以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
<実施形態1>
図1及び図2に示すように、実施形態に係るインクジェット式記録装置は、オーディオラック5等にも収容容易な薄型のプリンタ1である。
ケーシング10はいわゆる薄型のケーシングであり、高さ方向の長さが左右方向及び前後方向の長さに比べて短い略直方体形状に形成されている。ここでは、高さ方向の長さは、左右方向長さの1/4以下、前後方向長さの1/3以下となっている。ケーシング10の左右方向中央部の前方から上方にかけては、手差し給紙やインクカートリッジ750(図5参照)の交換等のための開口30が形成されている。ケーシング10の前面及び上面には、開口30を覆う開閉自在なカバー33が設けられている。
なお、以下の説明では、開口30の左右方向と直交する方向(すなわち、上下方向及び前後方向)を「縦方向」と称することとする。
ケーシング10の前面における開口30の左側及び右側には、それぞれ左側パネル41及び右側パネル42が設けられている。左側パネル41及び右側パネル42には、操作スイッチが設けられている。なお、右側パネル42には、用紙カセット200を前方に排出する用紙カセット取り出しボタン44と、後述するカートリッジホルダ700(図5参照)を移動させるカートリッジホルダスイッチ43とが配置されている。
カバー33は、ヒンジ機構で連結された前カバー31及び上カバー32からなっており、折り畳み自在に形成されている。前カバー31は断面L型の板状体からなり、開口30の前方から上方の一部を覆っている。前カバー31の下部には、用紙カセット200を挿通させる左右方向に細長い開口30Aが形成されており、前カバー31を閉じた状態のままで用紙カセット200の抜き差しが自在になっている。上カバー32は平板状の板状体からなり、開口30の上方の一部を覆っている。上カバー32の縦方向長さ(前後方向長さ)は、開口30の上面長さの1/3〜2/3が好ましく、1/2であることが特に好ましい。これは、カバー33の開閉動作に際して、カバー33の上方への突出量をできるだけ抑えるためである。カバー33の上方への突出量を少なくすることにより、上方に大きなスペースのない箇所にもプリンタ1を設置することが可能となる。
次に、プリンタ1の内部構造を説明する。図5に示すように、ケーシング10の内部には、記録部100と、用紙カセット200と、複数のインクカートリッジ750を保持するインクカートリッジホルダ700とが設けられている。本プリンタ1は、インクカートリッジ750をキャリッジ102とは別の箇所に装着するいわゆるオフキャリッジ式の記録装置である。
記録部100は、インクジェット式の記録ヘッド101(図7及び図8参照)と、記録ヘッド101にインクを供給するサブタンク104と、記録ヘッド101及びサブタンク104を搭載するキャリッジ102と、記録ヘッド101と対向するプラテン103(図7及び図8参照)とを備えている。
ケーシング10内部の左右両側には、前後方向に延びるサイドフレーム21,22が設けられている。サイドフレーム21,22のやや前側には、左右方向に延びるキャリッジ軸23が前後方向に2本固定されている。キャリッジ102には図示しない駆動機構が設けられ、キャリッジ102はこの駆動機構によってキャリッジ軸23に沿って往復移動する。
図7及び図8に示すように、プラテン103の後方には搬送ローラ24が設けられ、プラテン103の前方には排紙ローラ25が設けられている。搬送ローラ24の上方には、当該搬送ローラ24と対向するピンチローラ26が配置され、排紙ローラ25の上方には、当該排紙ローラ25と対向する拍車ローラ27が配置されている。また、搬送ローラ24の後方には、給紙ローラ29が設けられている。用紙カセット200内の記録紙50は、給紙ローラ29によって取り出された後、搬送ローラ24によって記録ヘッド101とプラテン103との間に搬送される。そして、記録ヘッド101によって記録が行われた後、記録紙50は排紙ローラ25によって前方に送り出され、ケーシング10の外部に排出される。なお、符号52は分離パッドである。
図13に示すように、給紙ローラ29と搬送ローラ24との間には、用紙レバー49Aと、用紙レバー49Aの回転を検知する検知センサ51(図13以外では図示省略。)とが設けられている。用紙レバー49Aは、記録紙50の搬送が開始されると、記録紙50の先端によって回転方向の力を受け、回転する(図13における時計回り方向に回転する)。そして、記録紙50の搬送中は、回転後の状態が維持される。用紙レバー49Aは、図示しないバネによって復元力を受けている。そのため、用紙レバー49Aは、記録紙50の後端が通過するとバネの復元力によって反対方向に回転し(図13における反時計回り方向に回転する)、元の位置に戻る。検知センサ51は、用紙レバー49Aが回転した状態になるとONとなり、元の位置に戻るとOFFとなる。したがって、記録紙50が給紙ローラ29と搬送ローラ24との間を通過している間は検知センサ51がONとなり、記録紙50が通過した後には検知センサ51はOFFとなる。
本プリンタ1では、上記検知センサ51が連続的にONとなっている時間又はその間の搬送ローラ24の回転量等に基づいて、記録紙50の搬送量が検出される。記録紙50の搬送量は記録紙50のサイズによって一義的に定まる所定量であるため、検出した搬送量が所定量を超えている場合には、紙詰まりが生じたと推定される。本実施形態では、このようにして紙詰まり(ジャム)の検知を行うこととしている。したがって、用紙レバー49A及び検知センサ51は、ジャム検知装置を構成している。ただし、紙詰まりを検知する手段(ジャム検知手段)は、上記構成のものに限定されず、他の構成のものを採用することも勿論可能である。
なお、ジャムの発生の有無は、ケーシング10のパネル41,42上の表示部に表示してもよく、プリンタ1に接続されたパーソナルコンピュータやテレビ等に表示してもよい。また、音声等によって通知するようにしてもよい。ジャムの通知方法は、何ら限定されるものではない。
図5に示すように、用紙カセット200は、ケーシング10内部の底部に配置され、ケーシング10に対して着脱自在に取り付けられている。用紙カセット200の横幅はケーシング10の横幅よりも短い。したがって、ケーシング10内の用紙カセット200の左右両側には、ある程度の空きスペースが形成されている。また、用紙カセット200の前後方向長さは、ケーシング10の側面の前後方向長さよりも長い。したがって、装着時には用紙カセット200の後端部はケーシング10の側面よりも後方にはみ出し、ケーシング10の背面の突出部13に覆われる(図1参照)。
図14及び図15に示すように、用紙カセット200の後側には、記録前の記録紙50を蓄える給紙用トレイ206が形成され、用紙カセット200の前側には、記録後の記録紙50を支持する伸縮自在な排紙用トレイ220が形成されている。これら給紙用トレイ206と排紙用トレイ220とは、一体的に組み立てられている。用紙カセット200の左右両側には、前後方向に延びる突出片252が設けられている。用紙カセット200が抜き差しされる際には、突出片252は、ケーシング10内に設けられた図示しないカセットガイド内を前後方向にスライドする。これにより、抜き差しに際して、用紙カセット200は所定の位置に案内される。
図15に示すように、排紙用トレイ220は、上下に重ねられた第1トレイ201、第2トレイ202及び第3トレイ203からなり、前後方向に伸縮自在に構成されている。記録紙50に記録を行う際には、記録ヘッド101による記録動作に先立って、ユーザが第3トレイ203の前側に設けられた把手部205をつかみ、第3トレイ203を前方に引き出す(図3参照)。それにより、第1〜第3トレイ201〜203はそれぞれ前方にスライドし、排紙用トレイ220は展開してケーシング10の前方に突出する(図4参照)。
図16に示すように、各トレイ201〜203の表面の後側には、上向きに突出する突起を有するロック爪262が形成されている。一方、図17に示すように、給紙用トレイ206の前側部分204及び第1〜第2トレイ201〜202の裏面には、ロック爪262と係合する第1ロック溝264と第2ロック溝263とが設けられている。第1ロック溝264は、各トレイ201〜203が収納状態にあるときに各ロック爪262と係合する溝である。第1ロック溝264内の前側は傾斜面となっており、各トレイ201〜203に前向きの力が加えられると、ロック爪262は上記傾斜面を滑ることにより、ロックが解除される。第2ロック溝263は、各トレイ201〜203が前方に移動した際に、その連結が外れないように規制する規制手段を形成している。第2ロック溝263の内部には、後ろ向きに突出する突起263aが設けられており、ロック爪262が第2ロック溝263と係合すると、上記突起263aによってロック爪262の前方への移動が規制される。
なお、ロック爪262の個数や形状等は、何ら限定されるものではない。各トレイ201〜203の離脱を阻止するための規制手段は、ロック爪262とロック溝263とからなるものに限定されず、他の手段を用いることも勿論可能である。
排紙用トレイ220を構成するトレイの個数は、3個に限らず、1又は2個であってもよく、4個以上であってもよい。排紙用トレイ220の伸縮構造は、上述した構造に限定されるものではない。
用紙カセット200においては、排紙用トレイ220を展開する際に生じる摩擦力は、用紙カセット200をケーシング10から引き抜く際に生じる摩擦力よりも大きく設定されている。したがって、用紙カセット200のロックが解除されている場合、用紙カセット200の把手部205を前方に引き出すと、排紙用トレイ220は展開せずに、用紙カセット200の全体が引き抜かれることになる。
図14に示すように、給紙用トレイ206の底面には、給紙用トレイ206のやや右側において前後方向に延びる第1スライド溝254と、給紙用トレイ206のやや前側において左右方向に延びる第2スライド溝258とが形成されている。第1スライド溝254には、記録紙50の後端を揃える用紙後端ガイド251がスライド自在にはめ込まれ、第2スライド溝258には、記録紙50の左端を揃える用紙左端ガイド257がスライド自在にはめ込まれている。用紙後端ガイド251及び用紙左端ガイド257は、それぞれ記録紙50の後端及び左端に接触するように記録紙50の用紙サイズに応じてスライドされ、給紙用トレイ206内の記録紙50を揃った状態に整える。
用紙後端ガイド251は、前方に開いた断面コ字型に形成されている。第1スライド溝254の前側には、用紙後端ガイド251の前方への移動を規制する規制爪255が設けられ、第1スライド溝254の後側には、用紙後端ガイド251の後方への移動を規制する規制爪256が設けられている。これら規制爪255,256により、用紙後端ガイド251は第1スライド溝254から外れないように構成されている。
第1スライド溝254の後端部は給紙用トレイ206の後壁260にまで延びており、この後壁260には、用紙後端ガイド251を後方に逃がす切り欠き261が形成されている。用紙後端ガイド251が切り欠き261内に挿入されて規制爪256と係合すると、用紙後端ガイド251の内面は後壁260の内面と略面一になる。また、用紙後端ガイド251の縦壁の厚みは給紙用トレイ206の後壁260の厚みとほぼ同一であり、用紙後端ガイド251の背面も後壁260の外面と略面一の状態となる(図9参照)。
図14に示すように、第2スライド溝258には、用紙左端ガイド257の右方への移動を規制する規制爪259が設けられている。これにより、用紙左端ガイド257も第2スライド溝258から外れないように構成されている。
給紙用トレイ206の後壁260には、前方に突出する突出片250が設けられている。本実施形態では、突出片250は左右方向に複数個配置されている。これら突出片250は、後壁260の上部から前方に張り出し、いわゆるオーバーハングを形成している。突出片250は、用紙カセット200を引き抜く際に記録紙50の後端部を保持する保持手段を構成している。
図20及び図21に示すように、用紙カセット200の右端の後側には、前向きに凹んだ段差部265が形成されている。ケーシング10のベース板金266には、段差部265に当接して段差部265を前向きに付勢するばね253が取り付けられている。したがって、用紙カセット200はばね253によって前向きに付勢されている。
ベース板金266の右前側には、第1ロック機構として、用紙カセット200をロックするロックレバー45が設けられている。ロックレバー45は平面視略L字型に形成され、その中央部において、ベース板金266から上方に延びる回転軸47に回転自在に支持されている。ロックレバー45の先端は鉤爪状に屈曲しており、用紙カセット200をロックする際には、用紙カセット200の右前側に形成されたロック溝48内にはまり込む。ロックレバー45の他端は、前後方向に延びるカセット取り出しロッド49に回転自在に支持されている。なお、カセット取り出しロッド49の前側は、用紙カセット取り出しボタン44を形成している。ロックレバー45の他端側は、ベース板金266側に設けられたばね46によって前向きに付勢されている。これにより、ロックレバー45には、用紙カセット200をロックする方向(回転軸47を中心とした平面視時計回り方向。以下、ロック方向という)の付勢力が作用している。
用紙カセット200をケーシング10から引き抜く際には、ユーザは用紙カセット取り出しボタン44を後ろ向きに押し込む。その結果、ばね46の付勢力に抗してロックレバー45が平面視反時計回り方向(以下、反ロック方向という)に回転し、ロックレバー45の先端が用紙カセット200のロック溝48から外れる。これにより、用紙カセット200のロックが解除される。このように、用紙カセット取り出しボタン44及びカセット取り出しロッド49は、ロック解除機構を構成している。用紙カセット200はばね253により前向きに付勢されているので、ロックが解除されると、用紙カセット200は前方に排出される。したがって、ユーザが用紙カセット取り出しボタン44を押し込むと、用紙カセット200は自動的に排出されることになる。
一方、用紙カセット200をケーシング10に収容する際には、ユーザは用紙カセット200を後方に向かって挿入する。この際、ロックレバー45は用紙カセット200の右側面と接触し、当該右側面に押されることによって反ロック方向に回転する(図21参照)。そして、用紙カセット200の全体が挿入されると、ロックレバー45の先端がロック溝48にはまり込み、用紙カセット200は自動的にロックされる。
図5に示すように、カートリッジホルダ700は、複数のインクカートリッジ750を着脱自在に保持する保持部材である。本プリンタ1では、カートリッジホルダ700には、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、及びライトマゼンタのインクを収容した複数のインクカートリッジ750が取り付けられている。
カートリッジホルダ700は、前後方向に移動自在に構成されている。ここでは、最も前方の位置をホーム位置といい、最も後方の位置を退避位置という。
カートリッジホルダ700の右側には鋸歯が形成されており、この鋸歯はラック704を構成している。また、カートリッジホルダ700の前面中央部の下側には、前方に突出した上つまみ709及び下つまみ711が設けられている。
左側サイドフレーム21の内側(右側)及び右側サイドフレーム22の内側(左側)には、カートリッジホルダ700をスライド移動自在に保持するホルダーガイド741,742が設けられている。ホルダーガイド741,742には、カートリッジホルダ700と係合する前後方向に延びる溝743が形成されている。
右側サイドフレーム22の上端部には、内側(左側)に延びるフレーム22Aが設けられている。このフレーム22Aには、図示しないモータに連結されたモータピニオン714が配置されている。また、ホルダーガイド742には、モータピニオン714と噛み合うギア715と、ギア715と噛み合うギア716とが設けられている。ギア716は、カートリッジホルダ700のラック704と噛み合っている。したがって、モータピニオン714の回転に伴って、カートリッジホルダ700は前後方向に移動することになる。これらモータピニオン714及びギア715,716は、カートリッジホルダ700を前後移動させる駆動機構790を構成している。なお、モータピニオン714は、カートリッジホルダスイッチ43(図1参照)によって操作される。
ホルダーガイド742には、後ろ向きに延びるコイルバネ717が設けられており、カートリッジホルダ700にはコイルバネ717に当接する当て板718が形成されている。ホーム位置にあっては、コイルバネ717は当て板718によって前方に押し込まれ、収縮した状態となる。したがって、カートリッジホルダ700がホーム位置にあるときには、コイルバネ717は当て板718に対し後方への付勢力を与え、カートリッジホルダ700は後方に向かう力を受ける。
ホルダーガイド741,742の前側には、内方に突出するロックピン719がそれぞれ設けられている。ロックピン719は、カートリッジホルダ700がホーム位置にあるときに、ロックレバー712を係止するものである。このように、ロックレバー712とロックピン719とは、カートリッジホルダ700をホーム位置にロックするロック機構を構成している。ロックレバー712の先端側は、いったん前方に向かってから下方に向けて屈曲しており、下方に向かって湾曲した先端部分の前側には、傾斜面からなるすべり面が形成されている。ロックレバー712は、カートリッジホルダ700が前方に向かって移動しているときにロックピン719に押し当たり、上記すべり面がロックピン719上をすべることにより、ロックピン719の上に乗り上げる。その結果、カートリッジホルダ700はロックされる。すなわち、カートリッジホルダ700が前方に移動すると、ロックレバー712がロックピン719の上に乗り上げ、カートリッジホルダ700は自動的にロックされる。
図示は省略するが、カートリッジホルダ700には、ロックレバー712を前上がり方向に回転させる駆動機構が設けられている。つまり、ロックレバー712をロックピン719から解除するように回転させる駆動機構が設けられている。この駆動機構は、カートリッジホルダスイッチ43によって操作され、カートリッジホルダ700を待避位置に移動させるように操作されたときに作動する。
ただし、カートリッジホルダ700のロックを手動で解除することも勿論可能である。例えば、カートリッジホルダ700の上つまみ709と下つまみ711とをつまみ、それらを互いに近づけるように挟み込むことにより、ロックレバー712は回転し、ロックピン719から外れる。その際、コイルバネ717がカートリッジホルダ700を後方に付勢するので、カートリッジホルダ700は後方に移動し、カートリッジホルダ700のロックは解除されることになる。
ホルダーガイド742には、カートリッジホルダ700がホーム位置にあるか否かを検出するセンサ721が設けられている。センサ721は、カートリッジホルダ700の側方に突出したリブ705を検出する光透過型又は光反射型の光学式センサからなっており、リブ705が所定の位置(カートリッジホルダ700がホーム位置にあるときのリブ705の位置)にあるときに、センサ721のON/OFF状態が切り替わる。
なお、プリンタ1には、記録動作の際にカートリッジホルダ700がホーム位置にあるか否かを判定し、ホーム位置にないときには記録動作を強制的に中止する保護装置(図示せず)が設けられている。
図示は省略するが、キャリッジ軸23の右端側には、記録ヘッド101からインクをパージさせるパージユニットが設けられている。パージユニットには、記録ヘッド101のヘッド面を覆うキャップと、記録ヘッド101のインクを吸引除去する吸引ポンプとが設けられている。
左側サイドフレーム21の外側(左側)には、制御基板(図示せず)を縦置きの姿勢で収容する基板ブロック602が設置されている。
図8及び図22に示すように、プラテン103の下面には、下方に突出する規制リブ105が設けられている。規制リブ105は、左右方向に複数個配列されている。これら規制リブ105は、給紙用トレイ206に収容された記録紙50が多すぎる場合に、ケーシング10に対する用紙カセット200の挿入を規制するものである。この規制リブ105の存在により、記録紙50を過剰に収容したままでは、用紙カセット200を挿入することはできなくなる。そのため、結果として給紙用トレイ206の用紙量(総厚)は制限されることになる。
図8に示すように、各規制リブ105の前側は垂直面105aとなり、後側は傾斜面105bとなっている。そのため、所定量以上の記録紙50が収容されたまま用紙カセット200を挿入しようとすると、記録紙50の後端が規制リブ105の垂直面105aに突き当たり、用紙カセット200の挿入は阻止される。一方、用紙カセット200を抜き出す際には、記録紙50の前端が傾斜面105bと接触したとしても、記録紙50は接触面105b上を滑るので、記録紙50がケーシング10内に詰まるおそれは少ない。
次に、プリンタ1の動作について説明する。
記録を行う際には、まず、ユーザによって、用紙カセット200の把手部205が前方に引き出される。その結果、第1〜第3トレイ201〜203が順次引き出され、排紙用トレイ220が展開する(図4参照)。
その状態で、プリンタ1に対して所定の記録指令信号が送信されると、給紙ローラ29によって用紙カセット200内の記録紙50が取り出され、記録紙50は搬送ローラ24によって記録部100に搬送される。そして、キャリッジ102の移動と共に記録ヘッド101が左右方向に移動しながらインクを吐出し、プラテン103上の記録紙50に記録が行われる。記録後の記録紙50は排紙ローラ25によって搬送され、排紙用トレイ220上に排出される。
一方、記録動作時に紙詰まりが発生した場合には、ジャム検知装置によって紙詰まりの発生が通知される。この通知を受けたユーザは、詰まった記録紙50を取り除く。
ジャム処理に際しては、ユーザがカバー33を開いてケーシング10の開口30から手を挿入し、開口30を通じて詰まった記録紙50を取り除いてもよい。開口30を通じてのジャム処理は、以下のようにして行われる。すなわち、ユーザはカバー33を開いた後、カートリッジホルダスイッチ43を押す。これにより、カートリッジホルダ700はホーム位置から退避位置にまで後退し、開口30の周りのスペースは大きくなる。そして、ユーザは開口30から手を挿入し、詰まった記録紙50を取り除いた後、カートリッジホルダスイッチ43を押す。これにより、カートリッジホルダ700は退避位置からホーム位置にまで前進し、ホーム位置にロックされる。
しかし、本プリンタ1は前面から操作される薄型のプリンタであり、カートリッジホルダ700を後方に退避させたとしても、開口30の周りのスペースを大きくすることには限界がある。そのため、記録紙50の除去を容易かつ迅速に行うことが難しい場合もあり得る。特に、記録紙50の先端がプラテン103の後方で詰まった場合には、開口30を通じて行うジャム処理は、手間と時間がかかることが予想される。
ところが、本プリンタ1では、給紙用トレイ206の後壁260に突出片250が設けられているため、図23に示すように、用紙カセット200を前方に引き抜くことによって、詰まった記録紙50を用紙カセット200と共にケーシング10の外部に排出することができる。すなわち、用紙カセット200を前方に引き出す際に、詰まった記録紙50の後端部50eは突出片250によって保持されるので、少なくとも記録紙50の後端部50eは、用紙カセット200と共に排出されることになる。したがって、ユーザは、排出された部分をゆっくりと引っ張ることによって、詰まった記録紙50を容易かつ迅速に取り除くことができる。
なお、図19に示すように、記録紙50Aの用紙サイズが小さい場合には、記録紙50Aは突出片250によって保持されることはない。しかし、用紙後端ガイド251は断面コ字状に形成されているので、記録紙50Aの後端部は用紙後端ガイド251によって保持される。そのため、用紙サイズが小さい場合であっても、用紙カセット200を前方に引き出すことによって、詰まった記録紙50を外部に排出することができる。したがって、用紙後端ガイド251も、記録紙50の後端部50eを保持する保持手段として機能する。
以上のように、本プリンタ1によれば、ケーシング10の内部で記録紙50が詰まったとしても、用紙カセット200を前方に引き抜くことによって記録紙50の後端部50eが排出されるので、ユーザは記録紙50を容易に除去することができる。そのため、ケーシング10の前方に大きな開口を設けなくても、ジャム処理を容易に実行することができる。したがって、プリンタ1を薄型に構成することが可能となる。
ユーザが把手部205をつかんで排紙用トレイ220を引き出す際には、ロックレバー45が用紙カセット200をロックしているので、用紙カセット200の全体が前方に引き抜かれることがなく、排紙用トレイ220を容易に展開することができる。
一方、用紙カセット200における排紙用トレイ220を前方に引き出す際に生じる摩擦力は、用紙カセット200をケーシング10から引き抜く際に生じる摩擦力よりも大きく設定されている。そのため、ユーザはロックレバー45のロックを解除した後、把手部205をつかんで前方に引っ張ることにより、排紙用トレイ220を展開させることなく用紙カセット200の全体を容易に引き抜くことができる。したがって、給紙用トレイ206と排紙用トレイ220とが一体化してなる用紙カセット200の利便性を向上させることができる。
なお、排紙用トレイ220を給紙用トレイ206にロックする第2ロック機構と、排紙用トレイ220を引き出す際に当該第2ロック機構を解除するロック解除機構とを設けるようにしてもよい。このような機構を設けることによっても、用紙カセット200の利便性を向上させることが可能である。
給紙用トレイ206の後壁260に、用紙後端ガイド251を逃がす切り欠き261を設けることとしたので、用紙後端ガイド251と後壁260との重なり部分をなくすことができ、プリンタ1の前後方向長さを短くすることができる。
用紙カセット200の挿入通路に規制リブ105を設けることとしたので、給紙用トレイ206に過剰な記録紙50が収容されたまま用紙カセット200を挿入することが防止される。したがって、薄型であるにも拘わらず、紙詰まりを生じにくくすることができる。
<実施形態2>
実施形態2に係るプリンタ1は、手差し給紙が可能となるように実施形態1のプリンタ1に改良を加えたものである。
図24に示すように、本実施形態では、排紙ローラ25の前方に下側用紙ガイド107が設けられ、拍車ローラ27の前方に上側用紙ガイド106が設けられている。上側用紙ガイド106及び下側用紙ガイド107は、いずれも左右方向に細長い平板によって形成されている。
下側用紙ガイド107の前方には、排紙ローラ25Aが設けられている。また、上側用紙ガイド106の前方には、排紙ローラ25Aと対向する拍車ローラ28が設けられている。拍車ローラ28の前方には、用紙センサ150が配置されている。
給紙用トレイ206に予め収容された記録紙50に記録が行われる場合には、記録紙50は以下の用紙搬送径路に沿って搬送される。すなわち、記録紙50は、搬送ローラ24とピンチローラ26との間を通り、次にプラテン103上を通過する。その後、排紙ローラ25と拍車ローラ27との間を通過し、次に、上側用紙ガイド106と下側用紙ガイド107との間を通過する。そして、排紙ローラ25Aと拍車ローラ28との間を通過した後、排紙用トレイ220上に搬送される。
一方、ユーザによる手差し給紙と、手差しされた記録紙50への記録は、以下のようにして行われる(図25参照)。
まず、ユーザは手差しする記録紙50の用紙サイズを入力する。そして、ユーザは、図24に示すように、前方から記録紙50を挿入して、記録紙50を排紙ローラ25Aと拍車ローラ28との間に突き当てる(ステップS1)。次に、用紙センサ150が記録紙50を検知したか否かが判定され(ステップS2)、記録紙50が検知されると、排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24は、記録動作時と反対の方向に回転する(ステップS3)。なお、記録紙50が正確に挿入されない場合等では、ステップS2において記録紙50は検知されず、排紙ローラ25等は逆回転を行わない。
ステップS4では、排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24が、記録紙50の用紙サイズに応じた所定量だけ回転したか否かが判定される。なお、ここでの所定量とは、例えば、記録紙50の進行方向前側の端部が排紙ローラ25Aに突き当てられた位置から、記録紙50の進行方向後側の端部が搬送ローラ24とピンチローラ26との間に挟まれた状態のまま、プラテン103上の最後部に位置するまでの回転量である。排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24が所定量回転すると、ステップS5に進み、排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24が停止し、記録紙50の搬送は終了する。その結果、図26に示すように、記録紙50は印刷開始位置に停止する。
その後は、プリンタ1に対する印刷指示(ステップS6)に基づき、記録ヘッド101が記録紙50に印刷を行い(ステップS7)、記録紙50上に所定の画像等を形成して印刷が終了する(ステップS8)。
なお、手差しした記録紙50に記録を行う場合には、記録紙50は搬送ローラ24とピンチローラ26との間に挟まれているので、給紙ローラ29は回転させなくてもよい。ただし、給紙ローラ29を回転させてもよいことは勿論である。
上記実施形態では、手差し前にユーザが記録紙50の用紙サイズを入力することとしたが、記録紙50が印刷開始位置にあることを検知する検知手段を設けることにより、用紙サイズの入力を省略することも可能である。この場合、排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24は、記録紙50が印刷開始位置にまで搬送されたことが検知されると、逆回転を停止する。
上記実施形態では、記録紙50を印刷開始位置で停止させることとしたが、記録紙50の全体を給紙用トレイ206内にまで搬送してもよい。この場合、排紙ローラ25,25A及び搬送ローラ24は、最大の用紙サイズの記録紙50を給紙用トレイ206に搬送するのに十分な量だけ回転させればよく、用紙サイズの入力は不要となる。また、記録紙50が印刷開始位置にあることを検知する必要もない。
上記実施形態では、手差しされた記録紙50は、給紙用トレイ206から排紙用トレイ220に至る用紙搬送径路の全径路を逆向きに搬送され、印刷開始位置に到達していた。しかし、手差しされた記録紙50を上記用紙搬送径路の一部又は全部を通らずに、別の径路を通って印刷開始位置又は給紙用トレイ206上に搬送するようにしてもよい。
本実施形態によれば、記録紙50の排出径路を手差し用の径路として利用し、また、専用の手差し用トレイが不要であるので、ケーシング10の前面面積を小さく抑えることができる。したがって、プリンタ1の一層の薄型化や小型化を図ることができる。
<実施形態3>
図27に示すように、実施形態3のプリンタ1は、給紙用トレイ206の前側に用紙持ち上げ板800を設ける一方、ケーシング10のベース板金266に、用紙持ち上げ板800を用紙カセット200の側方から揺動させる揺動板金801を設けたものである。
用紙持ち上げ板800は、給紙用トレイ206の前側に配置されており、後側に設けられた左右方向に延びる回転軸(図示せず)の回りに揺動自在に構成されている。用紙持ち上げ板800の右端には、上方に突出して右方に延びる突出片806が設けられている。
ケーシング10のベース板金266には、揺動板金801を揺動自在に支持する支持フレーム807が立設され、揺動板金801の後端部において水平方向に延びるように形成された軸802が、支持フレーム807に回転自在に支持されている。揺動板金801の前側は上向きに屈曲し、用紙持ち上げ板800の突出片806を押し上げる押し上げ部808を形成している。図28に示すように、押し上げ部808は、突出片806と接触している。このように、揺動板金801は、突出片806を持ち上げる上昇力付与部材を構成している。
図27に示すように、揺動板金801の押し上げ部808には、引っ張りばね809が取り付けられている。揺動板金801の押し上げ部808は、引っ張りばね809によって上向きに付勢されている。ケーシング10内には、揺動板金801を押し下げる回転カム803が配置されている(なお、図27では、回転カム803の取付構造は省略している。)。回転カム803は、モータ805に連結されている。図29(a)及び(b)に示すように、モータ805によって回転カム803が回転されると、回転カム803の回転に伴って揺動板金801は揺動する。
図29(b)に示すように、回転カム803が揺動板金801を押し下げている状態では、揺動板金801は略水平姿勢をとる。その結果、用紙持ち上げ板800も略水平な状態となる。一方、図29(a)に示すように、回転カム803が揺動板金801を押し下げていない状態では、揺動板金801の押し上げ部808が引っ張りばね809によって上向きに引っ張られることにより、揺動板金801は前上がりに傾斜した姿勢をとる。その結果、押し上げ部が用紙持ち上げ板800の突出片806を押し上げるので、用紙持ち上げ板800は上向きに揺動し、給紙用トレイ206内の記録紙50の先端側を持ち上げることになる。これにより、給紙ローラ29は記録紙50を取り出しやすくなる。
本実施形態によれば、用紙持ち上げ板800を揺動させる揺動板金801を用紙カセット200の側方に設けることとしたので、プリンタ1のより一層の薄型化を図ることができる。すなわち、用紙持ち上げ板800とベース板金266との間に揺動板金を設ける必要がないため、プリンタ1をより薄型化することが可能となる。