本発明は、光透過性支持体と、易接着層と、抵抗部として厚みが0.6μm以下の金属細線とをこの順序で有する機能材Aと、光透過性支持体の線膨張係数との差が5%以内である線膨張係数を有する誘電スペーサーと、反射材とを有する機能材Bとを備え、機能材Aの光透過性支持体と機能材Bの誘電スペーサーとを接着剤層を介して貼合してなる光透過型電波吸収体である。
本発明の光透過型電波吸収体を、図面に基づき説明する。図1は、本発明の光透過型電波吸収体1の概略構成の一例を示す断面図である。図1において、矢印は電波の入射方向を示す。図1に示すように、光透過型電波吸収体1は、光透過性支持体A1と、易接着層A2と、抵抗部として厚みが0.6μm以下の金属細線A3とをこの順序で有する機能材Aと、反射材B2と、誘電スペーサーB1とを有する機能材Bとを有し、光透過性支持体A1と誘電スペーサーB1とを、接着剤層12Bを介して貼合してなる。光透過型電波吸収体1は、積層構造における表面及び裏面に、さらに接着剤層12A、12Cを介して透明性保護部材11、13を貼合してなる。
本発明の光透過型電波吸収体1は、抵抗部として厚みが0.6μm以下の金属細線を有し、かつ機能材Bの誘電スペーサーB1の線膨張係数と、機能材Aの光透過性支持体A1の線膨張係数との差が5%以内であると、電波吸収特性の面内分布が存在せず、電波吸収特性が変動することなく、均一な電波吸収特性を有する。
本発明の光透過型電波吸収体の全光線透過率は、好ましくは30%以上であり、より好ましくは60%以上である。光透過型電波吸収体の全光透過率が30%以上であると、景観や採光を損なうことがなく、視界不良を生じることがない。
次に、本発明の光透過型電波吸収体を構成する機能材A、機能材B、接着剤層、透明性保護部材について説明する。
[機能材A]
まず、機能材Aについて、図面に基づき説明する。図2は、本発明の光透過型電波吸収体に用いる機能材Aの概略構成の一例を示す断面図である。図2に示すように、機能材Aは、光透過性支持体A1と、易接着層A2と、抵抗部として厚みが0.6μm以下の金属細線A3とを、この順序で有する。
<光透過性支持体>
光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、セロハン、セルロイド等からなる樹脂フィルムやガラス等が挙げられる。さらに強度向上のために上記樹脂にガラス繊維等が混入された繊維強化プラスチック(FRP)等からなるフィルムを用いることも可能である。中でも、耐候性、耐衝撃性に優れたポリカーボネート樹脂からなる樹脂フィルムを用いることが好ましい。さらに本発明においては光透過性支持体の表面に帯電防止層等を必要に応じて設けることもできる。
光透過性支持体の全光線透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。光透過性支持体の全光線透過率が50%以上であると、積層構造となる光透過型電波吸収体に用いた場合であっても、採光を損なうことなく、視界不良を生じることがない。
光透過性支持体の厚みは、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは50〜200μm以下である。光透過性支持体の厚みが500μm以下であると、ロールtoロール法により、簡易かつ低コストで光透過性支持体を製造することができる。
<易接着層>
易接着層としては、例えば特開2000−229396号公報に記載されている自己乳化型イソシアネート化合物を含有する水系易接着性ポリエステルフィルム等が挙げられる。易接着層は、環境上の観点から水系塗料を塗布、乾燥して形成したものであることが好ましい。易接着層としては、特に以下の材料を用いるものであることが好ましい。
易接着層は、樹脂成分として高分子ラテックスを含有するものであることが好ましい。高分子ラテックスとしては、単独重合体や共重合体等の各種の公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン等の単独重合体が挙げられる。共重合体としては、エチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトオキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等が挙げられる。さらに高分子ラテックス以外に、樹脂成分として、ポリエステル、各種ウレタン等を含有するものが好ましい。中でも、耐候性、各種材料との接着性の観点から、ウレタンラテックス、特に耐候性の高い無黄変型ウレタンポリカーボネートラテックスが好ましい。この様な高分子ラテックスは、これらが水系溶媒に分散されたエマルジョンの形態で利用することが好ましく、該エマルジョン中の高分子ラテックスの平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.02〜0.1μmである。また、これら高分子ラテックスは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
易接着層は、樹脂成分として高分子ラテックス以外に、公知の水溶性高分子化合物を用いることも可能であり、高分子ラテックスと水溶性高分子化合物を併用することが好ましい。かかる水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられる。その他、易接着層に用いる樹脂成分として、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等のタンパク質、カラギーナン、ヒアルロン酸等ムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章に記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体等が挙げられる。中でも、タンパク質、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のアミノ基を有する水溶性高分子化合物を用いることが好ましい。これらの水溶性高分子化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
易接着層に含まれる樹脂成分の量は、好ましくは100〜2500mg/m2、より好ましくは100〜2000mg/m2、さらに好ましくは150〜1000mg/m2である。易接着層に含まれる樹脂成分の量が、100〜2500mg/m2であると、抵抗部と易接着層と光透過性支持体との密着性がよくなるため好ましい。
易接着層中の高分子ラテックスの量は、易接着層中の全樹脂成分量に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜40質量%、さらに好ましくは2〜30質量%である。易接着層中の高分子ラテックスの量が、易接着層中の全樹脂成分量に対して、1〜50質量%であると、優れた湿熱耐性が得られるため好ましい。
易接着層は、上記樹脂成分が架橋剤により架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ架橋剤、分子中に2個以上のビニルスルホニル基を有するビニルスルホン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン架橋剤、トリアジン架橋剤、アルデヒド、カルボジイミド、イソシアネート等の架橋剤が挙げられる。これら架橋剤の添加量は、易接着層中の全樹脂成分量に対して、好ましくは1〜7質量%、より好ましくは2〜5質量%である。架橋剤の添加量が、易接着層中の全樹脂成分量に対して、1〜7質量%であると、十分な膜強度が得られ、かつ柔軟性もよくなるため好ましい。
易接着層には、さらにシリカ等のマット剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有してもよい。
<抵抗部>
抵抗部として厚みが0.6μm以下の金属細線を有する。金属細線の厚みは、好ましくは0.375μm以下である。金属細線の厚みが0.6μmを超えると、電波吸収体の電波吸収特性の面内分布が存在し、電波吸収特性に変動を生じるため、好ましくない。
金属細線の線幅は、好ましくは100μm以下、より好ましくは10〜80μmである。金属細線の線幅は、狭ければ狭いほど光透過性が高くなる一方で、狭すぎると金属細線の抵抗値が高くなり過ぎるため、金属細線の線幅は100μm以下であることが好ましい。
抵抗部としての金属細線は、格子状又は網目状であることが好ましい。抵抗部として格子状又は網目状の金属細線は、金属細線同士の線中心間隔が、吸収する電磁波の実効波長λgの1/16以下であることが好ましい。金属細線同士の線中心間隔が、この範囲であると、高い電波吸収特性が得られるため好ましい。
抵抗部を構成する金属細線は、できるだけ均一なものであることが好ましく、個々の金属細線の線幅及び厚みの差が10%以内である金属細線であることが好ましい。金属細線を構成する金属としては、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、クロム、錫、アルミ及びそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を用いることができる。中でも、銀を用いることが好ましい。また、複数の金属を積層して、金属細線としてもよい。
抵抗部は、格子状又は網目状の金属細線からなるループ形状をしたループパターン、及び/又は金属細線からなる円形若しくは多角形のパッチパターンを有することが好ましい。ループパターンは、円形、方形若しくは多角形であってもよい。
金属細線からなる各パターンは、隣接する他のパターンに対して、大きさ及び形状の少なくとも一方が異なることが好ましい。抵抗部として金属細線からなるパターンは、電波を受信するアンテナとして機能するため、各パターンの大きさ及び形状の少なくとも一方が異なっているほうが、広帯域の電波を受信できる。
金属細線からなるパターンは、パターンの一部にパターンから突出する突起形状を有することが好ましい。例えばループパターンの一部から突出する突起形状(例えば線形状)を有することにより、この突起形状の大きさ、形状又は配置を調整して、反射減衰特性の高い周波数(波長)及び帯域を優先的に受信して、吸収対象である電磁波を効果的に吸収することができる。
抵抗部が、金属細線からなるパターンを有するパターン型電磁波吸収体であると、電波吸収の角度依存性が少なく、広帯域な反射減衰特性を有し、パターンを有する抵抗部で受信された電波の漏れが生じた場合であっても、誘電スペーサー等の誘電体によって電波を熱に変換して消費されるので、薄型軽量化が可能であり、大面積の電波吸収体とすることができる。
図3に、抵抗部として格子状又は網目状の金属細線からなるパターンの一例を示す。図3に示すように、抵抗部A3は、複数の正方形のループパターン301、302、303を有している。図3の拡大図に示すように、各ループパターン301、302、303は、格子状の金属細線からなる。これらのループパターン301、302、303は、互いに一定の間隔をもって規則的に配置されている。また、各ループパターン301、302、303は、隣接する他のループパターンに対して、中心長の長さが異なり、それにより大きさが異なっている。例えば各ループパターンは、それぞれ中心ループ長が、C1=28mm、 C2=24mm、 C3=20mmのいずれかであり、ループ幅W1=W2=W3=4mmである。また、隣り合うループパターン301、302、303の中心点同士の間隔D1=14mmである。また、ループパターン303は、ループパターンの一部から突出する突起形状(線状パターン;オープンスタブ)303aを有する。このオープンスタブ303aは、正方形ループの一つの頂点から突出しており、幅2.0mm、長さ3.5 mmの長方形であり、その長方形の長手方向が正方形ループの一辺に対して45度の角度である。
また、図3に示すように抵抗部A3におけるループパターンは、複数の形状が異なるループパターンの集合体を一つのユニットとして、該ユニット間のスペースを所定の間隔D2=48.6mmで配置したパターン構造としてもよい。
抵抗部の表面抵抗率は、好ましくは1〜100Ω/□、より好ましくは10〜40Ω/□である。抵抗部の表面抵抗率が1〜100Ω/□であると、抵抗部としての金属細線自体の抵抗損失によって、抵抗部で受信した電波を熱に変換して消費することができ、抵抗部で変換しきれない電波は、誘電体として機能する光透過性支持体及び/又は誘電スペーサーに伝達して熱に変換して消費することができる。
金属細線を形成する材料としては、物理現像核とハロゲン化乳剤とを含む銀塩感光材料、銀ペースト等の導電性インク、銅等の金属からなる導電性材料、銅箔等の金属箔等が挙げられる。高精度で均一な金属細線を形成するために、物理現像核とハロゲン化銀乳剤とを含む銀塩感光材料を用いることが好ましい。
金属細線を形成する方法としては、銀塩感光材料を用いた銀錯塩拡散転写現像法、この方法により作製した金属細線にさらに無電解めっきや電解めっきを施す方法、導電性インクをスクリーン印刷法や等インクジェット法で印刷する方法、易接着層に無電解めっき触媒を付着した後、銅等の金属からなる導電性材料を無電解めっきする方法、あるいは易接着層上に蒸着やスパッタ等で導電性材料からなる導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト膜の除去より金属細線を形成する方法、銅箔等の金属箔を貼り、さらにその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト膜の除去により金属細線を形成する方法等、公知の方法が挙げられる。何れの方法を用いる場合でも、大きなロールを連続的に処理し、抵抗部として金属細線を形成した後、機能材Aに再び巻き取ってロールとする、いわゆるロールtoロール法で製造することが生産効率を上げられる点で好ましい。
高精度で均一な金属細線を形成するためには、物理現像核と、ハロゲン化銀乳剤とを含む銀塩感光材料を用いることが好ましく、この材料を用いた方法の中でも、銀錯塩拡散転写現像法を用いることが好ましい。銀塩感光材料を用いた銀錯塩拡散転写現像法は、腐敗等により劣化の恐れのあるゼラチン等のバインダーを多く含有するハロゲン化乳剤層が、現像処理後に残存しないため、安定性の点からも好ましい。
銀錯塩拡散転写現像法は、銀塩感光材料を、光透過性支持体上の易接着層上に塗布して光透過性導電材料前駆体を形成し、この光透過性導電材料前駆体をフォトマスク等を用いて、格子状又は網目状の細線からなるパターンを露光した後、銀塩拡散転写現像により金属細線を析出させる方法である。
まず、光透過性導電材料前駆体について説明する。図4は、銀塩感光材料を用いた光透過性導電性材料前駆体A’の概略構成の一例を示す断面図である。図4に示すように、光透過性導電性材料前駆体A’は、光透過性支持体A1上の易接着剤層A2上に、物理現像核を含有する物理現像核層A11と、ハロゲン化銀乳剤を含有するハロゲン化乳剤層A12とをこの順序で形成する。図示を省略したが、物理現像核層を形成することなく、易接着層に物理現像核を含有させることもできる。また、後述するように、物理核現像層とハロゲン化乳剤層との間、ハロゲン化乳剤層の側の表面には、非感光性層を設けることもできる。
銀塩感光材料に含まれる物理現像核としては、重金属又はその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。重金属としては、例えば金、銀、パラジウム、亜鉛等が挙げられる。重金属の硫化物としては、例えば金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられる。これらの物理現像核を含む物理現像核層は、コーティング法又は浸漬処理法によって、光透過性支持体A1上の易接着層A2上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法を用いることが好ましい。物理現像核層A11又は易接着層A2における物理現像核の含有量は、固形分で1m2あたり0.1〜10mg程度が適当である。
物理現像核層A11は、水溶性高分子化合物を含有することもできる。水溶性高分子化合物の量は、物理現像核に対して、0〜500質量%程度が好ましい。水溶性高分子化合物としては、例えばアラビアゴム、セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等が挙げられる。
物理現像核層A11に、水溶性高分子化合物を含有する場合は、さらに架橋剤を含有することもできる。架橋剤としては、例えばクロム明ばん等の無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩等の活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。架橋剤の中でも、好ましくはグリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましくはグルタルアルデヒドである。架橋剤の量は、物理現像核層A11に含まれる水溶性高分子化合物に対して、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
銀塩感光材料に含まれるハロゲン化銀乳剤は、銀塩写真フィルム、印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術をそのまま用いることができる。
ハロゲン化銀乳剤は、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されている様な公知の手法を用いるハロゲン化銀乳剤粒子を形成することができる。中でも、同時混合法の1種である、粒子を形成する液相中のpAg(銀イオン濃度の逆数の対数)を一定に保つ、いわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。銀塩感光材料に含まれるハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は、好ましくは0.25μm以下、より好ましくは0.05〜0.2μmである。ハロゲン化銀乳剤粒子を形成するハロゲン化合物を含む組成物は、銀塩化物の含有量が、組成物全体量に対して、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
ハロゲン化銀乳剤には、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩若しくはその錯塩、又はロジウム塩、イリジウム塩等のVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させてもよい。また、種々の化学増感剤を含有させることによって増感することができ、ハロゲン化銀乳剤を増感する方法としては、例えばイオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法等の一般的な方法を、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ハロゲン化乳剤は、必要に応じて色素増感することもできる。
ハロゲン化銀乳剤層A12には、バインダーとしてゼラチンを含み、ハロゲン化銀乳剤量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀乳剤(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。また、ハロゲン化銀乳剤層A12が含有するハロゲン化銀量は銀換算で2〜10g/m2であることが好ましい。
ハロゲン化銀乳剤層A12には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載され、あるいはここで引用された文献に記載されている。
光透過性導電性材料前駆体には、ハロゲン化銀乳剤層A12と物理現像核層A11との間や、ハロゲン化銀乳剤層A12の上に、さらに非感光性層を設けてもよい。非感光性層は、水溶性高分子を主たるバインダーとして含む層である。ここでいう水溶性高分子とは、現像液で容易に膨潤し、ハロゲン化銀乳剤層A12及び/又は物理現像核層A11に現像液を容易に浸透させるものであれば任意の水溶性高分子を使用することができる。
非感光性層に含まれる水溶性高分子としては、例えばゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。中でも、水溶性高分子として、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質が好ましい。非感光性層中の水溶性高分子の量は、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されている様な公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
光透過性導電性材料前駆体には、ハロゲン化銀乳剤層A12の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることが好ましい。ハレーション防止剤は、好ましくは物理現像核層A11、物理現像核層A11とハロゲン化銀乳剤層A12の間に必要に応じて設けられる中間層である非感光性層、又は支持体を挟んで設けられる裏塗り層である非感光性層に含有させることができる。イラジエーション防止剤は、ハロゲン化銀乳剤層A12に含有させることが好ましい。ハレーション又はイラジエーション防止剤の添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲な量を添加しうるが、例えばハレーション防止剤として裏塗り層である非感光性層に含有させる場合、1m2あたり、約20mg〜約1gであることが望ましく、好ましくは極大吸収波長における吸光度として、0.5以上である。
以下に銀錯塩拡散転写現像法について詳細に説明する。上述のとおり、銀錯塩拡散転写現像法は、光透過性導電性材料前駆体を露光し、銀錯塩拡散転写現像により金属細線を析出させる方法である。
まず、露光方法について説明する。光透過性導電性材料前駆体の露光方法として、格子状又は網目状等の形状パターンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、各種レーザー光を用いて走査露光する方法等が挙げられる。上記レーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードともいう)を用いることができる。上記方法によって、光透過性導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層に所望のパターンが像様される。
次に、銀錯塩拡散転写現像について説明する。上記のように、露光により、像様された光透過性導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層A12を、銀錯塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、現像可能なだけの潜像核を有さないハロゲン化銀が可溶性銀錯塩形成剤により溶解されて銀錯塩となり、物理現像核層A11上で還元されて銀が析出し、金属細線A3を形成することができる。一方、現像可能なだけの潜像核を有するハロゲン化銀はハロゲン化銀乳剤層A12中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層A12(黒化銀もこれに含まれる)及び中間層、保護層、裏塗り層等は除去されて、抵抗部として金属細線A3が易接着層A2上に露出する。
不用になったハロゲン化銀乳剤層A12等を除去する方法としては、水洗除去、剥離紙等に転写剥離する方法等が挙げられる。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法が挙げられる。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層A12上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層A12等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層A12等を剥離紙に転写させて剥離する方法が挙げられる。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、紙の上にシリカ等の微粒子顔料とポリビニルアルコール等のバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものを用いることができる。
銀錯塩拡散転写現像に用いる現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
現像液に用いる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウム等のチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウム等のチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシル等の環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載等のチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。これらの可溶性銀錯塩形成剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
現像液に用いる還元剤としては、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)及び18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されている様な写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えばハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1Lあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.005〜1モルである。還元剤の含有量は、現像液1Lあたり、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.05〜1モルである。
現像液のpHは、好ましくは10以上、より好ましくは11〜14である。現像液を所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤、リン酸、炭酸等の緩衝剤を、単独、又は組み合わせて含有させる。また、現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
現像処理及び水洗処理後の金属細線A3に後処理を施してもよい。後処理としては、後処理液を用いる処理や、めっき等が挙げられる。後処理液としては、例えば還元性物質、水溶性リンオキソ酸化合物、水溶性ハロゲン化合物等の水溶液が挙げられる。この様な後処理液を用いた処理としては、好ましくは50〜70℃、より好ましくは60〜70℃の水溶液に、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒〜3分、金属細線を接触させる処理が挙げられる。金属細線A3に、後処理液を用いた処理を施すと、金属細線の導電性が向上し、さらに高温高湿下でもその表面抵抗率が変動しないという利点を有する。
金属細線A3に施すめっき処理としては、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を行う処理等が挙げられる。金属細線A3にめっき処理を施すと、金属細線の色調等を変えることができる。
金属細線A3に無電解めっき処理を施す場合は、無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩又はその錯体塩の形のものを用いてもよく、金属パラジウムを用いてもよい。溶液の安定性、処理の安定性から、パラジウム塩又はその錯塩を用いること好ましい。
無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき、無電解コバルトめっき、無電解金めっき、銀めっき等を用いることができるが、必要な導電性と、金属細線からなる抵抗部の透明性を得るためには、金属細線に無電解銅めっきを施すことが好ましい。
無電解銅めっきに用いる無電解銅めっき液には、硫酸銅や塩化銅等の銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボラン等の還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソ−エリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のpH調整剤等を含有する。その他に、浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるために、さらに添加剤として、ポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物等を含有してよい。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行うことが好ましい。
無電解銅めっき液には、上記のとおり種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミン等銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いことが知られている。従って、工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、めっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。好ましい錯化剤としては、銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸等が挙げられ、この様な好ましい錯化剤を用いためっき液としては、例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっき等が挙げられる。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)の105頁等に詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことが好ましい。
銅以外の無電解めっき処理を行う場合は、例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)の406〜432頁記載の方法等を用いることができる。
金属細線に、電解めっきを施すこともできる。電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき等の公知のめっき方法を用いることができ、その方法として、例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)記載の方法を用いることができる。どのめっき法を用いるかは、製造する導電性材料の用途によって異なるが、導電性をさらに高めるためにめっきする場合、銅めっきやニッケルめっきを用いることが好ましい。銅めっきのめっき法として好ましい方法としては硫酸銅浴めっき法やピロリン酸銅浴めっき法、ニッケルめっき法としてはワット浴めっき法、黒色めっき法等が好ましい。
金属細線にめっき処理し、定着処理をした後、酸化処理を施してもよい。特にめっき処理の後に定着処理を施し、かつ漂白定着液で処理しない場合は酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いることができる。酸化処理液には、酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩等の各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩等を用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いることが好ましい。酸化剤の使用量は、好ましくは0.01〜1mol/L、より好ましくは0.1〜0.3mol/Lである。その他に促進剤として、臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド類、へテロ環メルカプト類等の公知のものを用いることもできる。
[機能材B]
次に、機能材Bについて、図面に基づき説明する。図5は、本発明の光透過型電波吸収体に用いる機能材Bの一例の概略を示す断面図である。図5において矢印は電波の入射方向を示す。図5に示すように、機能材Bは、誘電スペーサーB1と、反射材B2とを有し、反射材B2は、電波の入射面から見て裏側に位置する。
<誘電スペーサー>
誘電スペーサーB1は、機能材Aの光透過性支持体A1の線膨張係数との差が5%以内の線膨張係数を有するものである。機能材Bの誘電スペーサーB1の線膨張係数と、機能材Aの光透過性支持体A1の線膨張係数との差が5%以内であると、金属細線からなる抵抗部で受信した電磁波が、誘電体として機能する光透過性支持体A1及び誘電スペーサーB1に伝達され、伝達された電磁波が光透過性支持体A1又は誘電スペーサーB1の電波損失によって熱に変換されて消費される際に、電波吸収特性の面内分布が存在せず、均一な電波吸収特性を有する。誘電スペーサーは、その線膨張係数が、機能材Aの光透過性支持体の線膨張係数との差が5%以内のものであれば、光透過性支持体と異なる材料で形成されていてもよいが、電波吸収特性の面内分布が存在することなく、均一な電波吸収特性を有するためには、同種の材料で形成されていることが好ましい。誘電スペーサーとしては、耐候性、耐衝撃性の観点からポリカーボネートを用いることが好ましい。
誘電スペーサーの厚みは、機能材Aの抵抗部としての金属細線のパターン形状、表面抵抗率等によって好ましい範囲が変化するが、好ましくは2〜10mmである。
光透過性電波吸収体は、複数の誘電スペーサーを有していてもよい。図6は、複数の誘電スペーサーを有する機能材Bを用いた、光透過性電波吸収体の一部の概略構成を示す断面図である。図6に示すように、機能材Bは、複数の誘電スペーサーB11、B12等を積層してもよく、この場合は、1つの誘電スペーサーと、他の誘電スペーサーとを、接着剤層B111、B112等により貼合してなる。積層する誘電スペーサーの数等は、特に限定されず、機能材Aの抵抗部としての金属細線のパターン形状、表面抵抗率、誘電スペーサーの厚みによって好適な誘電スペーサーを用いることができる。複数の誘電スペーサーを用いる場合も、各誘電スペーサーは、光透過性支持体の線膨張係数との差が5%以内の線膨張係数を有することが好ましい。より好ましくは、機能材Aの光透過性支持体の最も近くに位置する誘電スペーサーを、光透過性支持体と同一の材料を用いて形成することが好ましい。
<反射材>
反射材B2は、表面抵抗率が、好ましくは30Ω/□以下、より好ましくは10Ω/□以下、さらに好ましくは1Ω/□以下であり、かつ光学的に光透過性のある部材である。かかる部材としては、ITO、ATO(三酸化アンチモン)、酸化スズ、AZO(酸化亜鉛、酸化アルミニウム)等の光透過性の導電性酸化物、樹脂繊維を金属めっきしたもの用いて作製した金属メッシュ、金属箔をパンチングで打ち抜き加工したもの、金網等、エッチングメッシュ、あるいは機能材Aの抵抗部と同様に、反射部として格子状又は網目状の金属細線を有するもの等が挙げられる。ITO等の導電性酸化物を用いる場合には、誘電スペーサー上に、例えばスパッタ法等を用いてITO層からなる反射材を設けてもよい。また、反射部として格子状又は網目状の金属細線を有するものを用いる場合には、機能材Aの金属細線からなる抵抗部と同様の方法で製造した格子状又は網目状の金属細線と、易接着層と、光透過性支持体層とをこの順序で有する反射材を、接着剤層を介して誘電スペーサーと貼合してもよい。中でも、ロールtoロール法等を用いることができ、高精度かつ均一な金属細線を形成することのできる、銀塩感光材料を用いた銀錯塩拡散転写現像法により製造した金属細線を有する反射材を用いることが好ましい。
図7は、機能材Bの一例の概略構成を示す断面図である。図7において矢印は電波の入射方向を示す。図7に示すように、機能材Bは、光透過性支持体B21と、易接着層B22と、反射部として格子状又は網目状の金属細線B23とを、この順序で有する反射材B2と、誘電スペーサーB1とを、接着剤層B24で貼合してなる。
反射材として、格子状又は網目状の金属細線を有するものを用いる場合には、金属細線の幅は、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μmである。金属細線の線幅は、狭ければ狭いほど光透過性が高くなる一方で、狭すぎると金属細線の抵抗値が高くなり過ぎるため、金属細線の線幅は100μm以下であることが好ましい。また、金属細線同士の線中心間隔は、吸収する電磁波の実効波長λgの1/16以下であることが好ましい。金属線同士の線中心間隔が、この範囲であると、電波吸収体の電波透過量が減じるため好ましい。
反射部として格子状又は網目状の金属細線を用いる場合には、機能材Aの抵抗部と同様に、ループ形状をしたループパターン、及び/又は円形若しくは多角形のパッチパターンを有することが好ましい。また、金属細線からなる各パターンは、隣接する他のパターンに対して、大きさ及び形状の少なくとも一方が異なることが好ましい。さらに金属細線からなるパターンは、パターンの一部にパターンから突出する突起形状を有することが好ましい。
[接着剤層]
図1、2、4〜7において示すように、本発明の光透過型電波吸収体は、機能材Aと機能材Bの間、誘電スペーサーと反射材の間、複数の誘電スペーサーの間、機能材A又は機能材Bと保護層の間は、接着剤層を介して貼合してなる。接着剤層に用いる接着剤としては、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)、PVB(ポリビニルブチラール)、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、(メタ)アクリレート系光重合型接着剤、(メタ)アクリレート系熱重合型接着剤、ホットメルト型(メタ)アクリレート系接着剤等の公知の接着剤を用いることができる。中でも、溶剤を乾燥させる必要のないEVAやPVB、無溶剤型の(メタ)アクリレート系光重合型接着剤、(メタ)アクリレート系熱重合型接着剤、ホットメルト型(メタ)アクリレート系接着剤を用いることが好ましい。
接着剤層を形成する方法としては、刷毛、ロール、ディッピング、流し塗り、スプレー、ロールコーター、フローコーター等を用いて、接着剤を塗布する方法が挙げられる。接着剤層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは10μm以下、より好ましくは1〜5μmである。
[光透過性保護部材]
図1に示すように、光透過性電波吸収体1は、積層構造における表面及び裏面に、光透過性保護部材11、13を貼合してなる。光透過性保護部材は、全光線透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。光透過性保護部材は、光透過性の樹脂を用いて形成することが好ましい。光透過性保護部材を形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、セロハン、セルロイド等が挙げられる。その他に上記樹脂に強度向上のためにガラス繊維等を混入した、いわゆるFRPを用いることも可能である。中でも、耐候性、耐衝撃性の観点からポリカーボネート樹脂からなる保護部材を用いることが好ましい。
光透過性保護部材は、機能材Aの光透過性支持体及び/又は機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%以内である線膨張係数を有することが好ましい。光透過性保護部材の線膨張係数と、機能材Aの光透過性支持体及び/又は機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%以内であると、電波吸収特性の面内分布が存在せず、電波吸収特性が変動することなく、光透過型電波吸収体は、より均一な電波吸収特性を有する。
光透過性保護部材には、紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種のものを含有させることが好ましい。紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤は、光透過性保護部材の表面に局在させてもよく、全面に均一に存在させてもよい。
光透過性保護部材の厚みは、特に制限されないが、好ましくは25〜2000μm、より好ましくは50〜1000μm、さらに好ましくは100〜500μmである。光透過性保護部材の厚さが、上記範囲内であると、保護層塗布時にカール等が起きず、また光透過性部材のハンドリング性が良好であり、かつ低コスト化が可能であるため好ましい。
光透過性保護部材の表面(貼合されない面)には、長期間の耐久性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系化合物、処理が比較的簡便でかつ良好な保護層の形成が可能であるアクリル樹脂、又は多官能アクリル樹脂からなる保護層が設けられていることが好ましい。これら保護層を構成する樹脂は、生産性や簡便性を考慮して、熱硬化型又は光硬化型の樹脂を用いることが好ましい。光硬化型樹脂の一例としては、1官能あるいは多官能のアクリレートモノマーあるいはオリゴマー等の単独あるいは複数からなる樹脂組成物に硬化触媒として光重合開始剤が加えられた樹脂組成物が挙げられる。熱硬化型樹脂としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系等の樹脂が挙げられる。この様な樹脂組成物は、ハードコート剤として市販されている。これら保護層には前述した紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤のほか、必要に応じて、有機溶剤、着色防止剤等の各種安定剤やレベリング剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、防曇剤等の界面活性剤等を適宜添加してもよい。
光硬化型アクリル系樹脂組成物からなる保護層の一例としては、1,9−ノナンジオールジアクリレート又はリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート20〜80質量%と共重合可能な他の化合物20〜80質量%とからなる光重合性化合物に対し、光重合開始剤を1〜10質量%を添加した紫外線硬化型樹脂保護層用組成物が挙げられる。
1, 9−ノナンジオールジアクリレート又はトリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートを必須成分とし、共重合可能な他の化合物としては、2官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマー及び2官能以上の多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーという。〕、2官能以上の多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーという。〕、2官能以上の多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー〔以下、多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーという。〕等が挙げられる。これら共重合可能な他の(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ハロゲン置換アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、脂肪酸ポリオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA又はビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA又はビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらは代表的なものであるが、これらに限定されるものではなく種々のものが使用できる。2官能(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキシド付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとポリイソシアネートとのウレタン化反応生成物等が挙げられる。多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオール類をポリイソシアネートと反応させて得られるイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとのウレタン化反応生成物が挙げられる。ウレタン化反応に用いられる1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基及び水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタン化反応に用いられるポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのうち芳香族のイソシアネート類を水素添加して得られるジイソシアネート(例えば水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネート等のジ又はトリのポリイソシアネート、あるいはジイソシアネートを多量化させて得られるポリイソシアネートが挙げられる。ウレタン化反応に用いられるポリオール類としては、一般的に芳香族、脂肪族及び脂環式のポリオールのほか、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が使用される。通常、脂肪族及び脂環式のポリオールとしては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、グリセリン、水添ビスフェノールA等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、上記のポリオール類と多塩基性カルボン酸(無水物)との脱水縮合反応により得られるものである。多塩基性カルボン酸の具体的な化合物としては(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)トリメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。また、ポリエーテルポリオールとしてはポリアルキレングリコールのほか、上記ポリオール又はフェノール類とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリオキシアルキレン変性ポリオールが挙げられる。
また、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸、多塩基性カルボン酸(無水物)及びポリオールの脱水縮合反応により得られる。脱水縮合反応に用いられる多塩基性カルボン酸(無水物)としては(無水)コハク酸、アジピン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。また、脱水縮合反応に用いられるポリオールとしては1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブチリオン酸、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。多官能エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる。ポリグリシジルエーテルとしては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。
光硬化型アクリル系樹脂組成物からなる保護層に使用される光重合開始剤としては、一般に知られているものを使用することができる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられるがこの限りではない。
保護層を形成する熱硬化型系樹脂組成物の具体例としては、エポキシ基含有シランカップリング剤及びアミノ基含有シランカップリング剤の少なくとも1種を含有したオルガノポリシロキサン系樹脂組成物を挙げることができる。より詳細には、樹脂中の不揮発分(JIS K6833)に対して、2官能アルコキシシランを0〜25質量%、3官能アルコキシシランを40〜80質量%、及び4官能アルコキシシランを10〜25質量%の割合で混合したアルコキシシランからなる樹脂組成物に、さらにエポキシ基含有シランカップリング剤とアミノ基含有シランカップリング剤の少なくとも1種を5〜10質量%添加した混合物を溶剤中、酸触媒存在下で加水分解・部分縮合して得られるオルガノポリシロキサン系樹脂組成物等を挙げることができる。
ポリオルガノポリシロキサン系樹脂組成物に用いる2官能アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。3官能のアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。4官能のアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。
アルコキシシランの混合比率については、塗料中の不揮発分(JIS K6833)に対して、2官能アルコキシシランを0〜25質量%、3官能アルコキシシランを40〜80質量%、及び4官能アルコキシシランを10〜25質量%の割合で混合するのが好ましく、2官能アルコキシシランを25質量%より超えて添加したり、3官能アルコキシシランが80質量%を超えて添加したりした場合は耐摩耗性が低下する。4官能アルコキシシランが30質量%より超えて添加する場合は保護樹脂板との密着性が悪く、10質量%未満の場合は耐摩耗性が低下する。
オルガノポリシロキサン系樹脂組成物に用いるシランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤及びアミノ基含有シランカップリング剤の少なくとも1種を使用するのが好ましく、シランカップリング剤は、塗料中の不揮発分(JIS K6833)に対して5〜10質量%の範囲で使用する。シランカップリング剤が5質量%未満の場合は、膜性、密着性が低下し、10質量%を超える場合は、耐摩耗性が低下する。
オルガノポリシロキサン系樹脂組成物に用いるエポキシ基含有シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、アミノ基含有シランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
オルガノポリシラン系樹脂組成物は、上記アルコキシシランとシランカップリング剤の混合物を酸触媒存在下、低級アルコール及び/又は水を添加して加水分解・部分縮合させることによって製造される。この低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
上記のオルガノポリシラン系樹脂組成物は、その物性を損なわない範囲で、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ基含有シランカップリング剤を併用することもできる。
上記シランカップリング剤含有オルガノポリシロキサン系樹脂組成物は、120〜140℃の温度で硬化膜が得られるように緩衝液を加えた硬化触媒を添加することが望ましい。硬化触媒としては、ジメチルアミン、酢酸エタノールアミン、ギ酸ジメチルアニリン、安息香酸テトラエチルアンモニウム塩、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ベンゾイルトリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウムアセテート等が挙げられる。この硬化触媒の添加量は、樹脂組成物中の不揮発分に対して、0.1〜1質量%の範囲で使用される。
上記紫外線吸収剤、光安定剤及び酸化防止剤のうち、少なくとも1種類以上を含有してなる保護層と光透過性保護部材との密着性を向上させるために光透過性保護部材の表面にプライマー層を形成しても良い。プライマー層の形成に用いる化合物としては、アクリル基含有有機化合物、アクリル基含有シラン化合物の縮合物、及びアルコキシシリル基を含有するビニル系化合物の縮合物等が挙げられる。アクリル基含有化合物としては、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート等のアルキルアクリレート類等が挙げられる。アクリル基含有シラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、架橋密度、反応性等の観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。また、このアルコキシシリル基を含有するビニル系単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−ビニロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ビニロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ビニロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ビニロキシプロピルメチルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性、反応性等の観点から、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−ビニロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
光透過性保護部材に設ける保護層の形成方法としては、刷毛、ロール、ディッピング、流し塗り、スプレー、ロールコーター、フローコーター等を用いて塗布する方法が挙げられる。熱硬化又は光硬化によって硬化した保護層の厚さは、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmである。保護層の厚さが、1μm未満であると耐候性や表面硬度の改良効果が不十分になりやすく、逆に20μmを超えてもコスト的に不利で、耐衝撃性の低下を招くこともある。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1(電波吸収体1の作製)]
本発明の電波吸収体を作製するために、まず、光透過性導電性材料前駆体を作製した。光透過性支持体として、厚み100μm、長さ2m、幅620mmのポリカーボネートフィルム(三菱ガス化学社製、ユーピロンシート標準グレードFE2000、線膨張係数6.5×10−5/℃、全光線透過率90%)を用いた。
次に下記処方に従い、易接着層塗液を作製し、ポリカーボネートフィルム上に塗布し、60℃で5分乾燥させた。
<易接着層塗液処方1m2当たり>
ハイドランWLS210(DIC社製ポリカーボネート系ウレタンラテックス)
770mg(固形分270mg)
ゼラチン 30mg
界面活性剤(S−1) 1mg
サイリシア450(富士シリシア化学社製、シリカ) 1.25mg
EX614(長瀬ケムテックス社製、エポキシ架橋剤) 9mg
界面活性剤(S−1)は、下記式で示される。
次に、下記のようにして作製した硫化パラジウムからなる物理現像核層塗液を作製した。
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
<物理現像核層塗液の調製>
上記硫化パラジウムゾル 50mL
2質量%のグルタルアルデヒド溶液 20mL
界面活性剤(S−1) 1g
水を加えて全量を2000mLとした。
この物理現像核層塗液を硫化パラジウムが固形分で0.4mg/m2になるように、易接着層の上に塗布し、乾燥した。
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記組成の裏塗り層を塗布した。
<裏塗り層組成/1m2あたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
染料1は、下記式で示される。
続いて、光透過性支持体に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び最外層を上記物理現像核層の上に塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%を含み、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
<中間層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
<最外層1組成/1m2あたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
(機能材A)
このようにして得た光透過性導電性材料前駆体を、特開2007−207646号公報に記載されている連続露光装置を用い、図8に示すように、線幅50μm、線中心間隔500μmの細線格子により構成される形状の抵抗パターン部82と、5cm×7cmのサイズの長方形からなる同じ線幅、線中心間隔の金属細線格子部81とが描かれ、それぞれが図8の位置A〜Eに配置されたサイズ0.5m×1mのポジ用透過原稿を透明円筒体1に密着させ、巻き付けて露光した。なお、搬送速度は5cm×7cmのサイズの長方形からなる網目状格子の現像、後処理後の表面抵抗率がダイアインスツルメンツ社製、ロレスターGP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した際に、25Ω/□となるよう調整した。
その後、先に露光した光透過性導電性材料前駆体を同じく特開2007−207646号公報に記載されている現像処理装置を用い、現像処理した。用いた拡散現像液は下記組成で、20℃で用いた。また、水洗処理には40℃の温水を用いた。
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
水を加えて全量を1000mLとし、pH=12.2に調整した。
続いて特開2008−251275号公報記載の後処理装置を用い、現像、水洗処理した光透過性導電性材料前駆体を80℃の下記後処理液中に5分浸漬させ、その後水洗、乾燥処理し、抵抗部を有する機能材を作製した。この時に金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
<後処理液>
塩化ナトリウム 100g
リン酸2ナトリウム 100g
アスコルビン酸 20g
水を加えて全量を1000mLとした。
(反射材)
細線幅20μmで線中心間隔250μmの細線格子パターンのポジ用透過原稿を用いる以外は機能材Aと同様に光透過性導電性材料前駆体を露光、現像、水洗、後処理し、全面網目パターンを有する導電性材料を作製した。続いて、得られた導電性材料をNI2225めっき液(メルテックス社製)中で0.2A/dm2の電流密度で10分間電解めっきを施し、反射材を作製した。なお、めっきされた細線格子パターンは0.2Ω/□の表面抵抗率を有していた。
(機能材B)
得られた反射材を用い、機能材Bを図7において、各層が以下のように対応するよう配置し、面圧1.0MPa、30分間プレスすることにより接着することで機能材Bを作製した。
B1:誘電スペーサー(厚み5mmのポリカーボネート板(三菱ガス化学社製、ユーピロン、線膨張係数6.5×10−5/℃)
B24:TBF560(住友3M社製、ホットメルト型EVA接着剤)
B2:反射材(反射部B23の面を誘電スペーサー側に向けた。)
(電波吸収体の貼合)
図1における構成に対応するように、以下のように層構成素材を配置し、面圧1.0MPa、30分間プレスし、接着して、電波吸収体1を作製した。
光透過性保護樹脂板11:サンガードL05(三菱ガス化学社製、耐紫外線加工ポリカーボネートシート、線膨張係数6.5×10−5/℃)
接着剤層12A:TBF560
機能材A:上記作製した機能材A(光透過性支持体A1の面を機能材B側に向けた。)
接着剤層12B:TBF560
機能材B:上記作製した機能材B(誘電スペーサーB1の面を機能材A側に向けた。)
接着剤層12C:TBF560
光透過性保護樹脂板13:サンガードL05
得られた電波吸収体の位置A〜Eの位置にあるパターンの描かれている部分を切り出し、それぞれの部分に対し、下記方法に従って、電波吸収特性を測定し、5箇所の電波吸収特性の最大値と最小値の差が5dB以内を○、10dB未満を△、10dB以上を×とした。結果を表1に示す。
(電波吸収特性の測定)
送信用ホーンアンテナをサンプルに対して40度の角度に配置し、周波数5.8GHzの電波をサンプルに向けて出射させた。次にサンプルより反射した電波を受信用ホーンアンテナで受信し、ネットワークアナライザにより解析した値をサンプルの電波吸収性能とした。なお、周波数5.8GHzの実効波長λgは、約52mmである。
[実施例2(電波吸収体2の作製)]
光透過性支持体として200μmのポリカーボネートシート(三菱ガス化学社製、ユーピロンブロッキング防止剤含有グレードFE2000B、線膨張係数6.5×10−5/℃)を用いたこと以外は、電波吸収体1と同様にして電波吸収体2を作製し、評価した。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
[実施例3(電波吸収体3の作製)]
光透過性支持体として200μmのアクリルシート(日東電工社製、クラレックス、線膨張係数7×10−5/℃)を用い、機能材Bを構成する誘電スペーサーとして厚み5mmのアクリル板(日東電工社製、クラレックス、線膨張係数7×10−5/℃)を用いたこと以外は、電波吸収体1と同様にして電波吸収体3を作製し、その性能を評価した。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
[比較例1(電波吸収体4の作製)]
誘電スペーサーとして厚み5mmのアクリル板(日東電工社製、クラレックス、線膨張係数7×10−5/℃)を用いたこと以外は、電波吸収体1と同様にして電波吸収体4を作製した。光透過性支持体(ポリカーボネート)の線膨張係数(6.5×10−5/℃)と、誘電スペーサーの線膨張係数との差は7.1%であった。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
[比較例2(電波吸収体5の作製)]
光透過性支持体として100μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、ダイヤホイルT680E100W07ベース、線膨張係数6.0×10−5/℃)を用いたこと以外は、電波吸収体1と同様にして比較電波吸収体5を作製し、評価した。上記光透過性支持体と、誘電スペーサー(ポリカーボネート)の線膨張係数(6.5×10−5/℃)との差は8.3%であった。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
[実施例4(電波吸収体6の製作)]
電波吸収体1で用いた光透過性導電性材料前駆体を用い、電波吸収体で用いたポジ用透過原稿を用いて電波吸収体1の作製と同様に機能材Aを作製した。得られた機能材Aに対し、塩化パラジウムで前処理を行った後、NI802無電解ニッケルめっき浴(メルテックス社製)にて温度60℃で5分間無電解めっきを施し機能材Aを作製した。
得られた機能材Aを用い、電波吸収体1と同様にして電波吸収体6を作製し、その性能を評価した。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.2μmであった。
[実施例5(電波吸収体7の製作)]
機能材Aに対し、金属細線格子の表面抵抗率を25Ω/□とするために線幅50μm、線中心間隔450μmの金属細線格子により構成される点以外は、電波吸収体1の作製に用いたものと同じポジ用透過原稿を用いて露光し、NI802無電解ニッケルめっき時間を8分とする以外は、電波吸収体6と同様にして光透過性電波吸収体7を作製し、その性能を評価した。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.5μmであった。
[比較例3(比較電波吸収体8の製作)]
機能材Aに対し、金属細線格子の表面抵抗率を25Ω/□とするために線幅50μm、線中心間隔400μmの金属細線格子により構成される点以外は電波吸収体1の作製に用いたものと同じポジ用透過原稿を用いて露光し、NI802無電解ニッケルめっき時間を11分とする以外は、電波吸収体6の作製と同様にして光透過性電波吸収体8を作製し、その性能を評価した。なお、抵抗部の金属細線の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック社製)を用いて測定したところ、0.7μmであった。
得られた電波吸収体1〜8の評価結果を表1に示す。表1より機能材Aの光透過性支持体の線膨張係数と、機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%以内であると、電波吸収特性の面内分布が存在せず、均一な電波吸収特性を有する。一方、比較例1(電波吸収体4)及び比較例2(電波吸収体5)のように、機能材Aの光透性支持体の線膨張係数と、機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%を超えると、電波吸収特性の面内分布が存在し、電波吸収特性に変動を生じた。また、比較例3(電波吸収体8)のように、金属細線の厚みが0.6μmを超えるものは、機能材Aの光透過性支持体及び誘電スペーサーの線膨張係数が同じであっても電波吸収特性の面内分布が存在し、変動を生じた。
[実施例6(電波吸収体9の製作)]
電波吸収体1の機能材Aの作製時に用いたポジ用透過原稿(線幅50μm、線中心間隔500μmの金属細線格子から構成される)を用いる以外、電波吸収体7の作製と同様にして電波吸収体9を作製し、同様に評価した。5.8GHzでの吸収特性は若干低下したが、電波吸収体7と同様の結果を得た。
[比較例4(電波吸収体10の製作)]
電波吸収体1の機能材Aの作製時に用いたポジ用透過原稿(線幅50μm、線中心間隔500μmの金属細線格子から構成される)を用いる以外、電波吸収体8の作製と同様にして電波吸収体10を作製し、同様に評価した。5.8GHzでの吸収特性は若干低下しているが、電波吸収体8と同様の結果を得た。
実施例6(電波吸収体9)の結果から、機能材Aの光透過性支持体の線膨張係数と、機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%以内であり、金属細線の厚みが0.6μm以下であると、抵抗部としての金属細線の線幅及び線中心間隔を変更した場合であっても、電波吸収体の吸収特性の面内分布が存在せず、均一な電波吸収特性を有する。一方、比較例4(電波吸収体10)の結果から、抵抗部としての金属細線の線幅が100μm以下であり、格子状又は網目状の金属細線同士の線中心間隔が、電波(周波5.8GHz)の実効波長λg(約52mm)の1/16以下であっても、機能材Aの光透過性支持体の線膨張係数と、機能材Bの誘電スペーサーの線膨張係数との差が5%を超え、金属細線の厚みが0.6μmを超えると、電波吸収特性に面内分布が存在し、変動を生じた。