JP2005146192A - アントラピリドン化合物、着色微粒子分散物、インクジェット記録液、及び画像形成方法 - Google Patents

アントラピリドン化合物、着色微粒子分散物、インクジェット記録液、及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 色素画像は良好な耐光性を示し、色再現性に優れたインクジェット記録液を提供し、且つ、インクの保存安定性に優れた水系インクジェット記録液を提供する。
【解決手段】 新規化合物(アントラピリドン化合物)、水溶性の該化合物を含有してなる水系記録液、疎水性の該化合物を分散した着色微粒子分散水系記録液、該インクジェット記録液を用いて記録を行うインクジェット記録方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なアントラピリドン化合物に関し、更には該化合物を含有する着色組成物、インクジェット記録液、及びインクジェット記録方法に関する。
アントラキノン系色素は、従来、繊維等の染色の分野において、あるいは画像形成用の色素及び染料として広く用いられてきた。一方、近年はインクジェット記録方法、感熱転写方式、カラー電子写真、印刷インク、記録ペン等の新しいカラー画像形成方法が実用に供されている。
インクジェット記録方式は、ピエゾ素子の電気−機械変換により液滴を圧力吐出させる方式、電気−熱変換により気泡を発生させて液滴を圧力吐出させる方式、静電力により液滴を吸引吐出させる方式等が通常、用いられている。
インクジェット記録液(以下、インクジェット用インク、または単に、インクともいう)においては、上記から選択される記録方式に適合すること、記録液中の色素濃度が高く十分な記録画像濃度を有すること、色調が良好であること、耐光性や耐熱性および耐水性といった色画像堅牢性に優れること、被記録媒体に対して定着が速く記録後に滲まないこと、インクとしての保存性に優れていること、毒性や引火性といった安全性に問題がないこと、安価であること等が要求される。
このような観点から、種々のインクジェット記録液が提案、検討されているが、要求の多くを同時に満足するようなインクジェット記録液はきわめて限られている。
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックを用いたカラー画像記録においては、たとえばC.I.インデックスに記載されている従来から公知のC.I.ナンバーを有する染料、顔料が広く検討されてきた。例えば水溶性染料を用いたマゼンタのインクにおいては、C.I.アシッドレッド52のようなキサンテン系、C.I.ダイレクトレッド20のようなアゾ系の水溶性染料を使用したものが知られているが、これらは溶解安定性もよくプリンターでの目詰まり対する高い信頼性を有しているが、その反面、耐光性のような堅牢性および耐水性に問題を有していた。一方、C.I.ピグメントレッド122のようなキナクリドン系の顔料を使用したものが知られているが、これらは高い堅牢性を有するものの、印字濃度が上がらない、またはブロンジング等の色再現性の問題を起こしやすかった。このように従来からよく知られている染料や顔料では、インクジェット用インクに要求される色相と堅牢性とを両立させることは困難であった。
この問題点を解決すべく、色調と耐光性の両立を目的とした特定のアントラピリドン化合物およびその水性インク組成物(例えば、特許文献1〜4参照)が示されているが、溶解安定性及び耐光性が十分ではなく、さらなる改良が望まれていた。
一方、近年、水溶性染料を用いた水性インクの耐水性、耐光堅牢性が低いという問題を解決するために油溶性色素ないし、疎水性色素により水分散性樹脂を着色する提案がインクジェット記録用インクとしてなされている。油溶性色素を疎水性高沸点有機溶媒に溶解し、水性媒体中に分散してなるインク(例えば、特許文献5参照)が、また、油溶性色素によって染色された乳化重合粒子又は分散した重合粒子を用いたインク(例えば、特許文献6参照)が提案されている。
しかし、上記に記載の油溶性色素を用いた着色微粒子インクにおいてもマゼンタ色素の彩度と耐光性は問題であり、かつ溶解性の不足から印字濃度も低いため更なる色素の改良が望まれていた。
特開昭57−195775号公報 (特許請求の範囲、実施例3) 特開昭59−74173号公報 (特許請求の範囲、実施例1) 特開平2−16171号公報 (特許請求の範囲、実施例1) 特開2001−139836号公報 (実施例2) 特開2001−262018号公報 (特許請求の範囲、実施例1) 特開平11−61017号公報 (実施例3、4)
本発明の第1の目的は、色再現性に優れかつ良好な耐光性の新規色素化合物を含有するインクジェット記録液を提供することであり、第2の目的は、第1の目的に加えて溶解性に優れた色素化合物を用いることによりインクの保存安定性に優れ、高い印字濃度を有するインクジェット記録液を提供することであり、第3の目的は、該インクジェット記録液を用いたインクジェット記録方法の提供である。
本発明の色素化合物を用いた水溶性インクにより保存安定性に優れたインクジェット記録液を提供し、高い印字濃度で、かつ良好な耐光性と色再現性を有するインクジェットプリントが得られた。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
(請求項1)
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
Figure 2005146192
〔式中、Rはアルキル基またはシクロアルキル基を表し、Xはアリール基またはヘテロ環基を表し、Yはフェニル基またはアルコキシ基を表す。〕
(請求項2)
水に1%以上溶解することを特徴とする請求項1記載の化合物。
(請求項3)
請求項1または2記載の化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインクジェット記録液。
(請求項4)
請求項1記載の化合物を、着色微粒子分散物として含有することを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録液。
(請求項5)
請求項3または4記載のインクジェット記録液を、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドから液滴として吐出させてインク受容体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
本発明の色素化合物を用いた水溶性インクにより保存安定性に優れたインクジェット記録液を提供し、高い印字濃度で、かつ良好な耐光性と色再現性を有するインクジェットプリントが得られた。
本発明を更に詳しく説明する。本発明に係る前記一般式(1)で表される化合物(以下単に、色素ともいう)について、詳細に説明する。
一般式(1)において、Rで表される置換基は、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等の各基が挙げられる。
これらの置換基は、更に置換されていてもよく置換基としてはカルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基等が考えられる(例えば、カルボキシエチル基、エトキシブチル基、エトキシカルボニルブチル基、スルホエチル基等)。Rとしては、溶解性、耐光性の観点から無置換のアルキル基またはカルボキシル基置換のアルキル基が好ましい。
一般式(1)において、Xで表される置換基は、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、ベンズチアゾリル基等)の各基が挙げられる。これらの置換基は、更に置換されていてもよく置換基としてはハロゲン原子、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、スルホ基等が考えられる(例えば、クロロフェニル基、カルボキフェニル基、メチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、エトキシフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、スルホフェニル基等)。Xの好ましくは彩度、耐光性の観点からフェニル基が好ましく、水溶性色素の場合は1または2個のスルホン酸基で置換されているものが好ましい。
一般式(1)において、Yはフェニル基(例えば無置換のフェニル基、クロロフェニル基、カルボキフェニル基、エトキシフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、スルホフェニル基等)またはアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)の各基が挙げられる。Yの好ましくは耐光性の観点からフェニル基である。
Figure 2005146192
Figure 2005146192
Figure 2005146192
前記一般式(1)で表される色素は水溶性、油溶性のいずれであっても良いが、油溶性である場合、水性媒体に分散されてなるものが好ましい。前記水性媒体としては、少なくとも水を含有していればよく、具体的には、水又は水と水混和性有機溶剤との混合物に、必要に応じて、界面活性剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、安定剤、防腐剤などの添加剤を添加したものが好適に挙げられる。一般式(1)で表される色素が水溶性色素である時は水に1%以上溶解することが重要であり、好ましくは3%以上溶解するものである。これらの水溶性色素構造としてはスルホ基、カルボキシル基等の水溶性基を2個程度含有する構造が好ましい。
一般式(1)で表される色素が油溶性である場合は、樹脂等と共に着色微粒子分散物であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の、インクジェット記録液の含有量は、0.1質量%〜25質量%の範囲が好ましく、更に好ましくは、0.5質量%〜10質量%の範囲である。
前記一般式(1)の化合物を有する、本発明のインクジェット記録液は、水系溶媒、油系溶媒、固体(相変化)溶媒等の種々の溶媒系を用いることができるが、本発明に記載の効果を好ましく得る観点からは、特に下記に記載のような水系溶媒を用いることが好ましい。
《水系溶媒》
水系溶媒としては、水(例えば、イオン交換水が好ましい)と水溶性有機溶媒との混合系が好ましく用いられる。
水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、ヘテロ環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
上記の水溶性有機溶媒の中でも、特に好ましく用いられるのは、多価アルコール類である。
前記一般式(1)で表される化合物が、水系溶媒系に可溶であればそのまま溶解して用いることができる。この場合、前記一般式(1)で表される化合物の水系溶媒への溶解性が重要であり、前記化合物の構造上の特徴としては、スルホ基または、その塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、1/2カルシウム塩、アンモニウム塩等)を少なくとも1つ有することが好ましく、更に好ましくは、少なくとも2つ以上有することである。
《着色粒子分散物》
本発明に係る、前記一般式(1)で表される化合物の微粒子分散物について説明する。
前記一般式(1)で表される化合物が、上記の水系溶媒に、化合物単独の状態では実質的に不溶(ここで、実質的に不溶とは、水系溶媒中への溶解性が0.1質量%以下であるような場合を示す)の固体である場合、前記化合物を種々の分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、ジェットミル、オングミル等)を用いて微粒子化するか、あるいは前記化合物が可溶な有機溶媒に溶解した後に、高分子分散剤や界面活性剤とともに、化合物単独の状態では不溶の溶媒系に分散させることができる。
または、前記化合物を樹脂(ポリマーともいう)と混練し、その後水系で分散し、前記化合物が樹脂被覆された状態の着色微粒子分散物を作製する方法、樹脂を有機溶剤に溶解した溶液を前記化合物の分散液に加えた後、減圧で溶剤を除去し樹脂被覆して、着色微粒子分散物を作製する方法等が挙げられる。
更に、溶媒系が室温などでは固体状の媒体または半溶融状物等(後述するワックスのような材料の場合)である場合、前記固体状のまま、前記半溶融状物のままか、または、それらが可溶である有機溶媒に溶解して、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。
本発明に係る微粒子分散物は、少なくとも前記一般式(1)で表される化合物の1種と樹脂とを構成成分として含む微粒子を含有しているが、微粒子分散物が、コア/シェル構造を有する微粒子を含むことが好ましい。
本発明において好ましい着色微粒子分散物とは、着色微粒子の水分散物としての安定性を向上し、且つ、色材の堅牢性や色調の向上効果を好ましく得る観点から、微粒子表面〜表面層には、比較的親水性を有する樹脂で構成することが好ましく、自己分散型が好ましい。
(コア/シェル構造を有する着色微粒子)
本発明に係る微粒子分散物を構成する微粒子がコア/シェル構造を形成する場合、コア部とシェル部の構成としては下記のような組み合わせがある。
コア部 シェル部
(1) 色素 樹脂
(2) 色素+樹脂 樹脂
上記の組み合わせの中でも、コア/シェル粒子の分散安定性向上の観点から、コア部が樹脂や色材を含み、シェル部が樹脂により構成されている組み合わせ(2)が好ましい。
(コア/シェルを形成する樹脂の割合)
コアシェル構造の安定性向上(コアの一部が粒子表面に現れるのを防止し、また、コア部の色素保護性を向上させる)の観点から、シェルに用いられる樹脂量が総樹脂量の5質量%〜95質量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、10質量%〜90質量%である。
(色素と樹脂の比率)
インク吐出後の画像濃度を適性に保ちながら、且つ、色素に対する樹脂の保護能を十分に機能させる観点から、色素の質量は総樹脂量に対して20質量%〜1000質量%の範囲であることが好ましい。
(微粒子の粒径)
本発明において、前記一般式(1)で表される化合物(色素)が水系溶媒系に不溶であり、微粒子状に分散させる場合、少なくとも1種の色素をコアシェル樹脂中に確実に封入し、また、得られた微粒子分散物がインクとして用いられた時のヘッドへの詰まりやすさを低減し、インクジェット記録液中での微粒子分散物の沈降を防止し、且つ、インクジェット記録液の保存安定性(停滞安定性、経時安定性等ともいう)を向上させる観点から、コア/シェル微粒子の体積平均粒子径は、1nm〜200nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは、3nm〜100nmの範囲である。
(体積平均粒子径)
ここで、微粒子の体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求められる。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザ粒径解析システムや、マルバーン社製ゼータサイザを用いて求めることが出来る。
(粒子径の変動係数)
粒子径の変動係数は、粒子径の標準偏差を粒子径で割った値であるが、この値が大きいほど粒子径の分布が広いことを意味する。
コアシェルの厚みの均一性を高め、粒子間の表面物性を均一化して粒子の凝集を低減させ、インクジェットヘッドの詰まりを防止する効果、メディア上での色材の不用な光散乱を防止して画質の低下を抑制する効果を共に得る観点から、粒子径の変動係数は、80%未満が好ましく、更に好ましくは、50%以下であり、特に好ましくは、30%以下である。
(コアシェル構造の形成方法)
本発明に係るコア/シェル構造を有する微粒子は、最初に、本発明に係る色素を含有する樹脂コアを作製した後、樹脂シェルを設ける方法と、コア及びシェルを同時に設ける手法等が挙げられる。
(a)微粒子コア作製後にシェルを設ける方法
コアとなる色素含有(色素を含むともいう)樹脂は、各種の手法で調製することができる。例えば、色素と樹脂とを混練し、その後、水系で分散し樹脂被覆色素を作製する手法などがある。それに樹脂シェルを設ける手法としては、コアとなる樹脂の水系サスペンションに水溶性の樹脂分散剤を添加し吸着させる手法、モノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法、あるいは、有機溶剤に溶解した樹脂を徐々に滴下し、析出と同時にコア表面に吸着させる方法などがある。
本発明においては、コアとなる樹脂の水系サスペンションにモノマーを徐々に滴下し、重合と同時にコア表面に沈着させる方法が特に好ましい。
(b)微粒子形成時にコアとシェルを同時に設ける方法
コアとなる樹脂と色材(色素)を、重合後にシェルとなるモノマーに溶解または分散し、水中で懸濁後重合する手法や、その液を活性剤ミセルを含有する水中に徐々に滴下しながら乳化重合していく手法などもある。モノマーがコア、樹脂がシェルとなってもよい。あるいは、重合後にコアとなりうるモノマーとシェルとなりうるモノマー混合液に色素を溶解または分散し、懸濁重合あるいは乳化重合する手法もある。
(コアシェル構造の評価方法)
着色微粒子が実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明では後述するように、着色微粒子の個々の粒子径が200nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られたものとなる。
このような目的に沿う分析手法としては、TEM(透過型電子顕微鏡)やTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)などが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物である樹脂の種類のみではコントラスト差が小さい場合があるため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色することが好ましい。
コアだけの微粒子を染色し、そのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。更に、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致するかを確認する。
(着色微粒子分散物の形成用樹脂の好ましい物性)
着色微粒子分散物の形成用樹脂に求められる物性とは、前記一般式(1)のいずれか1種の化合物(色素)との相溶性、親和性が高いことは勿論のこと、色調、保存性を良くするための相互作用が強いこと、分散系を保つために適度な疎水性を有し、且つ、分散安定性を向上するための適度な親水性を同時に有し、更に、耐光性を上げるためにはガラス転移点(Tg)が高いことなど(但し分散安定性を上げるためには低Tgである方がよい)多様な性質が要求される。
従来、染料や色素という色材と共に用いられてきた複合樹脂粒子においては、例えば、染料、色素に対して相溶性または親和性の高い樹脂を用いることが色調のよい着色微粒子を得る上では好ましい。用いられる樹脂は、その数平均分子量が500〜100,000の範囲であることが好ましく、特に好ましくは、1,000〜30,000である。
該樹脂のTgは、各種用いることが可能であるが、用いる樹脂のうち、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましい。
《水分散型のポリマー》
水分散型のポリマーとしては、イオン解離型のもの、非イオン性分散性基含有型のもの、あるいはこれらの混合型のもののいずれでもよい。前記イオン解離型のポリマーとしては、三級アミノ基などのカチオン性の解離性基を含有するポリマーや、カルボン酸、スルホン酸などのアニオン性の解離性基を含有するポリマーが挙げられる。前記非イオン性分散性基含有型のポリマーとしては、ポリエチレンオキシ鎖などの非イオン性分散性基を含有するポリマーが挙げられる。
これらの中でも、着色微粒子の分散安定性の点で、アニオン性の解離性基を含有するイオン解離型のポリマー、非イオン性分散性基含有型のポリマー、混合型のポリマーが好ましい。
本発明に係る水分散型のポリマーの形成に用いられるモノマー(単量体ともいう)としては、例えば、以下のものが挙げられる。
即ち、アクリル酸エステル類、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、グリシジルアクリレート、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルアクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルアクリレート等;
メタクリル酸エステル類、具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−iso−プロポキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルメタクリレート等;
ビニルエステル類、具体的には、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等;
アクリルアミド類、具体的には、アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、tert−オクチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等;
メタクリルアミド類、具体的には、メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、ヒドロキシメチルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミド、N−(2−アセトアセトキシエチル)メタクリルアミド等;
オレフィン類、具体的には、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等、スチレン類、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等;
ビニルエーテル類、具体的には、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等;
その他のモノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニリデンクロライド、メチレンマロンニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等;が挙げられる。
また、解離性基を有するモノマーとしては、アニオン性の解離性基を有するモノマー、カチオン性の解離性基を有するモノマーが挙げられる。
前記アニオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロトン酸、イタコン酸モノアルキルエステル(例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなど)、マレイン酸モノアルキルエステル(例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチルなど)などが挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2−メタクルリアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸など)などが挙げられる。
リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、メタクリロイルオキシエチルホスホン酸などが挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸が好ましく、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸等が挙げられる。
前記カチオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアタクリレートなどの3級アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
また、非イオン性分散性基を含有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとカルボン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとスルホン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとリン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとイソシアネート基含有モノマーから形成されるビニル基含有ウレタン、ポリビニルアルコール構造を含有するマクロモノマーなどが挙げられる。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ部の繰り返し数としては、8〜50が好ましく、10〜30がより好ましい。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素原子数としては、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
これらのモノマーは、1種単独で使用されてポリマーが形成されていてもよいし、2種以上が併用されてポリマーが形成されていてもよく、前記ポリマーの目的(Tg調節、溶解性改良、分散物安定性等)に応じて適宜選択することができる。
《従来公知のポリマー》
また、本発明では樹脂として、従来公知のポリマー(樹脂)が使用可能であるが、好ましいポリマーとしては、主な官能基としてアセタール基を含有するポリマー、炭酸エステル基を含有するポリマー、水酸基を含有するポリマーおよびエステル基を有するポリマーなどであり、特にアセタール基を含有するポリマー、中でもポリビニルブチラール等が挙げられる。
上記のポリマーは、置換基を有していてもよく、その置換基は直鎖状、分岐、あるいは環状構造をとっていてもよい。また、上記の官能基を有するポリマーは、各種のものが市販されているが、常法によって合成することもできる。また、これらの共重合体は、例えば1つのポリマー分子中にエポキシ基を導入しておき、後に他のポリマーと縮重合させたり、光や放射線を用いてグラフト重合を行っても得られる。
また、重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーも好ましく用いられる。エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド類等のラジカル重合によって得られるポリマー、例えば、スチレン/アクリル酸エチル、或いはアクリル酸ブチル等の共重合体ポリマー、また、スチレン/メタクリル酸エチルヘキシル等の共重合体ポリマー、更にはスチレン/メタクリル酸エチルヘキシル/ヒドロキシエチルアクリレート等の共重合体ポリマー等が例としてあげられる。
本発明に係るコアシェル型の着色微粒子の作製において、特に好ましいポリマーとしてはアセタール基を含有するポリマー(ポリビニルアセタール)が挙げられるが、中でも特にポリビニルブチラールが色素等の色材に対する溶解性や親和性等の相互作用の点で好ましく、コア部の形成に用いられる複数の樹脂のうちの1つはポリビニルブチラールであることが好ましく、これらに加えて前記のポリマーのうち1つ以上をポリビニルブチラールとは異なった樹脂成分として混合して用いることが好ましい。また、同種のポリビニルブチラール樹脂同士であっても、平均重合度の異なるものや分子量分布の異なるもの等を組み合わせてもよい。
《親油性溶媒》
本発明に係る微粒子分散物の分散に用いられる有機溶媒(親油性溶媒)について説明する。
本発明において親油性とは、LogP値が0以上である溶媒を示す。本発明に使用される親油性溶媒(疎水性溶媒ともいう)としては、具体的には、アルコール類(例えば、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、フェニルエチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、オクタデシルアルコール等)、エステル類(エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、酢酸フェニルエチル、酢酸フェノキシエチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸ベンジル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(2−エチルヘキシル)、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジウンデシル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、ジエチルマロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ(2−メトキシエチル)、セバシン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジオクチル、ケイ皮酸−3−ヘキセニル、クエン酸トリブチル等)、エーテル類(例えば、ブチルフェニルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、ケトン類(例えば、ベンジルメチルケトン、ベンジルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等)、炭化水素類(例えば、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等)、アミド類(例えば、N,N−ジエチルドデカンアミド、N,N−ジブチルドデカンアミド等)が挙げられる。
本発明において、沸点150℃以上の高沸点有機溶媒を含有した場合、色調又は分散安定性の点で好ましい態様の一つである。このようなインクジェット記録液に使用される油系溶媒の具体的調製法については、特開平3−231975号公報、特表平5−508883号公報に記載の方法を参照することができる。
《固体溶媒(相変化溶媒ともいう)》
本発明に使用される固体(相変化)溶媒は、溶媒として室温で固体であり、且つ、インクジェット記録液の加熱噴射時には溶融した液体状である相変化溶媒を使用する。
このような相変化溶媒としては、天然ワックス(例えば、密ロウ、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラワックス、ラノリン、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等)、ポリエチレンワックス誘導体、塩素化炭化水素、有機酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チグリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等)、有機酸エステル(例えば、上記した有機酸のグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のアルコールとのエステル等)、アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ドデセノール、ミリシルアルコール、テトラセノール、ヘキサデセノール、エイコセノール、ドコセノール、ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エイコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピレングリコール、ビスフェノールA、パラアルファクミルフェノール等)、ケトン(例えば、ベンゾイルアセトン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘントリアコンタノン、ヘプタトリアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール等)、アミド(例えば、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、テトラヒドロフラン酸アミド、エルカ酸アミド、ミリスチン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N′−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−システアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、フェナセチン、トルアミド、アセトアミド、オレイン酸2量体/エチレンジアミン/ステアリン酸(1:2:2のモル比)のような2量体酸とジアミンと脂肪酸の反応生成物テトラアミド等)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホンアミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等)、シリコーン類(例えば、シリコーンSH6018(東レシリコーン)、シリコーンKR215、216、220(信越シリコーン)等)、クマロン類(例えば、エスクロンG−90(新日鐵化学)等)、コレステロール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、メリシン酸コレステロール等)、糖類脂肪酸エステル(ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、ベヘン酸サッカロース、ラウリン酸サッカロース、メリシン酸サッカロース、ステアリン酸ラクトース、パルミチン酸ラクトース、ミリスチン酸ラクトース、ベヘン酸ラクトース、ラウリン酸ラクトース、メリシン酸ラクトース等)が挙げられる。
固体(相変化)溶媒の固体−液体相変化における相変化温度は、60℃〜200℃であることが好ましく、80℃〜150℃であることがより好ましい。
上記のような固体(相変化)溶媒は、加熱した溶融状態の溶媒に本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできる。
このような相変化溶媒の具体的調製法については、特開平5−186723号公報、同7−70490号公報に記載の方法を参照できる。
上記したような水系、油系、固体(相変化)溶媒を使用し本発明の色素を溶解した本発明のインクジェット記録液は、その飛翔時の粘度として40×10-3Pa・s以下が好ましく、30×10-3Pa・s以下であることがより好ましい。
また、本発明のインクジェット記録液は、その飛翔時の表面張力として20×10-5N/cm〜100×10-5N/cmが好ましく、30×10-5N/cm〜80×10-5N/cmであることがより好ましい。
本発明に使用される樹脂型分散剤としては、分子量1,000〜1,000,000の高分子化合物が好ましく、これらは使用される場合にはインクジェット記録液中に0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましい。
本発明のインクジェット記録液には、吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
《インクジェット記録方法》
本発明に用いられるインクジェット記録方法について説明する。
本発明のインクジェット記録液は、その使用する記録方式に関して特に制約はないが、特にオンデマンド方式のインクジェットプリンタ用のインクジェット記録液として好ましく使用することができる。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
合成例1
(例示化合物D−3の合成)
Figure 2005146192
1−オクタノール400mlに、30gの水酸化カリウムを加えて130℃で30分攪拌した。80gの化合物Aを固体のまま加えた後同温で1時間反応させた。30gの氷酢酸を加えて冷却しカラムクロマトグラフィーにより不純物を分離した。酢酸エチルとヘキサンの混液から再結晶して53gの化合物Bを得た。この化合物B30gにマロン酸ジエチル15gおよび1gの酢酸ナトリウムを加え、約150℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、赤色のアモルファス21gを得た。得られた化合物の1H−NMR及びMASSにより構造を確認した。
合成例2
(例示化合物D−7及びD−18の合成)
Figure 2005146192
1−オクタノール400mlに、3gの水酸化カリウムを加えて130℃で30分攪拌した。73gの化合物Cを固体のまま加えた後同温で1時間反応させた。30gの氷酢酸を加えて冷却しMeOHを加えて57gの青色結晶である化合物Dを得た。この化合物Dを50gにオルトジクロロベンゼン3g、ベンゾイル酢酸エチル35gおよび1gの炭酸ナトリウムを加え、約170℃に加熱し、3時間反応させた。反応終了後、得られた残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製し、赤色の例示化合物D−7の結晶37gを得た。1H−NMR及びMASSにより構造を確認した。
30gの例示化合物D−7を秤量し、濃硫酸−発煙硫酸の混液100mlに固体のまま徐々に加えた。40℃で4時間反応し水あけ後、3回塩析を行い赤色の水溶性色素である例示化合物D−18を24g得た。1H−NMR及びMASSにより構造を確認した。
実施例1
《インクジェット記録液1〜6の作製:水系インク》
表1に記載の本発明化合物及び比較化合物を用いて仕上がり50mlのインク中の水溶性色素含有量が、5質量%になるように秤量し、これに、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、サーフィノール465(日信化学工業社製)0.3質量%、残りが純水になるように調製して純水を加え、混合分散し、0.45μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して、表1に示すようなインクジェット記録液1〜6を得た。用いた比較化合物の構造式を下記に示す。
Figure 2005146192
《画像試料の作製および評価》
上記で得たインクジェット記録液1〜6の各々のインクを市販のエプソン製インクジェットプリンター(PM−800)を用いてコニカフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカ株式会社製)にプリントし、得られた画像試料1〜6について、下記のように画像の耐光性、画像の色調およびインクの保存性の評価を行った。
《画像の耐光性評価》
得られた試料に7万Luxのキセノンフェードメーターで96時間光照射を行い、各画像の色素残存率で耐光性を評価した。尚、色素残存率(%)は、光照射前の濃度をD0、光照射後の濃度をDとして、
耐光性(%)=D/D0×100(%)
で表す。尚、濃度はコニカ株式会社製PDA−65濃度計を用い測定した。
《画像の色調評価》
画像試料の390nm〜730nm領域のインターバル10nmによる反射スペクトルを測定し、これをCIE L***色空間系に基づいて、a*、b*を算出した。
マゼンタとして好ましい色調を下記のように定義し、下記3段階の評価基準によりランク評価した。尚、本発明では、好ましい数値としては、a*は76以上、b*は、−30〜0の範囲である。
○:a*、b*ともに好ましい領域
△:a*、b*の一方のみ好ましい領域
×:a*、b*のいずれも好ましい領域外
《インクの保存性評価》
インクジェット記録液1〜6を密閉パック容器中に保存し60℃で12時間保存後20℃で12時間保存するサイクルサーモを3日間行った後インクを0.8μmのフィルターで濾過性を評価した。更に1時間の連続吐出における吐出異常の有無を観察し、出射性を下記の評価基準により評価した。
(濾過性)
○:50ml通過する
△:30ml以上通過する
×:30ml未満しか通過しない
(出射性)
○:出射異常ノズルが全ノズルの10%以内である
△:出射異常ノズルが全ノズルの10%以上〜40%未満である
×:出射異常ノズルが全ノズルの40%異常である
得られた結果を表1に示す。
Figure 2005146192
表1から、本発明の画像試料は、比較の画像試料に比べて、画像の耐光性、色調共に良好であり、また、本発明のインクは、インクの保存性も良好であることが明らかである。
実施例2《微粒子分散物の調製》
表2に記載の化合物を10g、メチルエチルケトン20g、グリセリン5g、共重合ポリマー(スチレン/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=80/5/15の共重合比である、中和済み樹脂)を6g、イオン交換水40gの混合液に、平均粒子径が0.5mmのジルコニアビーズ250gを加え、メディア分散機(システムゼータ;(株)アシザワ製)を用いて4時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを濾別して分散液を得た。この分散液に水40mlを加えて希釈した後、減圧留去によりメチルエチルケトンを除去し微粒子分散物を得た。
《インクジェット記録液7〜11の作製:水系インクの作製》
表2に記載の化合物の含有量がインクジェット記録液の仕上がり量に対して3質量%になるように、上記微粒子分散物を秤量し、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3質量%、サーフィノール465を0.3質量%、残りが純水になるように調製し、混合分散し、次いで、2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して表2に示すようにインクジェット記録液7〜12を得た。
《インクジェット記録液7〜11の保存性評価:粒子径変化率、濾過性》
インクジェット記録液7〜11について、60℃で7日間保存した際の平均粒子径変化率、保存後のインクの濾過性を下記のように評価した。
(インクの平均粒子径変化率)
インクジェット記録液7〜11を、各々60℃で7日間保管し、大塚電子製レーザ粒径解析システムを用いて保存後のインクの平均(体積平均)粒子径を求め、同様にして求めた未保存の場合のインクの平均粒子径との平均粒子径変化率を下式にて求め、下記基準によりランク評価した。
平均粒子径変化率(%)={(保存後のインクの平均粒子径−未保存のインクの平均粒子径)/(未保存のインクの平均粒子径)}×100
×:10%以上(実用不可レベル)
○:5%〜10%未満(実用許容レベル)
◎:粒子径変化率が5%未満
(インクの濾過性評価)
インクジェット記録液7〜11を60℃で7日間保管した後に、10ml採取し、0.8μmのセルロースアセテートメンブランフィルターで濾過を行い、下記のようにランク評価した。
◎:全量濾過できたもの
○:半量以上濾過できたもの(実用可)
×:半量未満しか濾過ができなかったもの(不可レベル)
本発明では、◎、○が実用可のレベルである。
《画像試料の作製と色調評価》
インクジェット記録液7〜12の各々のインクを用いて実施例1と同様に画像試料を作製し、画像の色調を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2005146192
Figure 2005146192
表2から、本発明のインクは、比較のインクに比して、保存後のインクの平均粒子径変化率、インクの濾過性(即ち、インクの保存安定性)が優れていることがわかり、且つ、インクの経時保存後においても、本発明のインクを用いて作製した画像試料は、画像の色調の面でも優れていることがわかる。
実施例3
《微粒子分散物の作製》:コアシェル構造粒子
表3に示す化合物を5g、5gのポリビニルブチラール(積水化学製BL−S、平均重合度350)及び50gの酢酸エチルをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内をN2ガスで置換後、攪拌して上記ポリビニルブチラール及び化合物を完全溶解させた。
ラウリル硫酸ナトリウム2gを含む水溶液100gを滴下後、超音波分散機(UH−150型、株式会社エスエムテー製)を用いて、300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、上記化合物が上記ポリビニルブチラール中に含浸されたコア微粒子分散物(コア微粒子分散液ともいう)を得た。
得られたコア微粒子分散物に0.15gの過硫酸カリウムを加えて溶解し、ヒーターを付して70℃に加温後、更に2gのスチレン及び1gの2−ヒドロキシエチルメタクリレートの混合液を滴下しながら7時間反応させて、コア微粒子上にシェルポリマー層を形成し、コアシェル型の着色微粒子分散物を得た。
《インクジェット記録液12〜16の作製:水系インク》
色素の含有量がインクの仕上がり量に対して2質量%になる量の上記着色微粒子分散物を秤量し、これに、エチレングリコール15質量%、グリセリン15質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル3質量%、サーフィノール465を0.3質量%、残りが純水になるように調製して純水を加え混合分散し、更に2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して表3に示すようにインクジェット記録液12〜16を得た。
《インクジェット記録液12〜16の保存性評価:粒子径変化率、濾過性》
インクジェット記録液12〜16について、60℃で7日間保存した際の平均粒子径変化率、保存後のインクの濾過性を実施例4と同様に評価した。
《画像試料の作製と色調、耐光性評価》
インクジェット記録液12〜16の各々のインクを用いて実施例1と同様に画像試料を作製し、画像の色調、画像の耐光性を評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005146192
表3から、本発明のインクは、比較のインクに比してインクの保存後のインクの平均粒子径変化率が少なく、インクの濾過性(即ち、インクの保存安定性)が良好であり、且つ、本発明のインクを用いて作製した画像試料は、画像の色調、耐光性共に優れていることが明らかである。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
    Figure 2005146192
    〔式中、Rはアルキル基またはシクロアルキル基を表し、Xはアリール基またはヘテロ環基を表し、Yはフェニル基またはアルコキシ基を表す。〕
  2. 水に1%以上溶解することを特徴とする請求項1記載の化合物。
  3. 請求項1または2記載の化合物を少なくとも1種含有することを特徴とするインクジェット記録液。
  4. 請求項1記載の化合物を、着色微粒子分散物として含有することを特徴とする請求項3記載のインクジェット記録液。
  5. 請求項3または4記載のインクジェット記録液を、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドから液滴として吐出させてインク受容体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
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