JP2013166169A - 異形条用圧延ロール及びその製造方法 - Google Patents

異形条用圧延ロール及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧延ロールの耐久性を向上させ、効率の低下やエネルギー消費の増加を抑えることができる異形条用圧延ロール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】表面に凹溝3を設けた溝付ロールとともに用いられ異形条を圧延形成する為の異形条用圧延ロールであって、ロール本体の表面に前記凹溝3の幅より細い幅の突起部4を形成すべく、突起部4に位置するロール本体表面の円周に、パルス放電によりロール本体表面を溶かし、その溶けた部分に電極材を溶かし込んでコーティング層9を形成し、しかる後、コーティング層9が形成されたロール本体を表面研削して突起部4を形成したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、異形断面形状を有する条(以下、異形条と称する)を圧延する異形条用圧延ロールに係り、特にロールの耐久性を向上できる異形条用圧延ロール及びその製造方法に関するものである。
異形条は、あらかじめ異形断面形状に予備成形した板を仕上げ圧延することで製造されている。異形条の形状により仕上げ圧延に使用するロールの磨耗状態が異なり、所定の異形条の断面形状寸法を保持できなくなる。磨耗が速い例を図1により説明する。
図1は、異形条5を圧延する圧延ロール10を示し、圧延ロール10は、上部ロール1と下部ロール2からなり、上部ロール1の中央部には凹溝3が形成される。このロール1の凹溝3は異形条5の凸部6に対応している。下部ロール2の中央部には突起部4があり、異形条5の凹部7に対応している。
図1に示した異形条5の凹部7を成形するために設けたロール2の突起部4は、先端部が磨耗し易く、ロールの交換頻度が高くなっている。
このように異形条用圧延ロールにおいては、微小な突起部などは、磨耗が大きく形状寸法の変動が大きい。そのため、圧延された異形条の形状寸法の変動も大きくなり、製品寸法公差を満たさなくなる。それを回避するため圧延ロールを頻繁に交換し、異形条の形状寸法の変動を抑えていた。
他方平板の圧延ロールの耐久性向上として、幾つかの方法が提案されている。
例えば、特許文献1ではWC系超硬合金からなる圧延ロールを使用すること、また、特許文献2ではPVD法により表面に炭化物や窒化物からなる硬質皮膜を形成した圧延ロールを使用することが提案されている。
特許第3444063号公報 特開2001−239308号公報
しかし、WC系超硬合金は高硬度ではあるが、靭性が低いため、圧延用ロール、特に、段差のある異形断面条の圧延に用いるロールに使用した場合、高荷重下では割れ易い。また、PVD法による炭化物や窒化部をロール表面に被覆した場合、高硬度であるが、被覆とロールとの密着性が低く剥離しやすい。更に、被覆厚さの変化は異形断面条の形状寸法不良になるという欠点があり、異形条用圧延ロールヘの実用には困難な問題があった。
このように、従来の技術では前述のように異形条用圧延ロールの耐久性の向上は難しい問題がある。
異形断面条は、平圧延と異なり、形状寸法も重要で、圧延ロールの突起部や凹部の磨耗が大きいと形状寸法が変化する。そのため、磨耗の大きな形状では、1回のロール製作での圧延できる量が少なくなる。ロールの形状製作は研削で行う。そのため、磨耗の大きな形状では、ロール形状製作のため頻繁に研削を実施しなければならず、効率の低下やエネルギー消費の増加、更にそれらによるコストが増加するなどの問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、圧延ロールの耐久性を向上させ、効率の低下やエネルギー消費の増加を抑えることができる異形条用圧延ロール及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、表面に凹溝を設けた溝付ロールとともに用いられ異形条を圧延形成する為の異形条用圧延ロールであって、
ロール本体と、
前記ロール本体の表面に設けられた前記凹溝の幅より細い幅の突起部と、
前記突起部の円周面に設けられ前記ロール本体表面の材料と異なる材料からなるコーティング層と、
から形成される異形条用圧延ロールである。
請求項2の発明は、前記コーティング層は、TiCからなる請求項1記載の異形条用圧延ロールである。
請求項3の発明は、前記コーティング層の厚さは5〜10μmに形成される請求項1又は2に記載の異形条用圧延ロールである。
請求項4の発明は、前記コーティング層の幅は、形成する突起部の幅をdとするとd+1mm以上である請求項1〜3いずれかに記載の異形条用圧延ロールである。
請求項5の発明は、前記コーティング層より更に、0.02mm以下の厚みを表面研削して前記突起部を形成する請求項1〜4いずれかに記載の異形条用圧延ロールである。
請求項6の発明は、表面に凹溝を設けた溝付ロールとともに用いられ異形条を圧延形成する為の異形条用圧延ロールの製造方法であって、
ロール本体の表面に前記凹溝の幅より細い幅の突起部を形成すべく、前記突起部に位置するロール本体表面の円周に、パルス放電によりロール本体表面を溶かし、その溶けた部分に電極材を溶かし込んでコーティング層を形成し、しかる後、コーティング層が形成されたロール本体を表面研削して突起部を形成したことを特徴とする異形条用圧延ロールの製造方法である。
請求項7の発明は、前記電極材はTiCからなり、
微細なパルス放電により、TiCからなる電極を溶かしつつロール本体側の前記溶けた部分にTiCからなるコーティング層を形成する請求項6に記載の異形条用圧延ロールの製造方法である。
請求項8の発明は、前記コーティング層の厚さは5〜10μmに形成される請求項6又は7に記載の異形条用圧延ロールの製造方法である。
請求項9の発明は、前記コーティング層の幅は、形成する突起部の幅をdとするとd+1mm以上に形成する請求項6〜8いずれかに記載の異形条用圧延ロールの製造方法である。
請求項10の発明は、前記コーティング層より更に、0.02mm以下の厚みを表面研削して前記突起部を形成する請求項6〜9いずれかに記載の異形条用圧延ロールの製造方法である。
本発明によれば、圧延ロールの耐久性を向上させ、効率の低下やエネルギー消費の増加を抑えることができる効果を奏する。
本発明の圧延ロールの概略図である。 本発明の異形条用圧延ロールの製造方法を示し、(a)は、ロールヘのコーティング、(b)は研削後のロールの概略形状を示す図である。 本発明の異形条用圧延ロールで圧延する異形条の概略形状と、その異形条の主な形状寸法を説明する図である。 (a)は本発明のロール突起部の圧延による形状変化を示し、(b)は従来のロールの圧延による形状変化を示す図である。 本発明の異形条用圧延ロールと、コーティングなしの従来の圧延ロールで圧延した異形条の圧延本数に対する凹部側面の角度変化を示す図である。 本発明と従来例において、コーティング部の表面からの研削深さに対する硬度の変化を示す図である。 本発明と従来例において、コーティング部の表面からの研削深さに対する表面粗さの変化を示す図である。 本発明において、コーティング部と基材部の境界部のボイドを撮像した表面組織を示す図である。
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
先ず、本発明の異形条用圧延ロールの構造は図1で説明した通りである。
圧延ロール10は、上部ロール1と、下部ロール2からなる。
上部ロール1は、ロール本体表面に凹溝3が形成された溝付ロールである。凹溝3によって凸部6が形成される。
下部ロール2は、ロール本体の表面に設けられた凹溝3の幅より狭い幅の突起部4が設けられ、突起部4の円周面にはロール本体表面の材料とは異なる材料からなるコーティング層9を有する異形条用圧延ロールである。
この圧延ロール10を用いて異形条5を塑性変形で加工する場合、銅からなる平条を異形条の形状に予備成形後、焼鈍、仕上げ圧延で製品形状に仕上げるのが概略の工程である。
仕上げ圧延において、異形条5は上下のロール1、2に挟まれ、圧延されることで、凸部6、凹部7の形状が成形される。
図3は、圧延ロール10で圧延形成された異形条5の形状と寸法の一例を示したもので、板厚tが0.5mm、幅W0が42.2mm、凸部6の厚さTが0.8mm、幅W1が12.2mm、凹部7の幅W2が4.0mm、深さdが0.3mm、凹部7の側面の角度αが85°以上に形成される。
圧延ロール10で、このような形状の異形条5を圧延形成していると、下部ロール2の突起部4の最外周部、特に長手方向(円周方向)の両端面の磨耗が大きく、その結果、異形条5の凹部7の形状寸法が規格外れになり、下部ロール2の交換となる。上部ロール1は、異形条5の凹部7の有無に関係なく、交換頻度は変わらない。
これに対して、下部ロール2は、突起部4の幅dが4mmと狭く、幅の狭い突起部4があると、その部分の磨耗が大きく、形状変化が速いため、突起部4が無い場合に比べ、交換頻度は倍以上になる。即ち、下部ロール2は突起部4がない場合に比べ、突起部4があると、圧延量は1/3程度となる。
そこで、本発明は、微小な突起部4などの磨耗の大きな部分に、放電加工の方法で、パルス電流で電極材を溶かし、下部ロール2の表面に溶着させ、表面に改質層(コーティング層)を形成し、その後、表面を研削し、表面粗さ及び形状を成形して下部ロール2とする圧延ロールの製造方法を提供するものである。
図2(a)、図2(b)に、下部ロール2のロール本体表面の電極材溶着によるコーティング層の形成と研削による形状成形の概略を示す。
図2(a)に示すように、下部ロール2の表面が平坦な状態の時に、ロール表面に微細なパルス放電により、電極材を溶かしロール側の溶けた部分に電極材を5〜10μm程度の厚みのコーティング層9を形成する。このコーティング層9の必要な幅は、d+1mm以上の幅で全円周方向に形成される。
その後、図2(b)に示すように、研削により、段差h、幅dの突起部4を成形し、下部ロール2を製作した。
本発明では、電極材にTiCを用い、パルス放電により下部ロール2の表面を溶かすと共にその溶けた部分に電極材を溶かし込んでコーティング層9を形成する。コーティング層9の幅は5mmである。図2(b)に示すように研削にて突起部4を成形した。突起部4の幅は4mm、段差hは0.3mmである。このようにして製作した下部ロール2とコーティングのない上部ロール1を組み合わせた圧延ロール10を用いて、図3に示した異形条5の圧延を実施した。
下部ロール2の突起部4が磨耗してくると、異形条5の凹部7の側面の角度αが小さくなり、規格の85°以上を満たさなくなるが、本発明においては、コーティング層9を形成し、これを表面研削して突起部4を形成することで、耐久性を向上できるものである。
次に本発明の効果を図4により説明する。
図4(a)は、本発明の下部ロール2のロール本体にコーティング層9を施して突起部4を形成した圧延ロール10を用いて、異形条5を圧延形成したときの突起部4の変化を、図4(b)は、従来のコーティングせずに突起部を形成した圧延ロールを用いて異形条5を圧延したときの形状変化を測定した結果を示したものである。圧延は1本約3000mの長さの材料を6本圧延して異形条5とした。
図4(a)に示すように、本発明の下部ロール2の突起部4は、図4(b)に示したコーティングのない下部ロールの突起部に比べ、未使用の形状と6本圧延後の形状変化が少ない。このことは、本発明の下部ロール2の突起部4は圧延による磨耗が少ないと言え、耐久性向上の効果がある。
図5に仕上げ圧延後の異形条5の凹部7の側面角度αの変化を示した。異形条5の凹部7の側面角度αの規格は85゜以上である。
図5に示すように、従来例(コーティングなし)の圧延ロールで圧延した異形条5の凹部7の側面角度αは、圧延本数が6本になると、規格値85゜となり、6本以上では、規格を満たさないことになる。一方、コーティングありの本発明の圧延ロール10では圧延本数が11本まで規格値85°以上を満たしている。
このように、本発明は、TiCをパルス放電によりロール2の円周面にコーティングし、その後、研削にて形状、表面状態の均一化を図ったロール2の突起部4は、耐久性が向上し、ロール交換なしの圧延本数が大幅に増加した。
次に、電極材をパルス電流で溶かし、基材に溶着させ改質層を形成した材料を、表面から研削し、表面の硬度、表面状態を調査した。
基材はSHK51相当品で、電極材は5種類用いた。基材は、その他のWC系合金を用いることが可能である。
表面から研削深さに対する硬度の変化を図6に、同じく研削深さに対する表面粗さRaの変化を図7に示す。
図6に示すように、無処理の場合、表面の硬さは約880(Hv)で、研削深さに25μm以上でも変化がないのに対して、ロール本体にコーティング層を施した試料No.1〜5は、1000(Hv)以上と硬度が高く、また研削深さ25μmでも無処理材(基材)の硬度より高い値となり、処理による硬さの増加が認められる。
この図6の結果より、電極材をパルス電流で溶かし、基材に溶着させ改質層を形成させた場合、電極材の成分がある層の厚さは約15μm程度であるが、実際には、電極材成分がない深さでも硬度の増加が認められ、研削深さは15μm以上でも硬度の増加は保てることが分かる。
また、図7は研削深さと表面粗さ(Ra)の変化を示したものであるが、無処理の場合でも、ロール本体にコーティング層を施した試料No.1〜5の場合でも特に変わりはなかった。
次に図8に電極材をパルス電流で溶かし、基材に溶着させ、研削に用いたサンプルの表面写真の例を示す。
四角で囲ってある部分が溶着によりコーティングされた部分で、それ以外は基材の部分である。これは表面より10μm程度研削した時の表面写真であり、図8で見て横方向が周方向、縦方向が軸方向である。
図8より、コーティング部、基材部ともに同様の表面状態であることがわかる。しかし、コーティング部と基材の軸方向の境界部では多数のボイドが発生していることが観察され、その幅は約0.5mm程度ある。
このようにボイドがある部分で異形条を圧延するとボイドの影響で圧延した異形条の表面品質が悪くなり、製品に要求される品質が維持できなくなる。この境界部のボイド部を削除するために、必要な突起部の幅より広い範囲(d+1mm以上)に溶着によるコーティングを行い、その後、研削にて形状を成形するときに、突起成形のため、突起幅以上の部分を大きく研削するため、基材部とコーティング部の境界に発生したボイドを除去することで異形条の表面品質低下防げることができる。
なお、上記の実施の形態においては、上部ロール1を溝付ロールとし、下部ロール2をコーティング層が設けられた異形条用圧延ロールとしたが、逆に、上部ロール1を異形条用圧延ロールとし、下部ロール2を溝付ロールとすることも可能である。場合によっては、90°回転させ、銅条が縦に搬送される構成であっても問題ない。
以上本発明は、圧延ロールの耐久性が向上したため、圧延ロール交換の頻度を少なくでき、その結果、ロール交換の時間が減少し、その分、圧延時間にあてることで、生産性を向上することができる。また、圧延ロールの交換頻度が減少することは、研削によるロール再研削本数が減少することになり、その製作に要する電力などのエネルギーの削減などの効果がある。
1 上部ロール
2 下部ロール
3 凹溝
4 突起部
5 異形条
9 コーティング層
10 圧延ロール

Claims (10)

  1. 表面に凹溝を設けた溝付ロールとともに用いられ異形条を圧延形成する為の異形条用圧延ロールであって、
    ロール本体と、
    前記ロール本体の表面に設けられた前記凹溝の幅より細い幅の突起部と、
    前記突起部の円周面に設けられ前記ロール本体表面の材料と異なる材料からなるコーティング層と、
    から形成される異形条用圧延ロール。
  2. 前記コーティング層は、TiCからなる請求項1記載の異形条用圧延ロール。
  3. 前記コーティング層の厚さは5〜10μmに形成される請求項1又は2に記載の異形条用圧延ロール。
  4. 前記コーティング層の幅は、形成する突起部の幅をdとするとd+1mm以上である請求項1〜3いずれかに記載の異形条用圧延ロール。
  5. 前記コーティング層より更に、0.02mm以下の厚みを表面研削して前記突起部を形成する請求項1〜4いずれかに記載の異形条用圧延ロール。
  6. 表面に凹溝を設けた溝付ロールとともに用いられ異形条を圧延形成する為の異形条用圧延ロールの製造方法であって、
    ロール本体の表面に前記凹溝の幅より細い幅の突起部を形成すべく、前記突起部に位置するロール本体表面の円周に、パルス放電によりロール本体表面を溶かし、その溶けた部分に電極材を溶かし込んでコーティング層を形成し、しかる後、コーティング層が形成されたロール本体を表面研削して突起部を形成したことを特徴とする異形条用圧延ロールの製造方法。
  7. 前記電極材はTiCからなり、
    微細なパルス放電により、TiCからなる電極を溶かしつつロール本体側の前記溶けた部分にTiCからなるコーティング層を形成する請求項6に記載の異形条用圧延ロールの製造方法。
  8. 前記コーティング層の厚さは5〜10μmに形成される請求項6又は7に記載の異形条用圧延ロールの製造方法。
  9. 前記コーティング層の幅は、形成する突起部の幅をdとするとd+1mm以上に形成する請求項6〜8いずれかに記載の異形条用圧延ロールの製造方法。
  10. 前記コーティング層より更に、0.02mm以下の厚みを表面研削して前記突起部を形成する請求項6〜9いずれかに記載の異形条用圧延ロールの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107825351A (zh) * 2017-12-02 2018-03-23 芜湖海程橡塑有限公司 一种压胶辊轮结构
CN108405622A (zh) * 2018-05-11 2018-08-17 安徽瑞仕达预应力设备有限责任公司 一种雨滴型分丝管专用多辊挤压机

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