以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
図1は、本発明を適用する内燃機関およびその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、複数の気筒を備えた4ストローク・サイクルの火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)である。なお、図1では、複数の気筒のうち1気筒のみが示されている。
内燃機関1の各気筒2には、ピストン3が摺動自在に内装されている。ピストン3は、コネクティングロッド4を介して図示しない出力軸(クランクシャフト)と連結されている。また、気筒2の内部は、吸気ポート7及び排気ポート8と連通している。気筒2内における吸気ポート7の開口端は、吸気弁9により開閉される。気筒2内における排気ポート8の開口端は、排気弁10により開閉される。吸気弁9と排気弁10は、図示しない吸気カムと排気カムとにより各々開閉駆動される。
更に、各気筒2には、筒内に燃料を噴射するための燃料噴射弁6が、気筒2内に形成される燃焼室の中央頂部に配置されるとともに、燃料噴射弁6から噴射された燃料に対して点火可能な点火プラグ5が内燃機関1のシリンダヘッド側に配置されている。具体的には、燃料噴射弁6は、図2に示すように概ね放射状に16方向に燃料を噴射可能となるように噴孔6aを有している。そして、点火プラグ5の点火可能領域である電極間の領域5aに対して、噴孔6aから噴射された燃料噴霧の少なくとも一つが通過するように、且つ、その通過した噴霧に対して領域5aにおける電極間で生じた火花によって直接点火できるように、燃料噴射弁6に対する点火プラグ5の相対位置決定されている。なお、点火プラグ5は、更に吸気弁9および排気弁10の動作に干渉しないように、2つの吸気弁9の間に位置している。ただし、本発明に係る点火装置の位置は、2つの吸気弁の間に限られるものではない。
このように構成された点火プラグ5と燃料噴射弁6は、スプレーガイド燃焼を実現可能とする。すなわち、燃料噴射弁6からの噴射燃料に対して直接点火できるように配置される点火プラグ5と、該燃料噴射弁6は、内燃機関1の吸気弁9の開弁時期やピストン3の位置にかかわらず任意の時期に、領域5aを通過する噴射燃料に対する点火を可能とする。なお、燃料噴射弁からの噴射燃料に対して点火プラグにより直接点火する他の燃焼方式として、従来、エアガイド燃焼やウォールガイド燃焼が知られている。エアガイド燃焼では、燃料噴射弁からの噴射燃料を、吸気弁の開弁により燃焼室内に流れ込んだ空気流に乗せて点火プラグ近傍に運び、該点火プラグによって点火する。ウォールガイド燃焼では、ピストンの頂部に形成されたキャビティの形状を利用して点火プラグ近傍に噴射燃料を運び、該点火プラグによって点火する。ただし、これらのエアガイド燃焼やウォールガイド燃焼では、吸気弁の開弁時期やピストン位置が所定の状態とならなければ燃料噴射や点火を行うことが困難となる。そのため、本実施例に係るスプレーガイド燃焼は、これらのエアガイド燃焼やウォールガイド燃焼と比べて、非常に自由度の高い燃料噴射及び点火時期制御が可能となる。また、本実施例では、図2に示すように、噴孔6aから噴射された燃料噴霧の一つと点火プラグ5の電極とが重なるような構成とした。しかしながら、点火プ
ラグ5の点火可能領域は、その電極間の領域5aに限られるものではなく、該電極近傍の領域も含まれる。したがって、噴孔6aから噴射された燃料噴霧と点火プラグ5の電極とが必ずしも重なる必要はない。つまり、点火プラグ5aは、必ずしも、噴孔6aからの燃料の噴射方向上(噴霧の中心軸上)に配置される必要はない。噴孔6aから噴射された燃料噴霧が点火プラグ5の電極からずれていても、該燃料噴霧が点火可能領域を通過すれば、点火プラグ5の電極間で生じる火花を起点とするスプレーガイド燃焼を実現することは可能である。つまり、本実施例においては、燃料噴射弁6に対する点火プラグ5の相対位置はスプレーガイド燃焼を実現可能な位置であればよく、点火プラグ5が、噴孔6aからの燃料の噴射方向上(噴霧の中心軸上)からずれた位置に配置されていてもよい。
ここで図1に戻ると、吸気ポート7は、吸気通路70と連通している。また、排気ポート8は、排気通路80と連通している。吸気通路70には、排気のエネルギを用いて吸気を過給するターボチャージャ30のコンプレッサ30aが設けられている。排気通路80には、ターボチャージャ30のタービン30bが設けられている。なお、本実施例においては、ターボチャージャ30が、本発明における過給機に相当する。ただし、本発明に係る過給機はターボチャージャに限られるものではなく、例えば、電動コンプレッサを用いた過給機またはスーパーチャージャであってもよい。コンプレッサ30aより上流の吸気通路70には、エアフローメータ72が配置されている。コンプレッサ30aより下流の吸気通路70には、スロットル弁71が配置されている。さらに、スロットル弁71より下流の吸気通路70には、圧力センサ73が配置されている。この圧力センサ73は、ターボチャージャ30によって過給された吸気の圧力(すなわち、過給圧)を検出する。一方、タービン30bより下流の排気通路80には、内燃機関1から排出される排気を浄化するための排気浄化触媒81が配置されている。なお、後述するように、内燃機関1から排出される排気の空燃比は、ストイキ空燃比よりも高いリーン空燃比である。そのため、排気浄化触媒81としては、リーン空燃比の排気中のNOx浄化が可能な選択還元型のNOx触媒や排気中の粒子状物質(PM)を捕集可能なフィルタを採用することができる。
また、内燃機関1には電子制御ユニット(ECU)20が併設されている。このECU20は内燃機関1の運転状態や排気浄化装置等を制御するユニットである。ECU20には、エアフローメータ72、圧力センサ73、クランクポジションセンサ21、およびアクセルポジションセンサ22が電気的に接続され、各センサの検出値がECU20に入力される。したがって、ECU20は、エアフローメータ72によって検出される吸入空気量、クランクポジションセンサ21の検出値に基づいて算出される機関回転速度、およびアクセルポジションセンサ22の検出値に基づいて算出される機関負荷等の内燃機関1の運転状態を把握可能である。また、ECU20は、圧力センサ73によって検出される吸気の圧力を把握可能である。また、ECU20には、燃料噴射弁6、点火プラグ5、およびスロットル弁71等が電気的に接続され、これらの各要素がECU20によって制御される。
[基本燃焼制御]
上記のように構成される内燃機関1において実行される基本的な燃焼制御である基本燃焼制御について、図3に基づいて説明する。図3は、図の左側から右側に進む時系列において、内燃機関1で行われる燃焼制御に関する燃料噴射及び点火の流れ(図3(a)の上段を参照)と、その燃料噴射及び点火により燃焼室で生じると想定される燃焼に関する事象の変遷(図3(a)の下段を参照)を模式的に示したものである。また、図3(b)には、図3(a)に示す燃料噴射である第1噴射と第2噴射、および点火の時間的相関が示されている。なお、図3に示す形態は、あくまでも本実施例に係る基本燃焼制御を説明するために模式的に示したものであり、本発明をこの形態に限定して解釈すべきではない。
本実施例に係る基本燃焼制御では、一燃焼サイクルにおいて、燃料噴射弁6によって第
1噴射と第2噴射とが実行される。第1噴射は圧縮行程中に実行される燃料噴射である。第2噴射は、第1噴射よりも後の時期であって圧縮行程上死点(TDC)より前の時期に実行が開始される燃料噴射である。なお、第2噴射は、TDCより前の時期に実行が開始されるが、TDC以降までその実行が継続されてもよい。そして、図3(b)に示すように、第1噴射の噴射開始時期(以下、単に「第1噴射時期」と称する)をTpとし、第2噴射の噴射開始時期(以下、単に「第2噴射時期」と称する)をTmとする。また、第1噴射時期と第2噴射時期との間隔(Tm−Tp)を第1噴射インターバルDi1と定義する。また、第1噴射による燃焼は上述したスプレーガイド燃焼として実行される。つまり、第1噴射によって噴射された燃料(以下、「第1噴射燃料」と称する)によって形成されるプレ噴霧に対して点火プラグ5による点火が行われる。この点火時期を、図3(b)に示すようにTsとし、第1噴射の実行が開始されてから点火が行われるまでの間隔(Ts−Tp)を点火インターバルDsと定義する。
次に、本発明に係る基本燃焼制御の流れについて説明する。
(1)第1噴射
基本燃焼制御では、一燃焼サイクル中において、先ず、圧縮行程中の第1噴射時期Tpに第1噴射が行われる。なお、第1噴射時期Tpは、後述する第2噴射時期Tmとの相関に基づいて決定される。第1噴射が実行されることで、図2に示すように、燃料噴射弁6から噴射された第1噴射燃料のプレ噴霧は、燃焼室内において点火プラグ5の点火可能領域5aを通過する。このように第1噴射の実行が開始された直後においては、第1噴射燃料のプレ噴霧は燃焼室内に広く拡散はせずに、該噴霧の貫徹力によりその先端部において周囲の空気を巻き込みながら燃焼室内を進んでいく。そのため、第1噴射燃料のプレ噴霧によって燃焼室内において成層混合気が形成される。
(2)第1噴射燃料への点火
そして、上記のように成層化された第1噴射燃料のプレ噴霧に対して、第1噴射時期Tpから所定の点火インターバルDsが経過した点火時期Tsに、点火プラグ5による点火が行われる。上記の通り、第1噴射燃料は成層化されているため、該第1噴射燃料量が少量であっても点火プラグ5周囲の局所的な空燃比は、当該点火による燃焼が可能な空燃比となっている。この点火により、第1噴射燃料によるスプレーガイド燃焼が行われることになる。換言すれば、スプレーガイド燃焼が可能となるように点火インターバルDsが設定されている。そして、ピストン3の圧縮作用による圧力上昇に加えて、このスプレーガイド燃焼が行われることで、燃焼室内の更なる温度上昇が得られることになる。ただし、第1噴射燃料のうち、このスプレーガイド燃焼によって燃焼する燃料は一部であり、そのうちの多くは点火プラグ5の点火による燃焼には供されずに該点火以後も「燃え残り燃料」として燃焼室内に存在することになる。これは、第1噴射燃料によって形成された成層混合気における点火プラグ5の電極間から比較的離れた部分においては、その空燃比が高いために火炎が伝播できなくなるためである。ただし、当該燃え残り燃料は、燃焼室内で第1噴射燃料の一部が燃焼することで高温雰囲気に晒されることになる。そのため、燃え残り燃料の少なくとも一部は燃焼には至らない状況下での低温酸化反応により燃焼性が高められた物性に改質された状態となることが期待される。ただし、本発明における第1噴射燃料の燃え残りは、第1噴射燃料の一部が点火プラグ5の点火による燃焼に供されずに該点火以後も燃焼室内に未燃の状態で残った燃料を指すものであり、その燃え残った燃料が特定の物性を示す状態になっていることが必ずしも要求されるものではない。
(3)第2噴射
次に、第1噴射時期から所定の第1噴射インターバルDi1が経過した圧縮行程上死点前の第2噴射時期Tm(点火プラグ5による点火時期TsからDi1−Dsの時間が経過した時期Tm)に、燃料噴射弁6による第2噴射の実行が開始される。なお、内燃機関1においては、後述するように第2噴射燃料は自着火および拡散燃焼に供され、機関出力に
寄与することになる。そのため、第2噴射時期Tmは、機関負荷等によって決定される量の第2噴射燃料の燃焼によって得られる機関出力が概ね最大となる時期(以下、「適正噴射時期」という)に設定される。ただし、第2噴射燃料の燃焼は、第1噴射燃料のプレ噴霧に対する点火によって生じた火炎を火種として開始される。つまり、第2噴射時期Tmが適正噴射時期に設定されるとともに、プレ噴霧への点火によって生じた火炎を起点として第2噴射燃料の燃焼が開始されるように第1噴射インターバルDi1が設定されている。第2噴射時期Tmと第1噴射インターバルDi1とがこのように設定されることで、第1噴射時期Tpは必然的に決まることになる。そして、第2噴射燃料の燃焼が開始されると燃焼室内の温度が更に上昇する。その結果、第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料とがその温度上昇場において自着火し、さらにはこれらの燃料が拡散燃焼に供されることになる。このとき、上記のように第1噴射燃料の燃え残りの燃焼性が高められている場合には、第2噴射の実行開始後の燃料の自着火がより促進される。
このように、本実施例に係る基本燃焼制御では、第1噴射、点火、および第2噴射によって上述のような一連の燃焼が行われることになる。なお、本明細書において、このように第1噴射燃料のプレ噴霧への点火によって生じる火炎を起点とした第2噴射燃料の燃焼開始と、それに続く第1噴射燃料のうちの燃え残り燃料と第2噴射燃料との自着火および拡散燃焼とが可能となる第1噴射と第2噴射との相関を、「第1−第2噴射相関」と称する。つまり、本実施例に係る基本燃焼制御では、第1噴射および第1噴射燃料に対する点火に対して第1−第2噴射相関を有する第2噴射が行われる。
図4は、本実施例に係る基本燃焼制御が行われたときの燃焼室での熱発生率の推移を示す図である。なお、図4においては、内燃機関1の機関回転速度が2000rpmであるときの、4つの異なる制御形態L1〜L4に対応する熱発生率の推移が示されている。これらの制御形態L1〜L4においては、第1噴射時期Tp、第1噴射燃料量(すなわち、第1噴射の実行期間)、第2噴射時期Tm、点火時期Tsは同一となっているが、第2噴射燃料量(すなわち、第2噴射の実行期間)が制御形態ごとに異なっている。詳細には、第2噴射燃料量は、L1>L2>L3>L4となっている。つまり、図4には、同一の第1−第2噴射相関が成立していることを前提条件としたときの第2噴射燃料量の増減に応じた熱発生率の推移の変化が示されている。
ここで、図4中、点線で囲まれたZ1の部分で、熱発生率の一次ピークが表れている。この一次ピークは、第1噴射燃料が点火によって燃焼することで発生した熱(つまり、スプレーガイド燃焼によって発生した熱)を示している。この熱発生率の一次ピークが表れる時期においては、第2噴射はまだ行われておらず、燃焼室内には第1噴射燃料に対する点火によって生じた火炎と、該点火では燃焼していない第1噴射燃料である燃え残り燃料が存在していることになる。ここで、図5に基づいて第1噴射燃料の燃え残りについて説明する。図5は、基本燃焼制御での第1噴射における、第1噴射燃料量と、第1噴射燃料の燃焼効率(以下、「第1燃焼効率」と称する)との相関を、3つの燃焼条件L5〜L7のそれぞれについて示した図である。具体的には、L5、L6、L7の順で、燃焼条件である第1噴射時期Tpと点火時期Tsとが、両時期のインターバルである点火インターバルDsを一定とした状態で進角されている。なお、図5においては、第2噴射は行われずに、第1噴射及び点火のみ(つまり、スプレーガイド燃焼のみ)が行われた場合の上記相関が示されている。
第1燃焼効率は、第1噴射燃料の燃え残り率と以下の式1に示す関連性を有する。つまり、第1燃焼効率が高くなるほど第1噴射燃料の燃え残り率は低くなる。
第1噴射燃料の燃え残り率 = 1− 第1燃焼効率 ・・・(式1)
ここで、図5からは、第1噴射燃料量が一定の場合に、第1噴射時期Tpおよび点火時期Tsを進角させると(すなわち、第1噴射インターバルDi1を大きくすると)、第1
燃焼効率は下がり、故に燃え残り率は高くなる傾向が見出せる。また、第1噴射燃料量を変化させた場合であっても、第1噴射時期Tp及び点火時期Tsの進角量を調整することで、第1燃焼効率と燃え残り率とを一定に制御することもできる。このように本実施例に係る基本燃焼制御では、第1噴射燃料量と、第1噴射時期Tpおよび点火時期Ts(すなわち、第1噴射インターバルDi1)とを調整することで、第1−第2噴射相関を形成する要素の一つである第1噴射燃料の燃え残り率を制御することができる。
ここで、図4に戻ると、熱発生率の一次ピークが生じる時期よりも後であって圧縮行程上死点前の時期Tmにおいて第2噴射の実行が開始される。このとき、第2噴射燃料は、上述したように、先ずは、第1噴射燃料のプレ噴霧に対する点火によって生じた火炎を火種として燃焼し始め、その後、第1噴射燃料の燃え残りとともに自着火し、さらに拡散燃焼に供される。その結果、圧縮行程上死点を過ぎた時期に熱発生率の最大ピークである二次ピークが発生する。ここで、図4では、第2噴射燃料量の増加にしたがって(すなわち、第2噴射期間が長くなるのにしたがって)、熱発生率の二次ピークの値が大きくなるとともに、二次ピークの発生時期が遅くなっている。このことは、第2噴射燃料量の増加にしたがって第2噴射燃料の燃焼期間が長くなっていることを意味する。このことから、第2噴射燃料および第1噴射燃料の燃え残りは、拡散燃焼もしくは実質的に拡散燃焼に同一視できる燃焼に供されているものと推察することができる。
更に、図6に基づいて、本実施例に係る基本燃焼制御において発生する燃料の自着火について説明する。図6は、本実施例に係る基本燃焼制御において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量(第1噴射燃料量と第2噴射燃料量との合計)を一定としたまま第1噴射燃料量と第2噴射燃料量との比率を変更した2つの形態L8,L9それぞれの、燃焼室内での熱発生比率の推移を示している。なお、図6においては、内燃機関1の機関回転速度が2000rpmとされる。また、L9の形態の方がL8の形態に比べて第1噴射燃料量の比率が高くなっている。すなわち、L9の形態の方がL8の形態に比べて、第1噴射燃料量が多く、その結果、第1噴射燃料の燃え残り量も多くなっている。この場合、図6に示すように、L9の形態では、L8の形態に比べて、圧縮行程上死点後の熱発生率の二次ピーク値が大きくなっている。さらに、L9の形態では、L8の形態に比べて、熱発生率の二次ピーク値からの立ち下り速度(二次ピーク以後のグラフの傾き)が大きくなっている。これらは、第2噴射開始後の第1噴射燃料の燃え残りおよび第2噴射燃料の燃焼において、L9の形態では、L8の形態に比べて、自着火による燃焼がより促進されている(すなわち、自着火によって燃焼する燃料の割合が高くなり、拡散燃焼によって燃焼する燃料の割合が低くなっている)ことを意味するものと推察される。このことから、第1噴射燃料の燃え残りが第2噴射開始後の燃料の自着火の促進に寄与していると考えられる。また、本実施に係る基本燃焼制御において、第1噴射燃料量以外に第1噴射時期Tpや点火時期Tsを調整することで第1噴射燃料の燃え残り量を多くした場合も第2噴射開始後の燃料の自着火が促進されていることを、本発明の発明者は確認した。つまり、本実施例に係る基本燃焼制御においては、第1噴射や点火に関するパラメータを調整して第1噴射燃料の燃え残り率を高めることで、第2噴射実行開始後の第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との燃焼において自着火を促進させることが可能である。
以上説明したように、本実施例に係る基本燃焼制御では、第1噴射と点火プラグ5での点火とによるスプレーガイド燃焼ののちに第2噴射が実行されることで燃料の自着火および拡散燃焼を生じさせる。そのため、当該基本燃焼制御による燃焼はいわゆるディーゼル燃焼に類似し、又は実質的に同一視できると考えられる。したがって、燃焼室内の混合気の空燃比を極めて高いリーン空燃比(20〜70程度)とすることができる。また、このようなリーン空燃比での燃焼を実現するため、本実施例に係る燃焼制御では、従来のガソリンエンジンの燃焼制御(均質ストイキ制御)に比べてスロットル弁71の開度が大きくされる。そのため、内燃機関1でのポンプ損失を小さくすることができる。さらに、機関
出力に寄与する燃焼が自着火および拡散燃焼により行われることで内燃機関1での冷却損失も従来の均質ストイキ制御時と比べて小さくすることができる。したがって、本実施例に係る基本燃焼制御によれば、従来のガソリンエンジンの燃焼制御では実現され得ない高い熱効率を達成することができる。
(第1−第2噴射相関についての説明)
ここで、上述したような第1−第2噴射相関を成立させるための技術的要素である、第1噴射燃料量および第2噴射燃料量と第1噴射インターバルとの詳細について説明する。
上記のように、第2噴射時期は内燃機関1の機関出力が概ね最大となる適正噴射時期に設定されている。そのため、第2噴射燃料量を増量することによって機関負荷の上昇にある程度までは対応することができる。しかしながら、第2噴射は、圧縮行程上死点近傍の燃焼室内の圧力が非常に高い時に行われるため、燃料噴射弁6から噴射された燃料噴霧のペネトレーションが小さくなる。つまり、第2噴射によって噴射された燃料噴霧は広範囲に拡散し難い。そのため、第2噴射燃料量があまりに増量されると、第2噴射燃料の噴霧の周囲に存在する酸素、即ち、第2噴射燃料の燃焼に供される酸素の量が燃料に対して不足した状態となり、その結果、スモークの発生量が増加する虞がある。また、本実施例に係る基本燃焼制御では、第2噴射開始後に燃料の自着火を生じさせる必要があるが、第2噴射燃料量が過剰に多くなると、該第2噴射燃料の気化潜熱によって燃焼室内の温度が低下し、燃焼が不安定となる虞もある。
一方、第1噴射は圧縮行程中の第1噴射時期Tpに行われる。そのため、第1噴射燃料が点火プラグ5による点火によって燃焼すると内燃機関1の機関出力を妨げるように作用するとも考えられる。しかしながら、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火による燃焼では、第2噴射燃料の燃焼のための火種となる火炎が形成されればよい。そのため、上記のように、第1噴射燃料において、点火による燃焼に供されるのは、そのうちの一部である。そのため、当該第1噴射燃料のスプレーガイド燃焼による機関出力を妨げるような作用は小さい。そして、点火プラグ5による点火による燃焼には供されない第1噴射燃料の燃え残りは第2噴射開始後において第2噴射燃料とともに自着火および拡散燃焼に供されるため機関出力に寄与することになる。そのため、第1噴射燃料量を増量するとともにその燃え残り率を上昇させることでも、機関負荷の上昇にある程度までは対応することができる。
また、上述したように、本実施例に係る基本燃焼制御における第1噴射時期と第2噴射時期とのインターバルである第1噴射インターバルDi1は、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火によって生じた火炎を起点として第2噴射燃料の燃焼が開始されるように設定されている。さらに、第1噴射インターバルDi1は、燃焼全体の熱効率、第1噴射燃料の燃え残り量、およびスモークの発生量を考慮して決定されている。
図7は、本実施例に係る基本燃焼制御における、第1噴射インターバルDi1と内燃機関1の熱効率との相関を示す図である。この図7は、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、及び点火インターバルDsを一定とした状態で第1噴射インターバルDi1を変更した場合の当該相関が示されている。
本実施例では、1つの燃料噴射弁6を用いて、第1噴射に続いて第2噴射が実行されることになる。そして、燃料噴射弁は、通常、その機械的な構造に起因して、複数回の噴射を実行する際に採用し得る噴射インターバルの最小値が存在する。そこで、燃料噴射弁6の機械的な構造を要因として実現が困難である第1噴射インターバルの領域(Di1がDi1aより短い領域)を、図7では機械限界領域R1と表している。また、第1噴射イン
ターバルDi1を大きくしていくと、第1噴射燃料への点火による燃焼過程のより終端側の時期に第2噴射が実行されることになる。この終端側の時期では、第1噴射燃料の燃焼
が収束しようとしている状態にあるため、第1噴射燃料の燃焼によって生じた火炎を起点とした第2噴射燃料の燃焼が開始されにくい状況にある。そのため、第1噴射インターバルDi1があまりに大きくなると、第2噴射燃料を燃焼させることができず失火が生じてしまう可能性がある。このような失火が生じてしまう可能性が高い第1噴射インターバルの領域(Di1がDi1bより大きい領域)を、図7では失火発生領域R2と表している。なお、第1噴射燃料量によって失火発生領域R2の下限値(図7に示すDi1b)は変化する。つまり、第1噴射燃料量が増量されると、該第1噴射燃料への点火による燃焼がより長い期間継続されることになる。そのため、第1噴射インターバルDi1をより大きくしても第2噴射燃料を燃焼させることが可能となる。
以上より、熱効率の観点からは、第1噴射インターバルDi1としては、図7において下限値がDi1aで定義され上限値がDi1bで定義される範囲Rd内で内燃機関1の熱
効率がピーク値を示す噴射インターバルDi1xを採用するのが好ましい。
また、上述したように、本実施例に係る基本燃焼制御においては、第2噴射燃料は、第1噴射燃料の燃焼によって生じた火炎を起点としてその燃焼が開始され、第1噴射燃料の燃え残りとともに自着火し拡散燃焼する。このとき、第2噴射燃料の燃焼初期においては、第1噴射燃料が燃焼することで生じた火炎や第1噴射燃料の燃え残りが燃焼室内に偏在しているため、第2噴射燃料と燃焼室内の空気との混合が十分に促進されにくい。そのため、第2噴射が実行された時に、燃焼室内において第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料とが重なり合った状況が生じると、これらが重なりあった部分では、当該部分の周囲に存在する酸素、即ち、当該部分に存在する燃料の燃焼に供される酸素の量が燃料に対して不足した状態となり、スモークが発生しやすくなる。また、スモークの発生は、良好な燃焼が阻害されていることを意味している。そのため、スモークの発生量が増加すると、熱効率が低下する傾向にある。このようなスモークの発生を抑制するためには、第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との重なりを抑制する必要がある。しかしながら、上記のように、内燃機関1の熱効率向上の観点から、第2噴射時期は圧縮行程上死点前の適正噴射時期に設定される。そのため、スモークの発生し易い状況である第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との重なりを抑制するためには、第2噴射時期を適正噴射時期としつつ、第1噴射インターバルDi1を調整する、つまり、第1噴射時期を調整するのが好ましい。
図8は、第1噴射燃料量と第2噴射燃料量との合計である総燃料噴射量は同一でそれぞれの比率が異なる3つの形態1〜3(図8(a)を参照)において、第2噴射時期Tmを圧縮上死点前の所定時期に固定し、第1噴射時期Tpを変化させた場合の、スモークの発生量と第1噴射時期Tpとの相関(図8(b)を参照)と、熱効率と第1噴射時期Tpとの相関(図8(c)を参照)とを示す図である。なお、図8に示す各形態において、点火インターバルDs(第1噴射時期Tpから点火時期Tsまでの時間)は全て同一に設定されている。また、各形態1〜3における第1噴射燃料量と第2噴射燃料量との関係は以下のとおりである。
形態1: 第1噴射燃料量=X1 第2噴射燃料量=Y1
形態2: 第1噴射燃料量=X2 第2噴射燃料量=Y2
形態3: 第1噴射燃料量=X3 第2噴射燃料量=Y3
但し、X1>X2>X3、且つ、Y1<Y2<Y3。
図8(b)において、形態1に対応するスモークの発生量の変動はL11で表され、形態2に対応するスモークの発生量の変動はL12で表され、形態3に対応するスモークの発生量の変動はL13で表される。また、図8(c)において、形態1に対応する熱効率の変動はL14で表され、形態2に対応する熱効率の変動はL15で表され、形態3に対応する熱効率の変動はL16で表される。なお、図8において、形態1に対応するスモー
ク及び熱効率の測定点は丸印で表され、形態2に対応するスモーク及び熱効率の測定点は三角印で表され、形態3に対応するスモーク及び熱効率の測定点は菱形印で表される。そして、各形態での、熱効率の変動において最高熱効率を示す第1噴射時期Tpに対応するスモーク及び熱効率の測定点は、黒塗りの丸印、三角印、菱形印で表されている。
ここで、上記黒塗りされた測定点に注目し形態3から形態2、形態1へ形態が変遷した場合について検討する。そうすると、第1噴射燃料量を増量するとともにその第1噴射時期Tpを進角させると、スモークの発生量を低減又は維持させながら(図8(b)を参照)、内燃機関1の熱効率を概ね最高の状態に維持することができることがわかる。すなわち、総燃料噴射量を同一とした場合、第1噴射燃料量が増量されると、第2噴射燃料量は必然的に減少することになる。しかしながら、第1噴射燃料量の増量に伴い第1噴射時期Tpを進角することで、第1噴射燃料の燃え残り量を増加させることができる(すなわち、燃え残り率を高めることができる)。これは、第1噴射時期が進角されると、燃焼室内の圧力がより低いときに第1噴射が実行されることとなり、その結果、第1噴射燃料のプレ噴霧のペネトレーションが相対的に大きくなるために、第1噴射燃料が燃焼室内においてより拡散し易くなるためと考えられる。つまり、燃焼室内において第1噴射燃料がより広く拡散することで、点火によって生じた火炎が伝播せずに燃え残る燃料が増加する。そして、より多くの燃え残り燃料が、第2噴射の実行開始後に第2噴射燃料とともに自着火および拡散燃焼に供されることとなる。そのため、第2噴射燃料量の減少に起因する出力低下を第1噴射燃料の燃え残りの燃焼によって補うことが可能となる。さらに、燃焼室内において第1噴射燃料がより広く拡散することで、第2噴射が実行された際の第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との重なりも抑制することができる。したがって、これらの燃料の重なりに起因するスモークの発生を抑制することもできる。つまり、第1噴射燃料量を増量するとともにその第1噴射時期Tpを進角させることで、内燃機関1の熱効率を良好に維持しつつ、スモークの発生量を抑制することが可能となる。
なお、図8(c)によれば、例えば、第1噴射時期Tpを形態3において最高熱効率となる時期Taに固定して、形態1〜3のそれぞれに沿った第1噴射を行ったと仮定した場合、第1噴射燃料量の増量とともに、スモークの発生量は増加し、また、内燃機関1の熱効率は低下していくことが理解できる。この点からも、上述した第1噴射燃料量の増量とともに第1噴射時期Tpを進角させる制御は、スモークの発生量の抑制及び熱効率向上の観点から有用な制御であることが理解できる。
[過渡運転制御]
次に、本実施例に係る、内燃機関の機関負荷を変化させる過渡運転時の制御について説明する。内燃機関1においては、ターボチャージャ30によって吸気が過給される。そして、内燃機関1の機関負荷が変化すると、それに応じて過給圧が変化する。ただし、内燃機関1の燃料噴射量が変化してから過給圧が変化するまでにはある程度の時間がかかる。つまり、過渡運転状態においては、燃料噴射量の変化に対して過給圧の変化が遅れる過給圧の応答遅れが生じる。この過給圧の応答遅れ期間においては、内燃機関1の燃焼室内において燃料量に対して空気量(酸素量)が不足する又は過剰となる状態が生じる虞がある。詳細には、内燃機関1の機関負荷を増加させる加速運転状態では、過給圧の応答遅れ期間中、実際の過給圧が目標機関負荷に対応する目標過給圧より低い状態となる。このような状態では、実際の過給圧が目標過給圧に達している状態のときに比べて内燃機関1の吸入空気量が少なくなる。そのため、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が不足する場合がある。一方、内燃機関1の機関負荷を減少させる減速運転状態では、過給圧の応答遅れ期間中、実際の過給圧が目標過給圧より高い状態となる。このような状態では、実際の過給圧が目標過給圧に達している状態のときに比べて内燃機関1の吸入空気量が多くなる。そのため、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が過剰となる場合がある。
過渡運転状態においては、上記のような過給圧の応答遅れが生じることから、上述したような基本燃焼制御を定常運転状態(すなわち、実際の過給圧が機関負荷に対応する過給圧となっている運転状態)のときと同様に実行すると、燃料量に対する酸素量の過不足に起因して燃焼状態が悪化する場合がある。詳細には、上述したように、第2噴射の燃料噴霧はペネトレーションが小さいため、第2噴射燃料は燃焼室内において拡散し難い。そのため、加速運転状態では、燃焼室内における第2噴射が実行されたときに燃料噴霧が形成される領域において、第2噴射燃料を十分に燃焼させるために必要な酸素量を確保することが困難となる場合がある。この場合、スモークの発生量の増加を招くことになる。また、上述したように、第1噴射が実行されると点火プラグ5の周囲にプレ噴霧が形成される。このとき、減速運転状態では、燃焼室内におけるプレ噴霧が形成される領域での空燃比が過剰に高くなる場合がある。この場合、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性が低下するため、第2噴射燃料の燃焼の起点となる火炎の形成が不安定となる。その結果、ディーゼル燃焼が不安定となる。そこで、本実施例では、内燃機関1の過渡運転状態における燃焼状態を改善するために、機関負荷を目標機関負荷に変化させる過渡運転状態において、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量に対する第1噴射燃料量の割合(第1噴射割合)および第2噴射燃料量の割合(第2噴射割合)を、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした場合の定常運転状態(すなわち、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷と同一の機関負荷となっており且つ実際の過給圧が目標機関負荷に対応した目標過給圧と同一の過給圧となっている運転状態)における第1噴射割合および第2噴射割合とは異なる値に制御する。なお、以下においては、定常運転状態における第1噴射割合を「基準第1噴射割合」と称す、定常運転状態における第2噴射割合を「基準第2噴射割合」と称する。
図9,10は、内燃機関1の過渡運転時における、機関負荷、一燃焼サイクルにおける総燃料噴射量、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、第1噴射時期、第2噴射時期、および過給圧の推移を示すタイムチャートである。図9は、加速運転時における各値の推移を示している。図10は、減速運転時における各値の推移を示している。また、図9,10の(a)において、線Lqは内燃機関1の機関負荷の推移を示している。図9,10の(b)において、線Laは一燃焼サイクル中における総燃料噴射量の推移を示しており、線Lpは第1噴射燃料量の推移を示しており、線Lmは第2噴射燃料量の推移を示している。図9,10の(c)において、線Ltpは第1噴射時期の推移を示しており、線Ltmは第2噴射時期の推移を示している。図9,10の(d)において、線Lpinは過給圧の推移を示している。
図9においては、T1で示す時期に内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetに増加する。つまり、時期T1から内燃機関1の運転状態が加速運転状態となる。そして、時期T1において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量が、目標機関負荷Qetに対応する目標総燃料噴射量Satに増量される。また、内燃機関1の運転状態が加速運転状態となることで過給圧が上昇するが、上述したように過給圧の変化には応答遅れが生じる。そのため、実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応した目標過給圧Pintまで上昇するのは図9においてT2で示す時期となる。つまり、図9(d)に示すように、時期T1から時期T2までの過給圧の応答遅れ期間dT1においては、実際の過給圧は目標過給圧Pintよりも低い状態となる。
ここで、目標総燃料噴射量Satに基づいて定められる第1噴射燃料量および第2噴射燃料量それぞれの基準値を「基準第1噴射燃料量」および「基準第2噴射燃料量」と称する。基準第1噴射燃料量および基準第2噴射燃料量は、内燃機関1の運転状態が定常運転状態である、すなわち実際の過給圧が機関負荷に対応する過給圧となっていることを前提として定められる値である。図9(b)においては、目標総燃料噴射量Satに対応する基準第1燃料噴射量をSpbで示し、目標総燃料噴射量Satに対応する基準第2燃料噴
射量をSmbで示す。
上述したとおり、時期T1から時期T2までの過給圧の応答遅れ期間dT1においては、吸気における実際の過給圧が目標過給圧Pintよりも低くなっている。そのため、この応答遅れ期間dT1中は、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が不足した状態となる。したがって、応答遅れ期間dT1中において、第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量Smbに制御すると、第2噴射燃料の噴霧が形成される領域において、第2噴射燃料を十分に燃焼させるために必要な酸素量を確保することが困難となり、スモークの発生量の増加を招くことになる。
そこで、本実施例では、図9(b)に示すように、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT1においては、目標総燃料噴射量Satに対する第1噴射燃料量および第2噴射燃料量を補正する。詳細には、過給圧の応答遅れ期間dT1において、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させるとともに第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量Smbよりも減少させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT1においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第1噴射割合を増加させるとともに第2噴射割合を減少させる(すなわち、第1噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の基準第1噴射割合よりも増加させ、第2噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の基準第2噴射割合よりも減少させる。)。これにより、過給圧の応答遅れ期間dT1において、第2噴射が実行された際に第2噴射燃料を燃焼させるために必要な酸素量が少なくなる。したがって、第2噴射燃料の燃焼に必要な酸素量が不足することを抑制することが可能となる。そのため、スモークの発生量を抑制することができる。
なお、第1噴射燃料量が増加すると、第1噴射燃料の燃え残り量が増加することになる。ただし、第1噴射燃料の燃え残りは、第2噴射時期には、燃焼室内における第2噴射燃料の噴霧が形成される領域よりも広範囲に拡散している。そのため、第2噴射時期以降における第1噴射燃料の燃え残りの燃焼には、燃焼室内のより広範囲に存在する酸素を用いることができる。したがって、燃焼室内の酸素量が少ない過給圧の応答遅れ期間dT1中であっても、第1噴射燃料の燃え残りを自着火または拡散燃焼によって燃焼させるために必要な量の酸素は十分に確保することができる。よって、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT1中に第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量より増加させても、スモークの発生量の増加は招き難い。
また、本実施例に係る基本燃焼制御においては、第2噴射時期が上述したような適正噴射時期となり、且つ、第1噴射時期と第2噴射時期とのインターバルが上述したような第1噴射インターバルとなるように、第1噴射時期および第2噴射時期が定められている。ここで、基準第1噴射燃料量および基準第2噴射燃料量に対応する、第1噴射時期および第2噴射時期それぞれの基準値を「基準第1噴射時期」および「基準第2噴射時期」と称する。基準第1噴射時期および基準第2噴射時期は、内燃機関の運転状態が定常運転状態である、すなわち実際の過給圧が機関負荷に対応する過給圧となっていることを前提として定められる値である。図9(c)において、基準第1噴射燃料量Spbに対応する基準第1燃料時期をTpbで示し、基準第2噴射燃料量Smbに対応する基準第2燃料時期をTmbで示す。
そして、本実施例では、図9(c)に示すように、第1噴射燃料量および第2噴射燃料量を補正する過給圧の応答遅れ期間dT1において、第1噴射時期および第2噴射時期も合わせて補正する。詳細には、過給圧の応答遅れ期間dT1においては、第1噴射燃料量
を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させるとともに、第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbよりも進角させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT1においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第1噴射時期を進角させる。このとき、第1噴射時期の基準第1噴射時期Tpbに対する進角量を、第1噴射燃料量の基準第1噴射燃料量Spbに対する増加量に応じた量とする。なお、第1噴射時期を進角させた場合は、点火インターバルを最適値に維持すべく、点火プラグ5による点火時期も進角させる。
上述したように、第1噴射時期を進角するほど、第1噴射燃料が燃焼室内においてより拡散し易くなるため、第1噴射燃料の燃え残り率が高くなる。そして、加速運転状態における応答遅れ期間dT1においては、吸気における実際の過給圧が目標過給圧Pintよりも低くなっているため、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときよりも筒内圧が低くなっている。そのため、第1噴射時期を進角させることによる当該効果がより顕著となる。したがって、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させる際に第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbより進角させることで、第1噴射燃料の燃え残り量をより増加させることができる。そして、上述したように、第2噴射時期以降における第1噴射燃料の燃え残りの燃焼には、燃焼室内のより広範囲に存在する酸素を用いることができる。したがって、第1噴射燃料の燃え残り量を増加させることで、燃焼室内の酸素量が少ない過給圧の応答遅れ期間dT1において、該燃焼室内の酸素をより効率的に燃料の燃焼に用いることが可能となる。そのため、スモークの発生量をより抑制することができる。さらに、第1噴射燃料の増加に伴う熱効率の低下も抑制することができる。
また、過給圧の応答遅れ期間dT1においては、第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量Smbよりも減少させるとともに、第2噴射時期を基準第2噴射時期Tmbよりも遅角させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT1においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第2噴射時期を遅角させる。このとき、第2噴射時期の基準第2噴射時期Tmbに対する遅角量を、第2噴射燃料量の基準第2噴射燃料量Smbに対する減少量に応じた量とする。
過給圧の応答遅れ期間dT1においては、内燃機関1の吸入空気量が少ないため、第2噴射後の燃焼室内の空燃比が、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて低くなる。そのため、第2噴射後にノッキングが発生し易くなる。このとき、上記のように第2噴射時期を遅角することで、ノッキングの発生を抑制することができる。さらに、第2噴射燃料量の減少量に応じて第2噴射時期を遅角することで、第2噴射時期を適正噴射時期に維持することができる。
なお、過給圧の応答遅れ期間dT1において、第1噴射時期および第2噴射時期をそれぞれ基準第1噴射時期Tpbおよび基準第2噴射時期Tmbに制御しつつ、上述した第1噴射燃料量および第2噴射燃料量の補正を行った場合でも、スモークの発生量はある程度抑制することができる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT1における第1噴射時期および第2噴射時期の補正は、スモークの発生量を抑制するために必須となる制御ではない。
一方、図10においては、T3で示す時期に内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetに減少する。つまり、時期T3から内燃機関1の運転状態が減速運転状態となる。そして、時期T3において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量が、目標機関負荷Qetに対応する目標総燃料噴射量Satに減量される。また、内燃機関1の運転状態が減速運転状態となることで過給圧が低下する。このとき、過給圧の変化には応答遅れが生じるために、
実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応した目標過給圧Pintまで低下するのは図10においてT4で示す時期となる。つまり、図10(d)に示すように、時期T3から時期T4までの過給圧の応答遅れ期間dT2においては、実際の過給圧は目標過給圧よりも高い状態となる。
ここで、図10(b)においても、目標総燃料噴射量Satに対応する基準第1燃料噴射量をSpbで示し、目標総燃料噴射量Satに対応する基準第2燃料噴射量をSmbで示す。また、図10(c)においても、基準第1噴射燃料量Spbに対応する基準第1燃料時期をTpbで示し、基準第2噴射燃料量Smbに対応する基準第2燃料時期をTmbで示す。
上述したとおり、時期T3から時期T4までの過給圧の応答遅れ期間dT2においては、吸気における実際の過給圧が目標過給圧Pintよりも高くなっている。そのため、この応答遅れ期間dT2中は、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が過剰な状態となる。したがって、応答遅れ期間dT2中において、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbに制御すると、プレ噴霧が形成される領域において、空燃比が過剰に高くなるために、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性が低下し、第2噴射燃料の燃焼の起点となる火炎の形成が不安定となる。
そこで、本実施例では、図10(b)に示すように、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT2において、目標総燃料噴射量に対する第1噴射燃料量および第2噴射燃料量を補正する。詳細には、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT2においても、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間と同様、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させるとともに第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量Smbよりも減少させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT2においても、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第1噴射割合を増加させるとともに第2噴射割合を減少させる(すなわち、第1噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の基準第1噴射割合よりも増加させ、第2噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の基準第2噴射割合よりも減少させる。)。これにより、過給圧の応答遅れ期間dT2において、第1噴射が実行された際に点火プラグ5の周囲に存在する燃料量が増加する。したがって、プレ噴霧が形成される領域における空燃比が過剰に高くなることを抑制することが可能となる。これにより、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性を向上させることができるため、第2噴射燃料の燃焼の起点となる火炎を安定的に形成することが可能なる。その結果、ディーゼル燃焼の安定性を向上させることができる。
また、本実施例では、図10(c)に示すように、第1噴射燃料量および第2噴射燃料量を補正する過給圧の応答遅れ期間dT2において、第1噴射時期および第2噴射時期も合わせて補正する。詳細には、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT2においても、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間と同様、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量よりも増加させるとともに、第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbよりも進角させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT2においても、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第1噴射時期を進角させる。このとき、第1噴射時期の基準第1噴射時期Tpbに対する進角量を、第1噴射燃料量の基準第1噴射燃料量Spbに対する増加量に応じた量とする。また、第1噴射時期を進角させた場合は、点火インターバルを最適値に維持すべく、点火プラグ5による点火時期も進角させる。
減速運転状態における応答遅れ期間dT2においては、吸気における実際の過給圧が目標過給圧Pintよりも高くなっているため、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときよりも筒内圧が高くなっている。そのため、この応答遅れ期間dT2においては、同一噴射時期における燃料噴霧のペネトレーションが一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときよりも小さくなる。したがって、この応答遅れ期間dT2に第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbに制御すると、燃料噴射弁6から噴射されたプレ噴霧が点火プラグ5に到達し難くなる虞がある。プレ噴霧が点火プラグ5に到達し難くなると、プレ噴霧の着火性が低下することになる。このときに第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbより進角させると、プレ噴霧のペネトレーションが大きくなるため、該プレ噴霧が点火プラグ5に到達し易くなる。したがって、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させる際に第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbより進角させることで、プレ噴霧の着火性をより向上させることができる。また、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT2において第1噴射時期を基準第1噴射時期tpbに制御した状態で点火プラグ5による点火によりプレ噴霧が着火した場合は、筒内圧が高く第1噴射燃料が拡散し難い状態となっているために、火炎伝播によって燃焼する第1噴射燃料の量が過剰に増加する虞がある。この場合、過給圧の応答遅れ期間dT2におけるプレ噴霧の着火性は向上するものの、第1噴射燃料の燃焼に点火プラグ5付近に存在する酸素が過剰に消費されることになる。その結果、第2噴射が行われた際に第2噴射燃料の燃焼に供される酸素が不足することで、スモークの生成量が増加することになる。このときに第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbより進角させると、第1噴射燃料が拡散し易くなるため、火炎伝播によって燃焼する第1噴射燃料の量が過剰に増加するのを抑制することができる。つまり、点火プラグ5付近の酸素が第1噴射燃料の燃焼に過剰に消費されることを抑制することができる。したがって、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbよりも増加させる際に第1噴射時期を基準第1噴射時期Tpbより進角させることで、プレ噴霧への点火が行われたときの着火性を向上させつつ、スモークの生成量を抑制することができる。
また、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間dT2においても、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間と同様、第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量Smbよりも減少させるとともに、第2噴射時期を基準第2噴射時期Tmbよりも遅角させる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT2においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetと同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第2噴射時期を遅角させる。このとき、第2噴射時期の基準第2噴射時期Tmbに対する遅角量を、第2噴射燃料量の基準第2噴射燃料量Smbに対する減少量に応じた量とする。これにより、第2噴射時期を適正噴射時期に維持することができる。
なお、過給圧の応答遅れ期間dT2において、第1噴射時期および第2噴射時期をそれぞれ基準第1噴射時期Tpbおよび基準第2噴射時期Tmbに制御しつつ、上述した第1噴射燃料量および第2噴射燃料量の補正を行った場合でも、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性向上という効果は得ることができる。つまり、過給圧の応答遅れ期間dT2における第1噴射時期および第2噴射時期の補正は、プレ噴霧への点火が行われたときの着火性を向上させるために必須となる制御ではない。
また、過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間において、上述したような第1噴射時期の補正または第2噴射時期の補正のいずれか一方の補正のみを行ってもよい。また、第1噴射時期と第2噴射時期との両方またはいずれか一方を上述のように補正した場合、これらそれぞれを基準第1噴射時期および基準第2噴射時期とした場合に比べて両者のインターバルが大きくなる。ただし、第1噴射時期と第2噴射時期との両方またはいずれか
一方を補正する際には、本実施例に係る燃焼形態を維持するために、両者のインターバルが、プレ噴霧への点火によって生じた火炎を起点として第2噴射燃料の燃焼が開始されるインターバルとなる範囲内で補正する。
また、図9においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetに増加する時期T1において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量が直ちに目標総燃料噴射量Satに増量されている。また、図10においては、内燃機関1の機関負荷が目標機関負荷Qetに減少する時期T3において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量が直ちに目標総燃料噴射量Satに減量されている。しかしながら、過渡運転状態においては、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を徐々に変化させてもよい。つまり、加速運転状態においては、要求される機関負荷が増加してから(すなわち、車両のアクセル開度が増大してから)、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量をある程度の時間をかけて目標総噴射量まで徐々に増加させてもよい。また、減速運転状態においては、要求される機関負荷が減少してから(すなわち、車両のアクセル開度が減少してから)、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量をある程度の時間をかけて目標総噴射量まで徐々に減少させてもよい。ただし、このような場合でも、燃料噴射量の変化に対して過給圧の変化には応答遅れが生じる。したがって、このような場合でも、過渡運転状態においては、上述したような第1噴射割合および第2噴射割合の補正を行うことで、燃焼状態を改善することができる。なお、過渡運転状態において一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を徐々に変化させる場合は、該過渡運転中のそれぞれのタイミングにおける一燃焼サイクル中の総燃料噴射量に対応する基準第1噴射燃料量および基準第2噴射燃料量を基準として第1噴射燃料の増量補正および第2噴射燃料の減量補正を行うことになる。
[燃焼制御フロー]
次に、本実施例に係る燃焼制御の制御フローについて図11〜14に基づいて説明する。図11,12は、本実施例に係る燃焼制御の制御フローを示すフローチャートである。また、図13,14は、本実施例に係る燃焼制御における各パラメータの基準値、即ち、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbを算出するためのフローを示すフローチャートである。これらのフローは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1が稼働している間、ECU20に格納された制御プログラムが実行されることで、所定の間隔で繰り返し実行される。
また、図15は、本実施例に係る燃焼制御において、負荷対応噴射量(内燃機関1の機関負荷に対応した燃料噴射量)S0、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbの算出に用いられるマップの一例を示している。図15の上段(a)では、内燃機関1の機関負荷と負荷対応噴射量S0との相関を線L20で示し、該機関負荷と基準第1噴射燃料量Spbの相関を線L21で示し、該機関負荷と基準第2噴射燃料量Smbとの相関を線L22で示している。また、図15(a)では、点火プラグ5による点火を行った際に生じる火炎伝播では燃焼せずに燃え残る第1噴射燃料の燃え残り量をM1で示している。また、図15(a)において、S1は、運転領域R3(以下、「低負荷領域R3」と称する)とR4(以下、「中負荷領域R4」と称する)との境界となる機関負荷に対応する負荷対応噴射量を表している(以下、この燃料噴射量を「第1所定量S1」と称する)。また、S2(>S1)は、中負荷領域R4と運転領域R5(以下、「高負荷領域R5」と称する)との境界となる機関負荷に対応する負荷対応噴射量を表している(以下、この燃料噴射量を「第2所定量S2」と称する)。
また、図15の下段(b)では、内燃機関1の機関負荷と基準第1噴射時期Tpbの相関を線L31で示し、該機関負荷と基準点火時期Tsbとの相関を線L30で示し、該機
関負荷と基準第2噴射時期Tmbとの相関を線L32で示している。そして、線L31と線L32との間隔が第1噴射インターバルDi1を示し、線L31と線L30との間隔が点火インターバルDsを示している。なお、図15(b)の縦軸は圧縮行程上死点を基準としたクランク角(BTDC)を表しており、その値が大きくなるほど圧縮行程におけるより早い時期であることを意味する。
図11に示す燃焼制御の制御フローでは、先ず、S101において、アクセルポジションセンサ22の検出値に基づいて、内燃機関1の目標機関負荷Qetが算出される。次に、S102において、S101で算出された目標機関負荷Qetに基づいて負荷対応噴射量S0が算出される。具体的には、図15(a)で線L20に示すマップを利用して、目標機関負荷Qetに応じた負荷対応噴射量S0が算出される。なお、本実施例では、線L20に示すように、目標機関負荷が増加するに従い負荷対応噴射量S0が大きくなるように、両者の相関がマップ上に記録されている。次に、S103において、図13,14に示すフローに従って、目標機関負荷Qetに対応する基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbが算出される。
図13に示すフローでは、先ず、S201において、図15(b)で線L32に示すマップを利用して、目標機関負荷Qetに対応する基準第2噴射時期Tmbが決定される。上述したように、内燃機関1の熱効率を向上させるために、基準第2噴射時期Tmbは、圧縮行程上死点前の適正噴射時期に設定される。なお、この内燃機関1における適正噴射時期は、予め実験により機関負荷ごとに測定され、その測定結果に基づいて線L32に示すマップが形成される。なお、基準第2噴射時期Tmbは、ある程度の機関負荷までは該機関負荷が大きくなるに従い徐々に進角される。ただし、高負荷領域R5(負荷対応噴射量がS2以上となる領域)では、その進角量が上限値に維持される。これは、第2噴射の適正噴射時期は、第2噴射燃料量に応じて決定されるものであり、後述するように、高負荷領域R5では基準第2噴射燃料量Smbが最大基準第2噴射燃料量Smbmaxで固定されるためのである。
次に、S202において、図11に示すフローのS102で算出された負荷対応噴射量S0が第1所定量S1以下であるか否か、すなわち内燃機関1の目標機関負荷Qetが低負荷領域R3に属しているか否かが判別される。ここで、低負荷領域R3は、燃料噴射量が比較的少ないため、機関負荷の増加に対して第2噴射燃料量のみの増量によって対応しても、スモークの発生量が増加したり、第2噴射燃料の気化潜熱に起因して燃焼が不安定となったりする可能性が低い運転領域として設定されている。S202において、肯定判定されると次にS203の処理が実行され、否定判定されると次にS207の処理が実行される。
S202で肯定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第1所定量S1以下である場合(内燃機関1の機関負荷が低負荷領域R3に属する場合)、S203において、図15(a)で線L21に示されるマップを利用して、基準第1噴射燃料量Spbが最小基準第1噴射燃料量Spbminに決定される。ここで、最小基準第1噴射燃料量Spbminは、第2噴射が実行された際に第2噴射燃料の燃焼開始のための火種となる火炎を形成することが可能な基準第1噴射燃料量の下限値である。ここで、第1噴射燃料量が多くなると、点火プラグ5での点火による燃焼(即ちスプレーガイド燃焼)が促進され易くなるため第1噴射燃料における燃え残り率が低下する虞があるが、基準第1噴射燃料量Spbを最小基準第1噴射燃料量Spbminとすることでその燃え残り率を可及的に高くすることができる。そのため、低負荷領域R3では、基準第1噴射燃料量Spbを最小基準第1噴射燃料量Spbminとすることで、安定した燃焼を確保しつつ高い熱効率を実現することができる。なお、上述のように、低負荷領域R3では、機関負荷の増加に対し
ては第2噴射燃料量Smのみの増加によって対応するため、図15(a)で線L21に示されるように、当該低負荷領域R3では、基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminで固定される。
次に、S204において、図15(b)で線L31に示すマップを利用して、基準第1噴射時期Tpbが決定される。ここでは、S201で決定された基準第2噴射時期Tmbに対し、第1噴射燃料量が最小基準第1噴射燃料量Spbminである場合に熱効率が好適な状態となる第1噴射インターバルDi1が確保されるように、基準第1噴射時期Tpbが決定される。なお、上述のように、低負荷領域R3では、基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminで固定される。そのため、低負荷領域R3では、第1噴射インターバルDi1も一定に維持される。したがって、低負荷領域R3では、機関負荷が変動することで基準第2噴射時期Tmbが変動した場合、当該基準第2噴射時期Tmbの変動に連動して基準第1噴射時期Tpbも変動されることになる。
次に、S205において、図15(b)で線L30に示すマップを利用して、基準点火時期Tsbが決定される。図15(b)に示すように、基準第1噴射時期Tpbと基準点火時期Tsbとのインターバルである点火インターバルDsは一定に維持される。そのため、低負荷領域R3では、基準第2噴射時期Tmbの変動に連動して基準第1噴射時期Tpbが変動した場合、当該変動に連動して基準点火時期Tsbも変動されることになる。
次に、S206においては、図15(a)で線L22に示すマップを利用して、基準第2噴射燃料量Smbが決定される。なお、低負荷領域R3では、線L20で示される負荷対応噴射量S0と基準第2噴射燃料量Smbとの相関は、以下の式2に従う。
Smb = S0 −Spb×α ・・・(式2)
α:第1噴射燃料の燃え残り率
上記のとおり、本実施例に係る基本燃焼制御では、第1噴射燃料の燃え残りは第2噴射燃料とともに自着火し拡散燃焼に供されることで機関出力に寄与する。そのため、機関出力に寄与するという観点に立てば、第1噴射燃料の一部、すなわちその燃え残りは第2噴射燃料と同等と言うことができる。そこで、第1噴射燃料の燃え残り率を示す係数αを予め実験等で求めておき、当該係数αを考慮した上記式2に従って基準第2噴射燃料量Smbを算出することで、適切な基準第2噴射燃料量Smbを求めることができる。なお、第1噴射燃料の燃え残り率は、点火インターバルDs及び第1噴射インターバルDi1に応じて変化する。従って、係数αはこれらに基づいて定まる値である。そして、低負荷領域R3では、点火インターバルDs及び第1噴射インターバルDi1はいずれも一定であるため、上記式2おける係数αも一定値となる。また、低負荷領域R3では、上記の理由により基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminに固定されるため、上記式2においてSpb=Spbminとなる。また、第1噴射燃料量に対して点火プラグ5による点火によって燃焼する分の燃料量(すなわちスプレーガイド燃焼によって燃焼する分の燃料量)が非常に少ない場合は、制御上、係数α=1としてもよい。この場合、負荷対応噴射量S0=目標総燃料噴射量(目標機関負荷Qetに対応する一燃焼サイクル中の総燃料噴射量)として制御することになる。
低負荷領域R3における第1噴射、第2噴射、および点火に関する各パラメータの基準値は以上のように決定される。なお、内燃機関1の運転状態がこの低負荷領域R3において定常運転状態となっている場合(すなわち、実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧となっている場合)に、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、第1噴射時期、第2噴射時期、および点火時期のそれぞれを、上記のように決定された基準値として燃焼制御が実行されると、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火後に図15(a)にM1で示す量の第1噴射燃料の燃え残りが生成されることになる。上記のとおり、低負荷領域R3では、基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminに固定され、点火
インターバルDs及び第1噴射インターバルDi1も一定であるため、第1噴射燃料の燃え残り量も概ね一定となる。
一方、S202で否定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第1所定量S1より大きい場合、S207において、図11に示すフローのS102で算出された負荷対応噴射量S0が第2所定量S2以下であるか否か、すなわち内燃機関1の目標機関負荷Qetが中負荷領域R4に属しているか否かが判別される。ここで、中負荷領域R4は、機関負荷の増加に対して第2噴射燃料量のみの増量によって対応した場合、スモークの発生量が増加したり、第2噴射燃料の気化潜熱に起因して燃焼が不安定となったりする可能性が高い運転領域として設定されている。そのため、中負荷領域R4では、機関負荷の増加に対して第2噴射燃料量のみならず第1噴射燃料量も増量することで対応する。そして、第2所定量S2は、スモークの発生量および燃焼安定性の観点から基準第2噴射燃料量が上限値(最大基準第2噴射燃料量Smbmax)となる機関負荷、すなわち、適正噴射時期に噴射し得る燃料が上限値となる機関負荷に対応した燃料噴射量として設定されている。S207において、肯定判定されると次にS208の処理が実行され、否定判定されると次にS212の処理が実行される。
S207で肯定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第1所定量S1より多く第2所定量S2以下である場合(内燃機関1の機関負荷が中負荷領域R4に属する場合)、S208において、図15(a)で線L21に示すマップを利用して基準第1噴射燃料量Spbが決定される。このとき、内燃機関1の機関負荷が高いほど基準第1噴射燃料量Spbは増量される。次に、S209において、図15(b)で線L31に示すマップを利用して基準第1噴射時期Tpbが決定される。ここで、内燃機関1の機関負荷の上昇に従い基準第1噴射燃料量Spbが増量されても、基準第1噴射時期Tpbと基準第2噴射時期Tmbとのインターバルである第1噴射インターバルDi1が固定されているとすると、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量Spbとして第1噴射が行われた場合、基準第1噴射燃料量Spbが多いほど、第2噴射が実行された際に第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料とが重なり易くなり、スモークの発生量が増加することになる。そのため、S209では、内燃機関1の機関負荷が高いほど、第1噴射インターバルDi1が大きくなるように基準第1噴射時期Tpbが進角される。つまり、中負荷領域R4では、基準第1噴射時期Tpbが、基準第2噴射時期Tmbの進角量に連動した進角量以上に進角され、その進角量が機関負荷が高いほど大きくなっている。このように基準第1噴射時期Tpbを制御することで、基準第1噴射燃料量Spbが増量されることでその燃え残り量が多くなっても、第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との重なりを抑制することができる。その結果、これらの燃料の重なりに起因するスモークの発生量を抑制することができる。また、機関負荷の上昇に応じて第1噴射燃料の燃え残りが増加しても、上述したように、該燃え残りは第2噴射の実行開始後の燃焼に供されることで機関出力に寄与するため、内燃機関1の熱効率を高く維持することができる。
次に、S210において、図15(b)で線L30に示すマップを利用して、基準点火時期Tsbが決定される。図15(b)に示すように、中負荷領域R4においても、基準第1噴射時期Tpbと基準点火時期Tsbとのインターバルである点火インターバルDsは一定に維持される。そのため、機関負荷の上昇に従い、基準第1噴射時期Tpbが基準第2噴射時期Tmbの進角量に連動した進角量以上に進角された場合、基準点火時期Tsbも基準第1噴射時期Tpbと同程度に進角される。
次に、S211において、図15(a)で線L22に示すマップを利用して、基準第2噴射燃料量Smbが決定される。なお、中負荷領域R4でも、低負荷領域R3と同様に、線L22で示される負荷対応噴射量S0と基準第2噴射燃料量Smbとの相関は、上記式2に従う。これにより、S206の処理と同じように、本実施例に係る基本燃焼制御の特
徴を考慮した上で基準第2噴射燃料量Smbを決定することができる。なお、上記のように、中負荷領域R4では、機関負荷の上昇に従い基準第1噴射燃料量Spbが増量される。そのため、中負荷領域R4における基準第2噴射燃料量Smbの増量比率(機関負荷の上昇量に対する基準第2噴射燃料量Smbの増加量の比率)は、基準第1噴射燃料量Spbが固定されている低負荷領域R3における基準第2噴射燃料量Smbの増量比率よりも小さくなる。これにより、第2噴射燃料量の増量に起因するスモークの発生量の増加や、第2噴射燃料の気化潜熱の増加に起因する失火の発生を抑制することができる。
中負荷領域R4における第1噴射、第2噴射、および点火に関する各パラメータの基準値は以上のように決定される。なお、内燃機関1の運転状態がこの中負荷領域R4において定常運転状態となっている場合(すなわち、実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応する過給圧となっている場合)に、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、第1噴射時期、第2噴射時期、および点火時期のそれぞれを、上記のように決定された基準値として燃焼制御が実行されると、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火後に図15(a)にM1で示す量の第1噴射燃料の燃え残りが生成されることになる。上記のとおり、中負荷領域R4では、機関負荷の上昇に従って、基準第1噴射燃料量Spbが増量されるとともに、点火インターバルDsは一定の状態に維持されながら基準第1噴射時期Tpb及び基準点火時期Tsbが進角される。その結果、第1噴射燃料の燃え残り量が、機関負荷の上昇に応じて増加することになる。
一方、S207で否定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第2所定量S2より大きい場合、内燃機関1の機関負荷は高負荷領域R5に属している。上記のように、第2所定量S2は、スモークの発生量および燃焼安定性の観点から基準第2噴射燃料量Smbが上限値となる機関負荷に対応した燃料噴射量として設定されている。そのため、高負荷領域R5は、機関負荷の増加に対して基準第1噴射燃料量Spbのみを増量することで対応する運転領域として設定されている。
そして、S207で否定判定された場合、S212において、図15(a)で線L22に示されるマップを利用して、基準第2噴射燃料量Smbが最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに決定される。ここで、最大基準第2噴射燃料量Smbmaxは、スモークの発生量を許容範囲内に抑えることができ且つ安定した燃焼を確保することができる(第2噴射燃料の気化潜熱に起因する失火の発生を抑制できる)基準第2噴射燃料量の上限値である。図15(a)で線L22に示されるように、高負荷領域R5では、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxで固定される。
次に、S213において、図15(a)で線L21に示すマップを利用して、基準第1噴射燃料量Spbが決定される。なお、高負荷領域R5では、線L21で示される負荷対応噴射量S0と基準第1噴射燃料量Spbとの相関は、以下の式3に従う。
Spb = (S0 −Smb)/α ・・・(式3)
なお、αは、式2と同じく、第1噴射燃料の燃え残り率である。上記式3に従うことで、本実施例に係る基本燃焼制御の特徴を考慮した上で基準第1噴射燃料量Spbを決定することができる。なお、高負荷領域R5においては、上記の理由で基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定されるため、上記式3においてSmb=Smbmaxとなる。また、高負荷領域R5では、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定されるため、基準第1噴射燃料量Spbの増量比率(機関負荷の上昇量に対する基準第1噴射燃料量Spbの増加量の比率)は、機関負荷の上昇に対応して基準第2噴射燃料量Smbも増量される中負荷領域R4における基準第1噴射燃料量Spbの増量比率よりも大きくなる。
次に、S214において、図15(b)で線L31に示すマップを利用して基準第1噴
射時期Tpbが決定される。ここで、高負荷領域R5では、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定されているため、S202で決定される基準第2噴射時期Tmbも固定されることになる。一方で、上記のように、高負荷領域R5では、基準第1噴射燃料量Spbの増量比率は、中負荷領域R4における基準第1噴射燃料量Spbの増量比率よりも大きくなる。そのため、高負荷領域R5では、第2噴射が実行された際の第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料とが重なりを抑制するためには、第1噴射インターバルDi1を中負荷領域R4における第1噴射インターバルDi1よりも大きくする必要があり、且つ、第1噴射インターバルDi1の増加比率(機関負荷の上昇量に対する第1噴射インターバルDi1の増加量の比率)も、中負荷領域R4における第1噴射インターバルDi1の増加比率よりも大きくする必要がある。そのため、S214では、内燃機関1の機関負荷が高いほど、第1噴射インターバルDi1が大きくなるように基準第1噴射時期Tpbが進角される。そして、このときの基準第1噴射時期Tpbの進角比率(機関負荷の上昇量に対する基準第1噴射時期Tpbの進角量の比率)が、中負荷領域R4における基準第1噴射時期Tpbの進角比率よりも大きくなっている。このように基準第1噴射時期Tpbを決定することで、機関負荷の増加に対して第1噴射燃料量のみを増量することで対応し、それによって第1噴射燃料の燃え残り量が多くなっても、第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料との重なりを抑制することができる。その結果、これらの燃料の重なりに起因するスモークの発生量を抑制することができる。また、機関負荷の上昇に応じて第1噴射燃料の燃え残りが増加しても、上述したように、該燃え残りは第2噴射の実行開始後の燃焼に供されることで機関出力に寄与するため、内燃機関1の熱効率を高く維持することができる。
次に、S215において、図15(b)で線L30に示すマップを利用して、基準点火時期Tsbが決定される。高負荷領域R5においても、図15(b)に示すように、基準第1噴射時期Tpbと基準点火時期Tsbとのインターバルである点火インターバルDsは一定に維持される。そのため、中負荷領域R4と同様、機関負荷の上昇に従い基準第1噴射時期Tpbが進角された場合、基準点火時期Tsbも基準第1噴射時期Tpbと同程度に進角される。
高負荷領域R5における第1噴射、第2噴射、および点火に関する各パラメータの基準値は以上のように決定される。なお、内燃機関1の運転状態がこの高負荷領域R5において定常運転状態となっている場合(すなわち、実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧となっている場合)に、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、第1噴射時期、第2噴射時期、および点火時期のそれぞれを、上記のように決定された基準値として燃焼制御が実行されると、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火後に図15(a)にM1で示す量の第1噴射燃料の燃え残りが生成されることになる。上記のとおり、高負荷領域R5では、機関負荷の上昇に従って、基準第1噴射燃料量Spbが増量されるとともに、点火インターバルDsは一定の状態に維持されながら基準第1噴射時期Tpb及び基準点火時期Tsbが進角される。その結果、上記のように、第1噴射燃料の燃え残り量が、機関負荷の上昇に応じて増加することになる。また、高負荷領域R5では、基準第1噴射燃料量Spbの増量比率および基準第1噴射時期Tpbの進角比率(第1噴射インターバルDi1の増加比率)が、中負荷領域R4よりも大きくなっている。その結果、機関負荷の上昇に応じた第1噴射燃料の燃え残り量の増加比率が、中負荷領域R4よりも大きくなっている。そのため、機関負荷の増加に対して第1噴射燃料量のみを増量することで対応することが可能となる。
ここで、図11に示すフローに戻り、S103において、目標機関負荷Qetに対応する基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbが算出された後、次に、S104において、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinが、S101で算出された
目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintと同等であるか否かが判別される。ここで、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintと同等であれば、内燃機関1の運転状態は定常運転状態であると判断できる。一方、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintからずれている場合、内燃機関1の運転状態が過渡運転状態であり、現在、過給圧の応答遅れ期間中であると判断できる。なお、S104においては、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintから所定の範囲内の値であれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintと同等である判定されてもよい。S104において肯定判定された場合、すなわち、内燃機関1の運転状態が定常運転状態の場合、次にS105の処理が実行される。
S105においては、燃焼制御の各パラメータが、S103で算出された基準値に設定される。すなわち、第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsが、それぞれ、S103で算出された、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbに設定される。そして、次に、S106において、S105で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射および第2噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
一方、S104で否定判定された場合、すなわち、内燃機関1の運転状態が過渡運転状態であって、現在、過給圧の応答期間中の場合、次にS107の処理が実行される。S107においては、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintより低いか否かが判別される。上述したように、加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間(図9においてdT1で示すような応答遅れ期間)においては、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintより低くなる。また、減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間(図10においてdT2で示すような応答遅れ期間)においては、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintより高くなる。つまり、S107において肯定判定された場合、内燃機関1の運転状態は加速運転状態であると判断できる。この場合、次にS108において、加速運転状態における、補正第1噴射燃料量Spa1、補正第1噴射時期Tpa1、補正点火時期Tsa1を算出するために用いられる係数c1が算出される。ここで、係数c1は、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinと、S101で算出された目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintとに基づき下記の式4により算出される。
c1 = Pint/Pin ・・・(式4)
なお、本実施例では、内燃機関1の機関負荷と過給圧との相関は予め実験等に基づいて求められており、マップまたは関数としてECU20に記憶されている。目標過給圧Pintは、このマップまたは関数を用いて算出される。
次に、S109において、S108で算出された係数c1を用いて、補正第1噴射燃料量Spa1、補正第1噴射時期Tpa1、および補正点火時期Tsa1が下記の式5〜7により算出される。
補正第1噴射燃料量Spa1 = Spb×c1 ・・・(式5)
補正第1噴射時期Tpa1 = Tpb×c1 ・・・(式6)
補正点火時期Tsa1 = Tsb×c1 ・・・(式7)
次に、S110において、補正第2噴射燃料量Sma1および補正第2噴射時期Tma1が下記の式8,9により算出される。
補正第2噴射燃料量Sma1 = Sat−Spa1 ・・・(式8)
ここで、目標総燃料噴射量Sat=Spb+Smb
補正第2噴射時期Tma1 = Tmb×(Sma1/Smb) ・・・(式9)
上記式5〜9によれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも低くなっている加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間(図9においてdT1で示すような応答遅れ期間)においては、補正第1噴射燃料量Spa1は基準第1噴射燃料量Spbよりも大きくなり、補正第2噴射燃料量Sma1は基準第2噴射燃料量Smbよりも小さくなる。また、補正第1噴射時期Tpa1および補正点火時期Tsa1は基準値より大きくなる(すなわち、補正第1噴射時期Tpa1は基準第1噴射時期Tpbよりも早い時期となり、補正点火時期Tsa1は基準点火時期Tsbよりも早い時期となる。)。また、補正第2噴射時期Tma1は基準値より小さくなる(すなわち、補正第2噴射時期Tma1は基準第2噴射時期Tmbよりも遅い時期となる。)。
次に、S111において、燃焼制御の各パラメータが、S109およびS110で算出された補正値に設定される。すなわち、第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsが、それぞれ、補正第1噴射燃料量Spa1、補正第2噴射燃料量Sma1、補正第1噴射時期Tpa1、補正第2噴射時期Tma1、および補正点火時期Tsa1に設定される。そして、次に、S112において、S111で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射および第2噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
一方、S107において否定判定された場合、内燃機関1の運転状態は減速運転状態であると判断できる。この場合、次にS113において、減速運転状態における、補正第1噴射燃料量Spa2、補正第1噴射時期Tpa2、補正点火時期Tsa2を算出するために用いられる係数c2が算出される。ここで、係数c2は、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinと、S101で算出された目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintとに基づき下記の式10により算出される。
c2 = Pin/Pint ・・・(式10)
次に、S114において、S113で算出された係数c2を用いて、補正第1噴射燃料量Spa2、補正第1噴射時期Tpa2、および補正点火時期Tsa2が下記の式11〜13により算出される。
補正第1噴射燃料量Spa2 = Spb×c2 ・・・(式11)
補正第1噴射時期Tpa2 = Tpb×c2 ・・・(式12)
補正点火時期Tsa2 = Tsb×c2 ・・・(式13)
次に、S115において、補正第2噴射燃料量Sma2および補正第2噴射時期Tma2が下記の式14,15により算出される。
補正第2噴射燃料量Sma2 = Sat−Spa2 ・・・(式14)
ここで、目標総燃料噴射量Sat=Spb+Smb
補正第2噴射時期Tma2 = Tmb×(Sma2/Smb) ・・・(式15)
上記式11〜15によれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも高くなっている減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間(図10においてdT2で示すような応答遅れ期間)においては、補正第1噴射燃料量Spa2は基準第1噴射燃料量Spbよりも大きくなり、補正第2噴射燃料量Sma2は基準第2噴射燃料量Smbよりも小さくなる。また、補正第1噴射時期Tpa2および補正点火時期Tsa2は基準値より大きくなる(すなわち、補正第1噴射時期Tpa2は基準第1噴射時期Tpbよりも早い時期となり、補正点火時期Tsa2は基準点火時期Tsbよりも早い時期となる。)。また、補正第2噴射時期Tma2は基準値より小さくなる(すなわち、補正第2噴射時期Tma2は基準第2噴射時期Tmbよりも遅い時期となる。)。
次に、S116において、燃焼制御の各パラメータが、S114およびS115で算出された補正値に設定される。すなわち、第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsが、それぞれ、補正第1噴射燃料量Spa2、補正第2噴射燃料量Sma2、補正第1噴射時期Tpa2、補正第2噴射時期Tma2、および補正点火時期Tsa2に設定される。そして、次に、S117において、S116で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射および第2噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
なお、本実施例において燃焼制御の各パラメータの補正値を算出するための算出式は上記式4〜15に限られるものではない。ただし、他の補正係数や算出式を用いた場合であっても、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも低くなっている加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間、および、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも高くなっている減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間における、各パラメータの基準値と補正値との関係は上述したものとなる。
また、上記制御フローでは、上記式4〜15によって燃焼制御における各パラメータの補正値を算出したが、これとは別の手法によって、過渡運転状態における実際の過給圧に対応した燃焼制御における各パラメータの値を決定してもよい。例えば、それぞれが異なる過給圧に応じた内燃機関1の機関負荷と燃焼制御における各パラメータとの相関を示している複数のマップをECU20に格納しておいてもよい。この場合、実際の過給圧に基づいて、燃焼制御における各パラメータを算出する際に用いるマップを選択する。
また、上記制御フローでは、過渡運転状態における実際の過給圧が目標過給圧とずれている期間において、燃焼制御における各パラメータが補正される。しかしながら、必ずしも、過給圧の応答遅れ期間の全期間において燃焼制御における各パラメータを補正する必要はない。つまり、過給圧の応答遅れ期間の一部の期間において、燃焼制御における各パラメータを上述のとおり補正した場合でも、当該一部の期間においては、燃焼状態改善の効果を得ることができる。
また、本実施例において、図15に示す内燃機関1の機関負荷と燃焼制御における各パラメータの基準値との相関はあくまでも一例であり、これらの関係は図15に示すような関係に限られるものではない。例えば、低負荷領域R3において、基準第1噴射燃料量Spbを機関負荷の増加に従って増量するようにしてもよい。また、高負荷領域R5において、スモークの発生量および燃焼安定性の観点から許容可能な範囲内で、基準第2噴射燃料量Smbを機関負荷の増加にしたがって増量するようにしてもよい。
<実施例2>
本実施例においては、図15に示す低負荷領域R3、中負荷領域R4、高負荷領域R5に対応する負荷領域を、それぞれ、「低負荷領域R3」、「第1中負荷領域R4」、「第2中負荷領域R5」と称する。本実施例においても、低負荷領域R3、第1中負荷領域R4、第2中負荷領域R5では、実施例1と同様の基本燃焼制御および過渡運転制御が行われる。そして、本実施例では、第2中負荷領域よりも機関負荷が高い運転領域を「高負荷領域」と称し、この高負荷領域において高負荷燃焼制御が行われる。以下、本実施例に係る高負荷燃焼制御について説明する。
[高負荷燃焼制御]
内燃機関1においては、機関負荷の上昇に従って燃焼室内への燃料噴射量を増量する必
要がある。ただし、上述したように、第2噴射燃料量があまりに増量されると、スモークの発生量が増加したり、燃料の気化潜熱に起因して燃焼室内の温度が低下することで燃焼が不安定となったりする虞がある。また、上述したように、第1噴射燃料量を増量する場合は、その増量とともに第1噴射時期を進角する、すなわち第1噴射インターバルDi1を大きくすることで、スモークの発生量を抑制することができる。しかしながら、第1噴射燃料への点火によって生じる火炎を第2噴射燃料の燃焼のための火種とする必要があることから、図7に示すように、第1噴射インターバルDi1には上限値(図7におけるDi1b)が存在する。そして、仮に、第1噴射インターバルDi1を当該上限値に維持した状態で第1噴射燃料量を更に増量した場合、第2噴射が実行された際に第1噴射燃料の燃え残りと第2噴射燃料とが重なり易くなる。したがって、第1噴射燃料についても、あまりに増量されると、スモークの発生量の増加を招く虞がある。そこで、本実施例に係る内燃機関1においては、一燃焼サイクル中に燃焼室内に噴射する燃料量が比較的多く必要となる高負荷領域では、上述したような基本燃焼制御における第1噴射および第2噴射に加えて燃料噴射弁6によって第3噴射を実行する高負荷燃焼制御が行われる。
第3噴射は、圧縮工程における第1噴射時期よりも前の時期であって、該第1噴射時期とのインターバルが第2噴射インターバルDi2となる第3噴射時期に実行される。ここで、第2噴射インターバルDi2は、第3噴射によって噴射された燃料(以下、「第3噴射燃料」と称する)が第2噴射の実行開始後の自着火または拡散燃焼によって燃焼するように設定されている。
図16は、基本燃焼制御を行った場合と高負荷燃焼制御を行った場合とのぞれぞれの場合における燃焼室内での熱発生率の推移を示す図である。図16(a)は、それぞれの燃焼制御における各燃料噴射および点火の実行時期を示している。また、図16(b)において、L17は基本燃焼制御を行った場合の熱発生率の推移を示しており、L18は高負荷燃焼制御を行った場合の熱発生率の推移を示している。また、図16においては、それぞれの燃焼制御における一燃焼サイクル中の総燃料噴射量は同一となっている。つまり、高負荷燃焼制御では、基本燃焼制御に比べて第2噴射燃料量が少なくなっている。そして、高負荷燃焼制御では、基本燃焼制御との第2噴射燃料量の差分の量の燃料が第3噴射によって噴射される。なお、図16においては、内燃機関1の機関回転速度が2000rpmとされる。
ここで、第3噴射時期Tppは圧縮行程における第1噴射時期Tpよりも前の時期であるため、第3噴射時期Tppにおける燃焼室内の圧力は第1噴射時期Tpにおける燃焼室内の圧力よりも低くなっている。そのため、第3噴射燃料により形成される噴霧のペネトレーションが相対的に大きくなるため、第3噴射燃料は第1噴射燃料よりも燃焼室内においてさらに広範囲に拡散され易い。したがって、第2噴射インターバルDi2を調整することで、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火が行われても、第3噴射燃料の多くは、該点火によって生じた火炎によっては燃焼せず、第2噴射開始後の自着火または拡散燃焼によって燃焼するようにすることができる。ここで、図16(b)において、L18の熱発生率の一次ピーク値(第一噴射燃料のプレ噴霧に対する点火によって生じる燃焼に起因する熱発生率のピーク値)は、L17の熱発生率の一次ピーク値と、その発生時期および大きさともに同等となっている。このことから、第3噴射燃料が第1噴射燃料のプレ噴霧への点火時にはほとんど燃焼していないことが推察される。
そして、第2噴射開始後の自着火または拡散燃焼によって燃焼する第3噴射燃料は燃焼に対して第1噴射燃料の燃え残りと同様に作用するものと考えられる。ここで、図16(b)においては、L18の熱発生率の二次ピーク値(圧縮上死点後の熱発生率の最大ピーク値)がL17の熱発生率の二次ピーク値よりも大きくなっている。さらに、L18では、L17に比べて、熱発生率の二次ピーク値からの立ち下り速度(二次ピーク以後のグラ
フの傾き)が大きくなっている。このことからも、第3噴射燃料が、第1噴射燃料の燃え残りと同様、第2噴射開始後の燃料の自着火の促進に寄与している推察される。
また、第3噴射時期は第1噴射時期よりも前の時期であるため、第2噴射の実行時において、第3噴射燃料は第1噴射燃料の燃え残りよりも燃焼室内において広く拡散している。そのため、第2噴射の実行時に第3噴射燃料が燃焼室内に存在していても、該第3噴射燃料は第1噴射燃料の燃え残りに比べて第2噴射燃料と重なり合い難い。したがって、第3噴射燃料は、第1噴射燃料および第2噴射燃料のいずれと比べてもスモークの発生原因となり難い。
そして、第3噴射を実行する場合、第1噴射および第2噴射のみによって内燃機関1の機関負荷に対応する量の燃料を噴射しようとした場合に比べて第1噴射燃料量または第2噴射燃料量の少なくともいずれかを減少させることができる。したがって、第3噴射を行うことで、第1噴射燃料または第2噴射燃料に起因して発生するスモークの量を減らすことができる。図17は、高負荷燃焼制御において、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量は同一の状態で第3噴射燃料量を変化させた場合の、内燃機関1の熱効率と第3噴射燃料量との相関(図17(a)を参照)と、スモークの発生量と第3噴射燃料量との相関(図17(b)を参照)を示す図である。図17においては、第3噴射燃料量を増量させた場合、その増量分だけ第2噴射燃料量を減量させている。なお、第1噴射燃料量は一定とされている。図17(a)に示すように、高負荷燃焼制御において第3噴射燃料量を増量しても、内燃機関1の熱効率は概ね一定に維持される。このことから、第3噴射燃料のほとんどが、第2噴射の実行開始後の燃焼に供されていることがわかる。また、図17(b)に示すように、高負荷燃焼制御において第3噴射燃料量を増量した場合、スモークの発生量が減少する。このことから、第3噴射燃料はスモークの発生原因となり難いことがわかる。
したがって、本実施例に係る内燃機関1では、総噴射燃料量が比較的多くなる高負荷運転時においては上述したような高負荷燃焼制御を行うことで、該高負荷運転時においても基本燃焼制御を行う場合に比べてスモークの発生量を抑制しつつディーゼル燃焼を実現することができる。
[高負荷領域における過渡運転制御]
次に、本実施例に係る高負荷領域での過渡運転時の制御について説明する。上述したように、第3噴射燃料は燃焼に対して第1噴射燃料の燃え残りと同様に作用するものと考えられる。そこで、高負荷領域では、過渡運転状態においても、第1噴射割合を一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした場合の基準第1噴射割合と同一の割合に制御する。そして、高負荷領域での過渡運転状態における燃焼状態を改善するために、機関負荷を目標機関負荷に変化させる過渡運運転状態においては、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量に対する第2噴射燃料量の割合(第2噴射割合)および第3噴射燃料量の割合(第3噴射割合)を、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした場合の定常運転状態における第2噴射割合(基準第2噴射割合)および第3噴射割合とは異なる値に制御する。なお、以下においては、定常運転状態における第3噴射割合を「基準第3噴射割合」と称する。
ここで、本実施例では、高負荷領域における過渡運転状態においても、図9または10に示した場合と同様に、内燃機関1の機関負荷が変更されると、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量が該過渡運転状態における目標機関負荷に対応する目標総燃料噴射に直ちに増量または減量される。そして、このときの過給圧の応答遅れ期間においては、目標総燃料噴射量に対する第2噴射燃料量および第3噴射燃料量が補正される。ここで、目標総燃料噴射量に基づいて定められる第3噴射燃料量の基準値を「基準第3噴射燃料量」と称する。基準第3噴射燃料量は、内燃機関1の運転状態が定常運転状態である、すなわち実際の過
給圧が機関負荷に対応する過給圧となっていることを前提として定められる値である。そして、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量よりも増加させるとともに第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量よりも減少させる。つまり、該過給圧の応答遅れ期間においては、内燃機関1の機関負荷が該過渡運転状態での目標機関負荷と同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量と同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第3噴射割合を増加させるとともに第2噴射割合を減少させる(すなわち、第3噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量と同一とした場合の基準第3噴射割合よりも増加させ、第2噴射割合を、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量と同一とした場合の基準第2噴射割合よりも減少させる。)。
上記制御によれば、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が不足した状態となる加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間において、第2噴射が実行された際に第2噴射燃料を燃焼させるために必要な酸素量が少なくなる。したがって、第2噴射燃料の燃焼に必要な酸素量が不足することを抑制することが可能となる。そのため、スモークの発生量を抑制することができる。また、上述したように、第3噴射燃料は、第1噴射燃料および第2噴射燃料よりもスモークの発生原因となり難い。したがって、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間中に第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量より増加させても、スモークの発生量の増加は招き難い。
また、上述したように、第3噴射燃料のうちの多くは、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火を行った際に生じる火炎伝播によっては燃焼しない。しかしながら、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火を行った時に点火プラグ5の周囲に存在する第3噴射燃料は、該点火による燃焼に供されることになる。そして、第3噴射燃料量が増加すれば、プレ噴霧への点火時に点火プラグ5の周囲に存在する第3噴射燃料の量が増加する。これにより、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量とした場合よりも、プレ噴霧が形成される領域における空燃比が低下することになる。したがって、上記制御によれば、燃焼室内において燃料量に対して酸素量が過剰な状態となる減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間において、プレ噴霧が形成される領域における空燃比が過剰に高くなることを抑制することができる。そのため、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性を向上させることができるため、第2噴射燃料の燃焼の起点となる火炎を安定的に形成することが可能なる。その結果、ディーゼル燃焼の安定性を向上させることができる。
また、本実施例に係る高負荷燃焼制御においては、第1噴射時期と第3噴射時期とのインターバルが上述したような第2噴射インターバルとなるように、内燃機関1の機関負荷に基づいて第3噴射時期が定められている。ここで、基準第3噴射燃料量に対応する第3噴射時期の基準値を「基準第3噴射時期」と称する。基準第3噴射時期は、内燃機関1の運転状態が定常運転状態である、すなわち実際の過給圧が機関負荷に対応する過給圧となっていることを前提として定められる値である。
また、高負荷領域では、過渡運転状態においても、第1噴射時期を一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした場合の基準第1噴射時期と同一の時期に制御する。そして、上記のとおり第2噴射燃料量および第3噴射燃料量を補正する過給圧の応答遅れ期間においては、第2噴射時期および第3噴射時期を合わせて補正する。詳細には、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量よりも増加させるとともに第3噴射時期を基準第3噴射時期よりも進角させる。つまり、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、内燃機関1の機関負荷が該過渡運転状態での目標機関負荷と同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量と同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第3噴射時期を進角させる。このとき、第3噴射時期の基準第3噴射時期に対する進角量
を、第3噴射燃料量の基準第3噴射燃料量に対する増加量に応じた量とする。
第3噴射時期を進角すると、第3噴射燃料が燃焼室内においてより広い範囲に拡散し易くなる。そのため、点火プラグ5による点火によって生じる火炎伝播では燃焼せず、第2噴射開始後の自着火または拡散燃焼に供される第3噴射燃料の量がより増加する。そのため、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときよりも筒内圧が低くなっている加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間においては、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量より増加させる際に第3噴射時期を進角すると、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量より増加させる際に第1噴射時期を基準第1噴射時期より進角させる場合と同様の効果を得ることができる。つまり、スモークの発生量をより抑制することができるとともに、第3噴射燃料の増加に伴う熱効率の低下も抑制することができる。また、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量Satと同一とした場合の定常運転状態のときよりも筒内圧が高くなっている減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間においては、第3噴射燃料が拡散し難い状態となっている。そのため、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量よりも増加させる際に第3噴射時期を基準第3噴射時期に制御した場合、プレ噴霧が着火することで生じる火炎伝播によって燃焼する第3噴射燃料の量が過剰に増加する虞がある。この場合、過給圧の応答遅れ期間におけるプレ噴霧の着火性は向上するものの、第3噴射燃料の燃焼に点火プラグ5付近に存在する酸素が過剰に消費されることになる。その結果、第2噴射が行われた際に第2噴射燃料の燃焼に供される酸素が不足することで、スモークの生成量が増加することになる。このときに第3噴射時期を基準第3噴射時期より進角させると、第3噴射燃料が拡散し易くなるため、プレ噴霧が着火することで生じる火炎伝播によって燃焼する第3噴射燃料の量が過剰に増加するのを抑制することができる。つまり、点火プラグ5付近の酸素が第3噴射燃料の燃焼に過剰に消費されることを抑制することができる。したがって、第1噴射燃料量を基準第1噴射燃料量よりも増加させる際に第1噴射時期を基準第1噴射時期より進角させる場合と同様、第3噴射燃料量を基準第3噴射燃料量よりも増加させる際に第3噴射時期を基準第3噴射時期より進角させることで、プレ噴霧への点火が行われたときの着火性を向上させつつ、スモークの生成量を抑制することができる。
また、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、第2噴射燃料量を基準第2噴射燃料量よりも減少させるとともに第2噴射時期を基準第2噴射時期よりも遅角させる。つまり、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、内燃機関1の機関負荷が該過渡運転状態での目標機関負荷と同一であって、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を目標総燃料噴射量と同一とした場合の定常運転状態のときに比べて、第2噴射時期を遅角させる。このとき、第2噴射時期の基準第2噴射時期に対する遅角量を、第2噴射燃料量の基準第2噴射燃料量に対する減少量に応じた量とする。これにより、加速運転状態においては、ノッキングの発生を抑制することができ、さらに、第2噴射時期を適正噴射時期に維持することができる。また、減速運転状態においても、第2噴射時期を適正噴射時期に維持することができる。
なお、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間において、第2噴射時期および第3噴射時期をそれぞれ基準第2噴射時期および基準第3噴射時期に制御しつつ、上述した第2噴射燃料量および第3噴射燃料量の補正を行った場合でも、スモークの発生量はある程度抑制することができる。また、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間において、第2噴射時期および第3噴射時期をそれぞれ基準第2噴射時期および基準第3噴射時期に制御しつつ、上述した第2噴射燃料量および第3噴射燃料量の補正を行った場合でも、点火プラグ5によるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性向上という効果は得ることができる。つまり、上述したような第2噴射時期および第3噴射時期の補正は、加速運転状態におけるスモークの発生量の抑制という効果や、減速運転状態におけるプレ噴霧への点火が行われたときの着火性向上という効果を得るために必須となる制御ではない。
また、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間において、上述した第2噴射時期の補正または第3噴射時期の補正のいずれか一方の補正のみを行ってもよい。また、第3噴射時期を上述のように進角補正した場合、第3噴射時期を基準第3噴射時期とした場合に比べて第3噴射時期と第1噴射時期とのインターバルが大きくなる。ただし、第3噴射時期を進角補正する際には、本実施例に係る燃焼形態を維持するために、第1噴射時期とのインターバルが、第2噴射の実行開始後の自着火または拡散燃焼により第3噴射燃料が燃焼するインターバルとなる範囲内で進角する。また、第2噴射時期を上述のように遅角補正した場合、第2噴射時期を基準第2噴射時期とした場合に比べて第1噴射時期と第2噴射時期とのインターバルが大きくなる。ただし、第2噴射時期を遅角補正する際には、本実施例に係る燃焼形態を維持するために、第1噴射時期とのインターバルが、プレ噴霧への点火によって生じた火炎を起点として第2噴射燃料の燃焼が開始されるインターバルとなる範囲内で遅角する。
また、高負荷領域での過渡運転状態においても、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を徐々に変化させてもよい。つまり、加速運転状態においては、要求される機関負荷が増加してから(すなわち、車両のアクセル開度が増大してから)、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量をある程度の時間をかけて目標総噴射量まで徐々に増加させてもよい。また、減速運転状態においては、要求される機関負荷が減少してから(すなわち、車両のアクセル開度が減少してから)、一燃焼サイクル中の総燃料噴射量をある程度の時間をかけて目標総噴射量まで徐々に減少させてもよい。このような場合でも、過給圧の応答遅れは生じるため、過渡運転状態においては、上述したような第2噴射割合および第3噴射割合の補正を行うことで、燃焼状態を改善することができる。なお、過渡運転状態において一燃焼サイクル中の総燃料噴射量を徐々に変化させる場合は、該過渡運転中のそれぞれのタイミングにおける一燃焼サイクル中の総燃料噴射量に対応する基準第3噴射燃料量および基準第2噴射燃料量を基準として第3噴射燃料の増量補正および第2噴射燃料の減量補正を行うことになる。
[燃焼制御フロー]
次に、本実施例に係る燃焼制御の制御フローについて図18〜21に基づいて説明する。図18〜20は、本実施例に係る燃焼制御の制御フローを示すフローチャートである。なお、本フローにおけるS101〜S112は、図11に示すフローと同様である。そのため、特に必要のない限り、これらのステップでの処理についての説明は省略する。また、図21は、本実施例に係る燃焼制御における各パラメータの基準値、即ち、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第3噴射燃料量Sppb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、基準第3噴射時期Tppb、および基準点火時期Tsbを算出するためのフローを示すフローチャートである。なお、後述するように、本フローは、高負荷領域R6における各パラメータの基準値を算出するためのフローである。本実施例においても、低負荷領域R3、第1中負荷領域R4、および第2中負荷領域R5での燃焼制御における各パラメータの基準値は、図13,14に示すフローに従って算出される。図18〜21に示すフローは、ECU20に予め記憶されており、内燃機関1が稼働している間、ECU20に格納された制御プログラムが実行されることで、所定の間隔で繰り返し実行される。
また、図22は、本実施例に係る燃焼制御において、負荷対応噴射量S0、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第3噴射燃料量Sppb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、基準第3噴射時期Tppbおよび基準点火時期Tsbの算出に用いられるマップの一例を示している。図22の上段(a)では、図15(a)と同様、内燃機関1の機関負荷と負荷対応噴射量S0との相関を線L20で示し、該機関負荷と基準第1噴射燃料量Spbの相関を線L21で示し、該機関負荷と基準第2
噴射燃料量Smbとの相関を線L22で示している。さらに、図22(a)では、内燃機関1の機関負荷と基準第3噴射燃料量Sppbとの相関を線L23で示している。また、図22(a)では、点火プラグ5による点火を行った際の火炎伝播では燃焼していない第1噴射燃料の燃え残り量をM1で示している。また、図22(a)において、第1所定量S1は、低負荷領域R3と第1中負荷領域R4との境界となる機関負荷に対応する燃料噴射量であり、第2所定量S2は、第1中負荷領域R4と第2中負荷領域R5との境界となる機関負荷に対応する燃料噴射量である。また、図22(a)において、S3(>S2)は、第2中負荷領域R5と高負荷領域R6との境界となる機関負荷に対応する燃料噴射量を表している(以下、この燃料噴射量を「第3所定量S3」と称する)。
また、図22の下段(b)では、図15(b)と同様、内燃機関1の機関負荷と第1噴射時期Tpの相関を線L31で示し、該機関負荷と点火時期Tsとの相関を線L30で示し、該機関負荷と第2噴射時期Tmとの相関を線L32で示している。さらに、図22(b)では、内燃機関1の機関負荷と第3噴射時期Tppとの相関を線L33で示している。そして、線L31と線L32との間隔が第1噴射インターバルDi1を示し、線L31と線L30との間隔が点火インターバルDsを示し、線L33と線L31との間隔が第2噴射インターバルDi2を示している。なお、図22(b)の縦軸は、図15(b)の縦軸と同様、圧縮行程上死点を基準としたクランク角(BTDC)を表しており、その値が大きくなるほど圧縮行程におけるより早い時期であることを意味する。また、図18に示す制御フローのS103においては、図13,14に示すフローに従って、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbが算出されるが、その際、各パラメータを算出する処理を行う各ステップにおいては、図22に示すマップが利用される。ただし、図22に示すマップにおいて、低負荷領域R3、第1中負荷領域R4、および第2中負荷領域R5における内燃機関1の機関負荷と各制御パラメータとの相関は、図15に示すマップと同様となっている。
図18に示す燃焼制御の制御フローでは、S102において負荷対応噴射量S0が算出されると、次に、S302の処理が実行される。S302においては、負荷対応噴射量S0が第3所定量S3以下であるか否かが判別される。S302で肯定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第3所定量S3以下の場合、内燃機関1の目標機関負荷Qetは低負荷領域R3、第1中負荷領域R4、または第2中負荷領域R5に属している。この場合、次にS103の処理が実行される。一方、S302で否定判定された場合、すなわち負荷対応噴射量S0が第3所定量S3より大きい場合、内燃機関1の機関負荷は高負荷領域R6に属している。第3所定量S3は、第3噴射を行うことなく第1噴射および第2噴射のみで負荷対応噴射量S0を満たすような量の燃料を噴射した場合、スモークの発生量の観点から、基準第2噴射燃料量Smbのみならず基準第1噴射燃料量Spbも上限値となる機関負荷に対応した燃料噴射量として設定されている。つまり、第3所定量S3は、基準第1噴射燃料量の上限値と基準第2噴射燃料量の上限値の和に相当する。そのため、高負荷領域R6は、第1噴射および第2噴射に加えて第3噴射を行い、且つ、機関負荷の増加に対して基準第3噴射燃料量Sppbを増量することで対応する運転領域として設定されている。
そして、S302で否定判定された場合、次に、S303において、図21に示すフローに従って、目標機関負荷Qetに対応する基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第3噴射燃料量Sppb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、基準第3噴射時期Tppbおよび基準点火時期Tsbが算出される。
図21に示すフローでは、先ず、S401において、図22(b)で線L32に示すマップを利用して、目標機関負荷Qetに対応する基準第2噴射時期Tmbが決定される。
なお、後述するように、高負荷領域R6では、第2中負荷領域R5と同様、基準第2噴射燃料量Smbが最大基準第2噴射燃料量Smbmaxで固定される。そのため、高負荷領域R6では、第2中負荷領域R5と同様、基準第2噴射時期Tmbの進角量も上限値に維持される。
次に、S402において、図22(a)で線L22に示されるマップを利用して、機関負荷が第2中負荷領域R5に属している場合と同様、基準第2噴射燃料量Smbが最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに決定される。つまり、図22(a)で線L22に示されるように、高負荷領域R6では、第2中負荷領域R5と同様、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定される。
次に、S403において、図22(a)で線L21に示されるマップを利用して、基準第1噴射燃料量Spbが最小基準第1噴射燃料量Spbminに決定される。つまり、図22(a)で線L21に示されるように、高負荷領域R6では、低負荷領域R3と同様、基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminに固定される。
次に、S404において、図22(a)で線L23に示されるマップを利用して、基準第3噴射燃料量Sppbが決定される。なお、高負荷領域R6では、線L23で示される負荷対応噴射量S0と基準第3噴射燃料量Sppbとの相関は、以下の式16に従う。
Sppb = S0 −Spb×α −Smb ・・・(式16)
ここで、αは、式2と同じく、第1噴射燃料の燃え残り率である。上述したとおり、本実施例に係る高負荷燃焼制御では、通常の場合(すなわち、定常運転状態のときのように、実際の過給圧が機関負荷に対応した過給圧となっている場合)、第3噴射燃料のほとんどは第2噴射燃料とともに自着火または拡散燃焼に供されることで機関出力に寄与する。そのため、機関出力に寄与するという観点に立てば、第3噴射燃料は第2噴射燃料と同等と言うことができる。そこで、上記式16に従って基準第3噴射燃料量Sppbを算出することで、機関負荷に対応する燃料噴射量を確保するのに適切な基準第3噴射燃料量Sppbを求めることができる。なお、高負荷領域R6においては、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定されるため、上記式16においてSmb=Smbmaxとなる。また、高負荷領域R6においては、基準第1噴射燃料量Spbは最小基準第1噴射燃料量Spbminで固定されるため、上記式16においてSpb=Spbminとなる。また、後述するように、高負荷領域R6においては、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、および基準点火時期Tsbはいずれも一定であり、点火インターバルDs及び第1噴射インターバルDi1はいずれも一定となるため、上記式16における係数αも一定値となる。つまり、高負荷領域R6においては、機関負荷が上昇した場合、その上昇量分に対応した量だけ基準第3噴射燃料量Sppbが増量されることになる。
なお、第3噴射燃料としてある程度以上の燃料を噴射する必要があったり、第2噴射インターバルとして十分なインターバルを確保することが困難な状況となったりした場合は、第3噴射燃料において、第1噴射後の点火によって生じた火炎伝播によって燃焼する割合が大きくなることも考えられる。そして、この割合がある程度以上大きくなるようであれば、基準第3噴射燃料量Sppbの決定の際に、第1噴射後の点火によって生じた火炎伝播によって燃焼する分を考慮する必要がある。そこで、このような場合は、下記式16´に従って基準第3噴射燃料量Sppbを算出してもよい。
Sppb =(S0 −Spb×α −Smb)×(1/β) ・・・(式16´)
β:第3噴射燃料量における第2噴射開始後の自着火または拡散燃焼に供される分の割合
上記式16´における係数βは、実験等に基づいて予め求めることができる。当該係数βを考慮した上記式16´に従って基準第3噴射燃料量Sppbを算出することで、適切
な基準第3噴射燃料量Sppbを求めることができる。
次に、S405において、図22(b)で線L31に示すマップを利用して基準第1噴射時期Tpbが決定される。ここで、高負荷領域R6では、基準第2噴射燃料量Smbは最大基準第2噴射燃料量Smbmaxに固定されるため、S401で決定される基準第2噴射時期Tmbも一定に維持される。そして、高負荷領域R6では、基準第1噴射燃料量Spbも最小基準第1噴射燃料量Spbminに固定される。そのため、高負荷領域R6では、基準第2噴射時期Tmbに対し、基準第1噴射燃料量Spbが最小基準第1噴射燃料量Spbminである場合に熱効率が好適な状態となる第1噴射インターバルDi1が確保されるように決定される基準第1噴射時期Tpbも一定となる。
次に、S406において、図22(b)で線L30に示すマップを利用して、基準点火時期Tsbが決定される。図22(b)に示すように、基準第1噴射時期Tpbと基準点火時期Tsbとのインターバルである点火インターバルDsは一定に維持される。そのため、高負荷領域R6では、基準点火時期Tsbは一定に維持される。
次に、S407において、図22(b)で線L33に示すマップを利用して、基準第3噴射時期Tppbが決定される。上述のように、本実施例に係る高負荷燃焼制御においては、基準第1噴射時期Tpbと基準第3噴射時期Tppbとのインターバルとして、第3噴射燃料が第2噴射の実行開始後の自着火または拡散燃焼によって燃焼するような第2噴射インターバルDi2を確保する必要がある。そのため、基準第3噴射時期Tppbは、基準第1噴射時期Tpbに対してこのような第2噴射インターバルDi2が確保されるように決定される。ここで、高負荷領域R6では、上記のように、機関負荷の上昇に従って基準第3噴射燃料量Sppbが増量される。そこで、高負荷領域R6では、図22(b)に示すように、ある程度の機関負荷までは、機関負荷の上昇に従って、第2噴射インターバルDi2が大きくなるように、基準第3噴射時期Tppbが進角される。第2噴射インターバルDi2が大きくなるほど、第1噴射が実行されるまでの間に、燃焼室内における第3噴射燃料の拡散がより促進されることになる。また、第3噴射時期が進角されるほど、該第3噴射時期における燃焼室内の圧力は相対的に低くなるため、第3噴射燃料により形成される噴霧のペネトレーションが相対的に大きくなる。このことからも、基準第3噴射時期Tppbが進角されるほど、第3噴射燃料が燃焼室内においてより広範囲に拡散され易くなる。そして、第3噴射燃料が燃焼室内においてより広範囲に拡散されることで、第3噴射燃料が、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火を行った際の火炎伝播によっては燃焼し難くなる(つまり、第3燃料噴射量における、点火によって生じた火炎伝播によって燃焼する分の割合がより減少する)。
高負荷領域R6では、第1噴射、第2噴射、第3噴射および点火に関する各パラメータの基準値は以上のように決定される。なお、内燃機関1の運転状態がこの高負荷領域R6において定常運転状態となっている場合(すなわち、実際の過給圧が目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧となっている場合)に、第1噴射燃料量、第2噴射燃料量、第3噴射燃料量、第1噴射時期、第2噴射時期、第3噴射時期、および点火時期を、上記のように決定された基準値として燃焼制御が実行されると、第1噴射燃料のプレ噴霧への点火後に図22(a)にM1で示す量の第1噴射燃料の燃え残りが生成されることになる。上記のとおり、高負荷領域R6では、基準第1噴射燃料量Sp、第1噴射インターバルD1i、および点火インターバルDsは、低負荷領域R3と同様となる。その結果、低負荷領域R3と同様、第1噴射燃料の燃え残り量は概ね一定となる。
ここで、図19に示すフローに戻り、S303において、目標機関負荷Qetに対応する基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第3噴射燃料量Sppb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、基準第3噴射時期Tppb、およ
び基準点火時期Tsbが算出された後、次に、S304において、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinが、S101で算出された目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintと同等であるか否かが判別される。つまり、S304においてはS104と同様の処理が行われる。なお、S104と同様、S304においても、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintから所定の範囲内の値であれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintと同等である判定されてもよい。S304において肯定判定された場合、すなわち、内燃機関1の運転状態が定常運転状態の場合、次にS305の処理が実行される。
S305においては、燃焼制御の各パラメータが、S303で算出された基準値に設定される。すなわち、第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp,第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、第3噴射時期Tpp、および点火時期Tsが、それぞれ、S303で算出された、基準第1噴射燃料量Spb、基準第2噴射燃料量Smb、基準第3噴射燃料量Sppb、基準第1噴射時期Tpb、基準第2噴射時期Tmb、基準第3噴射時期Tppb、および基準点火時期Tsbに設定される。そして、次に、S306において、S305で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp,第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、第3噴射時期Tpp、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射、第2噴射、および第3噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
一方、S304において否定判定された場合、すなわち、内燃機関1の運転状態が過渡運転状態であって、現在、過給圧の応答期間中の場合、次にS307の処理が実行される。S307においては、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintより低いか否かが判別される。つまり、S307においてはS107と同様の処理が行われる。S307において肯定判定された場合、つまり、内燃機関1の運転状態が加速運転状態の場合、次にS308において、高負荷領域での加速運転状態における、補正第3噴射燃料量Sppa3、補正第3噴射時期Tppa3を算出するために用いられる係数c3が算出される。ここで、係数c3は、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinと、S101で算出された目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintとに基づき下記の式17により算出される。
c3 = Pint/Pin ・・・(式17)
次に、S309において、S308で算出された係数c3を用いて、補正第3噴射燃料量Sppa3、補正第3噴射時期Tppa3が下記の式18,19により算出される。
補正第3噴射燃料量Sppa3 = Sppb×c3 ・・・(式18)
補正第3噴射時期Tppa3 = Tppb×c3 ・・・(式19)
次に、S310において、補正第2噴射燃料量Sma3および補正第2噴射時期Tma3が下記の式20,21により算出される。
補正第2噴射燃料量Sma3 = Sat−Spb−Sppa3 ・・・(式20)
ここで、目標総燃料噴射量Sat=Spb+Smb+Sppb
補正第2噴射時期Tma3 = Tmb×(Sma3/Smb) ・・・(式21)
上記式18〜21によれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも低くなっている加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間においては、補正第3噴射燃料量Sppa3は基準第3噴射燃料量Sppbよりも大きくなり、補正第2噴射燃料量Sma3は基準第2噴射燃料量Smbよりも小さくなる。また、補正第3噴射時期Tppa3は基準値より大きくなる(すなわち、補正第3噴射時期Tppa3は基準第3噴射時期Tppbよりも早い時期となる。)。また、補正第2噴射時期Tma3は基準値より小さくなる(すなわち、補正第2噴射時期Tma3は基準第2噴射時期Tmbよりも遅い時期となる。)。
次に、S311において、第1噴射燃料量Sp、第1噴射時期Tpおよび点火時期Tsが、それぞれ、S303で算出された基準第1噴射燃料量Spb、基準第1噴射時期Tpbおよび基準点火時期Tsbに設定される。これにより、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間中であっても、第1噴射燃料量Spは基準第1噴射燃料量Spbに設定される。これにより、第1噴射割合が、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした場合の基準第1噴射割合と同一の割合に制御される。また、加速運転状態における過給圧の応答遅れ期間中であっても、第1噴射時期Tpは基準第1噴射時期Tpbに設定され、点火時期Tsは基準点火時期Tsbに設定されることになる。また、S311おいては、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp、第2噴射時期Tm、および第3噴射時期Tppが、それぞれ、S309,S310で算出された補正第2噴射燃料量Sma3、補正第3噴射燃料量Sppa3、補正第2噴射時期Tma3、補正第3噴射時期Tppa3に設定される。そして、次に、S312において、S311で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp,第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、第3噴射時期Tpp、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射、第2噴射、および第3噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
一方、S307において否定判定された場合、内燃機関1の運転状態は減速運転状態であると判断できる。この場合、次にS313において、高負荷領域での減速運転状態における、補正第3噴射燃料量Sppa4、補正第3噴射時期Tppa4を算出するために用いられる係数c4が算出される。ここで、係数c4は、圧力センサ73によって検出される実際の過給圧Pinと、S101で算出された目標機関負荷Qetに対応する目標過給圧Pintとに基づき下記の式22により算出される。
c4 = Pin/Pint ・・・(式22)
次に、S314において、S313で算出された係数c4を用いて、補正第3噴射燃料量Sppa4、補正第3噴射時期Tppa4が下記の式23,24により算出される。
補正第3噴射燃料量Sppa4 = Sppb×c4 ・・・(式23)
補正第3噴射時期Tppa4 = Tppb×c4 ・・・(式24)
次に、S315において、補正第2噴射燃料量Sma4および補正第2噴射時期Tma4が下記の式25,26により算出される。
補正第2噴射燃料量Sma4 = Sat−Spb−Sppa4 ・・・(式25)
ここで、目標総燃料噴射量Sat=Spb+Smb+Sppb
補正第2噴射時期Tma4 = Tmb×(Sma4/Smb) ・・・(式26)
上記式23〜26によれば、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも高くなっている減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間においては、補正第3噴射燃料量Sppa4は基準第3噴射燃料量Sppbよりも大きくなり、補正第2噴射燃料量Sma4は基準第2噴射燃料量Smbよりも小さくなる。また、補正第3噴射時期Tppa4は基準値より大きくなる(すなわち、補正第3噴射時期Tppa4は基準第3噴射時期Tppbよりも早い時期となる。)。また、補正第2噴射時期Tma4は基準値より小さくなる(すなわち、補正第2噴射時期Tma4は基準第2噴射時期Tmbよりも遅い時期となる。)。
次に、S316において、第1噴射燃料量Sp、第1噴射時期Tpおよび点火時期Tsが、それぞれ、S303で算出された基準第1噴射燃料量Spb、基準第1噴射時期Tpbおよび基準点火時期Tsbに設定される。これにより、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間中であっても、第1噴射燃料量Spは基準第1噴射燃料量Spbに設定される。これにより、第1噴射割合が、一燃焼サイクル中における総燃料噴射量を同一とした
場合の基準第1噴射割合と同一の割合に制御される。また、減速運転状態における過給圧の応答遅れ期間中であっても、第1噴射時期Tpは基準第1噴射時期Tpbに設定され、点火時期Tsは基準点火時期Tsbに設定されることになる。また、S316おいては、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp、第2噴射時期Tm、および第3噴射時期Tppが、それぞれ、S314,S315で算出された補正第2噴射燃料量Sma4、補正第3噴射燃料量Sppa4、補正第2噴射時期Tma4、補正第3噴射時期Tppa4に設定される。そして、次に、S317において、S316で設定された第1噴射燃料量Sp、第2噴射燃料量Sm、第3噴射燃料量Spp,第1噴射時期Tp、第2噴射時期Tm、第3噴射時期Tpp、および点火時期Tsに従って、燃料噴射弁6による第1噴射、第2噴射、および第3噴射と、点火プラグ5による点火とが実行される。その後、本フローの実行が一旦終了される。
なお、上記制御フローによれば、高負荷領域での過渡運転状態における過給圧の応答遅れ期間においては、第3噴射時期が基準第3噴射時期よりも進角されることになる。しかしながら、圧縮行程において、第3噴射時期があまりに早い時期となると、第3噴射燃料が気筒2のボア壁面に付着し易くなる。そこで、第3噴射燃料のボア壁面への付着量を抑制するために、第3噴射時期には上限値(最進角値)を設けてもよい。この場合、機関負荷の上昇に従って基準第3噴射時期Tppbを進角させることで、基準第3噴射時期Tppが当該上限値に達した場合、さらに機関負荷が上昇し基準第3噴射燃料量Sppbが増量されても、基準第3噴射時期Tppbは当該上限値に維持される。また、上記式19,24による補正第3噴射時期Tppa3,Tppa4の算出値が上限値より大きくなった場合も、第3噴射時期Tppは当該上限値に設定される。
また、本実施例において高負荷領域における第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータの補正値を算出するための算出式は上記式17〜26に限られるものではない。ただし、他の補正係数や算出式を用いた場合であっても、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも低くなっている加速運転状態での過給圧の応答遅れ期間、および、実際の過給圧Pinが目標過給圧Pintよりも高くなっている減速運転状態での過給圧の応答遅れ期間における、第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータの基準値と補正値との関係は上述したものとなる。
また、上記制御フローでは、上記式4〜15によって第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータの補正値を算出したが、これとは別の手法によって、過渡運転状態における実際の過給圧に応じた各パラメータの値を決定してもよい。例えば、実施例1において燃焼制御における各パラメータの補正値の算出手法の他の一例として例示したように、それぞれが異なる過給圧に対応している複数のマップを用いて第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータを算出するようにしてもよい。
また、上記制御フローでは、高負荷領域での過渡運転状態における実際の過給圧が目標過給圧とずれている期間において、第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータが補正される。しかしながら、過給圧の応答遅れ期間の全期間において第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータを補正する必要はない。つまり、高負荷領域での過給圧の応答遅れ期間の一部の期間において、第2噴射および第3噴射の制御に関する各パラメータを上述のとおり補正した場合でも、当該一部の期間においては、燃焼状態改善の効果を得ることができる。
また、本実施例において、図22に示す内燃機関1の機関負荷と燃焼制御における各パラメータの基準値との相関はあくまでも一例であり、これらの関係は図22に示すような関係に限られるものではない。例えば、高負荷領域R6において、基準第1噴射燃料量Spbを最大基準第1噴射燃料量Spbmaxで固定してもよい。また、高負荷領域R6に
おいて、スモークの発生量および燃焼安定性の観点から許容可能な範囲内で、基準第1噴射燃料量Spbまたは基準第2噴射燃料量Smbを機関負荷の増加にしたがって増量するようにしてもよい。