JP4375656B2 - 波動歯車減速機ユニットおよび駆動機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータと組み合わせて駆動機構として用いる波動歯車減速機ユニットに関し、特に、モータ出力軸の回転角度を検出するためのエンコーダを備えた波動歯車減速機ユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
波動歯車減速機ユニットは、筒状のユニットケースと、そこに内蔵された波動歯車減速機とを有し、その入力側の端にモータが連結されるようになっている。波動歯車減速機は、剛性内歯歯車と、可撓性外歯歯車と、可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせている波動発生器とを備えている。波動発生器がモータ出力軸に連結されて回転すると、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車間に発生する。一般には剛性内歯歯車がユニットケースに固定され、可撓性外歯歯車がユニットケースに回転自在の状態で支持され、可撓性外歯歯車から減速回転が出力される。
【0003】
この構成の波動歯車減速機ユニットとモータから構成される駆動機構においては、モータ回転角度検出用のセンサであるエンコーダがモータ出力軸に連結される構造が一般的である。エンコーダは、モータ出力軸における後端部分、すなわち波動歯車減速機ユニットに連結されている端とは反対側の端部に取付けられる。このような構成の駆動機構は、例えば、本願人による下記の特許文献に開示されている。
【0004】
【特許文献】
特開2000−9192号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、波動歯車減速機ユニットに組み合わせるモータにエンコーダ付きの仕様のものが無い場合や、モータに取り付けられているエンコーダの仕様に問題がある場合がある。このことは、波動歯車減速機ユニットと組み合わせるモータの選定に大きな制約となっている。また、適切な仕様のエンコーダを後付けでモータに取り付ける場合には、取り付け部分が大掛かりとなり、駆動機構の小型化を図る上で好ましくない。
【0006】
本発明の課題は、このような問題点を解決するために、モータ出力軸の回転角度を検出するためのエンコーダが一体化された波動歯車減速機ユニットを提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車減速機ユニットは、
軸線方向の一方の側が入力側とされ、他方の側が出力側とされている波動歯車減速機と、
前記波動歯車減速機の出力側に配置されたエンコーダとを有し、
前記波動歯車減速機は、剛性内歯歯車と、可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせると共に噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、前記剛性内歯歯車あるいは前記可撓性外歯歯車に連結され、前記出力側に突出している中空出力軸とを備え、
前記エンコーダの回転軸は前記中空出力軸の中空部を介して前記波動発生器に連結されており、
前記エンコーダは、前記中空出力軸の前記中空部内に収容された状態で、前記中空出力軸の前記中空部内の先端部分に挿入固定されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の波動歯車減速機ユニットでは、モータ出力軸に連結されて当該モータ出力軸と一体回転する波動発生器に対して、中空出力軸の中空部を利用して、エンコーダの回転軸を連結してある。したがって、エンコーダによりモータ出力軸の回転角度などの回転情報を検出できる。この結果、エンコーダの有無やエンコーダ仕様に起因するモータ選定の制約から解放され、波動歯車減速機ユニットに組み合わせるモータの選定範囲を広げることができる。また、エンコーダを後付けによりモータに取り付ける場合に比べて、駆動機構の小型化に有利である。
【0009】
ここで、波動歯車減速機ユニットは、一般に、筒状のユニットケースを有しており、この内部に前記波動歯車減速機が組み込まれる。この場合、前記ユニットケースの前記出力側の端から前記中空出力軸を突出させればよい。
【0010】
また、波動歯車減速機として入力軸付きのものを採用することもできる。この場合には、入力軸は、前記波動発生器に同軸状態に連結され、先端が前記ユニットケースの前記入力側の端から突出した状態になる。
【0011】
本発明の波動歯車減速機ユニットの前記可撓性外歯歯車は、円筒状胴部と、この円筒状胴部の端から半径方向の内側に延びている円環状ダイヤフラムと、この円環状ダイヤフラムの中心部分に形成された円盤状のボスとを備えたものとし、前記中空出力軸を前記ボスに連結固定した構成を採用できる。
【0012】
この場合、前記波動発生器と前記エンコーダの前記回転軸とを連結している連結軸を有し、この連結軸が前記ボスに形成した中心貫通孔を貫通して延びている構成を採用できる。
【0013】
次に、本発明は駆動機構に関するものであり、上記構成の波動歯車減速機ユニットとモータとを有し、前記波動歯車減速機ユニットが備える前記波動歯車減速機の入力軸に、前記モータのモータ出力軸が同軸状態で連結固定されていることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態を説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明を適用した駆動機構を示す概略縦断面図である。駆動機構1は、波動歯車減速機ユニット2と、この波動歯車減速機ユニット2の入力側の端に同軸状態で連結されているDCモータ3とを有している。波動歯車減速機ユニット3は、筒状のユニットケース4と、この内部に組み込まれた波動歯車減速機5と、ユニットケース4の入力側の端面に固定されているモータ取付フランジ6と、ユニットケース4の出力側の端から突出している中空出力軸7と、この中空出力軸7の先端に同軸状態で対峙した状態に配置されているエンコーダ8とを備えている。中空出力軸7の先端部には、被駆動部材として、駆動機構の軸線1aに直交する方向に延びるスイングアーム9が連結固定されている。
【0016】
波動歯車減速機5はカップ型のものであり、ユニットケース4の内周面に形成された剛性内歯歯車部分11と、この内側に配置されているカップ型の可撓性外歯歯車12と、可撓性外歯歯車12を楕円状に撓めて、楕円形の長軸方向の2箇所で剛性内歯歯車部分11に部分的に噛み合わせる波動発生器13とを備えている。波動発生器13が回転すると、両歯車の噛み合い位置が周方向に移動して、両歯車の歯数差に応じた相対回転が両歯車間に発生する。本例では剛性内歯歯車部分11が形成されているユニットケース4が固定側であるので、可撓性外歯歯車12から減速回転出力が取り出される。
【0017】
本例の可撓性外歯歯車12は、円筒状胴部12aと、その一端から半径方向の内側に延びている円環状のダイヤフラム12bと、ダイヤフラム12bの中心部分に形成された円盤状のボス12cとを備えている。ボス12cには中心貫通孔12dが形成されていると共にその端面からは小径の中空軸部分12eが出力側に同軸状態で突出している。この中空軸部分12eが中空出力軸7の中空部7aに圧入固定され、これにより、可撓性外歯歯車12に中空出力軸7が同軸状態で連結されている。中空出力軸7は、ユニットケース4の出力側端部の内周面に取り付けたボールベアリング14を介して、ユニットケース4に回転自在の状態で支持されている。
【0018】
一方、波動発生器13は、ウエーブプラグ13aと、このウエーブプラグ13aの外周に固定されたウエーブベアリング13bとを備えている。ウエーブプラグ13aには中心貫通孔13cが形成されており、その入力側開口からは、モータ取付フランジ6に形成した中心開口6aを介してモータ出力軸3aが差し込まれて、そこに固定されている。
【0019】
次に、エンコーダ8は、ユニットケース4の出力側の端部に取り付けたブラケット15によって支持されている。ブラケット15は、ユニットケース4の端部外周部分に固定された円環状部分15aと、この円環状部分15aの端面の一部から軸線1aに平行に出力側に延びている延長部分15bと、この延長部分15bの先端から直角に折れ曲がって延びているエンコーダ取り付け部分15cとを備えている。エンコーダ取り付け部分15cにはエンコーダ8の先端部分をはめ込み可能な開口部15dが形成されており、ここにエンコーダ8の先端部分がはめ込み固定されている。延長部分15bは、ブラケット15の揺動範囲を外れた位置に配置されているので、ブラケット15にスイングアーム9が干渉することはない。
【0020】
ここで、エンコーダ8の回転軸8aは、連結軸16によって、波動発生器13に連結されている。連結軸16は、中空出力軸7の中空部7a、中空軸部分12e、ボス12cの中心貫通孔12dを貫通して延びており、その入力側の端部16aは、波動発生器13の中心貫通孔13cに差し込まれて、そこに連結固定されている。連結軸16の出力側の端部16bは中空出力軸7内に位置した大径部分とされており、この端部16bには出力側に開口した差し込み孔16cが形成され、ここに、エンコーダ8の回転軸8aが差し込み固定されている。
【0021】
このように構成した駆動機構1では、波動歯車減速機ユニット2の出力側にエンコーダ8を配置し、その回転軸8aを連結軸16によって、モータ出力軸3aに連結されている波動発生器13に連結してある。したがって、モータ3とは反対側に配置したエンコーダ8により、モータ出力軸3aの回転角度を検出できる。よって、波動歯車減速機ユニット2に組み合わせるモータ3にエンコーダ付きの仕様のものがない場合においても、そのようなモータを組み合わせることができる。また、エンコーダを後付けする必要がないので、駆動機構全体をコンパクトに構成できる。
【0022】
(実施の形態2)
図2は本発明を適用したエンコーダ一体型の波動歯車減速機ユニットを示す概略縦断面図である。波動歯車減速機ユニット20は、筒状のユニットケース21と、この内部に組み込まれているカップ型の波動歯車減速機22と、ユニットケース21の入力側の端から軸線20aの方向に突出している入力軸23と、ユニットケース21の出力側の端から軸線20aの方向に突出している中空出力軸24と、中空出力軸24に取り付けたエンコーダ25を有している。
【0023】
波動歯車減速機22は、ユニットケース21の入力側の端部内周面に固定された円環状の剛性内歯歯車31と、この内側に配置されたカップ型の可撓性外歯歯車32と、この内側に嵌めた楕円形輪郭の波動発生器33を備えている。可撓性外歯歯車32は、円筒状胴部32aと、この円筒状胴部32aの端から半径方向の内側に延びている円環状のダイヤフラム32bと、ダイヤフラム32bの中心部分に形成されたボス32cとを備えている。
【0024】
波動発生器33はウエーブプラグ33aとその外周面に嵌めたウエーブベアリング33bとを備え、ウエーブプラグ33aの入力側の端面からは同軸状態で入力軸23が突出している。入力軸23は、ユニットケース21の入力側の端面に取り付けた端板26の中心開口部26aを貫通して延びており、この中心開口部26aの内周面に取り付けたボールベアリング27を介して端板26によって回転自在の状態で支持されている。
【0025】
一方、波動歯車減速機22の可撓性外歯歯車32におけるボス32cは、中空出力軸24の中空部24aに嵌め込まれ、当該中空出力軸24に連結固定されている。中空出力軸24は、ユニットケース21の出力側の端部内周面に取り付けたボールベアリング28を介して、当該ユニットケース21によって回転自在の状態で支持されている。本例では、ボールベアリング28の外輪28aはユニットケース21の内周面にはめ込み固定された部材であるが、その内輪28bは中空出力軸21の外周面に形成した軌道溝とされている。ボールベアリング28の隣接位置にはオイルシール29が取り付けられている。
【0026】
中空出力軸24の中空部24aは、先端側(出力側)の部分が大径部分24bとされ、ここにエンコーダ25が挿入固定されている。エンコーダ25の回転軸25aは中空部24aの中を波動歯車減速機22の側に向けて延びている。波動歯車減速機22の波動発生器33における出力側の端面からは同軸状態で連結軸40が出力側に向けて延びている。この連結軸40は、ボス32cの中心貫通孔32dの内部まで延びており、ボールベアリング41を介して、ボス32cの中心貫通孔32dの内周面に対して回転自在の状態で支持されている。また、この連結軸40とエンコーダ回転軸25aは、中空出力軸24の中空部24aの内部において、カップリング部材42によって連結固定されている。
【0027】
このように構成した波動歯車減速機ユニット20の入力軸23にモータを連結固定することにより駆動機構が構成される。モータを回転すると、入力軸23に連結されている波動発生器33が回転して、両歯車31、32の噛み合い位置が周方向に移動する。この結果、両歯車31、32の歯数差に応じて大幅に減速された回転が可撓性外歯歯車32に発生する。この回転は、可撓性外歯歯車32に連結されている中空出力軸24から取り出される。
【0028】
また、エンコーダ25の回転軸25aは、連結軸40を介して波動発生器33に連結されているので、波動発生器33と一体回転する。すなわち、エンコーダ回転軸25aは波動発生器33に連結されたモータ出力軸と一体回転する。したがって、エンコーダ25によってモータ出力軸の回転角度を検出できる。この場合、エンコーダ25の本体側も中空出力軸24と共に回転する。よって、中空出力軸24の動作角度がエンコーダ25のエンコーダ線の許容範囲内であることが必要である。また、このように、エンコーダ25の本体側も回転するので、見かけ上のエンコーダ分解能も変わることになる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の波動歯車減速機ユニットでは、その出力側に突出している中空出力軸の側にエンコーダが取り付けられ、中空出力軸の中空部内に配置した連結軸によってエンコーダの回転軸を波動歯車減速機の入力要素である波動発生器に連結固定してある。したがって、エンコーダによって波動発生器に連結されるモータ出力軸の回転角度などの回転情報を検出できる。
【0030】
よって、本発明によれば、波動歯車減速機ユニットに組み合わせるモータを選定する場合において、エンコーダの有無やエンコーダ仕様に起因するモータ選定の制約から解放され、波動歯車減速機ユニットに組み合わせるモータの選定範囲を広げることができる。また、エンコーダを後付けによりモータに取り付ける場合に比べて、駆動機構の小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した駆動機構を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明を適用した波動歯車減速機ユニットを示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 駆動機構
1a 軸線
2、20 波動歯車減速機ユニット
20a 軸線
3 モータ
4、21 ユニットケース
5、22 波動歯車減速機
6 モータ取付フランジ
7、24 中空出力軸
7a、24a 中空部
8、25 エンコーダ
8a、25a エンコーダ回転軸
9 スイングアーム
11、31 剛性内歯歯車部分
12、32 可撓性外歯歯車
12c、32c ボス
12d、32d 中心貫通孔
13、33 波動発生器
13c 中心貫通孔
15 ブラケット
16、40 連結軸
23 入力軸
42 カップリング部材
Claims (6)
- 軸線方向の一方の側が入力側とされ、他方の側が出力側とされている波動歯車減速機と、
前記波動歯車減速機の出力側に配置されたエンコーダとを有し、
前記波動歯車減速機は、剛性内歯歯車と、可撓性外歯歯車と、前記可撓性外歯歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯歯車に部分的に噛み合わせると共に噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、前記剛性内歯歯車あるいは前記可撓性外歯歯車に連結され、前記出力側に突出している中空出力軸とを備え、
前記エンコーダの回転軸は前記中空出力軸の中空部を介して前記波動発生器に連結されており、
前記エンコーダは、前記中空出力軸の前記中空部内に収容された状態で、前記中空出力軸の前記中空部内の先端部分に挿入固定されている波動歯車減速機ユニット。 - 請求項1において、
筒状のユニットケースを有し、
前記ユニットケースに前記波動歯車減速機が内蔵されており、
前記ユニットケースの前記出力側の端から前記中空出力軸が突出している波動歯車減速機ユニット。 - 請求項2において、
前記波動歯車減速機は、前記波動発生器に同軸状態に連結固定されている入力軸を備え、
当該入力軸が、前記ユニットケースの前記入力側の端から突出している波動歯車減速機ユニット。 - 請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記可撓性外歯歯車は、円筒状胴部と、この円筒状胴部の端から半径方向の内側に延びている円環状ダイヤフラムと、この円環状ダイヤフラムの中心部分に形成された円盤状のボスとを備えており、
前記中空出力軸は前記ボスに連結固定されている波動歯車減速機ユニット。 - 請求項4において、
前記波動発生器と前記エンコーダの前記回転軸とを連結している連結軸を有し、
この連結軸は前記ボスに形成した中心貫通孔を貫通して延びている波動歯車減速機ユニット。 - 請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の波動歯車減速機ユニットと、
モータとを有し、
前記波動歯車減速機ユニットが備える前記波動歯車減速機の前記入力軸に、前記モータのモータ出力軸が同軸状態で連結固定されている駆動機構。
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JP2003141684A JP4375656B2 (ja) | 2003-05-20 | 2003-05-20 | 波動歯車減速機ユニットおよび駆動機構 |
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JP4148280B2 (ja) | 2005-10-18 | 2008-09-10 | セイコーエプソン株式会社 | 平行リンク機構及び産業用ロボット |
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JP2004346960A (ja) | 2004-12-09 |
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