JP4379115B2 - 金属板の冷間圧延用ダルロールおよびその製造方法 - Google Patents

金属板の冷間圧延用ダルロールおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ブリキ原板や自動車用鋼板のような冷延鋼板等の金属板を、冷間圧延(調質圧延も含む)する際に用いて好適な金属板の冷間圧延用ダルロールおよびその製造方法に関する。
近年、ブリキ原板や自動車用鋼板のような冷延鋼板については、表面性状や形状に関する要求が非常に厳格になってきている。冷延鋼板の表面性状は、主として、冷間タンデム圧延機の最終スタンド、リバース圧延機の最終パス、および焼鈍後の調質圧延機に設置されるダルロールにより調整される。このため、前記ダルロールの表面性状を好適に制御することが重要である。
通常、算術平均粗さRa(JIS B0601-2001に規定するRa(3))で示される所定目標の表面粗さ(通常はロール軸方向に測定)のダルロールを作製する場合、一般的に、ダルロール表面の評価長さ当たりのピーク数が多いほど、このダルロールで圧延される鋼板の表面状態は良好なものとなる。
図1は、ロールの表面粗さをその軸方向に測定し、この測定結果から、評価長さL当たりのピーク数を評価する方法の一例を示したものである。評価長さL当たりのピーク数は、JISでは特に規定されていないが、一般的な二次元接触式粗さ計には必ず搭載されている指標である。
評価長さL当たりのピーク数の評価方法は、図1のような粗さ曲線に対し、まず、平均線を引いた後、この平均線から上下等距離位置に平行線を引いて、いわゆるカウントレベルと呼ばれる閾値を設ける。次に、粗さ曲線が、下側のカウントレベルを上から下に横切る二点間に位置する粗さ曲線の線分が、上側のカウントレベルを2回以上横切った(上から下に、下から上に、どちらの場合も1回とカウントする)場合に、1つのピークと数え、このピーク数を、評価長さLあたりのピーク数とした。なお、図1の例では、区間IIの二点間に位置する粗さ曲線の線分が、上側カウントレベルを4回横切っているが、この場合も、1つのピークとみなして数える。また、区間IVの二点間に位置する粗さ曲線の線分では、上側カウントレベルを1回も横切っていないので、この場合には、ピーク数には含めない。よって、図1では、粗さ曲線の評価長さL当たりのピーク数がPk1〜Pk6の計6個ある場合を示している。
すなわち、ダルロールにおいては、評価長さ当たりのピーク数が多ければ、それだけ多数の微小凸部が鋼板表面に接触するから、鋼板表面に多数の転写痕が形成されて圧延前から鋼板表面に存在するキズおよび外観上のムラや欠陥などを見えなくする効果がある。また、ダルロール表面に微小凸部が多数存在すると、圧延荷重が分散されるため、一つ一つの転写痕は浅いものとなるので、表面外観が美麗なものとなるのである。
ロール表面のダル加工方法としては、これまで、ショットダル加工法が一般的であったが、例えば特許文献1に記載のように、レーザービームを利用した加工法(以下、単に「レーザーダル加工法」という。)も用いられている。
また、ダルロールの表面は、このダルロールで圧延される金属板の長さに対応する圧延距離が長くなるにつれて、必ずダル表面の微小凹凸の凸部から摩耗が進行して粗さが変化していくが、ダルロールとしては、かかる摩耗の進行が遅いほど、圧延される鋼板表面は安定して所望の状態が維持されるので好ましい。
そこで、従来のダルロールの製造方法は、下地ロール表面を所望の状態にダル加工した後に、表層にクロムで硬質めっき層を形成するのが一般的である。
特開平5-65686号公報
上述のように、ダルロールの表面性状を好適なものにするには、レーザーダル加工法で加工を行ってピーク数の多い表面状態を形成した後、硬質クロムめっきを施すのが好ましいが、レーザーダル加工法では、微小凹凸を形成するのに非常に長い加工時間を要するという問題がある。
また、レーザーダル加工法は、特許文献1でも述べられているように、表面をいったん溶融させることにより加工を行うものであるため、ロール表層が軟質化する。従って、この軟質化した表面に硬質のクロムめっきを施したとしても、圧延時にはめっき層下で下地のロール表面自体が変形してしまうため、摩耗したのと同様に粗さが大きく変化してしまうという問題もある。
特許文献1では、この点に鑑み、レーザーダル加工法で加工した後に軟質化した凸部を電解エッチングにより除去した後にクロムめっきする方法が開示されているが、この方法では、電解エッチングを行なう工程が別に必要なため、時間とコストが余分にかかる。
さらに、特許文献1の方法は、圧延距離と共に表面が摩耗して所望の表面性状から外れたダルロールを再度使用に供する場合、ロール表面をレーザーダル加工法で再加工する必要があるが、この再加工の度に、ロール表層を予め研摩等で除去する必要があり、再加工する度に、ロール径が小さくなるため、ロール使用回数が限られる結果、ロール原単位が悪化するという問題もある。
本発明の目的は、レーザーダル加工法と同様あるいはそれ以上にピーク数の多いロールの所望の表面性状が短時間で簡単に得られる上、圧延距離によるロール表面粗さの変化も小さく、さらにロール原単位を向上できる、金属板の冷間圧延用ダルロールおよびその製造方法を提供する。
クロムめっき、例えば装飾用クロムめっきには、反射光が拡散して外観上灰色に見える灰色めっきと呼ばれているものがある。めっき方法としては、「めっき技術」(日刊工業新聞社、273ページ、第3.3.1図)に記載の通り、硬質めっきを施す場合と同様のめっき浴中、例えばクロム酸と硫酸のめっき浴中に浸漬し、めっき浴温度を低くしかつ電流密度を高くすることによって行われている。
発明者らはこのめっき方法に注目して詳細に調査したところ、灰色めっきは、クロムめっきの析出粒が成長して、表面に微小凹凸が形成されることにより、反射光の拡散を実現していることが分かった。
そして、発明者らは、この微小凹凸が、所望のダルロール表面を形成するのに十分大きな算術平均粗さRaを有する上、非常に微細であり、さらに、レーザーダル加工法によって形成される微小凹凸と同等かそれ以上の評価長さ当たりピーク数を有することも見いだした。
そこで、発明者らは、従来、装飾用としてめっき外観の調整のみに用いられてきた、灰色めっきを、金属板の冷間圧延用ダルロールに用いれば、所望の表面性状のダルロールを形成できると考えた。
しかしながら、「めっき技術」(281ページ、第3.3.12図)に記載の通り、灰色めっきのめっき条件範囲は、ビッカース硬さHVが1000以上である、いわゆる硬質クロムめっきのめっき条件範囲から浴温が外れており、しかも、ビッカース硬さHVの値が硬質クロムめっきよりも小さいため、金属板の冷間圧延用ダルロールの表層を、灰色めっきだけで形成するのは好ましくない。
そこで、発明者らは次に、下地ロールの表面上に、灰色めっきである第1めっき層と、この第1めっき層の上に、硬質めっきである第2めっき層からなるクロムめっき層を形成することにより、灰色めっきである第1めっき層の微小凹凸に硬質めっきである第2めっき層を倣わせ、灰色めっき特有の評価長さ当たりの高いピーク数を維持しつつ、硬質めっき特有の高い表面硬度を有するようにできると考えた。
このように本発明では、クロムめっき層を異なる物性をもつ2種類のクロムめっき層で形成することになるが、前述の通り、同一のめっき浴中で、浴温のめっき条件の変更のみにより、極めて短時間で2種類のクロムめっき層を形成することができる。さらに、副次的な効果として、第2めっき層の形成により、第1めっき層の表面の微小凹凸における不要な凹部が埋められ、いわゆる圧延中の目詰まりが防げるという効果もある。
本発明では、レーザーダル加工法を用いないので、下地ロールの表層の硬さが600以上を維持でき、しかも、上記のように異なる物性をもつ2種類のクロムめっき層で適正な表面硬度を確保しているため、レーザーダル加工法の場合に課題として挙げたような下地ロール表層の軟質化に伴なうロール表面の変形がなく、従って、長い圧延距離でも表面粗さおよび評価長さ当りのピーク数の変化が非常に小さい。
さらに、本発明の冷間圧延用ダルロールを最初に製造するにあたっては、下地ロールの表面は、めっき層を形成するのに先立って、例えば、よく行われている砥石研磨したものとしておけばよい。本発明の冷間圧延用ダルロールをひとたび使用に供したのち、ロール表面に微小凹凸を再形成する場合には、めっき層のみを除去すれば良く、下地ロール表層はめっき層除去時に不可避的に研磨される分だけしか減らないから、ロール径はほとんど変化せず、ロールを再使用できる回数が増加し、ロール原単位を飛躍的に向上させることができる。
また、下地ロール表面が通常よく行われている砥石研磨面であることから、ロールの研磨粉や砥石からの脱落砥粒など、めっきの密着性を阻害する要因も電解脱脂や水で洗い流す等簡単に除去することができる結果、めっき層の剥離もほとんど起こらないという効果もある。
本発明の要旨構成は以下のとおりである。
(1)ビッカース硬さが600以上である下地ロールの表面上に、上層めっきと下層めっきからなるクロムめっき層を有し、該クロムめっき層の上層めっきと下層めっきのビッカース硬さHV0.025が、それぞれ850以上と650〜950とであり、前記クロムめっき層表面は、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上であることを特徴とする金属板の冷間圧延用ダルロール。
(2)算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmである下地ロールの表面上に、算術平均粗さRaが0.35μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが230個以上である第1めっき層を形成し、さらに、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上である第2めっき層を形成することを特徴とする金属板の冷間圧延用ダルロールの製造方法。
(3)前記第1および第2めっき層はいずれも、前記下地ロールをクロム酸200〜500g/l、硫酸2〜5g/l、pH1.0〜3.0のクロムめっき浴中に浸漬し、電気クロムめっきすることにより形成され、第1めっき層の形成条件が、浴温:20〜41℃、電流密度:20〜90A/dmおよびめっき時間:0.2時間以上であり、第2めっき層の形成条件が、浴温:43〜60℃、電流密度:30〜90A/dmおよびめっき時間:0.2〜1.5時間である上記(2)記載の金属板の冷間圧延用ダルロールの製造方法。
本発明によれば、ロールの所望の表面性状が短時間で簡単に得られる上、圧延距離によるロール表面粗さの変化の小さいダルロールを製造することができる。これにより、表面凹凸が微細な鋼板を安定して製造することが可能になる。さらにロールの原単位も向上する。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に従う金属板の冷間圧延用ダルロールは、下地ロールの表面上に、所定の硬さおよび表面粗さ(RaとPPI)をもつクロムめっき層を形成したものである。
本発明に用いられる下地ロールとしては、圧延時のロール表面の変形を抑制するため、ビッカース硬さが600以上であるロールを使用することが必要である。例えば鋼系ロールを用いることが好ましい。なお、下地ロールの硬さの上限については特に限定はしないが、現状製造可能なロールの硬さが、ビッカース硬さで900以下であるため、下地ロールのビッカース硬さの上限は900とすることが好ましい。
また、下地ロールの表面上に形成するクロムめっきは、クロムめっき層の上側めっき部と下側めっき部のビッカース硬さHV0.025が、それぞれ850以上と650〜950であることが必要である。
ここで、クロムめっき層の上層めっき、下層めっき、および下地ロールのビッカース硬さは次に述べるようにして測定した値とする。
上層めっきはロールの最表層であるから、最表層のビッカース硬さをそのまま測定した値とする。
問題は、最表層ではない下層めっきと下地ロールのビッカース硬さである。
これらは、ロールをまず輪切りの状態にし、表層部分をサンプルとして切り出して、極表層のわずか数μm〜数十μmの部分を輪切りの断面で見て、上層めっき、下層めっきの厚さを、色の違いから大まかに何μmずつか測定し(境界の曖昧さや、凹凸による起点の曖昧さがあり、正確には測定が難しい)、境界の曖昧さや、凹凸による起点の曖昧さがあったとしても、それによる誤差の最大値をカバーできるだけの余裕を見越して、各何μmずつかをまず見積もる。
次に、下層めっきのビッカース硬さを測定する場合は、上記サンプル表層を、上層めっきの厚さとして見積もった値の分だけ研削し、研削後の表層についてビッカース硬さを測定する。
そして、下地ロールのビッカース硬さを測定する場合は、上記研削後のサンプル表層を、下層めっきの厚さとして見積もった値の分だけさらに研削し、研削後の表層についてビッカース硬さを測定する。
上層めっき、下層めっきとも、わずか数μm〜数十μmの厚さであるから、いわゆるマイクロビッカースと呼ばれる測定のしかたをするのが好ましい。
なお、上層めっき、下層めっきおよび下地ロールのビッカース硬さにはばらつきがあるため、1つの表面で6箇所以上、そして、上層めっき、下層めっきの場合は測定可能な範囲でよいが、厚さ方向に2〜3μmのピッチで数箇所の表面ついて(当然研削による)、測定し、平均値をとるのが好ましい。
下層めっきは、上述したいわゆる灰色めっきであるが、本発明では、下層めっきのビッカース硬さHVが650〜950である場合に、下層めっきの表面性状を適正にすることができ、その後、下層めっきの微小凹凸に上層めっきを倣わせるようにするため、下層めっきの表面性状が、その上に形成される上層めっきの表面性状に反映される結果、ダルロールを構成するクロムめっき層を所望の表面性状に制御することができる。
また、上層めっきは、上述したいわゆる硬質めっきであるが、本発明では、圧延時のダルロール表面の摩耗を抑制するため、上層めっきで測定したビッカース硬さHVが850以上であることが必要である。なお、上層めっきの硬さの上限については特に限定はしないが、現状で製造可能な硬さが、ビッカース硬さで1150以下であるため、上層めっきのビッカース硬さの上限は1150とすることが好ましい。
本発明では、クロムめっき層の下層めっきに、主としてクロムめっき層表面を所望の表面性状にする役割を担わせるとともに、クロムめっき層の上層めっきに、主として圧延時のダルロール表層の摩耗を抑制する役割を担わせる。
クロムめっき層の下層めっきと上層めっきの上記役割を十分に発揮させるため、本発明では、上層めっきのビッカース硬さを、下層めっきのビッカース硬さよりも50以上高くすることが好ましい。
そして、本発明のダルロールにおいては、クロムめっき層の表面は、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上であることが必要である。Raは基準(評価)長さ(カットオフ値)0.8mm、測定長さ4mmとして測定した値とし、PPIは同様にして測定した値を1インチあたりに換算して求めた値とする。
クロムめっき層表面の算術平均粗さRaが0.3μm未満だと、通常ダルロールに要求される性能(例えば圧延前から存在するムラ消し)を満たさなくなるからである。なお、クロムめっき層表面の算術平均粗さRaの上限については特に限定はしないが、現状存在するダルロールの算術平均粗さRaの仕様上限が6.5μmであることから、前記算術平均粗さRaの上限は6.5μmとすることが好ましい。
また、クロムめっき層の表面は、長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上であることが必要である。長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個未満だと、Raの場合と同様、ダルロールとしての性能を満たさなくなるからである。なお、クロムめっき層表面の長さ1インチ当たりのピーク数PPIの上限については特に限定はしないが、現状存在するダルロールの長さ1インチ当たりのピーク数PPIの仕様上限が500個であることから、前記長さ1インチ当たりのピーク数PPIの上限は500個とすることが好ましい。
図2(a)は、本発明に従う新品のダルロール表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルを示したものであり、図2(b)は、同図(a)のダルロールで鋼板を冷間圧延(圧延距離:53.3km)し、その後、このダルロール表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルを示したものであり、図2(c)は、図2(a)に示すダルロールで圧延した直後の冷延鋼板表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルを示したものである。なお、下地ロールのビッカース硬さが800であり、クロムめっき層の上層めっきと下層めっきのビッカース硬さHVが、それぞれ700と1050であり、クロムめっき層表面の算術平均粗さRaと長さ1インチ当たりのピーク数PPIの初期値が、それぞれ0.8μmと350個であった。
比較のため、下地ロール表面に(Ra:1.1μm)のショットダル加工を施した後に、硬質クロムめっきを形成することによって製造した従来の新品のダルロール表面を、同様にレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルを図3(a)に、また、このダルロールで鋼板を冷間圧延(圧延距離:18.0km)し、その後、このダルロール表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルを図3(b)に示す。なお、下地ロールのビッカース硬さが800であり、クロムめっき層のビッカース硬さHVが1050であり、クロムめっき層表面の算術平均粗さRaと長さ1インチ当たりのピーク数PPIの初期値が、それぞれ1.2μmと190個であった。
図2(a)〜(c)に示す表面プロファイルから、本発明のダルロールの新品時の表面は、サイズのばらつきが少ない多数の粒状凸部が形成されており(図2(a))、長い圧延距離を圧延した後でも、粒状凸部の大部分が摩耗したり潰れたりすることなく残存しており(図2(b))、本発明のダルロールを用いて圧延した冷延鋼板の表面には、複数の均一な凹部が形成されていることがわかる(図2(c))。
一方、図3(a)および(b)に示す表面プロファイルから、従来のダルロール(ショットダル+硬質クロムめっきロール)は、まばらで大きな凸部が不均一に点在し(図3(a))、長い圧延距離圧延した後は、この凸部が摩耗したり潰れたりすることによって実質的な凸部が消失している(図3(b))のがわかる。
次に、本発明に従う金属板の冷間圧延用ダルロールの製造方法について以下に説明する。
本発明に用いられる、下地ロールとなる鋼系ロール、ロール転倒設備、めっき電流密度の制御設備や電解脱脂浴など付帯設備を含めたロールめっき設備、クロムめっき浴組成については、従来からあるものと同じものを使える。
しかし、クロムめっき浴の温度の制御については、従来のように冷間圧延用ロール表面にダル加工を施した後に、硬質クロムめっきを施す場合に比べ、灰色めっきの条件に合った低温めっき浴を実現可能なものである必要がある。従来のめっき設備でも、めっき浴温度の制御設備は必ず設置されているから、これらをより制御範囲の広いものとすればよい。
下地ロールとなる鋼系ロールの表面は、例えば、従来からよく行なわれている砥石研磨とすればよい。
そして、本発明に従う冷間圧延用ダルロールの製造方法は、その後、下地ロールは、表面を直接ダル加工することなくめっき設備に搬送し、脱脂処理等を行った後に、算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmである下地ロールの表面上に、算術平均粗さRaが0.35μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが230個以上である第1めっき層(下側めっき部)を形成し、さらに、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上である第2めっき層(上層めっき)を形成する。
下地ロール表面の算術平均粗さRaを0.05〜2.0μmに限定する理由は、0.05μm未満だと、通常の砥石研磨では実現できず、別途磨き工程を必要とする上、ロールとめっき層の密着性が悪くなるからであり、また、2.0μm超えだと、研磨スクラッチの凹凸が大きくなり、めっき層の密着性が悪くなるからである。
第1めっき層は、上述した灰色めっきの形成条件で形成され、上記ダルロールを構成するクロムめっき層の下層めっきに相当し、また、第2めっき層は、上述した硬質めっきの形成条件で形成され、上記ダルロールを構成するクロムめっき層の上層めっきに相当する。
第1めっき層は、その算術平均粗さRaを0.35μm以上とし、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIを230個以上とすることが、その後、第1めっき層の上に形成する第2めっき層の算術平均粗さRaを0.3μm以上とし、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIを200個以上とする上で好ましい。
なお、発明者らの検討では、ダルロールの表面粗さを決定する最も支配的な要因が、基本的な凹凸を形成する第1めっき層の厚さであり、この厚さはほぼめっき時間により制御することができること、および、硬質めっきである第2めっき層は、第1めっき層の表面を保護すると同時に、表層の不必要に大きな凹部を埋めて粗さを調整する役割も果たすことが判明した。
このため、第1めっき層の厚さは10〜70μmとすること、第2めっき層の厚さは5〜20μmとすること、そして、第1および第2めっき層の合計厚さは15〜90μmとすることが好ましい。
第1および第2めっき層はいずれも、前記下地ロールをクロムめっき浴中に浸漬し、電気クロムめっきすることにより形成され、第1および第2めっき層を、異なるめっき浴で形成してもよいが、同一のめっき浴を用いて浴温を上昇させ、第1めっき層の形成に引き続いて第2めっき層を形成することが、工程の簡略化等の点で好ましい。
クロムめっき浴としては、例えばクロム酸と硫酸のクロムめっき浴が挙げられる。
第1めっき層の形成条件は、例えば、ごくありふれたクロム酸200〜500g/l、硫酸2〜5g/l、 pH1.0〜3.0のめっき浴を用い、浴温:20〜41℃、電流密度:20〜90A/dmおよびめっき時間:0.2時間以上とすることが好ましい。浴温が20℃未満だと、浴温をコントロールするのに多大な電力を必要とするからであり、41℃を超えると、良好な微小凹凸を得られないからである。また、電流密度が20A/dm未満あるいは90A/dm超えだと、均一な微小凹凸が得られないからである。さらに、めっき時間が0.2時間未満だと、充分な微小凹凸の成長が困難だからである。
第2めっき層の形成条件は、例えば、ごくありふれたクロム酸200〜500g/l、硫酸2〜5g/l、 pH1.0〜3.0のめっき浴を用い、浴温:43〜60℃、電流密度:30〜90A/dmおよびめっき時間:0.2〜1.5時間とすることが好ましい。浴温が43℃未満あるいは60℃を超えると、耐摩耗性に必要な硬度が得られないからである。また、電流密度が30A/dm未満あるいは90A/dm超えでも同様である。さらに、めっき時間が0.2時間未満だと、充分な厚みの硬質めっき層を形成できないからであり、1.5時間を超えると、表面粗さの調整が難しくなり、硬質めっき層の厚みが厚くなってめっきコストが不要に増加する。
胴部直径600mm、胴部長さ1500mmの冷間圧延(より厳密には調質圧延)用ワークロールの表面にダル加工を施した。下地ロールの材質は5%Cr鍛鋼であり、目標の算術平均粗さをRa=1.0μmとした。本発明のダルロールは、下地ロールを砥石研磨によりRa=0.2μmに仕上げた後、めっき設備に搬入し、アルカリ脱脂処理、水洗を行った。その後、表1に示すクロム酸と硫酸の組成からなるクロムめっき浴で、表2に示す種々のめっき条件で電気クロムめっきを行った。第1および第2めっき層のビッカース硬さHV0.025(測定荷重0.245N)、算術平均粗さRaおよび長さ1インチ当たりのピーク数PPIを表2に示す。
Figure 0004379115
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比較のため、特許文献1に記載されているレーザーダル加工法を用いてダルロールも試作した。すなわち、下地ロールを砥石研磨によりRa=0.2μmに仕上げた後、レーザー加工機にて、レーザー出力50W、周波数8kHzにてレーザーダル加工を行った。加工時間は3時間であった。その後、上記実施例と同様にめっき設備に搬入し、アルカリ脱脂、水洗を行った。その後、表1に示すクロムめっき浴で、めっき浴温50℃、電流密度20A/dm、電解時間:500秒で電解エッチングを行って下地ロール表層の軟質層を除去し、引き続き、めっき浴温50℃、電流密度50A/dmの条件でクロムめっきを行い、めっき時間1時間で厚さ10μmのめっき層を形成させることによって、ダルロール(従来例)を試作した。
次に、表2に示す発明例、比較例のダルロールを、1対のワークロールと1対のバックアップロール2とを有する4段式の調質圧延機のワークロール1(図4)として別々に組み込み、調質圧延を行った。供試材は板厚0.2mm×板幅1200mmの焼鈍された低炭素鋼板3で、伸び率1.5%として100kmの圧延を行った。
表2に発明例、比較例のダルロールにおいて、Ra低下率が6%となる圧延距離を示した。なお、100km圧延後でも6%低下していなかった場合は100kmとして表示した。
表2に示す結果から、発明例はいずれも、耐摩耗性に優れ、100kmの圧延距離でもRaが6%まで低下しなかった。一方、従来例や本発明の適正範囲外である比較例はいずれも、ロール仕様未達か、耐摩耗性や耐剥離性で問題があった。そして、表2に示すNo.1の発明例のダルロールと従来のダルロールについて、圧延距離が0、10、50および100kmのときの、ワークロール表面の算術平均粗さRaと長さ1インチ当たりのピーク数PPIを測定した。それらの測定結果を図5に示す。
図5に示す結果から、発明例のダルロールは、従来例のダルロールに比べて、新品時のワークロール表面の算術平均粗さRaと長さ1インチ当たりのピーク数PPIの値の新品時からの変化率が小さく、長い圧延距離でもダルロールの表面性状が維持できていることがわかる。
加えて、圧延後、再度、ロールの砥石研磨を行って、ロール表面加工の影響を除去したところでロール径の変化を調査したところ、本発明のロールは直径が7μmしか低下しなかったのに対し、従来例のロールは直径が50μmと大幅に低下していた。
本発明によれば、ロールの所望の表面性状が短時間で簡単に得られる上、圧延距離によるロール表面粗さの変化の小さいダルロールを製造することができる。これにより、表面凹凸が微細な鋼板を安定して製造することが可能になる。さらにロールの原単位も向上する。
評価長さL当たりのピーク数PPIを評価する方法を説明するための図である。 (a)は、本発明に従う新品のダルロール表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルであり、(b)は、(a)のダルロールで鋼板を冷間圧延(圧延距離:53.3km)した後のダルロールの表面プロファイルであり、(c)は本発明に従うダルロールを用いて圧延した冷延鋼板の表面プロファイルである。 (a)は、従来の新品のダルロール表面をレーザー顕微鏡で測定したときの表面プロファイルであり、(b)は、(a)のダルロールで鋼板を冷間圧延(圧延距離:18.0km)した後の表面プロファイルである。 4段式の調質圧延機のワークロールの配置状態を示す図である。 圧延距離に対して、ワークロール表面の算術平均粗さRaと長さ1インチ当たりのピーク数PPIの値をプロットした図である。
符号の説明
1 ワークロール
2 バックアップロール
3 低炭素鋼板

Claims (3)

  1. ビッカース硬さが600以上である下地ロールの表面上に、上層めっきと下層めっきからなるクロムめっき層を有し、該クロムめっき層の上層めっきと下層めっきのビッカース硬さHV0.025がそれぞれ850以上と650〜950であり、前記クロムめっき層表面は、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上であることを特徴とする金属板の冷間圧延用ダルロール。
  2. 算術平均粗さRaが0.05〜2.0μmである下地ロールの表面上に、算術平均粗さRaが0.35μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが230個以上である第1クロムめっき層を形成し、さらに、算術平均粗さRaが0.3μm以上であり、かつ長さ1インチ当たりのピーク数PPIが200個以上である第2クロムめっき層を形成することを特徴とする金属板の冷間圧延用ダルロールの製造方法。
  3. 前記第1および第2クロムめっき層はいずれも、前記下地ロールをクロム酸200〜500g/l、硫酸2〜5g/l、pH1.0〜3.0のクロムめっき浴中に浸漬し、電気クロムめっきすることにより形成され、第1クロムめっき層の形成条件が、浴温:20〜41℃、電流密度:20〜90A/dmおよびめっき時間:0.2時間以上であり、第2クロムめっき層の形成条件が、浴温:43〜60℃、電流密度:30〜90A/dmおよびめっき時間:0.2〜1.5時間である請求項2記載の金属板の冷間圧延用ダルロールの製造方法。
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