JP4821168B2 - 気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法 - Google Patents

気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法 Download PDF

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Description

本発明は、気相中の特定の有機物質(基質)を分解除去できる気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法に関する。
気相中に存在する有害な有機物質を除去する材料として光触媒が幅広く利用されつつある。酸化チタンに代表される光触媒は、紫外光をあてると水や溶存酸素から活性酸素を生成し、これにより有機物質を分解する。しかしながら、光触媒の利用には光照射が必要であるという根本的な制限があることに加えて、光触媒を担持するマトリクス材料が劣化し易くなるため、無機物によるマトリクス形成が必要である等の成型方法が簡便でないという問題点がある。また、分解する有機物質の種類について選択性が無いという問題点もある。
化学工学、食品加工、醸造、果汁工学、畜産業、化粧品、臨床診断等の様々な分野で利用されている酵素は、水溶液中で特定の物質(基質)を効率的に反応(分解)させる触媒として利用されている。一般に、このような酵素が特定の物質と反応する際には、酵素及び基質が、全て溶液中に溶解又は分散している必要があった。
しかし、最近では、ガスセンサーの分野において気相中の物質を酵素反応させる系が開発されている。例えば、特許文献1には、気相中のエタノールに対する選択性を有するガスセンサーとして、酵素を、アガロース、ゼラチン、ポリアクリルアミド、アルギネート等の親水性高分子と塩化カリウムとで構成されるマトリクスを用いて複合化し酵素複合体を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、気相中のエタノールに対する選択性を有するガスセンサーとして、酵素を、ヒドロキシエチルセルロースと炭素粉とで構成されるマトリクスで複合化し酵素複合体を形成する技術が開示されている。但し、これら酵素複合体では、微量の有機物の濃度を測定するためのセンサーを構築することは出来ても、室内の気相中の有害有機物を分解除去するような高効率の性能は発揮できない。
特許文献3〜5には、気相中のホルムアルデヒドの浄化方法として、ホルムアルデヒド分解酵素を空気清浄フィルターに利用する技術が開示されている。しかし、該技術情報にはそのような高効率の有害有機物分解除去システムを実用化する際に必須となる酵素の劣化や長期使用時の酵素の活性低下等を抑制する方法や抑制材料までは言及されていない。
ところで、ホスホリルコリン類似基含有重合体は、生体膜に由来するリン脂質類似構造に起因して、タンパク質の吸着抑制、血液適合性、補体活性、生体物質非吸着性等の特性を有していることが明らかにされ、こうした機能を利用した生体関連材料の開発に利用されている。その中にはホスホリルコリン類似基含有重合体と酵素とを組合わせて利用する技術も開発されている。
例えば、特許文献6には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下MPCと略記する)を重合して得られた2−メタアクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体(以下MPC含有重合体と略す)を化学的に修飾した酵素の製造方法と、これを用いたコンタクトレンズ洗浄液が開示されている。特許文献7には、MPC含有重合体を共存させる酵素の安定化方法が開示されており、特許文献8には、免疫学的活性物質である酵素修飾抗体を固定化した固相に、MPC含有重合体を吸着させた重合体吸着免疫学的活性物質固定化固相が開示させている。特許文献9には、MPC含有重合体を主要な材料とするハイドロゲル中に酵素を閉じ込め安定化する技術が開示されている。特許文献10には、MPC含有重合体と酵素を化学結合して得られる高分子/酵素複合体が開示されている。
上述のようにMPC含有重合体と酵素とを組合わせて利用する方法が従来提案されているが、いずれも酵素反応を水溶液中で生じさせる技術に関するものであり、気相に暴露した状態で高効率に酵素反応させる機能まで予見できる情報の開示はない。
特開平7−77511号公報 特開平7−198668号公報 特開平6−303981号公報 特開2001−340436号公報 特開2004−222845号公報 特開平9−327288号公報 特開平10−45794号公報 特開平10−114800号公報 国際公開第00/02953号パンフレット 特開2000−93169号公報
本発明の目的は、気相中の有害物質等の特定物質を選択性良く、高効率で分解除去できる気相浄化体、該気相浄化体を含む気相浄化ユニット及び気相浄化方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、長期保存した場合にも気相中の有害物質等の特定物質を選択性良く、高効率で分解除去でき、更にはこのような作用を長期間維持しうる気相浄化体及び気相浄化ユニットを提供することにある。
本発明によれば、気相中の物質を捕捉して該捕捉した物質を酵素分解する気相浄化体であって、酵素と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートの3元共重合体である、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体と、水とを含み、該重合体に該酵素が分散した固化形態を有する気相浄化体が提供される。
また本発明によれば、上記気相浄化体を、気相と接するように基体に設けた気相浄化ユニットが提供される。
更に本発明によれば、上記気相浄化ユニットを気相と接触させることを特徴とする気相浄化方法が提供される。
本発明の気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法は、上記構成を具備するので、有害物質等の特定物質を選択性良く、高効率で分解除去でき、空気等の気相を浄化することができる。また、本発明の気相浄化体における、酵素、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体及び水の割合を制御したり、特定の添加物を含有させることにより、長期保存した場合にも上記効果が得られ、更には上記効果を長期維持することが可能となる。
更に本発明の気相浄化体及び気相浄化ユニットは、用いる2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の種類や分子量等を制御することにより、上記効果を向上させることができる他、気相浄化体及び気相浄化ユニットの耐久性を向上させることができる。
従って、本発明の気相浄化体及び気相浄化ユニットは、防臭対策、シックハウス症候群予防、アレルギー予防、化学物質過敏症抑制等の機能を期待して目的とする環境下において有効に利用することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の気相浄化体は、気相中の物質を捕捉して該捕捉した物質を酵素分解することで空気等の気相を浄化するものであって、酵素と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体と、水とを含む。
前記酵素分解させる気相中の物質は、含有させる酵素と反応可能な気相中の物質、基本的には有機物質であれば特に限定されず、特に有害な有機物質がその対象として挙げられる。このような気相中の物質としては、例えば、アルコール、酢酸エステル、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。具体的には例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、メトキシエタノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸ビニル、フタル酸エステル、クロロホルム、4塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロブタジエン、クロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、塩化ビニル、クレゾール、ジニトロトルエン、フェノール、クロロフェノール、有機リン系化合物又はこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの酵素と反応可能な気相中の物質の形態は、ガス状、霧状、微細なエアロゾル状のいずれであっても良い。
本発明に利用できる酵素としては、上記気相中の物質を分解(反応)できる酵素であればいずれも使用可能であり、例えば、アルコール、アルデヒド、酢酸エステル、芳香族炭化水素及びハロゲン化炭化水素からなる群より選ばれる1種又は2種以上の物質を基質とする酵素が好ましく挙げられる。このような酵素としては、例えば、アルコール分解酵素、過酸化水素分解酵素、有機過酸化物分解酵素、ジカルボン酸分解酵素、モノカルボン酸分解酵素、トルエン分解酵素、ベンゼン分解酵素、トリクロロエタン分解酵素、有機リン化合物分解酵素等が挙げられる。特にアルコール分解酵素が最も有用である。
アルコール分解酵素は、アルコールと反応(分解)する酵素であれば特に限定されず、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシターゼ、カーボンモノオキサイドデヒドロゲナーゼ、フォーメートデヒドロゲナーゼ等が挙げられる。これらの中でも、特異性等が明確である点からは、アルコールデヒドロゲナーゼあるいはアルコールオキシダーゼ等が好ましく挙げられ、中でも補酵素を用いないアルコールオキシダーゼが好ましく挙げられる。
本発明に用いる2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、グリセロールモノ(メタ)アクリレート(以下、GLMと略す)及びアルキル(メタ)アクリレートの3元共重合体であって、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートを含む単量体組成物をラジカル重合して得られる。
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンは、例えば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報等に示された公知の方法等に準じて製造することができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上が用いられる。
前記共重合体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCと略す)−ブチルメタクリレート(以下、BMAと略す)−GLMの組合せ、気相中の物質を分解(反応)させる酵素活性の高さ及び酵素活性低下の抑制の点で最も好ましく挙げられる。
前記共重合体において、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリンの構成単位は、通常20〜95質量%、望ましくは30〜70質量%である。該構成単位の割合が20質量%未満では酵素の反応効率を十分に維持することが困難になる恐れがあり、95質量%より多いと共重合する他の単量体の機能を十分に発揮させることが困難になる恐れがある。
前記3元共重合体を構成する各単量体の組成は、通常MPC等の2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン20〜90質量%、GLM等のグリセロールモノ(メタ)アクリレート5〜70質量%、アルキルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート5〜60質量%の範囲であり、望ましくは2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン40〜80質量%、グリセロールモノ(メタ)アクリレート10〜50質量%、アルキル(メタ)アクリレート10〜50質量%の範囲である。
本発明に使用する2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の分子量は、重量平均分子量で通常5000〜5000000の範囲であり、形態をフィルムとする場合の形成性の観点からは50000〜1000000の範囲が好ましい。
本発明の気相浄化体において、前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体、酵素及び水は、所望の効果をより改善するために、特定割合で含有されていることが好ましい。
前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の含有割合は、本発明の気相浄化体全量基準で、通常30〜98質量%、好ましくは50〜95質量%である。98質量%より多いと高い酵素活性を発揮させることが困難になる恐れがあり、30質量%未満では酵素活性を長期間にわたって維持することが困難になる恐れがある。
前記酵素の含有割合は、本発明の気相浄化体全量基準で、通常0.0001〜5質量%、好ましくは0.001〜0.5質量%である。0.0001質量%未満では、気相中の物質を十分除去することが困難になる恐れがあり、5質量%より多いと反応に関与しない酵素の割合が増加し、酵素量あたりの反応率の観点から効率低下が生じる恐れがある。
前記水の含有割合は、本発明の気相浄化体全量基準で、通常1.9999〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。該水は、本発明の気相浄化体の使用時にこのような含有割合であることが好ましい。水の含有割合が1.9999質量%未満では酵素反応の効率が低下する恐れがあり、20質量%より高いと長期保存の際に酵素の劣化が生じ易くなる恐れがあると共に、気相浄化体自体の力学的強度が極端に低下する恐れがある。
本発明の気相浄化体において、前記好ましい水の含有割合の調整は、使用環境下における気相浄化体の自発的な吸湿性を利用して調整することができる他、使用環境においては、使用時或いは使用中に気相浄化体に断続的又は連続的に適量の水分を噴霧する方法等によって水を供給して好ましい水分量を調整することもできる。
本発明の気相浄化体において、前記好ましい水の含有割合の調整は、前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体におけるホスホリルコリン類似基が本来有する吸湿性を直接利用して制御する方法に加えて、気相浄化体中に吸湿性を調整しうる添加剤を含有させる方法によっても行うことができる。
本発明の気相浄化体に含有させることが可能な前記吸湿性を調整しうる添加剤としては、例えば、糖類、多価アルコール類、ポリアルキレングリコール類及びアミノ酸類の少なくとも1種が好ましく挙げられる。具体的には例えば、ブドウ糖、ショ糖、マルトース、キシリトール、トレハロース、オリゴ糖、セルロース、カルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸等の糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等のポリアルキレングリコール類;アスパラギン酸、アルギニン等のアミノ酸類等が挙げられる。これらの中でも吸湿性を付与することに加えて、酵素の劣化抑制効果を併せ持つ点で、上記具体的に挙げた糖類の少なくとも1種を好ましく用いることができる。
前記吸湿性を調整しうる添加剤を含有させる場合の含有割合は、気相浄化体全量基準で、通常1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。1質量%未満では、所望する吸湿性の調整効果が小さすぎ、50質量%より多いと、含有される2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の効果を損なう恐れがある。
本発明の気相浄化体には、前記吸湿性を調整しうる添加剤以外にも必要に応じて、酵素活性を損なわない範囲で他の添加剤を含有させることができる。他の添加剤としては、例えば、無機塩類、有機塩類、界面活性剤、防腐剤、色素、架橋剤、紫外線吸収剤、基材との密着性を高めるためのプライマー等が挙げられる。
これら他の添加剤の含有割合は、その所望の効果を達成し、且つ本発明の所望の効果を損なわない範囲で適宜決定することができる。
本発明の気相浄化体の形態は、前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体に前記酵素が分散した固化形態である。固化形態は、流動性がなければゲル状であっても良いが、気相浄化体の機械的強度等を考慮する場合には、ある程度の硬度を有することが好ましい。また、前記酵素の分散状態は、前記重合体中に埋入した状態で分散していても、また、一部が露出して分散していても良い。
本発明の気相浄化体の具体的な形態としては、フィルムであることが好ましく、その厚さは通常0.01〜5000μm、好ましくは0.1〜100μmである。厚さが0.01μm未満の場合には、酵素がフィルム内部よりも外部に露出する割合が多くなり、酵素の安定性が低下する恐れがあり、5000μmより厚いと酵素と反応する気相中の特定の物質と酵素とが十分な接触が得られ難くなり酵素反応性が低下する恐れがある。
本発明の気相浄化体を製造するには、例えば、前記2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の希釈液中に、酵素又は酵素溶液、更に必要に応じて各種添加剤を混合して得られる混合液を、適当な基体に流延して溶媒を蒸発させてフィルム状等に形成する、溶媒キャスト法、連続的に基体をスライドさせながら一定量の前記混合液を塗布し溶媒を乾燥させていく連続コーティング法、前記混合液をスプレー等で適当な基体に噴霧して乾燥させる方法等が挙げられる。
本発明の気相浄化体を製造する際に用いる前記重合体の希釈液や酵素溶液等を調製するための溶媒としては、例えば、水;酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、炭酸緩衝液、グッドの緩衝液等の各種緩衝溶液;エタノール、メタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の各種有機溶媒の単独液あるいは混合液を用いることができる。アルコールと反応する酵素を溶解する溶媒としては、酵素が不可逆的な変性を起こさない水又は緩衝溶液が好ましい。前記重合体を希釈する溶媒としては、乾固し易い水又は、水とエタノールとの混合溶媒が好ましい。
本発明の気相浄化体を製造する際に用いる前記重合体及び酵素等を含む前記混合液中の前記重合体濃度は、気相浄化体を例えばフィルムに容易に調製できる濃度であれば良く、通常0.1〜50質量%の範囲である。前記重合体濃度が0.1質量%未満では、製造効率が低下する恐れがあり、50質量%を超えると前記混合液の粘度が上昇し気相浄化体形成時のハンドリング性が低下する恐れが生じる。
本発明の気相浄化体を製造するにあたり、前記混合液を塗布等するための基体の材質としては、金属類、セラミックス、木製、プラスチック、ガラス、紙等が挙げられ、その形態としては、板、曲面を有する基体、繊維、不織布、多孔質体等が挙げられる。
本発明の気相浄化体を製造するにあたり、前記溶媒の乾燥工程は、前記重合体を含むので酵素の劣化を抑制して行なうことが可能であるが、製造工程中、酵素が最も劣化し易い工程であるので注意して行うことが好ましい。具体的には、溶媒の乾燥温度を通常10〜70℃の範囲、望ましくは20〜50℃の範囲で実施する。乾燥温度が10℃未満では、乾燥効率が低下する恐れがあり、70℃より高温では前記重合体による酵素劣化抑制効果が低下し、酵素が劣化する恐れがある。
前記基体に形成した本発明の気相浄化体は、そのまま後述する本発明の気相浄化ユニットとして用いることができる他、例えば、フィルム形態等の場合であって、十分な厚みと強度がある場合には、基体から剥がして自己支持性のフィルムとして利用することができる。
本発明の気相浄化ユニットは、上述の本発明の気相浄化体を、空気等の気相に接するように基体に設けたものである。
基体としては、上述の基体、更にはこのような基体を含む建材、家具、衣類、エアコン機器、エアフィルター、冷蔵庫、自動車等を挙げることができる。
本発明の気相浄化方法は、前記本発明の気相浄化ユニットを空気等の気相と接触させることを特徴とする。
前記気相浄化ユニットを気相に接触させる方法としては、気相浄化ユニットの気相浄化体を、浄化すべき気相に暴露させる方法、また、例えば繊維質や多孔質等の微小な空間に気相浄化体が形成された気相浄化ユニットの場合には、浄化すべき気相をファン等で流れを作り、該微小な空間の気相浄化体に接触するように気相を送り込む方法等により接触させることができる。
本発明の気相浄化方法においては、前記気相浄化ユニットの気相浄化体表面に、酵素と反応可能な気相中の物質が吸着し、該表面に存在する酵素に結合、若しくは気相浄化体内部の酵素まで吸着された物質が移動して結合して、酵素反応が進行することにより、該物質が分解浄化される。
以下、合成例、実施例に基づいて、本発明を更にに詳細に説明するが本発明はこれらの例に限定されない。
合成例1
MPC50.0gをエタノール100gに溶解し、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ後に、60℃でアゾビスブチロニトリル(以下、AIBNと略記する)0.24gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3Lのジエチルエーテル中にかき混ぜながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末39.8gを得た。なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定条件は20mMリン酸緩衝液(pH7.4)を溶離液とし、ポリエチレングリコールを標準物質とし、屈折率により検出した。結果を表2に示す。尚、得られたMPCホモポリマーを(P−1)と略記する。
合成例2
MPC36.0g、BMA4.0gをエタノール160gに溶解し、4つ口フラスコに入れ、30分間窒素を吹き込んだ後に、60℃でAIBN0.82gを加えて8時間重合反応させた。重合液を3Lのジエチルエーテル中に撹拌しながら滴下し、析出した沈殿を濾過し、48時間室温で真空乾燥を行って、粉末33.4gを得た。分子量を合成例1と同様に測定した。結果を表2に示す。尚、得られたMPC/BMAポリマーを(P−2)と略記する。
合成例3〜22
合成例2の(P−2)の合成に準じて、表2に示す単量体の種類、組成比を変更し、合成例2と同様の操作により、各ポリマーを調製した。得られたポリマーを合成例の番号に合わせてそれぞれ(P−3)〜(P−22)と略記する。また、得られたポリマーの組成比(質量比)及び重量平均分子量を表2に示す。
尚、表2中、MACはメタクリル酸、EMAはエチルメタクリレート、HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、C12MAはラウリルメタクリレート、C18MAはステアリルマタクリレート、QMAは2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドをそれぞれ示す。
Figure 0004821168
比較例に使用したポリマー1〜7
表3に示す7種類の市販のポリマーを後述する比較例に利用した。これらのポリマーを(C−1)〜(C−7)と略記する。
Figure 0004821168
参考例1
アルコールオキシダーゼ(シグマ社製)を10mg取り、1mMリン酸緩衝液で100mLに希釈しアルコールオキシダーゼ溶液(以下、AO溶液と略記する)を調製した。合成例1で合成した(P−1)1.0gを1mMリン酸緩衝液で10mLに希釈し、24時間振とうして溶解させ、ポリマー原液を得た。AO溶液1mLとポリマー溶液1mLとをポリプロピレン製試験管で攪拌した後に、直径40mmのガラスのペトリディッシュに添加した。ペトリディッシュを28〜32℃、相対湿度30%以下で空気循環のある環境下に静置して24時間乾燥した後、相対湿度60%の恒温恒湿器中に移し24時間静置して、フィルム状の気相浄化体を調製した。得られた気相浄化体について以下の測定を行った。結果をそれぞれ表4に示す。
<メタノール分解試験>
調製した気相浄化体を、上部にコック付きのガラスデシケーター(容量5L)に導入し、コックよりガラスデシケーターの気相中に10μLのメタノールを霧状に噴霧して加えた。メタノールを噴霧した直後及び、25℃で24時間放置後、デシケーター内のメタノール濃度をガス検知管(ガステック社製)を用いて測定した。
<含水率測定>
メタノール分解試験の終了後、気相浄化体を取り出し、重量(A)を測定した後、110℃で4時間乾燥し、乾燥重量(B)を測定し、その重量差(A)−(B)を水分含有量とし、全重量における水分含有率を下記のように算出した。
水分含有率=[(A)−(B)]/(A)×100(%)
<耐久性試験>
得られた気相浄化体表面に、ガスバリア性の高いポリエチレン−アルミ複合フィルムを密着させ保護し、40℃で4週間保存した。保存後、上記メタノール分解試験及び含水率測定を実施した。
参考例2〜21、実施例1
合成例1で合成した(P−1)の代わりに、合成例2〜22で合成した(P−2)〜(P−22)を用いた以外は、参考例1と同様に気相浄化体を調製し、各測定を行なった。尚、耐久性試験については、参考例2〜7及び参考例21、実施例1の気相浄化体について実施した。結果を表4に示す。
Figure 0004821168
比較例1
参考例1の実験において、ブランクとして気相浄化体をデシケーターに入れずに、試験を行い、メタノールの残存率を参考例1に準じて評価した。結果を表5に示す。
比較例2〜8
(P−1)の代わりに表3に示す(C−1)〜(C−7)を用いた以外は、参考例1と同様に気相浄化体を調製し、各測定を行なった。結果を表5に示す。
参考例23〜26
参考例6、7、11、15と同様の試験において、気相浄化体を作製する際に、24時間乾燥する代わりに同様の方法で20時間乾燥後、4時間真空乾燥を行い、水分含有率を低下させた気相浄化体を調製し、各測定を行なった。結果を表5に示す。
Figure 0004821168

Claims (7)

  1. 気相中の物質を捕捉して該捕捉した物質を酵素分解する気相浄化体であって、
    酵素と、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及びアルキル(メタ)アクリレートの3元共重合体である、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体と、水とを含み、該重合体に該酵素が分散した固化形態を有する気相浄化体。
  2. 酵素の含有割合が0.0001〜5質量%、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体の含有割合が30〜98質量%及び水の含有割合が1.9999〜20質量%である請求項1記載の気相浄化体。
  3. 酵素が、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルコールオキシターゼ、カーボンモノオキサイドデヒドロゲナーゼ及びフォーメートデヒドロゲナーゼから成る群より選ばれる1種又は2種以上のアルコール分解酵素である請求項1又は2記載の気相浄化体。
  4. 糖類、多価アルコール類及びポリアルキレングリコール類の少なくとも1種を更に含む請求項1〜のいずれか1項記載の気相浄化体。
  5. 形態が厚さ0.01〜5000μmのフィルムである請求項1〜のいずれか1項記載の気相浄化体。
  6. 請求項1〜のいずれか1項記載の気相浄化体を、気相と接するように基体に設けた気相浄化ユニット。
  7. 請求項記載の気相浄化ユニットを気相と接触させることを特徴とする気相浄化方法。
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