JP4378191B2 - エンジン及びその点火時期制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃焼室に形成された混合気を複数の点火手段により多点点火するように構成され、前記複数の点火手段の点火時期を制御する点火時期制御手段を備えたエンジンに関する。
従来の火花点火式エンジンとして、混合気に対する点火性能を向上させるために、一の燃焼室に対して複数の点火プラグ(点火手段)を設け、燃焼室に形成された混合気を多点点火する所謂多点点火式エンジンが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
火花点火エンジンにおいて、エンジン回転数などの運転状態に基づいて点火プラグの点火時期を制御する点火時期制御手段を備えたものがあり、例えば、混合気の当量比又はスロットルバルブの開度調整によりエンジン回転数を変化させる場合において、この点火時期制御手段は、エンジン回転数の増加に応じて点火プラグの点火時期を進角側に移行させて、燃焼室においてエンジン回転数に合わせて変化する膨張速度に合わせて混合気を燃焼させるように構成されている。
特開平5−141336号公報
火花点火エンジンにおいて、混合気の当量比やスロットルバルブの開度調整によりエンジン回転数を変化させる場合に、混合気の当量比やスロットルバルブの開度を調整した瞬間には、一時的にNOxが増加したり燃焼が不安定となって失火が発生するという問題が発生する場合があり、このときに点火プラグの点火時期を移行させると、その問題が顕著となる場合がある。
例えば、混合気の当量比やスロットルバルブの開度を増加した瞬間には、エンジン回転数が充分に増加していないにも拘わらず、燃焼室への燃料供給量が増加するので、一時的に燃焼温度及び圧力が過剰上昇してNOxが増加する場合がある。そして、このようにエンジン回転数を増加させる際に、点火プラグの点火時期を進角化させることにより、燃焼温度及び圧力の上昇が一層顕著になって、一層NOxが増加してしまうことがある。
また、混合気の当量比やスロットルバルブの開度を減少した瞬間には、エンジン回転数が充分に減少していないにも拘わらず、燃焼室への燃料供給量が低下するので、一時的に燃焼温度及び圧力が過剰低下して安定した燃焼状態を得ることができなくなり、失火等が発生する場合がある。そして、このようにエンジン回転数を減少させる際に、点火プラグの点火時期を遅角化させることにより、燃焼温度及び圧力が低下が一層顕著になって、一層失火が発生してしまうことがある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、火花点火式エンジンにおいて、NOxの増加や失火の発生等の問題が顕著となることを抑制しながら、エンジン回転数の変更等に伴なう点火手段の点火時期の移行を実施することができる点火時期の制御技術を提供する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係るエンジンは、燃焼室に形成された混合気を複数の点火手段により多点点火するように構成され、前記複数の点火手段の点火時期を制御する点火時期制御手段を備えたエンジンであって、その第1特徴構成は、前記点火時期制御手段が、前記複数の点火手段の点火時期を移行する際に、前記複数の点火手段の内の一部である第1点火手段の点火時期を移行し、エンジン回転数が安定したと判定した後に、前記複数の点火手段の内の他部である第2点火手段の点火時期を移行するように構成されている点にある。
また、上本発明に係る点火時期制御方法は、燃焼室に形成された混合気を複数の点火手段により多点点火するエンジンの点火時期制御方法であって、
その特徴構成は、前記複数の点火手段の点火時期を移行する際に、前記複数の点火時期の内の一部である第1点火手段の点火時期を移行し、エンジン回転数が安定したと判定した後に、前記複数の点火時期の内の他部である第2点火手段の点火時期を移行する点にある。
即ち、上記第1特徴構成によれば、複数の点火手段の点火時期を移行させる際に、一部の第1点火手段の点火時期を移行し、エンジン回転数が安定してから、他部の第2点か手段の点火時期を移行するので、点火手段の点火時期の移行に伴って発生する燃焼温度及び圧力の変動によるNOxの増加や失火の発生等の問題を抑制するエンジンを実現することができる。
本発明に係るエンジンの第2特徴構成は、前記点火時期制御手段が、エンジン回転数が増加するほど前記複数の点火手段の点火時期を進角側に移行するように構成されている点にある。
上記第2特徴構成によれば、点火時期制御手段により、エンジン回転数が増加するほど点火手段の点火時期を進角側に移行させる形態で、エンジン回転数に基づいて点火手段の点火時期を移行させる場合において、エンジン回転数が目標となるエンジン回転数に到達して安定するまでは、第1点火手段の点火時期のみをエンジン回転数に合った時期に移行させて、点火手段の点火時期の移行によるNOxの増加や失火の発生等の問題を抑制し、そしてエンジン回転数が安定してから、第2点火手段の点火時期をエンジン回転数に合った時期に移行させることで、燃焼室においてエンジン回転数に合わせて変化する膨張速度に合わせて混合気を燃焼させることができる。
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すエンジン100には、シリンダ5の内面とピストン3の頂面とで規定される燃焼室2と、燃焼室2に吸気弁7を介して接続された吸気路12と、燃焼室2に排気弁8を介して接続された排気路13とが設けられている。
また、エンジン100の燃焼室2には、燃焼室2に吸気された混合気を火花点火可能な2つの点火プラグ26(点火手段の一例)がシリンダ5軸心を中心に対象配置されており、夫々の点火プラグ26は、点火時期可変機構27により、点火時期の調整を伴って、1サイクルにおける所定の点火時期に電圧が印加されて燃焼室2に火花発生するように構成されている。
ピストン3は連結棒4に揺動自在に連結されており、ピストン3の往復動は連結棒4によって1つのクランク軸9の回転運動として得られ、このような構成は通常のエンジンと変わるところが無い。
吸気路12を流通する空気aは、適宜過給機等により過給された後に、ミキサ18において天然ガス系都市ガスの燃料gが供給されて混合気となり、燃焼室2に吸気される。
そして、エンジン100は、燃焼室2に吸気された混合気を、ピストン3の上昇により圧縮した後に、点火プラグ26により火花点火して燃焼させる所謂火花点火式エンジンとして構成されている。
エンジン100には、コンピュータからなるエンジン・コントロール・ユニット(以下、ECUと呼ぶ)30が設けられ、ECU30は、エンジン100における各種制御を行うように構成されている。
また、ミキサ18に供給される燃料gは、燃料量調整弁19により流量調整可能に構成されて、ECU30により、例えば、排気路13に設けられ、排ガスeの酸素濃度を検出可能な酸素センサ25の検出結果に基づいて、燃料gの供給量を調整することで、燃焼室2における混合気の当量比を所定の目標当量比に調整可能に構成されている。
エンジン100には、クランク軸9の回転数即ちエンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段として、クランク軸9の角度を検出することでエンジン回転数を検出可能なクランク角センサ10が設けられている。
吸気路12のミキサ18の上流側には、吸気路12の流路断面積を調整可能なスロットルバルブ15が設けられており、ECU30は、要求されるエンジン出力に応じてスロットルバルブ15を作動させて、燃焼室2への混合気の吸気量を調整して、エンジン出力を調整するように構成されている。
また、エンジン出力を調整すると、クランク軸9にかかるトルクが一定である場合には、クランク角センサ10の検出結果から認識したクランク軸9の回転数であるエンジン回転数が変更される。
そして、ECU30は、燃焼室2においてエンジン回転数に合わせて変化する膨張速度に合わせて混合気を燃焼させるために、エンジン回転数が増加するほど点火プラグ26の点火時期を遅角側に移行させる形態で、点火プラグ26の点火時期を制御する点火時期制御手段として機能するように構成されている。
更に、点火時期制御手段として機能するECU30は、上記のように複数の点火プラグ26の点火時期を移行する際に、複数の点火手段の内の一部である第1点火プラグ26a(第1点火手段)の点火時期を移行し、クランク角センサ10の検出結果から認識されるエンジン回転数の安定度が所定の閾値以上と高くなった後に、複数の点火手段26の内の他部である第2点火プラグ26b(第2点火手段)の点火時期を移行するように構成されている。
尚、エンジン回転数の安定度は、所定の単位時間における目標エンジン回転数に対する実際のエンジン回転数の分散として求めることができ、安定度が予め決定しておいた閾値未満と低いときにエンジン回転数が不安定であり、この安定度が上記閾値以上と高いときにエンジン回転数が安定していると判断できる。
例えば、点火時期制御手段として機能するECU30は、エンジン回転数の増加に応じて点火プラグ26の点火時期を進角側に移行する際に、先ず、両方の点火プラグ26の点火時期ではなく、第1点火プラグ26aの点火時期のみを進角側に移行する。
即ち、エンジン回転数が充分に増加されておらず不安定なときには、第1点火プラグ26aの点火時期のみを進角側に移行することで、エンジン回転数が不安定なことにより一時的に発生する燃焼速度及び圧力上昇によるNOx増加を抑制することができる。
そして、エンジン回転数が充分に増加されて安定した際には、残りの第2点火プラグ26bの点火時期を進角側に移行することで、燃焼室2においてエンジン回転数の増加に合わせて増加した膨張速度に合わせて混合気を燃焼させて高効率な運転を行うことができる。
逆に、点火時期制御手段として機能するECU30は、エンジン回転数の減少に応じて点火プラグ26の点火時期を遅角側に移行する際に、先ず、両方の点火プラグ26の点火時期ではなく、第1点火プラグ26aの点火時期のみを遅角側に移行する。
即ち、エンジン回転数が充分に減少されておらず不安定なときには、第1点火プラグ26aの点火時期のみを遅角側に移行することで、エンジン回転数が不安定なことにより一時的に発生する燃焼速度及び圧力減少による失火の発生を抑制することができる。
そして、エンジン回転数が充分に減少されて安定した際には、残りの第2点火プラグ26bの点火時期を遅角側に移行することで、燃焼室2においてエンジン回転数の減少に合わせて減少した膨張速度に合わせて混合気を燃焼させ高効率な運転を行うことができる。
尚、上記の実施の形態では、点火時期制御手段として機能するECU30は、エンジン回転数が増加するほど複数の点火プラグ26の点火時期を進角側に移行する形態で点火プラグ26の点火時期を制御するように構成したが、エンジン回転数ではなく、エンジン負荷等の運転状態に基づいて点火プラグ26の点火時期を制御するように構成しても構わない。
また、上記の実施形態では、燃料gとして天然ガス系都市ガスを用いたが、燃料として、天然ガス以外の燃料等を用いることができる。
本発明に係るエンジンの実施の形態を示す概略構成図
符号の説明
2:燃焼室
26:点火プラグ(点火手段)
26a:第1点火プラグ(第1点火手段)
26b:第2点火プラグ(第2点火手段)
27:点火時期可変機構
30:エンジン・コントロール・ユニット(点火時期制御手段)
100:エンジン
a:空気
g:燃料
e:排ガス

Claims (3)

  1. 燃焼室に形成された混合気を複数の点火手段により多点点火するように構成され、前記複数の点火手段の点火時期を制御する点火時期制御手段を備えたエンジンであって、
    前記点火時期制御手段が、前記複数の点火手段の点火時期を移行する際に、前記複数の点火手段の内の一部である第1点火手段の点火時期を移行し、エンジン回転数が安定したと判定した後に、前記複数の点火手段の内の他部である第2点火手段の点火時期を移行するように構成されているエンジン。
  2. 前記点火時期制御手段が、エンジン回転数が増加するほど前記複数の点火手段の点火時期を進角側に移行するように構成されている請求項1に記載のエンジン。
  3. 燃焼室に形成された混合気を複数の点火手段により多点点火するエンジンの点火時期制御方法であって、
    前記複数の点火手段の点火時期を移行する際に、前記複数の点火時期の内の一部である第1点火手段の点火時期を移行し、エンジン回転数が安定したと判定した後に、前記複数の点火時期の内の他部である第2点火手段の点火時期を移行する点火時期制御方法。
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