JP4374595B2 - ホルムアルデヒド除去剤及び除去方法 - Google Patents

ホルムアルデヒド除去剤及び除去方法 Download PDF

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Description

本発明は、室内環境汚染物質であるホルムアルデヒドを分解除去する除去剤、及びホルムアルデヒドの除去方法に関するものである。なお、本発明におけるホルムアルデヒドというのは、一般的にガスの状態のホルムアルデヒドガスのことを意味している。
ホルムアルデヒドは反応性が高い物質であり、フェノール系やメラミン系の接着剤の硬化剤として建材や家具などに古くから用いられている。一方、ホルムアルデヒドは刺激性が強く、細胞毒性を有する物質であることから、環境汚染物質として分解除去することが望まれている。特に、室内環境においては、シックハウス症候群の原因物質の一つとして危惧されており、厚生労働省は0.08ppm以下という室内環境指針値(25℃における30分平均値)を設けている。
室内環境中のホルムアルデヒド除去対策としては、ホルムアルデヒドを吸着する吸着剤を用いる方法や、光触媒によってホルムアルデヒドを分解除去する方法が知られている。しかし、吸着剤を用いる方法は、吸着されたホルムアルデヒドが再放出する恐れがある。また、光触媒を用いる方法は、光源が必要とされるため、あまり光の当たらない空間、たとえば家具内部やエアーコンディショナー内部などでは使用できないという憾みがあった。
このため、ホルムアルデヒドを分解する酵素を用いる方法が種々開発されており、本件発明者も、新規なホルムアルデヒド分解微生物よりホルムアルデヒド分解酵素を取得した(特許文献1)。このホルムアルデヒド分解酵素は、特許文献2に記載されているホルムアルデヒドジスムターゼなどのホルムアルデヒド分解酵素に比べて、効率良くホルムアルデヒドを分解するものであり、好ましいものである。
また、これらのホルムアルデヒド分解酵素の使用方法としては、活性炭などの担体に酵素を固定化して、ホルムアルデヒドを分解除去することが行われている(特許文献1及び2)。さらに、酵素を固定化した担体を所望の形状に成型し、ホルムアルデヒド分解除去用フィルターとして用いることも行われている(特許文献1及び2)。
特開2003−52355公報(第2頁の特許請求の範囲、第4頁の段落番号0015及び0016) 特開2001−340436公報(1頁の特許請求の範囲、第2頁の段落番号0011及び0012)
本発明は、ホルムアルデヒド分解酵素を担体に固定化して、ホルムアルデヒド分解能の研究を行っていたところ、担体として特定のものを採用すると、ホルムアルデヒドの担体への吸着能力が長期間に亙って向上し、この結果、ホルムアルデヒドの分解除去性能が長期間低下しないことが判明した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、表面をアミノ基で修飾した担体に、アルコール酸化酵素などのホルムアルデヒド分解酵素を含む酵素を固定化したホルムアルデヒド除去剤に関するものである。また、この除去剤を用いたホルムアルデヒドの除去方法、及びこの除去剤を具えた空気清浄用フィルターに関するものである。
本発明で使用する担体としては、従来公知のものが採用される。すなわち、活性炭や金属酸化物などが用いられる。特に、本発明においては、シリカゲルを用いるのが好ましい。シリカゲルはホルムアルデヒドを多量に吸着しうると共に、その表面をアミノ基で修飾しやすいためである。なお、担体の形状は任意であるが、一般的に粒状で用いられることが多い。
この担体は、その表面がアミノ基で修飾されている。アミノ基で修飾とは、担体表面にアミノアルキルトリアルコキシシランを化学結合させるという意味である。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いるのが最も好ましく、その他にγ−アミノプロピルトリメトキシシランなども用いられる。担体表面がアミノ基で修飾されていると、その作用は定かではないが、ホルムアルデヒドの吸着能力が長期間に亙って向上する。
本発明で用いるホルムアルデヒド分解酵素としては、従来公知のものを用いることができる。本発明においては、特に、本発明者などが発見した特許文献1に記載された微生物由来のホルムアルデヒド分解酵素を用いるのが好ましい。具体的には、以下のホルムアルデヒド分解酵素を用いることができる。
(1)ペシロマイセス(Paecilomyces)属に属し、ホルムアルデヒド分解能力を有する微生物[寄託番号FERMP−18289(菌株IRI017)]由来のホルムアルデヒド分解酵素
(2)ボトリチス(Botrytis)属に属し、ホルムアルデヒド分解能力を有する微生物[寄託番号FERMP−18288(菌株IRI013)]由来のホルムアルデヒド分解酵素
(3)アスペルギルス(Aspergillus )属に属し、ホルムアルデヒド分解能力を有する微生物[寄託番号FERMP−18287(菌株IRI004)]由来のホルムアルデヒド分解酵素
また、アルコール酸化酵素も、ホルムアルデヒドを分解するので、本発明ではホルムアルデヒド分解酵素の範疇に属するものである。たとえば、上記したホルムアルデヒド分解酵素の中でも、(1)の範疇に属する以下のものが好適である。すなわち、特許文献1に記載されたペシロマイセス属に属する微生物の無細胞抽出液に含まれるアルコール酸化酵素が優れている。本無細胞抽出液には過酸化水素を分解するカタラーゼ活性も確認されている。ホルムアルデヒド分解酵素は、菌株から取得する方法(日本農芸化学会2002年度大会講演要旨集、p.118)や、ホルムアルデヒド分解酵素を発現する菌株由来の遺伝子を組み込んだ麹菌から取得する方法(日本生物工学会2002年度大会講演要旨集、p.64)で得ることができる。
また、市販のホルムアルデヒド分解酵素も用いることができ、とりわけ市販のアルコール酸化酵素(東洋紡製、シグマ社製など)を用いることもできる。また、ホルムアルデヒド分解活性やアルコール酸化活性を有する菌体(メタノール資化性酵母など)や、これらの菌体破砕液も用いうる。
ホルムアルデヒド分解酵素としてアルコール酸化酵素を使用する場合には、ホルムアルデヒドの酸化反応に際して発生する過酸化水素を分解するための過酸化水素分解酵素を併用するのが好ましい。すなわち、アルコール酸化酵素と過酸化水素分解酵素を組み合わせて、担体に固定化するのが好ましい。過酸化水素分解酵素としては、カタラーゼを用いるのが好ましい。また、ホルムアルデヒドの酸化反応に際して発生する蟻酸を分解するために、蟻酸酸化酵素(FEMS Microbiology Letters 214, 137(2002) )を併用するのも好ましいことである。担体に各種酵素を固定化させる量は、任意である。具体的には、担体重量に対して、酵素0.01〜1質量%程度で十分である。
本発明に係るホルムアルデヒド除去剤は、任意の用途に用いられる。一般的には、シックハウス症候群の原因となる室内や家具に対して使用する。すなわち、本発明に係るホルムアルデヒド除去剤を、室内や家具の引き出しなどに据え置くことによって、住環境におけるホルムアルデヒドを分解除去することができる。また、家具などを生産した後、保管乃至輸送中において、家具の包装の内部に、本発明に係るホルムアルデヒド除去剤を据え置くことによって、家具から発生するホルムアルデヒドを分解除去することができる。
また、本発明に係るホルムアルデヒド除去剤は、空気清浄用フィルターに用いて好適である。すなわち、濾過材本体に、本発明に係るホルムアルデヒド除去剤を含有させて、空気清浄用フィルターとすることができる。濾過材本体としては、紙、不織布、編織物などの公知の素材が用いられる。ホルムアルデヒド除去剤を、これらの濾過材本体に含有させるには、濾過材本体表面にホルムアルデヒド除去剤を担持させる方法、紙や不織布の構成繊維間にホルムアルデヒド除去剤を保持させる方法、二枚の濾過材本体でホルムアルデヒド除去剤を挟着させる方法、ハニカム状のペーパーコアの空隙にホルムアルデヒド除去剤を充填し、両側から不織布などの濾過材本体を積層して収納する方法などの任意の方法を採用すればよい。
また、上記した空気清浄用フィルターを、空気清浄機やエアーコンディショナーの空気流入口や流出口に組み込めば、室内の空気中に含まれているホルムアルデヒドが、空気清浄用フィルター中のホルムアルデヒド除去剤によって、随時、分解除去せしめられる。すなわち、空気清浄機やエアーコンディショナーを運転させれば、自動的に室内のホルムアルデヒドが分解除去されてゆくのである。
本発明に係るホルムアルデヒド除去剤は、ホルムアルデヒド分解酵素が、担体に固定化されてなるものであり、この担体の表面はアミノ基で修飾されている。アミノ基で修飾された担体は、ホルムアルデヒド吸着能力が長期間に亙って向上し、その結果、ホルムアルデヒドを分解除去する性能が、長期間に亙って低下しないという効果を奏する。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。本発明は、ホルムアルデヒド分解酵素を吸着させる担体表面を、アミノ基で修飾しておくと、ホルムアルデヒドを分解除去する性能が長期間に亙って低下しないとの知見に基づくものとして解釈されるべきである。
[ホルムアルデヒド分解酵素(アルコール酸化酵素)の準備]
寄託番号FERMP−18289(菌株IRI017)由来のアルコール酸化酵素遺伝子を麹菌に組み込んだ。アルコール酸化酵素を十分に発現させた後、この麹菌211g(湿重量)を、乳鉢で破砕し、450mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加え、遠心分離した。その上清を菌体破砕液とし、これをホルムアルデヒド分解酵素(アルコール酸化酵素)とした。菌体破砕液のアルコール酸化酵素活性は、0.326U/mlであり、カタラーゼ活性をも確認された。
[担体の準備]
直径約2〜4mmで、平均細孔径10〜100nmのシリカゲル5gを、γ−アミノプロピルトリエトキシシランのトルエン溶液(濃度10質量%)10mlに、1時間浸漬した。この結果、γ−アミノプロピルトリエトキシシランは、シリカゲル表面と反応し、シリカゲル表面に結合した。その後、充分量のメタノールでトルエンを除去した後、120℃で約6時間加熱してメタノールを揮発させた。以上のようにして、表面がアミノ基で修飾されたシリカゲルを得た。
[ホルムアルデヒド除去剤の作成]
上記のとおり準備した、ホルムアルデヒド分解酵素と、表面をアミノ基で修飾したシリカゲル(アミノ基修飾シリカゲル)とを用いて、ホルムアルデヒド除去剤を得た。すなわち、菌体破砕液にアミノ基修飾シリカゲルを浸漬して(菌体破砕液に対するアミノ基修飾シリカゲルの浸漬量は、前者1mlに対して後者を1gとした。)、菌体破砕液をアミノ基修飾シリカゲルに固定化したホルムアルデヒド除去剤を得た。
使用例1
上記で得られたホルムアルデヒド除去剤225gを、市販のハニカム状ペーパーコアの空隙に充填し、その両側面を合成繊維製不織布で覆って、空気清浄用フィルター(縦300mm×横160mm×厚さ20mm)を作製した。そして、この空気清浄用フィルターを、市販の空気清浄機に装着し、空気清浄機を1m3容量のチャンバー内に入れた。チャンバー内で2〜4ppmのホルムアルデヒドを発生させた後、空気清浄機を約3.2m3/minの風量で運転し、チャンバー内のホルムアルデヒド濃度の変化を調べた。なお、試験は室温で行った。この結果を、図1に示した。
比較使用例1
ホルムアルデヒド除去剤に代えて、菌体破砕液が固定化されていないアミノ基修飾シリカゲルを用いる他は、使用例1と同一の方法で、チャンバー内のホルムアルデヒド濃度の変化を調べ、この結果を図1に示した。
比較使用例2
ホルムアルデヒド除去剤に代えて、アミノ基で修飾されていないシリカゲル(直径約2〜4mm、平均細孔径10〜100nm)を用いる他は、使用例1と同一の方法で、チャンバー内のホルムアルデヒド濃度の変化を調べ、この結果を図1に示した。
図1の結果から分かるように、アミノ基で修飾されていないシリカゲルではホルムアルデヒドの吸着が不十分で、運転開始後、180分経過しても、ホルムアルデヒド濃度は1ppm以上であった。一方、アミノ基で修飾されているシリカゲル、及びアミノ基で修飾されているシリカゲルに菌体破砕液を固定化したホルムアルデヒド除去剤は、いずれも、運転開始後、20分経過後には、ホルムアルデヒド濃度が0.08ppm以下となった。すなわち、アミノ基で修飾されているシリカゲルは、ホルムアルデヒドの吸着性能が格段に向上していることが分かる。
使用例2
上記で得られたホルムアルデヒド除去剤を、円筒形カラム(内径18mm、長さ50mm)に充填した。そして、ホルムアルデヒド濃度が0.2〜0.4ppmで湿度が98〜99%の空気を、この円筒形カラムに、約0.5L/minの流速で連続的に通気し、ホルムアルデヒドの分解除去性能を測定した。具体的には、円筒形カラムの空気の入口のホルムアルデヒド濃度と、出口でのホルムアルデヒド濃度を測定し、[1−(出口のホルムアルデヒド濃度/入口のホルムアルデヒド濃度)]×100なる式で、ホルムアルデヒド分解率(%)を計算した。その結果を図2に示した。なお、この試験も室温で行った。
比較使用例3
ホルムアルデヒド除去剤に代えて、アミノ基で修飾されていないシリカゲル(直径約2〜4mm、平均細孔径10〜100nm)を用いる他は、使用例2と同一の方法で、ホルムアルデヒド分解率を測定し、この結果を図2に示した。
比較使用例4
ホルムアルデヒド除去剤に代えて、以下のような除去剤を用いる他は、使用例2と同一の方法で、ホルムアルデヒド分解率を測定し、この結果を図2に示した。ここで、使用した除去剤は、ホルムアルデヒド分解酵素と、アミノ基で修飾されていないシリカゲル(直径約2〜4mm、平均細孔径10〜100nm)を用いて得られたものである。すなわち、菌体破砕液に、前記のアミノ基で修飾されていないシリカゲルを浸漬して(菌体破砕液に対するシリカゲルの浸漬量は、前者1mlに対して後者を1gとした。)、菌体破砕液をシリカゲルに固定化した除去剤である。
比較使用例5
ホルムアルデヒド除去剤に代えて、菌体破砕液が固定化されていないアミノ基修飾シリカゲルを用いる他は、使用例2と同一の方法で、ホルムアルデヒド分解率を測定し、この結果を図2に示した。
図2の結果から明らかなように、菌体破砕液を固定化していないものを用いた比較使用例3及び5は、通気後、20日経過した時点で、殆どホルムアルデヒドを吸着しなくなった。一方、菌体破砕液を固定化したものを用いた使用例2及び比較使用例4は、通気後、20日経過後もホルムアルデヒドをよく除去しており、これは菌体破砕液によってホルムアルデヒドが分解されていることを示している。そして、使用例2と比較使用例4とを対比すると、アミノ基で修飾されていないシリカゲルを用いた比較使用例4が80日経過後には、ホルムアルデヒドの分解率が極端に低下していくのに比べ、アミノ基で修飾されたシリカゲルを用いた使用例2は、殆ど分解率が低下しないことが分かる。
ホルムアルデヒド濃度の経時的変化を示したグラフである。 ホルムアルデヒド分解率の経時的変化を示したグラフである。

Claims (8)

  1. 表面をアミノ基で修飾した担体に、ホルムアルデヒド分解酵素を含む酵素を固定化したホルムアルデヒド除去剤。
  2. ホルムアルデヒド分解酵素としてアルコール酸化酵素を用いる請求項1記載のホルムアルデヒド除去剤。
  3. 表面をアミノ基で修飾した担体に、アルコール酸化酵素及び過酸化水素分解酵素を含む酵素を固定化したホルムアルデヒド除去剤。
  4. 担体がシリカゲルである請求項1乃至3のいずれか一項に記載のホルムアルデヒド除去剤。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のホルムアルデヒド除去剤を、室内、家具の引き出し又は家具の保管乃至輸送中の包装容器内などの空間に据え置くことを特徴とするホルムアルデヒドの除去方法。
  6. 濾過材本体に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のホルムアルデヒド除去剤が含まれてなる空気清浄用フィルター。
  7. 請求項6記載の空気清浄用フィルターを具えてなる空気清浄機
  8. 請求項6記載の空気清浄用フィルターを具えてなるエアーコンディショナー。
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