JP4375943B2 - 粉末n−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を工業的に高純度をもって、かつ高効率をもって製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩は、優れた界面活性作用、抗菌作用等を有し、中性から弱酸性まで領域にわたって界面活性に優れ、低刺激性であることが知られている。
N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の一種であるN−長鎖アシルイミノジ酢酸塩に関しては、その性質を利用する固形洗浄剤組成物の技術が、特開昭54−30207号、特開昭54−39408号報に開示されている。
【0003】
固形洗浄剤組成物は脱水粉末化された原料と結合油剤と、5〜20重量%の水とを練り上げ、押し出し機を通して成形・型打ちして固形洗浄剤を作製するのが一般的である。
前述開示技術においては、N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩反応液を公知の乾燥技術を用い、強引に乾燥して調製された粉末原料が用いられているが、この方法は工業的に有利なものではない。
【0004】
一方、N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩は、その原料であるイミノ二塩基酸のアルカリ溶液に脂肪酸ハライドを添加してショッテン−バウマン(Schotten-Baumann)法による縮合反応によって製造される方法が広く行われている。
ショッテン−バウマン法は脂肪酸ハライドの加水分解による失活反応と目的物であるN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の生成反応とが競争的に生起するため、原料脂肪酸ハライド又は原料イミノ二塩基酸の種類によっては、収率の低下や、不純物の増大が発生し、高純度のN−長鎖アシルイミノ二塩基酸を高収率をもって得ることが困難である場合がある。
【0005】
これらの問題を解決するために、特開昭54−100317号報には、イミノ二塩基酸と長鎖脂肪酸ハライドとを、双極子モーメントが0.3乃至は3.0であり、かつ有機性値と無機性値の比が0.3乃至1.5の有機溶剤、即ちアリルアルコール、エタノール、THF、ジオキサン、アセトン、メチルセロソルブから選ばれる少なくとも一種の有機溶剤と水との混合溶媒中(水:有機=1:0.1〜1:1.2)で、pH9−14で縮合させる方法が開示されている。
この開示技術により高純度のN−長鎖アシルアミノ2塩基酸を得る事が可能となったが、この開示技術によるショッテン−バウマン反応液からN−長鎖アシルアミノ2塩基酸塩を捕集し精製する工程について上記公報は、「反応後、反応液を塩酸及び硫酸等の酸でpH1に調整すると反応液は油相と水相に分相する。油相を分離した後溶媒を、除去するとN−長鎖アシルイミノ二塩基酸が得られる」と述べている。すなわち、上記公報には酸タイプの精製及び得られた酸タイプのN−長鎖アシルイミノ二塩基酸と水と中和剤を用いた水溶液の調製法が開示されているのみで、所望のpH領域に中和された粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の取得法には何ら言及していない。更に、油相から脱溶媒を行う際、強酸性雰囲気下の加熱操作が行われ、このため反応生成物の加水分解、有機溶媒に起因する副生物の生成などが生起し、異臭がする等の問題も有る。
【0006】
特開平5−4952号報には、N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩に類似する構造を有するN−長鎖酸性アミノ酸モノアルカリ塩の製造方法が開示されている。この方法によれば、ショッテン−バウマン反応後の反応液を30〜50℃でpH4〜6に調整した後、これを5〜15℃に冷却することによりN−長鎖酸性アミノ酸モノアルカリ塩を晶析させ、これをろ別し粉末N−長鎖酸性アミノ酸モノアルカリ塩を捕集するというものである。本発明者は同技術を粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造に用いたところ、30〜50℃でpH調整を行うと結晶析出が発生し撹拌が困難となり、ろ別が出来ないなどの問題が発生し、更に高い温度でpH調整した場合も濾過性が悪く粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を捕集することが困難であることを見出した。恐らくN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩とN−長鎖酸性アミノ酸モノアルカリ塩とでは、溶解度等が異なり特開平5−4952号報の開示技術はそのままN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造に用いる事が出来ないものと推察された。
【0007】
従来の方法で得られたN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩水溶液のpH値を、所望の領域内に調整し、脱水乾燥し粉末化して粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を取得する方法も考えられるが、乾燥工程の熱履歴により、得られる粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩が着色する場合があり、また、その製造のために粉末化装置を併設する必要が有るなどの経済的不利がある。このため工業的に有利で色相等の問題の無い粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法の開発が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長鎖脂肪酸ハライドとイミノ二塩基酸とから、着色させることなく、かつ粉末化工程を必要とすることなく、粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を高収率、高効果をもって製造する方法を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、晶析法による粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法を検討した結果、晶析溶液中に存在する有機溶剤の含有率により晶析状況が大きく変化することを見出し、またショッテン−バウマン反応が十分完遂する反応溶液中の有機溶剤の含有率のまゝでは目的化合物の晶析には不利であることを見出した。
また、N−長鎖アシルイミノ二塩基酸の製造に用いられるショッテン−バウマン反応溶液は、特定pH領域においては、水溶液の状態のままで、それから有機溶剤の一部を減圧除去することが可能である事を見出した。さらに、この特性を利用することにより、ショッテン−バウマン反応溶液中の反応溶媒の組成比率を、目的化合物の晶析捕集に最適の組成比率に、容易かつ低コストで変換することができ、優れた収率と容易さとをもって、粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を製造することができることを見出した。本発明は、上記知見に基いて完成されたものである。
【0010】
本発明の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法は、下記一般式(1)で表される脂肪酸ハライド;
【化4】
[式中R1 −COは、炭素数8〜22個の炭素原子を有し、ヒドロキシル基により置換された、或は置換されていない飽和及び不飽和脂肪酸から選ばれた1員の残基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
と、下記一般式(2)で表されるイミノ二塩基酸;
【化5】
[式中m,nは、それぞれ互いに独立に、1〜3の整数を表し、但し、m+nは5を超えない。]
とを、20〜80質量%の親水性有機溶剤と80〜20質量%の水とからなる混合溶媒中における、かつアルカリ金属の水酸化物、炭素原子数が2〜8のアルカノールアミン類及び塩基性アミノ酸から選ばれた少なくとも1種からなる塩基性物質の存在下におけるショッテン−バウマン反応に供して縮合させ、
その後、
(1)前記ショッテン−バウマン反応終了後の反応溶液中の前記親水性溶剤の含有率を10質量%未満に制御し、
(2)得られた反応溶液に、その70℃におけるpH値が3.5〜6.5になるように、酸性物質を添加し、
(3)得られた弱酸性反応溶液を、65℃以下に冷却して、反応溶液中の下記一般式(3)により表わされるN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩;
【化6】
[式中、R1 ,m,nは前記定義のとおりであり、M1 及びM2 は、それぞれ互いに独立に、水素原子、又は、前記塩基性物質に由来する1価のカチオン性原子又は1価のカチオン性有機グループを表し、但し、M1 及びM2 が、ともに水素原子であることはない。]
を析出させ、これを捕集することを特徴とするものである。
本発明の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法において、前記工程(1)において親水性溶媒の含有率を制御するに際し、前記ショッテン−バウマン反応溶液のpH値を7以上に維持しながら、前記親水性有機溶剤の一部分を蒸留によって除去することが好ましい。
本発明の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法において、前記ショッテン−バウマン反応に用いられる前記親水性有機溶剤が、2〜4個の炭素原子を有する低級アルコールの1種以上からなるものであることが好ましい。
本発明の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法において、前記ショッテン−バウマン反応に用いられる塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アルギニン及びリジンから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法において、前記ショッテン−バウマン反応が、温度:0〜80℃及びpH:8〜13において行われることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明方法において原料として用いられる脂肪酸ハライドは、一般式(1)で示されるものである。
式(1)中、R1 −COは8〜22個、好ましくは12〜18個、の炭素原子を有し、ヒドロキシル基により置換された、又は置換されていない飽和及び不飽和脂肪酸の1種の残基を示し、Xはハロゲン原子を示す。
Xで示されるハロゲン原子としては、塩素、臭素等を包含するが、塩素である場合が流通上入手しやすく好ましい。
R1 −COにより表される脂肪酸残基は本発明方法による再結晶析出工程を行うに際して、脂肪酸残基の全含有質量に対して、炭素原子数12以上の脂肪酸残基の含有率が50質量%以上であることが好ましい。炭素原子数12以上の脂肪酸残基の含有率が50質量%未満である場合、析出条件によっては、本発明方法の利点の一つである濾別の容易な結晶が得られるという特徴が達成されない場合がある。
【0012】
本発明における脂肪酸ハライドの好適例を示せば、ラウリン酸クロライド、ミリスチン酸クロライド、ヤシ脂肪酸クロライド、パーム核脂肪酸クロライド、牛脂脂肪酸クロライド等が挙げられ、これらの混合物を使用してもよい。
これらの脂肪酸ハライドは、脂肪酸と3塩化リン等を反応して製造する方法が知られているが、この場合、反応生成物中にリン酸化合物が溶存している場合が有るので、この反応生成物を予じめ単蒸留に供してリン酸化合物を除去した物を用いることがより好ましい。
【0013】
本発明で使用されるイミノ二塩基酸は、一般式(2)で示される。
式(2)中、m,nは、それぞれ互いに独立に、1〜3の整数を表し、但し、m+nは5を超えない。
式(2)のイミノ二塩基酸の好適例を示せば、N−イミノ二酢酸、N−イミノ二プロピオン酸、N−カルボキシエチルグリシンなどが挙げられる、これらの中で、N−イミノ二酢酸と脂肪酸ハライドとの反応により得られたN−アシルイミノジ酢酸塩が最もろ別性の良い結晶を生成する。
【0014】
本発明の製造方法を下記において詳細に説明する。
ショッテン−バウマン反応において、イミノ二塩基酸と脂肪酸酸ハライドとを、塩基性物質(例えば、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物)の存在下、20〜80質量%の親水性有機溶剤と、80〜20質量%の水とからなる混合溶媒中において、温度:0℃〜80℃、好ましくは20〜40℃、pH:8〜13、好ましくは11〜12.5の範囲内において反応させる。
【0015】
この時、使用する塩基性物質のカチオン性原子又はカチオン性有機グループが、本発明により製造される一般式(3)の化合物のM1 基及び/又はM2 基を形成する。塩基性物質とは、アルカリ金属の水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなど、炭素原子数が1〜8のアルカノールアミン類、例えば、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン及びジイソプロパノールアミンなど、及び塩基性アミノ酸、例えばアルギニン及びリジンなどであり、これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン等が好ましく用いられる。これらの塩基性物質は単一種で用いられてもよく、或は2種以上の混合物であってもよい。製造された粉末N−アシルイミノジ酢酸塩の用途を勘案すると、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを用いることが特に好ましい。
【0016】
前記ショッテン−バウマン反応において、反応溶媒として、20〜80質量%の親水性有機溶剤と、80〜20質量%の水とからなる混合溶媒が用いられる。親水性有機溶剤は、2〜4個の炭素原子を有する低級アルコールの1種以上からなるものであることが好ましい。このような特定組成の混合溶媒を用いることにより、ショッテン−バウマン反応における式(1)の脂肪酸ハライドと、式(2)のイミノ二塩基酸との縮合反応がスムースに進行し、目的化合物の収率が高くなる。反応溶媒中の親水性有機溶剤の含有率が20質量%未満となると、前記縮合反応の進行が不安定となり、目的化合物の収率が低下する。反応溶媒中の親水性有機溶剤の含有率が80質量%超えると、反応時に副生する無機塩の溶解が困難になるばかりではなく、次の晶析工程のコストが高くなる。また、反応原料の合計量に対する反応溶媒の総量の比は、反応終了時に得られる反応溶液が均一になっている限り、適宜に設定することができる。しかし、使用するイミノ二塩基酸、脂肪酸ハライドの種類によっても変動するが、反応溶液中の反応溶媒(親水性溶剤/水混合物)の合計質量が40質量%未満、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30〜35質量%となるように設定することが好ましい。
【0017】
前記ショッテン−バウマン反応が完了した後に、反応混合液を調整工程(1),(2),(3)に供される。先ず、工程(1)において、反応溶媒中の親水性有機溶剤の含有率を10質量%未満、好ましくは5質量%未満になる様に調整する。この時単に水を添加して親水性有機溶剤の含有率を10質量%未満に調整してもよいが、このようにすると、使用される反応器当たりの結晶得量が減少する。親水性有機溶剤の含有率を調整するのに有利な方法は、ショッテン−バウマン反応終了後の反応溶液を、そのpH値を7以上に保持したまま、親水性有機溶剤除去処理に供し、減圧下において、親水性有機溶剤の一部を気化・除去して、前記混合溶媒中の親水性有機溶剤の含有率を10質量%未満、好ましくは5質量%未満になるように制御する方法である。
【0018】
次に、工程(2)において、この混合溶剤の組成が調製された反応液の、温度70℃におけるpH値が3.5〜6.5の範囲内にあるように、これに酸性物質を添加する。このpH調整工程間の反応液の温度に格別の制限はないが、30℃以上であることが好ましく、30〜70℃であることがより好ましく、60〜70℃であることがより一層好ましい。pH調整工程(2)における反応溶液の温度が、70℃と異なるときは、予じめ、その温度のpHと70℃におけるpHとの関係に関する情報を実験的に求めておき、この情報に基づき、当該温度におけるpH値を設定すればよい。
【0019】
次に、上記工程(2)により弱酸性にpH調節された反応液を、工程(3)において、65℃以下の温度、好ましくは50℃以下の温度、より好ましくは40℃以下の温度、さらにより好ましくは10〜30℃の温度に冷却して反応液中のN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を、析出させ、これを捕集して粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸を得る。
【0020】
前記工程(1)において、混合溶剤中の親水性有機溶剤の質量含有率が10質量%より高いと、工程(3)において析出する目的化合物の収率が低くなる。混合溶媒中の親水性溶剤の質量含量率が10質量%未満であるとき、目的化合物の結晶の析出が早く、回収率も高くなる。結晶粒径は細かくなるが、濾過性は良好であり工業化においての問題はない。また、得られる結晶が細かいために、晶析時の撹拌もしやすくなるというメリットがある。従ってN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の含有量が25質量%の溶液においても結晶の析出によって、反応液の粘度が上昇することはない。
【0021】
通常、有機溶媒、水、界面活性剤を含有する溶液から有機溶媒を除去しようとする場合、減圧による溶剤の気化除去は、界面活性剤の存在により泡立ちを発生させるという問題を生ずる。このため、一般に減圧脱有機溶媒は不利と考えられていた。従来の技術においても先ず界面活性剤の界面活性を失わせる処理を施した後に減圧脱有機溶媒を行っている。
前述の特開昭54−100317号報に記載の方法においては、反応液のpHを下げることにより界面活性剤の親水性を低下させ界面活性を発現しない条件において脱有機溶媒処理を行っている。
【0022】
本発明方法の特徴の一つは、本発明方法により合成される特定の界面活性化合物は、特定の条件下において、その界面活性が、減圧脱有機溶媒処理を行える程度に低下することを見出し、この現象を有利に利用したことにある。特定の界面活性剤とは、本発明方法により合成される界面活性化合物群であり、特定の条件とは、ショッテン−バウマン反応終了後の、7以上のpHを有する反応液の組成である。
pH7以上のショッテン−バウマン反応液から直接に減圧脱有機溶剤処理を行うことができる理由は未だ定かではないが、本発明方法により合成された界面活性化合物はpH7以上の条件下において、比較的分占有面積の大きな界面活性化合物種であること、及びショッテン−バウマン反応液には、反応副生物としてハロゲン化アルカリを高濃度(反応スケール及び設定濃度によって変動する)に含有していること、などの条件の組み合わせにより、直接減圧脱有機溶剤処理が可能になると推察している。この知見に基づき、ショッテン−バウマン縮合反応の進行に必要な親水性有機溶剤の含有量と、目的化合物の結晶析出のために必要な親水性有機溶剤の含有量との間のギャップを適切に修正し、それによって、特開昭54−100317号報等で指摘された問題点、すなわち、pH1程度の強酸性下における、加熱減圧による界面活性剤の加水分解、及び有機溶剤に起因する副生物の生成、及びそれにより製品に異臭が発生するなどの問題を回避することができたものである。
【0023】
前記析出された目的化合物、粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩は、適宜の捕集操作、例えば濾過、又は遠心分離などによって捕集し、必要により適宜の精製操作、例えば析出結晶の水洗、又は再結晶などによって精製することができる。
【0024】
【実施例】
本発明を下記実施例により更に説明する。
【0025】
実施例1
500ml四ツ口フラスコに、イミノジ酢酸42.3g(0.311モル)と、水122.5gとを入れ、この混合物を撹拌した。この混合物に48%水酸化ナトリウム水溶液51.9g(NaOH:0.622モル)を加え、反応液が均一になり発熱が完了してから、これに2−プロパノール42.1g(0.700モル)を加えた。得られた反応液を25℃に冷却し、これに、ラウロイルクロライド65.5g(0.296モル)、及び48%水酸化ナトリウム水溶液30.9g(NaOH:0.370モル)を同時に約2時間かけて滴下混合した。その間、反応温度を25〜30℃、pHを12〜12.5に保った。その後、室温下(20℃)30分間撹拌を続け、反応を完結させて、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム水溶液を調製した。この反応液中の2−プロパノール/水混合溶媒中の組成は2−プロパノール:20.3質量%、水:79.7質量%であった。得られた水溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンの生成量(酸として)は90.0g(0.285モル)であった。仕込んだラウロイルクロライド基準の収率は、96.2モル%であった。
【0026】
上記の反応装置に単蒸留装置を組み込み、上記反応により得られたN−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム液水溶液を前記反応装置内で60℃に加熱し、0.067MPaの減圧下において、2−プロパノールを65%含む水溶液を42.1g減圧留去した。その後、この反応溶液に水66.1gを加え、反応液の液温を50℃に加熱し、これに75%希硫酸を20.9g添加した。この時、液温は60℃であり、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムの濃度は、仕込んだラウロイルクロライド基準として25.0質量%。2−プロパノール含有率は、3.7質量%、但し、残留混合溶媒中の2−プロパノールの含有量は6.2質量%であり、またpHは4.0(但し、70℃におけるpH値は3.8)であった。この反応液を15℃に冷却し、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムのスラリーとした。この時の溶液のpHは4.5であった。析出した結晶は、桐山ロートを用いた減圧濾過で回収した。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで3点分析し、平均値を求めたところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウム95.2g(N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン(酸として)89.0g)が回収された。仕込んだラウロイルクロライド基準としたN−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムの全収率は、95.2モル%であった。
【0027】
比較例1
500ml四ツ口フラスコに、イミノジ酢酸42.3g(0.311モル)と水122.5gとを入れ、撹拌した。この混合物に48%水酸化ナトリウム水溶液51.9g(NaOH:0.622モル)を加え、反応液が均一になり発熱がおさまってから、2−プロパノール42.1g(0.700モル)を加えた。反応液を25℃に冷却し、ラウロイルクロライド65.5g(0.296モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液30.9g(NaOH:0.370モル)を同時に約2時間かけて滴下した。その間、反応温度を25〜30℃、pHを12〜12.5に保った。その後、室温下(20℃)30分間撹拌を維持し、反応を完結させ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム水溶液(含有混合溶媒中の2−プロパノール含有率は20.3質量%)を得た。得られた溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンの生成量(酸として)は90.0g(0.285モル)であった。仕込んだラウロイルクロライド基準の収率は、96.2モル%であった。
【0028】
上記で得られたN−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム液水溶液に水24.0gを加え、反応液液温を50℃に加熱し、75%希硫酸を20.9g添加した。この時、液温は60℃であり、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムの濃度は、仕込んだラウロイルクロライド基準として25.0重量%、2−プロパノール含有率は、1.05重量%(混合溶媒中の2−プロパノール含有率は17.8質量%)、pHは4.0(70℃におけるpH値は3.8)であった。この反応液を30℃に冷却し、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムのスラリーとした。この時の溶液のpHは4.5であった。析出した結晶は、桐山ロートを用いた減圧濾過で回収した。得られた結晶を高速液体クロマトグラフィーで3点分析し、平均値を求めたところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウム88.4g(N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン(酸として)82.7g)が回収された。仕込んだラウロイルクロライド基準としたN−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンモノナトリウムの全収率は、88.4モル%であった。
【0029】
比較例2
500ml四ツ口フラスコに、イミノジ酢酸42.3g(0.311モル)と水151.4gを入れ、撹拌した。そこに48%水酸化ナトリウム水溶液51.9g(NaOH:0.622モル)を加え、得られた反応溶液が均一になり発熱がおさまってから、2−プロパノール13.1g(0.219モル)を加えた。反応液を25℃に冷却し、ラウロイルクロライド65.5g(0.296モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液30.9g(NaOH:0.370モル)を同時に約2時間かけて滴下した。得られた反応溶液中の混合溶媒中の2−プロパノールの含有率は6.3質量%であった。その間、反応温度を25〜30℃、pHを12〜12.5に保った。その後、室温下(20℃)30分間撹拌を維持し、反応を完結させ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム水溶液を得た。得られた溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンの生成量(酸として)は65.5g(0.207モル)であった。仕込んだラウロイルクロライド基準の収率は、70.0モル%であった。その後の処理工程(1),(2)及び(3)を省略した。
【0030】
比較例3
500ml四ツ口フラスコに、イミノジ酢酸42.3g(0.311モル)と水145.8gを入れ、撹拌した。そこに48%水酸化ナトリウム水溶液51.9g(NaOH:0.622モル)を加え、反応液が均一になり発熱がおさまってから、2−プロパノール18.7g(0.311モル)を加えた。この反応溶液を25℃に冷却し、ラウロイルクロライド65.5g(0.296モル)、48%水酸化ナトリウム水溶液30.9g(NaOH:0.370モル)を同時に約2時間かけて滴下した。このときの混合溶媒中の2−プロパノールの含有率は9.0質量%であった。その間、反応温度を25〜30℃、pHを12〜12.5に保った。その後、室温下(20℃)30分間撹拌を維持し、反応を完結させ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシン−2−ナトリウム水溶液を得た。得られた溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、N−カルボキシメチル−N−ラウロイルグリシンの生成量(酸として)は65.5g(0.207モル)であった。仕込んだラウロイルクロライド基準のモル収率は、78.6モル%であった。その後の後処理工程(1),(2)及び(3)を省略した。
【0031】
実施例1、比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
したがって、ショッテン−バウマン反応時において、目的化合物の高収率を得るために必要な、反応溶媒中の2−プロパノールの濃度は、20%以上であり、晶析ろ過時に95%以上の全収率を得るために必要な2−プロパノール濃度は、10%未満であることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
本発明方法により、一般式(1)の長鎖脂肪酸ハライドと一般式(2)のイミノ二塩基酸とのショッテン−バウマン縮合により得られた目的化合物N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩を高収率で合成し、この目的化合物を粉末状態で、高い捕集効率をもって分離捕集することができる。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される脂肪酸ハライド;
と、下記一般式(2)で表されるイミノ二塩基酸;
とを、20〜80質量%の親水性有機溶剤と、80〜20質量%の水とからなる混合溶媒中における、かつアルカリ金属の水酸化物、炭素原子数が2〜8のアルカノールアミン類、及び塩基性アミノ酸から選ばれた少なくとも1種からなる塩基性物質の存在下におけるショッテン−バウマン反応に供して縮合させ、
その後、
(1)前記ショッテン−バウマン反応終了後の反応溶液中の前記親水性溶剤の含有率を10質量%未満に制御し、
(2)得られた反応溶液に、その70℃におけるpH値が3.5〜6.5になるように、酸性物質を添加し、
(3)得られた弱酸性反応溶液を、65℃以下に冷却して、反応溶液中の下記一般式(3)により表わされるN−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩;
を析出させ、これを捕集することを特徴とする粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法。 - 前記工程(1)において親水性溶媒の含有率を制御するに際し、前記ショッテン−バウマン反応溶液のpH値を7以上に維持しながら、前記親水性有機溶剤の一部分を蒸留によって除去する、請求項1に記載の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法。
- 前記ショッテン−バウマン反応に用いられる前記親水性有機溶剤が、2〜4個の炭素原子を有する低級アルコールの1種以上からなるものである、請求項1及び2のいずれか1項に記載の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法。
- 前記ショッテン−バウマン反応に用いられる塩基性物質が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アルギニン及びリジンから選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法。
- 前記ショッテン−バウマン反応が、温度:0〜80℃及びpH:8〜13において行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末N−長鎖アシルイミノ二塩基酸塩の製造方法。
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