JP4380112B2 - インクジェット記録液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は特定の色素を含有するインクジェット記録液に関するものであり、特に、インクの色画像の色調堅牢性に優れたインクジェット記録液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、ピエゾ素子の電気−機械変換により液滴を圧力吐出させる方式、電気−熱変換により気泡を発生させて液滴を圧力吐出させる方式、静電力により液滴を吸引吐出させる方式等に大別される。
【0003】
インクジェット記録液(以下、インクジェット用インク、または単に、インクともいう)においては、たとえば上記から選択されるようなその使用される記録方式に適合すること、高い記録画像濃度を有し色調が良好であること、耐光性や耐熱性および耐水性といった色画像堅牢性に優れること、被記録媒体に対して定着が速く記録後ににじまないこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性や引火性といった安全性に問題がないこと、安価であること等が要求される。
【0004】
このような観点から、種々のインクジェット記録液が提案、検討されているが、要求の多くを同時に満足するようなインクジェット記録液はきわめて限られている。
【0005】
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを用いたカラー画像記録においては、たとえばC.I.インデックスに記載されている従来から公知のC.I.ナンバーを有する染料、顔料が広く検討されてきた。例えば水溶性染料を用いたマゼンタのインクにおいては、C.I.アシッドレッド52のようなキサンテン系、C.I.ダイレクトレッド20のようなアゾ系の水溶性染料を使用したものが知られているが、これらはプリンターでの目詰まり対する高い信頼性を有しているが、その反面、耐光性のような堅牢性および耐水性に問題を有していた。一方、C.I.ピグメントレッド122のようなキナクリドン系の顔料を使用したものが知られているが、これらは高い堅牢性を有するものの、印字濃度が上がらない、またはブロンジング等の色再現性の問題を起こしやすかった。このように従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは困難であった。
【0006】
この問題点を解決すべく、特開平10−306221号中には色調と耐光性の両立を目的としたアントラピリドン化合物およびその水性インク組成物が示されているが、日進月歩の当業界においては、そのレベルは十分ではなく、さらなる改良が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、インクの色画像の耐光性に優れ、良好な色再現性のための色調に優れたインクジェット記録液、特に主な対象としてはマゼンタ色のインクジェット記録液を提供することにある。またさらに本発明の目的は、インクの色画像の耐光性と色調の両立に加えてインクの長期使用を保証できる水系インクジェット記録液を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
【0009】
1.前記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
【0010】
2.前記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
【0011】
3.前記一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
【0012】
4.前記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
【0013】
5.上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が、スルホン酸基もしくはカルボキシル基を有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
【0014】
6.上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が、微粒子分散物として含有されることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
【0015】
7.上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が油溶性ポリマーとともに微粒子分散物として含有されることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物(以下単に、本発明の色素ともいう)について説明する。
【0017】
先ず、本発明の一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
前記一般式(1)において、R11は分岐アルキル基(例えばイソプロピル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロヘキシル基等)、ヘテロ環基(例えば2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピロール基等)、アミノ基(例えばブチルアミノ基、アニリノ基、モルホリノ基等)を表す。
【0018】
11は置換基を有してもよく、これらの置換基としては特に制限はないが、代表的には、アルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、シクロアルキル等の各基が挙げられるが、この他にハロゲン原子及びシクロアルケニル、アルキニル、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、スルホ等の各基、ならびにスピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基等も挙げられる。
【0019】
11は、好ましくは分岐アルキル基、アミノ基であり、さらに好ましくは、分岐アルキル基であり、t−ブチル基が殊に好ましい。
【0020】
12は水素原子もしくは置換基を表し、該置換基としては特に制限はないが、代表的には、アルキル、アリール、アルケニル、シクロアルキル等の各基が挙げられるが、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル等の各基も挙げられる。
【0021】
13およびR14は各々、水素原子または置換基を表す。該置換基としては特に制限はないが、代表的には、アルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、シクロアルキル等の各基が挙げられるが、この他にハロゲン原子及びシクロアルケニル、アルキニル、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、スルホニルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、カルボキシ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、スルホ等の各基、ならびにスピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基等も挙げられる。
【0022】
一般式(1)においてn11は1〜3の整数、n12は1〜4の整数を表し、n11およびn12が2以上の時、R13およびR14は同じであっても異なっていても良い。
【0023】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
前記一般式(2)において、R21は、複素環基を表し、例えば2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−チエニル基等を挙げることができる。
【0024】
22、R23、R24は各々、水素原子または置換基を表し、R22の表す置換基の例としては、一般式(1)におけるR12と同様の置換基を挙げることができる。また、R23、R24の表す置換基の例としては、一般式(1)におけるR13、R14と同様の置換基を挙げることができる。
【0025】
n21は1〜3の整数、n22は1〜4の整数を表し、n21およびn22が2以上の時、R23およびR24は同じであっても異なっていても良い。
【0026】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。
前記一般式(3)において、R31、R32、R33、R34およびR35は各々、水素原子または置換基を表し、R32の表す置換基の例としては、一般式(1)におけるR12と同様の置換基を挙げることができる。また、R31、R33、R34、R35の表す置換基の例としては、一般式(1)におけるR13、R14と同様の置換基を挙げることができる。
【0027】
n31は1〜3の整数を表し、n31が2以上の時、R33は同じであっても異なっていても良い。また、R34とR35は互いに結合して環を形成しても良い。
【0028】
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
前記一般式(4)において、R41、R42およびR43は各々、水素原子または置換基を表し、該置換基の例としては、一般式(1)におけるR13、R14と同様の置換基を挙げることができる。
【0029】
Zは、炭素原子と共に5〜7員環の複素環基を形成する非金属原子群を表し、該5〜7員環の複素環基はさらに置換基を有してもよい。
【0030】
Zが炭素原子と共に形成する5〜7員環の複素環基としては、好ましくは5〜6員の含窒素複素環であり、特に好ましくは、ピリジン環である。
【0031】
以下に、本発明の一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
尚、下記構造式中のMは、ナトリウム塩、カリウム塩、1/2カルシウム塩、もしくは、アンモニウム塩などの、カチオンを表す。
【0033】
【化5】
Figure 0004380112
【0034】
【化6】
Figure 0004380112
【0035】
【化7】
Figure 0004380112
【0036】
【化8】
Figure 0004380112
【0037】
【化9】
Figure 0004380112
【0038】
【化10】
Figure 0004380112
【0039】
【化11】
Figure 0004380112
【0040】
【化12】
Figure 0004380112
【0041】
【化13】
Figure 0004380112
【0042】
【化14】
Figure 0004380112
【0043】
【化15】
Figure 0004380112
【0044】
【化16】
Figure 0004380112
【0045】
【化17】
Figure 0004380112
【0046】
【化18】
Figure 0004380112
【0047】
【化19】
Figure 0004380112
【0048】
【化20】
Figure 0004380112
【0049】
【化21】
Figure 0004380112
【0050】
【化22】
Figure 0004380112
【0051】
【化23】
Figure 0004380112
【0052】
【化24】
Figure 0004380112
【0053】
【化25】
Figure 0004380112
【0054】
【化26】
Figure 0004380112
【0055】
【化27】
Figure 0004380112
【0056】
【化28】
Figure 0004380112
【0057】
【化29】
Figure 0004380112
【0058】
【化30】
Figure 0004380112
【0059】
以下に、本発明の一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物の合成例を示す。
【0060】
《合成例》
i)例示化合物1−4の合成
例示化合物1−4は下記スキーム(1)に従って合成した。
【0061】
【化31】
Figure 0004380112
【0062】
(中間体1cの合成)
32.8g(0.1mol)の(1a)、19.0g(0.12mol)の(1b)および1.06g(0.01mol)の炭酸ナトリウムをキシレン150ml中で約140℃に加熱し、生成するメタノールおよび水を留去しながら10時間反応させる。反応終了後、冷却し、析出した結晶を濾取し、冷却した80%エタノール水で洗浄すると、中間体(1c)が35.8g(収率82%)得られる。
(例示化合物1−4の合成)
10%発煙硫酸61gに氷冷下、20℃以下にて8.73g(0.02mol)の中間体1cを加え、約50℃にて5時間スルホン化を行う。反応終了後、400mlの氷水に反応液を加え、さらに塩化ナトリウム30gを加えて塩析を行い、濾過、乾燥することによって、例示化合物1−4のナトリウム塩が10.9g(収率85%)得られる。
【0063】
1H−NMRスペクトルにより、得られた化合物が目的の例示化合物1−4であることを確認した。
【0064】
ii)例示化合物2−7の合成
例示化合物2−7は下記スキーム(2)に従って合成した。
【0065】
【化32】
Figure 0004380112
【0066】
(中間体2cの合成)
38.1g(0.1mol)の(2a)、15.1g(0.12mol)の(2b)および1.38g(0.01mol)の炭酸カリウムをキシレン150ml中で約140℃に加熱し、生成するメタノールおよび水を留去しながら10時間反応させる。反応終了後、冷却し、析出した結晶を濾取し、冷却した80%エタノール水で洗浄すると、中間体(2c)が37.6g(収率78%)得られる。
【0067】
(中間体2dの合成)
24.1g(0.05mol)の中間体2cをN,N−ジメチルホルムアミド100mlに溶解し、13.8g(0.1mol)の炭酸カリウム、5.12g(0.055mol)のアニリン、0.5g(0.005mol)の塩化銅(I)を加えて、約110℃にて2時間、反応させる。その後、さらに8.26g(0.055mol)のp−tert−ブチルフェノールを加えて、同温度にて3時間反応させる。反応終了後、反応液に200mlの水を加えて、析出した結晶を濾取し、粗結晶をさらにアセトニトリルで再結晶することによって、20.3g(収率72%)の中間体2dが得られる。
【0068】
(例示化合物2−7の合成)
10%発煙硫酸56gに氷冷下、20℃以下にて11.3g(0.02mol)の中間体2dを加え、約50℃にて5時間スルホン化を行う。反応終了後、400mlの氷水に反応液を加え、さらに塩化ナトリウム30gを加えて塩析を行い、濾過、乾燥することによって、例示化合物2−7のナトリウム塩が11.0g(収率63%)得られる。
【0069】
1H−NMRスペクトルにより、得られた化合物が目的の例示化合物2−7であることを確認した。
【0070】
さらに、上記で得られた例示化合物2−7のナトリウム塩を水に溶解させ、酸を添加して酸性とした後、濾過して得られたケーキを再び水に溶解させ、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水、ジエタノールアミンを添加することによって、例示化合物2−7のカリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩がそれぞれ得られる。
【0071】
iii)例示化合物3−9の合成
例示化合物3−9は下記スキーム(3)に従って合成した。
【0072】
【化33】
Figure 0004380112
【0073】
(例示化合物3−9の合成)
78.2g(0.1mol)の(3a、ナトリウム塩)を水400mlに加熱溶解し、含水ヒドラジン10.0g(0.2mol)を滴下し、その後3時間反応させる。反応終了後、塩化ナトリウム30gを加えて塩析を行い、濾過、乾燥することによって、例示化合物3−9のナトリウム塩が64.6g(収率83%)得られる。
【0074】
1H−NMRスペクトルにより、得られた化合物が目的の例示化合物3−9であることを確認した。
【0075】
iv)例示化合物4−1の合成
例示化合物4−1は下記スキーム(4)に従って合成した。
【0076】
【化34】
Figure 0004380112
【0077】
(例示化合物4−1の合成)
32.9g(0.1mol)の(4a)、13.9g(0.12mol)の(4b)および1.06g(0.01mol)の炭酸ナトリウムをキシレン150ml中で約140℃に加熱し、生成するメタノールおよび水を留去しながら10時間反応させる。反応終了後、冷却し、析出した結晶を濾取し、冷却した80%エタノール水で洗浄すると、例示化合物4−1が35.8g(収率91%)得られる。
【0078】
1H−NMRスペクトル、およびMSスペクトルにより、得られた化合物が目的の例示化合物4−1であることを確認した。
【0079】
本発明の色素は単独で用いても、本発明の色素を2種以上併用させて用いても、また、本発明外の色素と併用させて用いても良い。
【0080】
本発明の色素を含有するインクジェット記録液は水系溶媒、油系溶媒、固体(相変化)溶媒等の種々の溶媒系を用いることができ、特に水系溶媒で本発明の効果を発揮する。
【0081】
水系溶媒としては、水(例えば、イオン交換水が好ましい)と水溶性有機溶媒を一般に使用する。
【0082】
水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0083】
上記のような水系溶媒は、本発明の色素がその溶媒系に可溶であればそのまま溶解して用いることができる。この場合、本発明の色素の水系溶媒への溶解性が重要であり、本発明の化合物が、スルホン酸基もしくはカルボキシル基を少なくとも1つ以上有することが好ましく、スルホン酸基もしくはカルボキシル基を少なくとも2つ以上有することがさらに好ましい。
【0084】
一方、本発明の色素が、その溶媒系にそのままでは不溶の固体である場合、色素を種々の分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、ジェットミル、オングミル等)を用いて微粒子化するか、あるいは可溶である有機溶媒に色素を溶解した後に、高分子分散剤や界面活性剤とともにそのままでは不溶の溶媒系に分散させることができる。さらに、溶媒系がそのままでは不溶の液体または半溶融状物である場合、そのままかあるいは可溶である有機溶媒に溶解して、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。
【0085】
本発明の色素が、その溶媒系に不溶である場合には、微粒子化させてその溶媒系に分散させることが好ましく、150nm以下の微粒子に分散されていることがさらに好ましい。
【0086】
また、本発明の色素は、可溶である有機溶媒に色素を溶解した後に、油溶性ポリマーとともに微粒子分散物として水系溶媒に分散させることが、好ましい。
【0087】
このようなインクジェット記録液用に使用される水系溶媒の具体的調製法については、例えば特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号等に記載の方法を参照することができる。
【0088】
次に、本発明に係る油溶性ポリマーについて説明する。
前記油溶性ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニルポリマーが好適に挙げられる。該ビニルポリマーとしては、従来公知のものが挙げられ、水不溶性型、水分散(自己乳化)型、水溶性型の何れもものであってもよいが、着色微粒子の製造容易性、分散安定性等の点で水分散型のビニルポリマーが好ましい。
【0089】
該水分散型のビニルポリマーとしては、イオン解離型のもの、非イオン性分散性基含有型のもの、あるいはこれらの混合型のもののいずれであってもよい。前記イオン解離型のビニルポリマーとしては、三級アミノ基などのカチオン性の解離性基を含有するビニルポリマーや、カルボン酸、スルホン酸などのアニオン性の解離性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。前記非イオン性分散性基含有型のビニルポリマーとしては、ポリエチレンオキシ鎖などの非イオン性分散性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。これらの中でも、着色微粒子の分散安定性の点で、アニオン性の解離性基を含有するイオン解離型のビニルポリマー、非イオン性分散性基含有型のビニルポリマー、混合型のビニルポリマーが好ましい。
【0090】
前記ビニルポリマーを形成するモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0091】
即ち、アクリル酸エステル類、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、グリシジルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート等;
メタクリル酸エステル類、具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−iso−プロポキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルメタクリレート等;
ビニルエステル類、具体的には、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等;
アクリルアミド類、具体的には、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、tert−オクチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等;
メタクリルアミド類、具体的には、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド等;
オレフィン類、具体的には、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等、スチレン類、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等;
ビニルエーテル類、具体的には、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等;
その他のモノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニリデンクロライド、メチレンマロンニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等;が挙げられる。
【0092】
また、解離性基を有するモノマーとしては、アニオン性の解離性基を有するモノマー、カチオン性の解離性基を有するモノマーが挙げられる。
【0093】
前記アニオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
【0094】
前記カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イタコン酸モノアルキルエステル(例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなど)、マレイン酸モノアルキルエステル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチルなど)などが挙げられる。
【0095】
前記スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクルリアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)などが挙げられる。
【0096】
前記リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸などが挙げられる。
【0097】
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸がより好ましい。
【0098】
前記カチオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアタクリレートなどの3級アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
【0099】
また、非イオン性分散性基を含有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとカルボン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとスルホン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとリン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとイソシアネート基含有モノマーから形成されるビニル基含有ウレタン、ポリビニルアルコール構造を含有するマクロモノマーなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ部の繰り返し数としては、8〜50が好ましく、10〜30がより好ましい。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素原子数としては、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
これらのモノマーは、1種単独で使用されてビニルポリマーが形成されていてもよいし、2種以上が併用されてビニルポリマーが形成されていてもよく、前記ビニルポリマーの目的(Tg調節、溶解性改良、分散物安定性等)に応じて適宜選択することができる。
【0100】
本発明に使用される油系溶媒としては、有機溶媒を使用する。
油系溶媒の溶媒の例としては、上記水系溶媒において水溶性有機溶媒として例示したものに加えて、アルコール類(例えば、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニルアルコール等)、エステル類(エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸エチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸フェノキシエチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、ジエチルマロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ(2−メトキシエチル)、セバシン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジオクチル、ケイ皮酸−3−ヘキセニル等)、エーテル類(例えば、ブチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、ケトン類(例えば、ベンジルメチルケトン、ベンジルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等)、炭化水素類(例えば、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド等)が挙げられる。
【0101】
上記のような油系溶媒は、本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできる。
【0102】
このようなインクジェット記録液に使用される油系溶媒の具体的調製法については、特開平3−231975号、特表平5−508883号に記載の方法を参照することができる。
【0103】
本発明に使用される固体(相変化)溶媒は、溶媒として室温で固体であり、かつインクジェット記録液の加熱噴射時には溶融した液体状である相変化溶媒を使用する。
【0104】
このような相変化溶媒としては、天然ワックス(例えば、密ロウ、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラワックス、ラノリン、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等)、ポリエチレンワックス誘導体、塩素化炭化水素、有機酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チグリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等)、有機酸エステル(例えば、上記した有機酸のグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のアルコールとのエステル等)、アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ドデセノール、ミリシルアルコール、テトラセノール、ヘキサデセノール、エイコセノール、ドコセノール、ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エイコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピレングリコール、ビスフェノールA、パラアルファクミルフェノール等)、ケトン(例えば、ベンゾイルアセトン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘントリアコンタノン、ヘプタトリアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール等)、アミド(例えば、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、テトラヒドロフラン酸アミド、エルカ酸アミド、ミリスチン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N′−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−システアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、フェナセチン、トルアミド、アセトアミド、オレイン酸2量体/エチレンジアミン/ステアリン酸(1:2:2のモル比)のような2量体酸とジアミンと脂肪酸の反応生成物テトラアミド等)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホンアミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等)、シリコーン類(例えば、シリコーンSH6018(東レシリコーン)、シリコーンKR215、216、220(信越シリコーン)等)、クマロン類(例えば、エスクロンG−90(新日鐵化学)等)、コレステロール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、メリシン酸コレステロール等)、糖類脂肪酸エステル(ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、ベヘン酸サッカロース、ラウリン酸サッカロース、メリシン酸サッカロース、ステアリン酸ラクトース、パルミチン酸ラクトース、ミリスチン酸ラクトース、ベヘン酸ラクトース、ラウリン酸ラクトース、メリシン酸ラクトース等)が挙げられる。
固体(相変化)溶媒の固体−液体相変化における相変化温度は、60℃〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。
【0105】
上記のような固体(相変化)溶媒は、加熱した溶融状態の溶媒に本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできる。
【0106】
このような相変化溶媒の具体的調製法については、特開平5−186723号、同7−70490号に記載の方法を参照することができる。
【0107】
上記したような水系、油系、固体(相変化)溶媒を使用し本発明の色素を溶解した本発明のインクジェット記録液は、その飛翔時の粘度として40×10-3Pa・s以下が好ましく、30×10-3Pa・s以下であることがより好ましい。
【0108】
また、上記本発明のインクジェット記録液は、その飛翔時の表面張力として20×10-5〜100×10-5N/cmが好ましく、30×10-5〜80×10-5N/cmであることがより好ましい。
【0109】
本発明の色素は、インクジェット記録液の0.1〜25質量%の範囲で使用されることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明に使用される樹脂型分散剤としては、分子量1,000〜1,000,000の高分子化合物が好ましく、これらは使用される場合にはインクジェット記録液中に0.1〜50質量%含有されることが好ましい。
【0110】
本発明のインクジェット記録液には、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
【0111】
本発明のインクジェット記録液は、その使用する記録方式に関して特に制約はないが、特にオンデマンド方式のインクジェットプリンタ用のインクジェット記録液として好ましく使用することができる。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができる。
【0112】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0113】
実施例1
(水系インクの作製)
表1に記載の色素について色素の含有量が仕上がりインクとして、2質量%になる量を秤量し、これに、エチレングリコール15%、グリセリン15%、サーフィノール465(日信化学工業社製)0.3%、残りが純水になるように調整して純水を加え、混合分散し、更に2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して表1に示すようなインクジェット用インク1〜13を得た。
【0114】
(画像試料の作製および評価)
更に、各インクを市販のエプソン製インクジェットプリンター(PM−800)を用いてコニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカ株式会社製)にプリントし、得られた画像試料の画像の耐光性、色調および保存性の評価を行った。
【0115】
インクの画像の耐光性:
キセノンフェードメーターにて、未曝露試料の可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度(未曝露試料極大吸収波長濃度)を測定し、また該未曝露試料を24時間曝露した後の試料の可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度(曝露試料極大吸収波長濃度)を測定し、24時間曝露した後の画像試料の未曝露画像試料に対する可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率として耐光性を下式から求めた。
【0116】
耐光性(%)=(曝露試料極大吸収波長濃度/未曝露試料極大吸収波長濃度)×100
インクの画像の色調:
画像試料の390〜730nm領域のインターバル10nmによる反射スペクトルを測定し、これをCIE L***色空間系に基づいて、a*、b*を算出した。
【0117】
マゼンタとして好ましい色調を下記のように定義し、下記3段階の評価基準により評価した。
【0118】
好ましいa*:76以上、好ましいb*:−30以上0以下
○:a*、b*ともに好ましい領域
△:a*、b*の一方のみ好ましい領域
×:a*、b*のいづれも好ましい領域外
インクの保存性:
インクを80℃で1週間、密閉ガラス容器中に保存後、上記画像試料の作製の場合と同様にして画像を作製し、500時間の連続噴出における噴出異常の有無を観察した。また該画像について色調の評価を上記と同様にして行って、保存性を下記の評価基準により評価した。
【0119】
○:連続噴出に異常がなく、また未保存インクからの色調変化がa*、b*ともに±10未満である
×:連続噴出に異常が認められる、または、未保存インクからの色調変化がa*またはb*の少なくとも一方に±10以上認められる
結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
Figure 0004380112
【0121】
【化35】
Figure 0004380112
【0122】
表1から明らかなように、本発明のインクは、比較のインクに比してインクの保存性、また、インクの画像の耐光性、色調の全ての面で優れていることがわかる。
【0123】
実施例2
(微粒子分散物の作製)
表2記載の色素10g、メチルエチルケトン20g、グリセリン5g、スチレン/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=80/5/15の中和済み樹脂を6g、イオン交換水40gの混合液に、平均粒子径が0.5mmのジルコニアビーズ250gを加え、メディア分散機(システムゼータ;(株)アシザワ製)を用いて4時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを濾別して顔料分散液を得た。この分散液に水40mlを加えて希釈した後、減圧留去によりメチルエチルケトンを除去し顔料の微粒子分散物を得た。
【0124】
(水系インクの作製)
色素の含有量がインクの仕上がり量に対して3質量%になる量の上記微粒子分散物を秤量し、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3質量%、サーフィノール465を0.3質量%、残りが純水になるように調整して純水を加え、混合分散し、更に2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して表2に示すようにインクジェット用インク14〜19を得た。
(画像試料の作製および評価)
それぞれのインクを60℃で7日間保存した際の平均粒子径変化率、保存後のインクの濾過性、更に、実施例1と同様にして各インクを用いてプリントした画像試料の画像の色調を評価した。
【0125】
インクの平均粒子径変化率:
インクを60℃で7日間保管し、大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて保存後のインクの平均(体積平均)粒子径を求め、同様にして求めた未保存の場合のインクの平均粒子径との平均粒子径変化率を下式にて求め、下記基準により評価した。
【0126】
平均粒子径変化率(%)={(保存後のインクの平均粒子径−未保存のインクの平均粒子径)/(未保存のインクの平均粒子径)}×100
×:10%以上(実用不可レベル)
○:5%〜10%未満(実用許容レベル)
◎:粒子径変化率が5%未満
インクの濾過性:
インクを60℃7日間保管した後に、5ml採取し、0.8μmのセルロースアセテートメンブランフィルターで濾過を行い、全量濾過できたものを◎、半量以上濾過できたものを○(許容レベル)、半量未満しか濾過ができなかったものを×(不可レベル)として評価した。
【0127】
インクの画像の色調:
実施例1と同様にして評価した。
【0128】
結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
Figure 0004380112
【0130】
【化36】
Figure 0004380112
【0131】
表2から明らかなように、本発明のインクは、比較のインクに比して、保存後のインクの平均粒子径変化率、インクの濾過性(即ち、インクの保存安定性)、また、インクの画像の色調の面で優れていることがわかる。
【0132】
実施例3
(着色微粒子分散物の作製)
表3に示す色素5g、5gのポリビニルブチラール(積水化学製BL−S、平均重合度350)及び50gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内をN2ガスで置換後、攪拌して上記ポリマー及び色素を完全溶解させた。ラウリル硫酸ナトリウム2gを含む水溶液100gを滴下後、超音波分散機(UH−150型、株式会社エスエムテー製)を用いて、300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、上記色素を含浸する着色微粒子の分散液を得た。この分散液に0.15gの過硫酸カリウムを加えて溶解し、ヒーターを付して70℃に加温後、更に2gのスチレン及び1gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートの混合液を滴下しながら7時間反応させてコアシェル型の着色微粒子分散物を得た。
(水系インクの作製)
色素の含有量がインクの仕上がり量に対して2質量%になる量の上記着色微粒子分散物を秤量し、これに、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3質量%、サーフィノール465を0.3質量%、残りが純水になるように調整して純水を加え混合分散し、更に2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して表3に示すようにインクジェット用インク20〜24を得た。
【0133】
(画像試料の作製および評価)
実施例2と同様にそれぞれのインクを60℃で7日間保存した際の平均粒子径変化率、保存後のインクの濾過性、更に、実施例1と同様に各インクを用いて作製した画像試料の画像についての色調および耐光性を評価した。
【0134】
結果を表3に示す。
【0135】
【表3】
Figure 0004380112
【0136】
表3から明らかなように、本発明のインクは、比較のインクに比してインクの保存後のインクの平均粒子径変化率、インクの濾過性(即ち、インクの保存安定性)、また、インクの画像の色調、耐光性の面で優れていることがわかる。
【0137】
【発明の効果】
本発明により、インクの色画像の耐光性に優れ、良好な色再現性のための色調に優れたインクジェット記録液、特に主な対象としてはマゼンタ色のインクジェット記録液を提供できる。またさらに、インクの色画像の耐光性と色調の両立に加えてインクの長期使用を保証できる水系インクジェット記録液を提供できる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
    Figure 0004380112
    〔式中、R11は分岐アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロ環基またはアミノ基を表し、R12、R13およびR14は各々、水素原子または置換基を表し、n11は1〜3の整数、n12は1〜4の整数を表す。〕
  2. 下記一般式(2)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
    Figure 0004380112
    〔式中、R21は複素環基を表し、R22、R23およびR24は各々、水素原子または置換基を表し、n21は1〜3の整数、n22は1〜4の整数を表す。〕
  3. 下記一般式(3)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
    Figure 0004380112
    〔式中、R31、R32、R33、R34およびR35は各々、水素原子または置換基を表し、n31は1〜3の整数を表す。〕
  4. 下記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録液。
    Figure 0004380112
    〔式中、R41、R42およびR43は各々、水素原子または置換基を表し、n41は1〜3の整数を表し、Zは炭素原子と共に5〜7員環の複素環基を形成するに必要な非金属原子群を表す。〕
  5. 上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が、スルホン酸基もしくはカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
  6. 上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が、微粒子分散物として含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
  7. 上記一般式(1)、(2)、(3)または(4)で表される化合物が油溶性ポリマーとともに微粒子分散物として含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のインクジェット記録液。
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