JP4376445B2 - 液晶性ポリマー組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性が改善された液晶性ポリマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
液晶性ポリマーは、機械的性質、熱的性質、成形加工性に優れたエンジニアリングプラスチックとして各種用途に広く使用されている。しかしながら、比較的溶融粘度の低い液晶性ポリマーを成形する場合、離型時にノズルより未硬化樹脂がスプルーまで糸を引き、金型内に成形品が釣り下がってしまう現象が発生することがある。この現象は「糸引き」と称されているが、この糸引き現象があると、金型内の製品を取り除く作業が必要となり、生産効率が大きく低下する。また、成形片が金型に挟まれ、金型を傷めてしまうおそれもある。
【0003】
ところが、かかる糸引き現象に対する具体的対策は何らとられていないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記問題点に鑑み、糸引き現象の発生しない液晶性ポリマー組成物について検討した結果、液晶性ポリマーに対しフェニル変性シリコーンオイルを少量添加することで、糸引きの発生を著しく抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち本発明は、液晶性ポリマー(A) 100 重量部に対し、下記一般式で示される変性シリコーンオイル(B) を0.01〜20重量部配合してなる液晶性ポリマー組成物である。
【0006】
【化2】
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する液晶性ポリマー(A) とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0008】
前記のような液晶性ポリマー(A) としては特に限定されないが、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。これらは60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1重量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、さらに好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが使用される。
【0009】
本発明に適用できる液晶性ポリマー(A) としての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドとして特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を構成成分として有する芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルアミドである。
【0010】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオールおよびその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンおよびその誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸およびその誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオールおよびその誘導体の少なくとも1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミドなどが挙げられる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
【0011】
本発明に適用できる前記液晶性ポリマー(A) を構成する具体的化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)および下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸および下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0012】
【化3】
【0013】
(但し、X :アルキレン(C1〜C4)、アルキリデン、-O- 、-SO-、-SO2- 、-S- 、-CO-より選ばれる基、Y :-(CH2)n-(n =1〜4)、-O(CH2)nO-(n =1〜4)より選ばれる基)
本発明が適用される特に好ましい液晶性ポリマー(A) としては、p−ヒドロキシ安息香酸及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなる芳香族ヒドロキシカルボン酸を主構成単位成分とする芳香族ポリエステル及びポリエステルアミドである。
【0014】
尚、本発明は、糸引き現象が発生しやすい、比較的溶融粘度の低い液晶性ポリマーに対して特に有効であり、具体的には、融点より10〜15℃高い温度でのズリ速度1000sec-1の溶融粘度が5〜50Pa・s の液晶性ポリマーに著しい効果を発揮するものである。
【0015】
本発明の液晶性ポリマー組成物に使用する変性シリコーンオイル(B) とは、前記一般式で示される変性シリコーンオイルであり、ジメチルシリコーンオイルのメチル基をフェニル基のみで置換したシリコーンオイルである。変性シリコーンオイルとしては、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基で変性したものも知られているが、本発明の目的である成形時の糸引き発生抑制効果は、フェニル基置換の変性シリコーンオイル以外のものでは効果が認められない。
【0016】
本発明に使用する変性シリコーンオイル(B) において、フェニル基への置換率は一部置換されているだけで効果があり、具体的には置換率は1〜100 モル%であればよいが、好ましくは1〜30モル%である。
【0017】
また、変性シリコーンオイル(B) の粘度(25℃)は2〜100,000 Pa・s であればよく、好ましくは10〜1,000 Pa・s である。
【0018】
変性シリコーンオイル(B) の配合量は、液晶性ポリマー(A) 100 重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1 〜5重量部である。配合量が0.01重量部未満であると糸引き発生抑制効果が少なく、20重量部を超えるとオイル過多により、ペレットがスクリューとシリンダー間で滑っていまい食い込み不良を起こしてしまう。また、成形品の表面の外観不良や剥離を起こしてしまう等が問題が生じる。
【0019】
本発明の液晶性ポリマーには、使用目的に応じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合することができる。
【0020】
繊維状充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することが出来る。
【0021】
一方、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0022】
又、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0023】
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
【0024】
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することが出来る。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤との併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。無機充填剤の配合量は、液晶性ポリマー(A) 100 重量部に対し、120 重量部以下、好ましくは20〜80重量部である。
【0025】
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
【0026】
なお、液晶性ポリマー組成物に対し、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤および難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した組成物も本発明で言う液晶性ポリマー組成物の範囲に含まれる。
【0027】
本発明の液晶性ポリマー組成物を製造するには、前記成分を前記組成割合で配合し、混練すればよい。通常、押出機で混練し、ペレット状に押し出し、射出成形等に用いるが、この様な押出機による混練に限定されるものではない。
【0028】
本発明の液晶性ポリマー組成物は、射出成形等の公知の成形加工手段により成形品とされる。本発明の液晶性ポリマー組成物は、上記の通り、成形性が改善されているので、電気・電子等の諸工業用部品の成形時の金型保護、無人運転等、生産性向上を図る上で有効である。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1〜5
液晶性ポリエステル(ポリプラスチックス(株)製、「ベクトラE130i」、ガラス繊維30重量%充填グレード、溶融粘度50Pa・s )100 重量部に対して、シリコーンオイルAを表1に示す添加量にて混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30型)を用いて混練しペレット化した。これらのペレット状組成物を東芝製成形機30tでNH340 ℃/350 ℃/340 ℃/330 ℃にて燃焼試験片を成形し、その糸引き長さの測定を行った。成形時のノズルヘッドと成形品スプールの間で伸びる糸状の物が糸引きであり、成形品スプールのブッシュ部位より伸びている糸状の物の長さを、糸引き長さとして測定した。
【0030】
尚、溶融粘度は、東洋精機(株)製キャピラリーフローテスターを用いて、測定温度350 ℃(融点+10℃)、ズリ速度1000sec-1における粘度である。
比較例1〜7
シリコーンオイルとして本発明規定外のシリコーンオイルB〜Gを用いた以外は実施例と同様にして燃焼試験片を成形し、その糸引き長さの測定を行った。また、シリコーンオイルを配合しない場合についても同様に評価した。
【0031】
これらの結果を表1に示す。尚、使用したシリコーンオイルA〜Gは以下のものである。
シリコーンオイルA;
東芝シリコーン(株)製TSF433、フェニル変性シリコーンオイル、粘度45Pa・s
シリコーンオイルB;
信越シリコーン(株)製KF96、ジメチルシロキサンオイル、粘度100 Pa・s
シリコーンオイルC;
信越シリコーン(株)製KF96、ジメチルシロキサンオイル、粘度1,000 Pa・s
シリコーンオイルD;
信越シリコーン(株)製KF101、末端エポキシ変性シロキサンオイル、粘度200 Pa・s
シリコーンオイルE;
信越シリコーン(株)製FL300、フロロシロキサンオイル、粘度30Pa・s シリコーンオイルF;
信越シリコーン(株)製KF860、アミノ変性シロキサンオイル、粘度25Pa・s
シリコーンオイルG;
信越シリコーン(株)製X22−160C、アルコール変性シロキサンオイル、粘度9.6 Pa・s
【0032】
【表1】
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