JP4372331B2 - シリカ微粉の表面改質法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカ微粉のシランカップリング剤による表面改質法に関するものである。本発明によって得られたシリカ微粉は、例えば半導体装置の封止用樹脂の充填剤として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリカ粒子表面をシランカップリング剤で処理する方法として、乾式法、湿式法、インテグラルブレンド法が知られている。乾式法は、ヘンシェルミキサーのような高速攪拌可能な装置にシリカ粉末を仕込み、攪拌下、シランカップリング剤あるいはシランカップリング剤の部分加水分解液を噴霧し、その後、必要に応じて熱処理する方法である。乾式法は、大量のシリカ粉末を短時間で処理でき、しかも多量の熱を必要としない利点があるが、均一処理が難しいという問題がある。
【0003】
湿式法は、加水分解性溶媒(たとえば、水、アルコール又はこれらの混合溶媒)にシランカップリング剤が溶解された溶液中でシリカ粉末を処理する方法である。湿式法は、シリカ粒子の分散が比較的良好であることから、均一処理が可能であるが、処理後の乾燥時に凝集が起こってしまうことや、多量の熱を必要とすることが欠点である。
【0004】
インテグラルブレンド法は、マトリックス(たとえば、液状エポキシ樹脂)と、シリカ粉末と、シランカップリング剤とを一度に混合し処理する方法である。この方法は、一段階で処理することができるため、工業的にしばしば利用されているが、均一処理の困難さにおいて乾式法と同様な問題がある。
【0005】
以上のように、従来の処理方法には一長一短があり、工業的規模かつ均一処理という点で不満足なものであった。しかも、これらの方法は、平均粒径が5μm超の比較的粒子の大きなシリカ粉末に適合したが、5μm以下のシリカ微粉では、一旦凝集すると再び分散させることが非常に難しいので処理効率が悪く、その改善が要求されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、平均粒径5μm以下のシリカ微粉のシランカップリング剤による処理を、工業的規模で均一に行うことができる表面改質法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、平均粒径0.3〜5μm以下のシリカ微粉にシランカップリング剤を気流中で噴霧する場のシリカ粉塵濃度が0.1〜25g/m であることを特徴とするシリカ微粉の表面改質法である。とくに、シランカップリング剤を気流中で噴霧する場が、シリカ微粉を製造してから捕集するまでの工程にあることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0009】
本発明でにおいて表面処理の対象となるシリカ微粉は、平均粒径5μm以下のものであり、とくに球状シリカであることが好ましい。このような球状シリカ微粉は、シリコン粒子を火炎中に投じて酸化反応させながら球状化する方法、シリコン粒子スラリーを火炎中に噴霧して酸化反応させながら球状化する方法、シリカ粉末を高温火炎中で溶融又は軟化する方法、などによって製造することができる。これらは、所望する平均粒径の大きさに応じて選択される。平均粒径が1μm程度又はそれ以下のものは前2者によって、また平均粒径が比較的大きなものは後者によって製造することが好ましい。
【0010】
本発明は、平均粒径5μm以下のシリカ微粉をシランカップリング剤で処理する際、シリカ微粉を気流中に浮遊させると共に、シランカップリング剤を噴霧する場のシリカ粉塵濃度を0.1〜100g/m3 、好ましくは1〜40g/m3 とするものである。シリカ粉塵濃度が0.1g/m3 よりも著しく低いと、処理効率が悪くなり、また100g/m3 よりも高くなると、所望の処理効果を得るためのシランカップリング剤濃度を高くする必要があるため、シリカ微粉が凝集し処理効率が低下する。
【0011】
本発明において、シランカップリング剤の気流中への供給を噴霧によって行う理由は、これを例えば滴下法で行うと凝集粒子が多く発生することによる。シランカップリング剤を気流中で噴霧する場は、連続的に形成することが望ましく、またその気流温度は120〜300℃であることが好ましい。気流成分としては、空気、窒素等が望ましい。
【0012】
本発明において、シランカップリング剤を噴霧する場は、気流中かつ連続的に行い、しかもシリカ微粉の製造から捕集に至る一貫した工程で行うことが好都合となる。そこで、本発明においては、製造炉から排出されたシリカ微粉をブロワーで浮遊させながら捕集工程に導き、そこで所望粒子を分級・取得する際に、気流温度が120〜300℃となっている任意の箇所から、シランカップリング剤を噴霧することが望ましい。これによって、一度捕集したものを別ラインで再浮遊させる必要がなくなるので、二次凝集の発生を著しく阻止することができ、工業的規模で均一処理を行うことが可能となる。
【0013】
本発明で使用されるシランカップリング剤としては、従来の公知のものが制限なく使用される。たとえば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げらる。これらシランカップリング剤の添加量はシリカ微粉の表面を被覆するのに必要な量あればよい。一般に、シリカ微粉100質量部に対して0.1〜15質量部の範囲で使用される。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例、比較例をあげて更に説明する。
【0015】
本実施例で用いた装置は、二流体ノズル(アトマックス社製。周囲からLPG−酸素ガスの燃焼用ガスが、また中心部からスラリーがそれぞれ噴射される構造のもの)が塔頂に設置されたシリカ製造炉と、この製造炉に直列に接続された捕集装置(サイクロン、バグフィルター)とから構成されており、シリカ微粉が浮遊状態でブロワーで空気輸送されるように接続されている。シランカップリング剤の噴霧は、輸送された空気流の温度が約250℃となった配管部で行った。
【0016】
実施例1
金属シリコン粉末(平均粒径10.5μm)100質量部と水100質量部とを混合して水系スラリーを調合(固形分濃度50%)し、二流体ノズルの中心部から火炎中(温度約1900℃)に9kg/時間の速度で噴射した。この条件によって、平均粒径0.3μmのシリカ微粉が捕集系で取得できること、またシランカップリング剤が噴霧される場(空気流の温度が約250℃たなる配管部)における球状シリカ微粉の粉塵濃度が5g/m3 となることを別途確認している。
【0017】
得られた球状シリカ微粉を浮遊させ、捕集系に空気輸送する間の温度約250の配管部において、シランカップリング剤(信越化学工業社製γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403」)を噴霧した。シランカップリング剤は、水100質量部に20質量部を混合したものを用い、それを球状シリカ微粉100質量部あたりシランカップリング剤として5質量部の割合で噴霧した。その後、捕集系に空気輸送されるまでの間で加熱乾燥を施して球状シリカ微粉を回収した。
【0018】
実施例2
スラリーの噴射量を高め、シランカップリング剤を処理する場の球状シリカ微粉の粉塵濃度を25g/m3 としたこと以外は、実施例1に準じて表面改質された球状シリカ微粉を捕集した。
【0019】
実施例3
水系スラリーの固形分濃度15%の水系スラリーを用いたこと以外は、実施例1に準じて表面改質された球状シリカ微粉を捕集した。この変更によって、シランカップリング剤が噴霧される場の球状シリカ微粉の粉塵濃度が1g/m3 となる。
【0020】
実施例4
シランカップリング剤を施す場を温度200℃となる配管部に変更し、またシランカップリング剤をγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE−903」)に変えたこと以外は、実施例1に準じて表面改質された球状シリカ微粉を捕集した。
【0021】
比較例1
実施例1において、シランカップリング剤処理を施さずに球状シリカ微粉を捕集し、それを冷却してからポリエチレン袋でシランカップリング剤溶液と20分間混合し、その後120℃で約2時間、加熱乾燥を行ったこと以外は、実施例1に準じて表面改質された球状シリカ微粉を製造した。
【0022】
比較例2
実施例1において、シランカップリング剤処理を施さずに球状シリカ微粉を捕集し、それを冷却してからプロシェアミキサー(太平洋機工社製)で攪拌しながら、シランカップリング剤溶液を噴霧して20分間混合し、その後120℃で約2時間、加熱乾燥を行ったこと以外は、実施例1に準じて表面改質された球状シリカ微粉を製造した。
【0023】
比較例3
シランカップリング剤をγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE−903」)に変えたこと以外は、比較例2と同様にして表面改質された球状シリカ微粉を製造した。
【0024】
比較例4
シランカップリング剤処理を施さずに捕集された比較例1の球状シリカ微粉500g、トルエンを3000g、比較例1のシランカップリング剤25gを配合してスラリーを調合し、攪拌機で30分間混合した後、平均粒径5mmのアルミナボールの充填された5リットルのポットミルに入れ、温度25±5℃で2時間湿式解砕処理を行った。その後、トルエンを減圧下で蒸留除去した後、120℃で約2時間、加熱乾燥を行って表面改質された球状シリカ微粉を製造した。
【0025】
上記で製造された表面改質された球状シリカ微粉について、以下に従い、25μm上凝集量とカーボン量を測定した。それらの結果を表1に示す。
(1)25μm上凝集量
試料10〜20gをJIS篩(目開き25μm)で水篩した後、篩上に残留した凝集物を120℃で2時間乾燥し質量を測定した。
(2)カーボン量
試料0.1gを分取し、炭素/硫黄同時分析計「CS−444LS型」(LECO社製)により測定し、検量線法にて定量を行った。
【0026】
【表1】
Figure 0004372331
【0027】
表1に示すように、本発明の方法で表面処理された球状シリカ微粉は、実施例1〜4と比較例1〜3の対比から明らかなように、凝集量が極めて少ないうえに、カーボン量が十分に検出されていることから、シランカップリング剤による処理が均一かつ十分に行われていることがわかる。湿式処理を行った比較例4では、シランカップリング剤処理は十分に行えているが、凝集量が極めて多く、平均粒径5μm超のシリカ微粉の処理には不適切であった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のシリカ微粉の表面改質法によれば、平均粒径5μm以下のシリカ微粉のシランカップリング剤による処理を、工業的規模かつ均一に、行うことができる。

Claims (2)

  1. 平均粒径0.3〜5μmのシリカ微粉にシランカップリング剤を気流中で噴霧する場のシリカ粉塵濃度が、0.1〜25g/m であることを特徴とするシリカ微粉の表面改質法。
  2. シランカップリング剤を気流中で噴霧する場が、シリカ微粉を製造してから捕集するまでの工程にあることを特徴とする請求項1記載のシリカ微粉の表面改質法。
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