JP3512048B2 - 磁気記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体及びその製造方法

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JP3512048B2
JP3512048B2 JP04044596A JP4044596A JP3512048B2 JP 3512048 B2 JP3512048 B2 JP 3512048B2 JP 04044596 A JP04044596 A JP 04044596A JP 4044596 A JP4044596 A JP 4044596A JP 3512048 B2 JP3512048 B2 JP 3512048B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性支持体上
に、非磁性粉末を結合剤中に分散せしめた下層非磁性層
と、磁性粉末を結合剤中に分散せしめた上層磁性層とを
設けてなる磁気テープ、磁気ディスク等の磁気記録媒体
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オーディオ用テープ、
ビデオテープ、バックアップ用データーカートリッジ、
フロッピーディスク等として広く利用されている。特に
最近では、記録波長の短波長化、ディジタル記録方式
等、高密度記録の検討が盛んに行われており、電磁変換
特性の優れた磁気記録媒体の開発が要求されている。
【0003】塗布型磁気記録媒体においては、電磁変換
特性を向上させるために、磁性層の薄膜化が検討されて
いる。これは、記録時の自己減磁損失を低減することに
より電磁変換特性を向上させるものであり、近年、種々
の塗布方式が提案されている。
【0004】特に、非磁性支持体に1μm以下の薄い磁
性層を単層で設けた場合、支持体の表面形状の影響が現
れやすく、平滑な表面を得ることは困難であるため、磁
性層と非磁性支持体との間に非磁性の下塗り層を設け、
磁性層を薄膜化すると共に平滑面を実現する方法が考案
されている。
【0005】一方、このように磁性層を上層、非磁性下
塗り層を下層とする磁気記録媒体においては、各層の塗
布に際し、電磁変換特性の向上やノイズの低減といった
目的により、塗布欠陥や塗り筋のない均一な塗膜にする
ことが要求される。
【0006】その方法としては、ダイコーターにより、
上層磁性層と下層非磁性層とを非磁性支持体上に同時に
塗布する、いわゆる同時重層塗布方式が提案されてい
る。また、この塗布方式は上下層の界面の接着性を向上
させる方法としても有効であり、近年の重層塗布型磁気
記録媒体の中心的な塗布方式になりつつある。
【0007】また、一般に、記録再生時のスペーシング
ロスを最小限にするために、表面の平滑化が図られてい
る。特に高密度記録においては、使用する記録波長が短
いため、表面の粗さの影響を受けやすく、表面粗さの制
御が重要である。
【0008】更に、強磁性粉末の改良も有効な手法であ
る。具体的には、 (1)強磁性粉末として強磁性合金粉末
の使用、 (2)強磁性粉末の微細化、 (3)強磁性粉末の保
磁力の増加及び保磁力分布の均一化等が挙げられる。
【0009】これらのうち、 (1)、(2) については、磁
性材料の改良が積極的に進められた結果、現在では、飽
和磁化が 140Am2/kgを超える強磁性粉末や長軸長 0.1μ
m以下の強磁性粉末が開発されている。また、 (3)につ
いては、保磁力が 160kA/mを超える強磁性粉末も現れて
おり、保磁力分布を反映する粒子サイズ分布も極めて均
一化する等、目ざましい発展が見られる。
【0010】ところで、磁気記録媒体が良好な電磁変換
特性を発揮するためには、強磁性粉末は結合剤中に均一
に分散されていなければならないが、強磁性粉末の微細
化に伴って、結合剤中への粉体の分散は困難になる傾向
がある。
【0011】このような課題を解決する手法として、磁
性塗料を調製する際に行う混練又は分散の所要時間を長
くすることが考えられるが、磁性粉末の損傷や製造効率
の低下の問題が生じ易いので、好ましくない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、特に
1μm以下の極めて薄い磁性層を有する重層塗布型磁気
記録媒体において、高密度記録に好適な高い電磁変換特
性を有する磁気記録媒体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、非磁性
支持体上に、非磁性粉末を結合剤中に分散せしめた下層
非磁性層と、磁性粉末を結合剤中に分散せしめた上層磁
性層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記上層磁
性層と前記下層非磁性層との両方に、チタンカップリン
グ剤が前記磁性粉末又は前記非磁性粉末100重量部に
対してそれぞれ1〜5重量部含有され、平均重合度が1
50〜300の結合剤が前記上層磁性層と前記下層非磁
性層との少なくとも一方に含有され、かつ、前記上層磁
性層の表面の中心線平均粗さRaが4.8nm以下であ
ことを特徴とする磁気記録媒体に係るものである。
【0014】また、本発明は、非磁性支持体上に、非磁
性粉末を結合剤中に分散せしめた下層非磁性層と、磁性
粉末を結合剤中に分散せしめた上層磁性層とを設けてな
る磁気記録媒体を製造するに際し、前記上層磁性層用の
塗料と前記下層非磁性層用の塗料との両方にチタンカッ
プリング剤を前記磁性粉末又は前記非磁性粉末100重
量部に対してそれぞれ1〜5重量部含有せしめると共
に、前記上層磁性層用の塗料と前記下層非磁性層用の塗
料との少なくとも一方に平均重合度が150〜300の
結合剤を含有せしめ、前記非磁性支持体上に前記下層非
磁性層用の塗料を塗布し、この下層非磁性層が湿潤状態
のうちに、前記上層磁性層用の塗料を前記下層非磁性層
上に塗布し、更に乾燥を経て、表面の中心線平均粗さR
aが4.8nm以下の前記上層磁性層を形成する、磁気
記録媒体の製造方法も提供するものである。
【0015】本発明の磁気記録媒体によれば、上層磁性
層及び下層非磁性層に用いる上記チタンカップリング剤
が界面活性剤として効果的に作用し、この界面活性剤の
親水基が磁性粉末又は非磁性粉末の表面に吸着し、かつ
その親油基が結合剤と親和することによって、この界面
活性剤が分散剤として機能し、微細サイズの磁性粉末又
は非磁性粉末を用いてもその分散性を向上させるのであ
る。この結果、磁性粉末の特性が十分に発揮され、磁気
記録媒体の電磁変換特性が向上する。
【0016】更に、この界面活性剤の親油基は結合剤と
強く結合するため、高い力学的強度を持つ高重合度の結
合剤を用いても、強磁性粉末又は非磁性粉末の分散性の
向上を実現させるのである。このため、優れた走行耐久
性を有する磁気記録媒体がもたらされる。
【0017】こうした顕著な効果を得るには、上記チタ
ンカップリング剤からなる界面活性剤の含有量が非常に
重要である。即ち、上層磁性層及び下層非磁性層に含有
されるこの界面活性剤の量は、磁性粉末又は非磁性粉末
100重量部に対してそれぞれ1〜5重量部とすべきであ
る。この含有量が5重量部より多い場合には、結合剤と
未反応の官能基が磁性層又は非磁性層中に多く残存し、
これらが相互作用を及ぼし合うため、粉末の分散性が低
下し、また、未反応の官能基は塗膜の架橋を施す目的で
含有されるポリイソシアネート化合物と速やかに反応す
るため、粉末の分散性が低下する場合もある。一方、界
面活性剤の含有量が1重量部より少ない場合には、粉末
の分散剤としての機能が発揮されない。
【0018】上層磁性層と下層非磁性層とに含有される
チタンカップリング剤は同一のものであってよいが、異
なっていてもよい。
【0019】また、本発明の製造方法によれば、下層非
磁性層上に上層磁性層をいわばウエット・オン・ウエッ
ト方式で同時に重ねる同時湿潤塗布を行い、下層非磁性
層が湿潤状態のまま上層磁性層の磁性塗料を塗布するの
で、下層非磁性層の表面(即ち、上層磁性層との境界
面)が滑らかになると共に、上層磁性層の表面性が良好
となり、かつ上下層間の接着性も向上する。しかも、塗
布欠陥等がなく、均一な塗膜を形成できる。
【0020】こうして、特に高密度記録のための高出
力、低ノイズ、更には優れた電磁変換特性が要求される
磁気記録媒体としての要求性能を満たしたものとなり、
磁性層が1μm以下と極く薄くても、そうした性能が得
られ、かつ膜剥離がなくなり、膜強度が向上する。ま
た、ドロップアウトも低減することが可能であり、信頼
性も向上する。このような顕著な効果は、上記した含有
量のチタンカップリング剤と共に平均重合度が150〜
300の結合剤を併用して、上層磁性層の表面の中心線
平均粗さRaを4.8nm以下に保持して表面性を向上
させ、かつ層の力学的強度の向上(即ち、耐久性の向
上)も併せて実現したことによるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明においては、上層磁性層の
厚さ(実際には、カレンダー処理後の平均厚み:単位面
積当たりの平均の厚み)を1μm以下にすることが十分
に可能であるから、記録減磁の低減が可能であり、短波
長での出力、オーバーライト等の電磁変換特性が向上す
る。短波長記録(特に0.67〜0.33μm)では、磁性層の
厚みが1μm以下と薄いほど再生出力損失が小さく、高
出力が得られる。
【0022】また、磁性粉末及び非磁性粉末の比表面積
が30〜80m2/g、或いは長軸長が0.01〜0.50μmであって
も、十分に分散可能となる。
【0023】また、上記した結合剤は、平均重合度が1
50〜300であ、上層磁性層と下層非磁性層との少
なくとも一方に用いられる。これらの両層では、同じ重
合度で同一種の結合剤を用いてよいが、異なる重合度或
いは異なる種類の結合剤を用いてもよい。
【0024】磁気記録媒体に使用される分散剤の具体例
としては、炭素数10〜20の脂肪酸、これら脂肪酸と
アルカリ、アルカリ土類、遷移金属などからなる石鹸及
びこれらとの燐酸或いは硫酸エステル、シリコン系、ア
ルミニウム系、チタン系のカップリング剤等が挙げられ
るが、本発明においては、チタン系のカップリング剤を
上層磁性層及び下層磁性層の両方に含有させることによ
ってのみ、前記した本発明の目的が達成されるのであ
る。
【0025】こうしたチタンカップリング剤としては、
例えばイソプロピルトリイソステアリルチタネート、イ
ソプロピルジメタクリルイソステアリルチタネート、イ
ソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネー
ト、イソプロピルトリジオクチルフォスフェイトチタネ
ート、イソプロピル−4−アミノベンゼンスルホニルジ
ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、アルコキシト
リメタクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチ
ルフィロフォスフェイト)チタネート、アルコキシトリ
アクリルチタネート、イソプロピルトリ−N−エチルア
ミノ−エチルアミノチタネート、テトライソプロピルジ
(ジオクチルフォスフェイト)チタネートが挙げられ
る。
【0026】本発明においては、磁性塗料及び非磁性塗
料は、実際には、上記チタンカップリング剤(界面活性
剤)を強磁性粉末又は非磁性粉末と結合剤と同時に混合
し、溶剤と共に混練、分散を行う方法;予め上記チタン
カップリング剤で処理した粉体を結合剤と溶剤と共に混
練、分散を行う方法;または、粉体を結合剤と溶剤と共
に混練し、分散時に上記チタンカップリング剤を添加す
る方法によって調製される。
【0027】非磁性支持体上の上記磁性層が設けられて
いない面(裏面)には、磁気記録媒体の走行性の向上や
帯電防止及び転写防止等を目的として、バックコート層
を設けてもよい。また、下層と非磁性支持体との間に
は、塗膜と支持体との接着性を強化する目的で、下塗層
を設けることも可能である。これは本発明における下層
非磁性層と異なるものであることは言うまでもない。
【0028】また、上層磁性層及び下層非磁性層に含有
させる結合剤は、従来から磁気記録媒体用の結合剤とし
て使用される公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応
型樹脂等が使用可能であり、数平均分子量が 5,000〜10
0,000 のものが好ましい。
【0029】熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル
−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−ア
クリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビ
ニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロ
ニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニル−
塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリ
ル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共
重合体、アクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合
体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン共重合体、
メタクリル酸エステル−塩化ビニル共重合体、メタクリ
ル酸エステル−エチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩
化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニ
トリル−ブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビ
ニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテ
ートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロー
ストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロ
セルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレ
タン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等
が挙げられる。
【0030】また、熱硬化性樹脂または反応型樹脂の例
としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタ
ン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹
脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアル
デヒド樹脂等が挙げられる。
【0031】また、上記の結合剤には、磁性粉をはじめ
とする顔料の分散性を更に向上させる目的で、−SO3
M、−OSO3 M、−COOM、P=O(OM)2 等の
極性官能基が導入されていてもよい。ここで、Mは、水
素原子或いは、リチウム、カリウム、ナトリウム等のア
ルカリ金属である。また、上記極性官能基としては、−
NR1 2 、−NR1 2 3 + - の末端基を有する
側鎖型のもの、−NR1 2 + - の主鎖型のものがあ
る。ここで、R1 、R2 、R3 は、水素原子或いは炭化
水素基であり、X- は弗素、塩素、臭素、ヨウ素等のハ
ロゲン元素イオン或いは無機・有機イオンである。ま
た、上記以外にも、−OH、−SH、−CN、エポキシ
基等の極性官能基がある。
【0032】上記した極性官能基の量は、10-1〜10-8 m
ol/gであり、好ましくは10-2〜10-6mol/g である。
【0033】結合剤は、1種単独で用いられることが可
能であるが、2種以上を併用することも可能である。塗
膜におけるこれらの結合剤は、上記強磁性粉末または非
磁性粉末 100重量部に対して、1〜200 重量部でよく、
好ましくは、10〜50重量部である。
【0034】そして、チタンカップリング剤との組み合
わせにおいて、塗膜における結合剤の重合度としては、
150以上、 300以下とすることが重要である。結合剤の
重合度が低すぎると、磁性層での強磁性粉末の分散は向
上するが、磁性層及び非磁性層において塗膜の力学的強
度が低下するため、走行耐久性が低下する。一方、結合
剤の重合度が高すぎると、塗膜の力学的強度が上がり、
走行耐久性は向上するが、磁性層における分散劣化及び
非磁性層における分散劣化による表面平滑性の低下のた
め、電磁変換特性が低下する。
【0035】従来は、結合剤として、より重合度の低い
ものを用いることによって分散性を向上させる試みもな
されている。しかしながら、低重合度の結合剤は、高重
合度の結合剤に比べて優れた分散特性を発揮するもの
の、高密度記録用として厳しい走行環境下で使用された
場合、走行耐久性という点で信頼のおけるレベルには未
だ到達していないのが現状である。この問題は、上記の
ように、結合剤の重合度を 150〜300 とすることによっ
て十二分に解決できるのである。
【0036】本発明では、上記結合剤を架橋硬化させる
ポリイソシアネートを併用することが可能である。こう
したポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシア
ネート並びに、これの付加体、アルキレンジイソシアネ
ート並びに、これの付加体等がある。これらポリイソシ
アネートの上記結合剤への配合量は、上記結合剤 100重
量部に対して、5〜80重量部でよく、好ましくは10〜50
重量部である。これらポリイソシアネート類は、上層磁
性層及び下層非磁性層の両層に用いられることが可能で
あるし、いずれか1層のみに限定して用いることも可能
である。上下両層に用いる場合の配合量は、各層に等量
投入することも可能であるし、任意の比率で変えること
も可能である。
【0037】本発明の上層で用いられる強磁性粉末とし
ては、Fe、Co、Ni等の金属、Fe−Co、Fe−
Ni、Fe−Al、Fe−Ni−Al、Fe−Al−
P、Fe−Ni−Si−Al、Fe−Ni−Si−Al
−Mn、Fe−Mn−Zn、Fe−Ni−Zn、Co−
Ni、Co−P、Fe−Co−Ni、Fe−Co−Ni
−Cr、Fe−Co−Ni−P、Fe−Co−B、Fe
−Co−Cr−B、Mn−Bi、Mn−Al、Fe−C
o−V、等の合金、窒化鉄、炭化鉄等が挙げられる。も
ちろん、還元時の焼結防止または形状維持等の目的で添
加されるAl、Si、P、B等の軽金属元素が適当量含
有したとしても、本発明の効果を妨げるものではない。
【0038】更に、γ−Fe2 3 、Fe3 4 、γ−
Fe2 3 とFe3 4 とのベルトライド化合物、Co
含有γ−Fe2 3 、Co含有Fe3 4 、Coを含有
するγ−Fe2 3 とFe3 4 とのベルトライド化合
物、CrO2 に1種またはそれ以上の金属元素、例えば
Te、Sb、Fe、B等を含有させた酸化物等がある。
【0039】更に、六方晶系板状フェライトも使用可能
であり、M型、W型、Y型、Z型のバリウムフェライ
ト、ストロンチウムフェライト、カルシウムフェライ
ト、鉛フェライト、及びこれらに、保磁力を制御する目
的で、Co−Ti、Co−Ti−Zn、Co−Ti−N
b、Co−Ti−Zn−Nb、Cu−Zr、Ni−Ti
等を添加したものも使用可能である。
【0040】これら強磁性粉末は、それぞれ1種を用い
ることも可能であるが、2種以上を併用することも可能
である。
【0041】また、本発明に用いる強磁性粉末の比表面
積は、BET値で30〜80m2/gがよく、より好ましくは、
40〜70m2/gである。この比表面積が、上記範囲にある
と、強磁性粉末の形状の微粒子化を伴い、高密度記録が
可能となり、ノイズ特性の優れた磁気記録媒体を得るこ
とが可能である。
【0042】更に、本発明に用いられる強磁性粉末は、
長軸長0.01〜0.50μm、軸比が5〜15であることが好ま
しい(これは、下記の非磁性粉末でも同様であってよ
い)。長軸長が0.01μm未満(特に0.05μm未満)であ
ると、磁性塗料中の分散が困難となり、また長軸長が0.
50μmを超えると、ノイズ特性が劣化する恐れがある。
そして、軸比が5未満であると、強磁性粉末の配向性が
低下し、出力が低下し易くなり、また軸比が15を超える
と、短波長信号出力が低下する恐れがある。板状フェラ
イトの場合は、板径0.01〜0.50μm、板厚 0.001〜0.2
μm程度が好ましい。
【0043】なお、上記の長軸長、軸比、板径、及び板
厚は、透過型電子顕微鏡写真から無作為に選んだ 100サ
ンプル以上の平均値を採用する。
【0044】本発明において、下層に含有させる非磁性
粉末として用いられるものは、例えば、α−Fe2 3
等の非磁性酸化鉄、ゲータイト、ルチル型酸化チタン、
アナターゼ型酸化チタン、酸化錫、酸化タングステン、
酸化珪素、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、チタ
ンカーバイト、BN、α−アルミナ、β−アルミナ、γ
−アルミナ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二硫化モ
リブデン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バ
リウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等があ
り、これらの粉末は、単独で用いることも可能である
し、複数を混合して用いることも可能である。上記非磁
性粉末は、目的に応じて、適当量の不純物をドープする
ことも可能であるし、分散性の改良、導電性の付与、色
調の改善等の目的で、Al、Si、Ti、Sn、Sb、
Zr等の化合物で表面処理することも可能である。
【0045】この非磁性粉末の比表面積は、30〜80m2/g
がよく、好ましくは40〜70m2/gである。また、必要に応
じて、ゴム用ファーネス、熱分解カーボン、カラー用ブ
ラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックが含
まれていても良い(これらの比表面積は 100〜400m2/g
、DBP吸油量は20〜200ml/100gであることが好まし
い)。
【0046】非磁性粉末及びカーボンブラックの比表面
積が、上記範囲にあると、形状の微粒子化を伴い、下層
が平滑化し、結果的に上層の平滑化が可能となるため、
変調ノイズ特性が優れ、スペーシングロスの影響の少な
い磁気記録媒体を得ることが可能である。非磁性粉末は
磁気的な凝集力を有さないので、強磁性粉末に比べて分
散が容易であるとはいえ、比表面積が上記の範囲より大
きい場合には、粉体の分散が困難となる。また、比表面
積が小さすぎると、高密度記録に耐えられる上層の表面
平滑性を確保するのが困難となる。
【0047】本発明においては、必要に応じて、潤滑
剤、非磁性補強粒子等を前記磁性層及び前記非磁性層に
含有させることが可能である。
【0048】上記潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブ
デン、二硫化タングステン、シリコーンオイル、炭素数
10〜22までの脂肪酸、並びに、これと炭素数2〜26まで
のアルコールからなる脂肪酸エステル、テルペン系化合
物、並びにこれらのオリゴマー等がある。上記潤滑剤
は、上層にのみ添加することが可能であるし、上下両層
に添加することも可能である。
【0049】上記非磁性補強粒子としては、酸化アルミ
ニウム(α、β、γ)、酸化クロム、炭化珪素、ダイヤ
モンド、ガーネット、エメリー、窒化ホウ素、チタンカ
ーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸化チタン(ルチ
ル、アナターゼ)等がある。
【0050】この粒子は、強磁性粉末 100重量部に対し
て、20重量部以下でよく、好ましくは、10重量部以下が
よい、また、モース硬度は、4以上、好ましくは5以
上、比重は、2〜6、好ましくは3〜5の範囲、平均粒
径は、 1.0μm以下、好ましくは 0.5μm以下がよい。
非磁性補強粒子の平均粒径も、強磁性粉末の場合と同様
に、透過型電子顕微鏡写真から測定し、統計処理する。
上記非磁性補強粒子は、本発明においては上層にのみ添
加するのがよい。
【0051】その他、上層磁性層には、公知の帯電防止
剤、防錆剤が添加されてよい。
【0052】帯電防止剤としては、カーボンブラック、
天然界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界
面活性剤等の公知の帯電防止剤を使用できる。なお、分
散剤として、上記チタンカップリング剤のみを用いてよ
いが、他の分散剤を少量併用してもよい。こうした他の
分散剤としては、炭素数5〜25の脂肪酸、及びそのアル
カリ金属またはアルカリ土類金属塩からなる金属石鹸、
脂肪酸エステル類、脂肪酸アミド、及びアミン、四級ア
ンモニウム塩、燐酸エステル、ホウ酸エステル等の公知
の分散剤を使用できる。
【0053】非磁性支持体としては、ポリエチレンテレ
フタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等の
ポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン
類、セルローストリアセテート、セルロースジアセテー
ト等のセルロース類、アラミド樹脂、ビニル系樹脂、ポ
リイミド類、ポリカーボネート類に代表されるような高
分子材料あるいは、金属、ガラス、セラミクス等により
形成される支持体等である。
【0054】上記非磁性支持体上に塗膜を形成するに
は、前記上層磁性層、下層非磁性層を形成するための材
料を塗料として塗布、乾燥する。この塗料化に用いられ
る溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ
ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メ
タノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系
溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロ
ピル、乳酸エチル、エチレングリコールアセテート等の
エステル系溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテ
ル、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、ジ
オキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キ
シレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレンクロライ
ド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、
クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が用い
られる。
【0055】上記塗料の作成は、混練工程、混合工程、
分散工程の各工程によって行われる。分散及び混練に
は、ロールミル、ボールミル、サンドミル、アジター、
ニーダー、エクストルーダー、ホモジナイザー、超音波
分散機等が用いられる。
【0056】更に、このように作成された塗料を非磁性
支持体上に同時に重層塗布するのがよい。この場合、ダ
イレクトグラビア法、リバースグラビア法、オフセット
グラビア法、押し出し塗布(ダイコーター使用)等の公
知の塗布方式のうち、いずれか1種類を2基設置した
り、1基から2種の塗布液を供給して塗布、或いは2種
類を1基ずつ設置する方法等を用いることができるが、
主にダイコーターが用いられる。ダイコーターのリップ
構成は、2リップ方式、3リップ方式、4リップ方式等
が用いられる。
【0057】本発明の磁気記録媒体は、例えば図1に示
すように、非磁性支持体1の一方の面に、非磁性顔料、
チタンカップリング剤及び結合剤を含有した下層非磁性
層2を介して、強磁性粉末、チタンカップリング剤及び
結合剤等を含有した上層磁性層4を有している。また、
非磁性支持体1の他方の面に、仮想線で示す如く、非磁
性粉末と結合剤とを主体とするバックコート層3を有し
ていてもよい。磁性層4上には、オーバーコート層を設
けてもよい。
【0058】非磁性支持体1上に下層非磁性層2及び上
層磁性層4を形成する場合、1層ずつ塗布乾燥を行う方
式(いわゆるウエット・オン・ドライ塗布方式)と、乾
燥されていない湿潤状態にある下層の上に磁性層を重ね
て塗布する方式(いわゆるウエット・オン・ウエット塗
布方式=湿潤重層塗布方式)とがある。
【0059】図2は、本発明による好ましい製造方法の
例を示すものである。この製造方法においては、例えば
図1の媒体を製造するに当たり、まず供給ロールから繰
り出されたフィルム状支持体1を矢印D方向へ送りなが
ら、図2(A)のように、エクストルージョン方式の2
基の押し出しコーター21A、21Bにより下層非磁性層2
及び上層磁性層4用の各塗料2’及び4’を順次重層塗
布するか、或いは図2(B)、(C)のように、1基の
押し出しコーター21により各塗料2’及び4’を同時に
重層塗布する。但し、図2(B)では各塗料が共通のス
リット内で層流をなして吐出され、図2(C)では各塗
料が別々のスリットから吐出される。
【0060】押し出しコーター21A、21B、21には、液
溜り部23、24が設けられ、各塗料2’、4’をウエット
・オン・ウエット方式で順次若しくは同時に重ねる。こ
うしたウエット・オン・ウエット方式における湿潤重層
塗布においては、下層非磁性層2が湿潤状態2’のうち
に上層磁性層4の磁性塗料4’を塗布するので、下層の
表面(即ち、上層と境界面)が滑らかになると共に上層
の表面性が良好になってカレンダー処理を省略できるこ
とがあり、かつ、上下層間の接着性も向上する。
【0061】この結果、特に高密度記録のために高出
力、低ノイズの要求される磁気記録媒体としての要求性
能を満たしたものとなり、かつ膜剥離がなくなり、膜強
度が向上する。またドロップアウトも低減することが可
能であり、信頼性も向上する。
【0062】これに対し、例えば特開平6−23654
3号公報に述べられているようなウエット・オン・ドラ
イ方式による場合、下層として、上層の磁性層の塗料に
対して十分な耐溶剤性のあるものを選択する必要があ
る。また、表面の平滑性が損なわれ、結果的に電磁変換
特性に支障をきたすことがある。
【0063】なお、上記のウエット・オン・ウエット重
層塗布方式によって形成される上下層間には、明確な境
界が実質的に存在する場合以外に、一定の厚みを以て両
層の成分が混在してなる境界領域が存在する場合がある
が、こうした境界領域を除いた上層または下層の層を上
記磁性層、下層非磁性層としてよい。何れの場合も、本
発明の範囲に含まれる。
【0064】上記の重層塗布後は、乾燥機に導入し、更
に必要とあれば、カレンダー装置に導き、巻き取りロー
ルに巻き取る。バックコート層を重層塗布層の反対面
に、重層塗布前に塗布しても、重層塗布後に塗布しても
よい。塗布工程終了後は、例えば4mm幅にスリットして
磁気テープを作成し、これをカセット内に収容してテー
プカセットを製造する。
【0065】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例を説明する
が、本発明はこの実施例に限定されるものではないこと
は言うまでもない。
【0066】実施例1 下記の組成にて、上層磁性塗料及び下層非磁性塗料を調
製した。これらの塗料化は、常法に従い、顔料、結合
剤、添加剤、溶剤を混合し、ニーダーにより混練した
後、サンドミルで5時間分散した。
【0067】 <上層磁性塗料組成> Fe系メタル強磁性粉末 100重量部 (保磁力=160kA/m 、飽和磁化量=135Am2/kg 、 比表面積=51m2/g、長軸長=0.12μm、針状比=8) ポリ塩化ビニル樹脂 17重量部 (重合度200 、極性官能基としてスルホン酸ナトリウム塩を含む。) 添加剤(カーボンブラック) 2重量部 添加剤(Al2 3 ) 5重量部 Tiカップリング剤A 1重量部 (イソプロピルトリ(ジオクチルフィロフォスフェイト)チタネート、 商品名KR38S:味の素(株)製) ミリスチン酸 1重量部 ブチルステアレート 1重量部 メチルエチルケトン 150重量部 シクロヘキサノン 150重量部
【0068】 <下層非磁性塗料組成> 針状α−Fe2 3 100重量部 (比表面積=53m2/g、長軸長=0.15μm、針状比=8) ポリ塩化ビニル樹脂 17重量部 (重合度200 、極性官能基としてスルホン酸ナトリウム塩を含む。) Tiカップリング剤A(上記) 3重量部 ミリスチン酸 1重量部 ブチルステアレート 1重量部 メチルエチルケトン 150重量部 シクロヘキサノン 150重量部
【0069】こうして得られた各塗料にポリイソシアネ
ート(コロネートL:日本ポリウレタン社製)を上層磁
性塗料に3重量部、下層非磁性塗料に2重量部を加えて
4リップ方式ダイコーターを用いて、厚さ 4.5μmのア
ラミドフィルム上に同時重層塗布し、ソレノイドコイル
により配向処理した後、乾燥、鏡面化(カレンダー)処
理、硬化処理を行った。ここで、各層の塗布厚(乾燥
後)は、上層磁性層 0.2μm、下層非磁性層 1.5μmで
ある。更に、4mm幅に裁断して磁気テープとした。
【0070】上記のようにして作成された磁気テープに
ついて、振動試料型磁力計を用いて静磁気特性である角
型比Rs(%)を測定し、非接触光学式表面粗度計によ
り中心線平均粗さRa(nm)を得た。
【0071】また、電磁変換特性の測定及び評価につい
ては、3.81mm幅、 120m長でヘリカルスキャン記録方式
の情報交換用の磁気テープカートリッジ(2フォーマッ
トDDS)のECMA標準(3.81mm Wide Magnetic Tap
e Cartridge for Information Interchange -Helical S
can Recording-DDS-2Format using 120m Length Tapes
のECMA Standard)に準拠した方法に基づいて行っ
た。
【0072】なお、2999.9ftpmm は、DDS−2 Forma
t の最短記録波長(0.67μm)であり、1mm当たり299
9.9回のflux反転のある信号を意味するものである。83.
3ftpmm は、DDS−2 Format の最長記録波長(24.12
μm)であり、1mm当たり83.3回のflux反転のある信号
を意味するものである。
【0073】走行耐久性の測定については、ソニー社製
DDS−2ドライブSDT5000を用い、その結果に基づ
いて走行耐久性の評価を行った(なお、走行耐久性の評
価方法の詳細については後述する)。
【0074】これらの測定及び評価の結果を下記の表1
に示す(なお、これらの測定及び評価は後述する実施
例、比較例についても同様である)。
【0075】実施例2、比較例1〜3 実施例1において、分散剤が異なる以外は、同様の組成
で塗料化し、上層磁性塗料及び下層非磁性塗料を同時重
層塗布し、同様にして磁気テープを作製し、この測定及
び評価を行い、結果を下記の表1に示す。ここでは、T
iカップリング剤B(アルコキシトリメタクリルチタネ
ート、商品名KR33DS:味の素(株)製)を使用し
た。なお、各実施例及び各比較例の分散剤は下記の表1
に示す通りである。
【0076】 *:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン **:ラウリン酸ソーダ
【0077】表1に示した実施例1〜2及び比較例1〜
3の結果から明らかなように、分散剤としてTiカップ
リング剤を用いた場合(実施例1〜2)は、いずれも表
面が平滑(Raが小)であり、優れた静磁気特性(R
s)を示し、電磁変換特性は上述した本発明の目的を満
足するに十分なものである。
【0078】これに反し、比較例2〜3に示した分散
剤、及び分散剤を用いない比較例1の場合は、上層磁性
塗料または下層非磁性塗料中の強磁性粉末、非磁性粉末
の分散能力がTiカップリング剤に比べて低いため、表
面性、磁気特性に劣り、電磁変換特性は前記目的を満足
するものではない。
【0079】これは、Tiカップリング剤が持つ極性基
が、他の分散剤に比べて、強磁性粉末、非磁性粉末との
高い親和性を持つためと推定される。
【0080】実施例3〜10、比較例4〜7 実施例1において、チタンカップリング剤の添加量が異
なる以外は、同様の組成で塗料化し、上層磁性塗料及び
下層非磁性塗料を同時重層塗布し、同様にして磁気テー
プを作製し、この測定及び評価を行い、結果を下記の表
2に示す。なお、各実施例及び各比較例のチタンカップ
リング剤の添加量は下記の表2に示す通りである。
【0081】
【0082】表2から、実施例1、3、4はチタンカッ
プリング剤の上層磁性層及び下層非磁性層への添加量が
1〜5重量部の範囲内であり、いずれの場合も表面が平
滑(Raが小)でかつ優れた静磁気特性(Rs)を示
し、電磁変換特性は80%〜126%の範囲にあり、中で
も、上層磁性層への添加量が3重量部である実施例3が
最も優れた特性を示している。
【0083】これに反し、比較例4〜5は、チタンカッ
プリング剤の上層磁性層への添加量が0及び6重量部で
あるが、電磁変換特性は前記目的を満足しないものであ
る。Rs、Raの数値から、分散が不完全であるか、或
いは過剰量のチタンカップリング剤が分散に悪影響を及
ぼしていると推定される。
【0084】また、比較例6〜7は、チタンカップリン
グ剤の下層非磁性層への添加量が0及び6重量部である
が、電磁変換特性は前記目的を満足しないものである。
これは、下層非磁性層の分散が劣化するため、表面性が
低下したことが原因であると推定される。
【0085】これに比べて、実施例3、5、6では下層
非磁性層への添加量が1〜5重量部の範囲に含まれるも
のである。いずれの場合も、表面が平滑(Raが小)で
かつ優れた静磁気特性(Rs)を示し、電磁変換特性は
80%〜126 %の範囲に含まれ、前記目的を満足するもの
であり、中でも、下層非磁性層への添加量が3重量部で
ある実施例3が最も優れた特性を示している。
【0086】さらに、実施例7〜10は、チタンカップリ
ング剤の上層磁性層及び下層非磁性層への添加量が、そ
れぞれ本発明による範囲の上限値及び下限値となる場合
であるが、いずれにおいても、電磁変換特性は80%〜12
6 %の範囲にある。
【0087】以上の結果から、過少量のTiカップリン
グ剤では強磁性粉末、非磁性粉末の分散が不十分であ
り、またTiカップリング剤が過剰量だと強磁性粉末、
非磁性粉末の凝集を引き起こして分散を劣化させ、目的
とする特性が得られないと推定される。
【0088】従って、上層磁性層及び下層非磁性層に含
まれるTiカップリング剤の添加量を強磁性粉末或いは
非磁性粉末 100重量部に対して1〜5重量部(好ましく
は2〜4重量部、特に3重量部:以下、同様)とするこ
とによって、良好な電磁変換特性が得られることが明ら
かである。
【0089】実施例11〜18、比較例8〜13 実施例3において、用いた結合剤の重合度が異なる以外
は、同様の組成で塗料化し、同様にして上層磁性塗料及
び下層非磁性塗料を同時重層塗布し、磁気テープを作製
した。各実施例及び各比較例の結合剤の重合度は下記の
表3に示す通りである。
【0090】表3に示した走行耐久性評価の表示方法と
して、 ○:ハードエラー及びエラーレートの上昇なし。 △:ハードエラーはないが、わずかにエラーレートの上
昇が観測された。 ▲:ハードエラーはないが、エラーレートのかなりの上
昇が観測された。 ×:ハードエラーが生じた。 と定義し、本発明の目的を満足するものは△レベルまで
とした。
【0091】なお、Test Mode 1、Test Mode 2の具体
的内容は以下に示す通りである。 Test Mode 1:まず、未記録状態のテープに対してBO
T(Beginning of Tape)より600MBytes を記録し、その
後に12MBytesを記録してBOTに戻る。引き続き、600M
Bytes後に記録し、12MBytes部分だけに対し記録、再生
をそれぞれ 500回繰り返す。
【0092】Test Mode 2: 1.BOTから任意に記録し、その後に60MBytesを16
回、繰り返し記録する。 2.1において記録した60MBytesを16回、繰り返し再生
する。 3.1→2を50回繰り返す。
【0093】表3
【0094】表3における実施例3、11、12、17
及び比較例8、9から分かるように、上層磁性層に用い
られる結合剤の重合度を下げていくと、分散性、表面性
がともに向上し、優れた電磁変換特性が得られるが、一
方、塗布膜の力学的強度が低下するため、走行耐久性は
低下する傾向がある。実施例3、11、12は電磁変換
特性及び走行耐久性ともに優れた特性を示し、上層磁性
層の結合剤の重合度が150以上、300以下のものが
本発明の目的を十分に満足する。
【0095】また、実施例3、13、14、18及び比
較例10から、下層非磁性層に用いられる結合剤の重合
度に関しても上記の上層磁性層と同様であり、下層非磁
性層の重合度が150以上、300以下のものが本発明
の目的を十分に満足する。
【0096】更に、比較例11から、上層磁性層の結合
剤の重合度が100の時、下層非磁性層の結合剤の重合
度が500であっても走行耐久性が低下するため、上層
磁性層の結合剤は重合度は150以上の力学的強度を持
つことが望ましい。比較例12からは、上層磁性層の結
合剤の重合度が400の時、下層非磁性層の結合剤の重
合度が100であっても電磁変換特性が低下するため、
上層磁性層の結合剤は重合度は300以下の分散能力を
持つことが望ましい。下層非磁性層についても、比較例
12、13から、下層非磁性層の重合度が150以上で
あり、かつ300以下にするのが望ましいことが分か
る。また、実施例15、16は、上層磁性層及び下層非
磁性層の結合剤の重合度が150〜300の上限値及び
下限値であっても、電磁変換特性及び走行耐久性は前記
目的を満足するものである。
【0097】以上の結果から、結合剤の重合度が低すぎ
ると、強磁性粉末、非磁性粉末の表面に対する結合剤の
吸着が密になるため、分散が向上して優れた電磁変換特
性を示すが、力学的強度が低下するため、走行耐久性の
点で劣る傾向がある。一方、結合剤の重合度が高すぎる
と、力学的強度が高まり、優れた走行耐久性を示すが、
強磁性粉末或いは非磁性粉末の表面に対する吸着が、結
合剤の持つ立体障害のために疎外され、分散の劣化、ひ
いては電磁変換特性の低下を招き易くなる。しかし、T
iカップリング剤を用いれば、強磁性粉末或いは非磁性
粉末の分散を助長するため、電磁変換特性を低下させる
ことなく、ある一定値以上の重合度を持つ結合剤によっ
ても前記目的の達成が可能となる。
【0098】従って、上層磁性層及び下層非磁性層に用
いる結合剤の重合度を 150以上、 300以下とすること
は、優れた電磁変換特性並びに走行耐久性が得られるの
で、望ましいことは明らかである。
【0099】実施例19〜33、比較例14〜17 実施例3において、上層磁性層及び下層非磁性層の塗布
条件を下記の表4のように変更した以外は同様にして磁
気テープを作製し、その特性の測定と評価を行い、結果
を下記の表5に示す。
【0100】表4A
【0101】表4B
【0102】表4C
【0103】表4D
【0104】表5A
【0105】表5B
【0106】表5から、上下の両層を同時重層塗布で形
成した場合は、上層磁性層の厚みが1.0μm以下(実
施例3、1920)と薄くしていくと、再生厚み損失
が減少し、特に高周波数領域(2999.9 ftpmm)におい
て、厚み1.2μmの場合(実施例21)に比べて電磁
変換特性が向上する。これに対し、比較例1417
場合、ウエット・オン・ドライ方式であるため、1.2
μm以下の薄層塗布が困難になり、良好な電磁変換特性
が得られないことが分かる。
【0107】また、上層磁性層の磁性粉末及び下層非磁
性層の非磁性粉末の比表面積及び長軸長によって特性が
変化し、比表面積30〜80m2/g、長軸長0.01〜0.50μmと
すれば、Tiカップリング剤による磁性粉の分散向上と
上層磁性層の表面性の向上によって、電磁変換特性が良
好となる。
【0108】
【発明の作用効果】本発明の磁気記録媒体によれば、非
磁性支持体上に、非磁性粉末を結合剤中に分散せしめた
下層非磁性層と、磁性粉末を結合剤中に分散せしめた上
層磁性層とを設けてなる磁気記録媒体において、前記上
層磁性層と前記下層非磁性層とに、チタンカップリング
剤が前記磁性粉末又は前記非磁性粉末 100重量部に対し
てそれぞれ1〜5重量部含有されているので、前記上層
磁性層及び前記下層非磁性層に用いる上記チタンカップ
リング剤が界面活性剤として効果的に作用し、この界面
活性剤の親水基が磁性粉末又は非磁性粉末の表面に吸着
し、かつその親油基が結合剤と親和することによって、
この界面活性剤が分散剤として機能し、微細サイズの磁
性粉末又は非磁性粉末を用いてもその分散性を向上させ
るのである。この結果、磁性粉末の特性が十分に発揮さ
れ、磁気記録媒体の電磁変換特性が向上する。
【0109】更に、この界面活性剤の親油基は結合剤と
強く結合するため、高い力学的強度を持つ高重合度(平
均重合度150〜300)の結合剤を用いても、強磁性
粉末又は非磁性粉末の分散性の向上を実現させるのであ
る。このため、優れた走行耐久性を有する磁気記録媒体
がもたらされる。
【0110】こうして、特に1μm以下と極めて薄い上
層磁性層であっても、表面の中心線平均粗さRaが4.
8nm以下で高密度記録に好適な高い電磁変換特性を有
する磁気記録媒体を提供することができる。
【0111】また、本発明の製造方法によれば、前記下
層非磁性層上に前記上層磁性層をいわばウエット・オン
・ウエット方式で同時に重ねる同時湿潤塗布を行い、下
層非磁性層が湿潤状態のまま上層磁性層の磁性塗料を塗
布するので、下層非磁性層の表面(即ち、上層磁性層と
の境界面)が滑らかになると共に、上層磁性層の表面性
が良好となり、かつ上下層間の接着性も向上する。しか
も、塗布欠陥等がなく、均一な塗膜を形成できる。
【0112】こうして、特に高密度記録のための高出
力、低ノイズ、更には優れた電磁変換特性が要求される
磁気記録媒体としての要求性能を満たしたものとなり、
磁性層が1μm以下と極薄くても、そうした性能が得ら
れ、かつ膜剥離がなくなり、膜強度が向上する。また、
ドロップアウトも低減することが可能であり、信頼性も
向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づく磁気記録媒体の要部を模式的に
示す断面図である。
【図2】同磁気記録媒体の製造における湿潤重層塗布時
のコーター部分を示す三例の概略断面図である。
【符号の説明】
1・・・非磁性支持体、2・・・下層非磁性層、2’・
・・非磁性塗料、3・・・バックコート層、4・・・上
層磁性層、4’・・・磁性塗料、21、21A、21B・・・
コーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C08J 7/04 - 7/06 G11B 5/62 - 5/858

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に、非磁性粉末を結合剤
    中に分散せしめた下層非磁性層と、磁性粉末を結合剤中
    に分散せしめた上層磁性層とを設けてなる磁気記録媒体
    において、前記上層磁性層と前記下層非磁性層との両方
    に、チタンカップリング剤が前記磁性粉末又は前記非磁
    性粉末100重量部に対してそれぞれ1〜5重量部含有
    され、平均重合度が150〜300の結合剤が前記上層
    磁性層と前記下層非磁性層との少なくとも一方に含有さ
    れ、かつ、前記上層磁性層の表面の中心線平均粗さRa
    が4.8nm以下であることを特徴とする磁気記録媒
    体。
  2. 【請求項2】 上層磁性層の平均厚みが1μm以下であ
    る、請求項1に記載した磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 磁性粉末及び非磁性粉末の比表面積が3
    0〜80m2/g、或いは長軸長が0.01〜0.50μ
    mである、請求項1に記載した磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 非磁性支持体上に、非磁性粉末を結合剤
    中に分散せしめた下層非磁性層と、磁性粉末を結合剤中
    に分散せしめた上層磁性層とを設けてなる磁気記録媒体
    を製造するに際し、前記上層磁性層用の塗料と前記下層
    非磁性層用の塗料との両方にチタンカップリング剤を前
    記磁性粉末又は前記非磁性粉末100重量部に対してそ
    れぞれ1〜5重量部含有せしめると共に、前記上層磁性
    層用の塗料と前記下層非磁性層用の塗料との少なくとも
    一方に平均重合度が150〜300の結合剤を含有せし
    め、前記非磁性支持体上に前記下層非磁性層用の塗料を
    塗布し、この下層非磁性層が湿潤状態のうちに、前記上
    層磁性層用の塗料を前記下層非磁性層上に塗布し、更に
    乾燥を経て、表面の中心線平均粗さRaが4.8nm以
    下の前記上層磁性層を形成する、磁気記録媒体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 カレンダー処理後の上層磁性層の平均厚
    みを1μm以下とする、請求項に記載した製造方法。
  6. 【請求項6】 磁性粉末及び非磁性粉末の比表面積を3
    0〜80m2/g、或いは長軸長を0.01〜0.50μ
    mとする、請求項に記載した製造方法。
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