JP4370491B2 - 易染性ポリエステル繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散染料で常圧染色が可能なポリエステル繊維、特に高強度で難燃性に優れた分散染料で常圧染色が可能なポリエステル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維は取り扱いやすく、さらに価格の面でも他の合成繊維に比べて有利であり極めて広い用途を有している。しかしながら、分子構造が緻密である上、疎水性であり、さらに繊維表面が均一であるために天然繊維に比べると風合い、機能面では劣る。また、染色性に関してもポリエステルの場合、高温、高圧の条件下でないと染料が分子内に入り込めず、十分な色濃度まで染色しないという欠点を有する。上記欠点に対しポリエステルを共重合化して易染性の向上を図る開発が種々なされてきたが、かかる共重合ポリエステル繊維は、繊維強度の低下を招き、通常のポリエステル繊維に比べて製糸が困難であり、さらには耐久性に劣ると言った問題点が生じていた。
【0003】
また、近年の傾向として消費者のニーズの多様化により機能性を有するポリエステル繊維の開発が盛んになってきており、種々の機能性繊維が開発されている。中でも防災に対する意識の向上あるいは法整備に伴う難燃規制の強化等、一般、公共を問わず難燃製品に対する関心が高まってきている。特にホテル、旅館、病院、福祉施設等で使用されるインテリア関連商品では難燃性の付与が必須であり、様々な難燃製品が使用されている。
【0004】
しかしながら、従来の難燃製品に関しては燃焼時にシアンやハロゲン等の有害ガスが発生したり、後加工工程で繊維表面に難燃剤を固着させたために製品の風合いが粗硬であったり、また洗濯による難燃耐久性に欠けるなど多くの問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を克服し、従来の方法では達成し得なかった常圧分散染色性を有し、かつ長期に安定した難燃性をも有する高強度な易染性ポリエステル繊維を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。即ち本発明は、分子配列を大きく乱す、自由体積の大きいリン原子を側鎖に有するモノマー等の第三成分を共重合するとともに、繊維化する際に繊維糸条の全表面積を大きくすることで染料の吸着、拡散性を促進させることにより常圧分散染色が可能であることを見出した。発明の内容は以下の構成よりなる。即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されるリン化合物をリン原子含有量で500〜50,000ppm共重合してなる共重合ポリエステルを用い、スピンドロー方式で引取り速度1500〜3000m/分の範囲で溶融紡糸してなるポリエステル繊維であり、該ポリエステル繊維が下記(2)式及び(3)式を満足し、かつ染色時に染料染液と接触する繊維糸条の全表面積が33mm2/m・dtex以上であることを特徴とする易染性ポリエステル繊維。
0.26≧tanδmax≧0.20 (2)
120.1℃≦Tα≦125℃ (3)
(ここで、tanδmaxは動的粘弾性測定における損失正接の最大値を表し、Tαは損失正接が最大となる温度を表す。)
そして具体的には、20%のアルカリ減量後の破断強度(DT)が3.1cN/dtex以上であることを特徴とする上記記載の易染性難燃ポリエステル繊維、分散染料(Diaceliton Fast Scarel B:ダイスタージャパン製)にて4.0%owfの濃度で、90℃、60分間染色した時の染料吸尽率が85%以上であることを特徴とする上記記載の易染性ポリエステル繊維、ポリエステル繊維が、LOI値が27.5以上であることを特徴とする上記記載の易染性ポリエステル繊維である。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中、R1は1価のエステル形成性官能基であり、R2、R3は同じか又は異なる基であって、それぞれハロゲン原子、炭素原子数1〜10個の炭化水素基、R1より選ばれ、Aは2価もしくは3価の有機残基を表す。また、n1は1又は2であり、n2、n3はそれぞれ0〜4の整数を表す。)
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明におけるポリエステルとは、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、少なくとも一種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを対象とする。また、テレフタル酸成分、またはナフタレンジカルボン酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであってもよく、および/またはグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコールもしくは他のジオール成分で置き換えたポリエステルであってもよい。
【0010】
ジカルボン酸としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸などに例示される飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などに例示される不飽和脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5ー(アルカリ金属)スルホイソフタル酸、ジフェニン酸、1,3ーナフタレンジカルボン酸、1,4ーナフタレンジカルボン酸、1,5ーナフタレンジカルボン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、2,7ーナフタレンジカルボン酸、4、4'ービフェニルジカルボン酸、4、4'ービフェニルスルホンジカルボン酸、4、4'ービフェニルエーテルジカルボン酸、1,2ービス(フェノキシ)エタンーp,p'ージカルボン酸、パモイン酸、アントラセンジカルボン酸などに例示される芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体が挙げられ、これらのジカルボン酸のうちテレフタル酸およびナフタレンジカルボン酸とくに2,6ーナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0011】
これらジカルボン酸以外の多価カルボン酸として、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、3、4、3'、4'ービフェニルテトラカルボン酸、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0012】
グリコールとしてはエチレングリコール、1、2ープロピレングリコール、1、3ープロピレングリコール、ジエチレングリ コール、トリエチレングリコール、1、2ーブチレングリコール、1、3ーブチレングリコール、2、3ーブチレングリコール、1,4ーブチレングリコール、1、5ーペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジオール、1,3ーシクロヘキサンジオール、1,4ーシクロヘキサンジオール、1,2ーシクロヘキサンジメタノール、1,3ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、1,4ーシクロヘキサンジエタノール、1,10ーデカメチレングリコール、1、12ードデカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどに例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4, 4'ージヒドロキシビスフェノール、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシ)ベン ゼン、1,4ービス(βーヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1、2ービス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5ーナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール、などに例示される芳香族グリコールが挙げられ、これらのグリコールのうちエチレングリコールおよび1,4ーブチレングリコールが好ましい。
【0013】
これらグリコール以外の多価アルコールとして、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオールなどが挙げられる。
【0014】
ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ヒドロキシ酢酸、3ーヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、pー( 2ーヒドロキシエトキシ)安息香酸、4ーヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0015】
環状エステルとしては、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-メチル-β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、ラクチドなどが挙げられる。
【0016】
多価カルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらのアルキルエステル、酸クロライド、酸無水物などが挙げられる。
【0017】
本発明においては、上記のジカルボン酸成分とジオール成分から構成されるポリエステルは、その繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレンナフタレートであることが特に好ましい。
【0018】
また、これらポリエステル繊維中には少量の他の任意の重合体や酸化防止剤、制電剤、染色改良剤、染料、顔料、艶消し剤、微細孔形成剤、その他の添加剤が含有されていても良い。
【0019】
繊維糸条の全表面積を大きくする手段としては、単糸繊度を小さくする方法あるいは繊維の断面形状を異形化する方法、繊維表面に凹凸を付与する方法等が挙げられるが、いずれを用いても構わない。特に異形断面とする場合は異形度(内接円直径に対する外接円直径の比)が2以上であること好ましい。
【0020】
本発明に係るポリエステル繊維に用いるポリマーは、繊維の分子配列を大きく乱す第三成分を共重合したものであることが肝要である。具体的には、酸成分及び/又はグリコール成分に第三成分を共重合したものであり、主鎖自身の自由体積を大きくする形態とする方法及び自由体積の大きい原子を側鎖に持つ化合物を共重合する方法、等が挙げられる。例えば、前者については、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族カルボン酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルカルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸あるいはプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、ダイマージオール等の脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が挙げられ、後者については、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ホスホニウム塩等のスルホン酸塩基を有するジカルボン酸およびネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS又はそのエチレンオキシド付加体、フルオレン誘導体等が挙げられる。しかし、易染性を高度に維持しつつ繊維強度を3.1cN/dtex以上とするには後者の方法が効果的であり、更に難燃性をも付与するにはリン原子を含有するリン化合物を共重合する方法が最適である。ここで言うリン化合物とは、ポリエステルの構成成分であるジカルボン酸やジオールと反応してポリエステルに共重合することができる化合物である。このリン化合物のなかで好ましい化合物は、ポリエステルの側鎖及び/又は末端にリン原子を導入することができる化合物であり、分子の配向性および結晶性を乱すという観点さらには耐アルカリ減量性の観点からから側鎖にリン原子を導入できる化合物が特に好ましい。尚、第3成分として共重合する化合物は、本発明の目的を達成するためであれば上記2種以上の任意の化合物を併用しても何ら問題はない。
【0021】
難燃性を付与するために使用されるリン化合物の例としては、一般式(1)で示される化合物が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、R1は1価のエステル形成性官能基であり、R2、R3は同じか又は異なる基であって、それぞれハロゲン原子、炭素原子数1〜10個の炭化水素基、R1より選ばれ、Aは2価もしくは3価の有機残基を表す。また、n1は1又は2であり、n2、n3はそれぞれ0〜4の整数を表す。)
【0024】
一般式(1)の化合物の具体的な化合物としては下記a〜βの化合物が挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
本発明における易染性ポリエステル繊維は、共重合ポリエステルを溶融押出機を用いて紡糸口金より吐出し、引取り速度1500m/分〜3000m/分の範囲で溶融紡糸し、連続的に延伸する所謂スピンドロー方式により得ることができる。紡糸口金面の温度は、通常のポリエチレンテレフタレートの溶融紡糸で設定される温度よりも10℃〜30℃低く設定することが肝要である。
【0032】
本発明における易染性ポリエステル繊維に用いられている共重合ポリエステル繊維における第3成分の含有量は、リン原子を含有しない化合物であれば、ポリマーに対して0.5〜5.0モル%であることが望ましく、0.5モル%未満であると染色性に劣る。また、5.0モル%を超えると製糸性が低下するだけでなく繊維の強度が低下する。また、難燃性を付与するためにリン原子を含有する化合物を使用する場合は、リン原子の含有量は500〜50,000ppmであることが必要であり、500ppm未満であると難燃性能に劣るばかりか、常圧での分散染色が困難となる。また、50,000ppmを超えるとリン原子を含有するリン化合物の共重合量を多くする必要があり、その結果、ポリマーの融点が著しく低下し、紡糸が困難となるばかりか、得られた繊維の強度も低下するため好ましくない。より好ましくは1,500〜30,000ppmである。
【0033】
本発明における易染性ポリエステル繊維は染色時に染料染液と接触する繊維糸条の全表面の面積が33mm2/m・dtex以上であることが必要である。ここで言う繊維糸条の全表面とはポリエステル繊維糸条1mあたりの単位dtexあたりのトータル表面積である。33mm2/m・dtex未満であると染料との接触面積が少ないために常圧での染色性に劣る。より好ましくは38mm2/m・dtex以上である。一般に、繊維の表面積を大きくする手段としては、単糸繊度を下げる、繊維断面を多葉あるいは開放型中空等に異形化する、繊維表面に凹凸を付与する等が挙げられるが、あまり大きくすると単糸繊度が大きく低下したりあるいは異形度が大きくなるために、製糸あるいは後工程での毛羽の発生や糸切れが発生する恐れがあり好ましくない。特に、単糸繊度を下げすぎると表面反射光が多くなり、染色後の見かけ濃度が大きく低下するため本発明の効果が得られない。
【0034】
さらに、本発明における易染性難燃ポリエステル繊維はtanδmaxが0.20以上0.26以下であり、0.20未満であると非晶部分の領域が少なくかつモビリティーが低いために、染料が十分吸尽されない。より好ましくは0.21以上である。tanδmaxの上限は、あまり高すぎると結晶性が大きく崩れるため、糸の強力に影響を及ぼす恐れがあるので、tanδmaxを示す温度(Tα)は125℃以下であり、125℃を超えると常圧での染色が困難となる。より好ましくは124℃以下である。tanδmaxを示す温度(Tα)についての下限は低すぎると耐熱性に劣るため120.1℃以上である。
【0035】
さらに、分散染料(Diaceliton Fast Scarel B)にて4.0%owfの濃度で、90℃、60分間染色した時の染料吸尽率が85%以上であることが好ましく、85%未満であると常圧染色にて製品として十分な濃度にまで染色されない。
【0036】
20%アルカリ減量処理した後の破断強度は3.1cN/dtex以上であることが必要であり、3.1cN/dtex未満であると、布帛の引き裂きあるいは破裂強力が低くなり実用性に欠ける。より好ましくは3.2cN/dtex以上である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、本発明の評価に用いた方法は以下の通りである。
【0038】
(繊維表面積)
光学顕微鏡あるいはSEMによるの断面拡大写真より画像処理装置にて繊維の断面周囲長を測定し、繊維表面積を測定した。トータル繊度がT、フィラメント数がFの繊維糸条の断面をX倍(100〜500倍)に拡大した断面写真の繊維断面周囲長をY(mm)とすると、1dtex、1m当たりの繊維表面積S(mm2/m・dtex)は次式で表される。
【0039】
(動的粘弾性特性)
レオバイブロン(オリエンテック社製)を用いて、110Hzの周波数下で20℃より1℃/分の速度で230℃まで昇温しながら、損失正接(tanδ)を測定し、その最大値をtanδmaxとし、最大値を示す温度をTαとして評価した。
【0040】
(破断強度)
テンシロンを用いて測定長200mm、クロスヘッドスピード200mm/分にて破断伸度をそれぞれ5回測定しその平均値にて評価した。
【0041】
(染料吸尽率)
使用染料:Diaceliton Fast Scarel B(ダイスタージャパン(株)製)
濃度:4.0%owf
浴比:1:30
温度:98℃
時間:60分
上記条件により染色された編地の染料吸尽率により評価した。染料求尽率の測定は分光光度計(U3210;日立製作所製)を使用し、染料浴液の染色前後の吸光度差を測定し、次式により求めた。
染料吸尽率(%)={(DB−DA)/DB}×100
DA:染料浴液の染色後の最大吸光波長における吸光度
DB:染料浴液の染色前の最大吸光は長における吸光度
【0042】
(耐光堅牢度)
試料を紫外線ロングライフフェード・オ・メーター(FAL-AU/H/BR)を使用して、照射温度(BPT);63±3℃。照射時間40時間の条件で光退色させ、グレースケール基準にて級判定した。
【0043】
(難燃性評価)
消防安第65号に準拠して限界酸素指数(LOI)で評価した。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
テレフタル酸をカルボン酸成分とし、エチレングリコールをグリコール成分とし、第3成分として前記のリン含有化合物(x)をリン原子含有量が6000ppmとなるよう共重合させたリン原子含有共重合ポリエステルを用いて紡糸温度262℃、引取り速度2600m/分で溶融紡糸した後、引き続き延伸を行い70デシテックス108フィラメントの完成糸を得た。得られた糸を筒編地とした後精練を行い、風乾の後分散染料(Diaceliton Fast Scarel B;ダイスタージャパン製)により沸水中にて常圧で染色を行い、乾燥後、分光光度計にて残液比色法により染料の吸尽率を測定した。染色後の編地は実用可能なレベルまで染料を吸尽していた。さらに、耐光堅牢性に関しても実用上問題ないレベルであった。
【0045】
(実施例2)
完成糸を100デシテックス216フィラメントとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0046】
(実施例3)
完成糸を78デシテックス216フィラメントとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0047】
(実施例4)
断面を図1に示す形状とし、84デシテックス48フィラメントとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0048】
(実施例5)
断面を図2に示す形状とし、84デシテックス48フィラメントとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0049】
(実施例6)
断面を図3に示す形状とし、84デシテックス48フィラメントとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0050】
(実施例7)
リン原子含有量を3500ppmとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0051】
(実施例8)
第3成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.0モル%およびネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド付加物を3.0モル%共重合した共重合ポリエステルを使用して100デシテックス216フィラメントを製糸した以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率、耐光堅牢性ともに実用上問題ないレベルであった。
【0052】
(比較例1)
完成糸を84デシテックス24フィラメントとし、紡糸速度を3000m/分とした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率が低く、実用性に欠けていた。
【0053】
(比較例2)
リン原子含有量を350ppmとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。難燃性に劣るばかりか、吸尽率も低く、実用性に欠けていた。
【0054】
(比較例3)
リン原子含有量を60,000ppmとした以外は実施例1と同法にて編地を作製後、染色を行った。吸尽率には優れていたが、耐光堅牢性に劣っており、さらに完成糸の強力が低く、実用上問題のあるレベルであった。
【0055】
【表1】
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、常圧で分散染色が可能で、かつ長期に安定した難燃性をも有するポリエステル繊維を経済的かつ効率良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す繊維の断面である。
【図2】本発明の一実施形態を示す繊維の断面である。
【図3】本発明の一実施形態を示す繊維の断面である。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で示されるリン化合物をリン原子含有量で500〜50,000ppm共重合してなる共重合ポリエステルを用い、スピンドロー方式で引取り速度1500〜3000m/分の範囲で溶融紡糸してなるポリエステル繊維であり、該ポリエステル繊維が下記(2)式及び(3)式を満足し、かつ染色時に染料染液と接触する繊維糸条の全表面積が33mm2/m・dtex以上であることを特徴とする易染性ポリエステル繊維。
0.26≧tanδmax≧0.20 (2)
120.1℃≦Tα≦125℃ (3)
(ここで、tanδmaxは動的粘弾性測定における損失正接の最大値を表し、Tαは損失正接が最大となる温度を表す。) - 20%のアルカリ減量後の破断強度(DT)が3.1cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1記載の易染性ポリエステル繊維。
- 分散染料(Diaceliton Fast Scarel B)にて4.0%owfの濃度で、90℃、60分間染色した時の染料吸尽率が85%以上であることを特徴とする請求項1記載の易染性ポリエステル繊維。
- ポリエステル繊維が、LOI値が27.5以上である請求項1記載の易染性ポリエステル繊維。
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