JP4378739B2 - 偏光板の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐久性等に優れた偏光板の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられ、これに伴い偏光板の需要も増大しており、近年においては、かかる偏光板の耐久性の向上も望まれている。
【0003】
かかる対策として特開昭53−82433号公報には、偏光板の保護フィルム層にウレタン樹脂を塗工することが開示されており、また特開昭56−80001号公報には、ウレタンアクリレート化合物にイソシアネートと反応しうる組成物を配合したものを塗工することが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のいずれの技術についても、40〜60℃で90〜95%RH程度の耐湿熱性しか実現しておらず、湿・熱の繰り返し条件等の苛酷な条件での耐久性は考慮されていない。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
そこで、本発明者が、かかる現況に鑑みて鋭意検討を行った結果、偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して酢酸セルロール系フィルムからなる保護層を設けて偏光板を製造するにあたり、該接着剤としてトリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したとき10%以上の重量増加をさせる有機溶剤であって、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジメチルスルホキシドから選ばれる有機溶剤(a)を0.0001〜10重量%含有したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いることにより、湿・熱の繰り返し条件等の苛酷な条件での耐久性に優れた偏光板が得られることを見いだし本発明の完成に至った。
【0006】
尚、上記のトリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したとき10%以上の重量増加をさせる有機溶剤(a)とは、トリアセチルセルロース系フィルムを有機溶剤(a)に30℃で1週間浸漬させた時、該溶剤による膨潤(吸収)により、該フィルムの重量増加率が10重量%以上になるような有機溶剤(a)を意味し、有機溶剤(a)を特定するための重量増加(率)の具体的な測定方法としては、三酢酸セルロースフィルム(例えば100mm×100mm×0.2mmの大きさが好ましいが、他の大きさ、形状でもよい)を30℃で1週間完全浸漬前後の重量を20℃で測定することにより、下式より算出することが可能である。浸漬後の測定にあたっては、取り出し直後にウエス等でフィルムに付着している有機溶剤を除去した後、直ちに重量測定を行えばよい。
重量増加率(%)=[(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量]×100
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の偏光フィルムは、偏光特性を有する染色・一軸延伸されたフィルムであれば、特に限定されないが、ポリビニルアルコール系の偏光フィルムが好ましく、以下かかる偏光フィルムについて詳述する。
かかるポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)系偏光フィルムは、PVA系フィルムの一軸延伸フィルムで、該PVAは通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等の酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。
【0008】
PVA系偏光フィルムに用いられるPVAのケン化度は85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%が実用的である。又、本発明におけるPVAの平均重合度としては、本発明の効果を得るためには500以上、好ましくは1100〜5000、特に好ましくは1500〜4000が有利である。
平均重合度が500未満では初期偏光性能(偏光度、透過率)が低い、高温多湿の条件下において光学性能の低下が大きい等で本発明の効果が得難い。
【0009】
PVA系原反フィルムの製造法としては、PVAを水又は有機溶媒に溶解した原液を流延製膜して、延伸してヨウ素染色又はアゾ系、アントラキノン系、テトラジン系等の二色性染料で染色するか、延伸と染色を同時に行うか、染色して延伸した後、ホウ素化合物で処理する方法が挙げられる。原液調製に際し使用される溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類及びこれらの混合物が用いられる。
【0010】
上記溶媒中には、少量例えば5〜30重量%の水を含有させても差し支えない。原液中のPVAの濃度は5〜20重量%程度が実用的である。該溶剤を用いて得られたPVA製膜原液は、キャスト法、押出法等任意の方法で製膜される。製膜方式としては乾・湿式製膜法にて、即ち、該溶液を口金スリットから一旦空気中、又は窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気中に吐出し次いで凝固浴中に導いて未延伸フィルムを形成せしめる。又は、口金から吐出された製膜溶液は一旦ローラー、或いはベルトコンベアー等の上で溶剤を一部乾燥した後凝固浴中に導入しても差し支えない。
【0011】
また、凝固浴に用いる溶媒には前記PVAの溶剤と混和性を有するもので、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類やアセトン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。PVAフィルムを得る方法としては、上記以外に所謂ゲル延伸法と呼ばれている方法も採用可能である。
【0012】
即ち、PVAを重合体濃度が30%以下になるよう溶剤に溶解してPVA製膜原液を調製する。該溶液をスリット状口金を通して空気又は不活性雰囲気中に吐出させ、次いで表面が冷却されたローラーやベルトコンベアの上にあるいは凝固液中に導入してゲル化フイルムを形成させる。該ゲル化フィルムは脱溶媒後延伸させられる。該製膜法は前記乾・湿式製膜法と殆ど同じであるが重合体濃度が原液と変化しないようにゲル化フィルムを形成させる点で差がある。
この場合のPVA製膜原液の溶媒としては、水、グリセリン、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール、ベンゼンスルホンアミド、カプロラクタム等が例示できる。
【0013】
前記の如くして得られるPVA原反(未延伸)フィルムは、次いで延伸及び染色が施される。延伸と染色は別々に行っても同時に行っても良い。別々に行う場合、延伸と染色の順序も任意である。延伸は一軸方向に3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上延伸することが望ましい。この際、前記と直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度或いはそれ以上の延伸)を行っても差し支えない。延伸時の温度条件は、50〜130℃の範囲から選ぶのが適当である。
【0014】
フィルムへの染色、つまり偏光素子の吸着はフィルムに偏光素子を含有する液体を接触させることによって行われる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液、又はアゾ系、アントラキノン系、テトラジン系等の二色性染料の水溶液が用いられる。ヨウ素の濃度は0.1〜2.0g/l、ヨウ化カリウムの濃度は10〜50g/l、ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比は20〜100が適当であり、二色性染料の濃度は、0.1〜3.0g/lが適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。
【0015】
接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用出来る。延伸及び染色の終了したフィルムは次いでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は水溶液又は水−有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2.0モル/l程度で用いられる。
処理法は浸漬が望ましいが勿論、塗布法、噴霧法も実用可能である。処理時の温度は50〜70℃、処理時間5〜20分程度が好ましく、必要に応じて処理中に、或いは処理後に延伸操作を行っても良い。最後に30〜90℃で60秒〜5時間乾燥することにより偏光フィルムを得ることができる。
【0016】
かくして得られた偏光フィルムは、その片面あるいは両面に接着剤を介して保護層が設けられるのであるが、本発明においては、該接着剤としてトリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したとき10%以上の重量増加をさせる有機溶剤であって、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジメチルスルホキシドから選ばれる有機溶剤(a)を含有したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いることを最大の特徴とするもので、従来の如き単なるポリビニルアルコール系樹脂のみの水溶液では、本発明の効果を得ることはできない。
【0017】
かかる有機溶剤(a)としては、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジメチルスルホキシドから選ばれる有機溶剤であることが必要である。その含有量としては、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中に0.0001〜10重量%であることが必要であり、更には0.001〜10重量%が好ましく、かかる含有量が0.0001重量%未満では添加効果がなく、逆に10重量%を越えると偏光板の耐久性の低下を招いて好ましくない。
【0018】
また、該水溶液に用いられるポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されないが、ケン化度50〜100モル%(更には70〜100モル%)で、重合度500〜4000(更には1100〜4000)のものが好適に用いらる。
該水溶液中のポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、0.0001〜50重量%が好ましく、更には0.001〜50重量%が好ましく、特に0.001〜30重量%が好ましく、かかる含有量が0.0001重量%未満では接着力が不足し、逆に50重量%を越えると接着層の厚みが厚くなり過ぎて、耐久性が低下して好ましくない。
また、該接着剤の塗布厚み(乾燥後)としては、0.001〜100μmが好ましく、更には0.001〜10μmで、特に0.01〜10μmで、かかる塗布厚みが0.001μm未満では接着性が低下し、逆に100μmを越えると接着後の可とう性が低下して好ましくない。
【0019】
かかる接着剤(該有機溶剤含有ポリビニルアルコール系樹脂水溶液)にて、接着される保護層としては、光学特性に優れる点で二酢酸セルロースフィルム、三酢酸セルロースフィルム等の酢酸セルロース系フィルムが用いられる。
【0020】
かかる保護フィルムは、必要に応じて、その接着(積層)表面に、アルカリによるケン化処理、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、高周波処理、電子線処理等の処理が施され、特に接着性、作業性、経済性等の面よりアルカリによるケン化処理が施されていることが好ましく、水に対する接触角が40度以下、好ましくは30度以下になるまで処理される。処理水溶液に用いられるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチュウム、水酸化カルシュウム等が挙げられ、20重量%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液中に約5分間浸漬し、その後水洗いして風乾させ、水に対する接触角(静止接触角)が40℃以下、好ましくは30℃以下のケン化処理が行われる。
【0021】
尚、ここで言う接触角は静止接触角を意味し、該接触角の測定法は接触角計(協和界面科学(株)製、自動接触計CA−Z型)を用いて20℃ 65%RHの条件下で体積4μlの水滴を針先に作り、これをフイルムに接触させ、フイルム表面に液滴を作成し、このとき生じる液滴とフイルム界面との角度を静止接触角として測定する方法を採用した。
【0022】
上記の如き偏光フィルムと保護フィルム(層)を接着剤を介して接着(積層)するのであるが、具体的には、偏光フィルムと保護フィルムの間に接着剤を存在させて接着させればよく、例えば偏光フィルムと保護フィルムのいずれか一方または両方に接着剤を塗工後、30〜120℃程度の温度で乾燥後、湿度50〜100%程度の状態で加湿してフィルムをラミネートして、保護フィルム(層)/接着剤/偏光フィルム/接着剤/保護フィルム(層)あるいは保護フィルム(層)/接着剤/偏光フィルムの積層構成を有する偏光板が得られるのであるが、この方法に限定されるものではない。
【0023】
得られた偏光板は、通常保護フィルム(層)の表面にアクリル系粘着剤等により粘着加工されて液晶セル等に貼着されて、実装に供されることが多い。
かくして、得られた偏光板は、耐久性(寸法変化、光学特性等)及び視野角等に優れ、パソコン,ワープロ,テレビ,モニター等の液晶表示装に大変有用である。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
【0025】
実施例1
(接着剤の調製)
平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAを5部及び水95部からなる水溶液に、メチルエチルケトン(トリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したときの重量増加率は約60%)を2部加えて接着剤を得た。
平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAからなる厚み40μmの4.0倍に一軸延伸されたヨウ素染色のPVA系偏光フィルムの両面に、上記の接着剤を乾燥後の厚みが2μmとなるに塗工後、厚さ80μmの三酢酸セルロースフィルムの保護フィルムを積層して、偏光板を作製した。
【0026】
得られた偏光板を用いて、以下の評価を行った。
(耐久性)
得られた偏光板を60℃、90%RHに12時間放置後、更に40℃に12時間放置し、これを1サイクルとして、5サイクル後の偏光板の外観を目視観察にて、以下の通り評価した。
○ −−− 偏光板端部に保護フィルムのはがれもなく、光学的斑も認められなかった。
△ −−− 偏光板端部に保護フィルムのはがれはなかったが、光学的斑が認められた。
× −−− 偏光板端部に保護フィルムのはがれが生じ、光学的斑も認められた。
【0027】
(視野角)
得られた偏光板を液晶パネルに貼合し,モニター10名を用いて実用上視野角による色変化が問題となるか否かを、以下の通り評価した。
○ −−− 5名以上が問題なしと判断
× −−− 6名以上が問題有りと判断
【0028】
実施例2
実施例1において、接着剤をメチルエチルケトンをジメチルホルムアミド(トリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したときの重量増加率は約50%)に変更した以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
【0029】
実施例3
実施例1において、接着剤をメチルエチルケトンを酢酸エチル(トリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したときの重量増加率は約70%)に変更した以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
【0030】
実施例4
実施例1において、メチルエチルケトン(トリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したときの重量増加率は約70%)の添加量を5部とした以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
【0031】
実施例5
実施例1において、三酢酸セルロースフィルムの保護フィルムを偏光フィルムの片面に積層(接着)した以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
【0032】
実施例6
実施例1において、メチルエチルケトンをDMSO(ジメチルスルホキシド)(トリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したときの重量増加率は約50%)に変更した以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
【0033】
比較例1
実施例1において、接着剤にメチルエチルケトンを配合しなかった以外は同様に偏光板を作製して、同様に評価した。
実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明の方法で得られた偏光板は、特定の接着剤を用いて偏光フィルムに保護フィルム(層)を積層しているため、耐久性及び視野角等に優れ、パソコン,ワープロ,テレビ,モニター等の液晶表示装置に大変有用である。
Claims (2)
- 偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して酢酸セルロール系フィルムからなる保護層を設けて偏光板を製造するにあたり、該接着剤としてトリアセチルセルロース系フィルムを30℃で1週間浸漬したとき10%以上の重量増加をさせる有機溶剤であって、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ジメチルスルホキシドから選ばれる有機溶剤(a)を0.0001〜10重量%含有したポリビニルアルコール系樹脂水溶液を用いることを特徴とする偏光板の製造法。
- 偏光フィルムがポリビニルアルコール系樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の偏光板の製造法。
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