JP3878693B2 - 偏光板およびそれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置に用いられる液晶表示素子の視認性の改善、特に垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性の改善に有効な偏光板およびそれを用いた液晶表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車や機械類の計器類等に液晶表示装置が用いられ、これに伴い偏光板の需要も増大している。偏光板は一般に偏光能を有する偏光フィルムの両面あるいは片面に、接着剤層を介して保護フィルムを形成させたものである。現在、知られている代表的なポリビニルアルコール(以下「PVA」と略す)系偏光フィルムとしては、PVA系フィルムにヨウ素を染色させたものや、二色性染料を染色させたもの等がある。これらはPVAの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させてヨウ素染色するか、あるいはヨウ素染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久化処理を行ったものが用いられている。また、上記保護フィルムとしては、酢酸セルロース系フィルムが表面保護フィルムとして光学的透明性、無配向性等に優れているため汎用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の偏光板を用いた液晶表示装置にあっては、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性が劣るいわゆる視野角依存性が大きな問題となっている。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視野角依存性の問題の改善に有効な偏光板およびそれを用いた液晶表示装置の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に一軸延伸してなる偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤層を介して保護フィルムが貼着された偏光板であって、この偏光板を2枚用い、これを厚み1.1mm、透過率99.5%のガラス板の両面に、上記偏光板の光軸が互いに直交するよう貼着して光透過率を測定したとき、その測定値が下記の特性(X)を満たす偏光板を第1の要旨とする。
(X)ガラス板の両面に上記偏光板を貼着してなる積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)が、10000以下。
【0006】
また、液晶セルの少なくとも片面に、粘着剤層を介して上記偏光板が貼着された液晶表示装置を第2の要旨とする。
【0007】
すなわち、この発明者は、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性の改善、すなわち視野角依存性の問題について鋭意研究を重ねた。その結果、上記偏光板を2枚用い、これをガラス板の両面に、上記偏光板の光軸が互いに直交するよう貼着してなる積層体の光透過率に注目し、この光透過率が、上記視野角依存性と密接に関係するという知見を得た。そして、さらに研究を重ねた結果、上記偏光板を構成する偏光フィルムが、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に一軸延伸してなるものであり、かつ、上記積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)が、10000以下であれば、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性が向上し、視野角依存性の問題を改善できることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
本発明においては、上記積層体の垂直方向の光透過率(T0)および上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)は、大塚電子社製の光学測定装置RETS2000を用いて測定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0010】
本発明の偏光板は、例えば、図1に示すように、偏光フィルム1の片面に接着剤層2を介して、保護フィルム3が積層形成されたものである。図において、4は偏光板である。
【0011】
上記偏光フィルム1としては、特に限定されるものではないが、PVA系フィルム、エチレンビニルアルコール系フィルム、セルロース系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等があげられ、なかでも、PVA系フィルムが好適である。
【0012】
上記PVAは通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していてもよい。PVAにおける平均ケン化度は85〜100モル%、好ましくは98〜100モル%が実用的である。また、本発明のPVAの平均重合度としては任意のものが使用可能であるが、1500〜5000、好ましくは2600〜5000、より好ましくは3000〜5000が有利である。
【0013】
上記接着剤層2形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等により変性されたPVAを含む)、ホウ素化合物等の水溶液が適宜採用されるが、なかでもPVA系樹脂、特にPVAの水溶液が好ましい。このPVAについては、平均重合度500〜4000、好ましくは1500〜3000、ケン化度90.0〜99.9モル%、好ましくは95.0〜99.9モル%のPVAが好適に用いられる。さらに、水溶液の濃度は0.1〜15重量%、特に1〜10重量%が好ましい。
【0014】
上記保護フィルム3形成材料としては、従来から知られているセルロースアセテート系フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン系フィルム、ポリスルホン系フィルム等があげられるが、なかでも、二酢酸セルロースや三酢酸セルロースフィルム(TAC)等のセルロースアセテート系フィルムが好適である。
【0015】
また、本発明の液晶表示装置としては、例えば、図2に示すように、液晶セル6の片面に、粘着剤層5を介して上記偏光板4の保護フィルム3面が貼着されたものがあげられる。または、図3に示すように、液晶セル6の両面に粘着剤層5を介して、上記偏光板4の保護フィルム3面がそれぞれ貼着されたものがあげられる。なお、偏光板4を液晶セル6の両面に貼着する際には、偏光板4の光軸が互いに直交するように設定するのが大半であるが、直交よりずれても差し支えない。
【0016】
上記粘着剤層5形成材料としては、透明性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、ポリビニルエーテル系、ゴム系等の材料があげられるが、特に、アクリル酸エステルと、α−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチロール等のビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、上記偏光フィルム1の偏光特性を阻害することがないという点で好適である。上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等があげられる。また、上記α−モノオレフィンカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリン酸、クロトン酸等があげられる。
【0017】
上記液晶セル6としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものがあげられる。例えば、TN型、STN型、TFT型、透過型、反透過型、反射型等の液晶セルがあげられる。
【0018】
つぎに、本発明の偏光板4および液晶表示装置の製法について具体的に説明する。まず、偏光板4の製法について説明する。
【0019】
上記偏光フィルム1は、PVAを溶媒に溶解した原液を流延製膜した後、一軸延伸、染色、ホウ素化合物処理を、所定の手順で施すことにより得られる。
【0020】
上記原液調製に際して使用される溶媒としては、例えば、水はもちろん、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールや、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類等の溶媒が用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。上記溶媒中には、例えば、5〜30重量%の少量の水を含有させても差し支えない。また、原液中のPVAの濃度としては、5〜20重量%が実用的である。
【0021】
上記原液の製膜法としては、特に限定はなく、例えば、キャスト法、押出法等の任意の方法があげられる。具体的には、乾・湿式製膜法により、すなわち、上記原液を口金スリットから一旦空気中、または窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気中に吐出し、ついで凝固浴中に導くことにより未延伸フィルムが得られる。なお、口金から吐出された製膜原液を、一旦ローラーやベルトコンベアー等の上で一部乾燥した後、凝固浴中に導入しても差し支えない。また、PVAの原液を凝固浴中に導入してフィルム化するいわゆるゲル製膜法等も実施可能である。
【0022】
上記凝固浴に用いる溶媒としては、上記PVAの溶媒と混和性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類や、アセトン、ベンゼン、トルエン等があげられる。
【0023】
つぎに、上記のようにして得られるPVA未延伸フィルムには、所定の手順で、一軸延伸、染色、ホウ素化合物(ホウ酸)処理が施される。詳しくは、上記PVA未延伸フィルムにヨウ素を吸着させ(染色)、その後、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に一軸延伸する処理が施される。なお、本発明の範囲内において、延伸と染色とを同時に行ってもよい。
【0024】
上記延伸は一軸方向に3.5〜10倍、好ましくは4.5〜7倍延伸することが好ましい。この際、前記と直角方向にも若干の延伸(軸方向の収縮を防止する程度あるいはそれ以上の延伸)を行っても差し支えない。延伸時の温度条件は40〜130℃から選ぶのが好ましい。さらに、上記延伸倍率は最終的に上記の範囲に設定されれば良く、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すれば良い。
【0025】
上記延伸は、延伸後のフィルムの膜厚が、20μm以下になるよう行うのが好ましく、特に好ましくは、15〜20μmである。すなわち、上記膜厚が20μmを超えると、上記積層体の光透過率の比(T60/T0)を10000以下に設定するのが困難となり、視野角依存性の問題を解消することができなくなるからである。
【0026】
なお、延伸前のPVAの原反フィルムとしては、その膜厚は30〜100μm、好ましくは50〜90μmが必要である。すなわち、30μm未満では延伸不能となり、逆に、100μmを超えると、膜厚精度が低下し不適当となるからである。
【0027】
上記フィルムへのヨウ素の染色は、通常はヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液を接触させることによって行われる。この場合、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/l、ヨウ化カリウムの濃度は10〜50g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの重量比は、ヨウ素/ヨウ化カリウム=20〜100が適当である。また、染色時間は30〜500秒程度が実用的であり、処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。なお、水溶液以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。接触手段としては、浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
【0028】
染色処理されたフィルムは、ついでホウ素化合物(ホウ酸)によって処理される。ホウ酸は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2モル/l程度で用いられ、液中には、少量のヨウ化カリウムを共存させる。ヨウ化カリウムの濃度は25〜70g/lの範囲内に設定する必要があり、好ましくは30〜70g/lである。すなわち、ヨウ化カリウムの濃度が25g/l未満であれば、上記積層体の光透過率の比(T60/T0)を10000以下に設定するのが困難となり、視野角依存性の問題を解消することができなくなるからである。処理法は浸漬法が好ましいが、もちろん塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は40〜70℃程度、処理時間は5〜20分程度が好ましく、また、本発明では、上記処理中に延伸操作(一軸延伸処理)を同時に行うことを要する。
【0029】
つぎに、上記処理により得られた偏光フィルム1面あるいは保護フィルム3面上に、上記接着剤層2形成材料を塗布する。この場合、上記接着剤層2形成材料は、偏光フィルム1面または保護フィルム3面上に均一な膜を形成するように塗布されるのが有利であり、塗布に際しては、乾燥後の厚みが0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmとなるようにするのが実用的である。すなわち、0.01μm未満では接着力が不充分であり、逆に、10μmを超える場合は、使用量の割には効果は増加せず、また外観が悪化し、実用的でないからである。塗布操作は必ずしもロール等を用いる塗布手段に限定されるものではなく、噴霧法、浸漬法等の手段が適用可能である。また、上記保護フィルム3の表面をアルカリでケン化処理したり、プラズマ処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、高周波処理、電子線処理等を行うと、さらに効果的である。
【0030】
そして、上記偏光フィルム1の少なくとも片面に、上記接着剤層2形成材料を塗布し、保護フィルム3を貼り合わせた後、40〜100℃、好ましくは55〜90℃で、1〜20分間、好ましくは1〜15分間熱処理を行うことにより、偏光フィルム1面と保護フィルム3面が強固に接着した偏光板4が得られる。また、保護フィルム3面上に上記接着剤層2形成材料を塗布し、偏光フィルム1と貼り合わせて偏光板4を作製しても差し支えない。このようにして、図1に示すような偏光板4を得ることができる。なお、図1においては、偏光フィルム1の片面のみに、接着剤層2を介して保護フィルム3が貼着された偏光板4を示したが、上記と同様の方法で、偏光フィルム1の両面に、接着剤層2を介して保護フィルム3を形成することも可能である。
【0031】
このようにして得られる本発明の偏光板4は、偏光フィルム1の厚みは50〜300μmが好ましく、特に好ましくは100〜200μmである。また、上記接着剤層2の厚みは、0.01〜10μmが好ましく、特に好ましくは0.05〜5μmである。さらに上記保護フィルム3の厚みは、10〜200μmが好ましく、特に好ましくは30〜150μmである。
【0032】
つぎに、本発明の液晶表示装置の製法について説明する。まず、図2に示す液晶表示装置について述べる。この液晶表示装置は、液晶セル6の片面に、上記粘着剤層5を介して偏光板4を貼着することにより得られる。
【0033】
つぎに、図3に示す液晶表示装置について述べる。この液晶表示装置は、液晶セル6の両面に、上記偏光板4の光軸が互いに直交するようそれぞれ貼着することにより得られる。
【0034】
このようにして得られる本発明の液晶表示装置は、粘着剤層5の厚みは、1〜100μmが好ましく、特に好ましくは5〜50μmである。さらに上記液晶セル6の厚みは、通常、0.5〜5mm程度である。
【0035】
本発明の偏光板4を用いてなる液晶表示装置の具体例として、図4に示すカラーSTN液晶表示モジュールがあげられる。図において、13は液晶セルであり、この液晶セル13は、液晶10の両面に透明電極11,12がそれぞれ貼着された構成からなる。そして、上記液晶セル13の両面には、偏光板4の光軸が互いに直交するよう、ガラス基板14,15を介してそれぞれ貼着されている。なお、上記液晶セル13を中心に、バックライトと反対側の透明電極11とガラス基板14の間には、カラーフィルター16が介在されている。
【0036】
本発明においては、上記偏光板4は下記の特性(X)を満足することが必要である。すなわち、上記偏光板4を2枚用い、これを所定のガラス板の両面に、上記偏光板4の光軸が互いに直交するよう貼着して光透過率を測定したとき、その測定値が下記の特性(X)を満たすことが必要である。
(X)ガラス板の両面に上記偏光板4を貼着してなる積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)が、10000以下。
【0037】
上記光透過率の測定において用いられるガラス板としては、液晶セル構成用として一般に用いられる白板ガラスがあげられ、その厚みが1.1mmで、その透過率が99.5%のものが使用される。
【0038】
なお、上記ガラス板両面への上記偏光板4の貼着は、上記粘着剤層5と同様の形成材料、方法等により行われる。
【0039】
本発明においては、上記光透過率の比(T60/T0)は10000以下であることが必要であるが、好ましくは、1〜5000、特に好ましくは、1〜1000である。すなわち、上記T60/T0が10000を超えると、液晶表示品位が著しく低下するからである。
【0040】
上記T60/T0におけるT60としては、0.001〜30が好ましく、特に好ましくは、0.001〜10である。また、上記T60/T0におけるT0としては、0.001〜1が好ましく、特に好ましくは、0.001〜0.1である。
【0041】
本発明において、上記光透過率の比(T60/T0)を10000以下に設定する方法としては、例えば、上記偏光フィルム1の製法において述べたように、PVAにヨウ素を吸着させた後、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、厚み20μm以下に延伸する方法があげられる。さらには、保護フィルム(TAC)の弾性率等をコントロールする方法等もあげられる。
【0042】
このようにして得られる本発明の偏光板4は、偏光フィルム1と保護フィルム3との接着性に優れるため、耐久性が向上し、高温、高湿状態で長期間放置してもその偏光性が低下しないという特性を持ち、このような特性を利用して液晶表示装置の用途に用いられ、特に車両用途、各種工業計器類、家庭用電化製品の表示等に有用である。
【0043】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0044】
【実施例1】
平均重合度3800、平均ケン化度99.5モル%のPVAを水に溶解し、5.0重量%の溶液を得た。この溶液をポリエチレンテレフタレートフィルム上に流延した後乾燥して、厚み50μmの原反フィルムを得た。この原反フィルムを10cm幅に切断してチャックに装着した後、ヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリウム60g/lよりなる水溶液に30℃にて240秒間浸漬し、ついでホウ酸40g/l、ヨウ化カリウム30g/lの組成の水溶液に浸漬するとともに、同時に6.0倍に一軸延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行い、厚み20μmのPVAフィルムを作製した。つぎに、これを水洗し、風乾で24時間乾燥を行って偏光フィルムを得た。つぎに、この偏光フィルムの両面に、PVA系接着剤を介して、寸法変化0.20%のTACフィルムを積層して偏光板を得た。そして、粘着剤として、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AAc)とを主成分とし〔BA:AAc=90:10(重量比)〕、イソシアネート化合物で架橋したものを準備し、この粘着剤を上記偏光板の片面に塗布して厚み25μmの粘着剤層を形成し、粘着剤層付偏光板(以下「光学積層体」という)を得た。
【0045】
なお、上記TACフィルムの寸法変化は、つぎのようにして求められる。
【0046】
〔TACフィルムの寸法変化〕
TACフィルムを25×180mm(長辺、MD)の大きさに切り出し、これを100℃で150時間放置した後、TACフィルムのMD方向(縦方向)の寸法変化率を測定した。
【0047】
【実施例2〜7、比較例1〜5】
ホウ酸とともに用いるヨウ化カリウムの濃度(KI濃度)、および延伸後の膜厚を、後記の表1および表2に示すようにそれぞれ変えた。また、実施例7では、TACフィルムの寸法変化を0.18%とした。それ以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0048】
このようにして得られた実施例1〜7品および比較例1〜5品の光学積層体を用いて、下記の基準に従い、光透過率の比(T60/T0)および液晶表示素子の視認性について比較評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示す。
【0049】
〔光透過率の比(T60/T0)〕
まず、上記光学積層体を2枚準備するとともに、ガラス板(厚み1.1mm、透過率99.5%)を1枚準備した。つぎに、上記ガラス板の両面に、上記光積層体の粘着剤層側をそれぞれ貼着して積層体を作製した。この場合、2枚の光学積層体の偏光板の光軸が互いに直交するよう貼着した。そして、先に述べたように、大塚電子社製の光学測定装置RETS2000を用いて、上記積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)をそれぞれ測定し、T60/T0を求めた。
【0050】
〔液晶表示素子の視認性〕
液晶表示素子(10.4インチサイズ、TFTタイプ、画素数VGA)の両面に、上記光学積層体を貼着して液晶表示装置を作製し、これを垂直方向および上下左右方向から見た時の液晶表示素子の見やすさを10人のパネラーにより評価した。その結果は、良好と判断した人が5人以上の場合を○、良好と判断した人が5人未満の場合を×として表示した。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
上記表1および表2の結果から、実施例1〜7品の光学積層体を用いた場合には、比較例1〜5品の光学積層体を用いた場合に比べて、液晶表示素子の視認性が優れていることがわかる。このことから、光透過率の比(T60/T0)が10000以下であれば、液晶表示素子の視認性が優れることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明の偏光板は、偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤層を介して保護フィルムが貼着された偏光板であって、上記偏光フィルムが、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に一軸延伸してなるものであり、かつ、この偏光板を2枚用い、これをガラス板の両面に、上記偏光板の光軸が互いに直交するよう貼着して光透過率を測定したとき、その測定値が上記特性(X)を満たすものである。このため、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性が向上する。したがって、この偏光板を貼着して得られる液晶表示装置は、液晶表示素子の垂直方向以外の上下左右方向から見た際の視認性が向上し、その結果、視野角依存性の問題を改善できる。
【0055】
そして、上記偏光フィルムが、ヨウ素吸着ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化カリウム濃度が特定の溶液で処理するとともに、特定の厚みに延伸することにより、上記特性(X)を満たす偏光板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光板の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の液晶表示装置の一実施例を示す断面図である。
【図4】カラーSTN液晶表示モジュールを示す一部切欠断面斜視図である。
【符号の説明】
1 偏光フィルム
2 接着剤層
3 保護フィルム
4 偏光板
Claims (3)
- ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを、濃度25〜70g/lのヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に一軸延伸してなる偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤層を介して保護フィルムが貼着された偏光板であって、この偏光板を2枚用い、これを厚み1.1mm、透過率99.5%のガラス板の両面に、上記偏光板の光軸が互いに直交するよう貼着して光透過率を測定したとき、その測定値が下記の特性(X)を満たすことを特徴とする偏光板。
(X)ガラス板の両面に上記偏光板を貼着してなる積層体の垂直方向の光透過率(T0)と、上記積層体の法線から60°傾斜方向の光透過率(T60)との比(T60/T0)が、10000以下。 - 上記偏光フィルムが、ヨウ素を吸着させたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ化カリウムとホウ酸とを含有する溶液で処理するとともに、同時に厚み20μm以下に一軸延伸してなるものである請求項1記載の偏光板。
- 液晶セルの少なくとも片面に、粘着剤層を介して請求項1または2記載の偏光板が貼着された液晶表示装置。
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Cited By (1)
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