているので、図6の矢印d3で示すように副インパネリーンフォースメント16がシャフト支持部材7の回動に抵抗する。このため、案内部材(300、400)の回動も抑制され、第2案内面404の傾斜が変わらない。したがって、上述したような問題は生じず、ペダルブラケット200を第2案内面404によって狙った量だけ確実に変形させることができる。
また、本実施形態では、シャフト支持部材7がステアリングシャフト9と略平行に延在して形成され、第1案内面301aは、軸301の初期当接位置において第1案内面301aに直交する方向d1が、ステアリングシャフト9と略平行に、かつ、シャフト支持部材7を通過するように設定されている。このため、第1案内面301aに加わる衝撃荷重がステアリングシャフト9と略平行になり、かつ、シャフト支持部材7を通過するため、衝撃荷重がステアリングシャフト9に効果的に伝達され、その抵抗力を最大限利用することができ、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重を一層緩和できる。また、本実施形態ではシャフト支持部材7は、第2案内部材400が取付けられる車両前方側の断面が、車両後方側の断面よりも大きく構成されているので、衝撃荷重をシャフト支持部材7に入力し易くなると共に、全体の断面を大きくするのではなく、車両前方側の断面を大きくするだけなのでその大型化を防止できる。
また、本実施形態では、シャフト支持部材7は、第2案内部材400が取付けられる車両前方側の端面7aがステアリングシャフト9と略直交するように設定されている。端面7aは、ステアリングシャフト9及びシャフト支持部材7の長手方向の双方と略直交することになるので、シャフト支持部材7の剛性を効果的に活用できると共にステアリングシャフト9に衝撃荷重を効果的に伝達することができる。更に、図6に示すように衝撃荷重の入力方向である矢印d1は端面7aの略中心Cを通過するように設定している。シャフト支持部材7の断面の中でではその中心部分の剛性が最も高くなるので、ここに衝撃荷重の方向を合わせてやることでシャフト支持部材7の剛性を最も効果的に活用することができる。
次に、係る構成からなるペダル支持構造Aについて、正面衝突時の全体の作用について図5を参照して説明する。図5(a)は通常時の態様を示しており、軸103と第1案内面301a及び後端面203と第2案内面404は、それぞれ離隔した状態にあり、また、ペダルブラケット200が第1案内部材300の固定部302aに固定された状態にある。ここで、ペダル支持構造Aが適用された自動車が障害物と正面衝突等を生じ、ペダルブラケット200に車両後方側に向けて衝撃荷重が作用した場合、図4を参照して説明したように、固定部302aによるペダルブラケット200の固定が解除されて、ペダルブラケット200及びペダル100が若干車両後方側へ移動し、軸103が第1案内面301aに当接する(図5(b))。後端面203と第2案内面404とは未だ離隔したままである。この時、図6を参照して説明した通り、主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重が緩和されてその折損等が防止されると共に、第2案内面404の傾斜角度が変化することが防止される。
その後、図5(c)に示すように、軸103が第1案内面301aに案内されてこれを摺動し、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢を変化させる。より具体的には、ペダルブラケット200及びペダル100は、車両後方側に向かって下方に移動すると共に、ペダルブラケット200が曲がり始めてペダルブラケット200の車両後方側の部分が同図の時計回りに回動し始める。この結果、ペダル100のパッド部102はペダルブラケット200が車両後方側に移動しているにも関わらず、図5(a)に示す通常時の位置か、或いは、車両前方側に移動し、車両後方側への移動が抑制される。この時、ペダルブラケット200は、ダッシュパネル1側からその前端部204において荷重を受けると共に、第1案内面301aから軸103を介して反力を受けて曲がることになる。この時、本実施形態では軸103がペダルブラケット200の後端部に設けられているので、軸103と前端部204との間が長く、ペダルブラケット200により大きな曲げモーメントを加えることができるので、その曲げを生じ易くすることができる。
ペダルブラケット200が更に車両後方側へ移動すると、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢が更に変化してパッド部102を車両前方側に移動させると共に、軸103が第1案内面301aから外れて後端面203が第2案内面404に当接し、摺動する(図5(d))。この時、後端面203は軸103よりも前端部204から更に遠くに位置しているので、ペダルブラケット200に一層大きな曲げモーメントを加えることができ、ペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形させることが可能となる。このような過程の途中でペダルブラケット200はより一層曲がり、やがて弾性限界に達して折れることになる。また、同図には図示していないが、オペレーションロッド13も曲がることになる。
その後、ペダルブラケット200及びペダル100は、後端面203が第2案内面404を摺動することによって、その姿勢が変化され、パッド部102をより車両前方へ導くことになる。本実施形態では、後端面203は上端部202の上端面と連続する弧状の曲面を形成しているため、後端面203が第2案内面404の下端部の摺動終端点に至った後も、上板部202が第2案内面404の下端部に当接して摺動する(図5(e))。このため、コンパクトな構成であってもより長い摺動距離を得られ、ペダルブラケット200及びペダル100の姿勢の変化の案内がより長く継続される。このように本実施形態では、正面衝突等が生じた場合にも、運転者のフットスペースを確保することができる。
<他の実施形態>
上記実施形態では、衝撃荷重の方向が主インパネリーンフォースメント5の軸心を通らないようにすることで主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重をいなして緩和することにしているが、ペダルブラケット200を効果的に曲げるためには、衝撃荷重をいなした後は主インパネリーンフォースメント5がペダルブラケット200の曲げの反力を十分に受け止めることが望ましい。図7は上述したペダル支持構造Aの変形例を示す図である。図7においては、図6と同じ構成については同じ符号を、対応する構成については同じ符号に「’」を付けて示されている。
図7の変形例において、第1案内面301a’は、軸103の初期当接位置において第1案内面301a’に直交する方向(矢印d11)が主インパネリーンフォースメント5の軸心Pを通過しないように設定される一方で、軸103が第1案内面301a’を摺動するのに従って、第1案内面301a’に直交する方向(矢印d12、d13)が、主インパネリーンフォースメント5の軸心に近づくように設定されている。図7の構成例では、軸103の初期当接位置において第1案内面301a’に直交する方向(矢印d11)が、主インパネリーンフォースメント5よりも上側を通過している。そして、第1案内面301a’が車両後方へ向かって下方に傾斜しているので、軸103は第1案内面301a’に沿って車両後方へ向かって下方へ移動し、その当接位置は徐々に下がっている。従って、各当接位置における第1案内面301a’に直交する方向は、徐々に主インパネリーンフォースメント5を通過し、軸心Pに近づくようになる。
この構成によれば、衝突時の初期の段階においては主インパネリーンフォースメント5に対する衝撃荷重をいなして緩和し、その後においては第1案内面301a’が軸103から受ける荷重を主インパネリーンフォースメント5によって十分に受け止めることができ、ペダルブラケット200の曲げを促進することが可能となる。そして、第2案内面404’によってペダルブラケット200を狙った量だけ確実に変形してペダル100のパッド部102が車両後方へ相対移動することをより確実に抑制することができる。なお、図7の例では矢印d11がシャフト支持部材7を通過していないが、案内部材(300’、400’)がシャフト支持部材7に支持されているので、図6の例ほどではないが、ステアリングシャフト9の抵抗力により主インパネリーンフォースメント5に作用する衝撃荷重を緩和することができることはいうまでもない。
なお、上記実施形態及び変形例では各案内面(301a、404)を直線状に傾斜するように構成したが曲線的な面であってもよい。更に、上記実施形態では軸103及び後端面203を当接部としたが、当接部の位置はこれに限られず、ペダル100及びペダルブラケット200の任意の位置に適宜設定することができ、また、ペダル100又はペダルブラケット200とは別の部材をこれに一体に固定することで当接部を形成してもよい。