JP4161360B2 - 水性一液コーティング剤及びそれを用いたコーティング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性一液コーティング剤及びそれを用いたコーティング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤を多く含有するコーティング剤は、人体への悪影響、爆発火災等の安全衛生上の問題、また、大気汚染等の公害問題を有する。そこで、これらの問題点を改善するため、近年水性システム開発が活発に行われている。一方、ウレタン系コーティング剤は、様々な基材に対して良好な密着性を示す。そこで、ウレタン系コーティング剤の水性化の検討がなされている。
【0003】
しかしながら、イソシアネート基は水との反応性が高いため、水性化したウレタン系コーティング剤は、貯蔵安定性に欠けるものとなりやすい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、貯蔵安定性に優れ、環境に配慮して安全であり、短時間で基材への密着性が発現し、良好な被膜特性を有する水性一液コーティング剤、及び作業性に優れたコーティング方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明者等は鋭意検討した結果、特定の水分散体を用いた水性一液コーティング剤が、前記課題を解決することを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(3)に示されるものである。
(1)自己乳化性ポリイソシアネートの遊離イソシアネート基の一部をブロック剤により封鎖して得られた部分ブロックイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションからなること、を特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
自己乳化性ポリイソシアネート:有機ポリイソシアネートと、炭素数1〜10のモノオールを開始剤としてアルキレンオキサイドを開環付加させて得られ、オキシエチレン基を50質量%以上含有し、かつ、数平均分子量が200〜10,000であるポリエーテルモ
ノオールから得られ、有機ポリイソシアネートに対して0.1〜50質量%のポリエーテルモノオールを含有する。
【0007】
(2) (1)に記載の一液熱硬化性樹脂エマルジョンの平均粒径が10〜1,000nmであることを特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
【0008】
(3) (1)又は(2)に記載の自己乳化性ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートと低分子ポリオールから得られるイソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネートに、炭素数1〜5のモノオールを開始剤として得られる、数平均分子量300〜2,000のアルコキシポリエチレングリコールを反応させて得られる自己乳化性ポリイソシアネートであることを特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の水性一液コーティング剤は、有機ポリイソシアネートの遊離イソシアネート基の一部をブロック剤により封鎖して得られた部分ブロックイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を実質的に遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、かつ実質的に遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有することを特徴とする。なお「一液熱硬化性」とは、硬化剤や架橋剤を用いることなくそれ単独で加熱することで硬化するということである。また「硬化」とは、被膜にした場合に少なくとも耐溶剤性を有する被膜になるということである。
【0010】
本発明に用いられる有機ポリイソシアネートのイソシアネート含量は、1〜30質量%が好ましく、特に1〜25質量%が好ましい。また、25℃における粘度は、5,000mPa・s以下が好ましく、特に4,500mPa・s以下が好ましい。また、平均官能基数は2〜5が好ましく、2〜4が特に好ましい。
【0011】
前記有機ポリイソシアネートは、イソシアネート化合物、イソシアネート化合物に水、ポリカルボン酸、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール等の活性水素基含有化合物を反応させてウレア化、ウレタン化、アミド化等させて得られるイソシアネート基含有変性体、又はこれらの反応と同時、反応前、反応後のいずれかにイソシアネート基を二量化(ウレトジオン結合、カルボジイミド結合の生成)、三量化(イソシアヌレート結合の生成)、高重合化(ウレトンイミン結合等の生成)等させて得られるイソシアネート基含有変性体等が挙げられ、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、クルードトリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、前記イソシアネートのビウレット変性体、ウレトジオン変性体、カルボジイミド変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、これらの混合変性体等の変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0012】
また、上記ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物を反応させたイソシアネート基末端プレポリマー、このプレポリマーを更にビウレット変性、ウレトジオン変性、カルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ウレトンイミン変性、これらの混合変性させて得られるポリイソシアネートも好適に使用することができる。
【0013】
活性水素基含有化合物としては、具体的には水、(数平均)分子量62から500未満の低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコール、数平均分子量500〜10,000の高分子ポリオール等が挙げられる。これらの活性水素基含有化合物はいずれも単独であるいは2種以上混合して使用することができる。
【0014】
低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、クオドロール、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のイオン 性基を有さない低分子ポリオール類、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸等の−COOH含有低分子ポリオール類、−COOH含有低分子ポリオール類とアンモニア、有機アミン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等との塩、2−スルホ−1,3−プロパンジオール、2−スルホ−1,4−ブタンジオール等のスルホン酸基含有低分子ポリオール類、スルホン酸基含有低分子ポリオール類とアンモニア、有機アミン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等との塩等が挙げられる。
【0015】
低分子ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、メタキシレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。
【0016】
低分子アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンが挙げられる。
【0017】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリアミドエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のカチオン性基を有さないポリカルボン酸類、5−スルホ−イソフタル酸等のスルホン酸基含有ポリカルボン酸類やこのスルホン酸基含有ポリカルボン酸とアンモニア、有機アミン、アルカリ金属、アルカリ土類金属等との塩類、これらの酸無水物、酸ハライド、ジアルキルエステル等の1種類以上と、前述の低分子ポリオールとの反応によって得られるもの等が挙げられる。更に、前述の低分子ポリオールを開始剤として、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーを開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。また更に、低分子ポリオールの一部に替えてヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールを用いて得られるポリアミドエステルポリオールが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネートポリオールとしては、前述の低分子ポリオールの1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールとしては、前述の低分子ポリオール、低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの単品又は混合物を開環重合させて得られるもの等が挙げられる。
【0021】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、前述のポリエーテルポリオールと前述のジカルボン酸等から得られるコポリオール等が挙げられる。また、前述のポリエステルやポリカーボネートと、アルキレンオキサイドや環状エーテルとの反応で得られるものが挙げられる。
【0022】
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン、これらの塩素化物等が挙げられる。
【0023】
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0024】
また、数平均分子量が500以上で、かつ、1分子中に活性水素基を平均1個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他に、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の活性水素基含有樹脂も使用できる。
【0025】
イソシアネート基と活性水素基との反応における温度は、0〜100℃が好ましく、更には20〜80℃が好ましい。また、このときのイソシアネート基と活性水素基のモル比は、イソシアネート基/活性水素基=1.1/1〜2/1が好ましい。
【0026】
このときの反応装置としては、上記の反応が達成できればいかなる装置でも良く、例えば、攪拌装置の付いた反応釜やニーダー、一軸又は多軸押し出し反応機等の混合混練装置が挙げられる。反応を早く進めるため、触媒として、ポリウレタンやポリウレアの製造において常用されるジブチル錫ジラウレート等の金属触媒やトリエチルアミン等の三級アミン触媒を用いてもよい。
【0027】
本発明において、好ましい有機ポリイソシアネートは、被膜の密着性や耐久性の点から、イソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネートが好ましい。自己乳化性を有さないポリイソシアネートは、水への分散・イソシアネート基と水との反応の際に界面活性剤を使用することで、一液熱硬化性樹脂エマルションを製造できるので使用可能である。この場合の界面活性剤の量は非自己乳化性ポリイソシアネートに対して1〜20質量%となる量が好ましい。なお「自己乳化性」とは、界面活性剤や乳化剤を用いることなく自己単独で水に分散する性質を有するということである。
【0030】
上記親水性変性剤における親水性極性基は、カチオン性親水性極性基、アニオン性親水性極性基、ノニオン性親水性極性基のどれでもよいが、自己乳化性ポリイソシアネートそのものの貯蔵安定性等を考慮するとノニオン性親水性極性基が好ましい。特に好ましい変性剤は、炭素数1〜10のモノオールを開始剤として、アルキレンオキサイドを開環付加させて得られ、オキシエチレン基を50質量%以上含有し、かつ、数平均分子量が200〜10,000である、ポリエーテルモノオールである。
【0032】
また、自己乳化性ポリイソシアネートには、被膜の密着性等を考慮して、疎水性かつ1官能性の活性水素基含有化合物を反応させることができる。この活性水素基含有化合物としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル等の低分子モノオール類、エチルアミン、ブチルアミン、アニリン等の低分子1級モノアミン類、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルアニリン等の低分子2級モノアミン類、活性水素基含有ポリエステル、エチレンオキサイドユニットが50モル%未満の活性水素基含有ポリエーテル、活性水素基含有ポリカーボネート、活性水素基含有ポリオレフィン、リシノール酸等のような炭素数6以上のヒドロキシ高級脂肪酸やそのエステル等が挙げられる。
【0033】
本発明において、好ましい有機ポリイソシアネートは、被膜の耐候性、耐熱性、密着性等を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートと低分子ポリオールから得られるイソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネート(ウレタン化とイソシアヌレート化は同時でも逐次でもよい)に、炭素数1〜5のモノオールを開始剤として得られる、数平均分子量300〜2,000(特に好ましくは350〜800)のアルコキシポリエチレングリコールを反応させて得られる自己乳化性ポリイソシアネートである。
【0034】
本発明に用いられるブロック剤は、特に制限されず、公知のものから適宜1種以上を選択して使用することができる。該ブロック剤としては、例えば、フェノール系、アルコール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、ラクタム系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系化合物等が使用できる。
【0035】
より具体的には例えば、上記ブロック剤として、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール等のフェノール系化合物;2−ヒドロキシピリジン、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物;アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド系化合物、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等のラクタム系化合物;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等の酸イミド系化合物、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素系化合物;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物;ジフェニルアニリン、アニリン、カルバゾール、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等のアミン系化合物;ジメチルピラゾール、トリアゾール、N,N′−ジフェニルホルムアミジン等が挙げられる。
【0036】
上記したブロック剤の中でも、汎用性、製造の簡易さ、作業性の点からは、メチルエチルケトオキシム、ε−カプロラクタム、2−エチルヘキサノールが特に好ましい。
【0037】
本発明では、有機ポリイソシアネートの遊離のイソシアネート基の一部をブロック剤で封鎖することが肝要である。遊離のイソシアネート基の全部を封鎖してしまうと、完全ブロックイソシアネートでは、水に分散させたときに水と反応する部位がないことになる。この分散液を一液コーティングに用いた場合、被膜物性が低下することになる。有機ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、20〜200℃の通常のブロック化反応条件に従って行うことができる。このときブロック剤の仕込量は、遊離のイソシアネート基に対して0.1〜0.5倍モル量が好ましい。ブロック剤が少なすぎると、被膜としたときに溶出物が多くなりやすい。またブロック剤が多い場合は得られる部分ブロックイソシアネートの粘度が高くなり、水分散工程が困難になりやすい。また、被膜強度が低下する場合がある。このブロック化反応は、溶剤の存在の有無にかかわらず行うことができるが、必要に応じて、ウレタン工業で公知ないし常用の不活性溶剤、触媒等を使用することもできる。
【0038】
このようにして得られた自己乳化性部分ブロックイソシアネートの粘度は、1,000〜500,000mPa・sが好ましく、1,000〜200,000mPa・sが特に好ましい。また、イソシアネート含量は5〜20質量%が好ましく、8〜18質量%が特に好ましい。
【0039】
次に具体的なコーティング剤の製造工程について述べる。
まず、撹拌機のついた反応器に、水及び有機ポリイソシアネートを仕込み、攪拌して乳化分散させる。反応器は密閉しないことが肝要である。密閉型の反応器を用いると、発生する炭酸ガスにより内圧が上昇し、反応器そのものが破損するおそれがあるからである。用いられる有機ポリイソシアネートが非自己乳化性の場合は、界面活性剤を用いて水に乳化分散させる。分散の途中から、イソシアネート基と水との反応が徐々に進行する。このとき、攪拌は停止しないことが重要である。攪拌を停止すると、粒子が凝集してしまうため、均一な分散液にはならないからである。分散液内の粒子の平均粒径は、攪拌速度、自己乳化性ポリイソシアネートを用いる場合は導入される親水性極性基の導入量や種類、非自己乳化性ポリイソシアネートを用いる場合は界面活性剤の導入量や種類等で制御できる。なお、攪拌速度は、毎分200回以上が好ましい。反応の終了は、イソシアネート基が残存しなくなったところである。このときの反応温度は0〜100℃が好ましく、特に好ましくは10〜80℃である。また、反応系における固形分は10〜90質量%になるようにするのが好ましく、特に20〜80質量%になるようにするのが好ましい。
【0040】
このようにして得られた一液熱硬化性樹脂エマルションの平均粒径は10〜1,000nmであり、20〜500nmが特に好ましい。平均粒径が小さすぎる場合は、エマルションを形成せず、粘度が大きくなる場合がある。平均粒径が大きすぎる場合は、経時で粒子が沈降する場合がある。なお、本発明における平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0041】
本発明においては、他樹脂系のエマルションを用いる場合は、他樹脂系エマルションに自己乳化性ポリイソシアネートを添加・分散させるか、自己乳化性ポリイソシアネートを水分散させた直後に他樹脂系エマルションと混合させるのが好ましい。自己乳化性ポリイソシアネートを水分散・イソシアネート基が消失するまで反応させて得られるエマルションと、他樹脂系エマルションを混合すると、増粘やゲル化する場合がある。
【0042】
他樹脂系エマルションとしては、ポリウレタンエマルション、アクリルエマルション、ポリエステルエマルション、ポリオレフィンエマルション、酢酸ビニルエマルション、ポリ塩化ビニルエマルション、エチレン−酢酸ビニル系エマルション、塩化ビニリデン系エマルション、ラテックス等が挙げられる。
【0043】
また、得られたエマルションには、必要に応じて添加剤及び助剤を配合することができる。添加剤及び助剤としては、顔料、染料、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性向上剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒、揺変剤、界面活性剤、乳化剤等が挙げられる。
【0044】
このようにして得られた水性一液コーティング剤には、遊離のイソシアネート基が実質的に存在しないものである。実質的に遊離のイソシアネート基が存在する場合は、得られる被膜に「ふくれ」、「泡」、「剥離」等が発生し、外観が悪いものとなりやすい。また、貯蔵時にイソシアネート基と水との反応により炭酸ガスが発生するため、容器の内圧が上昇し、容器が破損しやすい。
【0045】
次に具体的なコーティング手順について説明する。
コーティング剤の基材への塗布温度は、タレや水の急激な蒸発を防ぐため、100℃未満好ましくは常温である。コーティング剤の塗布量は、固形分100質量%換算で、1〜100g/m2 、好ましくは2〜80g/m2 である。塗布方法としては、刷毛、バーコーター、ドクターブレード、リバースロール、グラビアロール、スピンナーコート、エクストルーダ等公知の方法が用いられる。
【0046】
本発明のコーティング方法における基材は、コーティング剤の塗布後に加熱することから、耐熱性があることが必要である。本発明のコーティング方法に最適な基材は金属系の基材である。
【0047】
コーティング剤を塗布した後、100〜300℃、好ましくは120〜280℃で加熱硬化させる。また、加熱時間は30秒間〜120分間であることが好ましく、特に5〜60分間が好ましい。本発明は短時間で物性の優れた被膜を得ることが可能であるため、長すぎる加熱時間は、エネルギーの浪費であるばかりか、被膜に不必要な熱履歴を与えることになる。なお、加熱硬化させる前に、100℃未満好ましくは80℃以下で5〜60分間、水を蒸発させておくのが好ましい。
【0048】
本発明において水性一液コーティング剤の硬化機構は不明であるが、例えば、アミノ基とウレタン基間、アミノ基とウレア基間、ウレア基同士、ウレタン基同士、ウレタン基とウレア基間の交換反応により硬化していると考えられる。また、ブロック剤が解離して発生したイソシアネート基も硬化反応に関与していると考えられ、例えば、ウレタン化反応、ウレア化反応、アロファネート化反応、ビウレット化反応、ウレトジオン化反応、イソシアヌレート化反応等が起こると考えられる。
【0049】
本発明のコーティング方法においては、実質的にイソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションを含有する水性一液コーティング剤を単独で使用するので、二液タイプの水性コーティング剤に比較して、作業性が良好であるという利点を有する。
【0050】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断らない限り、「%」は質量%を意味する。
【0051】
〔自己乳化性ポリイソシアネートの製造〕
製造例1
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:1,000mlの反応器内を窒素置換した後、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を600g、1,3−ブタンジオール(1,3−BD)を4.8gを仕込み、撹拌しながら80℃で2時間ウレタン化反応させた。反応液のイソシアネート含量を測定したところ、48.8%であった。次に、触媒としてカプリン酸カリウム0.12g、助触媒としてフェノール0.6gを加え、60℃で4.5時間イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.084g加え、60℃で1時間撹拌後、遊離HDIを薄膜蒸留(条件:120℃、1.3Pa)により除去した。得られたイソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネートは、淡黄色透明液体で、イソシアネート含量:21.1%、25℃の粘度:2,200mPa・s、遊離HDI含有量:0.4%であり、FT−IR及び13C−NMRからイソシアネート基、イソシアヌレート基及びウレタン基の存在が確認された。このポリイソシアネートをA−1とする。
前記反応器と同様な別の反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−1を100g、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール(MPEG−400、商品名:メトキシPEG#400、東邦千葉化学製)を16g仕込み、75℃で3時間反応させて、イソシアネート含量:16.9%、25℃の粘度:2,410mPa・s、平均官能基数:3.5の淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネート(A)を得た。
【0052】
製造例2
撹拌機、温度計、窒素シ−ル管、冷却器のついた容量:1,000mlの反応器に、HDIを300g、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(DMH)を11.9g、MPEG−400を12g、リシノレイン酸メチルエステルを4g加え、反応器内を窒素置換して、撹拌しながら75℃で3時間ウレタン化反応させた。この反応液のイソシアネート含量を測定したところ、43.2%であった。次に、触媒としてプロピオン酸カリウム0.06g、フェノール0.3g、リン酸0.072gを用いて、60℃で4.5時間イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.042g加え、反応温度で1時間撹拌後、遊離HDIを薄膜蒸留(条件:120℃、1.3Pa)により除去した。得られたイソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネートである自己乳化性ポリイソシアネート(B)は、イソシアネート含量:20.9%、25℃の粘度650mPa・s、遊離HDI含有量:0.4%、平均官能基数:2.9の淡黄色透明液体であった。自己乳化性ポリイソシアネート(B)をFT−IR及び13C−NMR測定したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基及びウレタン基の存在が確認された。
【0053】
製造例3
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−1を100g、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(商品名:ニューコール565−PS、日本乳化剤製の酸性リン酸エステル)のトリエチルアミン中和塩を16g仕込み、75℃で1時間混合させて、イソシアネート含量:14.3%、25℃の粘度2,820mPa・s、平均官能基数:3.5の淡黄色透明の自己乳化性ポリイソシアネート(C)を得た。
【0054】
製造例4
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、HDIを300g、DMHを2.3gを仕込み、撹拌しながら70℃で3時間反応させた。このときの反応液のイソシアネート含量を測定したところ、49.1%であった。次に触媒としてトリブチルフォスフィン0.3gを加え、同温度で8時間ウレトジオン化及びイソシアヌレート化反応を行った。この反応液にパラトルエンスルホン酸メチルを0.33g加え、反応を停止させた後、遊離HDIを薄膜蒸留(条件:120℃、1.3Pa)により除去した。得られたイソシアヌレート・ウレトジオン・ウレタン変性ポリイソシアネートA−2は、イソシアネート含量:22.3%、25℃の粘度:100mPa・s、遊離HDI含有量:0.4%、平均官能基数:2.3の淡黄色透明液体であった。自己乳化性ポリイソシアネート(B)をFT−IR及び13C−NMR測定したところ、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ウレトジオン基、及びウレタン基の存在が確認された。前記反応器と同様な別の反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−2を70g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(商品名:ヴェスタナット T−1890、NCO含量17.0%、ヒュルス製)を30g、MPEG−400を16g仕込み、75℃で3時間反応させて、イソシアネート含量:16.4%、25℃の粘度:810mPa・s、平均官能基数:2.4の淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネート(D)を得た。
【0055】
製造例5
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネートA−1を100g、MPEG−400を20g仕込み、75℃で3時間反応させて、イソシアネート含量:15.9%、25℃の粘度:2,530mPa・s、平均官能基数:3.4の淡黄色透明液体の自己乳化性ポリイソシアネート(E)を得た。
【0056】
〔自己乳化性部分ブロックイソシアネートの製造〕
製造例6
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネート(A)を445.4g、メチルエチルケトンオキシムを54.6g仕込み、80℃で5時間反応させて、ブロック化率:35モル%、ブロック化後のイソシアネート含量:9.8%、25℃の粘度:15,700mPa・s、淡黄色透明液体の自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−1を得た。なお、「ブロック化後のイソシアネート含量」とは、ブロックされているイソシアネート基、すなわち潜在的なイソシアネート基を含まない値であり、以後の製造例においても同様である。
【0057】
製造例7
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネート(B)を418.5g、メチルエチルケトンオキシムを81.5g仕込み、80℃で5時間反応させて、ブロック化率:45モル%、ブロック化後のイソシアネート含量:9.6%、25℃の粘度:62,400mPa・s、淡黄色透明液体の自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−2を得た。
【0058】
製造例8
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネート(C)を465.5g、メチルエチルケトンオキシムを34.5g仕込み、80℃で5時間反応させて、ブロック化率:25モル%、ブロック化後のイソシアネート含量:10.0%、25℃の粘度:11,700mPa・s、淡黄色透明液体の自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−3を得た。
【0059】
製造例9
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネート(D)を475.8g、メチルエチルケトンオキシムを24.2g仕込み、80℃で5時間反応させて、ブロック化率:15モル%、ブロック化後のイソシアネート含量:13.3%、25℃の粘度:5,420mPa・s、淡黄色透明液体の自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−4を得た。
【0060】
〔自己乳化性ブロックイソシアネートの製造〕
製造例10
撹拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた容量:500mlの反応器内を窒素置換した後、ポリイソシアネート(E)を376.0g、メチルエチルケトンオキシムを124.0g仕込み、80℃で5時間反応させて、ブロック化率:100モル%、25℃の粘度:98,500mPa・s、淡黄色透明液体の自己乳化性ブロックイソシアネートPB−1を得た。
【0061】
〔一液熱硬化性樹脂エマルションの製造、貯蔵安定性〕
実施例1
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−1を300g、イオン交換水を700g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−1を得た。EM−1の平均粒径は160nmであった。EM−1を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0062】
実施例2
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−2を200g、イオン交換水を800g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−2を得た。EM−2の平均粒径は150nmであった。EM−2を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0063】
実施例3
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−3を100g、イオン交換水を900g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−3を得た。EM−3の平均粒径は120nmであった。EM−3を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0064】
実施例4
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−4を200g、イオン交換水を800g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、部分ブロックイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−4を得た。EM−4の平均粒径は220nmであった。EM−4を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0065】
実施例5
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、水性アクリルエマルション(固形分:50%、25℃の粘度:300mPa・s、商品名:WA−1015ND、亜細亜工業製)を800g、水を400g仕込んで均一に攪拌した。次いで、自己乳化性部分イソシアネートHB−4を100g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、HB−4を分散させ、その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−5を得た。EM−5の平均粒径は240nmであった。EM−5を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0066】
比較例1
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性部分ブロックイソシアネートHB−1を300g、イオン交換水を700g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液EM−6とした。分散直後のEM−6を密閉容器に入れて冷暗所で保管したところ、翌日容器が破損し、中の液がこぼれていた。
【0067】
比較例2
実施例5で用いた水性アクリルエマルションそのものをEM−7とした。EM−7を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0068】
比較例3
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性ブロックイソシアネートPB−1を300g、イオン交換水を700g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液EM−8とした。分散直後のEM−8を密閉容器に入れて冷暗所で保管したところ、外観の変化は認められなかった。
【0069】
比較例4
撹拌機、温度計、ガス解放弁、冷却器のついた容量:2,000mlの反応器に、自己乳化性ポリイソシアネートNCO−1を300g、イオン交換水を700g仕込み、2,000rpmで30秒間急速撹拌して、ポリイソシアネートの水分散液とした。その後、撹拌速度を落として、常温でFT−IRのイソシアネート基の吸収ピークが確認されなくなるまで反応させて、一液熱硬化性樹脂エマルションEM−9を得た。EM−9の平均粒径は240nmであった。EM−9を密閉容器に入れて冷暗所で3ヶ月保管しておいたところ、外観の変化は認められなかった。
【0070】
実施例6〜15、比較例5〜8
製造直後のEM−1〜9及び冷暗所で3ヶ月保管したEM−1〜5をそのまま水性一液コーティング剤として用いて評価した。コーティング剤をアルミニウム板に塗布し、加熱硬化により被膜を得た。硬化後、直ちに被膜の性能試験を行った。結果を表1及び2に示す。なお、比較例1(EM−6)は、被膜外観が著しく不良(泡、剥がれが被膜全体にわたり、かつ、均一な膜厚になっていない)であったため、他の評価を省略した。
【0071】
〔塗布、硬化条件〕
基材 :アルミニウム板(50mm×25mm×0.5mm)
コーティング剤塗布面に、メチルエチルケトンをしみ込ませた脱脂綿にて脱脂。
塗布量 :50g/m2
塗布温度:20℃
硬化条件:
被膜乾燥条件;70℃×20分間
硬化時間 ;30分
硬化温度 ;180℃
〔性能試験〕
被膜外観 :被膜表面を目視にて評価。
ラビング試験:被膜にキシレンをしみ込ませた脱脂綿を100回擦り付け、被膜外観の変化を観察。
耐屈曲性 :JIS K5400に準じて測定。
心棒の直径は2mmのものを使用。
密着性 :JIS K5400、碁盤目テープ法に準じて測定
溶出試験 :厚生省告示第20号(昭和57年)過マンガン酸カリウム消費量により評価
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
〔評価基準〕
外観
○:被膜に割れや剥がれ等が認められない
×:被膜に割れや剥がれ等が認められる
××:被膜に割れや剥がれ等が著しく認められる
ラビング試験
○:被膜に傷等がほとんど確認できない
△:被膜に傷等が多少確認できる
×:被膜に傷等がかなり確認できる
耐屈曲性
○:被膜に割れや剥がれ等が認められない
×:被膜に割れや剥がれ等が認められる
密着性
○:被膜残存率が80%以上
△:被膜残存率が50%以上80%未満
×:被膜残存率が50%未満
溶出試験
○:溶出物が5ppm未満
×:溶出物が5ppm以上
【0075】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明により、短時間で密着性が発現して良好な被膜が得られる水性一液コーティング剤、及び作業性に優れたコーティング方法を提供することが可能となった。
Claims (3)
- 自己乳化性ポリイソシアネートの遊離イソシアネート基の一部をブロック
剤により封鎖して得られた部分ブロックイソシアネートを水に分散させて、イソシアネート基と水を遊離イソシアネート基が存在しなくなるまで反応させて得られ、遊離イソシアネート基を有しない一液熱硬化性樹脂エマルションからなること、を特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
自己乳化性ポリイソシアネート:有機ポリイソシアネートと、炭素数1〜10のモノオールを開始剤としてアルキレンオキサイドを開環付加させて得られ、オキシエチレン基を50質量%以上含有し、かつ、数平均分子量が200〜10,000であるポリエーテルモノオールから得られ、有機ポリイソシアネートに対して0.1〜50質量%のポリエーテルモノオールを含有する。 - 請求項1に記載の一液熱硬化性樹脂エマルジョンの平均粒径が10〜1,000nmであることを特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の自己乳化性ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートと低分子ポリオールから得られるイソシアヌレート・ウレタン変性ポリイソシアネートに、炭素数1〜5のモノオールを開始剤として得られる、数平均分子量300〜2,000のアルコキシポリエチレングリコールを反応させて得られる自己乳化性ポリイソシアネートであることを特徴とする水性一液コーティング剤の製造方法。
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