JP4379906B2 - 水性一液コーティング剤及びそれを用いたコーティング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性一液コーティング剤及びそれを用いたコーティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤を多く含有するコーティング剤は、人体への悪影響、爆発火災等の安全衛生上の問題、また、大気汚染等の公害問題を有する。そこで、これらの問題点を改善するため、近年水性システム開発が活発に行われている。一方、ウレタン系コーティング剤は、様々な基材に対して良好な密着性を示す。そこで、従来の水性ウレタン系コーティング剤は、(a)活性水素基を有する主剤と、ポリイソシアネート硬化剤とからなる二液タイプ、(b)活性水素基を有する主剤に、あらかじめブロックイソシアネートを配合した一液タイプ、(c)イソシアネート基を有する樹脂からなる一液タイプ、に大別される。
【0003】
(a)タイプとしては、特許文献1に記載されているものが挙げられ、これには、主剤として特定の水系アクリル樹脂と、硬化剤として水分散性ポリイソシアネート組成物を用いた水系コーティング剤が開示されている。(b)タイプとしては、特許文献2に記載されているものが挙げられ、主剤として特定の疎水性重合体を界面活性剤にて水に分散させたものと、硬化剤としてブロックイソシアネートを用いた水系コーティング剤が開示されている。(c)タイプとしては、特許文献3が挙げられ、これには水に分散させた自己乳化性ポリイソシアネートを用いたコーティング剤が開示されている。
【0004】
しかし、(a)タイプのコーティング剤は、主剤と硬化剤を使用直前に配合しなければならないため、配合ミス、保管場所の確保等といった問題がある。また、主剤と硬化剤を配合した後は、早急に使い切らなければならず、一旦配合したものを保管することは非常に困難である。(b)タイプでは、硬化の際に解離していないブロック剤が徐々に解離していくため密着性低下等の問題がある。(c)タイプでは、水とイソシアネート基との反応に際に発生する炭酸ガスによる問題(貯蔵時の容器の破損、被膜の状態不良)等がある。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−131016号公報
【特許文献2】
特開平8−48913号公報
【特許文献3】
特開平7−48429号公報
【0006】
これらの問題を解決するため、本出願人は自己乳化性ポリイソシアネートを用いた技術を開発した(特許文献4)。
【0007】
【特許文献4】
特開2002−146281号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特許文献4の技術を更に改良し、貯蔵安定性に優れ、環境に配慮して安全であり、短時間で基材への密着性が発現し、良好な被膜外観を有し、溶出量の少ない水性一液コーティング剤、及び作業性に優れたコーティング方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者等は鋭意検討した結果、特定の水分散体を用いた水性一液コーティング剤が、前記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(3)に示されるものである。
【0011】
(1) ヘキサメチレンジイソシアネート、芳香族ポリエステルポリオール、及び親水基含有アルコール化合物から得られる、イソシアヌレート基を有さず、かつアロファネート基を1mmol/g以上含有する自己乳化性ポリイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、かつ遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有することを特徴とする水性一液コーティング剤。
【0012】
(2)前記(1)のアロファネート基を1mmol/g以上含有する自己乳化性ポリイソシアネートの平均官能基数が3.8〜5.7、25℃での粘度が20000〜280000mPa・sであることを特徴とする前記(1)の方法で得られる水性一液コーティング剤。
【0013】
(3)前記(1)、(2)の水性一液コーティング剤を100℃未満で基材に塗布した後、100〜300℃で熱硬化させること、を特徴とするコーティング方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の水性一液コーティング剤は、有機ポリイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を実質的に遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、かつ実質的に遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有することを特徴とする。なお「一液熱硬化性」とは、硬化剤や架橋剤を用いることなくそれ単独で加熱することで硬化するということである。また「硬化」とは、被膜にした場合に少なくとも耐溶剤性を有する被膜になるということである。
【0015】
本発明に用いられる自己乳化性ポリイソシアネートは、実質的にイソシアヌレート基を有さず、かつアロファネート基を1mmol/g以上(好ましくは1.5mmol/g以上)含有するものである。「実質的にイソシアヌレート基を有さない」とは、IR測定において、イソシアヌレート基の明瞭なピークが確認されないということであり、若干の吸収ピークは確認されてもよい。イソシアヌレート基の実質的な存在は、自己乳化性ポリイソシアネートの粘度が高くなり、水に分散させにくくなり、また被膜からの溶出物が多くなりやすい。また、アロファネート基が1mmol/g未満の場合は、自己乳化性ポリイソシアネートの粘度が高くなり、水に分散させにくい。
【0016】
本発明に用いられる自己乳化性ポリイソシアネートのイソシアネート含量は、1〜30質量%が好ましく、特に1〜25質量%が好ましい。また、25℃における粘度は、5,000mPa・s以下が好ましく、特に4,500mPa・s以下が好ましい。また、平均官能基数は2〜10が好ましく、2〜6が特に好ましい。
【0017】
本発明の自己乳化性ポリイソシアネートは、有機ジイソシアネートとアルコール化合物を反応させて得られるものである。アルコール化合物としては、少なくとも芳香族ポリエステルポリオールと親水基含有アルコール化合物を用いるのが好ましい。
【0018】
この有機ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。本発明では、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0020】
前記芳香族ポリエステルポリオールとは、酸成分の50モル%以上が芳香族ポリカルボン酸であるということである。芳香族ポリカルボン酸としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ベンゼンジ酢酸、5−スルホ−イソフタル酸(金属塩)等が挙げられる。
【0021】
併用できるカルボン酸には、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
芳香族ポリエステルを構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子ポリオール類が挙げられる。
【0023】
前記親水基含有アルコール化合物は、水酸基含有三級アミンに無機酸や有機ハロゲン化合物で中和させて得られる第四級アンモニウム塩等のカチオン性親水基含有アルコール化合物、カルボキシル基含有アルコール化合物のアミンや金属との塩等のアニオン性親水基含有アルコール化合物、任意の活性水素基含有化合物にエチレンオキサイドを主成分とするアルキレンオキサイドを付加させたノニオン性親水基含有アルコール化合物が挙げられる。本発明においては、自己乳化性ポリイソシアネートそのものの貯蔵安定性等を考慮するとノニオン性親水基含有アルコール化合物が好ましく、特に好ましくは、炭素数1〜10のモノオールを開始剤として、アルキレンオキサイドを開環付加させて得られる、オキシエチレン基を50質量%以上含有し、かつ、数平均分子量が200〜10,000である、ポリエーテルモノオールである。
【0024】
上記ノニオン性親水基含有アルコール化合物を用いた自己乳化性ポリイソシアネートにおいて、ノニオン性親水基含有アルコール化合物の含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜18質量%が特に好ましい。これは、ノニオン性親水基含有アルコール化合物が多すぎる場合は、被膜の機械的強度や耐久性等が不十分となりやすい。また少なすぎる場合は、得られるポリイソシアネートが、自己乳化しにくくなりやすいためである。
【0025】
その他、上記アルコール化合物以外のアルコール化合物を用いることができる。例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル等の低分子モノオール類、前述の芳香族ポリエステルポリオールを構成する低分子ポリオール類、低分子モノオールに環状エステル化合物を付加させたポリエステルモノオール類、芳香族ポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオール類、前述のポリエーテルモノオール以外のポリエーテルモノオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0026】
本発明における自己乳化性ポリイソシアネートを得る好ましい方法としては、(イ)有機ジイソシアネートと親水基を有しないアルコール化合物からアロファネート変性ポリイソシアネートを得て、次いで芳香族ポリエステルポリオール並びに親水基含有アルコール化合物をイソシアネート基過剰の雰囲気で反応させる方法、(ロ)有機ジイソシアネート、芳香族ポリエステルポリオール及び親水基含有アルコール化合物からアロファネート変性ポリイソシアネートを得て、次いで必要に応じて親水基を有しないアルコール化合物をイソシアネート基過剰の雰囲気で反応させる方法、(ニ)有機ジイソシアネートと芳香族ポリエステルポリオールからアロファネート変性ポリイソシアネートを得て、次いで親水基含有アルコール化合物をイソシアネート基過剰の雰囲気で反応させる方法、(ホ)有機ジイソシアネートと親水基含有アルコール化合物からアロファネート変性ポリイソシアネートを得て、次いで芳香族ポリエステルポリオールをイソシアネート基過剰の雰囲気で反応させる方法、等が挙げられる。本発明では、芳香族ポリエステルポリオール、親水基含有アルコール化合物、及びヘキサメチレンジイソシアネートから得られる自己乳化性ポリイソシアネートが最も好ましい。
【0027】
いずれの場合でも、アロファネート変性ポリイソシアネートは、ウレタン化反応とアロファネート化反応を通じて得られる。ウレタン化反応の後アロファネート化反応を行ってもよいし、ウレタン化反応とアロファネート化反応を同時に行うこともできる。前者は、有機ジイソシアネートとアルコール化合物を、イソシアネート基過剰となる量比で仕込んで、ウレタン化反応させた後、アロファネート化触媒の存在下でウレタン基が実質的に存在しなくなるまでアロファネート化反応させる、という手順である。一方後者は、有機ジイソシアネートとアルコール化合物を、イソシアネート基過剰となる量比で仕込んで、アロファネート化触媒の存在下でウレタン化反応及びアロファネート化反応を同時に行う。
【0028】
ここで「イソシアネート基過剰となる量比」とは、原料仕込みの際、イソシアネート基が水酸基に対して過剰となるという意味であり、イソシアネート基と水酸基のモル比がイソシアネート基/水酸基=8/1以上が好ましく、10/1〜50/1が特に好ましい。
【0029】
ウレタン化反応の反応温度は20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。なお、ウレタン化反応の際、公知のいわゆるウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。ウレタン化触媒の使用量はその種類により異なるが、反応系の総和量に対して、0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%がより好ましい。また、反応時間は、触媒の有無や種類、反応温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間である。
【0030】
アロファネート化反応において、用いるアロファネート化触媒としては、カルボン酸ジルコニウム塩が好ましい。カルボン酸ジルコニウム塩を用いることにより、イソシアヌレート基等の副生成物が少ない(自己乳化型)アロファネート変性ポリイソシアネートが比較的容易に得られる。ここで使用されるカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上記したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類が挙げられる。これらのカルボン酸ジルコニウム塩は、単独あるいは2種以上の混合物のいずれの形態で用いてもよい。本発明で好ましいアロファネート化触媒は、炭素数10以下のモノカルボン酸ジルコニウム塩である。
【0031】
アロファネート化触媒の使用量はその種類により異なるが、反応系の総和量に対して、0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%がより好ましい。触媒使用量が0.0005質量%未満の場合は、反応が遅くなって長時間を要し、熱履歴による着色が起こる場合がある。一方触媒使用量が1質量%を超える場合は、反応制御が難しなり、副反応であるイソシアヌレート化反応が起こり、得られるポリイソシアネートの粘度が高くなりすぎる場合がある。また、反応時間は、触媒の種類や添加量、反応温度により異なるが、通常10時間以内が好ましく、特に好ましくは1〜5時間である。反応温度は70〜150℃、好ましくは80〜130℃である。
【0032】
なお、このとき必要に応じ、ウレタン化反応やアロファネート化反応時に有機溶剤を用いることができる。この有機溶剤としては、n−ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系有機溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系有機溶剤、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶剤等が挙げられる。前記溶剤は1種又は2種以上使用することができる。
【0033】
アロファネート化反応後、触媒毒を添加してアロファネート化反応を停止させる。触媒毒の添加時期は、アロファネート化反応後であれば特に制限はないが、遊離の有機ジイソシアネートを除去する方法に薄膜蒸留を行う場合は、アロファネート反応後かつ薄膜蒸留前に触媒毒の添加を行うのが好ましい。これは、薄膜蒸留時の熱により、副反応が起こるのを防止するためである。
【0034】
この触媒毒としては、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸及びこれらのエステル類、アシルハライド等公知の物が挙げられる。
【0035】
触媒毒の添加量はその種類や触媒の種類により異なるが、触媒の0.5〜2当量となる量が好ましく、0.8〜1.5当量が特に好ましい。触媒毒が少なすぎる場合は、得られるポリイソシアネートの貯蔵安定性が低下しやすい。多すぎる場合は、得られるポリイソシアネートが着色する場合がある。
【0036】
このときの反応装置としては、上記の反応が達成できればいかなる装置でも良く、例えば、攪拌装置の付いた反応釜やニーダー、一軸又は多軸押し出し反応機等の混合混練装置が挙げられる。
【0037】
このようにして得られた自己乳化性ポリイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を実質的に遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて、実質的に遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションが得られる。詳細には、まず、撹拌機のついた反応器に、前記自己乳化性ポリイソシアネートを仕込み、攪拌して乳化分散させる。反応器は密閉しないことが肝要である。密閉型の反応器を用いると、発生する炭酸ガスにより内圧が上昇し、反応器そのものが破損するおそれがあるからである。分散の途中から、イソシアネート基と水との反応が徐々に進行する。このとき、攪拌は停止しないことが重要である。攪拌を停止すると、粒子が凝集してしまうため、均一な分散液にはならないからである。分散液内の粒子の平均粒径は、攪拌速度、自己乳化性ポリイソシアネートに導入される親水基の量や種類等で制御できる。なお、攪拌速度は、毎分200回以上が好ましい。反応の終了は、イソシアネート基が残存しなくなったところである。このときの反応温度は0〜100℃が好ましく、特に好ましくは10〜80℃である。また、反応系における固形分は10〜90質量%になるようにするのが好ましく、特に20〜80質量%になるようにするのが好ましい。
【0038】
このようにして得られた一液熱硬化性樹脂エマルションの平均粒径は10〜1,000nmが好ましく、20〜500nmが特に好ましい。平均粒径が小さすぎる場合は、エマルションを形成せず、粘度が大きくなる場合がある。平均粒径が大きすぎる場合は、経時で粒子が沈降する場合がある。なお、本発明における平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0039】
本発明においては、前述のエマルションと他樹脂系のエマルションをブレンドして使用できる。例えば、ポリウレタンエマルション、アクリルエマルション、ポリエステルエマルション、ポリオレフィンエマルション、酢酸ビニルエマルション、ポリ塩化ビニルエマルション、エチレン−酢酸ビニル系エマルション、塩化ビニリデン系エマルション、ラテックス等である。
【0040】
また、得られたエマルションには、必要に応じて添加剤や助剤を配合することができる。添加剤や助剤としては、顔料、染料、カップリング剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、揺変剤、界面活性剤、乳化剤等が挙げられる。特にカップリング剤(特にシランカップリング剤)の添加は、密着性が向上するので好ましい。これらの添加時期は、自己乳化性ポリイソシアネートの水分散前、分散の最中、分散後の任意の時期である。
【0041】
このようにして得られた水性一液コーティング剤には、遊離のイソシアネート基が実質的に存在しないものである。実質的に遊離のイソシアネート基が存在する場合は、得られる被膜に「ふくれ」、「泡」、「剥離」等が発生し、外観が悪いものとなりやすい。また、貯蔵時にイソシアネート基と水との反応により炭酸ガスが発生するため、容器の内圧が上昇し、容器が破損しやすい。
【0042】
次に具体的なコーティング手順について説明する。
コーティング剤の基材への塗布温度は、タレや水の急激な蒸発を防ぐため、100℃未満好ましくは常温である。コーティング剤の塗布量は、固形分100質量%換算で、1〜100g/m2 、好ましくは2〜80g/m2 である。塗布方法としては、刷毛、バーコーター、ドクターブレード、リバースロール、グラビアロール、スピンナーコート、エクストルーダ等公知の方法が用いられる。
【0043】
本発明のコーティング方法における基材は、コーティング剤の塗布後に加熱することから、耐熱性があることが必要である。本発明のコーティング方法に最適な基材は金属系の基材である。
【0044】
コーティング剤を塗布した後、100〜300℃、好ましくは120〜280℃で加熱硬化させる。また、加熱時間は30秒間〜120分間であることが好ましく、特に5〜60分間が好ましい。本発明は短時間で物性の優れた被膜を得ることが可能であるため、長すぎる加熱時間は、エネルギーの浪費であるばかりか、被膜に不必要な熱履歴を与えることになる。なお、加熱硬化させる前に、100℃未満好ましくは80℃以下で5〜60分間、水を蒸発させておくのが好ましい。
【0045】
本発明において水性一液コーティング剤の硬化機構は不明であるが、例えば、アミノ基とウレタン基間、アミノ基とウレア基間、ウレア基同士、ウレタン基同士、ウレタン基とウレア基間の交換反応により硬化していると考えられる。
【0046】
本発明のコーティング方法においては、実質的にイソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有する水性一液コーティング剤を単独で使用するので、二液タイプの水性コーティング剤に比較して、作業性が良好であり、また、被膜からの溶出物が少ないという利点を有する。更に、自己乳化性ポリイソシアネートに芳香族ポリエステルポリオールを用いたものは、被膜強度も良好である。
【0047】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断らない限り、「%」は質量%を意味する。
【0048】
〔ポリイソシアネート前駆体の合成〕
合成例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を860g、ポリオール−1を140g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、110℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。更にリン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。生成物のイソシアネート含量は38.3%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:32.7%、数平均分子量:1,200、イソシアネート含量:14.1%、25℃の粘度:245,000mPa・s、平均官能基数:4.1、遊離のHDI含有量:0.2%、アロファネート基含有量:1.7mmol/gのポリイソシアネートA−1を得た。A−1をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0049】
合成例2
合成例1と同様な容量:1Lの反応器に、HDIを900g、テレフタル酸ビスヒドロキシエチル(TPBHE)を100g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、110℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。更にリン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。生成物のイソシアネート含量は38.4%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:34.5%、数平均分子量:1,300、イソシアネート含量:16.3%、25℃の粘度:26,300mPa・s、平均官能基数:4.9、遊離のHDI含有量:0.2%、アロファネート基含有量:2.3mmol/gのポリイソシアネートA−2を得た。A−2をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0050】
合成例3
合成例1と同様な容量:1Lの反応器に、HDIを950g、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(MPD)を50g、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、110℃にて5時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は確認されず、アロファネート基が確認された。更にリン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。生成物のイソシアネート含量は40.4%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:31.3%、数平均分子量:1,100、イソシアネート含量:19.2%、25℃の粘度:1,720mPa・s、平均官能基数:4.9、遊離のHDI含有量:0.2%、アロファネート基含有量:2.7mmol/gのポリイソシアネートA−3を得た。A−3をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0051】
合成例4
合成例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、HDIを997g、1,3−ブタンジオール(1,3−BD)を3gを仕込み、撹拌しながら80℃で2時間ウレタン化反応させた。次に、触媒としてカプリン酸カリウム0.2g、助触媒としてフェノール1.0gを加え、60℃で4.5時間アロファネート化・イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.2g加え、60℃で1時間撹拌した。生成物のイソシアネート含量は49.5%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:13.2%、数平均分子量:580、イソシアネート含量:23.2%、25℃の粘度:1,100mPa・s、平均官能基数:3.2、遊離のHDI含有量:0.1%、アロファネート基含有量:0.5mmol/gのポリイソシアネートA−4を得た。A−4をFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、イソシアネート基、イソシアヌレート基、及びアロファネート基の存在が確認され、特にイソシアヌレート基のピークはA−1〜4の各FT−IRチャートにおいては最も明確かつ最大であった。
【0052】
〔自己乳化性ポリイソシアネートの製造〕
製造例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管のついた容量:1Lの反応器に、HDIを860g、ポリオール−2を140g仕込み、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、90℃にて3時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。更にリン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。生成物のイソシアネート含量は38.3%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:32.7%、数平均分子量:1,200、イソシアネート含量:14.1%、25℃の粘度:270,000mPa・s、平均官能基数:4.1、遊離のHDI含有量:0.2%、アロファネート基含有量:1.7mmol/g、スルホン酸塩含有量:0.4mmol/gの淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Aを得た。NCO−AをFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0053】
製造例2
製造例1と同様な容量:1Lの反応器に、HDIを818g、TPBHEを91g、数平均分子量400のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MePEG#400)を91g、2−エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.2g仕込み、110℃にて5時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は確認されず、アロファネート基が確認された。更にリン酸を0.1g仕込み50℃で1時間停止反応を行った。生成物のイソシアネート含量は33.0%であった。この反応生成物を130℃、0.04kPaの条件にて薄膜蒸留を行い、収率:46.2%、数平均分子量:1,300、イソシアネート含量:13.0%、25℃の粘度:25,300mPa・s、平均官能基数:4.0、遊離のHDI含有量:0.2%、アロファネート基含有量:2.0mmol/g、MePEG含有量:19.7%、淡黄色透明液体の自己乳化性のポリイソシアネートNCO−Bを得た。NCO−BをFT−IR、13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基はその存在が認められず、アロファネート基の存在が確認された。また、ウレトジオン基及びイソシアヌレート基は痕跡程度認められた。
【0054】
製造例3
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−1を100g、MePEG#400を10g仕込み、75℃で3時間反応させて、数平均分子量:1,300、イソシアネート含量:12.0%、25℃の粘度:250,000mPa・s、平均官能基数:3.8、アロファネート基含有量:1.6mmol/g、MePEG含有量:9.1%、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Cを得た。
【0055】
製造例4
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−1を100g、ジメチロールブタン酸(DMBA)を2.5g、ジオクチルチンジラウレート(DOTDL)を0.1g仕込み、75℃で5時間反応させた。その後、トリエチルアミン(TEA)を1.7g仕込んで中和させて、数平均分子量:1,500、イソシアネート含量:12.5%、25℃の粘度:280,000mPa・s、平均官能基数:4.6、アロファネート基含有量:1.6mmol/g、カルボン酸塩含有量:0.16mmol/g、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Dを得た。
【0056】
製造例5
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−2を100g、MePEG#400を10g仕込み、75℃で3時間反応させて、数平均分子量:1,400、イソシアネート含量:13.9%、25℃の粘度:27,000mPa・s、平均官能基数:4.6、アロファネート基含有量:2.1mmol/g、MePEG含有量:9.1%、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Eを得た。
【0057】
製造例6
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−3を100g、ポリオール−1を15g、MePEG#400を10g仕込み、75℃で3時間反応させて、数平均分子量:2,100、イソシアネート含量:11.6%、25℃の粘度:20,000mPa・s、平均官能基数:5.7、アロファネート基含有量:2.1mmol/g、MePEG含有量:11.5%、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Fを得た。
【0058】
製造例7
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−4を100g、MePEG#400を16g仕込み、75℃で3時間反応させて、数平均分子量:640、イソシアネート含量:18.6%、25℃の粘度:1,600mPa・s、平均官能基数:3.0、MePEG含有量:13.8%の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Gを得た。
【0059】
製造例8
製造例1と同様な容量:1Lの反応器内を窒素置換した後、HDIを349g、ポリオール−2を651g仕込み、80℃で2時間ウレタン化反応を行い、数平均分子量:1,300、イソシアネート含量:6.5%、75℃の粘度:400,000mPa・s、平均官能基数:2.0、スルホン酸塩含有量:0.07mmol/g、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Hを得た。
【0060】
製造例9
製造例1と同様な容量:1Lの反応器に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)を523g、ポリオール−1を368g、DMBAを109g、DOTDLを0.1g仕込み、80℃で3時間反応させた後、TEAを74.4g仕込んで中和させることにより、数平均分子量:1,200、イソシアネート含量:6.9%、75℃の粘度:300,000mPa・s、平均官能基数:2.0、カルボン酸塩含有量:0.69mmol/g、淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Iを得た。
【0061】
表1〜2に原料組成、製造結果を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
合成例1〜4、製造例1〜9、表1〜2において
ポリオール−1:イソフタル酸/テレフタル酸=1/1、EG※1/NPG※2=1/1(各モル比)のポリエステルジオール
数平均分子量=500
ポリオール−2:ポリオール−1のイソフタル酸の一部をSSIP※3に置き換えたポリエステルジオール
数平均分子量=500
スルホン酸塩含有量=0.1mmol/g
※1 EG :エチレングリコール
※2 NPG :ネオペンチルグリコール
※3 SSIP:5−ナトリウムスルホイソフタル酸
【0065】
〔一液熱硬化性樹脂エマルションの製造、貯蔵安定性〕
実施例1
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2Lの反応器に、イオン交換水を600g仕込み、5,000rpmで急速撹拌しながら、60秒間で約80℃に加熱した自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Aを400g滴下し、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルション(EM−1)を得た。EM−1の平均粒径は150nmであった。EM−1を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0066】
実施例2〜6、比較例1
実施例1と同様な容量:2Lの反応器に、イオン交換水を600g仕込み、5,000rpmで急速撹拌しながら、60秒間で約80℃に加熱した自己乳化性ポリイソシアネートNCO−B〜Gを400g滴下し、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルション(EM−2〜7)を得た。EM−2〜7を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。EM−2〜7の平均粒径は表3に示す。
【0067】
比較例2、3
実施例1と同様な容量:2Lの反応器に、イオン交換水を600g仕込み、8,000rpmで急速撹拌しながら、60秒間で約80℃に加熱した自己乳化性ポリイソシアネートNCO−H〜Iを400g滴下したところ、大部分が反応器の底に付着したため一液熱硬化性樹脂エマルションを得ることはできなかった。
【0068】
比較例4
実施例1と同様な容量:2Lの反応器に、イオン交換水を600g仕込み、5,000rpmで急速撹拌しながら、60秒間で約80℃に加熱した自己乳化性ポリイソシアネートNCO−Aを400g滴下し、ポリイソシアネートの水分散液(EM−8)とした。分散直後のEM−8を密閉容器に入れて冷暗所で保管したところ、翌日容器が破損し、中の液がこぼれていた。
【0069】
〔被膜評価〕
製造直後のEM−1〜8をそのまま水性一液コーティング剤として用いて評価した。コーティング剤をアルミニウム板に塗布し、加熱硬化により被膜を得た。硬化後、直ちに被膜の性能試験を行った。製造直後のエマルジョンを用いた結果を表1に、及び冷暗所で3ヶ月保管したエマルジョンを用いた結果を表3に示す。なお、比較例4(EM−8)は、被膜外観が著しく不良(泡、剥がれが被膜全体にわたり、かつ、均一な膜厚になっていない)であったため、他の評価を省略した。
【0070】
実施例7〜12、比較例5
冷暗所で3ヶ月保管したEM−1〜7をそのまま水性一液コーティング剤として用いて評価した。コーティング剤をアルミニウム板に塗布し、加熱硬化により被膜を得た。硬化後、直ちに被膜の性能試験を行った。結果を表4に示す。
【0071】
〔塗布、硬化条件〕
基材 :アルミニウム板(50mm×25mm×0.5mm)
コーティング剤塗布面に、メチルエチルケトンをしみ込ませた脱脂綿にて脱脂。
塗布量 :50g/m2
塗布温度:20℃
硬化条件:
硬化時間 ;2分30秒
硬化温度 ;220℃
〔性能試験〕
被膜外観 :被膜表面を目視にて評価。
耐屈曲性 :JIS K5400に準じて測定。
心棒の直径は2mmのものを使用。
ラビング試験:被膜にキシレンをしみ込ませた脱脂綿を100回擦り付け、被膜外観の変化を観察。
密着性 :JIS K5400、碁盤目テープ法に準じて測定
溶出性 :コーティング剤を塗布した容器に被膜表面100cm2あたり200gの水を注ぎ、アルミ箔で蓋をした後オートクレーブで125℃で30分間加熱した。加熱後の水100gを用い,厚生労働省告示370号による溶出試験の過マンガン酸カリウム消費量試験を行った。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
〔評価基準〕
外観、耐屈曲性
○:被膜に割れや剥がれ等が全く認められない
△:被膜に多少割れや剥がれ等が認められる
×:被膜に割れや剥がれ等が著しく認められる
ラビング試験
○:被膜に傷等がほとんど確認できない
△:被膜に傷等が多少確認できる
×:被膜に傷等がかなり確認できる
密着性
○:被膜残存率が80%以上
△:被膜残存率が50%以上80%未満
×:被膜残存率が50%未満
溶出性
4.0ppm以下を合格とする
【0075】
【発明の効果】
以上説明した通り、短時間で密着性が発現し、従来のものより格段に溶出物の少ない良好な被膜が得られる水性一液コーティング剤、及び作業性に優れたコーティング方法を提供することが可能となった。
Claims (3)
- ヘキサメチレンジイソシアネート、芳香族ポリエステルポリオール、及び親水基含有アルコール化合物から得られる、イソシアヌレート基を有さず、かつアロファネート基を1mmol/g以上含有する自己乳化性ポリイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、かつ遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有することを特徴とする水性一液コーティング剤。
- 請求項1に記載のアロファネート基を1mmol/g以上含有する自己乳化性ポリイソシアネートの平均官能基数が3.8〜5.7、25℃での粘度が20000〜280000mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載の方法で得られる水性一液コーティング剤。
- 請求項1又は請求項2に記載の水性一液コーティング剤を100℃未満で基材に塗布した後、100〜300℃で熱硬化させること、を特徴とするコーティング方法。
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