JP4370851B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Description

本発明は、特に大容量データの記録用として好適な高密度型の磁気記録媒体に関するものである。
磁気記録技術は、記録媒体が繰り返して使用可能であること、他の記録媒体に比較してランニングコストが安価であること等の利点を有しているので、ビデオ、オーディオ、コンピューター用途などを初めとして様々な分野で幅広く利用されている。
近年においては、特に機器の小型化、記録再生信号の高品位化、及び記録容量の増大等の要求に対応するために、磁気記録媒体を薄層化し、記録密度を向上させる様々な検討がなされている。
記録密度の向上に関しては、例えばビデオ信号の圧縮技術の進歩により、記録データの圧縮が一般的に行われるようになっているが、これと共に、データの圧縮率を比較的低く抑え高い信号品質を維持した、いわゆる高品位のビデオ信号への要求が強まっている。
記録密度を向上させる方法としては、単位bit当たりの記録データ信号の長さを短くする短波長化と、書き込み幅を狭くする狭トラック化とが挙げられる。
例えば、ソニー社製1/2inchデジタルビデオのHDCAMフォーマットにおいては、トラック幅が約20μm、単位2bit当たりの記録データ信号の長さが約0.5μmである。またデータ転送レートはビデオネットで140Mbpsであるとされている。
上述したことを鑑みて、例えば、ビデオネットで300Mbps、あるいはそれ以上の転送レートを実現するためには、磁気記録媒体について大幅な高密度化を図ることは必須の課題であると言える。そのためには記録データ信号の大幅な短波長化、狭トラック化を図ることが必要であるが、一方において短波長化や狭トラック化は、記録データ信号の再生出力、及びS/Nの低下を招来するという問題を有している。
従来においては、転送レートの向上を図り、同時に良好な電磁変換特性を実現する高密度型の磁気記録媒体として、磁性層の膜厚と磁性層の磁束を規定したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、この従来提案されている技術によっては、未だ実用的な磁気記録再生システムにおいて高い適応性を有しているとは言えない。すなわち、磁気記録媒体に関して実用的な面から考えれば、記録電流と再生出力とのバランス、すなわち記録電流値の裕度、及び充分な再生出力を得るための最適記録電流を考慮しながら磁気記録媒体の特性を規定することは必須であると言えるが、下記特許文献1に開示されている技術によっては、未だ上記のような実用上の特性に関しての検討がなされていない。
特開平11−238225号公報
そこで本発明においては、上述したような従来技術の問題点に鑑み、磁気記録媒体に関して実用的な面から検討し、電磁変換特性が良好で、かつ安定したエラーレート特性を実現可能な、大容量型の磁気記録媒体を提供することとした。
本発明においては、非磁性支持体の一主面上に、無機粉末と結合剤とを含有する下層非磁性層と、強磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層とが形成されてなり、他の一主面上にバック層が形成された構成を有し、保磁力Hc〔kA/m〕とSFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)が、下記式(1)の関係を有し、磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕と、角形比Rs〔%〕とが、下記式(2)の関係を有し、全厚12μm以下である磁気記録媒体を提供する。
230≦Hc×(1+0.5×SFD)・・・(1)
2.2≦Hc/Rs≦2.6・・・(2)
本発明によれば、実用上充分な再生出力を得るための記録電流特性の向上が図られ、記録電流値を大きくすることなく、充分な再生出力が得られるようになる。
非磁性支持体上に非磁性層と磁性層とが積層形成されてなる、全厚12μm以下の磁気記録媒体において、磁性層の保磁力HcとSFDが、上記式(1)の関係を満たすようにしたことにより、記録電流vs再生出力特性カーブ、いわゆる記録電流カーブにおいて、良好なオーバーカレント特性が得られた。
また、磁性層2の保磁力Hcと角形比Rsにおいて、上記式(2)の関係を満たすようにしたことにより、記録電流値を大きくすることなく、充分な再生出力を得ることができ、実用上消費電力を低減化できた極めて有用な磁気記録媒体が得られた。
また、磁性層2の膜厚を0.15〜0.25μmとすることにより、安定したエラーレートのマージンが確保され、磁気記録装置のおける媒体走行時のサーボが安定して行うことができた。
以下、本発明の磁気記録媒体について具体的に説明するが、本発明は、以下に示す例に限定されるものではない。
図1に本発明の磁気記録媒体の一例の概略構成図を示す。
磁気記録媒体10は、非磁性支持体1の一主面上に非磁性層3を介して磁性層2が積層形成されてなり、非磁性支持体1の他の一主面にバック層4が形成された構成を有している。なお本発明の磁気記録媒体は、体積当たりの記録密度を高めるため、全厚dが12μm以下であるものとする。
本発明の磁気記録媒体は、磁性層2の保磁力Hc〔kA/m〕と、SFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)が、下記式(1)の関係を有し、磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕と、角形比Rs〔%〕とが、下記式(2)の関係を有している点に特徴を有している。
230≦Hc×(1+0.5×SFD)・・・(1)
2.2≦Hc/Rs≦2.6・・・(2)
ここで、上記SFDについて図を参照して説明する。
図2に磁性体の磁化曲線であるヒステリシス曲線を示した。
磁束密度(B)と磁場(H)との関係は、
B=μμH・・・(3)
で示される。
ここで、μは真空中での透磁率、μは媒体中での比透磁率である。磁束密度の磁場に係る微分係数は、上式から、
μ=(1/μ)×dB/dH・・・(4)
となり、このとき、μは微分透磁率と呼ばれる。
一方、ヒステリシス曲線に沿った微分曲線は図3に示すような極値をもったループとなる。
この極値に関る半値幅をΔHとすれば、SFDは、
SFD=ΔH/Hc・・・(5)
で定義される。
上記式(4)及び(5)は、微分曲線及びその極値における半値幅によって、透磁率とSFD、更に磁場とを関係づけており、実測容易なHc及びΔH、すなわちSFDから透磁率が把握される。該透磁率の媒体として磁性体粒子をとれば磁性体の組成、磁性体中の空隙等の結晶欠陥によるHc変動に磁性層に着目すれば更に層中の磁性体粒子の充填率、粒子数密度、分散度等の磁気条件を統括したHc変動に結び付けられ、SFDはHcの変動を示すパラメータと看做される。
磁気記録媒体における記録電流と再生出力との関係は、一般的に図4に示すような曲線に表される。
実用上、再生出力の最大値が得られる記録電流、いわゆる最適記録電流は消費電力低減の観点から低い方が望ましく、実用上充分な出力(例えば、最大出力値から1dB下がった範囲の出力値)が得られる記録電流の幅(図中c)は広い方が望ましい。
本発明においては、磁性層の物性に関して、Hc×(1+0.5×SFD)、及びHc/Rsとが、最適記録電流特性、記録電流特性と関連を有していることに着目し、これらの数値範囲を上記式(1)、(2)のように特定した。
次に、本発明の磁気記録媒体10を構成する各層について以下、詳細に説明する。
非磁性支持体1形成用の材料としては、従来公知の磁気記録媒体用の支持体として使用されているものをいずれも適用可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート、セルロースブチレート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド等のプラスチックの他、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、アルミナガラス等のセラミック等が挙げられる。
非磁性支持体1としてAl合金板やガラス板等の剛性を有する基板を使用した場合には、表面にアルマイト処理等の酸化被膜や、Ni−P被膜等を形成し、表面を硬化させてもよい。また、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理等の所定の表面処理を施してもよい。
次に、磁性層2について説明する。
磁性層2は、強磁性粉末と結合剤を主成分とし、研磨剤、潤滑剤、分散剤、帯電防止剤等の各種添加剤を加え、有機溶剤等を用いて従来公知の方法によって調整した磁性塗料を塗布することによって形成されてなるものとする。
磁性層2形成用の強磁性粉末としては、例えばFe系及びFe−Co系の強磁性金属粉末が好適である。これらは単独で用いてもよく、あるいは適宜組み合わせて用いてもよい。
結合剤としては、従来塗布型の磁気記録媒体用の結合剤として公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂をいずれも適用することができる。
結合剤の配合比は塗料化時の分散性、接着性、粘着性、走行耐久性の観点から、強磁性粉末100重合部に対して、5〜100重合部、さらには10〜30重合部が好適である。
結合剤が、5重量部よりも少ない場合は分散性、接着性、走行耐久性が損なわれ、100重量部を超えると粘着性、走行耐久性が損なわれるためである。
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸−塩化ビニル共重合体、メタクリル酸エステル−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテートブチレート、セルロースダイアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロセルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
上記結合剤を構成する分子には、非磁性顔料の分散性を向上させるため、−SO3M、−OSO3M、COOM、P=O(OM)2(但し、式中Mは水素原子あるいはリチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属を表す)や、−NR12、−NR123+X−で表される末端基を有する側鎖型アミン、>NR12+X−で表される主鎖型アミン(但し、式中R1、R2、R3は水素原子あるいは炭化水素基を表し、X-はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン元素イオンあるいは無機イオン、有機イオンを表す)、さらに−OH−、−SH、−CN、エポキシ基等の極性官能基が導入されていても良い。これらの極性官能基の結合剤への導入量は、10-1〜10-8モル/gであるのが好ましく、さらには10-2〜10-6モル/gがより好ましい。
次に、研磨剤について説明する。
研磨剤としては、従来公知の磁気記録媒体に適用されている種々の研磨剤を使用することができる。
例えば、α−アルミナ、β―アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化セリウム、α−酸化鉄、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、溶融アルミナ、炭化珪素、酸化クロム(Cr23)、コランダム、人造コランダム、ダイヤモンド等が挙げられる。
次に、潤滑剤について説明する。
潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5)、ジアルコキシポリシロキサン(アルコキシは炭素数1〜4)、モノアルキルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5、アルコキシは炭素数1〜4)、フェニルポリキシロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキルは炭素数1〜5)等のシリコンオイル、常温で液状の不飽和脂肪酸炭化水素(n−オレフィン二重合結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約20)、炭素数12〜20の一塩基脂肪酸と炭素数3〜12の1価のアルコールからなる脂肪酸エステル、フルオロカーボン類等が挙げられる。
潤滑剤としては、特に脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸エステルの原料となるアルコールはとしては、エタノール、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコール、プロピリングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピリングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、s-ブチルアルコール等のモノアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタイン誘導体の多価アルコールが挙げられる。
脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、プルミトレイン酸等の、脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物が挙げられる。
脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチルステアレート、sec−ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステアレート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブトキシエチルステアレート、2−ブトキシー1―プロピルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸でエステル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でエステル化したもの、グリセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げることができる。
さらに、磁気記録媒体を高湿度化で使用するときにしばしば生じる脂肪酸エステルの加水分解を軽減する為に、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直鎖、シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択する。
上述したような各種潤滑剤は、結合剤100重量部に対して0.2〜20重合部の範囲で添加することが好適である。
潤滑剤としては、その他以下の化合物を使用することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイト、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、弗化亜鉛、フッ素アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキル燐酸エステル、二硫化タングステン等が挙げられる。
次に、分散剤について説明する。
磁性層中に含有される分散剤としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リルン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜18の脂肪酸(R1COOH、R1はアルキルまたはアルニケル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属(Li、Na、K等)、またはアルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba)からなる金属石鹸、前記脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアリキルポリオレフィンオキシ第4級アンモニュウム塩(アルキルは炭素数1乃至5個、オレフィンはエチレン、プロピレン等)等を適用できる。
その他、炭素数12以上の高級アルコール、及びこれらの他に硫酸エステル等も使用可能である。これらの分散剤は、結合剤樹脂100重合部に対して0.5〜20重合部の範囲で添加される。
なお潤滑剤は、磁性層2のみに添加してもよく、磁性層2と非磁性層3の双方、あるいは非磁性層3のみに添加しても良い。
磁性層2には、ゴミや埃等の付着を防止するためにカーボンブラックやグラファイト、金属粉等を帯電防止剤として添加してもよい。
帯電防止剤の含有量は、通常、強磁性粉末の1〜20重量%含有される。帯電防止剤の量が多過ぎると強磁性体粉末の充填度を低下させるので好ましくない。
次に、非磁性層3について説明する。
非磁性層3は、非磁性粉末と結合剤を主成分として構成されているものとし、その他潤滑剤、分散剤、導電性粒子、及び各種添加剤を含有してもよく、これらは上述した磁性層2形成用の結合剤樹脂、潤滑剤、分散剤をいずれも適用可能である。
非磁性粉末は、針状、紡錘状、棒状、円柱状、球状、扁平状等、いずれの形状であってもよい。非磁性粉末の粒子径としては塗布する膜厚によって適宜選択する。
非磁性層3を薄層に形成する場合には、表面の平滑性を確保するために微細粒子を用いることが好ましく、厚くするに従い粒子径が大きいものも適用可能となる。例えば針状比が10程度の針状粒子であれば平均長軸径が0.05〜0.4μm、球状粒子であれば0.01〜0.1μmのものを適用できる。
非磁性粉末の材質としては特に限定はなく、金属、金属酸化物、カーボンブラック、樹脂等のいずれの材質のものも適用できる。
なお、粒子分布と分散性に優れたヘマタイト(α−Fe23)が特に好適な例として挙げられる。
非磁性層3中には、その他、上述した磁性層形成用の研磨剤粒子も含有してもよい。研磨剤の粒子サイズは0.01〜2μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果を持たせたりしてもよい。
非磁性層3に含有されている非磁性粒子のタップ密度は、0.3〜2g/cc、含水率は0.1〜5重量%、PHは2〜11、比表面積は1〜30m2/gが好ましい。
非磁性層3に含有されている非磁性粒子の具体例としては、住友化学製、AKP−20、AKP−30、AKP−50、HIT−50、日本化学工業製、G5,G7,S−1、戸田工業製、TF−100、TF−120、TF−140、石原産業社製TT055シリーズ、ET300W、チタン工業社製STT30等が挙げられる。
非磁性層3中の導電性粒子としては、カーボンブラックが好ましく、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
導電性粒子の比表面積は、5〜500m2/g、DBP吸油量は、10〜1500ml/100gが好適である。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、カーボンブラック粉末にジブチルフタレートを少しずつ加え、練り合わせながらカーボンブラックの状態を観察し、ばらばらに分散した状態から一つの塊をなす点を見いだし、その時のジブチルフタレートの添加量(ml)をDBP吸油量としたものとする。
導電性粒子の粒子径は、5〜300μm、PHは2〜10、含水率は、0.1〜10重量部%、タップ密度は0.1〜1g/ccが好ましい。
導電性粒子としてカーボンブラックを用いる場合には、キャボット社製、BLACKPEATLS2000、1300,1000,900,800、700,VULCANXC−72、旭カーボン社製、#80、#60、#55,#50、#35,三菱化成工業社製、#3950B、#2400B、#2300,#900,#1000,#30,#40、#10B、コロンビアカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 150,50,40,15,ライオンアグゾ社製ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックECDJ−500、ケッチェンブラックECDJ―600等が挙げられる。
上述したようなカーボンブラックを分散剤等で表面処理したり、樹脂でグラフト化したり、あるいは表面の一部をグラフト化してもよい。
非磁性層3においては、カーボンブラック含有量は、全非磁性粉末に対し3〜20重量%とすることが好ましい。
なお、上述したようなカーボンブラックは、磁性層2中に含有させてもよく、この場合、強磁性粉末に対する量は、0.1〜30重量%とすることが好ましい。
カーボンブラックは、磁性層2及び非磁性層3の帯電防止効果、摩擦係数低減効果、遮光性付与効果、膜強度向上効果等を向上させる機能を有しており、これらの効果は適用するカーボンブラックによって適宜制御することができる。従ってカーボンブラックは、その種類、量、組合せ、粒子サイズ、吸油量、電導率、PH等の前述した諸特性をもとに目的に応じて選定することが好適である。
磁性層2、及び非磁性層3の形成工程においては、上記各組成物を混合し、混練分散機で分散処理して均一な塗布液を作成する。なお、磁性層2中、もしくは非磁性層3中に添加する各材料は、必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分散物、酸化物等の不純物が含有されていてもよい。但し不純物は30重量%以下とすることが好ましく、さらには10重量%以下とすることが望ましい。
なお、各素材の全て、またはその一部は塗布液を製造するどの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合がある。
なお、磁性層2、及び非磁性層3形成用塗料を作製する際に用いる有機溶剤としては、下記のものが挙げられる。
例えば、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコールなどのエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロベンゼン、等の塩素化炭化水素水、N、N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等が適用できる。
なお、これらの有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純物が含まれていてもよい。これらの不純物は30重量%以下とすることが好ましく、さらには、10重量%以下とすることが望ましい。
有機溶剤は、必要に応じて磁性層2と非磁性層3とで、その種類や量を調整する。例えば、磁性層2用の塗布液に揮発性の高い有機溶剤を用い表面性を向上させたり、非磁性層3形成用の塗布液に、表面張力の高い溶媒(シクロヘキサン、ジオキサン等)を用い塗布の安定性を上げたり、非磁性層3形成用の塗布液に、溶解性パラメータの高い有機溶媒を用いて充填度を上げたりする等が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。
次に、バック層4について説明する。
バック層4は、例えば従来公知の無機粉末、結合剤を主成分とし、その他帯電防止剤、防錆剤、硬化剤等の各種添加剤を含有する分散液を、有機溶剤等を用いて調整した塗料を塗布することにより形成される。
バック層4を構成する無機粉末としては、カーボンブラックや各種セラミックス粒子、金属酸化物等が適用できる。バック層用の結合剤としては、例えばポリエステル系ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ニトロセルロース樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上述した磁性層用結合剤として用いられているものをいずれも適用できる。
バック層用の塗料を調整するための溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、トルエンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上述した磁性層塗料調整用の有機溶剤をいずれも適用できる。
次に、本発明の磁気記録媒体の製造工程について説明する。
先ず、非磁性支持体1を用意し、次に、磁性層2形成用塗料、及び非磁性層3形成用の塗料を作製する。
塗料作製工程は、少なくとも混練工程、分散工程からなり、これらの工程の前後に必要に応じて所定の材料の混合工程を有しているものとする。なお、個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもよい。
強磁性粉末、結合剤、研磨剤、非磁性粒子、帯電防止剤、潤滑剤、有機溶剤等は、塗料作製工程の任意の段階で適宜添加する。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の年度調整のための混合工程で分割投入しても良い。
混練工程では連続ニーダーや加圧ニーダーなど強い混練力を有しているものを使用することにより、本発明の磁気記録媒体の残留磁束密度Brを高くすることができる。連続ニーダー、または加圧ニーダーを用いる場合は、強磁性粉末と結合剤の全て、またはその一部(ただし全結合樹脂の30%以上であることが望ましい)、例えば強磁性粉末100重量部に対し5〜500重量部の範囲で混練処理される。
本発明の磁気記録媒体を構成する非磁性層3と磁性層2とは、同時重層塗布方式により効率的に形成できる。
非磁性層3、及び磁性層2の塗布方式は、非磁性支持体1上に塗布された非磁性層3が湿潤状態にあるうちに磁性層2用の塗料を塗布するウェットオンウェット方式の塗布方法を採用するのが好ましい。この塗布方式により、非磁性層3に対する磁性層2の密着性を高めることができ、磁性層2の膜厚が0.3μm以下の非常に薄層とする場合にも、層間で剥離を生じることなく、ドロップアウトが生じにくい走行耐久性の優れた磁気記録媒体を得ることができる。
一方、非磁性層3の塗料を塗布し、乾燥処理後に磁性層2を塗布する方式においては、磁性層2がきわめて薄層である場合には、充分な密着性を得られにくい。
ウェットオンウェット塗布方式の具体的な方法としては、第1の方法として、磁性塗料で一般的に用いられるグラビア塗布、ロール方式、ブレード塗布、エクストルージョン塗布装置により、まず非磁性層3を塗布し、その層が湿潤状態にあるうちに、非磁性支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により磁性層2を塗布する方法があり、第2の方法としては、塗布液通過スリットを内蔵した塗布ヘッドにより、非磁性層3の塗布液及び磁性層2の塗布液をほぼ同時に塗布する方法があり、第3の方法としては、バックアップロール付きエクストルージョン塗布装置により、磁性層2及び非磁性層3をほぼ同時に塗布する方法がある。
なお、塗布液中に分散された粒子の凝集を防止するため、塗布ヘッド内部の塗布液にせん断力を付与することが望ましい。また、ウェットオンウェット塗布方式で留意するべきこととしては、塗布液の粘弾性特性(チクソトロピック性)がある。すなわち、磁性層2と非磁性層3の塗布液の粘弾性特性の差が大きいと塗布した際に磁性層塗布層と非磁性層塗布層との界面で、液の混じり合いが起こり、本発明のように磁性層の膜厚が非常に薄い磁気記録媒体の場合、磁性層2の表面性が低下する等の不都合を生じやすい。塗布液の粘弾性特性を可能な限り近づける為には、まず磁性層2と非磁性層3の分散粒子を同一にすることが効果的であるが、本発明の磁気記録媒体の場合は、その方法を採ることができないので、磁性層2の塗料中で磁性粒子が磁性により形成されるストラクチャー構造がもたらす構造粘性と合わせるために、非磁性層3の塗料の非磁性粒子としてカーボンブラックを使用することが有効であるが、同時にカーボンブラック以外の粒子サイズの小さい非磁性粒子を使用することも有効である。例えば径が1μm以下の酸化チタン、酸化アルミ等の粒子を適用することにより、適度な凝集が得られ、粒子の構造粘性を有した塗布液が得られる。
次に、バック層4を形成する。
バック層4は、上述した無機粉末、結合剤、帯電防止剤、防錆剤、硬化剤等の各種添加剤を含有する分散液を、有機溶剤等を用いて調整した塗料を塗布することにより形成することができる。
本発明の磁気記録媒体10の全厚は、単位体積当たりの記録密度を向上させるためになるべく薄層であることが好ましいが、一方、良好なヘッド当たりを確保するために、1〜12μm、より望ましくは7〜12μmとする。
なお、非磁性支持体1と非磁性層3との間には、密着性向上のために、例えばポリエステル樹脂等からなる下塗層を設けてもよい。
上述したように、図1に示す磁気記録媒体10においては、非磁性層3と磁性層2とが積層形成された構成を有するものとしたが、目的に応じて非磁性層3と磁性層2において、これらの物理特性を変えてもよい。例えば、磁性層2の弾性率を高くし走行耐久性を向上させると同時に、非磁性層3の弾性率を磁性層2よりも低くして磁気ヘッドへの当たりを良くすること等である。
本発明の磁気記録媒体は高密度磁気記録に好適である。
特に、映像信号等の書き込み・編集に使用されるデジタルデータ記録において、最短記録波長が0.3μm程度での高密度記録であっても、良好な当たり特性を維持しながら高い電磁変換特性を確保し、繰り返しの使用における耐久性にも優れているという利点を有している。
本発明の磁気記録媒体の構成は、図1に示したものに限定されるものではなく、各種構成上の付加を加えてもよい。
また、非磁性支持体1や、磁性層2に含有されている強磁性粉末及び結合剤、非記録層3に含有される無機粉末、結合剤、及び分散剤、その他研磨剤、帯電防止剤、防錆剤、塗料調整用溶剤としては、従来公知のものがいずれも適用することができ、上述した例に何ら限定されるものではない。
以下、本発明の磁気記録媒体について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。尚、以下に記載の実施例1とは、本発明における比較例(参考例)に相当する例であって、実施例2〜4及び比較例1〜2との比較対象となるリファレンスである。
〔実施例1〕
以下に示す組成の磁性層用分散液を調整した。先ず、下記材料をエクストルーダーで混練した。
Fe−Co系強磁性粉末:100重量部
(長軸長0.1μm、Co/Fe=30atm%、比表面積47m2/g、
飽和磁化=150Am2/kg、保磁力=184kA/m)
塩化ビニル系共重合体:21.7重量部
(日本ゼオン製 MR−110:30wt%シクロヘキサノン溶液)
ポリエステルポリウレタン樹脂:26.0重量部
(東洋紡社製 UR−8200:25wt%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液)
次に、上記混練物に下記材料を加え、ディスパー攪拌機付きタンク内で2時間攪拌後、サンドミルで5時間混合処理を行った。
塩化ビニル系共重合体:11.7重量部
(日本ゼオン製 MR−110:30wt%シクロヘキサン溶液)
ポリエステルポリウレタン樹脂:14.0重量部
(東洋紡社製 UR−8200:25wt%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液)
メチルエチルケトン(MEK):88.0重量部
トルエン:106.0重量部
シクロヘキサノン:32.7重量部
その後、糸巻き式タイプのフィルターを用いて濾過処理を行う。先ず、濾過精度5μmのフィルターを用い、3〜1μmのフィルターを用いて順次濾過処理を行った。
次に、以下に示す組成の非磁性層用塗料を調整した。下記組成物をエクストルーダーで混練した。
α−Fe23(酸化鉄)粉末:100重量部
(平均長軸長0.15μm、比表面積55m2/g、平均軸比10)
塩化ビニル系共重合体:21.7重量部
(日本ゼオン製 MR−110:30wt%シクロヘキサン溶液)
ポリエステルポリウレタン樹脂:26.0重量部
(東洋紡社製 UR−8200:25wt%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液)
次に、上記混練物に下記組成物を加え、ディスパー攪拌機付きタンク内で2時間攪拌後、サンドミルで5時間混合処理を行った。
塩化ビニル系共重合体:11.7重量部
(日本ゼオン製 MR−110:30wt%シクロヘキサン溶液)
ポリエステルポリウレタン樹脂:14.0重量部
(東洋紡社製 UR−8200:25wt%メチルエチルケトン/トルエン混合溶液)
メチルエチルケトン(MEK):61.3重量部
トルエン:79.3重量部
シクロヘキサノン:19.3重量部
その後、糸巻き式タイプのフィルターを用いて濾過処理を行う。先ず、濾過精度5μmのフィルターを用い、3〜1μmのフィルターを用いて順次濾過処理を行った。
上述のようにして作製した磁性層形成用塗料、及び非磁性層形成用塗料を用いてそれぞれの層形成を行うが、塗布工程前に上記各々の塗料に下記材料を添加し、ディスパー攪拌機付きタンクにて30分攪拌を行った。なお塗料粘度は磁性層形成用塗料が3500cp、非磁性層形成用塗料が7500cpであった。
ミリスチン酸:1重量部
ヘプチルステアレート:2重量部
イソシアネート系硬化剤:8重量部
(日本ポリウレタン社製コロネートL 固形分50wt%)
さらに、磁性層形成用塗料、及び非磁性層形成用塗料を、それぞれ濾過精度1μmで、かつ絶対濾過精度(アブソリュート)10μmを有する糸巻き方式にフィルターを用いて濾過処理を行った。
非磁性支持体1として、厚さ7.5μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用意。
非磁性支持体1上に、非磁性層3を膜厚2.5μm、磁性層2を膜厚0.2μmとなるように同時二層塗布により形成した。その後、ソレノイドコイル方式マグネット(5Kガウス)で磁場配向し、100℃の熱風によるドライヤー乾燥処理、カレンダー処理を行った。
次に、下記組成による塗料を磁性層形成面とは反対側の主面に塗布し、ドライヤー乾燥処理を行うことにより、膜厚0.7μmのバック層4を形成した。
カーボンブラック(旭社製 ♯50):100重量部
ポリエステルポリウレタン(ニッポラン社製 N−2304):100重量部
メチルエチルケトン:500重量部
トルエン:300重量部
シクロヘキサノン:200重量部
イソシアネート系硬化剤:40重量部
(日本ポリウレタン社製 コロネートL、固形分50wt%)
上述のようにして作製された磁気テープの原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットし、デジタルビデオテープレコーダー用カセット(ソニー社製のデジタルベータカム用カセットに組み込んでサンプルとした。
〔実施例2〕
Fe−Co系強磁性粉末を、以下の様に変更した。その他の条件は実施例1と同様としてサンプルを作製した。
Fe−Co系強磁性粉末:100重量部
(長軸長0.12μm、Co/Fe=30atm%、比表面積=44m2/g、
飽和磁化=142Am2/kg、保磁力=194kA/m)
〔実施例3〕
Fe−Co系強磁性粉末を、以下の様に変更した。その他の条件は実施例1と同様としてサンプルを作製した。
Fe−Co系強磁性粉末:100重量部
(長軸長0.08μm、Co/Fe=25atm%、比表面積=55m2/g、
飽和磁化=127Am2/kg、保磁力=205kA/m)
〔実施例4〕、〔比較例1〕
配向の条件を変更し、磁気特性を調整した。その他の条件は、実施例3と同様としてサンプルを作製した。
〔比較例2〕
Fe−Co系強磁性粉末を、以下の様に変更した。その他の条件は実施例1と同様としてサンプルを作製した。
Fe−Co系強磁性粉末:100重量部
(長軸長0.12μm、Co/Fe=30atm%、比表面積=44m2/g、
飽和磁化=142Am2/kg、保磁力=184kA/m)
〔実験例1〕
磁性層の膜厚を0.15μmとした。その他の条件は、実施例1と同様としてサンプルを作製した。
〔実験例2〕
磁性層の膜厚を0.25μmとした。その他の条件は、実施例1と同様としてサンプルを作製した。
〔実験例3〕
磁性層の膜厚を0.10μmとした。その他の条件は、実施例1と同様としてサンプルを作製した。
〔実験例4〕
磁性層の膜厚を0.30μmとした。その他の条件は、実施例1と同様としてサンプルを作製した。
上述したようにして作製した各サンプル磁気テープを、以下の条件で測定し、評価を行った。なお、後述する〔出力周波数特性〕については、上記実験例1〜4に示したサンプルに関して測定評価を行った。
〔出力〕
室温(25℃)環境下において、ソニー社製のデジタルVTR(商品名:HDW-500)を用いて記録波長0.3μmの単一信号の記録を記録電流を変えて行った。その後、信号再生を行い、最大値の測定を行った。
なお、測定値はリファレンスとする実施例1との相対値(単位dB)として表した。
〔最適記録電流〕
上記出力を測定する際、最大の出力を得るときの記録電流を測定した。
数値は、リファレンスとする実施例1の最適記録電流を100%としたときの比較により%表示した。
〔記録電流特性〕
図5に示すような、記録電流と再生出力との関係を示す記録電流カーブをとり、再生出力の最大値から1dB下がったところで線を引き、記録電流カーブとクロスするa、bの2点間の広さcを測った。数値は、リファレンスとする実施例1の広さを1とし、相対値で表した。
〔出力周波数特性〕
記録波長0.3μmの出力(AdB)と、記録波長1.2μmの出力Bとを測定し、A−B(単位はdB)を読み取った。
数値は、リファレンスとする実施例1を基準とし、リファレンスとの差(単位dB)で表した。
上記〔実施例1〜4〕、〔比較例1、2〕のサンプル磁気テープの保磁力Hc、角形比Rs、これらの比Hc/Rs、SFD、Hc×(1+0.5×SFD)の値と、出力値(相対値)、最適記録電流(相対値)、及び記録電流特性(相対値)についての測定評価結果を下記表1に示した。
なお、最適記録電流は、リファレンス(実施例1)に対してのズレが±15%以内であれば、実用上良好であると評価した。
また、記録電流特性については、リファレンス(実施例1)に対してのズレが±20%以内であれば、実用上良好であると評価した。
Figure 0004370851
表1に示すように、磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕とSFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)が、下記式(1)の関係を有し、磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕と角形比Rs〔%〕とにおいて、下記式(2)の関係を有する実施例2〜4の磁気テープは、いずれも実用上充分な再生出力を得るために必要な最適記録電流の値が抑制されており、かつ記録電流特性の評価も良好で、高い出力を得るための記録電流値の裕度も広くなった。
230≦Hc×(1+0.5×SFD)・・・(1)
2.2≦Hc/Rs≦2.6・・・(2)
表1に示した測定結果から、Hc×(1+0.5×SFD)と出力との関係、及びHc×(1+0.5×SFD)と記録電流特性との関係について、それぞれ図6、図7に示した
例えば、実施例3、実施例4においては、記録電流特性がリファレンス(実施例1)の1に対して1.2となっており、極めて広い記録電流範囲において高い再生出力が得られた。
この記録電流特性の値が大きいと、VTR用磁気ヘッドが、継続的な使用による摩耗で最適記録電流が変化したとしても、良好なエラーレート特性が確保できるという効果を発揮でき、商品としての耐久性の向上が図られる。
次に、Hc/Rsと最適記録電流(%)との関係について図8に示した。
これによると、最適記録電流のリファレンス(実施例1)に対するズレが±15%以内であるものは、2.2≦Hc/Rs≦2.6の範囲であることが分かる。
Hc/Rsの値が2.6を超える比較例1のサンプルにおいては、最適記録電流の値が124%と大きくなってしまい、リファレンスとのズレが大きく、充分な出力を得るための消費電力が大きくなってしまった。
また、Hc/Rsの値が小さくなるということは、Rsを一定にするとHcを下げなければならず、充分な再生出力を得るためには非常に不利な条件となり、特に、2.2未満となると出力特性が著しく劣化することが確かめられた。
一方、Hc×(1+0.5×SFD)の値が220未満の比較例2のサンプルにおいては、記録電流特性が0.7となり、エラーレートに対してマージンが小さくなり、充分な再生出力を得るための記録電流値の裕度が狭くなってしまった。
次に、磁性層2の膜厚を変化させて作製した実験例1〜4のサンプルに関して、出力周波数特性(4T出力との比較値)の測定結果、及びサーボクロックの評価の結果を下記表2に示す。
Figure 0004370851
磁性層の膜厚を0.15〜0.25μmの範囲とした実験例1、2のサンプルにおいては、出力周波数特性が±3dBの範囲に維持され、実用上充分な特性が得られた。
一方、磁性層2の膜厚を0.10μmとした実験例3のサンプルにおいては、出力周波数特性が5.5dBとなり、また、磁性層2が薄すぎるため充分なCTL信号の再生出力が得られず、サーボロックはずれを引き起した。
また、磁性層の膜厚を0.30μmとした実験例4のサンプルにおいては、出力周波数特性が−5.5dBとなり、長波長領域における出力が著しく劣化した。
このように、波長領域に依存して出力変動が激しくなると、VTRのイコライザーの調整に不利であり、大きすぎても小さすぎても、結果としてエラーレートに対するマージンが小さくなるという問題がある。
本発明の磁気記録媒体の一例の概略断面図を示す。 SFDの定義を説明するための磁化曲線、ヒステリシス曲線を示す。 SFDの定義を説明するための微分曲線を示す。 記録電流と出力との関係を示す。 実用上充分な出力を得るための記録電流を説明するための図を示す。 出力とHc×(1+0.5×SFD)との関係を示す。 記録電流特性とHc×(1+0.5×SFD)との関係を示す。 最適記録電流とHc/Rsとの関係を示す。
符号の説明
1……非磁性支持体、2……磁性層、3……非磁性層、4……バック層、10……磁気記録媒体


Claims (2)

  1. 非磁性支持体の一主面上に、少なくとも無機粉末と結合剤とを含有する非磁性層と、少なくとも強磁性粉末と結合剤とを含有する磁性層とが形成されてなり、
    上記非磁性支持体の他の一主面上に、バック層が形成されてなり、
    保磁力Hc〔kA/m〕と、SFD(スイッチング・フィールド・ディストリビューション)が、下記式(1)の関係を有し、
    上記磁性層の保磁力Hc〔kA/m〕と、角形比Rs〔%〕とが、下記式(2)の関係を有し、
    全厚12μm以下である磁気記録媒体。
    230≦Hc×(1+0.5×SFD)・・・(1)
    2.2≦Hc/Rs≦2.6・・・(2)
  2. 上記磁性層の膜厚が、0.15〜0.25μmである請求項1に記載の磁気記録媒体。
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