JP4375513B2 - エラストマー組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、凹凸外観意匠性、疑似織物(ファブリック)、疑似布の風合を備え、手触り感、摺動性、及びゴミ異物の排除性に優れたエラストマー組成物及び成形品に関し、特にウェザストリップ、各種モール、アウトサイドミラーパッキン、グラスランチャンネル、ドリップモール等の自動車用外装部品、インパネ、ドアトリム、ヘッドレスト、シートベルトカバー、エアーバッグカバー、アームレスト、シフトレバーノブ、各種のリットカバー、アシストグリップ等の自動車用内装部品などに好適なエラストマー組成物及び成形品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、柔軟でゴム弾性があり、安価で容易に成形できるオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を使って表皮を形成し、デザイン性、手触り感、摺動性、ゴミ異物の排除性などの機能を備えた部材(表面被覆部材)が、自動車部材用途の他、硝子窓、引き戸等の建具建物間の摺動部材、壁紙、レザー、鞄、手帳などの幅広い用途に用いられている。
【0003】
例えば、自動車用ウエザストリップは、ウインドウガラスの昇降がスムーズに行えるように、硝子摺接部の摺動抵抗を小さくするため、接着剤でナイロンパイルの植毛加工を施して摺接部を形成すると共に、水密性の保持が必要なため、柔軟な弾性体を基材とする外殻部にナイロンパイルの植毛を施している。
【0004】
しかしながら、上記外殻部の弾性体として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる場合、プライマーと接着剤を用いてナイロンパイルを植毛しているが、その接着力は十分ではなく、特に、高温高湿の雰囲気や溶剤の噴霧等の環境下ではナイロンパイル植毛が脱落するおそれがあり、耐久性に問題があった。
【0005】
このため、オレフィン系熱可塑性エラストマーにナイロンやウレタン系塗料等で表面処理を施して摺接部を形成する方法、摺動テープを接着する方法などが提案されているが、いずれも上記ナイロンパイルを植毛する方法と同様、接着信頼性や製造工程での負担が大きいという問題がある。
【0006】
かかる問題を解決するため、ポリオレフィン系樹脂からなる硝子圧接部基材層と、メルトフローレイト0.5g/10分以上(ASTM D1238 190℃)の低粘度ポリエチレンにメルトフローレイト0.1g/10分以下の高粘度ポリエチレンの粉末又は粒子からなる摺接部層とを同時に押出成形して、摺接部表面に細かい凹凸の粗面部を形成し、ウインドウガラスの昇降時の接合、分離の開閉操作を円滑軽快に行うことができる自動車用ウエザストリップの成形方法が提案されている(特公平7−73893号公報)。
【0007】
上記成形方法における細かい凹凸の粗面部の形成は、高粘度ポリエチレンの粉末又は粒子は、粘度が高く、流動性が低いため、溶融状態にあっても、ある程度の粉末又は粒子の形状を維持したままで、押出されることによるものであるが、高温領域の成形及び高剪断領域の成形では、粉末又は粒子の形状が溶融消失してしまい、表面の細かい凹凸の粗面部が十分に形成できないという問題がある。
【0008】
また、上記ナイロンパイル植毛は、摺動性の他に、ウインドウガラス昇降時に、このウインドウガラスに付着したゴミ、砂などの異物を取り込み、これらを排除すると共に、ガラスの傷つきや異物擦れ音の発生を防止するものであるが、これを樹脂の粉末又は粒子からなる凹凸の粗面部で行う場合、表面の十点平均粗さが20μm以上であることが必要となり、上記特公平7−73893号公報記載の溶融消失が心配される高粘度ポリエチレンの粉末又は粒子では、上記十点平均粗さを達成することは、極めて困難である。
【0009】
一方、自動車用内装材であるヘッドレスト、アームレスト、クラッシュハット、グローブボックス、コンソールボックス、ドアトリム等には、柔軟性やクッション性を与えるため、内部を発泡ウレタン層で形成すると共に、外殻部を皮革、織物、軟質樹脂で形成した層とした積層体が広く用いられている。
【0010】
この場合、外殻材である皮革、織物、毛羽立ち布、軟質樹脂の選択は、デザイン性、風合、手触り感、価格などにより行われているが、価格の点からは軟質樹脂が最も安く、従来から塩化ビニル系樹脂による疑似皮革化が行われており、またオレフィン系熱可塑性エラストマーによる疑似皮革化の検討も行われている。
【0011】
しかしながら、疑似皮革化以外の織物、毛羽立ち布様の特性を有する軟質樹脂外殻材については実用化されていない。他方、織物、毛羽立ち布は、ほこり、ごみ等の異物が付着した場合、これらを除くことが難しく、汚れが付きやすいという欠点がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、凹凸外観意匠性、疑似織物(ファブリック)、疑似布の風合を備え、手触り感、摺動性、及びゴミや異物の排除性に優れるエラストマー組成物及び成形品を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、成形品の凹凸表面粗さを制御するには、基材マトリックスに架橋ポリマー粒子として、高温度領域の成形及び高剪断領域の成形で溶融消失しないものを含有させることが効果的であることを知見した。
【0014】
即ち、基材マトリックスに、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系重合体を架橋してなる平均最長径長さが30〜600μmであり、かつ実質的に溶融しない架橋ポリマー粒子を含有させると共に、沸騰キシレン不溶ゲル分を含ませること、特に基材マトリックスとしてエチレン−α・オレフイン−非共役ジエン共重合体ゴムをオレフィン樹脂中で、動的に架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いること、この基材マトリックスに分散させる架橋ポリマー粒子の組成や粒子の大きさを調整することによって、凹凸外観意匠性、摺動性、ゴミや異物の排除性、手触り感などの優れた特性を達成できること、この場合、架橋ポリマー粒子は、複合架橋剤で架橋することによって、耐候性、耐熱性、耐変色性、無臭性、耐ブルームブリード性が改善されること、更には、複合架橋剤の中でも特定構造の不飽和化合物を使用したり、又はシリコーン共重合体を含有させることによって、成形品に優れた摺動性、ゴミ異物の排除性、耐磨耗性、良好な手触り感を付与し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0015】
従って、本発明は、下記のエラストマー組成物及び成形品を提供する。
請求項1:
基材マトリックスに、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、又は炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体を架橋してなる平均最長径長さが30〜600μmであり、かつ実質的に溶融しない架橋ポリマー粒子を含有させると共に、沸騰キシレン不溶ゲル分を含むエラストマー組成物であって、上記基材マトリックスが、下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる混合物で、下記(A−1)成分を部分的又は完全に架橋してなるオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とするエラストマー組成物。
(A)下記(A−1)成分と(A−2)成分とからなる混合物
(A−1)エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
(A−2)ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)下記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
【化3】
【化4】
請求項2:
上記架橋ポリマー粒子が、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、又は炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体を、下記(B)〜(D)成分を含む複合架橋剤で架橋させたものである請求項1記載の組成物。
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)上記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
請求項3:
請求項1又は2記載の組成物を成形してなる表面の十点平均粗さが20μm以上であることを特徴とする成形品。
【0016】
本発明によれば、室内室外の環境温度−30〜80℃において長期間に亘って低弾性率と高ゴム弾性を有し、手、頭等の人体へのソフトな接触感、接触する他部材への追従密着性、成形品(表面被覆材)と人体又は他部材間に砂等の硬質異物が挟まった場合に表面被覆部材が容易に変形して人体又は他部材を傷付けにくくできる点、圧接部材として永久変形、応力緩和が小さい点から、基材マトリックスとしては、ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体等の硬質でゴム弾性のないオレフィン樹脂ではなく、特定の熱可塑性エラストマーを用いること、特に特定の動的架橋したオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。この基材マトリックスに対して、高温度領域の成形及び高剪断領域の成形で溶融消失しない十分な耐久性を備えた架橋ポリマー粒子を含ませることにより、これらが相俟って、柔軟性、低弾性率、永久変形及び応力緩和が小さく、使用可能温度が広く、耐候性、耐磨耗性、耐久性、機械的強度、経済性、更には凹凸外観意匠性、疑似織物、疑似布の風合い、手触り感を備え、特にウェザストリップ、各種モール、アウトサイドミラーパッキン、グラスランチャンネル、ドリップモール等の自動車用外装部品、インパネ、ドアトリム、ヘッドレスト、シートベルトカバー、エアーバッグカバー、アームレスト、シフトレバーノブ、各種のリットカバー、アシストグリップ等の自動車用内装部品などに好適な成形品が得られるものである。
【0017】
以下、本発明について更に詳しく説明する、
本発明のエラストマー組成物は、(I−1)基材マトリックスに、(I−2)エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系重合体を架橋してなる平均最長径長さが30〜600μmであり、かつ実質的に溶融しない架橋ポリマー粒子を含有させると共に、沸騰キシレン不溶ゲル分を含むものである。
【0018】
ここで、上記(I−1)成分の基材マトリックスとしては、ポリスチレン系エラストマー(TPS)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、ポリエステル系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーなどを目的に応じて用いることができるが、耐候性、耐水性、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、架橋ポリマー粒子との密着性の点からTPS又はTPOを用いることが好ましい。
【0019】
上記TPSとしては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、水添スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン以外のハードセグメントを持たせたSEBC、CEBC等をポリプロピレン及びその共重合体等のオレフィン系樹脂に分散させた組成物、及び前記SBS、SIS、部分的に水素添加したSEBS,SEPS,HSBR,SEBC,CEBCの不飽和基をオレフィン樹脂中で動的に架橋した組成物などが挙げられる。
【0020】
上記TPOとしては、例えばポリプロピレン及びその共重合体、ポリエチレン及びその共重合体中でエチレン−α・オレフィン共重合体ゴムを分散させた組成物、ポリプロピレン及びその共重合体、ポリエチレン及びその共重合体中でエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリル化架橋剤で動的に架橋させた組成物などが挙げられる。これらのうちでも動的に架橋したものを特にTPVという。
【0021】
このような(I−1)成分の基材マトリックスとしては、本発明の目的及び作用効果を達成する点から、特に、下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる混合物で、下記(A−1)成分を部分的(10質量%以上、好ましくは40質量%以上)又は完全に架橋してなるオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
(A)下記(A−1)成分と(A−2)成分とからなる混合物
(A−1)エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
(A−2)ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)後述する特定の不飽和化合物
【0022】
以下、(I−1)成分の基材マトリックとして好適なオレフィン系熱可塑性エラストマーについて詳述する。
まず、上記(A)成分を構成する(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムは、非共役ジエンとして、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン(ENB)、メチレンノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、及び5−(2−エチリデン−6−メチル−5ヘプテニル)−2−ノルボルネンに代表される鎖状ポリジエン含有ノルボルネン化合物等が用いられ、α・オレフィンとしては、C3〜C15のものからなる、無定形ランダムな弾性共重合体が好適に用いられる。
【0023】
本発明のヒドロシリル架橋剤系を使用した場合、後述する(D)成分の不飽和化合物を含まない従来のヒドロシリル架橋剤系に比較して、いずれの非共役ジエンにおいても、架橋速度、架橋度の向上や、ゴム弾性、その低温特性、機械強度、耐油性を向上させることができるが、特に架橋速度の観点からは、エチリデンノルボルネン、又は鎖状ポリエン含有ノルボルネン化合物が望ましい。更に、現在最も多くの組成バリエーションを有し、汎用化しているのは、エチリデンノルボルネンであるが、本発明においても、エチレン−α・オレフィン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴムを好適に使用できる。
【0024】
上記α・オレフィンとしては、入手の容易さからプロピレン、ブテンが好ましく、プロピレンが最も汎用化されている。従って(A−1)成分としてはエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴムが特に好適である。
【0025】
上記(A−1)成分のエチレン/α・オレフィン比は、重量比で好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは50/50〜80/20である。ヨウ素価は1〜30、特に3〜20の範囲であることが好ましい。また、(A−1)成分の100℃ムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは30〜350、より好ましくは50〜350、更に好ましくは80〜300である。なお、100℃ムーニー粘度(ML1+4)が80を超える時には121℃ムーニー粘度(ML1+4)を測定する場合がある。この場合、100℃ムーニー粘度(ML1+4)の80〜300が121℃ムーニー粘度(ML1+4)では55〜240となる。
【0026】
本発明に係る(A−2)成分のポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体は、ヒドロキシル化架橋TPVのマトリックスとなり、TPVに熱可塑性を与えるものである。
【0027】
上記(A−2)成分のうち、ポリプロピレン及びその共重合体は、ポリプロピレン又はポリプロピレンとC2以上のα・オレフィンとの共重合体である。このC2以上のα・オレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。なお、ポリプロピレン鎖としては、アイソタクチック又はシンジオタクチックな結晶性を持つものが好ましい。
【0028】
具体的には、結晶性ホモのポリプロピレン、アイソタクチックとアタクチックをブロック単位で構成したポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレンのブロック共重合体、前記ブロック共重合体よりもエチレン比を高めたランダム共重合体、結晶性プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、アイソタクチックとアタクチックをブロック単位で構成したプロピレン鎖にエチレン鎖をブロックした共重合体、結晶性ポリプロピレンブロックとランダムなプロピレン−エチレン共重合体から構成したリアクターメイドのTPOなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも汎用性の面から、結晶性ホモのポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレンのブロック共重合体及びランダム共重合体が好ましい。
【0029】
上記ポリプロピレン及びその共重合体のメルトフローレートは、好ましくは0.1〜100g/10min、より好ましくは0.5〜50g/10minの範囲である。
【0030】
本発明のエラストマー組成物は、製品の外皮を形成するものであり、特に表面耐刺傷性、耐摩耗性及び外観光沢性などの性能が要求されるものである。従って、アイソタクチックとアタクチックをブロック単位で構成したポリプロピレン、アイソタクチックとアタクチックをブロック単位で構成したプロピレン鎖にエチレン鎖をブロックした共重合体の中でもアイソタクチック指数0.33〜0.45の低結晶性のものを使用することが好ましい。これらの添加量は(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して10〜200質量部、好ましくは20〜100質量部である。少なすぎると表面耐刺傷性、耐摩耗性及び外観光沢性を改善することができない場合がある。一方、多すぎるとベタツキ感が生じ、手触感が劣る場合がある。
【0031】
また、本発明においては、(A−2)成分として、ポリプロピレン及びその共重合体の他に、ポリエチレン及びその共重合体を用いることができる。従来の有機過酸化物架橋剤系では、(A−1)成分とポリエチレン及びその共重合体のエチレン部との架橋が同時進行してしまい、構造形成ができなかったり、熱可塑性を持てなくなったりして、TPVを製造することができない場合がある。
【0032】
これに対し、本発明の新規なヒドロシリル化架橋系は、ポリエチレン及びその共重合体をマトリックスとできる手法ともなっている。
【0033】
上記(A−2)成分をポリエチレン及びその共重合体のみ、ポリエチレン及びその共重合体とポリプロピレン及びその共重合体との併用とした場合、ポリプロピレン及びその共重合体のみの場合と比較して、低硬度化、反撥弾性、引張強度、耐油性、表面耐刺傷性、耐摩耗性、表面光沢性などの性能を向上させることができる。特に、ポリエチレン及びその共重合体とポリプロピレン及びその共重合体との併用は、耐熱性を大きく損うことなく、前記性能を向上させることができることから好ましい。
【0034】
このポリエチレン及びその共重合体は、ポリエチレン、ポリエチレンとC3〜C12のα・オレフィンとの共重合体、及びSBSなどのリビングアニオン重合体を水素添加してエチレン鎖を形成させるポリエチレンの共重合体である。
【0035】
このC3以上のα・オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0036】
リビングアニオン重合体を水素添加してエチレン鎖を形成させるポリエチレンの共重合体にはSEBS、SEPS、SEBC、CEBC、HSBRなどが挙げられる。
【0037】
汎用性の点で、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、更にα・オレフィン含有量を高めた密度0.86〜0.91の低密度ポリエチレン(VLDPE)を用いることが好ましい。
【0038】
上記ポリエチレン及びその共重合体のメルトフローレートは好ましくは0.1〜100g/10min、より好ましくは0.3〜50g/10minの範囲である。
【0039】
本発明の(A−2)成分のポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体の添加量は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して5〜250質量部、特に15〜200質量部であることが好ましい。(A−2)成分が少なすぎると成形時の流動性が悪くなる。一方、多すぎると硬くなりすぎたり、耐クリープ性が低下する。
【0040】
本発明の組成物は、主として製品の外皮を形成するものであり、このため、表面耐刺傷性、耐摩耗性及び外観光沢性能を要求されるものが多い。この場合、HSBR又はVLDPEを使用することが好ましい。HSBR又はVLDPEの添加量は(A−1)成分のエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して10〜200質量部、好ましくは20〜100質量部である。少なすぎると表面耐刺傷性、耐摩耗性、光沢性が得られない場合がある。一方、多すぎると耐熱性、耐クリープ性が低下する場合がある。
【0041】
なお、(A−2)成分は、(A),(B),(C),(D)の4成分の動的な熱処理(動的な架橋)以前に、全量を系中に存在させる必要はなく、(A),(B),(C),(D)の4成分の動的な熱処理の前後に分けて混合させても構わない。
【0042】
次に、本発明のオレフィン系TPVの(B)成分の1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンについて説明する。
【0043】
この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのジエン部分及び後述する(D)成分の不飽和化合物に付加して、(D)成分の不飽和化合物と共に(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの橋架け部(クロスリンカー)を構成する。この場合、クロスリンカーとして(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上含有することが必要である。なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは25℃の粘度が0.5〜106cs、特に10〜105csであるものが好ましい。
【0044】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、下記平均組成式(1)で示されるもの、又は下記一般式(S−1)〜(S−11)で示されるものなどを例示することができる。
【0045】
Hb(R4)CSiO(4-b-C)/2 (1)
(但し、式中R4は同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の好ましくは脂肪族不飽和結合を有さない一価炭化水素基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、β−フェニルエチル基等のアラルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基等であり、bは0.002〜1.0の正数、cは1.99〜2.02の正数、b+cは1.992〜3.0である。)
【0046】
【化5】
【0047】
【化6】
【0048】
【化7】
【0049】
【化8】
【0050】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して0.5〜20質量部、より好ましくは1.5〜10質量部である。(B)成分の添加量が少なすぎると十分な架橋効果が得られない。一方、多すぎると架橋度や架橋速度の向上がみられず、無駄であるばかりか、過剰のオルガノハイドロジェンポリシロキサンがヒドロシリル化架橋オレフィン系TPV中に残存して成形時の流動性を乱したり、場合によっては脱水素縮合し、成形品を発泡させてしまう。
【0051】
なお、本発明のヒドロシリル化架橋剤系は、成形発泡しにくい特徴がある。これは、(D)成分の不飽和化合物が、効率良く(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応して(B)成分の未反応残存量を減らす働きがあるためであると考えられる。
【0052】
本発明のオレフィン系TPVに用いる(C)成分のヒドロシリル化触媒としては、例えばパラジウム、ロジウム、白金などの第VIII族の遷移金属及びこれらの錯体が好ましい。この場合、いずれのヒドロシリル化触媒においても、本発明のヒドロシリル化架橋剤系をとれば、触媒量を軽減することができる。白金も高価であるが、現在のところパラジウム、ロジウムは更に高価であることから、白金系のヒドロシリル化触媒を使用するのが、本発明の目的に最も合致するので好ましい。
【0053】
白金系触媒としては、例えば白金、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類との錯体が挙げられる。なお、白金や白金ブラック担体よりも、活性の強い錯体(錯塩)を使用することが望ましい。
【0054】
代表的なものとしては、H2PtCl6・(6H2O)、〔{(CH2=CH)(CH3)2Si}2O〕2・Pt、〔(CH2=CH)(CH3)2Si〕2O・(CH2=CH)(CH3)2Si−O-Si(CH3)2(OH)・Pt等の無機ハロゲンを実質的に含まない錯体などが挙げられる。これらはイソプロパノール、2−エチル−ヘキサノール、トルエン、キシレンで希釈して市販されている。
【0055】
このヒドロシリル化触媒は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムと(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加反応、並びに(D)成分の不飽和化合物と(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加反応を進行させるための触媒である。
【0056】
この場合、従来のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒の二成分からなるヒドロシリル化架橋剤系では、ヒドロシリル化触媒、特に白金系触媒は、エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して白金金属換算で5×10-3〜1×10-1質量部添加しないと、高度に架橋したヒドロシリル化架橋オレフィン系TPVを高い生産性で製造することが困難となる場合がある。
【0057】
これに対し、本発明においては、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C)成分のヒドロシリル化触媒に(D)成分の不飽和化合物を加えた三成分からなるヒドロシリル化架橋剤系とすることにより、ヒドロシリル化触媒、特に白金系触媒の添加量は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して白金金属換算で5×10-6〜5×10-2質量部、より好ましくは5×10-5〜5×10-3質量部である。ヒドロシリル化触媒が少なすぎると反応性に乏しくなる場合がある。一方、多すぎると白金系触媒添加量低減による安価なヒドロシリル化架橋オレフィン系TPVを提供するという本発明の目的から外れてしまう場合がある。
【0058】
次に、本発明は(D)成分として、下記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物を使用する。
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
【0059】
即ち、この特定される分子構造からなる(D)成分の不飽和化合物(D−1)〜(D−6)は、下記一般式(2)〜(7)で表される脂肪族不飽和基を少なくとも1個有するものである。
【0060】
(D−1)アクリロイル化合物
【化9】
【0061】
(D−2)メタクリロイル化合物
【化10】
【0062】
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
【化11】
【0063】
(D−4)ビニルポリシロキサン
【化12】
(式(5)中、Rは脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、特にメチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が好ましい。)
【0064】
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
【化13】
(但し、シス、トランスの区別は不要)
【0065】
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
【化14】
(但し、シス、トランスの区別は不要)
【0066】
本発明において、上記のような不飽和基を持つ(D−1)〜(D−6)から選ばれる不飽和化合物を用いることは、動的に熱処理する条件下において、この不飽和化合物に(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを付加反応させるための必要条件である。
【0067】
この(D)成分の不飽和化合物は、上記一般式(2)〜(7)で示される脂肪族不飽和基を1分子中に1個以上持つものであり、特には2個以上であることが好ましい。
【0068】
また、(D)成分の不飽和化合物は、下記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位を1種又は2種以上有することが必要である。
【0069】
【化15】
【0070】
式(D−i)中、R1は水素原子又はアルキル基であり、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、特にメチル基、エチル基が好ましい。n,mは、m+n≧6を満たす数であり、特には6≦m+n≦100であることが好ましい。
【0071】
【化16】
【0072】
式(D−iv)中、R2は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基やこれらの基の炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換したものなどが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、水酸基などで置換したものが挙げられる。また、p≧2であり、好ましくは2≦p≦10,000、更に好ましくは10≦p≦3,000である。
【0073】
【化17】
【0074】
【化18】
【0075】
本発明においては、上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位を持つ不飽和基を1つ以上有する不飽和化合物が、低白金触媒量下のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのヒドロシリル化架橋速度を増速させ、架橋密度を向上させてヒドロシリル化架橋オレフィン系TPVの特性や成形性向上に効果を発揮する。
【0076】
この場合、(D)成分の不飽和化合物において、上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位の総含有量(質量%)は、この不飽和化合物の分子量に対して12質量%以上であり、これは下記数式により計算される。
【0077】
【数1】
【0078】
この場合、上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位の合計の式量を不飽和化合物の分子量で割った値に100を掛けて質量%表示とする。なお、不飽和化合物に分子量分布がある場合は、数平均分子量を用いる。
【0079】
本発明においては、(D)成分の不飽和化合物中に少なくとも1種類の上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位を合計で12質量%以上含むことが必要であり、好ましくは18質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。この場合、上限値は特に制限されないが98質量%以下であることが好ましい。これにより(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのヒドロシリル化架橋密度を向上させることができる。なお、これら(D−i)〜(D−x)の構造単位と上記式(2)〜(7)の単位とを合せて100質量%とすることができる。
【0080】
上記(D)成分の不飽和化合物は150〜1×107の幅広い分子量で効果が認められる。分子量が150未満では動的架橋温度で蒸発しやすいものが多く、エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムに分散含浸させることが難しくなる場合がある。また、分子量が150未満では上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位をもつことができないためと思われるが、ゴムの架橋密度を向上させることができない場合がある。
【0081】
このように、分子量中に少なくとも上記一般式(2)〜(7)で示した少なくとも1つの不飽和基を持ち、かつ分子量に対して上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位を合わせた式量が12質量%以上である不飽和化合物が、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのヒドロシリル化架橋を促進できるものである。なお、上記一般式(D−viii)は、(D−5)及び(D−6)の不飽和基と同じものである。
【0082】
上記(D)成分の不飽和化合物の添加量は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して0.05〜50質量部、より好ましくは0.2〜20質量部である。不飽和化合物の添加量が少なすぎるとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒からなるブランクの架橋剤系に対して優位性が小さくなる。一方、多すぎると反応速度は極端に速まるが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの大部分がこの不飽和化合物との反応に消費され、エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムの架橋度の低下が発生する。
【0083】
上記(D)成分の不飽和化合物のうち、(D−1)成分のアクリロイル化合物及び(D−2)成分のメタクリロイル化合物としては、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、イソステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,8−ノナンジオールジアクリレート、1,8−ノナンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、下記一般式(J−1)〜(J−3)で示される化合物(以下、アクリロイル、メタクリロイルを同時に記載する)、下記一般式(J−4)等で示される(メタ)アクリロイル化合物、下記一般式(J−5),(J−6)等で示されるシリコーン系(メタ)アクリロイル化合物、下記一般式(J−7)〜(J−15)等で示されるウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0084】
【化19】
【0085】
【化20】
【0086】
【化21】
【0087】
【化22】
【0088】
【化23】
【0089】
【化24】
【0090】
なお、これら化合物においてR4は水素原子又はメチル基である。
【0091】
(D−3)成分の不飽和ポリエステルアルキッドとしては、下記一般式(J−16),(J−17)などのフマル酸系不飽和ポリエステルアルキッドが挙げられる。
【0092】
【化25】
【0093】
(D−4)成分のビニルポリシロキサンとしては、下記一般式(J−18)〜(J−21)などが挙げられる。
【0094】
【化26】
【0095】
(D−5)成分の1,4−結合のイソプレン重合体としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、液状イソプレン重合体、スチレン−イソプレン共重合体(SIS)、ブチルゴム及びこれらの部分水素添物等の1,4−結合のイソプレン(共)重合体などが挙げられる。
【0096】
(D−6)成分の1,4−結合のブタジエン重合体としては、例えばブタジエンゴム、液状ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエンゴム(SBS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びこれらの部分水素添物等の1,4−結合のブタジエン(共)重合体などが挙げられる。
【0097】
これら(D)成分の不飽和化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。使用する不飽和化合物の種類により、ゴム弾性及びその低温特性、機械強度、耐油性をオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒高濃度の二成分からなる架橋系を用いたヒドロシリル化架橋オレフィン系TPVと比較して、向上させることができる。
【0098】
例えば、ゴム弾性や低温特性を付与する場合には、上記一般式(D−iv),(D−ix),(D−viii)で示される構造を持つ不飽和化合物が好ましい。機械強度を付与する場合には上記一般式(D−ii),(D−vi),(D−i),(D−viii)で示される構造を持つ不飽和化合物が好ましい。耐油性を付与する場合には上記一般式(D−iv),(D−ix)で示される構造を持つ不飽和化合物が好ましい。
【0099】
上記(B),(C),(D)の三成分からなる本発明のヒドロシリル化架橋剤系は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムと、(A−2)成分のポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体から選ばれた少なくとも1種類の重合体が高分散された混合物を、動的な熱処理の下で、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを選択的に高速で高度に架橋することによって、(A−2)成分をマトリックスとし、(A−1)成分のゴムを微小粒径の島として高分散された構造を高い生産性で形成させることができると共に、これを固定化することができる。
【0100】
本発明においては、(D)成分の不飽和化合物と(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの高速反応性を応用し、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムのヒドロシリル化架橋反応の高速高度化を実現することができる。
【0101】
そして、上記(D)成分の不飽和化合物と(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの高速反応性の利用は、(A)成分の混合物をヒドロシリル化架橋剤系の存在下で、動的に熱処理して、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得る製造方法において、どのような製造形態(添加順序、混練方法)をとっても、ヒドロシリル化架橋剤系に(D)成分の不飽和化合物が存在しない場合に比較して、優位性が認められるものである。
【0102】
この場合、予め、(C)成分と(D)成分を混合分散させておき、これを(A−1)、(A−2)、(B)成分の混練物に添加混練することが特に好ましい。(D)成分の不飽和化合物は(C)成分の溶剤変性錯体との相溶性又は分散性が良く、(C)成分の溶剤変性錯体を(D)成分に安定に分散させておくことができることから、動的な熱処理の熱による(C)成分の錯体の乾燥固化による分散性の低下や触媒活性の低下を防止することができる。
【0103】
また、動的な熱処理工程における(C)成分と(D)成分の分散時間(出合の時間)を省くことができる。更に、(D)成分の不飽和化合物は、(A−1)、(A−2)、及び(B)成分との相溶性にも優れる分子構造を持つことから、(C)成分の(A−1)、(A−2)、及び(B)成分の混練物に対する浸透分散性を高めることができる。従って、架橋反応に関与する(A−1)、(B)、(C)、及び(D)成分の出合いを容易にし、動的な熱処理工程時間を短縮する効果がある。
【0104】
本発明においては、(C)成分及び/又は(D)成分を希釈する場合、上記一般式(D−i)〜(D−x)の構造単位を持つ飽和化合物を用いることが、(C)成分の乾燥固化防止及び各成分への浸透分散性を高める点から好ましい。
【0105】
このような(E)成分の希釈剤用飽和化合物としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、パラフィン系オイル、エチレン−α−オレフィン−コオリゴマー、ステアリン酸系エステル、ラウリン酸系エステル、モンタン酸系エステル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル又はC11〜C13の高級アルコール等のフタル酸エステル;n−ヘキシルアルコール、イソヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキサノール、イソノリルアルコール、デシルアルコール等のC6〜C11のアルコールからなるトリメリテイトやピロメリテイト;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどのC6〜C8の分岐グリコール及び2−エチルヘキサノール、イソノリルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ラウリル酸等のC8以上の末端停止成分からなるアジピン酸ポリエステル;ポリブタジエンの完全水素添加物、ポリイソプレンの完全水素添加物、ポリエチレン、エチレン−プロピレンやエチレン−ブテン等のエチレン−α・オレフィン−共重合体、SEBS、SEPS、SEBC、CEBCなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0106】
本発明においては、必要に応じて、(F)成分として鉱物油系軟化剤や合成油系軟化剤を用いることができる。この(F)成分の軟化剤としては、得られるTPVの透明性、明色性、耐候性、耐熱性などを損なうことがないものが好適である。例えばパラフィン系プロセスオイル、エチレン−α・オレフィン−コオリゴマーなどを用いることができる。
【0107】
また、動的架橋の前に軟化剤を混合する場合は、軟化剤としては、窒素化合物、燐化合物、硫黄化合物のN,S,Pとしての濃度が0.3質量%未満であるものを用いることが望ましい。例えば、脱ろう、溶剤抽出、水素化などの処理を多く受けて造られる汎用のパラフィン系プロセスオイル、エチレン−α・オレフィン−コオリゴマーなどの合成油を用いることができる。
【0108】
上記(F)成分の軟化剤は、動的架橋の前又は後に添加混練する。また、予め(A−1)成分と混合した油展エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムとして用いることができる。
【0109】
この(F)成分の軟化剤は、(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム100質量部に対して0〜150質量部添加することにより、得られるTPVの硬さなどの特性や流動性を調整することができる。
【0110】
更に、本発明の組成物には、強度やゴム弾性を高めるために、(B)成分と(A)成分とを混練する際に、必要に応じて、(G)成分として煙霧性シリカ、沈降性シリカ等の合成シリカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、FEF、HAF等のカーボンブラック、クレー、タルクなどの微粉末を添加することが好ましい。これらの中でも物性、着色性、動的架橋速度の増速の点から合成シリカが好ましい。合成シリカとしては比表面積が50m2/g以上、特に75〜500m2/gのものを用いることが好ましい。また、シリカ表面の水酸基をジメチルジクロルシラン、ヘキサメチルジシランで封鎖処理したものも好適に用いることができる。
【0111】
この(G)成分の微粉末の添加量は(A−1)成分100質量部に対して好ましくは5〜150質量部、より好ましくは10〜80質量部である。(G)成分の微粉末の添加量が少なすぎると動的架橋速度の増加とゴム弾性、低クリープ性、機械強度、耐候性、耐熱性、耐油性などの特性が(G)成分を添加しないものと変化がない場合がある。一方、多すぎるとTPVの特性が低下したり、成形性が悪くなる場合がある。
【0112】
なお、白金系触媒が供給される系に、ルイス塩基の化合物が存在すると、このルイス塩基は白金系触媒に配位して触媒をブロックしてしまう。この場合、ルイス塩基は熱や剪断により除くことができるが、多量のルイス塩基の存在は触媒濃度を下げたことに等しく、時間的ロスを招くので好ましくない。
【0113】
本発明のヒドロシリル化架橋TPVには、上記(A),(B),(C),(D)成分、及び(E),(F),(G)成分の他に、更に必要に応じてヒドロシリル化反応制御剤、造核剤、外滑剤、内滑剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、補強剤、増量剤、難燃剤、導電剤、熱伝導剤、帯電防止剤、絶縁剤、銅害防止剤、発泡剤、摺動剤、接着性向上剤などを含有することは任意とされる。
【0114】
本発明のオレフィン系TPVは、(A−1)成分と(A−2)成分とからなる混合物である(A)成分、及び(B),(C),(D)成分の存在下で動的に熱処理することにより製造することができる。
【0115】
この場合、オレフィン系TPVの製造方法は、2度の動的な熱処理を行って製造する方法が推奨される。即ち、1度目が(A−1)成分と(A−2)成分の混練を目的とするものと、2度目が動的な架橋を目的とするものである。
【0116】
1度目の動的な熱処理は、樹脂温度25〜300℃、好ましくは80〜240℃で比エネルギー0.05〜1.0kWh/kgの条件で混練するものである。また、2度目の動的な熱処理は、樹脂温度100〜300℃、好ましくは130〜250℃で比エネルギー0.1〜1.5kWh/kgの条件で混練するものである。
【0117】
上記2度の動的な熱処理は、同一の1つの混練機、同一種又は異種の複数の混練機を用いて、その操作を行うことができる。このような混練機としては、例えば加圧ニーダー、ハンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機、ロール等が挙げられる。
【0118】
本発明における生産効率の高いオレフィン系TPVの製造方法の一例として、図1に示したラインによる製造方法がある。この製造方法は、▲1▼まず、(A−1),(A−2)成分をリボンブレンダー1で混合する。この場合、(A−1)成分はペレット、クラム、ベールの形態を持つので、ベールの場合には粉砕する。なお、(A−2)成分はペレット又は粉であるため、粉砕の必要はない。
▲2▼次に、(A−1),(A−2)成分の混合物をベルトフィーダー2を使って二軸押出し機Iに定量供給し、(B)成分と共に二軸押出し機Iで溶融混練する。▲3▼(A−1),(A−2),(B)成分の混練物は、二軸押出し機Iにタンデムに接続された二軸押出し機IIに供給され、(C),(D)成分も二軸押出し機IIに供給される。(C)成分の系中への分散によって動的な架橋が開始され、架橋反応や構造形成が進行し、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを製造することができる。なお、図中3は、ダイである。
【0119】
次に、本発明の(I−2)成分の架橋ポリマー粒子は、(I−1)成分の基材マトリック、特にTPS、TPO、特定のTPVとの密着性が高いエチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、及びシリコーン系重合体から選ばれる単一組成物の架橋体、或いは複数組成物のブレンド架橋体又は多段階重合架橋体である。
【0120】
上記重合体を構成する重要なモノマー単位としては、エチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、炭素数3〜12のα−オレフィン、シロキサン単位などが挙げられ、これらモノマー単位の合計が20〜100mo1%、特に50〜100mol%であることが好ましい。上記範囲を外れると密着性が低下し、耐磨耗性及び機械的強度が低下する場合がある。
【0121】
また、本発明の(I−2)成分の架橋ポリマー粒子は、元来は、ヒドロシリル化架橋剤、有機過酸化物、アゾ化合物、電子線、紫外線、熱、イミド化合物、硫黄、硫黄同族体、キノンジオキシム誘導体、フェノール樹脂、プロトン酸、ハロゲン化金属、安定カルボニウムイオン、アルカリ金属、アルカリ水酸化物、グリニャール試薬、有機金属ハロゲン化合物、有機金属塩、有機金属化合物、水架橋(シラノール縮合)、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、アルコール、アミン、メラミン、アルコキシドなどと反応する官能基を有しており、この官能基を使って架橋を形成することもできる。
【0122】
これらの中でも、炭素炭素二重結合を有機過酸化物架橋、硫黄系架橋、フェノール樹脂架橋、ヒドロシリル化架橋させて、エチレン系架橋重合体、イソプレン系架橋重合体、ブタジエン系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系架橋重合体、又はシリコーン系架橋重合体からなる粒子を形成させるのが汎用性及び架橋効率の点から好ましい。
【0123】
エチレン系架橋重合体の原料としては、エチレン−α・オレフィン非共役ジエン共重合体ゴム、リビングアニオン重合体を部分水素添加したSEBS、HSBR、SEPS、SEBC、CEBCなどが挙げられる。エチレン−α・オレフィン非共役ジエン共重合体ゴムとしては上記(A−1)成分と同様のものを用いることができるが、非共役ジエンとしては、特に架橋反応の効率が高いエチリデンノルボルネン(ENB)、メチレンノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、5−(2−エチリデン−6−メチル−5ヘプテニル)−2−ノルボルネンに代表される鎖状ポリエン含有ノルボルネン化合物が好ましい。これらの中でも反応持続性に富んだVNBが好適である。この場合、エチレン−α・オレフィン比は、質量比で20/80〜95/5、好ましくは40/60〜85/15である。また、ヨウ素価は1以上、特に5〜50の範囲であることが好ましい。更に、100℃ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は30〜350、特に50〜250であることが好ましい。
【0124】
また、炭素炭素二重結合を有するSEBS、HSBR、SEPS、SEBC、CEBCを用いてヒドロシリル化架橋を行う場合は、炭素炭素二重結合は、イソプレン単位又はブタジエン単位であることが好ましい。ヨウ素価は1〜70、特に4〜45の範囲であることが好ましい。なお、ヒドロシリル化架橋を行う場合は、ブタジエン単位は、架橋反応の効率が高い1,4−結合がより好ましい。
【0125】
上記炭素炭素二重結合を有するイソプレン系重合体としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体SISなどが挙げられる。
【0126】
上記炭素炭素二重結合を有するブタジエン系重合体としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などが挙げられる。ヒドロシリル化架橋を行う場合は、ブタジエン単位は、架橋反応の効率が高い1,4−結合がより好ましい。
【0127】
スチレン系架橋重合体の原料としては、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンなどのモノマー単位が挙げられる。スチレン系重合体としては、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体にスチレン単位を含有するものとしてすでに例示されているものが挙げられる。ブロックのスチレン単位はブロックのエチレン単位同様、架橋ポリマー粒子の硬度を上げる一手法として活用できる。
【0128】
炭素数3〜12のα−オレフィン系架橋重合体の原料としては、上述したリビングアニオン重合体の部分水素添加物やエチレン−α−オレフィン−非共役ジエンが、炭素炭素二重結合を利用したものとして挙げられる。これら以外としては、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン等の炭素数3〜12のα−オレフィン重合体に、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のシランをグラフト重合させた共重合体、即ち水架橋を利用したものが挙げられる。
【0129】
シリコーン系架橋重合体の原料としては、下記平均組成式で示される平均重合度100〜10000のオルガノポリシロキサンが挙げられる。
R5 nSiO4-n/2
(式中、R5は同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の置換又は非置換の一価炭化水素基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、β−フェニルエチル基等のアラルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基等であり、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。nは1.90〜2.05の正数である。)
なお、上記オルガノポリシロキサン分子中にビニル基、アリル基、シクロペンタジエン基、3−メタクロロキシプロピル基等を導入した炭素炭素二重結合を有するものを用いることがより好ましい。
【0130】
本発明架橋ポリマー粒子の架橋方法は、特に制限されず、モノマーの重合段階から架橋体を製造してもよいし、未加硫の重合体を、ヒドロシリル化架橋剤、パーオキサイド、アゾ化合物、イミド化合物、硫黄、硫黄同族体、キノンジオキシム誘導体、フェノール樹脂、プロトン酸、ハロゲン化金属、安定カルボニウムイオン、アルカリ金属、アルカリ水酸化物、グリニャール試薬、有機金属ハロゲン化合物、有機金属塩、有機金属化合物、水架橋(シラノール縮合)、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、アルコール、アミン、メラミン、アルコキシドなどを架橋剤として用い、これら架橋剤を重合体を構成するモノマーの重合段階から添加して架橋体を製造することもできるが、未架橋の重合体に後工程で架橋剤を添加して架橋することもできる。
【0131】
また、モノマーの重合開始剤が架橋剤と異なり、併用できない場合は、後工程で架橋することになるが、この場合、後工程の架橋剤で反応する官能基を持つモノマーを前の重合段階で共重合させておくことができる。重合段階の架橋及び後工程の架橋のいずれにおいても、粒子状物で直接架橋体を形成しても良く、架橋体の塊状物を粉砕して粒子状としても構わない。
【0132】
これらの中でも、架橋し得る官能基を有するエチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、シリコーン系オリゴマーやポリマーの重合体と、ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体とを混合し、この混合物に架橋剤を添加し、押出機等の混練機を用いて動的に架橋させる方法は、高速かつ連続的な生産性が可能であり、粒径制御も容易で、特に好ましい方法である。
【0133】
この場合、架橋ポリマー粒子が熱可塑性のポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体に被覆された状態で得られるため、基材マトリックスに容易に分散しやすいという特徴がある。また、懸濁重合法、乳化重合法、気相重合法、溶液重合のスプレードライなどで造られた球状形とは異なる不定形状が得られる点でも、優れた架橋ポリマー粒子の製造方法である。更に、反応槽での攪拌では、水、溶剤、モノマー、オリゴマー、ポリマーに、後述する摺動性付与成分を分散させることは困難であるが、上記高剪断を発現し得る混練機を使って動的に架橋させる方法によれば、強制的に摺動性付与成分を架橋ポリマー粒子に分散固定化することができる点からも好ましい。
【0134】
なお、汎用性のある架橋ポリマー粒子の入手方法は、上記の方法で作製した市販品を使用しても勿論構わない。また、市販のエチレン系、イソプレン系、ブタジエン系、スチレン系、シリコーン系のモノマー、オリゴマー、ポリマーに、架橋剤を添加し、そのまま又は水、溶剤、各種重合体、各種フィラーに分散させて、反応槽、金型、押出機などの混練機を使って、架橋させることも安価に得ることができる方法である。
【0135】
本発明の(I−2)成分の架橋ポリマー粒子は、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系重合体を、下記(B)〜(D)成分を含む複合架橋剤で架橋させたものであることが好ましい。なお、(B)〜(D)成分については、上述したものと同様のものを用いることができる。
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)特定の不飽和化合物
【0136】
以下、有用性の高い、押出機等の混練機を用いて動的に架橋させて架橋ポリマー粒子を製造する方法について具体的に説明する。なお、使用するポリプロピレン及びその共重合体並びにエチレン及びその共重合体は、上記(A−2)成分と同じものを用いることができる。
【0137】
上記複合架橋剤としては、下記(B)〜(D)成分を含むものが好ましい。なお、(B)〜(D)成分については、上述したものと同じものを用いることができる。
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)上記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上、好ましくは18〜98質量%である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
【0138】
この場合、架橋ポリマー粒子用重合体の炭素炭素二重結合と(D)成分の不飽和化合物の炭素炭素二重結合の合計1mo1に対し、(B)成分のオルガノハイドロシロキサンの珪素原子に結合した水素原子は0.5mo1以上、好ましくは0.8〜10mol添加する。水素原子が0.5mol未満では架橋ポリマー粒子を形成することができない場合がある。
【0139】
上記(C)成分のヒドロシリル化触媒の添加量は、全体の系に対して白金換算で0.05〜100ppm、好ましくは0.2〜50ppm、より好ましくは0.4〜10ppmである。少なすぎると架橋反応が起こらない場合があり、一方、100ppmを超えて添加しても優位性が認められないばかりか、経済的でない場合がある。また、0.4ppm以上の高濃度で動的架橋を行うと粒度分布の狭い粒子が得られる傾向があり、用途によっては好ましい。
【0140】
また、架橋ポリマー粒子用重合体の炭素炭素二重結合と(D)成分の不飽和化合物の炭素炭素二重結合の比は、モル比で99〜50/1〜50、好ましくは90〜45/10〜55、より好ましくは80〜40/20〜60である。(D)成分の不飽和化合物の炭素炭素二重結合のモル比が1未満であると架橋ポリマー粒子の平均最長径長さが大きくなりすぎたり、粒度分布が広くなりmm単位の粒子が生じて成形品を成形する際に、流路中に詰まったり、粒子が成形品から脱落するなどの不具合が生じる可能性がある。一方、(D)成分の不飽和化合物の炭素炭素二重結合のモル比が50を超えると、架橋ポリマー粒子の平均最長径長さが小さくなりすぎる場合がある。
【0141】
本発明の架橋ポリマー粒子は、成形時に方向性が出やすい針状形、鱗片状形よりも、球状形、立方形、紡錘形、柱状形、不定形であることが好ましい。特に毛羽立ちの強調、ゴミ取り機能、摺動性を高める場合は、不定形が好ましい。中でも鋭角な突起を多数有する不定形がより好ましい。また密状、中空状、多孔質などの形態は問わない。
【0142】
また、本発明の架橋ポリマー粒子の粒径は、架橋し得る官能基を有するエチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、シリコーン系オリゴマーやポリマーの重合体と、ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体との混合比により主に制御できる。また、粘度差によっても調整することができる。更に、混合と架橋にかける剪断、熱量、官能基の反応性、架橋剤の量によっても調整することができる。架橋ポリマー粒子とポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体との混合比は、重量比で97/3〜40/60、より好ましくは95/5〜60/40である。官能基の反応性は、高速かつ、持続性の高いものが、粒径を大きくすることができるので好ましい。
【0143】
本発明の架橋ポリマー粒子の大きさ、即ち、電子顕微鏡又は光学顕微鏡によって測定した平均最長径長さが30〜600μmであることが必要であり、特に100〜500μmであることが好ましい。平均最長径長さが小さすぎると成形品の表面に凹凸が形成できず本発明の目的とする特性が発現し得ない。一方、大きすぎると機械的強度が極端に低下したり、成形中や表面被覆材として用いる時に架橋ポリマー粒子の堕落や分離が発生しやすくなる。なお、平均最長径長さを測定する場合、最長径長さが5μm未満の粒子は除いて測定した。また、本発明エラストマー組成物でもその平均最長径長さを測定することができる。
【0144】
本発明において、ポリマー粒子が架橋しているかどうかは、成形品のポリマー粒子部分をサンプリングして、沸騰キシレン中に入れ、攪拌還流を30分間行い、未架橋部分又はオレフィン系樹脂を抽出除去し、ポリマー粒子が不溶物として残存するか否かで確認するか、又は加熱型顕微鏡により180〜230℃の溶融状態を観察することにより確認することができる。
【0145】
本発明のエラストマー組成物の沸騰キシレン不溶ゲル分量を測定した場合は、(I−1)成分の熱可塑性エラストマー中にも沸騰キシレン不溶ゲル分となる一般には0.1μm〜数μmの微細なエチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体の架橋物を含んでいるものもあるため、この架橋物と架橋ポリマー粒子の合計量が沸騰キシレン不溶ゲル分として測定される。
【0146】
この場合、本発明エラストマー組成物中の沸騰キシレン不溶ゲル分は好ましくは25〜85質量%、より好ましくは30〜80質量%、更に好ましくは45〜70質量%である。沸騰キシレン不溶ゲル分が多すぎると、エラストマー組成物の流動性が低下し、成形性が悪くなると共に、引張強度や引裂強度が大きく低下する場合がある。一方、少なすぎると、たとえすべてが平均最長径長さが30〜600μmの範囲の架橋ポリマー粒子であっても、特性が発現する表面凹凸を形成できなくなる場合がある。
【0147】
なお、組成物中にフィラーなどの沸騰キシレン不溶物が含まれている場合にはこれも沸騰キシレン不溶物としてカウントする。この場合、予めフィラーなどの沸騰キシレン不溶物量が不明な場合には、沸騰キシレン不溶物をTEG(N2ガス気流中で加熱し、ガス化する)にかけて、その減量重量から沸騰キシレン不溶ゲル分中の樹脂量を算出することができる。
【0148】
しかしながら、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系架橋重合体以外のフィラーなどの沸騰キシレン不溶物だけでは、製品に表面凹凸が発現し得なかったり、傷がつき易くなったり、重くなったり、強度や柔軟性が低下する場合がある。従って、沸騰キシレン不溶物の全体の少なくとも25質量%以上、好ましくは35〜100質量%のエチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系架橋重合体を含むことが好ましい。
【0149】
また、架橋ポリマー粒子の硬さは、摺動性、人体触感、ゴミ取り機能に影響を及ぼす、各条件が同一であれば、硬さが高い方が、一般的には、摺動性、サラサラ感、ゴミ取り機能が高くなる傾向がある。
【0150】
この場合、架橋ポリマー粒子の硬さは、簡易的には、架橋ポリマー粒子と同組成の密なバルクを別に成形し、JIS−D硬度(JIS K7215)が好ましくは25〜70、より好ましくは40〜60である。架橋ポリマー粒子が硬すぎると長期使用で基材の一部が剥げた際、対岸の圧接部材や人体に傷がつきやすくなる場合がある。一方、やわらかすぎると摺動性が悪くなる場合がある。
【0151】
なお、本発明架橋ポリマー粒子には、その硬さ調整及び粒子形状の調整などを目的としてフィラーを添加することができる。このようなフィラーとしては、短繊維、クレー、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中でもシリカ、カーボンが好ましい。
【0152】
シリカとしては湿式又は乾式の比表面積が50m2/g以上、特に75〜500m2/gのものが好ましい。シリカ表面の水酸基をジメチルジクロルシラン、ヘキサメチルジシラザンで封鎖処理したものが好適である。カーボンとしては、FEF,HAF、グラファイトなどが好適である。
【0153】
本発明の(I−2)成分の架橋ポリマー粒子の添加量は、(I−1)成分の基材マトリックス100質量部に対して2〜550質量部、好ましくは50〜300質量部である。(I−2)成分の添加量が少なすぎると特性が発現する表面凹凸が形成できない場合があり、一方、多すぎると機械的強度や成形性が低下する場合がある。
【0154】
また、本発明のエラストマー組成物には、表面凹凸形状による摺動性の付与に加えて、更に、(I−1)成分の基材マトリックスである熱可塑性エラストマーと(I−2)成分の架橋ポリマー粒子に、▲1▼摺動性付与剤を形成すること、▲2▼摺動性付与剤を添加することは、手触り感の調整、摺動性、ゴミ異物の排除性、耐磨耗性の機能を高めたり、これらの長期信頼性を高める点で好ましい。特に(I−2)成分の架橋ポリマー粒子に摺動性を付与することは、架橋ポリマー粒子が外表面に現れた際に摺動性を増すことができ、ごみ除去性や耐磨耗性が減衰しないばかりか、向上させる働きを有する点で好ましい。
【0155】
上記▲1▼摺動性付与剤を形成する方法は、(D−4)成分のビニルポリシロキサン、(D−iv)や(D−ix)のシロキサン構造を分子量に対して20質量%以上、好ましくは30〜98質量%有する(D−1),(D−2),(D−3),(D−5),(D−6)の不飽和化合物により、(I−1)成分の熱可塑性エラストマー及び/又は(I−2)成分の架橋ポリマー粒子を形成することにより摺動性を付与することができる。シロキサン構造の割合が少なすぎると摺動性を付与することができない場合がある。
【0156】
上記▲2▼摺動性付与剤を添加する方法は、エラストマー組成物に添加しても良いし、その前段階の(I−1)成分の熱可塑性エラストマー、又は(I−2)成分の架橋ポリマー粒子に添加しても構わない。
【0157】
摺動性付与剤を本発明のエラストマー組成物、又は(I−1)成分の熱可塑性エラストマーに添加する場合、(I−1)成分の熱可塑性エラストマーとの相溶性が悪いと、成形時にブリードアウト、ウエルドなどの成形不良が発生したり、表面被覆材から短時間でブリードアウト、ブルームアウトしてしまい、長期的な特性が維持されないばかりか、外観意匠性が損なわれたり、却ってべたつきが発現するなどの不具合が生じる場合がある。
【0158】
TPS、TPO、又は特定のTPVと相溶性がよい、好ましい摺動性付与剤としては、シリコーン−プロピレン系共重合体、シリコーン−エチレン系共重合体、シリコーン−アクリル系共重合体から選ばれる少なくとも1種類のシリコーン共重合体などが挙げられる。
【0159】
上記シリコーン−プロピレン系共重合体及びシリコーン−エチレン系共重合体としては、プロピレン鎖又はエチレン鎖にシリコーンをグラフトしたもの、プロピレンブロック又はエチレンブロックとシリコーンブロックの共重合体などが挙げられる。具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製 商品名シリコーンコンセントレートBY27−201,BY27−201C,BY27−202などがある。
【0160】
上記シリコーン−アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体又はグラフト共重合体がある。グラフト共重合体には、アクリル系重合体を主鎖とするものとシリコーンを主鎖とするものなどが挙げられる(特開平2−158667号公報、特開平5−311054号公報、特開平9−302242号公報、特願平10−318880号参照)。
【0161】
上記摺動性付与剤の添加量は、エラストマー組成物に対して2〜40質量%、特に4〜20質量%であることが好ましい。
【0162】
一方、摺動性付与剤を(I−2)成分の架橋ポリマー粒子に添加する場合、ポリマーの架橋前に摺動性付与剤を混合分散させて架橋することにより、架橋ポリマー粒子中に一部固定する方法を採用することができる。これは粒子自体に摺動性を付与することができる点で好ましい。
【0163】
この方法で用いることのできる摺動性付与剤としては、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン、フッ化炭化水素基含有のオルガノポリシロキサン、高級脂肪酸アミド変性オルガノポリシロキサン、ポリエ−テル変性オルガノポリシロキサン、ポリラクトン変性オルガノポリシロキサン、オルガノトリアルコキシシラン、前記シリコーン−プロピレン系共重合体、シリコーン−エチレン系共重合体、シリコーン−アクリル系共重合体などの他、グラファイト、マイカ、タルク、二硫化モリブデン等の無機系の摺動性付与剤を使用することもできる。
【0164】
上記摺動性付与剤の添加量は、架橋し得る官能基を有するエチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体、又はシリコーン系重合体100質量部に対して100質量部以下、好ましくは40質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。摺動性付与剤が多すぎると封止できなくなり、成形時や成形品になってから分離して不具合が生じたり、架橋ポリマー粒子と基材マトリックスとの密着性が低下し、機械的強度が劣る場合がある。
【0165】
なお、本発明のエラストマー組成物には、成形品に表面凹凸形状を多く付与するために、アゾジカルボンアミド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ヒドラゾジカルボンアミド、尿素、重炭酸水素ナトリウムなどの発泡剤を添加することもできる。
【0166】
また、本発明のエラストマー組成物には、成形性(即ち、金型剥離性、溶融粘度、溶融伸び調整)、光沢性向上、耐磨耗性向上、機械的強度向上の目的で、各種滑剤、アクリル変性ポリフルオロエチレン、水添率の高い飽和のSEBS,SEPS,SEBC,CEBC,VLDPEを添加することもできる。特に、スチレン系の架橋ポリマー粒子と飽和のSEBS,SEPS,SEBCとを併用すると、溶融伸び、光沢性、耐磨耗性、機械的強度が向上するので効果的である。
【0167】
また、本発明のエラストマー組成物には、赤、黒、白、黄色、茶等の顔料及び染料などの各種着色剤を添加し、この色彩を施した架橋ポリマー粒子を複数種類混合して成形品を成形することにより、極めて特徴のある外観意匠性を創出することができる。
【0168】
本発明のエラストマー組成物の製造方法は、それぞれ別々に製造した(I−1)成分の基材マトリックスである熱可塑性エラストマーと、(I−2)成分の架橋ポリマー粒子とを公知の溶融混練機などを用いて分散混合することにより得ることができる。なお、架橋体が(I−1)成分の熱可塑性エラストマーの(A−1)成分のエチレン−α・オレフィン非共役ジエン共重合体ゴムと同様なエチレン系重合体である場合は、(I−1)成分の熱可塑性エラストマーと(I−2)成分の架橋ポリマー粒子を動架橋用溶融混練機を用いて一括で製造できる。
【0169】
このようにして得られる本発明のエラストマー組成物は、成形品製造用の押出機の先端にダイスを取り付けて直接成形品に加工することができる。また、組成物を予めバルク状、べール状、シート状、ペレット状、粉状などに成形しておき、これらを成形工程に送り、押出成形法、ブロー成形法、射出成形法、回転成形法、プレス成形法、カレンダーロール法等の通常の成形法により成形することができる。この場合、成形金型、ダイス、ロールなどの内側面に、スリット、ブラスト、模様、彫刻、ピンを形成しておき、成形品(表面被覆部材)表面に優れた凹凸外観意匠性、疑似織物(ファブリック)、疑似布の風合を付与することができる。
【0170】
なお、押出成形法によって成形する場合は、使用している架橋ポリマー粒子の最長径平均の0.5倍以上、特に2倍以上のダイスリップ厚みを設けることが好ましい。ダイスリップ厚みが0.5倍未満では弾性変形が可能な粒子であっても、目詰まりが生じたり、成形品に穴があき易くなる場合がある。
【0171】
本発明の成形品(表面被覆部材)は、デザイン性、手触り感、摺動性、ゴミ異物の排除性などの機能を付与するため、表面の十点平均粗さが20μm以上であることが必要であり、好ましくは20〜400μm、より好ましくは40〜200μmである。十点平均粗さが小さすぎると、上記本発明の優れた機能を発現する凹凸状の粗面が得られない。一方、大きすぎると、成形品が破壊され易くなったり、摩耗によるゴミが発生する場合がある。
【0172】
なお、金型に模様を施すなどの上述の方法を併用する場合は、規則性のある凹凸は除き、判別が困難な場合は1000μm以上の凹凸を消去して十点平均粗さを測定する。なお、この場合も表面の十点平均粗さが40〜400μmであることが、同じ理由により好ましい。
【0173】
なお、本発明において、表面被覆材とは、本発明エラストマー組成物単一、又は他組成物との複合成形体の場合は、表皮(最外殻部)が本発明エラストマー組成物から形成されているものを指す。
【0174】
本発明の成形品は、デザイン性、手触り感、摺動性、ゴミ異物の排除性などの機能を備えており、自動車部材用途の他、硝子窓、引き戸等の建具建物間の摺動部材、壁紙、レザー、鞄、手帳などの用途に幅広く用いることができる。
【0175】
特に、自動車部品としては、例えばドアガラスアウターウェザストリップ(ベルトモール)、ドアガラスインナーストリップ(インナーモール)、サンルーフウェザストリップ、ドア周りのウェザストリップ、ドア下モール、窓周りの各種モール、アウトサイドミラーパッキン、グラスランチャンネル、ドリップモールなどの外装部品や、インパネ、ドアトリム、ヘッドレスト、シートベルトカバー、エアーバッグカバー、アームレスト、シフトレバーノブ、各種のリットカバー、アシストグリップ等の内装部品などに用いることができる。
【0176】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0177】
〔実施例1、比較例1〕
(1)熱可塑性エラストマーの調製
表1〜3に示す組成で、下記▲1▼,▲2▼,▲3▼の操作により、(I−1)−1〜(I−1)−3の3種類の熱可塑性エラストマーを製造した。
【0178】
混練機として、株式会社池貝製高速二軸押出機PCM30を用いた。このPCM30は、ホッパー下C0からペレット製造用ダイスDまで、C0→C1〜C9→H→AD→Dの等分割したシリンダー単位で連結されており、L/D=35、スクリューは正転,ニュートラル,逆転のニーディングディスクと順逆送りスクリューエレメントから構成されている。
【0179】
▲1▼表1記載の「予備混練ステージで混練される原材料」を混練するため、予め高速二軸押出機PCM30に食い込むことができる大きさにまで粉砕したエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体と、他の表1記載の「予備混練ステージで混練される原材料」をブレンダーで混合した。得られた混合物をPCM30に供給し、混練して予備混練ペレットを作製した。
▲2▼▲1▼で作製した予備混練ペレットをL/D=42、ニーディングディスクを増設したPCM30に供給し、表2記載の「動架橋混練ステージで添加混練される架橋剤」を表2の配合比になるように、PCM30のC2位置から供給した。
▲3▼表3記載の「動架橋混練ステージで架橋剤添加後、添加混練する耐候剤、耐熱剤」を表3の配合比になるように、PCM30のC8位置から供給した。
【0180】
【表1】
予備混練ステージで混練される原材料
【0181】
【表2】
動架橋混練ステージで添加混練される架橋剤
【0182】
【表3】
動架橋混練ステージで架橋剤添加後に添加混練する耐候剤、耐熱剤
【0183】
(2)架橋ポリマー粒子の調製と評価
表4〜7に示す組成で、下記▲4▼,▲5▼の操作により、動的架橋により、(I−2)−1〜(I−2)−7,(あ−2)−6の8種類の架橋ポリマー粒子を製造した。なお、予備混練には株式会社トーシン製TD10−20M加圧式ニーダーを用いた。また、動的架橋には株式会社池貝製高速二軸押出機PCM30を用いた。
【0184】
▲4▼TD10−20M加圧式ニーダーのローター、反応槽、加圧蓋を150℃に制御した。表4,5記載の「予備混練ステージで混練される原材料」の全量が8kgになるように計量し、投入した後、混練を行った。樹脂温度が180℃になったところで、TD−10−20M加圧式ニーダーから取り出して、シーティングし、冷却して粉砕した。
▲5▼▲4▼の予備混練粉砕物をシリンダー温度160〜200℃に制御した高速二軸押出機PCM30に供給した。次に、表6,7記載の「動架橋混練ステージで添加混練される架橋剤」を表6,7の配合比になるように、PCM30のC2位置から供給した。
この場合、架橋ポリマー粒子(I−2)−1,(I−2)−5,(I−2)−6,(I−2)−7はダイスを付けずに粉体で製造した。(I−2)−2,(I−2)−3,(あ−2)−6は、ホットカットダイスを付けてペレット化して製造した。(I−2)−4は、ストランドカットダイスを付けてペレット化して製造した。なお、スクリュー回転数は50〜100rpmで行った。また、PCM30のL/Dは35、ニーディングディスク数も減らした。
【0185】
動的架橋で得られた(I−2)−1〜(I−2)−7,(あ−2)−6の8種類の架橋ポリマー粒子、表9記載の市販の架橋ポリマー粒子及び未架橋ポリマー粒子について、電子顕微鏡でその粒子径を測定し、平均最長径長さを算出した。また、加熱型顕微鏡を用いて100〜240℃まで5℃/minの加熱速度で溶融性を確認した。結果を表8,9に示す。
【0186】
【表4】
予備混練ステージで混練される原材料(1)
【0187】
【表5】
予備混練ステージで混練される原材料(2)
*1:三井化学製R−4532
油添前極限粘度[η]:3.2
油添前100℃ムーニー粘度:115
油添後100℃ムーニー粘度:103
VNB含有量(ヨウ素価):1.7質量%(4)
エチレン含有質量%(エチレン含有モル%):70(78)
油添量(質量部):20
*2:三井化学製PX−046
油添前極限粘度[η]:2.1
油添前100℃ムーニー粘度:58
VNB含有量(ヨウ素価):4.5質量%(10)
エチレン含有質量%(エチレン含有モル%):57(68)
【0188】
【表6】
動架橋混練ステージで添加混練される架橋剤(1)
【0189】
表6中(J−10)は下記式に示した通りである。
【化27】
上記式中、R4は水素原子又はアルキル基を示し、qは11〜13である。
【0190】
【表7】
動架橋混練ステージで添加混練される架橋剤(2)
【0191】
【表8】
【0192】
【表9】
【0193】
(3)実施例1及び比較例1のエラストマー組成物の調製
表10〜12に示す組成を、ブレンダーで混合した後、高速二軸押出機PCM30に供給して、混練した。このPCM30では、シリンダー温度を160〜200℃に制御し、ストランドカットダイスを付けてペレット化した。なお、スクリュー回転数は200rpmで行った。
【0194】
次に、図2に示したように、二層ダイスにφ40mmとφ20mmの二台の単軸押出機を接続した。φ40mm単軸押出機から熱可塑性エラストマー(I−1)−2のペレットを、φ20mm単軸押出機から表4〜7,9で作製又は入手した架橋ポリマー粒子又は未架橋ポリマー粒子を含有する表10〜12のペレットをそれぞれ供給して、図3に示したようなA部、B部を有する成形品(押出シート)4を成形した。その際、B部の厚みが0.4〜0.5mmの範囲に入るように、各押出機のスクリュー回転速度及び二層成形品の引き取り速度を若干調整した。なお、φ40mm、φ20mmの単軸押出機と二層ダイスは180〜200℃に温調した。
【0195】
得られた成形品について、下記方法により諸特性を評価した。結果を表10〜12に示す。
沸騰キシレン不溶ゲル分
成形品4を0.5mm以下の大きさまで粉砕した。この粉砕物を3g程度精秤W1gし、150mLの沸騰キシレンに入れ、6時間還流抽出を行った。予め精秤したW2gの濾紙で抽出溶液を濾過して不溶ゲル分を分離した。濾紙上の不溶ゲル分を濾紙に乗せたまま、100℃で24時間乾燥し、室温まで冷却した後、濾紙ごと秤量W3gした。
これらの結果から、下記式に基づき、沸騰キシレン不溶ゲル分を算出した。
【数2】
表面の十点平均粗さ
株式会社東京精密社製サーフコム110BでJIS B0601−1994に基づいて測定した。
静摩擦係数及び動摩擦係数
摩擦試験機としてヘイドン14−D−ANL(新東科学社製)を用いて成形品(押出シート)のB部から6mm×50mmのサンプルを切り取り、平面圧子に貼り付け、荷重1000kg、引張速度100mm/minの条件でガラスとの静摩擦係数及び動摩擦係数を測定し、摺動性の評価とした。
摩耗回数
図4に示したように、成形品4を固定し、R=15mm、幅3mmのガラス(すりガラス面)を荷重1kgで接触させ、150mm間を1Hzの条件で往復運動し、成形品に穴が空いた時の往復回数を摩耗回数とした。但し、1000回ごとにすりガラス面をサンドぺーパーで掃除した。
変形量
図5(A),(B)に示した治具Tに成形品4を固定し、23℃で24時間放置した後、治具の一部を解放し、30分後の変形量(両矢印方向)を測定した。なお、変形量が小さいほど、耐永久歪み性に優れている。
引張試験
JIS K7113(2号ダンベル)
【0196】
【表10】
*1:日信化学(株)製アクリル変性ポリオルガノシロキサン
*2:日本合成ゴム(株)製SEBC
*3:大日本インキ化学工業(株)製
【0197】
【表11】
*4:J−750H 出光石油化学(株)製ブロックタイプポリプロピレン
*5:シリコーンコンセントレートBY27−201 東レダウコーニング(株)製ポリプロピレンにシリコーングラフトした共重合体
*6:日本合成ゴム(株)製ポリプロピレンにHSBR(日本合成ゴム(株)製DR1320P)を分散させたもの
なお、表11中、実施例(1−12),(1−15)は、架橋ポリマー粒子と熱可塑性エラストマーとを一度に作製したものである。
【0198】
【表12】
*8:ダウケミカルカンパニー製エチレン−オクテン共重合体
【0199】
表10〜12の結果から、実施例1−1〜1−17は、いずれも問題なく成形することができ、摺動性、耐摩耗性、耐永久歪み性、機械的強度、柔軟性に優れたものであることが認められた。
【0200】
〔実施例2、比較例2〕
実施例1−6の組成物102質量部にシャリーヌR−128(日信化学(株)製アクリル変性ポリオルガノシロキサン)5質量部を添加混練して、実施例2の組成物を製造した。この組成物の沸騰キシレン不溶ゲル分は48質量%であった。
【0201】
次に、図6に示したように、芯材5となるステンレスをロール加工し、その表面に接着剤を塗布した後、本体硬質部6となるポリプロピレン組成物(タルク、黒顔料を含有)、本体弾性部7となる実施例2の組成物を三層押出成形により、車両用ウエザストリップを成形した(「実施例2の製品」)。なお、本体弾性部7と窓ガラス摺動部とを合せてリップ部という。
【0202】
比較例2として、リュブマー(三井化学(株)製ポリエチレン系摺動材)100質量部にハイゼックスミリオン240M(三井化学(株)製 超高分子量ポリエチレン粒子)40質量部を混練した組成物で、窓ガラス摺動部を形成した車両用ウエザストリップを成形した(「比較例2の製品」)。この「比較例2の製品」は、窓ガラス摺動部の凹凸がまばらにしか発生しなかった。
【0203】
「実施例2の製品」の窓ガラス摺動部の十点平均粗さは360μmであった。また、「比較例2の製品」の十点平均粗さは10μmであった。
【0204】
次に、「実施例2の製品」及び「比較例2の製品」を実車に取り付けた。施工の際、「比較例2の製品」はリップ部に変形が加わると、窓ガラス摺動部がしわになってしまった。「実施例2の製品」はリップ部が変形しても、弾性回復してしわが残らなかった。
また、10000回の窓ガラス昇降試験を行った。この際、1000回ごとに平均粒径30μmの鋳砂を定量付着させて200回目、1000回目、2000回目、5000回目、10000回目の窓ガラス摺動部の摩耗及びガラスの摩耗を観察した。
【0205】
「実施例2の製品」及び「比較例2の製品」とも10000回まで摺動性不足による昇降ストップという事態には陥らなかった。また、「比較例2の製品」は、当初よりガラスと鋳砂の摺れ音が発生し、200回時点で窓ガラス摺動部及びガラスに傷が発生し、回数を追うごとにガラスの傷が増加し、窓ガラス摺動部は摩耗していった。
【0206】
これに対して、「実施例2の製品」は、鋳砂が窓ガラス摺動部に入らずに排除する傾向が強かった。2000回時点まで窓ガラス摺動部及びガラスに傷がほとんど発生しなかった。5000回目、10000回目で窓ガラス摺動部は摩耗していたが、凹凸は残っており、ガラスに傷はほとんど発生しなかった。
【0207】
〔実施例3〕
表13の配合で、実施例1と同じ方法で熱可塑性エラストマー(I−1)−4のペレットを作製した。次に、表14の配合で、予備混練を高速二軸押出機PCM30を用いて160〜200℃の設定温度で200rpmで行った以外は、実施例1と同じ方法で、(I−2)−8の架橋ポリマー粒子を作製した。続いて、表15に示した配合で、実施例1と同じ方法で混練し、実施例3のペレットを製造した。
【0208】
得られた実施例3のペレットを押出機にて180〜210℃の条件で加熱混練を行い、円筒状に押出された材料を2枚の金型で挟み、空気を吹き込んで金型の内壁に密着させると同時に冷却し、図7に示した車両用ヘッドレストの被覆層となる中空成形品を得た。なお、金型の内側には、図8に示したキャンバス布地模様が施されている。
【0209】
この金型模様の規則的な凹凸を相殺した時の十点平均表面粗さは70μmであり、上記同様に測定した沸騰キシレン不溶ゲル分は46質量%であった。
【0210】
この実施例3のヘッドレストの被覆部材は、金型模様、架橋粒子による凹凸、(I−1)−4と(I−2)−8の色を若干ずらした効果が相俟って、染めた繊維を編んだ布地感のある外観が得られた。また、粘着感がなく、手触りも布地の風合を持つものとなった。本物の布地と異なり、ジュース、タバコの灰を付着させても、染みや汚れの付きにくい特性を有していた。
【0211】
【表13】
*LLDPE
【0212】
【表14】
【0213】
【表15】
*:日本合成ゴム(株)製HSBR
【0214】
〔実施例4〕
実施例3と同じ方法で、表16の熱可塑性エラストマー(I−1)−5、表17の架橋ポリマー粒子(I−2)−9を作製した。続いて、表18の配合で、実施例4のペレットを製造した。
【0215】
次に、全体に皮地の絞り模様を施し、グリップ部分形成箇所に半円凸部を多数設けた金型に、金属賦形物をインサートし、実施例4のペレットを射出成形機で射出して、図9に示した車両用アームレスト被覆層を成形した。
【0216】
半円凹状の規則的な凹凸部及び1000μm以上の凹凸部を相殺した時の十点平均表面粗さは、グリップ部分とその他の部分も40〜50μmであった。被覆層の一部をサンプリングし、上記同様に測定した結果、ポリマー粒子の平均最長長さが80μm、ポリマー粒子の溶融性なし、沸騰キシレン不溶ゲル分が47質量%であった。
【0217】
この実施例4は、艶消し感のある疑似皮地の外観、さらっとした手触り感を持ち、かつ爪で傷の付きにくいアームレスト被覆部材であった。
【0218】
【表16】
*:SEBS
【0219】
【表17】
【0220】
【表18】
【0221】
【発明の効果】
本発明によれば、熱可塑性エラストマーからなる基材マトリックスに架橋粒子を分散させることによって、成形品の表面に凹凸形状を形成でき、摺動性、耐摩耗性、非汚染性、ゴミ排除性(ブラッシング効果)に優れる表面被覆部材や、デザイン性、風合、手触り感などの人の感覚に訴える表面被覆部材を提供できるようになった。
【0222】
また、特定の不飽和化合物、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金触媒との3つの成分を併用することにより、効率よく動的なヒドロシリル化架橋を行うことができ、高い性能のオレフィン系熱可塑性エラストマー基材や架橋粒子を製造することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオレフィン系TPVの製造工程(タンデム型)を示した概略図である。
【図2】実施例1の二層ダイスの概略断面図である。
【図3】同成形品の概略断面図である。
【図4】摩耗回数の測定方法を示した説明図である。
【図5】変形量の測定方法を示し、(A)は成形品を治具に固定した状態、(B)は治具の一部を解放した状態を示す。
【図6】ウエザストリップの概略図である。
【図7】ヘッドレストの斜視図である。
【図8】ヘッドレスト成形金型の内側の模様を示した拡大図である。
【図9】アームレストの概略図である。
【符号の説明】
4 成形品
Claims (3)
- 基材マトリックスに、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、又は炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体を架橋してなる平均最長径長さが30〜600μmであり、かつ実質的に溶融しない架橋ポリマー粒子を含有させると共に、沸騰キシレン不溶ゲル分を含むエラストマー組成物であって、上記基材マトリックスが、下記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる混合物で、下記(A−1)成分を部分的又は完全に架橋してなるオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とするエラストマー組成物。
(A)下記(A−1)成分と(A−2)成分とからなる混合物
(A−1)エチレン−α・オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴム
(A−2)ポリプロピレン及びその共重合体並びにポリエチレン及びその共重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)下記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体
- 上記架橋ポリマー粒子が、エチレン系重合体、イソプレン系重合体、ブタジエン系重合体、スチレン系重合体、又は炭素数3〜12のα−オレフィン系重合体を、下記(B)〜(D)成分を含む複合架橋剤で架橋させたものである請求項1記載の組成物。
(B)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)上記一般式(D−i)〜(D−x)で示される構造単位の1種又は2種以上を有すると共に、該構造単位の合計量が分子量に対して12質量%以上である下記(D−1)、(D−2)、(D−3)、(D−4)、(D−5)及び(D−6)から選ばれる少なくとも1種の不飽和化合物
(D−1)アクリロイル化合物
(D−2)メタクリロイル化合物
(D−3)不飽和ポリエステルアルキッド
(D−4)ビニルポリシロキサン
(D−5)1,4−結合のイソプレン重合体
(D−6)1,4−結合のブタジエン重合体 - 請求項1又は2記載の組成物を成形してなる表面の十点平均粗さが20μm以上であることを特徴とする成形品。
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