JP4375227B2 - 電波吸収体および電波吸収体の製造方法 - Google Patents

電波吸収体および電波吸収体の製造方法 Download PDF

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本発明は、電波吸収体および電波吸収体の製造方法に関するものである。また、本発明は、電磁波の反射等による通信障害を防止でき、かつ薄型化および軽量化が可能な電波吸収体および電波吸収体の製造方法に関するものである。
近年、携帯電話、無線LAN(Local Area Network)およびITS(Intelligent Transport Systems)などの無線通信システムの発達により、通信情報の保護および混信・誤通信の防止をする必要が生じている。主に通信情報の保護を目的とする場合には、外来電波の遮蔽と通信機器自身からの放射電波の遮蔽の為に、電磁波シールド材による室内外の電波を遮断することが行われている。しかし、この場合には通信機器自身からの放射電波が反射により室内に残ることになり、その反射波と所望の通信電波との干渉による通信品質の劣化を引き起こすことがある。このような通信品質の劣化および混信・誤通信などの通信障害を防止する為には、電磁波を吸収して熱に変換するような電波吸収体が用いられている。
このような電波吸収体には、一般に電磁波のエネルギーを熱に変換し消費することができる材料が用いられるが、それは磁性損、誘電体損、オーム損を持ち得る材料と言うことができる。電波吸収体としては、フェライト又は軟磁性金属などの磁性粉末をゴム又はプラスチックなどの絶縁マトリックスに混合分散させて、シート状又はブロック状に成型加工したものが考え出されている(例えば、特許文献1参照)。
また、電波吸収体としては、カーボンブラックなどの誘電損失粉末を発泡ポリウレタンなどに含浸させ、ピラミッド状又は楔状に加工したものも考え出されている(例えば、特許文献2参照)。
また、電波吸収体としては、反射体からλ/4(λ:特定の周波数における電波の波長)離れた位置に自由空間の特性インピーダンスである377Ωにほぼ等しい抵抗膜を設置したλ/4型と呼ばれるものなども考え出されている(例えば、特許文献3参照)。
また、複数の導電性パターンが規則的に配置された周期パターンを吸収体表面に形成して軽量化および薄型化を図った電波吸収体(例えば、特許文献4参照)、更には、複数の導電性ループパターンが規則的に配置された周期ループパターンを吸収体表面に形成して、軽量化、薄型化および斜め方向からの電波吸収特性の改善を図った電波吸収体も考え出されている(例えば、特許文献5参照)。
特開2001−308584号公報 特開平10−051180号公報 特開平05−335832号公報 特許第3209453号公報 特開2001−352191号公報
しかしながら、特許文献1にあるような、フェライト又は軟磁性金属などの磁性粉末をゴム又はプラスチックなどの絶縁マトリックスに混合分散させて成型加工した電波吸収体においては、比較的厚さの薄い吸収体が形成可能であるが、高い電波吸収性能を求める場合にはある程度の厚さが必要となり、比重の大きな材料を用いることになる為にその重量が大きくなってしまうといった問題点を有している。
次に、特許文献2にあるような、カーボンブラックなどの誘電損失粉末を発泡ポリウレタンなどに含浸させて加工した電波吸収体においては、基本的にその吸収性能が厚さに依存するため、所望の性能を得る為にピラミッド状又は楔状にする工夫あるいは吸収方向に対するかなりの厚さが必要となるといった問題点を有している。
また、特許文献3にあるような、反射体からλ/4離れた位置に自由空間の特性インピーダンスである377Ωに近い値の抵抗膜を設置したλ/4型と呼ばれる電波吸収体においては、光学的に透明な抵抗膜を用いることにより透明電波吸収体が作製可能である。しかし、特許文献3に記載されている電波吸収体では、原理的に特定の周波数におけるλ/4の厚さが必要であり、また電波の入射角度によって電波吸収特性が変動してしまうという点で問題を有している。
更に、特許文献4には、これら従来の電波吸収体に比べて軽くて薄いものとして、複数の導電性パターンが規則的に配置された周期ループパターン、損失材料を含有する中間樹脂層および導電性反射層からなる電波吸収体について記載されている。しかし、特許文献4に記載されている電波吸収体では、λ/4型と同様に電波の入射角度によって電波吸収特性(周波数)が変動してしまうという点で問題を有している。
また更に、特許文献5には、これら従来の電波吸収体に比べて軽くて薄いものとして、複数の導電性ループが規則的に配置された周期ループパターン、中間層および導電性反射層からなり、その厚さが吸収対象波長の0.027倍以上である電波吸収体について記載されている。しかし、特許文献5に記載されているような単一の大きさのパターンを周期的に並べた構造の電波吸収体においては、入射角度による電波吸収特性(周波数)の変動は抑止される一方、周波数帯域が限定され非常に狭帯域な特性となってしまい作製時の特性変動の点で問題を有している。
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、電磁波の反射などによる通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能であり、且つ、電波の入射角度に対する特性変動の少ない電波吸収体および電波吸収体の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の電波吸収体は、少なくとも、導体からなる全面導体層(11)と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層(12)と、前記全面導体層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層(13)と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層(14、15)と、導体からなるパターンを複数有するパターン層(16)とを有することを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、パターン層のパターンがアンテナとして機能して電波を受信し、その受信の際に第2誘電体層への電磁波の漏れが生じる。この漏れた電磁波は、第1誘電体層との間に設けられた高抵抗導体からなる線状パターン抵抗層により熱に変換されて消費される。また、パターン層を一旦通り抜けた電波であっても、パターン層、第2誘電体層、線状パターン抵抗層及び第1誘電体層を透過した電波は、その後、全面導体層で全反射などしてパターン層で受信され、線状パターン抵抗層で熱に変換されて消費される。これらにより、本発明の電波吸収体は、電波を吸収して消費することができる。したがって、本発明は、電磁波の反射などによる通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能であり、且つ、電波の入射角度に対する特性変動の少ない電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記全面導体層(11)と、前記第1誘電体層(12)と、前記線状パターン抵抗層(13)と、前記第2誘電体層(14、15)と、前記パターン層(16)とを当該順序で積層したことを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、最表層のパターン層で良好に電磁波を受信することができる。そして、パターン層と第2誘電体層とが接しているので、パターン層が受信した電磁波の第2誘電体層への漏れを大きくすることができる。また、第2誘電体層と線状パターン層とが接しているので、第2誘電体層に漏れた電磁波を線状パターン層が効率良く熱に変換することができる。したがって、本発明の電波吸収体は、効率よく電磁波を吸収することができるので、電磁波の反射などによる通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能であり、且つ、電波の入射角度に対する特性変動の少ない電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記全面導体層(31)と、前記第1誘電体層(32,33)と、前記パターン層(34)と、前記第2誘電体層(35)と、前記線状パターン抵抗層(36)とを当該順次で積層したことを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、パターン層のパターンがアンテナとして機能して電波を受信し、その受信の際に、パターン層に第2誘電体層を介して接している線状パターン抵抗層が電磁波を熱に変換して消費することができる。
また、本発明の電波吸収体は、少なくとも、導体からなるパターンが格子状に形成された格子状導体層(41)と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層(42)と、前記格子状導体層を形成する導体よりも抵抗率の高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層(43)と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層(44)と、導体からなるパターンを複数有するパターン層(45)とを、当該順序で積層した構造を有することを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、格子状導体層において電波を全反射などすることができる。そこで、パターン層で受信されなかった電波であっても、パターン層、第2誘電体層、線状パターン抵抗層及び第1誘電体層を透過した電波は、その後、格子状導体層で全反射してパターン層で受信され、線状パターン抵抗層で熱に変換されて消費される。これらにより、本発明は、電磁波の反射などによる通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能な電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記線状パターン抵抗層が、高抵抗導体からなる線状パターンが交差したものと、前記線状パターンが六角形のハニカム形状をなしたものと、のいずれかからなることを特徴とする。
本発明によれば、例えば平面形状がハニカム形状となっているパターン、換言すれば、六角形の目を持つ網を平面に敷いたようなパターンからなる線状パターン抵抗層を構成することができる。そこで、本発明は、電磁波について効率よく熱に変換できる線状パターン抵抗層を備えた電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記線状パターン抵抗層をなす高抵抗導体は、体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のものであることを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、パターン層で受信されて、誘電体層へ漏れた電磁波について、線状パターン抵抗層の高抵抗導体によって高い効率で熱に変換することができる。したがって、本発明は、電磁波に対して高い減衰特性を備えた電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記全面導体層、パターン層、線状パターン抵抗層及び格子状導体層のうちの少なくとも1つが、複数の線状パターンを有するとともに、隣り合う前記線状パターンの中心間隔である線路中心間隔が吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下であることを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、所望の波長の電磁波について、通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能な電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記線状パターン抵抗層の幅である線路幅が、100μm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、遠目に透明でありながら、高性能な電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記パターン層における各パターンが、隣接する他のパターンに対して、大きさと形状のうちの少なくとも一方を異なる形状となっていることを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、広帯域な反射減衰特性を備えることができ、且つ、所望波長の電磁波の入射角度に対する特性変動の少ない電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、前記パターン層における各パターンが、円形、矩形、多角形又はこれら形状を外形とするループ形状のいずれかの形状と、該いずれかの形状に突起形状を付加した形状と、のうちの少なくとも一方からなることを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、吸収対象とする電波の波長及び帯域の広さなどに応じてパターン層の各パターンの形状を設定することにより、所望波長及び所望帯域の電波について高効率で吸収することができる。したがって、本発明の電波吸収体によれば、電磁波の反射などによる通信障害などを効果的に防止することができる。
また、本発明の電波吸収体は、積層構造における表面および裏面の少なくとも一方に積層された保護層を有することを特徴とする。
本発明の電波吸収体によれば、電波吸収体の表面又は裏面に保護層を配置した構造とすることができる。そこで、全面導体層及び格子状導体層などの電波反射層、線状パターン抵抗層、パターン層又は第2誘電体層の少なくとも一方の表面側に保護層を積層することにより、各層における導体(例えば金属)の導電率変化(例えば酸化)を防止することができる。また、保護層により、ハードコード又はUVカットなどの機能を付与することもできる。したがって、本発明によれば、製品寿命の長い電波吸収体を提供することができる。
また、本発明の電波吸収体は、構成要素の全ての前記層を透明又は半透明にしたことを特徴とする。
本発明によれば、例えば遠目に透明な電波吸収体を提供することができる。ここで、全面導体層、パターン層又は線状パターン抵抗層などは、ITO(酸化インジウム錫)又はATO(酸化アンチモン)などの透明導電性酸化物を用いてもよい。また、格子状又はハニカム状の細線材料を用いて、全面導体層、パターン層又は線状パターン抵抗層などを構成してもよい。そして、第1誘電体層、第2誘電体層及び保護層などに透明な材料を用いる。これらにより、透明又は半透明な電波吸収体を構成することができる。
また、細線材料を用いて全面導体層、パターン層又は線状パターン抵抗層などを構成した場合は、細線材料の線路中心間隔が吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下であることが好ましい。また、視認性の面から考えると、細線材料の線路幅は100μm以下であることが好ましい。このような構成によって、遠目に透明な電波吸収体を実現できるとともに、電磁波に対して面状導体又は面状抵抗体として機能する層を備え電磁波吸収特性が優れた電波吸収体を実現することができる。
また、本発明の電波吸収体は、電磁波を反射する電波反射層と、前記吸収対象とする波長の電磁波についてアンテナとして受信するアンテナ層と、前記アンテナ層の上側又は下側に少なくとも配置されている誘電体層と、前記アンテナ層が電磁波を受信したときに前記誘電体層に漏れた電磁波を熱に変換して消費する抵抗層とを有することを特徴とする。
ここで、電波反射層として、前記全面導体層(11,21,31)、格子状導体層(41)などを適用することができる。アンテナ層としては、前記パターン層(16,27,34,45)などを適用することができる。誘電体層としては、前記第1誘電体層(12,23,24,32,33,42)又は第2誘電体層(14,15,26,35,44)などを適用することができる。抵抗層としては、前記線状パターン抵抗層(13,25,36,43)などを適用することができる。
本発明の電波吸収体によれば、吸収対象とする電磁波についてアンテナ層で効率よく受信でき、その受信の際に誘電体層へ漏れた電磁波について、抵抗層で効率よく熱に変換することができる。また、アンテナ層を一旦通り抜けた電磁波を電波反射層で反射させて、その反射した電磁波をアンテナ層で受信して、抵抗層で熱に変換することもできる。これらにより、本発明は、通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、薄型化および軽量化が可能であり、且つ、電波の入射角度に対する特性変動の少ない電波吸収体を提供することができる。
本発明の電波吸収体の製造方法は、電磁波を反射する導体からなる電波反射層(11)と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層(12)と、前記電波反射層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層(13)と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層(14、15)と、導体からなるパターンを複数有するパターン層(16)とを積層する工程を有するとともに、前記線状パターン抵抗層の線状パターンについて、スクリーン印刷法を用いて形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、真空装置を使用せずに安価に、線状パターン抵抗層を形成することができる。また、線状パターン抵抗層の線状パターンにおける線幅と線間隔を調整することにより、任意の面抵抗の抵抗層(線状パターン抵抗層)を形成することができる。また、抵抗率の安定した材料を使用することで加工精度に応じた面抵抗精度の抵抗層を形成することができる。
また、本発明の電波吸収体の製造方法は、電磁波を反射する導体からなる電波反射層(11)と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層(12)と、前記電波反射層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層(13)と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層(14、15)と、導体からなるパターンを複数有するパターン層(16)とを積層する工程を有するとともに、前記線状パターン抵抗層の線状パターンについて、インクジェット法を用いて形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、真空装置を使用せずに安価に、線状パターン抵抗層を形成することができる。また、インクジェット法によって線状パターン抵抗層を形成するとき、線状パターンとする領域にのみ高抵抗導体となる液状体を塗布するので、エッチングなどが不要となる。したがって、エッチングなどで無駄となる高抵抗導体を無くすことができ、さらに製造コストを低減することができる。また、線状パターン抵抗層の形成についてのマスクパターン等の設計・製造も不要となるので、さらに製造コストを低減することができる。
本発明によれば、電磁波の反射などによる通信障害を防止できるだけの反射減衰能力を有し、従来の電波吸収体よりも薄型化および軽量化が可能であり、且つ、広帯域で電波の入射角に対する特性変動の少ない減衰特性を有する電波吸収体および電波吸収体の製造方法を提供することができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の電波吸収体は、例えば、ETC(Electronic Toll Collection)システムにおける通信障害を防止する電波吸収体に好適である。ETCシステムは、5.8GHz帯の電波を用いて、有料道路の料金所などに設置されたアンテナと自動車に搭載した端末とで通信を行い、自動車を止めずに有料道路の料金支払いなどをするシステムである。そこで、本実施形態の電波吸収体は、ETCシステムの不要電波を吸収し、かかるシステムの誤動作を回避するものとして好適である。例えば、ETCシステムを備えた料金所のゲートにおける天井(天井の下面)又はゲートの側壁面に、本実施形態例の電波吸収体を設置することが好ましい。さらには、本実施形態に記載したような透明体においては、ETCシステムを備えた料金所のETCレーン間に設置することが好ましい。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。本実施形態の電波吸収体は、保護層として機能するBT(ビスマレイミドトリアジン)基板10と、全面導体層11と、第1誘電体層をなすPC(ポリカーボネート)基板12と、線状パターン抵抗層13と、第2誘電体層AをなすPC基板14と、第2誘電体層BをなすBT基板15と、パターン層16とを順次積層した構造となっている。
BT基板10は、例えば厚さが0.3mmである。全面導体層11は、BT基板10上に配置されている。そして、全面導体層11は、電波反射層として機能する。例えば厚さ12μmの銅箔(すなわち導体)で、全面導体層11を構成する。PC基板12は、全面導体層11上に配置されている。そして、PC基板12は、例えば厚さが3.0mmである。線状パターン抵抗層13は、PC基板12上に配置されている。PC基板14は、線状パターン抵抗層13上に配置されている。そして、PC基板14は、例えば厚さが0.3mmである。BT基板15は、PC基板14上に配置されている。そして、BT基板15は、例えば厚さが0.3mmである。パターン層16は、BT基板15上に配置されている。そして、パターン層16は、12μm厚の銅箔で形成された複数のループパターン(101,102など、図2参照)がBT基板の上面に周期的に配置されたものである。
ここで、線状パターン抵抗層13は、高抵抗導体からなる線状パターンを有してなるものである。高抵抗導体とは、全面導体層11よりも抵抗率が高い導体をいう。具体的には体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のもので高抵抗導体を構成する。例えば線状パターン抵抗層13は、高抵抗導体からなる複数の線状パターンが交差して格子状をなしたもので構成する。線状パターン抵抗層13における線状パターンは、例えば線幅を130μmとする。また、各線状パターンの中心軸の間隔である線路中心間隔は、例えば1.0mmとする。
このような線状パターン抵抗層13は、カーボンペーストを用いたスクリーン印刷によって形成することができる。すなわち、BT基板10、全面導体層11、PC基板12、線状パターン抵抗層13、PC基板14、BT基板15、パターン層16を積層する工程と、この積層する工程において(又は積層する工程とは別に)行われる線状パターン抵抗層13をスクリーン印刷によって形成する工程とで、本実施形態の電波吸収体を製造することができる。
また、スクリーン印刷の代わりに、インクジェット法を用いて線状パターン抵抗層13を形成してもよい。例えば、インクジェット・プリンタに用いられるものと同様な構成のインクジェット・ノズルを用いる。そして、インクジェット・ノズルから前記高抵抗導体となる液状体を液滴として所定領域に吐出する。その吐出された液状体は乾燥又は焼成することにより高抵抗導体となり、線状パターン抵抗層13が完成する。
上記の線路中心間隔は、線状パターン抵抗層13が面状抵抗層として機能し得る間隔であればよく、吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下とすることが好ましい。面状抵抗層として機能し得る間隔とは、吸収対象とする電磁波を熱に変換する抵抗として機能し得る間隔をいう。
図2は、図1に示す電波吸収体におけるパターン層16側の部分平面図である。パターン層16は、BT基板15の上面に形成された複数のループパターン101,102,103から構成されている。各ループパターン101,102,103は、12μm厚の銅箔からなり、BT基板15の上面に互いに一定の間隔をもって規則的に配置されている。ループパターン101,102,103は、図2に示すように同一形状の方形ループパターンとなっている。また、ループパターン101,102,103は、中心ループ長C1、線路幅W1の正方形ループとなっている。ここで、中心ループ長とは、ループパターンがなす線路の長手方向の中心軸についての長さをいう(以下、同じ)。隣り合うループパターンの中心点同士は、中心間隔D1だけ離れた位置に配置されている。これら複数のループパターン101,102,103の集合体を一つのユニット(組)として、該ユニット間のスペースを所定の間隔D2で複数配置して大面積化を図っている。なお、間隔D2とは、隣り合うユニットの中心軸の間隔をいう。各部の寸法を表1に示す。
これらのループパターン101,102,103を有するパターン層16の形成方法としては、例えば次の手法を適用できる。すなわち、表面に銅箔が形成されたBT基板について、通常のプリント配線板のパターニングと同様にしてエッチングすることにより、ループパターン101,102,103をパターニング形成する。エッチングにおいては、例えばフォトレジストマスクと塩化第二鉄とを用いる。
ここで、ループパターン101,102,103は、それぞれの線路幅W1が中心ループ長C1に対して5パーセントから25パーセントの値とすることが好ましい。また、ループパターン101の線路幅W1は、基板パターン面における吸収対象とする電磁波の実効波長(λg,下記の式1参照)の60パーセントから140パーセントの長さとすることが好ましい。
[式1]
λg = λ×√(2/(ε+1)) (λ:自由空間波長,ε:基板の比誘電率)
次に、上記のような構成をした本実施形態の電波吸収体が持つ電波吸収特性の測定方法について説明する。先ず、測定対象(吸収対象)とする所定周波数の電波に対する反射量が−40[dB]以下のピラミッドコーン形電波吸収体を、測定室内における壁面、床および測定面側方に設置しておく。そして、測定試料(本電波吸収体)に対する電波の入射角が所定の角度(例えば正面から20度)となるように送信用ホーンアンテナを配置する。また、送信用ホーンアンテナから出射された電磁波が測定試料で反射して向かう方向(光学反射の方向)に受信用ホーンアンテナを設置する。ここで、送信用ホーンアンテナは右旋円偏波ホーンアンテナを用い、受信用ホーンアンテナは左旋円偏波ホーンアンテナを用いた。
このような構成により、送信用ホーンアンテナから送信された電波は金属板では全反射して回旋方向が変化し、受信用ホーンアンテナで受信されることになる。次いで、これら送受信用ホーンアンテナをベクトルネットワークアナライザ(Agilent 8722ES)に接続し、フリースペースタイムドメイン法を用いて測定試料(電波吸収体)から反射され到来する電波のみを分離してSパラメータ(S21)を測定する。
先ず、それぞれのアンテナからおよそ100cmの距離となる位置に金属反射板(Cu板)を設置する。そして、送信用ホーンアンテナから所定周波数および所定強度の電波を出射させ、そのときの受信アンテナの受信レベルを測定する。次に、金属反射板(Cu板)の代わりに同一サイズの測定試料(電波吸収体)を前記金属反射板(Cu板)と同じ位置に設置する。そして、前記金属反射板(Cu板)に出射した電波と同一の電波を送信用ホーンアンテナから出射させ、そのときの受信アンテナの受信レベルを測定する。
このようにして測定された金属反射板(Cu板)のときの受信レベルと、電波吸収体のときの受信レベルとの差(電力比)を反射減衰量として評価する。その測定試料に対する電波の入射角が20度、30度、40度の際の測定結果を図3に示す。図3より、最大減衰量としておよそ24[dB]の減衰量が得られていることが分かる。
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。本実施形態の電波吸収体は、全面導体層21と、第1誘電体層AをなすBT基板22と、第1誘電体層BをなすPC基板23と、第1誘電体層CをなすPC基板24と、線状パターン抵抗層25と、第2誘電体層をなすBT基板26と、パターン層27とを順次積層した構造となっている。
全面導体層21は、例えば12μm厚の銅箔で形成されている。BT基板22は、全面導体層21上に配置されており、例えば厚さが0.8mmである。PC基板23は、BT基板22上に配置されており、例えば厚さが1.5mmである。PC基板24は、PC基板23上に配置されており、例えば厚さが0.3mmである。線状パターン抵抗層25は、PC基板24上に配置されている。BT基板26は、線状パターン抵抗層25上に配置されており、例えば厚さが0.3mmである。パターン層27は、BT基板26上に形成されている。そして、パターン層27は、12μm厚の銅箔で形成された形状の異なる複数のループパターンがBT基板26の上面に周期的に配置されたものである。
ここで、線状パターン抵抗層25は、高抵抗導体からなる線状パターンを有してなるものである。高抵抗導体とは、全面導体層21よりも抵抗率が高い導体をいう。具体的には体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のもので高抵抗導体を構成する。例えば線状パターン抵抗層25は、高抵抗導体からなる複数の線状パターンが交差して格子状をなしたものである。線状パターン抵抗層25における線状パターンは、例えば線幅を130μmとする。また、各線状パターンの中心軸の間隔である線路中心間隔は例えば1.4mmとする。このような線状パターン抵抗層25は、カーボンペーストを用いたスクリーン印刷によって形成することができる。上記の線路中心間隔は、線状パターン抵抗層25が面状抵抗層として機能し得る間隔であればよく、吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下とすることが好ましい。
図5は、図4に示す電波吸収体におけるパターン層27側の部分平面図である。パターン層27は、BT基板26の上面に形成された複数のループパターン201,202,203から構成されている。各ループパターン201,202,203は、12μm厚の銅箔からなり、BT基板26の上面に互いに一定の間隔をもって規則的に配置されている。ループパターン201,202,203は、図5に示すようにそれぞれ形状が異なった正方形ループとなっている。ループパターン201は、中心ループ長C1、線路幅W1となっている。ループパターン202は、中心ループ長C2、線路幅W2となっている。ループパターン203は、中心ループ長C3、線路幅W3となっている。隣り合うループパターン201,202,203の中心点同士は、中心間隔D1だけ離れた位置に配置されている。
更に、ループパターン203には、図5に示すように、ループ形状の線路に突起形状の線状パターン(オープンスタブ)203a,203bを付加した構成となっている。これらのオープンスタブ203a,203bは正方形ループの一部の頂点に付加されている。そして、オープンスタブ203aは、線幅2.0mm、長さ2.1mmの長方形、オープンスタブ203bは線幅2.0mm、長さ4.1mmの長方形となっている。オープンスタブ203a,203bの長方形の長手方向は正方形ループの一辺に対して45度の角度となっている。ループパターン201,202,203における各部の寸法例を表1に示す。
本実施形態の電波吸収体の作製方法およびその特性の測定方法については、第1実施形態と同一の手法を用いた。また、このようにして反射減衰量を測定した結果を図6に示す。図6より、本実施形態の電波吸収体は、最大減衰量としておよそ40[dB]の減衰量が得られていることが分かる。また、20[dB]以上の減衰特性を有する周波数帯域幅を有効吸収帯域と定義した場合、320[MHz]の有効吸収帯域を有し広帯域な減衰特性を示すことがわかる。また、本第2実施形態と第1実施形態の比較から、パターン層16,27におけるパターンの形状の違いによって誘電体層(12,14,15,22,23,24,26)の厚さの最適値も変化することがわかる。また、各パターンが隣接する他のパターンに対して大きさと形状とのうちの少なくとも一方が異なる形状を用いることによって、広帯域な減衰特性が得られることがわかる。
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。本実施形態の電波吸収体は、保護層をなすBT基板30と、全面導体層31と、第1誘電体層AをなすPC基板32と、第1誘電体層BをなすBT基板33と、パターン層34と、PC基板35と、線状パターン抵抗層36とを順次積層した構造となっている。
BT基板30は、例えば厚さが0.3mmである。全面導体層31は、BT基板30上に配置されており、例えば12μm厚の銅箔で形成されている。PC基板32は、全面導体層31上に配置されており、例えば厚さが3.1mmである。BT基板33は、PC基板32上に配置されており、例えば厚さが0.6mmである。パターン層34は、BT基板33上に配置されている。そして、パターン層34は、12μm厚の銅箔で形成された形状の異なる複数のループパターンがBT基板33の上面に周期的に配置されたものである。PC基板35は、例えば厚さが0.3mmである。線状パターン抵抗層36は、PC基板35上に配置されている。
ここで、線状パターン抵抗層36は、高抵抗導体からなる線状パターンを有してなるものである。高抵抗導体とは、全面導体層31よりも抵抗率が高い導体をいう。具体的には体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のもので高抵抗導体を構成する。例えば線状パターン抵抗層36は、高抵抗導体からなる複数の線状パターンが交差して格子状をなしたものである。線状パターン抵抗層36における線状パターンは、例えば線幅を180μmとする。また、各線状パターンの中心軸の間隔である線路中心間隔は例えば1.0mmとする。このような線状パターン抵抗層36は、カーボンペーストを用いたスクリーン印刷によって形成することができる。上記の線路中心間隔は、線状パターン抵抗層36が面状抵抗層として機能し得る間隔であればよく、吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下とすることが好ましい。
図8は、図7に示す電波吸収体におけるパターン層34側の部分平面図である。パターン層34は、BT基板33の上面に形成された複数のループパターン301,302,303から構成されている。各ループパターン301,302,303は、12μm厚の銅箔からなり、BT基板33の上面に互いに一定の間隔をもって規則的に配置されている。ループパターン301,302,303は、図8に示すようにそれぞれ形状が異なった正方形ループとなっている。ループパターン301は、中心ループ長C1、線路幅W1となっている。ループパターン302は、中心ループ長C2、線路幅W2となっている。ループパターン303は、中心ループ長C3、線路幅W3となっている。隣り合うループパターン301,302,303の中心点同士は、中心間隔D1だけ離れた位置に配置されている。
更に、ループパターン303には、図8に示すように、ループ形状の線路に突起形状の線状パターン(オープンスタブ)303aを付加した構成となっている。このオープンスタブ303aは正方形ループの一部の頂点に付加されている。そして、オープンスタブ303aは線幅2.0mm、長さ3.5mmの長方形となっており、その長方形の長手方向が正方形ループの一辺に対して45度の角度となっている。ループパターン301,302,303における各部の寸法を表1に示す。
本実施形態の電波吸収体の作製方法およびその特性の測定方法については、第1実施形態と同一の手法を用いた。また、このようにして反射減衰量を測定した結果を図9に示す。図9より、本実施形態の電波吸収体は、最大減衰量としておよそ35[dB]の減衰量が得られていることが分かる。また、20[dB]以上の減衰特性を有する周波数帯域幅を有効吸収帯域と定義した場合、およそ200[MHz]の有効吸収帯域を示すことがわかる。また、本第3実施形態と第2実施形態の比較から、高抵抗導体からなる線状パターン抵抗層の位置の違いによって誘電体層の厚さの最適値および特性が変化することがわかる。また、電波反射層(全面導体層21)とパターン層27の「間」に線状パターン抵抗層25を配置した第2実施形態の方が、その「間」の外に線状パターン抵抗層36を配置した第3実施形態よりも、入射角に対する特性変動は少ないことがわかる。
(第4実施形態)
図10は本発明の第4実施形態である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。本実施形態では、遠目に透明な電波吸収体を構成している。本実施形態の電波吸収体は、保護層をなすPET(ポリエチレンテレフタレート)基板40と、格子状導体層41と、第1誘電体層AをなすPC基板42と、線状パターン抵抗層43と、第2誘電体層をなすPC基板44と、パターン層45と、保護層をなすPET基板46と、保護層をなすPC基板47とを順次積層した構造となっている。
PET基板40は、例えば厚さが0.175mmである。格子状導体層41は、格子状に配置された細線形状の導体で構成されているとともに、PET基板40上に配置されており、12μm厚の銅箔で形成されている。PC基板42は、格子状導体層41上に配置されており、例えば厚さが3.0mmである。線状パターン抵抗層43は、PC基板42上に配置されている。PC基板44は、線状パターン抵抗層43上に配置されており、例えば厚さが0.3mmである。パターン層45は、PC基板44上に配置されている。そして、パターン層45は、12μm厚の格子状細線銅箔で形成された形状の異なる複数のループパターンが周期的に配置されたものである。PET基板46は、パターン層45上に配置されており、例えば厚さが0.175mmである。PC基板47は、PET基板46上に配置されており、例えば厚さが0.3mmである。
ここで、線状パターン抵抗層43は、高抵抗導体からなる線状パターンを有してなるものである。高抵抗導体とは、格子状導体層41よりも抵抗率が高い導体をいう。具体的には体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のもので高抵抗導体を構成する。例えば線状パターン抵抗層43は、高抵抗導体からなる複数の線状パターンが交差して格子状をなしたもので構成する。線状パターン抵抗層43における線状パターンは、例えば線幅を130μmとする。また、各線状パターンの中心軸の間隔である線路中心間隔は例えば1.0mmとする。このような線状パターン抵抗層43は、カーボンペーストを用いたスクリーン印刷によって形成することができる。上記の線路中心間隔は、線状パターン抵抗層43が面状抵抗層として機能し得る間隔であればよく、吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下とすることが好ましい。
また、格子状導体層41は、高抵抗導体からなる複数の細線状パターンが交差して、格子状をなしたものである。格子状導体層41における線状パターンは、例えば線路幅を10μmとする。また、各線状パターンの中心軸の間隔である線路中心間隔は例えば0.3mmとする。格子状導体層41は、電波を全反射する機能を有するものである。上記の線路中心間隔は、電波を全反射し得るだけの間隔であればよく、吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下とすることが好ましい。あるいは、格子状導体層41の代わりに、透明なITO(酸化インジウム錫)等の全面導体層を用いることとしてもよい。
図11は、図10に示す電波吸収体のパターン層45側の部分平面図である。パターン層45は、PET基板46の下面に形成された複数のループパターン401,402,403から構成されている。各ループパターン401,402,403は、12μm厚の格子状細線銅箔からなり、PET基板46の下面に互いに一定の間隔をもって規則的に配置されている。ループパターン401,402,403は、図11に示すようにそれぞれ形状が異なった正方形ループとなっている。ループパターン401は、中心ループ長C1、線路幅W1となっている。ループパターン402は、中心ループ長C2、線路幅W2となっている。ループパターン403は、中心ループ長C3、線路幅W3となっている。隣り合うループパターン401,402,403の中心点同士は、中心間隔D1だけ離れた位置に配置されている。
更に、ループパターン403には、図11に示すように、ループ形状の線路に突起形状の線状パターン(オープンスタブ)403aを付加した構成となっている。このオープンスタブ403aは正方形ループの一部の頂点に付加されている。そして、オープンスタブ403aは線幅2.0mm、長さ3.0mmの長方形となっており、その長方形の長手方向が正方形ループの一辺に対して45度の角度となっている。ループパターン401,402,403における各部の寸法を表1に示す。
本実施形態の電波吸収体の作製方法およびその特性の測定方法については、第1実施形態と同一の手法を用いた。また、このようにして反射減衰量を測定した結果を図12に示す。図12より、本実施形態の電波吸収体は、最大減衰量としておよそ40[dB]の減衰量が得られていることが分かる。また、20[dB]以上の減衰特性を有する周波数帯域幅を有効吸収帯域と定義した場合、およそ300[MHz]の有効吸収帯域を有し広帯域な減衰特性を有している。さらに、本実施形態の電波吸収体は、遠目に透明な電波吸収体となっている。したがって、本実施形態によれば、視界を遮ることなどを回避でき、且つ高性能な電波吸収体を提供することができる。
(第1比較例)
次に、本実施形態の電波吸収体における線状パターン抵抗層などの効果を示すために、比較例を挙げて説明する。
図13は、本実施形態に対する第1比較例である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。この第1比較例の電波吸収体は、第1実施形態の構造から、線状パターン抵抗層13のみを除いた構造となっている。具体的には、保護層として機能するBT基板60と、全面導体層61と、第1誘電体層をなすPC基板62と、第2誘電体層AをなすPC基板63と、第2誘電体層BをなすBT基板64と、パターン層65とを順次積層した構造となっている。
BT基板60は、厚さが0.3mmである。全面導体層61は、BT基板60上に配置されており、電波反射層として機能する。厚さ12μmの銅箔で、全面導体層11を構成している。PC基板62は、全面導体層61上に配置されており、厚さが3.0mmである。PC基板63は、PC基板62上に配置されており、厚さが0.3mmである。BT基板64は、PC基板63上に配置されており、厚さが0.3mmである。パターン層65は、BT基板64上に配置されている。そして、パターン層65は、第1実施形態のパターン層16と同様に、12μm厚の銅箔で形成された複数のループパターンがBT基板の上面に周期的に配置されたものである。
また、第1比較例の電波吸収体の作製方法およびその特性の測定方法については、第1実施形態と同一の手法を用いた。このようにして反射減衰量を測定した結果を図14に示す。図14に示されているように、第1比較例の電波吸収体は、最大減衰量としておよそ3.4[dB]程度の減衰量しか得られないことがわかる。
(第2比較例)
次に、本実施形態の電波吸収体における線状パターン抵抗層などの効果を示すために、他の比較例を挙げて説明する。
図15は、本実施形態に対する第2比較例である電波吸収体の概略構成を示す部分断面図である。この第2比較例の電波吸収体は、第2実施形態の構造から、線状パターン抵抗層25のみを除いた構造となっている。具体的には、全面導体層71と、第1誘電体層AをなすBT基板72と、第1誘電体層BをなすPC基板73と、第1誘電体層CをなすPC基板74と、第2誘電体層をなすBT基板75と、パターン層76とを順次積層した構造となっている。
全面導体層71は、12μm厚の銅箔で形成されている。BT基板72は、全面導体層71上に配置されており、厚さが0.8mmである。PC基板73は、BT基板72上に配置されており、厚さが1.5mmである。PC基板74は、PC基板73上に配置されており、厚さが0.3mmである。BT基板75は、PC基板74上に配置されており、厚さが0.3mmである。パターン層76は、BT基板75上に配置されている。そして、パターン層76は、第2実施形態のパターン層27と同様に、12μm厚の銅箔で形成された形状の異なる複数のループパターンが周期的に配置されたものである。
また、第2比較例の電波吸収体の作製方法およびその特性の測定方法については、第1実施形態と同一の手法を用いた。このようにして反射減衰量を測定した結果を図16に示す。図16に示されているように、第2比較例の電波吸収体は、減衰量がおよそ16[dB]であり、実施形態2に比べて電波吸収性能が低いことがわかる。
以上より、本発明の第1から第4実施形態の電波吸収体は、線状パターン抵抗層13,25,36,43(高抵抗導体層)を有しているので、これらを有していない第1および第2比較例の電波吸収体に比べて、良好な減衰特性を示すことがわかる。そして、高抵抗導体層を中間層として設けることにより、さらに良好な減衰特性を得ることがわかる。したがって、本発明の第1から第4実施形態の電波吸収体は、減衰特性の中心周波数を5.8GHzに合わせた構造とすることにより、ETCシステムなどにおいて用いられる電波吸収体として十分な性能を持つことができる。
Figure 0004375227
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、第1から第4実施形態の電波吸収体におけるパターン層のループパターンは、方形ループパターンであるが、円形ループパターン又は楕円ループパターンなど他の形状のループパターンとしてもよい。また、これらのループパターンは、閉ループであってもよいし、一部が途切れた開ループであってもよい。
また、本発明の第4実施形態の電波吸収体においては、その構成全体について遠目に透明な構造としている。したがって、本発明の電波吸収体は、全体的に透明な電波吸収体を構成することができ、光学的に遮蔽物となることを回避できる。そこで、本発明は、電波吸収特性が優れていながら、美観などについても優れた電波吸収体となることができ、ETCシステムなどにおいて好適な電波吸収体および電波吸収体の製造方法を提供することができる。
上記の実施形態では本発明の電波吸収体および電波吸収体の製造方法をETCシステムに適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ETCシステム以外にも適用することができる。すなわち、ループパターンの形状、大きさ、配置を調整し、あるいは、各層の厚さ、表面抵抗値、構成材料などを調整することにより、吸収対象とする電波の周波数および帯域を変更することができる。
本発明の第1実施形態である電波吸収体の部分断面図である。 同上の電波吸収体におけるパターン層側の部分平面図である。 同上の電波吸収体における電波吸収特性を示す図である。 本発明の第2実施形態である電波吸収体の部分断面図である。 同上の電波吸収体におけるパターン層側の部分平面図である。 同上の電波吸収体における電波吸収特性を示す図である。 本発明の第3実施形態である電波吸収体の部分断面図である。 同上の電波吸収体におけるパターン層側の部分平面図である。 同上の電波吸収体における電波吸収特性を示す図である。 本発明の第4実施形態である電波吸収体の部分断面図である。 同上の電波吸収体におけるパターン層側の部分平面図である。 同上の電波吸収体における電波吸収特性を示す図である。 本発明の実施形態に対する第1比較例の電波吸収体の部分断面図である。 同上の第1比較例の電波吸収特性を示す図である。 本発明の実施形態に対する第2比較例の電波吸収体の部分断面図である。 同上の第2比較例の電波吸収特性を示す図である。
符号の説明
10,30,60・・・BT基板(保護層)
40,46・・・PET基板(保護層)
47・・・PC基板(保護層)
11,21,31,61,71・・・全面導体層
41・・・格子状導体層
12,23,24,32,42,62,73,74・・・PC基板(第1誘電体層)
22,33・・・BT基板(第1誘電体層)
13,25,36,43・・・線状パターン抵抗層
14,35,44,63・・・PC基板(第2誘電体層)
15,26,64,75・・・BT基板(第2誘電体層)
16,27,34,45,65,76・・・パターン層
101,102,103,201,202,203,301,302,303,401,402,403・・・ループパターン
203a,203b,303a,403a・・・オープンスタブ

Claims (14)

  1. 少なくとも、
    導体からなる全面導体層と、
    1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層と、
    前記全面導体層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層と、
    1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層と、
    導体からなるパターンを複数有するパターン層とを有することを特徴とする電波吸収体。
  2. 前記全面導体層と、前記第1誘電体層と、前記線状パターン抵抗層と、前記第2誘電体層と、前記パターン層とを当該順序で積層したことを特徴とする請求項1記載の電波吸収体。
  3. 前記全面導体層と、前記第1誘電体層と、前記パターン層と、前記第2誘電体層と、前記線状パターン抵抗層とを当該順次で積層したことを特徴とする請求項1記載の電波吸収体。
  4. 少なくとも、
    導体からなるパターンが格子状に形成された格子状導体層と、
    1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層と、
    前記格子状導体層を形成する導体よりも抵抗率の高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層と、
    1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層と、
    導体からなるパターンを複数有するパターン層とを、当該順序で積層した構造を有することを特徴とする電波吸収体。
  5. 前記線状パターン抵抗層は、高抵抗導体からなる線状パターンが交差したものと、前記線状パターンが六角形のハニカム形状をなしたものと、のいずれかからなることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の電波吸収体。
  6. 前記線状パターン抵抗層をなす高抵抗導体は、体積抵抗率が1.0E−4[Ωcm]以上、1.0E−1[Ωcm]以下のものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の電波吸収体。
  7. 前記全面導体層、パターン層、線状パターン抵抗層及び格子状導体層のうちの少なくとも1つは、複数の線状パターンを有するとともに、隣り合う前記線状パターンの中心間隔である線路中心間隔が吸収対象とする電磁波の波長の1/16以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電波吸収体。
  8. 前記線状パターンの幅である線路幅は、100μm以下であることを特徴とする請求項7記載の電波吸収体。
  9. 前記パターン層における各パターンは、隣接する他のパターンに対して、大きさと形状のうちの少なくとも一方が異なることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の電波吸収体。
  10. 前記パターン層における各パターンは、円形、矩形、多角形又はこれら形状を外形とするループ形状のいずれかの形状と、該いずれかの形状に突起形状を付加した形状と、のうちの少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項記載の電波吸収体。
  11. 積層構造における表面および裏面の少なくとも一方に積層された保護層を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項記載の電波吸収体。
  12. 構成要素の全ての前記層を透明又は半透明にしたことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項記載の電波吸収体。
  13. 電磁波を反射する導体からなる電波反射層と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層と、前記電波反射層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層と、導体からなるパターンを複数有するパターン層とを積層する工程を有するとともに、
    前記線状パターン抵抗層の線状パターンについて、スクリーン印刷法を用いて形成する工程を有することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
  14. 電磁波を反射する導体からなる電波反射層と、1層又は多層の誘電体からなる第1誘電体層と、前記電波反射層よりも抵抗率が高い導体である高抵抗導体からなる線状パターンを有してなる線状パターン抵抗層と、1層又は多層の誘電体からなる第2誘電体層と、導体からなるパターンを複数有するパターン層とを積層する工程を有するとともに、
    前記線状パターン抵抗層の線状パターンについて、インクジェット法を用いて形成する工程を有することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
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