JP2000155935A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2000155935A
JP2000155935A JP33050298A JP33050298A JP2000155935A JP 2000155935 A JP2000155935 A JP 2000155935A JP 33050298 A JP33050298 A JP 33050298A JP 33050298 A JP33050298 A JP 33050298A JP 2000155935 A JP2000155935 A JP 2000155935A
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magnetic
aromatic polyamide
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polyamide film
magnetic layer
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Hiroshi Yatagai
洋 谷田貝
Shinichi Matsumura
伸一 松村
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大記録容量を達成できるとともに、優れた走
行耐久性、そしてデータの記録、読み出しに対する高い
信頼性を有する。 【解決手段】 2枚の芳香族ポリアミドフィルムからな
る非磁性支持体の一主面上に、非磁性粉末及び結合剤を
主体とする非磁性塗料が塗布されてなる下層非磁性層
と、磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性塗料が塗布さ
れてなる上層磁性層とがこの順で形成され、上記上層磁
性層は、フッ素含有カルボン酸を保持している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性支持体上に
磁性粉末及び結合剤を主体としてなる上層磁性層と非磁
性顔料及び結合剤を主体としてなる下層非磁性層とを有
する磁気記録媒体に関し、特に大容量のテープストリー
マとして用いて好適な磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ミニコンピュータ、パーソナルコ
ンピュータなどのオフィスコンピュータの普及に伴っ
て、外部記憶媒体としてコンピュータデータを記録する
ための磁気テープ(いわゆるテープストリーマ)の研究
が盛んに行われている。このような用途の磁気テープの
実用化に際しては、特に、コンピュータの小型化、情報
処理能力の増大と相まって記録の大容量化、小型化を達
成するために記録容量の向上が強く要求される。また磁
気テープの使用環境の広がりによる幅広い環境条件下
(特に、変動の激しい温湿度条件下など)での使用、デ
ータ保存に対する信頼性、更に高速での繰り返し使用に
よる多数回走行におけるデータの安定した記録、読み出
し等の性能に対する信頼性なども従来に増して要求され
ている。
【0003】一般に、磁気テープは、合成樹脂などの可
撓性材料からなる非磁性支持体上に磁性層が設けられた
構成とされている。そして、上述したような大容量(体
積記録容量)を達成するためには、磁性粉末の粒子サイ
ズを小さくする、その分散性を向上させる、あるいは磁
性層を更に薄膜化するなどの方法により磁性層自体の記
録密度を高めると共に、磁気テープの全厚を薄くするこ
とが有効な手法であるとされている。
【0004】従来より、磁気記録媒体用の非磁性支持体
としては、ポリエステル、主としてポリエチレンテレフ
タレートフィルムが用いられている。特に、ホームビデ
オカセットテープ、例えば、8mmテープの支持体とし
ては、7〜10μm程度のポリエチレンテレフタレート
フィルムが用いられ、コンピュータのデータバックアッ
プ用のテープストリーマとしては5〜7μm程度のポリ
エチレンフィルムが用いられている。
【0005】また、例えば、特開平6−215350号
公報に開示されているように、非磁性支持体としてポリ
エステルを主成分とし、具体的にはポリエチレンナフタ
レートことによって、ビデオテープとして使用される磁
気記録媒体の記録時間を延長させている。
【0006】一方、金属微粒子を応用した磁気記録媒体
は、近年、高密度記録に対する強い要望から、オーディ
オ用、ビデオ用の各種フォーマットを始め、高密度フロ
ッピーディスク或いはバックアップ用データカートリッ
ジ等コンピュータ周辺機器にも利用され、現在における
磁気記録媒体の主流になると同時に、特性の向上にもめ
ざましいものがある。
【0007】この磁気記録媒体において、上述したよう
な、高密度記録を実現するための手法としては、例え
ば、表面を高度に平滑化する手法が挙げられる。この手
法では、スペーシングロスを最小限にすると同時に、記
録減磁による出力ロスを抑制することが重要であり、実
際的には (1)保磁力の増加 (2)保磁力分布の均一化 (3)垂直異方性の付与 (4)塗膜の薄膜化 等が検討されている。
【0008】このうち、(1),(2)については、磁
性材料の改良が積極的に進められており、この結果、最
近では金属微粒子において保磁力160kA/mを越え
る材料も実現しており、保磁力分布を反映する粒子サイ
ズ分布も極めて均一化する等、めざましい発展が見られ
る。また、(3)については、塗布型媒体の場合、磁性
粉末の磁気配向によるところが大きい。このため、針状
粒子の場合には、塗膜に対する垂直配向或いは斜方配向
が検討されてきたが、配向制御の難しさ、配向による塗
膜表面の乱れ等の技術的な問題から、未だ本格的な実用
には至っていないのが現状である。さらに、(4)につ
いては、自己減磁損失を低減する方法として非常に有効
であると考えられる。ここで、磁性層の膜厚を、例えば
1μm以下に単純に薄膜化すると、磁性層表面に非磁性
支持体の表面形状が現れ易くなり、磁性層表面の平滑化
が困難になる。このため、磁性層を薄膜化する場合に
は、非磁性支持体と磁性層の間に非磁性塗料の塗布層を
介在させる重層塗布型の磁気記録媒体が提案されてい
る。このように、非磁性層を介在させることで非磁性支
持体表面と磁性層表面の間に所定の距離が形成されるた
め、非磁性支持体の表面形状が磁性層表面に現れ難くな
る。したがって、この場合には、厚さの薄い磁性層が平
滑な表面形状で形成されることになる。
【0009】ここで、このような非磁性層、磁性層を塗
布形成する好ましい方法としては、例えば非磁性塗料、
磁性塗料がそれぞれ押し出される2つのスリットが設け
られた、4リップ方式のダイヘッドを用い、非磁性支持
体上に非磁性塗料と磁性塗料を同時に塗布する湿潤重層
塗布方式(ウェット・オン・ウェット塗布方式)が挙げ
られる。この湿潤重層塗布方式によると、塗布欠陥や塗
り筋を比較的少なくすることができ、表面形状が良好な
塗布膜を形成することができる。また、この手法によれ
ば、下層非磁性層と上層磁性層との密着性に優れ、優れ
た耐久性を有する磁気記録媒体を形成することができ
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、湿潤重
層塗布方式によって形成された下層非磁性層、上層磁性
層が形成された磁気記録媒体においても、確かに既存の
ビデオ装置あるいはコンピュータ装置等に用いるのであ
れば、現状の表面性で十分に対応できる。しかしなが
ら、磁気記録装置の分野ではさらなる高密度記録化が進
行しており、このような磁気記録装置において十分な電
磁変換特性と走行耐久性を得るには不十分であり、さら
なる表面性の改善が必要となっている。
【0011】表面性を改善するためには、非磁性支持体
の磁性層を形成する側の表面を平滑にする方法がある
が、単層構造のフィルムでは製造工程での取り扱いが困
難なものとなる。
【0012】そのため、フィルムを複合構造にし、バッ
クコート層形成面側の表面を粗くする方法があるが、フ
ィルムの全厚が薄いため、磁性層形成面まで影響するこ
とが判明した。
【0013】本発明者は、テープの全厚を非常に薄く抑
えた磁気テープの大容量のテープストリーマとしての利
用について検討した。その結果、上記特開平6−215
350号公報に記載の薄型の磁気テープであっても大容
量のテープストリーマとしては、なお十分な記録容量が
達成できないことが判明した。即ち、上記公報に記載の
磁気テープの厚み(全厚)では必要な量のテープを所定
のカートリッジに収納することができず、従って大容量
のテープストリーマ用に適した大きな体積記録容量を得
るには、更にテープの厚みを薄くする必要がある。ま
た、一般に高い記録密度を得るには、その磁性層は薄い
ことが好ましいが、上記の磁気テープの磁性層はその厚
みが2.0μm程度であり、さらに改良の余地があるこ
とが判明した。一方、単に磁気テープの全厚を更に薄く
した場合には、前述のようにそれに伴ってテープ自体の
強度が不足し、走行を繰り返すうちに走行性が悪化した
り(十分な走行耐久性が維持できず)、さらに出力等の
悪影響も出やすくなるため、支持体自体の改良も必要で
ある。
【0014】さらに磁気記録媒体の全厚が8μm以下と
なるような薄物の媒体では、十分な機械的強度を確保す
ることができず、従来より用いられている高級脂肪酸や
高級脂肪酸エステルのような潤滑剤を添加しただけで
は、テープストリーマ用ドライブでの繰り返し記録再生
時に発生する媒体の摩擦上昇を抑制することが困難とな
り、磁性層の破損を抑えきれなくなる。
【0015】従って、このように磁気記録媒体の全厚が
8μm以下となるような薄物の媒体においても、ドライ
ブ走行時の摩擦上昇を抑え、安定した走行耐久性が得ら
れる磁気記録媒体が望まれている。
【0016】本発明は、上述したような従来の実情に鑑
みて提案されたものであり、大記録容量を達成できると
ともに、優れた走行耐久性、そしてデータの記録、読み
出しに対する高い信頼性を有する大容量のテープストリ
ーマ用の磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性支持体の一主面上に、非磁性粉末及び結合剤
を主体とする非磁性塗料が塗布されてなる下層非磁性層
と、磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性塗料が塗布さ
れてなる上層磁性層とがこの順で形成されてなる磁気記
録媒体であって、上記非磁性支持体は、少なくとも、他
主面を構成する第1の芳香族ポリアミドフィルムと、上
記第1の芳香族ポリアミドフィルム上に形成された第2
の芳香族ポリアミドフィルムとを有するとともに、上記
第1の芳香族ポリアミドフィルム中に含有される不活性
粒子が上記第2の芳香族ポリアミドフィルム中に含有さ
れる不活性粒子と比較して大とされてなり、上記非磁性
支持体は、上記第1の芳香族ポリアミドフィルムを除い
た厚みが2.0μm以上であり、上記上層磁性層は、フ
ッ素含有カルボン酸を保持していることを特徴とする。
【0018】上述したような本発明に係る磁気記録媒体
では、非磁性支持体における下層非磁性層が形成された
面と反対側の他主面の表面が、第1の芳香族ポリアミド
フィルムに含有される不活性粒子の影響を受けることと
なる。このため、この磁気記録媒体においては、この他
主面が所望の表面粗度を示す。また、この磁気記録媒体
では、第1の芳香族ポリアミドフィルムと下層非磁性層
との間に、少なくとも第2の芳香族ポリアミドフィルム
を有している。このため、下層非磁性層及び上層磁性層
が形成される一主面の表面に対しては、第1の芳香族ポ
リアミドフィルムに含有される比較的大きな不活性粒子
の影響が小となっている。したがって、この磁気記録媒
体では、上層磁性層の表面が所望の優れた表面性を有す
ることとなる。さらに、この磁気記録媒体では、上記フ
ッ素含有カルボン酸が上記上層磁性層に保持されている
ので、走行耐久性が良好なものとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0020】本実施の形態として示す磁気記録媒体は、
図1に示すように、非磁性支持体1と、この非磁性支持
体1の一主面上に形成された下層非磁性層2と、この下
層非磁性層2上に形成された上層磁性層3と、非磁性支
持体1の他主面上に形成されたバックコート層4とを備
えるものである。また、この磁気記録媒体において、非
磁性支持体1は、少なくとも、比較的大きな不活性粒子
を有し、他主面を構成する第1の芳香族ポリアミドフィ
ルム5と、比較的小さな不活性粒子を有し、第1の芳香
族ポリアミドフィルム5上に形成された第2の芳香族ポ
リアミドフィルム6とから構成されている。さらに、こ
の磁気記録媒体において、非磁性支持体1は、第1の芳
香族ポリアミドフィルム5を除いた厚みが2.0μm以
上とされてなる。そして、この磁気記録媒体では、上層
磁性層に、フッ素含有カルボン酸が保持されている。
【0021】また、この磁気記録媒体では、主として非
磁性粉末及び結合剤を有機溶媒に分散させてなる下層用
塗料と、主として磁性粉末及び結合剤を有機溶剤に分散
させてなる上層用塗料とをそれぞれ調製し、これら下層
用塗料及び上層用塗料を非磁性支持体上に塗布し、乾燥
させることにより下層非磁性層2及び上層磁性層3が形
成される。
【0022】調製された下層用塗料及び上層用塗料を非
磁性支持体1上に塗布する方法としては、特開平6−2
36543号公報に示されるような、下層用塗料を塗布
して乾燥させ、この乾燥された下層非磁性層2上に上層
用塗料を塗布して乾燥させる、いわゆるウェット・オン
・ドライ塗布方式と、湿潤状態にある下層用塗料の上に
上層用塗料を重ねて塗布する、いわゆるウェット・オン
・ウェット塗布方式(湿潤重層塗布方式)とがある。
【0023】このうち、これら下層用塗料及び上層用塗
料の塗布方式としてはウェット・オン・ウェット塗布方
式を用いるのが望ましい。このウェット・オン・ウェッ
ト塗布方式で塗料を塗布する塗布装置の一例を図2に示
す。
【0024】この塗布装置は、先端部に塗料が押し出さ
れる2つのスリット部(下層塗料用のスリット部11,
上層塗料用のスリット部12)を有するダイヘッド18
(4リップ方式ダイヘッド)を有して構成される。すな
わち、このダイヘッドでは、2つのスリット部11,1
2の背面側にそれぞれ下層用塗料、上層用塗料が供給さ
れる下層用塗料溜まり13,上層用塗料溜まり14が形
成され、この各塗料溜まり13,14に供給された下層
用塗料、上層用塗料がスリット11,12を介して当該
ダイヘッド先端部に向かって押し出される。一方、塗料
が塗布される非磁性支持体15は、ダイヘッドの先端面
に沿って下層用塗料が押し出されるスリット部11から
上層用塗料が押し出されるスリット部12に向かって図
中A方向に走行する。
【0025】このようにして走行する非磁性支持体15
には、先ず、スリット部11を通過する際に、このスリ
ット部11から押し出された下層用塗料が一主面に塗布
され下層塗膜16が形成される。そして、スリット部1
2を通過する際に、このスリット部12から押し出され
た上層用塗料が湿潤状態の下層塗膜16上に塗布され、
2層の下層塗膜16及び上層塗膜17が形成される。そ
して、この湿潤状態の下層塗膜16及び上層塗膜17を
乾燥し、必要に応じてカレンダー処理等の表面平滑過処
理を施すことで、重層塗布型の磁気記録媒体を作製す
る。
【0026】なお、ダイヘッドとしては、4リップ方式
の他に、3リップ方式、2リップ方式等を用いてもよ
い。このようにしてウェット・オン・ウェット塗布方式
で形成された下層非磁性層2及び上層磁性層3は、湿潤
状態の下層塗膜16上に上層塗料17が塗布されること
で形成されているので、下層非磁性層2の表面、すなわ
ち下層非磁性層2と上層磁性層3との境界面がなめらか
に形成されている。そのため上層磁性層3の表面性も非
常に良好になる。このため、磁気記録媒体は、上述した
ようなウェット・オン・ウェット塗布方式で形成される
ことにより、ドロップアウトが抑えられ、高出力、低ノ
イズが厳しく求められる高密度記録用として好適なもの
となる。また、この磁気記録媒体では、下層非磁性層2
と上層磁性層3の密着性が高いので、膜剥離が起き難
く、優れた耐久性が得られる。
【0027】なお、ウェット・オン・ドライ塗布方式に
よって上層磁性層3、下層非磁性層2を形成する場合、
下層用塗料、上層用塗料を塗布する方法としては、ダイ
ヘッド塗布方式、グラビアロール塗布方式、リバースロ
ール塗布方式等の通常の塗布方式がいずれも採用可能で
ある。但し、この場合には、下層非磁性層2の材料は、
当該下層非磁性層2が上層用塗料に対して十分な耐溶剤
性を有するように選択される必要がある。
【0028】そして、特に、本実施の形態に係る磁気記
録媒体においては、最外層となる上層磁性層3に、潤滑
剤として、フッ素含有カルボン酸が保持されている。こ
のフッ素含有カルボン酸としては、少なくとも分子末端
にパーフルオロアルキル基、カルボキシル基を各々1つ
以上有するものが好ましい。
【0029】また、本実施の形態に係る磁気記録媒体に
おいて、潤滑剤を上層磁性層3に保持させる方法として
は、磁性塗料の塗膜として形成される上層磁性層3に潤
滑剤を内添する方法、上層磁性層3の表面に潤滑剤をト
ップコートする方法、あるいはこれら両者の併用等の手
法が挙げられる。
【0030】このときのパーフルオロポリエーテル誘導
体の使用量は、上層磁性層3中に内添する場合には、樹
脂結合剤100重量部に対して0.2重量部〜10重量
部とすることが好ましい。また、上層磁性層3の表面に
トップコートする場合には、塗布量を、0.5mg/m
2〜100mg/m2であるのが好ましく、1mg/m
2〜20mg/m2であるのがより好ましい。この塗布
量があまり少なすぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性及
び耐久性の向上という効果が表れず、また、この塗布量
があまり多すぎると、摺動部材と強磁性金属薄膜との間
でハリツキが起こり、却って走行性が悪くなる。
【0031】以下、非磁性支持体1、下層非磁性層2、
上層磁性層3及びバックコート層4、並びに、これら各
層に用いられる結合剤及び添加剤について順に詳述す
る。
【0032】非磁性支持体1 先ず、非磁性支持体1は、上述したように、第1の芳香
族ポリアミドフィルム5及び第2の芳香族ポリアミドフ
ィルム6から構成されている。この非磁性支持体1は、
芳香族ポリアミドフィルムを用いることにより、引っ張
り強度などの物性において優れており、全体としての厚
みが非常に薄い場合でも充分耐え得る強度を有してい
る。
【0033】第1の芳香族ポリアミドフィルム5及び第
2の芳香族ポリアミドフィルム6は、例えば、下記式
(I)及び/又は(II)で表される芳香族ポリアミド
を、50モル%以上、好ましくは70モル%以上含有し
ている。このように、下記式(I)及び/又は(II)
で表される芳香族ポリアミドを50%以上含有させるこ
とによりって、非磁性支持体1は、熱履歴が加えられた
ような場合であっても優れた寸法安定性を有するととも
に、高いヤング率を有することとなる。
【0034】
【化1】
【0035】なお、上記式において、X、Yは、−O
−,−CH2−,−CO−,−SO2−,−S−,−C
(CH3)2−等から選ばれるが、これに限定されるも
のではない。さらに、上記式において、芳香環上の水素
原子の一部が、ハロゲン基(特に、塩素)、ニトロ基、
炭素数1から3のアルキル基(特に、メチル基)、炭素
数1から3のアルコキシ基などの置換基で置換されてい
るものであってもよく、また、重合体を構成するアミド
結合中の水素が他の置換基によって置換されていても良
い。
【0036】また、第1の芳香族ポリアミドフィルム5
及び第2のポリアミドフィルム6は、剛性を高くする観
点から、芳香環がパラ位で結合されたものが、全芳香環
の60%以上、より好ましくは80%以上を占める重合
体であることが好ましい。また、吸湿性を小さくする観
点から芳香環上の水素原子の一部がハロゲン基(特に、
塩素原子)、ニトロ基、炭素数1から3のアルキル基
(特に、メチル基)、炭素数1から3のアルコキシ基な
どで置換された芳香環が全体の30%以上を占める重合
体であることが好ましい。
【0037】さらに、芳香族ポリアミドとしては、上記
式(I)及び/又は上記式(II)で表される繰り返し
単位を50モル%以上含むものであって、50モル%未
満は他の繰り返し単位、例えば、芳香族ポリイミド単位
や他の芳香族ポリアミド単位などが共重合、またはブレ
ンドしてなる重合体を使用することができるが、全芳香
族ポリアミド(アラミド)を用いることが好ましい。
【0038】さらにまた、この非磁性支持体1において
は、芳香族ポリアミドフィルムの構成は少なくとも2層
以上からなる複合構造であり、各層が上記式で表される
重合体を主体とするものであれば、各層が同一組成であ
っても、異なっていても差し支えない。しかしながら、
生産性の観点から、各層が同一組成である方が有利であ
る。
【0039】さらにまた、第1の芳香族ポリアミドフィ
ルム5及び第2の芳香族ポリアミドフィルム6を形成す
るには、第1の芳香族ポリアミドフィルム5に相当する
原液と、第2の芳香族ポリアミドフィルム6に相当する
原液の2種類を公知の方法、例えば、特開昭56ー16
2617号公報に記載されるように、合流管で積層した
り、口金内で積層して形成することができる。
【0040】一方、この非磁性支持体1中に添加する不
活性粒子としては、SiO2、TiO2、Al2O3、
CaSO4、BaSO4、CaCO3、カ−ボンブラッ
ク、ゼオライト、その他の金属微粉末などの無機粒子
や、シリコン粒子、ポリイミド粒子、架橋共重合体粒
子、架橋ポリエステル粒子、テフロン粒子などの有機高
分子などを使用することができる。なかでも、耐熱性の
観点からは、上述した無機粒子を使用することが好まし
い。
【0041】この不活性粒子の添加方法としては、粒子
を予め溶媒中に十分スラリ−化した後、重合用溶媒また
は希釈用溶媒として使用する方法や、各層を形成する原
液を調製した後に直接添加する方法などがある。
【0042】また、この磁気記録媒体において、第1の
芳香族ポリアミドフィルム5中に含有される不活性粒子
は、その平均一次粒径が第2の芳香族ポリアミドフィル
ム6に含有される不活性粒子と比較して大となってい
る。
【0043】具体的に、第1の芳香族ポリアミドフィル
ム5に含有される不活性粒子の平均粒径は、0.01〜
1.5μmであることが好ましく、更には、0.1μm
〜0.5μmであることがより好ましい。また、第1の
芳香族ポリアミドフィルム5に含有される不活性粒子の
添加量は、0.05〜2.0wt%であることが好まし
い。
【0044】このように、第1の芳香族ポリアミドフィ
ルム5に含有される不活性粒子の平均粒径及び含有量を
規定することによって、バックコート層4が形成される
面の表面を所望の表面粗さとすることができる。これに
より、磁気記録媒体は、ハンドリング特性に優れたもの
となるため、長期に亘って良好に走行することができ
る。
【0045】また、第2の芳香族ポリアミドフィルム6
に含有される不活性粒子は、上層磁性層3表面の平滑性
と易滑性を向上させるため、平均粒径が、0.03〜
0.15μm、添加量が、0.01wt%〜1wt%で
あることが好ましい。
【0046】第2の芳香族ポリアミドフィルムに含有さ
れる不活性粒子の平均粒径が0.03未満の場合には、
易滑性を向上するための十分な突起が形成されないとい
った不都合が生じる虞がある。また、この不活性粒子の
平均粒径が0.15μmより大である場合には、上層磁
性層の平滑性を劣化させる虞がある。さらに、第2の芳
香族ポリアミドフィルムにおける不活性粒子の添加量が
0.01wt%未満の場合には、易滑性を向上するため
の十分な突起数を確保することができないといった不都
合が生じる虞があり、また、1wt%より大の場合に
は、突起数が過剰となり上層磁性層の表面性に悪影響を
及ぼすといった不都合を生じる虞がある。
【0047】更に一方、この非磁性支持体1において
は、第1の芳香族ポリアミドフィルム5を除いた全厚が
2.0μm以上とされている。また、好ましくは、2.
5μm以上とされている。ここで、本実施の形態では、
非磁性支持体1が第1の芳香族ポリアミドフィルム5及
び第2の芳香族ポリアミドフィルム6からなるため、第
1の芳香族ポリアミドフィルムを除く全厚とは、第2の
芳香族ポリアミドフィルムの厚みと同義である。
【0048】なお、本発明において、非磁性支持体1
は、このような構成に限定されず、3層以上の芳香族ポ
リアミドフィルムからなるような構成であってもよい。
この場合、第1の芳香族ポリアミドフィルムを除く全厚
とは、バックコート層4が形成される面を構成する芳香
族ポリイミドフィルムを除いた非磁性支持体1の厚みの
ことを示している。
【0049】このように、第1の芳香族ポリアミドフィ
ルム5を除いた全厚が2.0μm以上と規定することに
よって、第1の芳香族ポリアミドフィルム5に含有され
る比較的大きな不活性粒子が第2の芳香族ポリアミドフ
ィルム6に対して与える影響を極力小とすることができ
る。言い換えると、第1の芳香族ポリアミドフィルム5
を除いた全厚が2.0μm以上と規定すると、第2の芳
香族ポリアミドフィルム6における表面性(うねり等)
の劣化、第2の芳香族ポリアミドフィルム6中のボイド
の形成、或いは第2の芳香族ポリアミドフィルム6表面
における粗大突起の形成を防止することができる。した
がって、この第2の芳香族ポリアミドフィルム6の上方
に形成される上層磁性層3は、所望の表面性を有し、電
磁変換特性に優れたものとなり、ドロップアウトの発生
が減少して信頼性に優れたものとなる。
【0050】さらに、この非磁性支持体1において、バ
ックコート層4形成面側の表面の表面粗さ(SRa)
は、第1の芳香族ポリアミドフィルム5中に添加される
不活性粒子の大きさ及び添加量によって調節され、生産
工程におけるハンドリング性の観点から、できるだけ大
きい方が望ましい。しかしながら、この表面粗さ(SR
a)が大きすぎると、上層磁性層3塗布後、巻き取って
ロール状にした際の裏移りの影響が大きくなるため、4
nm〜20nm、好ましくは5nm〜10nmとされ
る。
【0051】さらにまた、この非磁性支持体1は、厚さ
2.5μm〜5.0μmとすることにより、必要な強度
が得られるとともに、磁気記録媒体の厚みを薄くして大
容量化に対応させることができる。
【0052】さらにまた、この非磁性支持体1は、下層
非磁性層2及び上層磁性層3が形成される一主面側の表
面に103〜105個/mm2の密度で突起が形成され
ていることが好ましい。
【0053】このように、一主面側の表面に103〜1
05個/mm2の密度で突起が形成されることによっ
て、上層磁性層3の表面性を所望な状態とすることがで
きる。言い換えると、一主面側の表面に103〜105
個/mm2の密度で突起が形成されることによって、上
層磁性層3の表面は、所望の表面粗さを有することにな
る。これにより、磁気記録媒体は、走行耐久性及び電磁
変換特性に優れたものとなる。
【0054】下層非磁性層2 下層非磁性層2は、非磁性粉末及び結合剤を主体として
なり、実質的に非磁性の層である。この下層非磁性層2
は、その上に形成される上層磁性層3の電磁変換特性に
影響を与えないように実質的に非磁性であることが必要
であるが、上層磁性層3の電磁変換特性に影響を与えな
い程度に少量の磁性粉末が含まれていても特に問題とは
ならない。また、下層非磁性層2には、通常はこれらの
成分以外に潤滑剤が含まれている。さらに、この下層非
磁性層2に含有される非磁性粉末としては、例えば、非
磁性無機粉末、カーボンブラック等を挙げることができ
る。
【0055】非磁性無機粉末としては、比較的硬いもの
が好ましく、モース硬度が5以上(更に好ましくは、6
以上)のものが好ましい。これらの非磁性無機粉末の例
としては、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミ
ナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化
鉄、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化チ
タン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシ
ウム、硫酸カルシウム、及び硫酸バリウムを挙げること
ができる。これらは単独でまたは組合せて使用すること
ができる。これらのうちでは、酸化チタン、α−アルミ
ナ、α−酸化鉄、又は酸化クロムが好ましい。
【0056】本発明で使用できる非磁性無機粉末の平均
粒子径は、0.01〜1.0(好ましくは、0.01〜
0.5、特に、0.02〜0.1)μmの範囲にあるこ
とが好ましい。また非磁性粉末のうち、3〜25重量%
(好ましくは、3〜20重量%)は、モース硬度が5以
上(好ましくは、6以上)の所謂研磨剤として機能し得
るものを使用することが好ましい。
【0057】また、非磁性無機粉末は、長軸長0.05
μm〜0.2μmの針状無機質粉末を用いることで非磁
性層を形成する際に作製される塗料の分散が良好とな
り、その結果、非磁性層の表面性を向上させることがで
きる。
【0058】カーボンブラックは、非磁性無機粉末に加
えて、導電性を付与して帯電を防止すると共に、下層非
磁性層2上に形成される上層磁性層3の平滑な表面性を
確保する目的で添加される。このカーボンブラックとし
ては、その平均粒子径が35mμ以下(更に好ましく
は、10〜35mμ)であることが好ましい。またその
比表面積は、5〜500m2/g(更に好ましくは、5
0〜300m2/g)であることが好ましい。カーボン
ブラックのDBP吸油量は、10〜1000ml/10
0g(更に好ましくは、50〜300ml/100g)
の範囲にあることが好ましい。また、カーボンブラック
のpHは、2〜10であることが好ましく、カーボンブ
ラックの含水率は、0.1〜10%であることが好まし
く、さらに、カーボンブラックのタップ密度は、0.1
〜1g/ccであることが好ましい。
【0059】なお、カーボンブラックのDBP吸油量
は、当該カーボンブラックにブチルフタレートを少しず
つ加え、練り合わせながらカーボンブラックの状態を観
察し、ばらばらに分散した状態から一つの固まりをなす
点を見出した時のブチルフタレートの添加量(ml)を
意味し、カーボンブラックの表面特性の評価に一般に用
いられている値である。
【0060】この下層非磁性層2に使用されるカーボン
ブラックとしては、様々な製法で得たものが使用でき
る。これらの例としては、ファーネスブラック、サーマ
ルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック
及びランプブラックを挙げることができる。このカ−ボ
ンブラックの具体的な商品例としては、BLACKPE
ARLS 2000、1300、1000、900、8
00、700、VULCAN XC−72(以上、キャ
ボット社製)、#35、#50、#55、#60及び#
80(以上、旭カ−ボン(株)製)、#3950B、#
3750B、#3250B、#2400B、#2300
B、#1000、#900、#40、#30、及び#1
0B(以上、三菱化成工業(株)製)、CONDUCT
EXSC、RAVEN、150、50、40、15(以
上、コンロンビアカ−ボン社製)、ケッチェンブラック
EC、ケッチェンブラックECDJ−500およびケッ
チェンブラックECDJ−600(以上、ライオンアグ
ゾ(株)製)を挙げることができる。
【0061】また、この下層非磁性層2において、カー
ボンブラックの添加量は、全非磁性無機粉末100重量
部に対して、3〜20重量部であり、好ましくは、4〜
18重量部、更に好ましくは、5〜15重量部である。
【0062】一方、この下層非磁性層2に使用される潤
滑剤は、上層磁性層3表面ににじみ出すことによって、
上層磁性層3表面と磁気ヘッドとの摩擦を緩和し、円滑
に摺接状態を維持させるために添加される。この潤滑剤
としては、例えば、脂肪酸、あるいは脂肪酸エステルを
挙げることができる。脂肪酸としては、例えば、酢酸、
プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ラ
ウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン
酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノール酸、
リノレン酸、エライジン酸、及びパルミトレイン酸等の
脂肪族カルボン酸またはこれらの混合物を挙げることが
できる。
【0063】また、脂肪酸エステルとしては、例えば、
ブチルステアレート、sec−ブチルステアレート、イ
ソプロピルステアレート、ブチルオレエート、アミルス
テアレート、3−メチルブチルステアレート、2−エチ
ルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレ
ート、ブチルパルミテート、2−エチルヘキシルミリス
テート、ブチルステアレートとブチルパルミテートの混
合物、オレイルオレエート、ブトキシエチルステアレー
ト、2−ブトキシ−1−プロピルステアレート、ジプロ
ピレングリコールモノブチルエーテルをステアリン酸で
アシル化したもの、ジエチレングリコールジパルミテー
ト、ヘキサメチレンジオールをミリスチン酸でアシル化
してジオールとしたもの、そしてグリセリンのオレエー
ト等の種々のエステル化合物を挙げることができる。こ
れらのものは、単独で、あるいは組み合わせて使用する
ことができる。
【0064】さらに、潤滑剤の通常添加量は、下層非磁
性層2の全非磁性粉末100重量部に対して、0.2〜
20重量部の範囲であることが好ましい。
【0065】上層磁性層3 上層磁性層3は、強磁性粉末及び結合剤を主体として構
成されている。また、上層磁性層3には、通常、更に潤
滑剤、導電性粉末としてカーボンブラック及び研磨剤が
含まれている。
【0066】この上層磁性層3に使用することができる
強磁性粉末としては、例えば、γ−Fe2O3、Fe3
O4、FeOx(x=1.33〜1.5)、CrO2、
Co含有γ−Fe2O3、Co含有FeOx(x=1.
33〜1.5)、強磁性金属粉末、及び板状六方晶フェ
ライト粉末を挙げることができる。この中でも、強磁性
粉末としては、強磁性金属粉末、あるいは板状六方晶フ
ェライト粉末を使用することが好ましい。特に、強磁性
粉末としては、好ましくは、強磁性金属粉末が使用され
る。
【0067】強磁性金属粉末は、その粒子の比表面積が
好ましくは30〜70m2/gであって、X線回折法か
ら求められる結晶子サイズは、50〜300Åである。
比表面積が30m2/gより小である場合には、高密度
記録に充分に対応できなる虞があり、又、比表面積が7
0m2/gより大である場合には、分散が充分に行え
ず、その結果、上層磁性層3の表面を平坦化することが
できず、同様に高密度記録に対応できなくなる虞があ
る。
【0068】さらに、強磁性金属粉末としては、少なく
ともFeを含むことが好ましく、具体的には、Fe、F
e−Co、Fe−Ni、Fe−Zn−Ni又はFe−N
i−Coを主体とした金属単体あるいは合金であること
が好ましい。またこれらの強磁性金属粉末の磁気特性に
ついては、高い記録密度を達成するために、その飽和磁
化量(飽和磁束密度)(σs)は110emu/g以
上、好ましくは120emu/g以上、170emu/
g以下である。また、強磁性金属粉末の保磁力(Hc)
は、1900〜2600エルステッド(Oe)(好まし
くは、2000〜2400Oe)の範囲である。また、
強磁性金属粉末の角形比(σr/σs)は、0.78以
上(好ましくは、0.78〜0.95、更に好ましく
は、0.80〜0.95)である。ここで、σsは、飽
和磁束密度を、σrは、残留磁束密度をそれぞれ表わ
す。角形比が0.78未満の場合には、充分な再生出力
が得にくくなる。また透過型電子顕微鏡により求められ
る粉末の長軸長(すなわち、平均粒子径)は、0.5μ
m以下、好ましくは、0.01〜0.3μmであり、軸
比(長軸長/短軸長、針状比)は、5〜20、好ましく
は、5〜15である。更に、この上層磁性層は、磁気特
性を改良する目的で、組成中にB、C、Al、Si、P
等の非金属、もしくはその塩、酸化物が添加されること
もある。なお、通常、金属粉末の粒子表面は、化学的に
安定させるために酸化物の層が形成されている。
【0069】一方、強磁性粉末の含水率は、0.01〜
2重量%とすることが好ましい。また結合剤の種類に従
って、強磁性粉末の含水率を最適化することが好まし
い。強磁性粉末のpHは、用いる結合剤との組み合わせ
により最適化することが好ましく、そのpHは通常4〜
12の範囲であり、好ましくは5〜10の範囲である。
強磁性粉末は、必要に応じて、Al、Si、P又はこれ
らの酸化物などで表面処理を施してもよい。表面処理を
施す際のその使用量は、通常強磁性粉末に対して、0.
1〜10重量%である。表面処理を施すことにより、脂
肪酸などの潤滑剤の吸着を100mg/m2以下に抑え
ることができる。強磁性粉末には可溶性のNa、Ca、
Fe、Ni、及びSrなどの無機イオンが含まれる場合
があるが、5000ppm以下であれば特性に影響を与
えることはない。
【0070】また、この上層磁性層3に使用される潤滑
剤は、上述したように、下層非磁性層2に含有させるこ
とができる潤滑剤であればいかなるものであっても使用
することができる。潤滑剤の通常の添加量は、上層磁性
層3中の強磁性粉末100重量部に対して、0.2〜2
0重量部の範囲である。
【0071】さらに、上層磁性層3に含有されるカーボ
ンブラックは、上述したように、下層非磁性層2に含有
させることができるカーボンブラックであればいかなる
ものであっても使用することができる。但し、上層磁性
層3で使用するカーボンブラックは、その平均粒子径
が、5〜350mμ(更に好ましくは、10〜300m
μ)の範囲にあることが好ましい。なお、カーボンブラ
ックは、平均粒子径の異なるものを二種以上使用するこ
とができる。カーボンブラックの添加量は、通常強磁性
粉末100重量部に対して、0.1〜30重量部(好ま
しくは、0.2〜15重量部)の範囲である。
【0072】さらにまた、上層磁性層3に含有される研
磨剤としては、例えば、溶融アルミナ、炭化珪素、酸化
クロム(Cr2O3)、コランダム、人造コランダム、
ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー
(主成分:コランダムと磁鉄鉱)を挙げることができ
る。これらの研磨剤は、モース硬度5以上(好ましく
は、6以上)であり、平均粒子径が、0.05〜1μm
の大きさのもの(更に好ましくは、0.2〜0.8μ
m)が好ましい。研磨剤の添加量は、通常前記強磁性粉
末100重量部に対して、3〜25重量部(好ましく
は、3〜20重量部)の範囲である。
【0073】また、上層磁性層2と下層磁性層3との厚
み比率(上層磁性層2/下層磁性層3)は、1/1〜1
/50、より好ましくは1/10〜1/30である。こ
のとき、上層磁性層3の厚みは、短波長領域での出力や
オーバーライト特性の等、電磁変換特性の向上のため、
0.5μm以下であることが好ましい。
【0074】バックコート層4 バックコート層4は、非磁性支持体1の下層非磁性層2
及び上層磁性層3が形成される面とは反対側の面に配設
されている。このバックコート層4は、主として、カー
ボンブラック及び無機質粉末から構成される。具体的
に、無機質粉末としては、炭酸カルシウム、及びモース
硬度5〜9の無機質粉末が挙げられる。
【0075】バックコート層4では、カーボンブラック
は、平均粒子サイズの異なる二種類のものを使用するこ
とが好ましい。この場合、その平均粒子サイズは、10
〜20mμの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイ
ズが230〜300mμの粗粒子状カーボンブラックと
を使用することが好ましい。
【0076】一般に、上述したような微粒子状のカーボ
ンブラックの添加により、バックコート層4の表面電気
抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。
磁気記録の装置によっては、テープの光透過率を利用
し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、こ
のような場合には特に、微粒子状のカーボンブラックの
添加は有効になる。
【0077】また、微粒子状カーボンブラックは、一般
に、潤滑剤に対する保持力に優れるため、潤滑剤を併用
することができ、その結果、摩擦係数を低減することが
可能となる。
【0078】一方、粒子サイズが230〜300mμの
粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能
を有しており、表面に微小突起を形成することとなるた
め、接触面積を低減化して、摩擦係数を低減することが
可能となる。しかし、粗粒子状のカーボンブラックは、
過酷な走行系では、テープ摺動により、バックコート層
からの脱落が生じ易くなり、エラー比率の増大につなが
る虞がある。
【0079】具体的に、微粒子状カーボンブラックとし
ては、以下のものを挙げることができる。RAVEN2
000B(18mμ)、RAVEN1500B(17m
μ)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800
(17mμ)(キャボット社製)、PRINNTEX9
0(14mμ)、PRINTEX95(15mμ)、P
RINTEX85(16mμ)、PRINTEX75
(17mμ)(以上、デグサ社製)、#3950(16
mμ)(三菱化成工業(株)製)。また、粗粒子カーボ
ンブラックとしては、サーマルブラック(270mμ)
(カーンカルブ社製)、RAVEN MTP(275m
μ)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができ
る。
【0080】バックコート層4において、平均粒子サイ
ズの異なる二種類のものを使用する場合、10〜20m
μの微粒子状カーボンブラックと230〜300mμの
粗粒子状カーボンブラックの含有比率(重量比)は、微
粒子状カーボンブラック:粗粒子状カーボンブラック=
98:2〜75:25の範囲が好ましく、更に好ましく
は、95:5〜85:15である。また、バックコート
層4におけるカーボンブラック(微粒子状と粗粒子状を
加えた場合においては、その全量)の含有量は、後述す
る結合剤100重量部に対して、通常30〜80重量部
の範囲であり、好ましくは、45〜65重量部の範囲で
ある。
【0081】一方、無機質粉末は、特にモース硬度が5
〜9のものが用いられることにより磁気記録媒体に繰り
返し走行耐久性を付与し、バックコート層4を強化する
ことができる。これらの無機質粉末を前記のカーボンブ
ラックや炭酸カルシウムと共に使用すると、そのフィラ
ー効果により、バックコート層4が、繰り返し摺動に対
しても劣化が少なく、強いバックコート層4となる。
【0082】また、バックコート層4で使用する無機質
粉末を、モース硬度が5〜9と比較的高いものとする
と、バックコート層4の表面に適度の研磨力が生じ、ガ
イドポール等への付着が低減する。磁気記録媒体として
は、特に、バックコート層に炭酸カルシウムと無機質粉
末とを併用すると、表面の粗いガイドポール等に対して
の摺動特性が向上し、バックコート層4の摩擦係数の安
定化も図ることができる。なお、無機質粉末は、その平
均粒子サイズが80〜250mμの範囲のものであるこ
とが好ましく、更に好ましくは、100〜210mμの
範囲のものである。
【0083】この無機質粉末としては、例えば、α−酸
化鉄、α−アルミナ、及び酸化クロム(Cr2O3)を
挙げることができる。これらの無機質粉末は、それぞれ
単独で用いても良いし、あるいは併用しても良い。これ
らの中では、α−酸化鉄又はα−アルミナが好ましい。
モース硬度が5〜9の無機質粉末の含有量は、カーボン
ブラック100重量部に対して通常3〜30重量部であ
り、好ましくは、3〜20重量部である。特に、バック
コート層4には、平均粒子サイズの異なる二種類のカー
ボンブラックと前記粒子サイズの炭酸カルシウムと、そ
して前記特定のモース硬度を有する無機質粉末が含有さ
れていることが好ましい。
【0084】バックコート層4には、潤滑剤を含有させ
ることができる。潤滑剤は、上述したように、下層非磁
性層2及び上層磁性層3に使用できるものとして挙げた
潤滑剤の中から適宜選択して使用できる。バックコート
層4において、潤滑剤は、結合剤樹脂100重量部に対
して通常1〜5重量部の範囲で添加されることが好まし
い。
【0085】結合剤 下層非磁性層2、上層磁性層3及びバックコート層4を
構成する結合剤について説明する。
【0086】この結合剤としては、例えば、熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物を挙げ
ることができる。
【0087】熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、
酢酸ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクリル
酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニ
トリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレ
ン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニル
アセタール、及びビニルエーテルを構成単位として含む
重合体、あるいは共重合体を挙げることができる。共重
合体としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル
−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−ア
クリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビ
ニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重
合体、メタアクリル酸エステル−アクリロニトリル共重
合体、メタアクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合
体、メタアクリル酸エステル−スチレン共重合体、塩化
ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−
アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重
合体、クロロビニルエーテル−アクリル酸エステル共重
合体を挙げることができる。上記の他に、ポリアミド樹
脂、繊維素系樹脂(セルロースアセテートブチレート、
セルロースダイアセテート、セルロースプロピオネー
ト、ニトロセルロースなど)、ポリフッ化ビニル、ポリ
エステル樹脂、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂等も
例示することができる。
【0088】また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂として
は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレ
タン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹
脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリ
コーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル
樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリ
エステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポ
リウレタンとポリイソシアネートの混合物を挙げること
ができる。
【0089】さらに、この磁気記録媒体において、上層
磁性層3及び下層非磁性層2に用いられる結合剤として
は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合
体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合
体、及びニトロセルロースの中から選ばれる少なくとも
1種の樹脂と、ポリウレタン樹脂との組合せ、又はこれ
らに更にポリイソシアネートを組み合わて構成すること
が好ましい。このポリウレタン樹脂は、ポリエステルポ
リウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテル
ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレ
タン、ポリエステルポリカーボネートポリウレタン、及
びポリカプロラクトンポリウレタンなどの構造を有する
公知のものを使用することができる。
【0090】一方、上述したような結合剤には、より優
れた分散性と耐久性を向上させるために必要に応じて、
−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O(O
M)2、−O−P=O(OM)2(Mは水素原子、また
はアルカリ金属塩基を表わす。)、−OH、−NR2、
−N+R3(Rは炭化水素基を表わす。)、エポキシ
基、−SH、−CNなどから選ばれる少なくともひとつ
の極性基を共重合または付加反応で導入することが好ま
しい。このような極性基は、10−1〜10−8モル/
g(さらに好ましくは、10−2〜10−6モル/g)
の量で導入されていることが好ましい。
【0091】また、結合剤中に含有されるポリイソシア
ネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、
4−4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサ
メチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネー
ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トル
イジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソ
シアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコ
ールとの生成物、及びイソシアネート類の縮合によって
生成したポリイソシアネ−トを挙げることができる。
【0092】さらに、上述したような結合剤は、上層磁
性層3の強磁性粉末100重量部に対して、或いは下層
非磁性層2の非磁性粉末100重量部に対して、5〜5
0重量部(好ましくは10〜30重量部)の範囲で用い
られる。なお、上層磁性層3、或いは下層非磁性層2に
結合剤として塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、及
びポリイソシアネートを組み合わせて用いる場合は、全
結合剤中に、塩化ビニル系樹脂が5〜70重量%、ポリ
ウレタン樹脂が2〜50重量%、そしてポリイソシアネ
ートが2〜50重量%の範囲の量で含まれるように用い
ることが好ましい。
【0093】さらにまた、上層磁性層3に用いられる結
合剤と下層非磁性層2に用いられる結合剤とは、塗膜の
均一性を向上させ、より欠陥の少ない磁気記録媒体を得
られるため、同一組成であることが望ましい。
【0094】さらにまた、バックコート層4には、結合
剤はバックコート層4の非磁性粉末100重量部に対し
て、5〜100重量部(好ましくは10〜80重量部)
の範囲で用いられる。
【0095】添加剤 添加剤としては、上層磁性層3、下層非磁性層2及びバ
ックコート層4を形成する塗布液に、磁性粉末或いは非
磁性粉末等を結合剤中に良好に分散させるために添加さ
れる分散剤を挙げることができる。また、添加剤として
は、必要に応じて添加される、可塑剤、カーボンブラッ
ク以外の導電性粒子(帯電防止剤)、防黴剤等を挙げる
ことができる。
【0096】分散剤としては、例えば、カプリル酸、カ
プリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、
ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、
リノール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数1
2〜18個の脂肪酸(RCOOH、Rは炭素数11〜1
7個のアルキル基、又はアルケニル基)、前記脂肪酸の
アルカリ金属又はアルカリ土類金属からなる金属石け
ん、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドア
ルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオ
レフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素
数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンな
ど)、硫酸塩、及び銅フタロシアニン等を使用すること
ができる。これらは、単独でも組み合わせて使用しても
良い。特に、バックコート層4には、オレイン酸銅、銅
フタロシアニン、及び硫酸バリウムを組み合わせて使用
することが好ましい。分散剤は、いずれの層においても
結合剤樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部の
範囲で添加される。
【0097】
【実施例】以下、本発明の実施例について具体的な実験
結果に基づいて説明する。
【0098】本実験例では、潤滑剤として、フッ素含有
カルボン酸を使用した場合の効果を以下のようにして確
認した。
【0099】先ず、次のようにしてサンプルテープを作
製した。
【0100】1.フッ素含有カルボン酸の準備 先ず、表1に示されるような5種類のフッ素含有カルボ
ン酸を準備し、それぞれを化合物1〜化合物5とした。
【0101】
【表1】
【0102】2.サンプルテープの作製 〈実施例1〉先ず、N−メチル−2−ピロリドン(NM
P)中で平均粒径0.1μmの乾式シリカ粒子を分散さ
せたスラリーを用意した。
【0103】次に、重合槽にNMPと上記スラリーを仕
込み、この中に芳香族ジアミン成分として80モル%に
相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと、20モ
ル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエ−テル
とを溶解させ、これに100モル%に相当する2−クロ
ルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間撹拌して重合
を完了した。これを水酸化リチウムで中和して、磁性層
形成面側の層、すなわち第2の芳香族ポリアミドフィル
ム用のポリマー溶液(A液と呼ぶ。)を得た。なお、粒
子の含有量は芳香族ポリアミドに対して0.1wt%で
あった。
【0104】また、同様の方法で平均粒径0.5μmの
シリカ粒子を芳香族ポリアミドに対して0.05wt%
含有するバックコート形成面側の層、すなわち第1のポ
リアミドフィルム用のポリマ−溶液(B液と呼ぶ。)を
調製した。
【0105】A液及びB液も、ポリマー濃度10重量
%、30℃での溶液粘度を3000ポイズに調整して製
膜原液とした。
【0106】そして、これらA液及びB液の製膜原液を
5μmカットのフィルタ−を通した後、2層に積層して
金属ベルト上に流延してフィルムを作製した。押し出し
量を同量にして最終フィルムの厚みが4μmになるよう
にした。この流延されたフィルムを180℃の熱風で2
分間加熱して溶媒を蒸発させ、自己保持性を得たフィル
ムをベルトから連続的に剥離した。
【0107】次に、NMPの濃度勾配をつけた水槽内へ
フィルムを導入して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水
抽出を行ない、テンターで水分の乾燥と熱処理を行なっ
た。この間にフィルム長手方向と幅方向に各々1.1
倍、1.5倍延伸を行ない、280℃で1.5分間乾燥
と熱処理を行なった後、20℃/秒の速度で徐冷し、非
磁性支持体を得た。
【0108】次に、このようにして作製された非磁性支
持体を用いて、下記のような手法にて、磁気テープ原反
を作製した。
【0109】先ず、下記の磁性塗料組成に準じて塗料組
成物を計り取って混合し、ニーダーによって混練した
後、サンドミルによって4時間分散させることで上層磁
性層用の磁性塗料を調製した。
【0110】 磁性塗料組成 強磁性粉末:Fe系メタル強磁性粉末 100重量部 (保磁力:160kA/m,飽和磁化量:135Am2/kg,比表面積:51 m2/g,長軸長:0.15μm,針状比:6) 結合剤: ポリ塩化ビニル樹脂(日本ゼオン社製,商品名MR−110) 16重量部 ポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製) 4重量部 添加剤:カーボン 2重量部 Al2O3 5重量部 ステアリン酸 1重量部 ヘプチルステアレート 1重量部 溶剤:メチルエチルケトン 150重量部 シクロヘキサノン 150重量部 また、下記の非磁性塗料組成に準じて塗料組成物を計り
取って混合し、同様にしてニーダーによって混練した
後、サンドミルによって4時間分散させることで下層非
磁性層用の非磁性塗料を調製した。
【0111】 非磁性塗料組成 非磁性粉末: 針状α−Fe2O3(長軸長:0.15μm,針状比:6) 89.9重量部 カーボンブラック(平均粒径:0.025mμ) 10.1重量部 (但し、針状α−Fe2O3とカーボンブラックの体積比率(%)は、針状α− Fe2O3:カーボンブラック=70:30である) 結合剤: ポリ塩化ビニル樹脂(日本ゼオン社製,商品名MR−110) 13重量部 ポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製) 4重量部 添加剤:ステアリン酸 1重量部 ヘプチルステアレート 1重量部 溶剤:メチルエチルケトン 105重量部 シクロヘキサノン 105重量部 このようにして調製された磁性塗料及び非磁性塗料にそ
れぞれポリイソシアネートを、磁性塗料に対して4重量
部、非磁性塗料に対して2重量部なる量で添加した。そ
して、この磁性塗料及び非磁性塗料を4リップ方式のダ
イコーターを用いて、上述した非磁性支持体上に塗布し
た後、ソレノイドコイルによって配向処理を行った。そ
の後、塗膜を乾燥した後、カレンダー処理、硬化処理を
順次行った。なお、膜厚構成は、上層磁性層が0.3μ
m、下層非磁性層が2.4μmであった。
【0112】次に、下記の組成に準じてバック塗料を調
製した。
【0113】 バック塗料組成 カーボンブラック(旭社製,#50) 100重量部 ポリエステルポリウレタン 100重量部 (ニッポラン社製 商品名N−2304) 溶剤:メチルエチルケトン 500重量部 トルエン 500重量部 そして、調製されたバック塗料を、非磁性支持体の下層
非磁性層及び上層磁性層を形成した側とは反対側の面に
塗布、乾燥することでバックコート層を形成した。
【0114】このようにして非磁性支持体上に下層非磁
性層、上層磁性層及びバックコート層が形成されてなる
テープ原反を、3.8mm幅にスリットしてテープ状と
した。
【0115】さらに、テープ状とされた原反の上層磁性
層上に、上記表1に示される化合物1をヘキサン溶媒に
溶解したものを、塗布量が5mg/m2となるように塗
布して磁気テープを得た。
【0116】〈実施例2〉A液の押し出し量を増やし、
その分B液の押し出し量を減らして、全厚が4μmとな
るように非磁性支持体を作製し、潤滑剤として、表1に
示される化合物2を使用したこと以外は、実施例1と同
様にして磁気テープを作製した。
【0117】その結果、実施例2では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが3.0μmとなっている。
【0118】〈実施例3〉B液に添加されるシリカ粒子
として平均粒径0.5μmのものを用い、その添加量が
0.1wt%となるように調整し、さらに、A液の押し
出し量を増やし、その分B液の押し出し量を減らして、
全厚が4μmとなるように非磁性支持体を作製し、潤滑
剤として、表1に示される化合物3を使用したこと以外
は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0119】その結果、実施例3では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが2.5μmとなっている。
【0120】〈比較例1〉上層磁性層上に潤滑剤を塗布
しなかったこと以外は、実施例1と同様にして磁気テー
プを作製した。
【0121】〈比較例2〉上層磁性層上に潤滑剤を塗布
しなかったこと以外は、実施例2と同様にして磁気テー
プを作製した。
【0122】〈比較例3〉上層磁性層上に潤滑剤を塗布
しなかったこと以外は、実施例3と同様にして磁気テー
プを作製した。
【0123】〈比較例4〉B液に添加されるシリカ粒子
として平均粒径0.01μmのものを用い、その添加量
が2.0wt%となるように調整し、さらに、A液の押
し出し量を増やし、その分B液の押し出し量を減らし
て、全厚が4μmとなるように非磁性支持体を作製し、
潤滑剤として、表1に示される化合物4を使用したこと
以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0124】その結果、比較例4では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが2.1μmとなっている。
【0125】〈比較例5〉B液に添加されるシリカ粒子
として平均粒径0.01μmのものを用い、その添加量
が2.0wt%となるように調整し、さらに、A液の押
し出し量を増やし、その分B液の押し出し量を減らし
て、全厚が4μmとなるように非磁性支持体を作製し、
潤滑剤として、表1に示される化合物5を使用したこと
以外は、実施例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0126】その結果、比較例5では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが3.2μmとなっている。
【0127】〈比較例6〉上層磁性層上に潤滑剤を塗布
しなかったこと以外は、比較例4と同様にして磁気テー
プを作製した。
【0128】〈比較例7〉上層磁性層上に潤滑剤を塗布
しなかったこと以外は、比較例5と同様にして磁気テー
プを作製した。
【0129】〈比較例8〉A液の押し出し量を増やし、
その分B液の押し出し量を減らして、全厚が4μmとな
るように非磁性支持体を作製した以外は、比較例1と同
様にして磁気テープを作製した。
【0130】その結果、比較例8では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが1.8μmとなっている。
【0131】〈比較例9〉B液に添加されるシリカ粒子
として平均粒径0.5μmのものを用い、その添加量が
0.1wt%となるように調整し、さらに、A液の押し
出し量を増やし、その分B液の押し出し量を減らして、
全厚が4μmとなるように非磁性支持体を作製した以外
は、比較例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0132】その結果、比較例9では、第2の芳香族ポ
リアミドフィルムの厚みが1.5μmとなっている。
【0133】〈比較例10〉B液に添加されるシリカ粒
子として平均粒径0.05μmのものを用い、その添加
量が0.05wt%となるように調整したこと以外は、
比較例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0134】〈比較例11〉B液に添加されるシリカ粒
子として平均粒径1.8μmのものを用い、その添加量
が2.5wt%となるように調整したこと以外は、比較
例1と同様にして磁気テープを作製した。
【0135】ここで、上記実施例1〜実施例3及び比較
例1〜比較例11の14種類のサンプルテープに用いら
れた潤滑剤、第2の芳香族ポリアミドフィルムの厚み、
B液に添加されるシリカ粒子の平均粒径及び添加量、第
1の芳香族ポリアミドフィルムの表面粗さを表2にまと
めて示す。
【0136】
【表2】
【0137】3.特性の評価 次に、上記実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例1
1の14種類のサンプルテープについて種々の物性値及
び特性特性を、以下に示す方法により測定し、評価し
た。
【0138】フィルム厚の測定 フィルム厚の測定はミクロトーム法により、フィルム断
面の切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用
い、倍率5千倍で10箇所撮影し、10箇所の平均値を
もって層厚とした。
【0139】表面粗度の測定 表面粗度の測定は、小坂研究所製の表面粗さ測定器「E
T−30HK」を用い、触針径2μmR、触針圧10m
g、カットオフ値0.25mm、X方向測定長は、0.
8mm、Y方向は0.12μmの条件で測定して求め
た。
【0140】表面突起個数 ポリアミドフィルム中に不活性粒子を添加することによ
り形成される突起の個数は、高走査型電子顕微鏡(SE
M)を用い、倍率5千倍以上にてカウントし、1mm2
当たりの個数に換算した。
【0141】テープ特性 実施例及び比較例における磁気記録媒体の特性評価は、
ソニー製DDS−3ドライブSDT−9000を改造し
たものを用いて行った。記録は、相対速度13.2m/
sec、最短記録波長0.33μmで行った。
【0142】・ドロップアウトの測定 ドロップアウトの測定は、出力減衰が6dB、継続時間
が1μsec以上のドロップアウトを1分間ドロップア
ウトカウンターで測定した。
【0143】・耐久性 耐久性としては、150m長を1000パス走行させ、
1パス走行後のエラーレート、1000パス走行後のエ
ラーレートを測定した。
【0144】・走行耐久性 走行耐久性としては、サンプルテープに100MBのデ
ータを記録し、巻き戻しを行い繰り返し記録、再生を行
い、繰り返しの走行回数(パス数)を測定した。なお、
測定は5000パスで打ち切りとした。
【0145】摩擦係数の測定 摩擦係数としては、高温槽中で温度40℃、湿度80%
RHに制御して、サンプルテープを1000パス走行さ
せて測定した。なお、1000パス走行後の数値を摩擦
係数として表中に示した。
【0146】ハンドリング性の評価 磁性層塗布時の塗布速度を100m/secとし、問題
無く塗布できた場合を○、問題とならない範囲でしわ等
が観察された場合を△、走行時のバタツキ、しわ等が観
察された場合を×とした。
【0147】以上のように作製された実施例1〜実施例
3と比較例1〜比較例11の磁気テープに関して、上述
したような特性を評価した結果を表3に示す。
【0148】
【表3】
【0149】表3の結果から、非磁性支持体の第1のポ
リアミドフィルムを除く層厚が2μmよりも薄い比較例
8、比較例9では、ドロップアウトが多いほか、走行後
のエラーレートが著しく増大してしまった。また、第1
のポリアミドフィルム中に添加される不活性粒子の粒径
が第2の芳香族ポリアミドフィルム中の不活性粒子と比
較して小さい比較例4、比較例5では、十分な走行性、
ハンドリング性が得られなかった。また、非磁性支持体
のバックコート層形成面側の表面粗さSRaが小さい比
較例10では、ドロップアウト、初期及び走行後のエラ
ーレートを損なうことはないが、磁気テープ製造工程上
のハンドリング性が劣ることがわかった。
【0150】それに対し、実施例1〜実施例3のよう
に、非磁性支持体が少なくとも2層以上の複合構造から
なる芳香族ポリアミドフィルムであり、バックコート層
形成面側の第1の芳香族ポリアミドフィルム中の不活性
粒子が第2の芳香族ポリアミドフィルム中の不活性粒子
と比較して大であって、第1のポリアミドフィルムを除
く層厚を2μm以上とすることにより、ドロップアウ
ト、初期及び走行後のエラーレートを良好なものとする
ことができることがわかった。
【0151】さらに、実施例1〜実施例3と比較例1〜
比較例3とをそれぞれ比較することにより、本発明によ
るフッ素含有カルボン酸を潤滑剤に用いることによって
ドロップアウトを減少させ、良好な走行耐久性を実現す
ることができることがわかった。
【0152】
【発明の効果】本発明に係る磁気記録媒体では、非磁性
支持体における下層非磁性層及び上層磁性層が形成され
る一主面が所望の優れた表面性を示すとともに、他主面
の表面性も所望の状態とすることができる。このため、
この磁気記録媒体では、走行耐久性及び電磁変換特性に
優れ、且つ、ハンドリング特性にも優れたものとなる。
【0153】また、本発明に係る磁気記録媒体では、上
層磁性層に潤滑剤が保持されているので、ドロップアウ
トを減少させ、さらに優れた走行耐久性を実現すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の一例を示す断面図
である。
【図2】下層非磁性層及び上層磁性層を形成する際に用
いる塗布装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 非磁性支持体、 2 下層非磁性層、 3 上層磁
性層、 4 バックコート層、 5 第1の芳香族ポリ
アミドフィルム、 6 第1の芳香族ポリアミドフィル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 5/71 G11B 5/71 5/842 5/842 Z Fターム(参考) 4F100 AB02 AB02H AH02A AH05A AK15 AK47C AK47D BA04 BA07 BA10A BA10D BA26 CA20A CA20B CC00A CC00B DE01A DE01B DE01C EC15A EC15B GB41 JG06A JG06B JL00 4H104 BD07A LA20 PA16 4J038 CA021 CA071 CB011 CC021 CD021 CD081 CE021 CE051 CE071 CF021 CG031 CG071 CG141 EA011 EA012 HA066 HA216 JA36 JA38 KA20 NA22 PA07 PB03 PC08 5D006 BA02 BA06 BA11 BA20 CB03 CB05 EA01 FA02 FA05 5D112 AA02 AA05 AA07 AA12 AA22 BA01 BA07 BB03 BB04 BB08 BC05 CC01

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体の一主面上に、非磁性粉末
    及び結合剤を主体とする非磁性塗料が塗布されてなる下
    層非磁性層と、磁性粉末及び結合剤を主体とする磁性塗
    料が塗布されてなる上層磁性層とがこの順で形成されて
    なる磁気記録媒体において、 上記非磁性支持体は、少なくとも、他主面を構成する第
    1の芳香族ポリアミドフィルムと、上記第1の芳香族ポ
    リアミドフィルム上に形成された第2の芳香族ポリアミ
    ドフィルムとを有するとともに、上記第1の芳香族ポリ
    アミドフィルム中に含有される不活性粒子が上記第2の
    芳香族ポリアミドフィルム中に含有される不活性粒子と
    比較して大とされてなり、 上記非磁性支持体は、上記第1の芳香族ポリアミドフィ
    ルムを除いた厚みが2.0μm以上であり、 上記上層磁性層は、フッ素含有カルボン酸を保持してい
    ることを特徴とする磁気記録媒体。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002053890A (ja) * 2000-08-10 2002-02-19 Ntn Corp 導電性潤滑グリースおよび導電性転がり軸受
JP2021136047A (ja) * 2020-02-28 2021-09-13 富士フイルム株式会社 磁気記録媒体、磁気テープカートリッジおよび磁気記録再生装置
WO2023037612A1 (ja) * 2021-09-07 2023-03-16 ソニーグループ株式会社 磁気記録媒体

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