JP4370809B2 - 液滴配置装置、液滴配置方法、電気光学パネルの製造方法、電子機器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液滴配置装置、液滴配置方法、電気光学パネルの製造方法、電子機器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶パネルの製造に際し、シール剤で囲まれた範囲内に液晶を滴下する装置としてディスペンサーがある。しかし、ディスペンサーを用いた場合、ある一定量まではある程度の精度で液晶を滴下することが可能であるが、それ以下の量を滴下するとなると、吐出量の精度の面での信頼性に欠ける。また、ディスペンサーで液晶を滴下する場合、滴下した跡(滴下痕)がそのままムラになるという現象が起こる。
【0003】
特開平5−281562号公報には、一滴が極めて微少量で高精度な吐出が可能なインクジェットを利用した液晶パネルの製造方法が開示されている。同公報によれば、液晶の液滴を吐出するインクジェット本体を0.5mmピッチのライン状に走査させることで、基板上に液晶の液滴をライン状に載せる旨が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−281562号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、ディスペンサーを用いて液状体(液晶)を滴下した場合に生じる滴下痕を避ける意味もあって、インクジェット方式による液状体(液晶)の塗布が検討されている。しかしながら、本発明者がインクジェット方式で液晶を滴下する実験を行ったところ、以下のような滴下痕に関する結果が得られた。
【0006】
即ち、図25に示すように、複数のヘッド54が設けられたインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)52を、基材1に対して矢印Yaに示すように走査させて、各ヘッド54から矢印Ybに示すように液晶(液滴)を吐出する。このようにして、基材1上に液晶の薄膜を形成した後に、所定の工程を経て完成した液晶パネルを点灯させると、基材1に対して描画方向に沿うすじ(ムラ)154が確認された。上記実験では、滴下する液状体は液晶であったが、液晶以外の液状体であっても、上記のすじ(ムラ)と同様な問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、インクジェット方式を含む液滴吐出方式によって液晶を塗布してなる電気光学パネルに、すじ又はムラが生じない液晶の液滴配置方法、液晶の液滴配置装置及び電気光学パネルを提供することである。
本発明の他の目的は、インクジェット方式を含む液滴吐出方式によって液状体を塗布してなる電気光学パネルに、すじ又はムラが生じない液滴配置方法、液滴配置装置及び電気光学パネルを提供することである。
本発明の更に他の目的は、インクジェット方式を含む液滴吐出方式によって液状体を塗布してなる電気光学パネルの品質の低下を招くことの無い液滴配置方法、液滴配置装置及び電気光学パネルを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の液状物の液滴配置装置は、液晶からなる液滴を基板に配置する液滴配置装置であって、複数のノズルを有し、該複数のノズルから液滴を吐出するとともに、走査方向に走査される液滴吐出ヘッドを備え、前記液滴が前記基板に着する直前の前記液滴の径が第1径であるときに、前記走査方向の1回の前記走査において前記複数のノズルから吐出される複数の液滴のうち、隣接して配置される前記液滴のピッチが前記第1径以下に設定される。
【0009】
本発明の液滴配置装置は、液晶からなる液滴を基板に配置する液滴配置装置であって、前記液滴が前記基板に着したときの前記液滴の径が第1径であり、前記第1径から濡れ広がったときの前記液滴の径が前記第1径よりも大きい第2径であるときに、互いに隣接する前記液滴が前記基板に着したときに前記第1径の前記液滴同士が接触するように、前記第1径以下の第2ピッチで、前記液滴を配置する。
【0010】
本発明の液滴配置装置において、走査方向に走査される液滴吐出ヘッドを備え、前記液滴吐出ヘッドが有する前記走査方向に交差する副走査方向に第3ピッチで配された複数のノズルのそれぞれから前記液滴が吐出され、前記第3ピッチは、前記第1ピッチまたは前記第2ピッチを超えない値に設定される。
【0011】
本発明の液滴配置装置において、走査方向に第4ピッチで走査されて前記第4ピッチで前記液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備え、前記第4ピッチは、前記第1ピッチまたは前記第2ピッチを超えない値に設定される。
【0012】
本発明の液滴配置装置において、走査方向に走査されて前記液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備え、前記基板に着した互いに前記走査方向に隣接する前記液滴の中心位置同士を結ぶ仮想直線が、前記走査方向と交差するように前記液滴を配置する。
【0013】
本発明の液滴配置装置において、前記液滴が前記基板に着したときの前記液滴の径が第1径であり、前記第1径から濡れ広がったときの前記液滴の径が前記第1径よりも大きい第2径であるときに、前記基板に着したときの前記第1径の前記液滴の輪郭の全体が当該液滴に隣接する前記第1径の前記液滴に接触するように前記液滴を配置する。
【0014】
本発明の液滴配置装置において、走査方向に走査されて前記液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを備え、前記走査方向の複数番目の前記液滴が吐出されるときには、前記走査方向の奇数番目の前記液滴が吐出されるときと比べて、前記液滴吐出ヘッドを前記基板に着したときの前記液滴の径の概ね半分だけ前記走査方向と交差する副走査方向にずらした状態で前記液滴を吐出する。
【0015】
本発明の液滴配置装置において、前記液滴を吐出し走査方向に走査する第1及び第2の液滴吐出ヘッドが互いに前記基板に着したときの前記液滴の径の概ね半分だけ前記走査方向と交差する副走査方向にずらした位置で固定されてなるヘッド群を備え、前記ヘッド群を前記基板に対して前記走査方向に走査させ、前記走査方向の奇数番目の前記液滴を吐出するときには、前記第1の液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出し、前記走査方向の偶数番目の前記液滴を吐出するときには、前記第2の液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出する。
【0016】
本発明の液滴配置装置において、走査方向に走査される液滴吐出ヘッドを備え、前記液滴は、前記液滴吐出ヘッドが有する前記走査方向に交差する副走査方向に第3ピッチで配された複数のノズルのそれぞれから吐出され、前記液滴吐出ヘッドの前記複数のノズルが開口する面に垂直な回転軸を回転中心として前記液滴吐出ヘッドを回転させ前記複数のノズルの配列方向と前記走査方向との間に角度を与えることで前記第3ピッチよりも小さな見かけ上の第5ピッチを設定し、前記第5ピッチは、前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液滴の量または吐出速度に応じて変わる前記基板に着する直前の前記液滴の径に対応するように、設定される。
【0017】
本発明の電気光学パネルは、基板と、前記基板に対し、液滴吐出ヘッドにより吐出された液晶を含む液状体の液滴により形成される薄膜とを備え、前記液滴は、前記液滴が前記基板に着したときの前記液滴の径が第1径であり、前記第1径から濡れ広がったときの前記液滴の径が前記第1径よりも大きい第2径であるときに、互いに隣接する前記液滴が前記基板に着したときに前記第1径の前記液滴同士が接触するように配置されたものである。
【0018】
本発明の電気光学装置は、上記本発明の電気光学パネルを備えたものである。
【0019】
本発明の電子機器は、上記本発明の電気光学装置を備えたものである。
【0020】
本発明の液状物の液滴配置方法は、液晶を含む液状物の液滴を基板に配置する液滴配置方法であって、前記液滴が前記基板に着したときの前記液滴の径が第1径であり、前記第1径から濡れ広がったときの前記液滴の径が前記第1径よりも大きい第2径であるときに、互いに隣接する前記液滴が前記基板に着したときに前記第1径の前記液滴同士が接触するように、前記液滴を配置する。
【0021】
本発明の電気光学パネルの製造方法は、(a) 基材にカラーフィルタ材料の液滴を液滴吐出ヘッドから吐出するステップと、(b) 前記カラーフィルタの上へ液晶の液滴を前記液滴吐出ヘッドから吐出するステップとを備え、前記(b)は、前記液滴が前記カラーフィルタの上に着したときの前記液滴の径が第1径であり、前記第1径から濡れ広がったときの前記液滴の径が前記第1径よりも大きい第2径であるときに、互いに隣接する前記液滴が前記カラーフィルタの上に着したときに前記第1径の前記液滴同士が接触するように、前記液滴を配置する。
【0022】
本発明の電子機器の製造方法は、上記本発明の電気光学パネルの製造方法で製造された電気光学パネルに実装部品を実装して電子機器を製造するステップを備えたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、本発明に係る電子光学パネルとしては、例えば液晶表示パネルが挙げられる。
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の液滴吐出方法の一実施形態として、インクジェット方式による液晶滴下方法について説明する。第1実施形態は、インクジェットにより液晶の滴下を行う場合に、滴下痕を防ぐための技術である。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施形態の液晶滴下方法により製造される液晶パネル(電子光学パネル100)について説明する。
【0026】
図1に示すように、電子光学パネル100は、基材1の上にカラーフィルタ11を表面に形成したカラーフィルタ基板10aと、これに対向配置される対向基板10bとの間に液晶12が封入されている。カラーフィルタ基板10aと対向基板10bとの間には、スペーサー13が配置されており、両基板の間隔tを全面にわたって略一定にする。
【0027】
カラーフィルタ基板10aには、カラーフィルタ保護膜20(以下CF保護膜)が形成されており、基材1上に形成されたカラーフィルタ11を保護している。また、CF保護膜20上には、ITO14及び配向膜16が形成されている。CF保護膜20は、ITO14を形成するときの高温からカラーフィルタ11を保護する機能、及びカラーフィルタ11間の凹凸を平坦にしてITO14の断線及び配向膜16のラビング不良を抑制する機能を備えている。
【0028】
図2及び図3は、本実施形態に係る電子光学パネル及び電子機器の製造方法を示す説明図である。図4は、本実施形態に係る電子光学パネル及び電子機器の製造方法を示すフローチャートである。図5は、本実施形態に係る液滴吐出装置を示す説明図である。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、基材1上に、フォトリソグラフィーあるいはインクジェットやプランジャ等の液滴吐出によってカラーフィルタ11を形成する(ステップS101)。
【0030】
次に、カラーフィルタ11と、この上に塗布される液状の保護膜材料との濡れ性を向上させるため、図2(b)に示すようにカラーフィルタ11へ表面改質処理を施し(ステップS102)、保護膜材料に対する濡れ性を向上させる。濡れ性が悪いと保護膜材料が凝集しやすくなるので、カラーフィルタ11上へ保護膜材料が均一に塗布されないからである。また、カラーフィルタ11間へ保護膜材料が浸透しにくくなり、この部分へ気泡が生ずることもあり、電子光学パネルの表示画像品質を低下させるおそれもあるからである。本実施形態においては、UVランプ3を用いて紫外線光を照射することにより表面改質処理を施しているが、この他にも酸素プラズマ処理を適用することができる。特に酸素プラズマ処理によれば、カラーフィルタ11上の残渣も除去できるので、CF保護膜20の品質が高くなり好ましい。
【0031】
カラーフィルタ11と、この上に塗布される液状の保護膜材料との濡れ性は、カラーフィルタ11に対する保護膜材料の接触角βで規定できる(図2(c)参照)。本実施形態に係る電子光学パネルの製造方法においては、前記接触角βは10度以下が好ましい。この範囲であればカラーフィルタ11間へ保護膜材料を十分に浸透させ、また、カラーフィルタ11上へ保護膜材料が均一の厚さで形成できるので、高品質なCF保護膜20を形成することができる。
【0032】
表面改質処理が終了したら、図2(d)に示すように、液滴吐出によって液状の保護膜材料をカラーフィルタ11上へ塗布する(ステップS103)。
ここでの保護膜材料の塗布は、インクジェットによる液滴の吐出により行う。その保護膜材料の液滴塗布方法及び液滴配置方法は、後述する液晶の塗布及び配置と同様の方法を採ることができる。または、後述する液晶と塗布及び配置と同様の方法に代えて、インクジェット方式による公知の保護膜材料の液滴塗布方法及び液滴配置方法を採用することもできる。
【0033】
カラーフィルタ基板10a上へ保護膜材料を塗布したら、保護膜材料中の溶媒を揮発させるため、保護膜材料を乾燥させる(ステップS104)。本実施の形態においては、図2(e)に示すように、保護膜材料の液滴を塗布した基材1をホットプレート67上へ載せて、保護膜材料中の溶媒を揮発させる。このとき、CF保護膜20の表面を平滑にするために、比較的低温度で、ある程度の時間をかけて乾燥させることが好ましい。具体的には70℃以下で5分以上の時間を要することが好ましい。CF保護膜20の表面状態をより平滑にするためには、50℃以下で10分以上の時間を要することが好ましく、さらには30℃以下で1時間以上の時間を要することが好ましい。なお、乾燥はホットプレート67に限られず、赤外線ヒータの加熱により乾燥させたり、オーブン内で乾燥させたりしてもよい。このようにして保護膜材料中の溶媒を揮発させて、カラーフィルタ基板10aへCF保護膜20が形成される。
【0034】
次に、図3(f)に示すように、CF保護膜20上へITO14及び配向膜16を形成する(ステップS105)。
ここでの配向膜16の材料の塗布は、インクジェットによる液滴の吐出により行う。その配向膜16の材料の液滴塗布方法及び液滴配置方法は、後述する液晶の塗布及び配置と同様の方法を採ることができる。または、後述する液晶と塗布及び配置と同様の方法に代えて、インクジェット方式による公知の配向膜16の材料の液滴塗布方法及び液滴配置方法を採用することもできる。
その後、配向膜16のラビングを行う(ステップS106)。
【0035】
次に、図3(g)に示すように、配向膜16の上に、シール材32をスクリーン印刷等により形成する。ここで、シール材32は、紫外線硬化型樹脂を使用した(ステップS107)。
【0036】
シール材の形成が終了したら、図3(h)に示すように、液滴吐出によって液晶33を配向膜16上に塗布する(ステップS108)。ここで、液滴として吐出される液晶33には、スペーサ13となるスペーサ材が混入されている。
【0037】
ここで、図5を用いて液晶の塗布について説明する。
本実施形態においては、液滴吐出としてインクジェットを使用する。図5(a)に示すように、液滴吐出装置50は、液滴吐出ヘッド52とステージ60とを備えている。液滴吐出ヘッド52には、タンク56から供給チューブ58を介してスペーサ材が混入された液晶が供給される。
【0038】
図5(b)に示すように、液滴吐出ヘッド52は、配列幅Hの間に複数のノズル54が一定のピッチPで配列されている。また、それぞれのノズル54はピエゾ素子(図示せず)を備えており、制御装置65からの指令によって、任意のノズル54から液晶の液滴を吐出する。また、ピエゾ素子に与える駆動パルスを変化させることにより、ノズル54から吐出される液晶の吐出量を変化させることができる。なお、制御装置65は、パーソナルコンピュータやワークステーションを使用してもよい。
【0039】
この液滴吐出ヘッド52の構成の一例について図6、図7を参照して説明する。図6、図7に示すように、液滴吐出ヘッド52は、例えばステンレス製のノズルプレート131と振動版132とを備え、仕切り部材(リザーバプレート)133を介して両者を接合したものである。ノズルプレート133と振動板132との間には、仕切り部材によって複数の空間134と液溜まり135とが形成されている。各空間134と液溜まり135の内部は液状材料(図示せず)で満たされており、各空間134と液溜まり135とは供給口136を介して連通したものとなっている。また、ノズルプレート131には、各空間134から液状材料111を噴射するための微小孔のノズル54が形成されている。一方、振動板132には、液溜まり135に塗布液111を供給するための孔137が形成されている。
【0040】
振動板132の空間に対向する面と反対側の面上には、図6、図7に示すように、圧電素子(ピエゾ素子)138が接合されている。この圧電素子138は、図7に示すように一対の電極139,139の間に位置し、通電するとこれが外側に突出するように撓曲するようになっている。そして、このような構成のもとに圧電素子138が接合されている振動板132は、圧電素子138と一体になって同時に外側へ撓曲するようになっており、これによって空間134の内部容積が増大するようになっている。したがって、空間134内に増大した容積分に相当する液状材料が液溜まり135から供給口136を介して流入する。また、このような状態から圧電素子138への通電を解除すると、圧電素子138と振動板113とは共に元の形状に戻る。したがって、空間134も元の容積に戻ることから、空間内部の塗布液111の圧力が上昇し、ノズル54から基材1に向けて液状材料の噴霧状液滴が吐出される。
【0041】
なお、液滴吐出ヘッド52の方式としては、上述したような圧電素子を用いたピエゾジェットタイプ以外の方式でもよく、超音波モータ,リニアモータ等により、振動を付与し、またはタンク内に圧力を印加することにより、上記微小穴から塗布液111である液晶を射出させるようにしてもよい。ここで、タンク内の液晶は、前もって脱泡処理されていることが望ましい。尚、液滴吐出ヘッド52は、タンク内の液晶ないしは液晶と低粘性揮発性液体の混合物を加熱して、該物質の膨張・発泡により、微小穴から液晶を射出させる、所謂バブルジェット(R)方式として構成されていてもよい。
【0042】
また、液滴吐出ヘッド52は、当該ヘッド中心に垂直な回転軸Aを回転中心として回転軸Aの周りを回転可能となっている。図5(c)に示すように、液滴吐出ヘッド52を回転軸Aの周りに回転させて、ノズル54の配列方向とX方向とに角度θを与えると、見かけ上ノズル54のピッチをP’=P×Sinθとすることができる。これにより、液晶の塗布領域や塗布条件に応じて、ノズル54のピッチを変更することができる。配向処理が施された透明電極付き基板1は、ステージ60に設置されている。ステージ60は、Y方向(副走査方向)に移動でき、また、ステージ60中心に垂直な回転軸Bを回転中心として回転軸Bの周りに回転できる。
【0043】
液滴吐出ヘッド52は、図中X方向(主走査方向)に往復して、その間に液晶の液滴を配向膜16上へノズル54の配列幅Hで吐出する。一回の走査で液晶を塗布したら、ステージ60がY方向にノズル54の配列幅Hだけ移動して、液滴吐出ヘッド52は次の領域へ液晶を吐出する。液滴吐出ヘッド52の動作、ノズル54の吐出及びステージ60の動作は、制御装置65によって制御される。これらの動作パターンを予めプログラムしておけば、液晶の塗布領域や塗布条件に応じて塗布パターンを変更することも容易である。上記動作を繰り返して、塗布すべき全領域に液晶を塗布することができる。
【0044】
図8を参照して、液滴吐出ヘッド52のノズル54のピッチと、主走査方向(描画方向)の走査ピッチについて説明する。
図8は、液滴吐出ヘッド52から吐出された液晶の液滴が滴下された状態を示す平面図である。カラーフィルタ基板10aの配向膜16上に、液晶の液滴が主走査方向(X方向)に10μm、副走査方向(Y方向)に100μmの間隔で、液晶の液滴が滴下されるとする。この場合、副走査方向における液滴の間隔yは、ノズル54のピッチPと同じであり、主走査方向における液滴の間隔xは、液滴吐出ヘッド52の走査速度と吐出周波数とに依存する。
【0045】
次に、本実施形態の特徴の一つである、インクジェット方式で吐出される液晶の液滴の配置について説明する。
【0046】
まず、上述した図25に示した実験について図9及び図10を参照して説明する。図9は、図25の実験で使用した液滴吐出ヘッド52及び基材1上の液滴71の一状態を示す側面図であり、図10は、図9の平面図である。
【0047】
ヘッド52のノズル54から液晶の液滴が吐出され、基材1上に滴下されると、その液滴はその滴下点を中心として円状に瞬時に濡れ広がり、所定の径daの液滴71が形成される。図9及び図10に示すように、隣り合う液滴71同士が接触すると、その接触位置からそれらの液滴71同士が繋がって一体となり、図11に示すように、単一の薄膜72が形成される。
【0048】
そのため、単一の薄膜72を成膜するためには、隣り合う液滴71同士が接触するように、ノズル54間のピッチp1が設定される必要がある。本例では、ノズル54から吐出される一滴当たりの液晶の量に対応して、基材1上で十分に濡れ広がった後の液滴71の径daが100μmであったため、ノズル54間のピッチp1も100μmに設定した。
【0049】
実験の結果、上記のピッチp1に設定したノズル54から液晶の液滴を吐出すると、想定した通りに液滴71同士が繋がって一体となり、図11に示すような単一の薄膜72が得られた。実験過程の、この時点では一見して、所望の塗布範囲をカバーした薄膜72が形成されており、問題は特に感じられなかった。ところが、その薄膜72が形成された基材1に対し、後述する所定の工程(ステップS109〜S111)を施して液晶パネルを作成し、その液晶パネルを点灯させたところ、図25に示すようなすじ又はムラ154が映った。
【0050】
次に、図12を参照して、ヘッド52のノズル54から吐出され、基材1上に着弾される(着する)までの液晶の様子について説明する。
【0051】
図12(a)は、ヘッド52のヘッド54から液晶の液滴111が吐出された状態を示している。ヘッド54から吐出されたときの液晶の液滴111は、その径が30〜40μmである。
図12(b)は、ヘッド54から吐出された液晶の液滴111が基材1に着弾した瞬間(液晶の液滴111が基材1に最初に接触した時点)の状態を示している。基材1に着弾する瞬間の液晶の液滴111の径は、30〜40μmであり、図12(a)に示したヘッド54から吐出されたときの液晶の液滴111の径と変わっていない。
図12(c)は、液晶の液滴111が基材1に滴下された後に、濡れ広がった状態を示している。基材1上で濡れ広がった液滴111の径は、100μm前後である。
【0052】
図12(b)及び(a)に示すように、着弾の瞬間には液滴111がヘッド52から吐出されたままの液滴径(30〜40μm)で基材1にぶつかり、その後、図12(c)に示すように、瞬時に濡れ広がる。図12(a)に示される液滴111の吐出時の液滴径は、30〜40μmであり、図12(b)に示される着弾の瞬間には、その大きさの液滴が基材1にぶつかり濡れ広がる(図12(c))。
図13の符号aは、図12(b)に示す着弾の瞬間の液滴111の部分を示しており、その径は30〜40μmである。図13の符号bは、図12(c)に示す濡れ広がった後の液滴111の部分を示しており、その径は100μm前後である。
【0053】
図5(c)に示したように、本実施形態の液滴吐出ヘッド52が回転軸Aの周りに回転することにより、見かけ上のノズルのピッチP’を可変に設定できる構成である。次に述べる、ノズル54間のピッチを複数のそれぞれの値に変えたときの、すじ又はムラ154の発生を確認する実験は、図5(c)に示す構成を有しているからこそ実現できたものである。
【0054】
即ち、本発明者は、ヘッド54間のピッチP’を複数のそれぞれの値に設定した実験を行い、そのときの、すじ又はムラ154の発生量を検証した。その結果、以下のような知見が得られた。図14に示すように、インクジェット方式による液晶の描画を行う場合、着弾後の濡れ広がった液滴の径(着弾径:上記例では100μm前後,図13の符号b)に、ノズルピッチ又は吐出間隔(主走査方向のピッチ)を合わせると、着弾した部分(上記例では、30〜40μmの部分,図13の符号a)には、ムラは発生しないが、濡れ広がった部分(濡れ広がって隣の液滴に結びつくまでに移動した部分,図13の符号b)にはムラが発生する。この知見は、上述した図25の状態と対応している。
【0055】
そこで、図15に示すように、インクジェット方式により液晶の描画を行う時には、副走査方向(主走査方向と直交する方向)の吐出間隔(ヘッドに複数のノズルがある場合には、それらのノズルピッチ)及び主走査方向の吐出間隔のそれぞれを、濡れ広がる前の着弾直前(=着弾直後)の液滴径(上記例では、30〜40μm,図15及び図13の符号a)以下の間隔にして、その間隔を超えて液晶の液滴111が基材1に配置(着弾,滴下)されないようにする。即ち、副走査方向及び主走査方向のそれぞれのピッチを着弾径(図13及び図14の符号b)に合わせるのではなく、着弾する寸前の液滴径(図13及び図15の符号a)以下に合わせて、液晶の液滴111を基材1上に配置していく。
【0056】
なお、図14では、ノズルピッチについての問題のみを図示し、主走査方向のピッチの問題については図示していないが、ノズルピッチについての問題と同様に考えることができる。即ち、図14のように、ノズルピッチが広すぎる場合には、符号91で示すような着弾する寸前の液滴径(図14及び図13の符号a)を超えた領域に、主走査方向に延在するすじ又はムラができる(図25参照)のに対し、主走査方向のピッチが広すぎる場合には、副走査方向に延在するすじ又はムラができる(両ピッチとも広すぎる場合には両方向にすじ又はムラができる)。
【0057】
図15では、ノズルピッチ及び主走査方向のピッチのそれぞれを着弾する寸前の液滴径(図15及び図13の符号a)以下に合わせたときの状態を示している。図15では、着弾し濡れ広がる前の状態の液滴同士が繋がるため、すじやムラの発生が抑制される。
【0058】
図15は、ノズルピッチ及び主走査方向のピッチのそれぞれを着弾する寸前の液滴径(図15及び図13の符号a)よりも小さく設定したときの状態を示しているが、各ピッチは、必ずしも着弾する寸前の液滴径よりも小さい必要は無い。図15では、隣接する上記液滴(図15及び図13の符号a)同士が重なっているが、重なっている必要は無い。図16に示すように、上記液滴(図15及び図13の符号a)同士が繋がって単一の薄膜を形成するためには、隣接する上記液滴(図15及び図13の符号a)同士が接触しさえすればよい。
【0059】
図16に示すように、ヘッド52に複数のノズル54が形成されている場合には、ノズル54間のピッチPyを、上記した”濡れ広がる前の着弾直前(=着弾直後)の液滴径(図13の符号a)以下の間隔”とする。また、描画方向(主走査方向:図10の矢印Yc参照)において、液滴を吐出する間隔(ピッチ)Pxについても、同様に、上記した”濡れ広がる前の着弾直前(=着弾直後)の液滴径(図13の符号a)以下の間隔”とする。
【0060】
図16及び図15に示した方法で描画すると、液滴が濡れ広がる前のものが隣の液滴の濡れ広がる前のものと重なるために、滴下痕は映らない。上記のように、描画時に液滴111の配置(基材1への滴下)を行うときには、隣り合う液滴111同士の間隔(主走査方向及び副走査方向のそれぞれ)が”濡れ広がる前の液滴径以下”となるように行う。
【0061】
ここで、”濡れ広がる前の液滴径”は、ヘッド52から吐出される液滴111の量または吐出速度に応じて変わる。図5(c)に示したように、ヘッド52を回転軸Aの周りに回転させて、見かけ上のノズル54のピッチP’を、ヘッド52から吐出される液滴111の量または吐出速度に応じて変わる”濡れ広がる前の液滴径”に応じて設定することができる。
【0062】
図17は、本実施形態の変形例を示している。
本変形例は、図15及び図16と異なり、主走査方向の偶数列目の濡れ広がる前の着弾直前(=着弾直後,以後は単に「着弾直前)と記載する)の液滴(図13の符号a)が、奇数列目の濡れ広がる前の着弾直前の液滴(図13の符号a)に比べて、濡れ広がる前の着弾直前の液滴(図13の符号a)の径の概ね半分だけ、副走査方向にずれた位置に滴下される。
【0063】
図18は、図17における液滴の滴下中心位置を互いに接近させた配置を示している。図15では、符号92で示す四つの円弧で囲まれた領域は、上記液滴(図13及び図15の符号a)ではなく、そこから濡れ広がった部分である。そのため、理論上微小ではあるがムラとなる。これに対し、図18では、ある任意の上記液滴(図13及び図17の符号a)は、その外周部が周方向全域に亘って、他の上記液滴(図13及び図17の符号a)と重なっている。そのため、ムラが発生しない。
【0064】
これを実現する方法には二つある。その一つ目の方法は、複数列目の上記液滴(図13の符号a)を描画するときには、図17の矢印Yeに示すように、奇数列目の上記液滴(図13の符号a)を描画したときと比べて、ヘッド52を液滴(図13の符号a)の径の半分だけ副走査方向に基材1に対して相対的にずらして描画する方法である。
【0065】
その二つ目の方法は、図19に示すように、一対の(複数の)ヘッド52を互いに上記液滴(図13の符号a)の径の半分だけ、副走査方向にずらした位置で固定してなるヘッド群52aを基材1に対して走査(主走査)させる。奇数列目の上記液滴(図13の符号a)を描画するときには、そのヘッド群52aのうちの第1のヘッド52のノズル54から上記液滴を吐出させ、偶数列目の上記液滴(図13の符号a)を描画するときには、そのヘッド群52aのうちの第2のヘッド52のノズル54から上記液滴を吐出させる。
【0066】
上記のように、本実施形態では、基材1に着弾(滴下)した直後であって濡れ広がる前の状態の液滴111が、その液滴111に隣接する他の液滴111の同じ状態(着弾した直後の濡れ広がる前の状態)のものと互いに接触する位置に滴下されるように、液滴111を吐出する。
【0067】
次に、本実施形態の特徴の一つである、インクジェット方式で液晶の液滴を塗布するときの塗布方法について説明する。
ここでは、液晶の滴下ムラの発生を防止する。この滴下ムラは、副走査を行う前後の主走査でそれぞれ描画された膜の境界部分に生じる改行スジである。
【0068】
上記の問題の原因を解明したところ、一回目の主走査によって描画された部分には、基板上に液晶(液状体)と空気の界面が生じ、その部分が液晶(液状体)の滴下ムラになることが分かった。
【0069】
そこで、一単位の塗布範囲(塗布エリア,例えば単一のチップ)の全てに対する描画が、単一回の主走査のみで完了するように行うものである。
【0070】
上述したように、液晶(液状体)を塗布すべき範囲のうち、インクジェットヘッドのノズルが形成された範囲を超えており一回目の主走査で描画できなかった領域を、二回目の主走査で描画すると、液晶(液状体)の滴下(塗布)ムラが生じる。以下に図を参照して説明する。
【0071】
図20は、ウェハー101上で複数のチップ102が形成される場合を示している。複数のチップ102のそれぞれが、例えば携帯電話機用の液晶パネルとして構成される。液滴吐出ヘッド52に形成された複数のノズル54を用いて、複数のチップ102に対して同時に液晶の液滴を吐出する。
【0072】
この場合、量産性を上げるためには、一回の主走査(X方向)で、液滴吐出ヘッド52が有する液滴吐出ヘッド52の延在方向の一端側から他端側の全てのノズル54を使用して、ウェハー101上のなるべく広範囲のチップ102に対して液滴を塗布するのがよい。
【0073】
図20において、ウェハー101の左端からチップ102が、符号102a、102b、102c…102zの列に並んでいる。この場合、同図に示すように、液滴吐出ヘッド52の一端部側のノズル54をチップ102aの液滴配置位置に合わせると、液滴吐出ヘッド52の他端部側のノズル54が、チップ102cの途中位置に位置したとする。
【0074】
量産性を上げるには、液滴吐出ヘッド52の図20に示す配置状態において全てのノズル54を使用対象とするのがよい。即ち、一回目の主走査で、チップ102a及び102bの全ての領域、並びにチップ102cの途中までの領域に対して、液滴を塗布し、二回目の主走査で、チップ102cの残りの半分とチップ102d以降に液滴を塗布するのがよい。このように、液滴吐出ヘッド52の長手方向の一端部から他端部までの全てのノズル54を使用対象とすることで、ウェハー101の上の複数のチップ102の全ての塗布に要する、主走査の回数を少なく抑えることができる。この方法は、量産性に適しており、通常一般には、この方法が採られる。
【0075】
しかしながら、上記の方法では、図21に示すように、一つのチップ102cに対して、2(複数)回の主走査で液晶の液滴を塗布することになる。そのため、チップ102cにおいて液晶が塗布されるべきエリア(塗布エリア)内には、一回目の主走査で塗布された液晶の塗布領域の端部に空気との界面105が生じる。その後、二回目の主走査が行われ、その界面105の部分にも液晶の液滴が塗布されるが、その界面105の部分は滴下(塗布)ムラとなる。
【0076】
ここで、上記塗布エリアとは、液晶(液状体)を塗布すべき領域であって、塗布ムラの発生を避けたい面積的に最大の単位の領域(本例ではチップ102a〜102zのそれぞれ)である。換言すれば、塗布エリアとは、その全面が一様に塗布されるべき面積的に最大の単位(本例ではチップであるが、1つのウェハで単一の基板を構成するときの基板を含む)のエリアである。塗布エリアは、一般には、単一のパネル内の表示エリアである。
【0077】
そこで、本実施形態では、図21及び図22に示すように、複数の塗布エリア(本例ではチップ102a〜102zのそれぞれ)の中で、その全ての領域を一回の主走査では塗布することができない塗布エリア(本例ではチップ102c)がある場合には、その塗布エリア(本例ではチップ102c)に対しては、その回の主走査では液晶の液滴を塗布しない。滴下ムラを防止するためである。
【0078】
即ち、図22のように、チップ102cの途中位置までしか液滴吐出ヘッド52がカバーしていない状態で、液滴吐出ヘッド52の主走査が行われる場合には、チップ102cは、その全ての領域をその一回の主走査では塗布することができない。このような状況において、その主走査が行われるときには、チップ102cの上に位置する符号54bで示すノズルからは、液晶の液滴が吐出されないように制御する。それらのノズル54bから液晶の液滴を吐出させないことによって、チップ102cの上に液晶と空気の界面ができないようにし、塗布ムラを防止する。
【0079】
通常一般には、量産性の観点から、チップ上に位置するノズルからは液晶の液滴を吐出することで、主走査の回数を抑えようとするが、本実施形態は、量産性を多少犠牲にしてまでも、品質(液晶の塗布ムラ防止)を優先させたものである。
【0080】
以上のように、この初回の主走査では、チップ102a及び102bに液滴が塗布される。なお、符号54aで示すノズルは、元々、この図の位置での主走査では、液滴が吐出されないノズルである(従来と同様の扱い)。符号54aで示すノズルの位置は、液滴を吐出すべきエリアではない(チップが存在しない)ためである。
【0081】
次いで、図22に示す位置から、液滴吐出ヘッド52が矢印Y方向に副走査を行い、その結果、図23に示すように、前回(1回目の主走査)に塗布されなかったチップ102cにおいて、その全ての領域が2回目の主走査で塗布できる位置に液滴吐出ヘッド52が至ると、その2回目の主走査では、そのチップ102cに対して液滴の塗布を行う。
【0082】
この2回目の主走査においても、1回目の主走査時と同様に、複数の塗布エリア(本例ではチップ102a〜102zのそれぞれ)の中で、その全ての領域を一回の主走査では塗布できない塗布エリア(本例ではチップ102e)がある場合には、その塗布エリア(本例ではチップ102e)に対しては、その主走査では液晶の液滴を塗布しない、という動作が行われる。以後、同様に、3回目以降の主走査が行われる。
【0083】
上記例においては、各回の主走査時に、2列のチップ102ずつ液晶の液滴を吐出する(初回はチップ102a及び102b,2回目は102c及び102d)と共に、3列目のチップ102の位置に対応するノズル54からは液晶の液滴を吐出しない(初回はチップ102c,2回目は102e)。液晶の液滴の塗布対象が図20のウェハー101とは異なる場合、即ち、ウェハー上のチップの大きさや配置が図20のものとは異なる場合には、各回の主走査時に、何列のチップずつ液晶の液滴を吐出し、何列目のチップの位置に対応するノズル54から液晶の液滴を吐出しないかが変わってくる。ここでは、例えば以下の式から、各回の主走査時に液晶の液滴を吐出すべきチップの列数を求めることができる。
【0084】
n×d1+(n−1)×d2≦L
を満たすnの最大値を求める。
但し、図20に示すように、d1は、チップ102の幅(液滴吐出ヘッド52の延在方向に沿うチップ102の辺の長さ,より正確には、チップ102における液晶膜を形成すべき領域の幅)であり、d2は、チップ102間の間隔(より正確には、互いに隣接するチップ102における液晶膜を形成すべき領域同士の間隔)であり、Lは、液滴吐出ヘッド52の延在方向の長さ(より正確には、液滴吐出ヘッド52の延在方向の一端部のノズル54と他端部のノズル54との間の長さ)である。
【0085】
1回目の主走査では、そのn列目のチップまで液滴を塗布し、(n+1)列目のチップの位置に対応するノズル54からは液滴を吐出しない。
2回目の主走査では、その(n+1)列目を起算点としてn列目(n+1−1+n)のチップまで液滴を塗布し、(n+1−1+n+1)列目のチップの位置に対応するノズル54からは液滴を吐出しない。
【0086】
図20の例では、
2×d1+(2−1)×d2≦L
3×d1+(3−1)×d2>L
が成立するため、nの最大値は2である。
1回目の主走査では、その2列目のチップ(102a及び102b)まで液滴を塗布し、(2+1=3)列目のチップ(102c)の位置に対応するノズル54からは液滴を吐出しない。
2回目の主走査では、その(2+1=3)列目を起算点として2列目(2+1−1+2=4)のチップ(102c及び102d)まで液滴を塗布し、(2+1−1+2+1=5)列目のチップ(102e)の位置に対応するノズル54からは液滴を吐出しない。
【0087】
上記のように、複数列のチップ102に対して液滴が塗布されるときの各回の主走査は、n×d1+(n−1)×d2≦Lを満たすnの最大値の列ずつ行われる。これにより、ある一つのチップ102が複数回の主走査で塗布されることは無い。なお、上記nの値は、運転員がプログラムに予め入力し、その入力されたnの値に従って、液滴吐出ヘッド52による液滴の塗布が行われることができる。
【0088】
即ち、単一回の主走査が行われたときに、いずれもチップ(塗布エリア)102をとってみても、単一のチップ102内に塗布が行われた領域と、塗布が行われていない領域とが双方存在することが無い。いずれのチップ102をとってみても、単一のチップ102は、その単一のチップ102内の全ての塗布エリアが必ず単一回の主走査によって塗布される。このように、単一回の主走査によって単一の塗布エリアの全ての領域に塗布が行われることにより、その単一の塗布エリア上には、液状体(液晶)と気相の界面ができないため、スキャンの継ぎ目は表示領域にムラとして出現しない。
【0089】
なお、図20の液滴吐出ヘッド52は、各チップ102上で、図15に示すように、液晶の液滴が濡れ広がる前のものが隣の液滴の濡れ広がる前のものと重なるようなノズル54間のピッチに形成され、かつ主走査方向の吐出間隔もそのように行われる。
【0090】
また、上記に代えて、図20の液滴吐出ヘッド52は、各チップ102上で、図18に示すように、液晶の液滴が濡れ広がる前のものが隣の液滴の濡れ広がる前のものと重なるようなノズル54間のピッチに形成され、かつ主走査方向の吐出間隔もそのように行われることができる。この場合、図18に示すように、ある任意の液晶の上記液滴(図13及び図17の符号a)は、その外周部が周方向全域に亘って、他の液晶の上記液滴(図13及び図17の符号a)と重なる。
【0091】
図24は、本実施形態の変形例を示したものである。
図21では、単一の塗布エリアの幅d1よりも液滴吐出ヘッド52の長さLが大きく、1回の主走査で少なくとも1つの塗布エリアの全ての領域を塗布することができる。これに対し、図24では、単一のウェハー201上に、単一の基板202が形成される。図24のケースでは、塗布エリア(基板202)が図20のケースの塗布エリア(チップ102)に比べて大きい。単一回の主走査で、塗布エリアの全ての領域を塗布するためには、基板202の幅d1’と同じ範囲には、ノズルが形成されている必要がある。
【0092】
単一の液滴吐出ヘッド52の長さでは、基板202の幅d1’よりも小さい場合には、複数の液滴吐出ヘッド52A、52Bを連結させることで、幅d1’と同じ範囲にノズル54が位置するようにする。また、図20に示すように単一の液滴吐出ヘッド52の長さが塗布エリア(チップ102)のチップ幅d1よりも大きい場合であっても、単一回の主走査でより広範囲の塗布エリアを塗布するために、複数の液滴吐出ヘッド52が連結されることができる。
【0093】
この場合、連結される複数の液滴吐出ヘッド52A、52Bのノズル54のピッチ▲1▼,▲3▼は、互いに同じであり、規定のピッチに合うように設置される(図15及び図18参照)。
【0094】
更に、複数の液滴吐出ヘッド52A、52Bの連結部のノズルピッチ▲2▼は、規定されているノズルピッチ▲1▼と同じ長さとなるように設置する。例えば、▲1▼=▲2▼=▲3▼=30〜40μmである。
【0095】
以上述べたように、インクジェットヘッドが複数のスキャンを行って表示エリアに液晶を滴下する場合、その表示エリア内にスキャンの数だけ液晶と空気の界面が生じ、その部分が描画ムラとなっていたが、本実施形態では、液晶滴下を1度の描画(スキャン)でパネルの表示範囲内全てに行うことで、表示エリア内に液晶と空気の界面を無くし、液晶の滴下ムラを防止する。
【0096】
また、描画範囲が広範囲の場合、複数のヘッドを連結させて、1つのヘッドとみなすことで描画の改行作業を無くし、改行の部分での滴下ムラを無くすことができる。
【0097】
上記のようにして、液晶の液滴の塗布が終了し、図11及び図3(i)に示すような単一の薄膜が形成されると、次の工程に進む。即ち、液晶が塗布されたカラーフィルタ基板10aと対向基板10bとの貼り合わせ工程を経て(ステップS109)、電子光学パネル100が完成する。
【0098】
次いで、図3(j)に示すように、完成した電子光学パネル100にハーネスやFC(Flexible Cable)基板7、あるいはドライバIC5が実装される(ステップS110)。そして、図3(k)に示すように、携帯電話やPDA等の電子機器9へ取り付けられて、これらの電子機器が完成する(ステップS111)。
【0099】
本実施形態では、液晶の液滴を対象として、インクジェットによる滴下位置について説明した。これは、配向膜上に液晶を滴下したときに表れる、すじ又はムラが特に問題となるからである。特に液晶が問題となる理由として、液晶とそれに接触する配向膜(例えばポリイミド3%,溶剤97%)との材料の相性や、液晶の液滴には溶剤が含まれず原液で滴下されることが考えられる。
【0100】
しかしながら、インクジェットによる滴下位置に関する本発明は、液晶の液滴に限定されない。即ち、インクジェット塗布法により吐出される液滴に対して広く適用可能である。インクジェット塗布法により塗布される液滴には、様々なものがある。その一つに、電気光学パネル(液晶表示装置や有機ELパネル)の製造に必要な、フォトレジスト膜(1μm程度)やオーバーコート膜(10μm以下)や配向膜のような基板全面に亘って一様に塗布されるいわゆるベタ膜を構成するための液滴や、カラーフィルタや有機EL材料(発光材料インク:ベイク後は、数十nm)のような各画素内に層として形成される膜を構成するための液滴が含まれる。また、インクジェット塗布法は、電気光学パネルの製造以外で必要なフォトレジスト膜などの液状膜を構成する液滴など、工業用に広く適用可能である。本発明は、これらの液滴に対して、広く適用することが可能である。
【0101】
(本発明の適用対象)
本発明に係る電子光学パネルが適用できる電子機器としては、携帯電話機の他に、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器や携帯型パーソナルコンピュータ、パーソナルコンピュータ、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデオカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末機等、電気光学装置である電子光学パネルを用いる機器が挙げられる。したがって、これらの電子機器における電気的接続構造であっても、本発明が適用可能であることはいうまでもない。
【0102】
また、この電子光学パネルは、透過型又は反射型の電子光学パネルであり、図示しない照明装置をバックライトとして用いる。なお、アクティブマトリックス型のカラー電子光学パネルであっても同様である。例えば、以上説明した各実施形態においては、いずれもパッシブマトリクス型の電子光学パネルを例示してきたが、本発明の電子光学装置としては、アクティブマトリクス型の電子光学パネル(例えば、TFT(薄膜トランジスタ)やTFD(薄膜ダイオード)をスイッチング素子として備えた電子光学パネル)にも同様に適用することができる。また、透過型又は反射型の電子光学パネルだけでなく、エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動表示装置、電界放出表示装置、LED(ライトエミッティングダイオード)表示装置などのように、複数の画素毎に表示状態を制御可能な各種の電気光学装置においても本発明を同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係る電子光学パネルの構造を示す一部断面図。
【図2】 本実施形態に係る電子光学パネルの製造方法の一部を示す説明図。
【図3】 本実施形態に係る電子光学パネル及び電子機器の製造方法の一部を示す説明図。
【図4】 本実施形態に係る電子光学パネル及び電子機器の製造方法を示すフローチャート。
【図5】 本実施形態に係る液滴吐出装置を示す説明図。
【図6】 本実施形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図7】 本実施形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドを示す断面図。
【図8】 本実施形態に係る液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドを示す説明図。
【図9】 本実施形態に関し、実験例を示す側面図。
【図10】 本実施形態に関し、実験例を示す平面図。
【図11】 本実施形態において、薄膜が形成された状態を示す平面図。
【図12】 本実施形態の液滴吐出ヘッドから吐出される液滴の状態を示す側面図。
【図13】 本実施形態において、基板に滴下された液滴を示す平面図。
【図14】 本実施形態に関し、実験例を示す他の平面図。
【図15】 本実施形態に係る液滴の配置例を示す平面図。
【図16】 本実施形態に係る液滴の他の配置例を示す平面図。
【図17】 本実施形態に係る液滴の更に他の配置例を示す平面図。
【図18】 本実施形態に係る液滴の更に他の配置例を示す平面図。
【図19】 本実施形態に係る液滴の更に他の配置例を示す平面図。
【図20】 本実施形態に係る液滴の吐出例を示す平面図。
【図21】 本実施形態に係る液滴の吐出例を説明する説明図。
【図22】 本実施形態に係る液滴の吐出例の一の動作を説明する説明図。
【図23】 本実施形態に係る液滴の吐出例の他の動作を説明する説明図。
【図24】 本実施形態に係る液滴の他の吐出例を示す平面図。
【図25】 本実施形態に関し、実験例を示す他の平面図。
【符号の説明】
1 基材、 9 電子機器、 10a カラーフィルタ基板、 11 カラーフィルタ、 20 カラーフィルタ保護膜(CF保護膜)、 52 液滴吐出ヘッド、 54 ノズル、 100 電子光学パネル
Claims (10)
- 液晶からなる液滴を基板に配置する液滴配置装置であって、
複数のノズルを有し、該複数のノズルから液滴を吐出するとともに、走査方向に走査される液滴吐出ヘッドを備え、
前記液滴が前記基板に着する直前の前記液滴の径が第1径であるときに、
前記走査方向の1回の前記走査において前記複数のノズルから吐出される複数の液滴のうち、隣接して配置される前記液滴のピッチが前記第1径以下に設定される
液滴配置装置。 - 請求項1記載の液滴配置装置において
前記複数のノズルのピッチが、前記走査方向の直交方向において前記第1径以下に設定される
液滴配置装置。 - 請求項1または2に記載の液滴配置装置において
前記走査方向に並んで配置される前記液滴のピッチが前記第1径以下となるように、前記走査における前記液滴吐出ヘッドの走査速度と、前記ノズルから前記液滴が吐出される吐出周波数と、の少なくとも一方が制御される
液滴配置装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴配置装置において、
前記走査方向の直交方向に隣接して配置される前記液滴が一括して吐出される
液滴配置装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴配置装置において、
前記走査方向の偶数番目の前記液滴が吐出されるときには、前記走査方向の奇数番目の前記液滴が吐出されるときと比べて、前記液滴吐出ヘッドを前記第1径の概ね半分だけ前記走査方向と交差する副走査方向にずらした状態で前記液滴を吐出する
液滴配置装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴配置装置において、
複数の前記液滴吐出ヘッドを備え、
前記複数の液滴吐出ヘッドのうちの第1の液滴吐出ヘッドと第2の液滴吐出ヘッドが、互いに前記基板に着する直前の前記液滴の径の概ね半分だけ前記走査方向と交差する副走査方向にずらした位置で固定されてなるヘッド群を備え、
前記ヘッド群を前記基板に対して前記走査方向に走査させ、前記走査方向の奇数番目の前記液滴を吐出するときには、前記第1の液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出し、前記走査方向の偶数番目の前記液滴を吐出するときには、前記第2の液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出する
液滴配置装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の液滴配置装置において、
前記液滴吐出ヘッドの前記複数のノズルが開口する面に垂直な回転軸を回転中心として前記液滴吐出ヘッドを回転させ前記複数のノズルの配列方向と前記走査方向との間に角度を与えることで、前記基板に配置される前記液滴の前記走査方向の直交方向におけるピッチが制御され、
該ピッチが、前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液滴の量または吐出速度に応じて変わる前記基板に着する直前の前記液滴の径に対応するように、設定される
液滴配置装置。 - 液晶を含む液状物の液滴を液滴吐出ヘッドにより基板に配置する液滴配置方法であって、
前記液滴が前記基板に着する直前の前記液滴の径が第1径であるときに、
前記走査方向の1回の前記走査において前記液滴吐出ヘッドから吐出される複数の液滴のうち、互いに隣接して配置される前記液滴のピッチを前記第1径以下にして、前記液滴を配置する
液滴配置方法。 - (a) 基材にカラーフィルタ材料の液滴を液滴吐出ヘッドから吐出するステップと、
(b) 前記カラーフィルタの上へ液晶の液滴を前記液滴吐出ヘッドから吐出するステップと、を備え、
前記(b)は、前記液滴が前記基板に着する直前の前記液滴の径が第1径であるときに、前記走査方向の1回の前記走査において前記液滴吐出ヘッドから吐出される複数の前記液晶の液滴のうち、互いに隣接して配置される前記液滴のピッチを前記第1径以下にして、前記液滴を配置する
電気光学パネルの製造方法。 - 請求項9記載の電気光学パネルの製造方法で製造された電気光学パネルに実装部品を実装して電子機器を製造するステップを備えた電子機器の製造方法。
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