JP2004222845A - 空気浄化フィルタ - Google Patents
空気浄化フィルタ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004222845A JP2004222845A JP2003012288A JP2003012288A JP2004222845A JP 2004222845 A JP2004222845 A JP 2004222845A JP 2003012288 A JP2003012288 A JP 2003012288A JP 2003012288 A JP2003012288 A JP 2003012288A JP 2004222845 A JP2004222845 A JP 2004222845A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- filter
- enzyme
- formaldehyde
- glutathione
- present
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)
- Air Filters, Heat-Exchange Apparatuses, And Housings Of Air-Conditioning Units (AREA)
Abstract
【課題】空気汚染の対処、特にホルムアルデヒドの浄化方法を提供する。
【解決手段】本発明は、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を使用することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明は、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を使用することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は空気汚染の対処、特にホルムアルデヒドの浄化方法およびそのためのフィルタに関する。
昨今の室内における化学物質による空気汚染は、住宅でのシックハウス症候群のみならず、幼児や学童が長期滞在する学校あるいはオフィスにおいても精神・心理面としての情動系にも大きな影響を与え、また知的生産性に大きな影響を及ぼすことも多いと考えられ、深刻化している。シックハウス症候群とは、新築・改築後の建物に入ると、目がチカチカしたり、喉や頭が痛くなったり、アレルギー症状や吐き気、湿疹などの症状を呈する状態である。シックハウス症候群はホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等に起因すると考えられ、なかでもホルムアルデヒドは、慢性的なアレルギー症状への影響などが報告されている。
【0002】
【従来の技術】
そこで、ホルムアルデヒドを除去するためのフィルタとして、種々の方式の空気浄化フィルタが開発されている。
ホルムアルデヒドを吸着により除去するタイプのものは、連続使用の際にフィルタから吸着ホルムアルデヒドが脱離するおそれがあり、また長期間の使用によりホルムアルデヒド吸着能が低下することがある。酸化チタン光触媒等を利用する触媒タイプのものは、熱や光エネルギーを必要とし、付加的な装置や工程を要する。
【0003】
酵素を利用するタイプのものとして、特開2001−340436(特許文献1)にはホルムアルデヒド酸化還元不均化酵素EC1.2.99.4を用いたホルムアルデヒド除去フィルタが記載されている。しかし、ここに使用される酵素は反応副産物として、揮発性の高いギ酸とメタノールを生じさせる(反応式1)。
【式1】
反応式1
2HCHO + H2O → HCOOH + CH3OH
室内では、タバコ臭や料理、スプレー等により他のアルデヒド類であるアセトアルデヒドやアルコールが同時に存在することが多い。臭気物質であるアセトアルデヒドは、上記酵素により酢酸とエタノールという別の臭気物質を発生せしめる(反応式2):
【式2】
反応式2
2CH3CHO + H2O → CH3COOH + C2H5OH
【0004】
よって、上記酵素を空気浄化フィルタとして使用するにはこれら臭気物質を除去するための付加的な装置や工程が必要になると考えられる。また、特開平6−303981(特許文献2)にはグルタチオン非依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素およびそれをコードするDNA配列が記載されている。しかし、この酵素も反応副産物としてギ酸を生じさせる。よって、この酵素を空気浄化に用いたとしても、臭気物質であるギ酸を除去するための付加的な装置や工程が必要になる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−340436号公報
【特許文献2】
特開平6−303981号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通り、臭気物質であるホルムアルデヒドを除去するために、分解酵素を利用するフィルタは知られているものの、除去過程においてギ酸またはメタノール等の臭気物質がさらに発生することは、室内の空気清浄の解決手段としてはまったく不向きである。簡便かつ安全に利用できるより実用的なタイプのフィルタがなお求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、環境中のアルデヒド類を効率的に除去するため、従来の分解手段ではなく、不揮発化する手段を用いるという新たな発想に基づく。本発明によれば、ギ酸やメタノールなどの臭気物質が発生しない。
【0008】
即ち、本発明は、
(1) 臭気物質を反応副産物として生成させない、アルデヒド類を基質とする酵素を固定化したアルデヒド類浄化フィルタ;具体的には、
(2) グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を固定化した臭気物質を発生させないホルムアルデヒド浄化フィルタ;好ましくは、
(3) グルタチオンおよびNAD+を含有するフィルタ;および
(4) 臭気物質として酸またはアルコールを発生させないフィルタ;ならびに
(5) 本発明のフィルタを含む空気調和機、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
1)フィルタ
本発明は、臭気物質を反応副産物として生成させないアルデヒド類を基質とする酵素、を固定化したアルデヒド類浄化フィルタに関する。
アルデヒド類浄化フィルタにおける「アルデヒド類」とは、アルデヒド基を有する化合物、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノナナール等である。
【0010】
本発明に用いられるアルデヒド類を基質とする酵素は、臭気物質を副生しない酵素であれば特に制限されず、特にグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)が好適に用いられる。
本発明において「臭気物質」とは、酸またはアルコール、特にギ酸、メタノール、エタノール等である。
【0011】
特に酵素としてグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)を用いることにより、ホルムアルデヒドはグルタチオンに抱合され、S−ホルミルグルタチオンとなり不揮発化する(反応式3):
【式3】
反応式3
HCHO + グルタチオン + NAD+ → S−ホルミルグルタチオン + NADH + H+
よって、本発明では、従来技術にあるようなホルムアルデヒド酸化還元不均化酵素を用いる際に生じる酸またはアルコール等の臭気物質、例えばギ酸やメタノールを副生しない。
【0012】
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)は例えば、Biochemistry 31:475−482(1992)に記載されており、当業界にて周知の遺伝子組換え手法を用いたタンパク質合成法により合成することができる。
【0013】
本発明に用いられるフィルタは空気調和機のエアフィルタに使用される不織布であり、例えばアクリル繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリスチレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の繊維、あるいはセラミック、有機高分子を発泡などにより多孔性に加工した膜等が挙げられる。
【0014】
アルデヒド類を基質とする酵素のフィルタへの固定化は一般には、フィルタ繊維に物理的に吸着させる方法、化学修飾を用いる方法、バインダーを用いる方法、等である。
【0015】
本発明のフィルタは、上記酵素固定化フィルタをそのまま用いることができる。あるいは、該フィルタをフィルタユニットの一部材の構成品として用いることもできる。このような、フィルタをフィルタユニットの一部材の構成品として用いて製されるフィルタユニットも本発明の範囲内にある。例えば、光触媒や物理吸着剤、化学吸着剤を用いてエアフィルタと貼り合わせて使用する場合が挙げられる。
【0016】
本発明のフィルタ形状は、ハニカム形状、網状、布状、またはペレット状に加工しこれを封止したもの(例えば袋に入れそのままフィルタとする)等とすることができる。
【0017】
本発明は他の態様として、補酵素、グルタチオンおよび水の中から選ばれる少なくとも1つを供給する手段を備えている、臭気物質を反応副産物として生成させない、アルデヒド類を基質とする酵素を固定化したアルデヒド類浄化フィルタに関する。ここに、補酵素は使用する「アルデヒド類を基質とする酵素」に応じて変動し、例えばNADP+、FAD+などである。
アルデヒド類を基質とする酵素がグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)である場合、補酵素はNAD+である。
水は酵素の活性発現に必要であり、フィルタへの固定化の方法によっては水の供給が必要となる。酵素を固定化する担体自体に空気中の水分を捕集させる場合(担体:活性炭)や外部から供給する場合がある。
【0018】
補酵素、グルタチオン、水は、アルデヒド類を基質とする酵素が固定化されているフィルタ上に担持させてもよく、あるいは別の供給手段により供給してもよい。供給には、酵素反応に必要な水の揮発による不足や、さらなる酵素反応に必要な成分を補充する意味がある。空気を取り入れる際に利用するファンの特性やフィルタ内での基質ガスの分圧に分布があるため、フィルタ中心やフィルタ表面において反応が多くなるためにフィルタ内での成分分布に偏りが生じる。別の供給手段はこの成分分布の偏りを解消するためのものであり、例えば噴霧などにより適時供給し酵素反応を最適化すること、さらに具体的には通風時間を計時して定期的に適量噴霧するなどが挙げられる。
別の供給手段の好ましい例は、別のフィルタ上に各成分を担持させ、酵素固定化フィルタと隣接させてフィルタユニットを構成させる手段である。ここに使用するフィルタおよび固定化方法は、上記の酵素の場合と同様である。
【0019】
2)空気調和機
本発明はまた、本発明のフィルタを一部の構成部材とした空気調和機を提供する。空気調和機とは室内の温湿度・気流・バクテリア・じんあい・臭気・有毒ガスなどの条件を室内の人間あるいは物品に対し最もよい条件に保つ装置の総称である。一般にいうエアコンのほか、空気清浄機、換気装置等も含む。
【0020】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0021】
参考例
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)の作成
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)は遺伝子組換え手法を用いて作成した。すなわち、既に報告されている大腸菌のFDH:EC 1.2.1.1遺伝子配列(GenBank Accession number:D38504)のうちFDH:EC 1.2.1.1タンパク質がコードされている領域のみをPCR法を用いて選択的に増幅することにより大腸菌由来FDH遺伝子を入手した。増幅後の遺伝子をタンパク質発現用ベクター(pQE:キアゲン社)に組み込むことにより、FDH:EC 1.2.1.1発現ベクターを作成した。このベクターを大腸菌(JM109)に導入し、FDH:EC 1.2.1.1大量産生株を作成した。FDH:EC 1.2.1.1大量産生株をLB培地にて37℃、一晩振とう培養し、集菌後、菌体を凍結融解で破砕した。大量に発現しているFDH:EC 1.2.1.1酵素をNiキレートカラムを用いて精製することにより、4U/mLの活性を持つグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)を得た。活性測定はJ. Biochem., 85, 1165(1979)に準じて行った。
【0022】
実施例1
フィルターカラムの作成
Methylobacillus glycogens JCM2865をメタノール添加MG倍地で60rpm、30℃で振とう培養した。遠心分離法により菌体を集め、凍結後ホモジナイザーで粉砕し、再融解後の上清を凍結乾燥したものをグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)粗抽出物とした。
酵素抽出物10mg、NAD+25mg、グルタチオン40mgを50mMリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解したものを酵素液とする。酵素液をセルロース混合エステルろ紙に滴下し、湿った状態のろ紙を円筒状に巻き込みステンレス製円筒カラムに挿入し、フィルターカラムを作成した。
【0023】
試験例1
ホルムアルデヒドガス浄化試験
圧縮空気ラインから、フィルターカラム加湿用の蒸留水バブリング槽とホルムアルデヒド水溶液バブリング槽を並列に繋ぎ、それぞれをマスフロートコントローラーで制御し、その先に実施例1にて調製したフィルターカラムを配置した。フィルターカラムから排出されるホルムアルデヒド濃度はマルチガスモニターで検出した。空のブランクカラムを配置した場合、空気流量を蒸留水側2L/分、ホルムアルデヒド水溶液側5mL/分でホルムアルデヒド濃度5ppmが安定して検出された。ブランクカラムの代わりに、フィルターカラムからグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)のみ除いたバッファカラムを配置した場合、排出したホルムアルデヒドガス濃度は一過性に低下するが、その後直線的に増加し、約16時間で元の5ppmの値になった。フィルターカラムを配置すると30時間経過後も約2ppmの濃度を維持し、フィルターカラムのホルムアルデヒドガス浄化作用が示された。
【0024】
【発明の効果】
本発明のフィルタはホルムアルデヒド浄化カラム実験において、フィルタ通過後のホルムアルデヒドガス濃度を減少することが確認された。
これにより、本発明は空気汚染の対処、特にホルムアルデヒドの浄化方法に有用であることが証明された。
【発明の属する技術分野】
本発明は空気汚染の対処、特にホルムアルデヒドの浄化方法およびそのためのフィルタに関する。
昨今の室内における化学物質による空気汚染は、住宅でのシックハウス症候群のみならず、幼児や学童が長期滞在する学校あるいはオフィスにおいても精神・心理面としての情動系にも大きな影響を与え、また知的生産性に大きな影響を及ぼすことも多いと考えられ、深刻化している。シックハウス症候群とは、新築・改築後の建物に入ると、目がチカチカしたり、喉や頭が痛くなったり、アレルギー症状や吐き気、湿疹などの症状を呈する状態である。シックハウス症候群はホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等に起因すると考えられ、なかでもホルムアルデヒドは、慢性的なアレルギー症状への影響などが報告されている。
【0002】
【従来の技術】
そこで、ホルムアルデヒドを除去するためのフィルタとして、種々の方式の空気浄化フィルタが開発されている。
ホルムアルデヒドを吸着により除去するタイプのものは、連続使用の際にフィルタから吸着ホルムアルデヒドが脱離するおそれがあり、また長期間の使用によりホルムアルデヒド吸着能が低下することがある。酸化チタン光触媒等を利用する触媒タイプのものは、熱や光エネルギーを必要とし、付加的な装置や工程を要する。
【0003】
酵素を利用するタイプのものとして、特開2001−340436(特許文献1)にはホルムアルデヒド酸化還元不均化酵素EC1.2.99.4を用いたホルムアルデヒド除去フィルタが記載されている。しかし、ここに使用される酵素は反応副産物として、揮発性の高いギ酸とメタノールを生じさせる(反応式1)。
【式1】
反応式1
2HCHO + H2O → HCOOH + CH3OH
室内では、タバコ臭や料理、スプレー等により他のアルデヒド類であるアセトアルデヒドやアルコールが同時に存在することが多い。臭気物質であるアセトアルデヒドは、上記酵素により酢酸とエタノールという別の臭気物質を発生せしめる(反応式2):
【式2】
反応式2
2CH3CHO + H2O → CH3COOH + C2H5OH
【0004】
よって、上記酵素を空気浄化フィルタとして使用するにはこれら臭気物質を除去するための付加的な装置や工程が必要になると考えられる。また、特開平6−303981(特許文献2)にはグルタチオン非依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素およびそれをコードするDNA配列が記載されている。しかし、この酵素も反応副産物としてギ酸を生じさせる。よって、この酵素を空気浄化に用いたとしても、臭気物質であるギ酸を除去するための付加的な装置や工程が必要になる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−340436号公報
【特許文献2】
特開平6−303981号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の通り、臭気物質であるホルムアルデヒドを除去するために、分解酵素を利用するフィルタは知られているものの、除去過程においてギ酸またはメタノール等の臭気物質がさらに発生することは、室内の空気清浄の解決手段としてはまったく不向きである。簡便かつ安全に利用できるより実用的なタイプのフィルタがなお求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、環境中のアルデヒド類を効率的に除去するため、従来の分解手段ではなく、不揮発化する手段を用いるという新たな発想に基づく。本発明によれば、ギ酸やメタノールなどの臭気物質が発生しない。
【0008】
即ち、本発明は、
(1) 臭気物質を反応副産物として生成させない、アルデヒド類を基質とする酵素を固定化したアルデヒド類浄化フィルタ;具体的には、
(2) グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を固定化した臭気物質を発生させないホルムアルデヒド浄化フィルタ;好ましくは、
(3) グルタチオンおよびNAD+を含有するフィルタ;および
(4) 臭気物質として酸またはアルコールを発生させないフィルタ;ならびに
(5) 本発明のフィルタを含む空気調和機、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
1)フィルタ
本発明は、臭気物質を反応副産物として生成させないアルデヒド類を基質とする酵素、を固定化したアルデヒド類浄化フィルタに関する。
アルデヒド類浄化フィルタにおける「アルデヒド類」とは、アルデヒド基を有する化合物、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノナナール等である。
【0010】
本発明に用いられるアルデヒド類を基質とする酵素は、臭気物質を副生しない酵素であれば特に制限されず、特にグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)が好適に用いられる。
本発明において「臭気物質」とは、酸またはアルコール、特にギ酸、メタノール、エタノール等である。
【0011】
特に酵素としてグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)を用いることにより、ホルムアルデヒドはグルタチオンに抱合され、S−ホルミルグルタチオンとなり不揮発化する(反応式3):
【式3】
反応式3
HCHO + グルタチオン + NAD+ → S−ホルミルグルタチオン + NADH + H+
よって、本発明では、従来技術にあるようなホルムアルデヒド酸化還元不均化酵素を用いる際に生じる酸またはアルコール等の臭気物質、例えばギ酸やメタノールを副生しない。
【0012】
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)は例えば、Biochemistry 31:475−482(1992)に記載されており、当業界にて周知の遺伝子組換え手法を用いたタンパク質合成法により合成することができる。
【0013】
本発明に用いられるフィルタは空気調和機のエアフィルタに使用される不織布であり、例えばアクリル繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリスチレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の繊維、あるいはセラミック、有機高分子を発泡などにより多孔性に加工した膜等が挙げられる。
【0014】
アルデヒド類を基質とする酵素のフィルタへの固定化は一般には、フィルタ繊維に物理的に吸着させる方法、化学修飾を用いる方法、バインダーを用いる方法、等である。
【0015】
本発明のフィルタは、上記酵素固定化フィルタをそのまま用いることができる。あるいは、該フィルタをフィルタユニットの一部材の構成品として用いることもできる。このような、フィルタをフィルタユニットの一部材の構成品として用いて製されるフィルタユニットも本発明の範囲内にある。例えば、光触媒や物理吸着剤、化学吸着剤を用いてエアフィルタと貼り合わせて使用する場合が挙げられる。
【0016】
本発明のフィルタ形状は、ハニカム形状、網状、布状、またはペレット状に加工しこれを封止したもの(例えば袋に入れそのままフィルタとする)等とすることができる。
【0017】
本発明は他の態様として、補酵素、グルタチオンおよび水の中から選ばれる少なくとも1つを供給する手段を備えている、臭気物質を反応副産物として生成させない、アルデヒド類を基質とする酵素を固定化したアルデヒド類浄化フィルタに関する。ここに、補酵素は使用する「アルデヒド類を基質とする酵素」に応じて変動し、例えばNADP+、FAD+などである。
アルデヒド類を基質とする酵素がグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)である場合、補酵素はNAD+である。
水は酵素の活性発現に必要であり、フィルタへの固定化の方法によっては水の供給が必要となる。酵素を固定化する担体自体に空気中の水分を捕集させる場合(担体:活性炭)や外部から供給する場合がある。
【0018】
補酵素、グルタチオン、水は、アルデヒド類を基質とする酵素が固定化されているフィルタ上に担持させてもよく、あるいは別の供給手段により供給してもよい。供給には、酵素反応に必要な水の揮発による不足や、さらなる酵素反応に必要な成分を補充する意味がある。空気を取り入れる際に利用するファンの特性やフィルタ内での基質ガスの分圧に分布があるため、フィルタ中心やフィルタ表面において反応が多くなるためにフィルタ内での成分分布に偏りが生じる。別の供給手段はこの成分分布の偏りを解消するためのものであり、例えば噴霧などにより適時供給し酵素反応を最適化すること、さらに具体的には通風時間を計時して定期的に適量噴霧するなどが挙げられる。
別の供給手段の好ましい例は、別のフィルタ上に各成分を担持させ、酵素固定化フィルタと隣接させてフィルタユニットを構成させる手段である。ここに使用するフィルタおよび固定化方法は、上記の酵素の場合と同様である。
【0019】
2)空気調和機
本発明はまた、本発明のフィルタを一部の構成部材とした空気調和機を提供する。空気調和機とは室内の温湿度・気流・バクテリア・じんあい・臭気・有毒ガスなどの条件を室内の人間あるいは物品に対し最もよい条件に保つ装置の総称である。一般にいうエアコンのほか、空気清浄機、換気装置等も含む。
【0020】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0021】
参考例
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)の作成
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)は遺伝子組換え手法を用いて作成した。すなわち、既に報告されている大腸菌のFDH:EC 1.2.1.1遺伝子配列(GenBank Accession number:D38504)のうちFDH:EC 1.2.1.1タンパク質がコードされている領域のみをPCR法を用いて選択的に増幅することにより大腸菌由来FDH遺伝子を入手した。増幅後の遺伝子をタンパク質発現用ベクター(pQE:キアゲン社)に組み込むことにより、FDH:EC 1.2.1.1発現ベクターを作成した。このベクターを大腸菌(JM109)に導入し、FDH:EC 1.2.1.1大量産生株を作成した。FDH:EC 1.2.1.1大量産生株をLB培地にて37℃、一晩振とう培養し、集菌後、菌体を凍結融解で破砕した。大量に発現しているFDH:EC 1.2.1.1酵素をNiキレートカラムを用いて精製することにより、4U/mLの活性を持つグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)を得た。活性測定はJ. Biochem., 85, 1165(1979)に準じて行った。
【0022】
実施例1
フィルターカラムの作成
Methylobacillus glycogens JCM2865をメタノール添加MG倍地で60rpm、30℃で振とう培養した。遠心分離法により菌体を集め、凍結後ホモジナイザーで粉砕し、再融解後の上清を凍結乾燥したものをグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)粗抽出物とした。
酵素抽出物10mg、NAD+25mg、グルタチオン40mgを50mMリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解したものを酵素液とする。酵素液をセルロース混合エステルろ紙に滴下し、湿った状態のろ紙を円筒状に巻き込みステンレス製円筒カラムに挿入し、フィルターカラムを作成した。
【0023】
試験例1
ホルムアルデヒドガス浄化試験
圧縮空気ラインから、フィルターカラム加湿用の蒸留水バブリング槽とホルムアルデヒド水溶液バブリング槽を並列に繋ぎ、それぞれをマスフロートコントローラーで制御し、その先に実施例1にて調製したフィルターカラムを配置した。フィルターカラムから排出されるホルムアルデヒド濃度はマルチガスモニターで検出した。空のブランクカラムを配置した場合、空気流量を蒸留水側2L/分、ホルムアルデヒド水溶液側5mL/分でホルムアルデヒド濃度5ppmが安定して検出された。ブランクカラムの代わりに、フィルターカラムからグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(FDH:EC 1.2.1.1)のみ除いたバッファカラムを配置した場合、排出したホルムアルデヒドガス濃度は一過性に低下するが、その後直線的に増加し、約16時間で元の5ppmの値になった。フィルターカラムを配置すると30時間経過後も約2ppmの濃度を維持し、フィルターカラムのホルムアルデヒドガス浄化作用が示された。
【0024】
【発明の効果】
本発明のフィルタはホルムアルデヒド浄化カラム実験において、フィルタ通過後のホルムアルデヒドガス濃度を減少することが確認された。
これにより、本発明は空気汚染の対処、特にホルムアルデヒドの浄化方法に有用であることが証明された。
Claims (6)
- 臭気物質を反応副産物として生成させない、アルデヒド類を基質とする酵素を固定化したアルデヒド類浄化フィルタ。
- 臭気物質が酸またはアルコールである、請求項1記載のフィルタ。
- アルデヒド類を基質とする酵素がグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素である、請求項1または2記載のフィルタ。
- 補酵素、グルタチオンおよび水の中から選ばれる少なくとも1つを供給する手段を備えている、請求項1から3までのいずれか記載のフィルタ。
- 補酵素、グルタチオンおよび水の中から選ばれる少なくとも1つが共に固定化されている請求項1から3までのいずれか記載のフィルタ。
- 請求項1から4までのいずれか記載のフィルタを含む空気調和機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003012288A JP2004222845A (ja) | 2003-01-21 | 2003-01-21 | 空気浄化フィルタ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003012288A JP2004222845A (ja) | 2003-01-21 | 2003-01-21 | 空気浄化フィルタ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004222845A true JP2004222845A (ja) | 2004-08-12 |
Family
ID=32900946
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003012288A Pending JP2004222845A (ja) | 2003-01-21 | 2003-01-21 | 空気浄化フィルタ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004222845A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006305401A (ja) * | 2005-04-26 | 2006-11-09 | Nof Corp | 気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法 |
WO2009133990A1 (en) | 2008-04-30 | 2009-11-05 | Lg Electronics Inc. | Air cleaning filter comprising formaldehyde dehydrogenase and process for producing the same |
-
2003
- 2003-01-21 JP JP2003012288A patent/JP2004222845A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006305401A (ja) * | 2005-04-26 | 2006-11-09 | Nof Corp | 気相浄化体、気相浄化ユニット及び気相浄化方法 |
WO2009133990A1 (en) | 2008-04-30 | 2009-11-05 | Lg Electronics Inc. | Air cleaning filter comprising formaldehyde dehydrogenase and process for producing the same |
US8323940B2 (en) | 2008-04-30 | 2012-12-04 | Lg Electronics Inc. | Air cleaning filter comprising formaldehyde dehydrogenase and process for producing the same |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Shao et al. | Biotechnology progress for removal of indoor gaseous formaldehyde | |
Malhautier et al. | Biofiltration of volatile organic compounds | |
Kumar et al. | Biofiltration of volatile organic compounds (VOCs): an overview | |
Sheoran et al. | Air pollutants removal using biofiltration technique: a challenge at the frontiers of sustainable environment | |
Estévez et al. | Biofiltration of waste gases with the fungi Exophiala oligosperma and Paecilomyces variotii | |
CN105518147B (zh) | 有机物质的制造装置及有机物质的制造方法 | |
Baltrėnas et al. | Investigation into the air treatment efficiency of biofilters of different structures | |
Cheng et al. | An innovative nutritional slow-release packing material with functional microorganisms for biofiltration: Characterization and performance evaluation | |
Gallastegui et al. | Comparative response of two organic biofilters treating ethylbenzene and toluene after prolonged exposure | |
JP4374595B2 (ja) | ホルムアルデヒド除去剤及び除去方法 | |
Li et al. | Biological technologies for the removal of sulfur containing compounds from waste streams: bioreactors and microbial characteristics | |
Rene et al. | Steady‐and transient‐state operation of a two‐stage bioreactor for the treatment of a gaseous mixture of hydrogen sulphide, methanol and α‐pinene | |
KR101744343B1 (ko) | 공기정화 필터용 금속착물형 고분자막 및 이의 제조방법 | |
EP2767585A1 (en) | Microbiological method of H2S removal from biogas | |
Li et al. | Efficient bio-deodorization of thioanisole by a novel bacterium Brevibacillus borstelensis GIGAN1 immobilized onto different parking materials in twin biotrickling filter | |
Xu et al. | Formaldehyde removal from air by a biodegradation system | |
Khalifa et al. | Phytoremediation of indoor formaldehyde by plants and plant material | |
WO2018220511A1 (en) | A filtering apparatus and method for treating polluted air in indoor spaces | |
Kumar et al. | Comparative Study on Conventional and Microalgae-based Air Purifiers: Paving the Way for Sustainable Green Spaces | |
JP2004222845A (ja) | 空気浄化フィルタ | |
Moe et al. | Biofilter treatment of volatile organic compound emissions from reformulated paint: complex mixtures, intermittent operation, and startup | |
JP4806108B2 (ja) | 脱臭デバイス | |
Sun et al. | Cyclohexane removal and UV post-control of bioaerosols in a combination of UV pretreatment and biotrickling filtration | |
Hu et al. | Preparation and Application of Plant Active Calcium Alginate Gel for Deep Purification of Formaldehyde in Air | |
KR200425346Y1 (ko) | 막힘방지용 복합 악취 포집기 |