JP4369139B2 - クランプとこれを用いた輸液装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クランプとこれを用いた輸液装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
輸液チューブを複数のフィンガにより順次押圧して輸液を行うように構成された蠕動式輸液ポンプや、回転ローラを備えたディスクにより、輸液チューブを押圧して輸液を行うローラ式輸液ポンプや、シリンジのピストンを押圧して輸液を行うシリンジ式輸液ポンプなどの輸液装置が知られている。
【0003】
これらの輸液装置の内で、輸液チューブをフィンガにより順次押圧して輸液を行うように構成された蠕動式の輸液ポンプによれば、ドアを開き、着脱自在に用いられる輸液チューブの途中部位を輸液ポンプの本体側の定位置となる溝部内に一時的に保持した後に、ドアを閉じて、ドアを本体に対して固定してから、輸液チューブの外周面をポンプ機構で個別駆動される複数のフィンガと、ドアの受け板との間における挟持状態にして、輸液チューブを不動状態に保持し、ポンプ機構の駆動にともなう送液を行うように構成されている。
【0004】
また、近年になり、輸液チューブ内の残留薬液が取り外し時に、重力で落下することを防止する機能を備えたアンチ・フリーフロー輸液装置が望まれている。
このアンチ・フリーフロー輸液装置の一例によれば、輸液チューブに対して着脱自在に用いられるクランプを用いて輸液チューブの途中部位を閉塞状態にしておき、これを輸液装置にセットした後に、ドアを閉じる動作に連動して輸液チューブのクランプの閉塞状態を解除するとともに、クランプを輸液チューブとともに取り出すときには、クランプを引き出すことで再度閉塞状態にするように構成されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−277186号公報。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公報に提案された輸液装置によれば、ユーザがクランプを輸液チューブとともに輸液装置の外部に取り出すときの動作力を利用して、クランプによる再度の閉塞状態にするように構成されてた。このため、ユーザには少なからず負担となる問題があった。
【0007】
したがって、本発明の上記の問題点に鑑みてなされたものであり、輸液チューブを予め挿通状態にする必要がなく、かつ閉塞状態を長時間に渡り維持できるクランプの提供を目的としている。
【0008】
また、ドアの開閉動作のみで、クランプによる輸液チューブの閉塞状態の解除と、再度の閉塞状態にすることができるクランプを用いた輸液装置の提供を目的としている。
【0009】
さらに、一度セットされたクランプが輸液チューブから不用意に外れることのない、信頼性の高いクランプとクランプを用いた輸液装置の提供を目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のクランプは、輸液チューブ(2)に対して着脱自在に用いられ、前記輸液チューブの途中部位を閉塞状態にするクランプ(150)であって、前記クランプ(150)は、前記閉塞状態にする一方の第1閉塞部(152)を形成した主基部(151)と、前記主基部(151)の長手方向に沿って延設される挿入ガイド部(157)と、第1溝部(158a)と第2溝部(158b)とを形成し、前記主基部(151)から弾性変形可能に延設される副基部(158)と、前記閉塞状態にする他方の第2閉塞部(153)と、前記第1溝部(158a)に係合することで前記第1閉塞部(152)と前記第2閉塞部(153)との間で前記閉塞状態に維持する第1係合部(154a)と、前記第2溝部(158b)に係合することで前記輸液チューブ(2)の外れを防止する第2係合部(154b)と、を形成し、自然状態では前記第2閉塞部(153)が前記第1閉塞部(152)から離れるように前記主基部(151)から弾性変形可能に延設される弾性変形部(154)と、前記主基部(151)と前記弾性変形部(154)との合わせ部分において、輸液チューブ(2)の位置ずれを防止する形状部(155)と、から構成され、前記自然状態では、前記第1係合部(154a)は前記第1溝部(158a)に対して非係合し、前記第2係合部(154b)も前記第2溝部(158b)に対して非係合して、前記副基部(158)と前記弾性変形部(154)との間において前記輸液チューブ(2)を前記第1閉塞部(152)と前記第2閉塞部(153)の間まで導入する開口部(159)を形成したことを特徴としている。
【0017】
また、前記第1溝部(158a)は、前記副基部(158)の端部に形成される底面に形成され、前記第2溝部(158b)は、前記底面から連続形成される内側壁面に一対分が形成され、また、前記第1係合部(154a)は、前記弾性変形部(154)の端部に形成される裏面に形成され、前記第2係合部(154b)は、前記弾性変形部(154)の端部に形成される両側側面に一対分が形成され、前記第1係合部(154a)の前記第1溝部(158a)に対する係合は、前記副基部(158)の前記主基部(151)側への押圧により解除され、前記第2係合部(154b)の前記第2溝部(158b)に対する係合は、前記内側壁面を広げることで解除されることを特徴としている。
【0018】
また、前記副基部(158)は、把持部を形成したことを特徴としている。
【0019】
また、前記クランプ(150)は、弾性変形可能な樹脂材料から一体射出成型されることを特徴としている。
【0020】
そして、クランプを用いた輸液装置であって、前記輸液チューブは、該輸液チューブの外周面を順次押圧して輸液を行うように本体に設けられる輸液手段と、前記本体に開閉自在にされるドアとの間での挟持状態に保持され、前記クランプを挿入自在にするクランプ手段は、前記挟持状態では前記閉塞状態を解除し、かつ前記ドアを開くと前記閉塞状態にして、前記クランプを取り出し可能にするために、前記クランプ手段は、前記本体に固定されるベース部材と、該ベース部材に固定される軸体回りに回動自在に設けられるとともに、前記クランプを挿入する開口部と、第1傾斜面と、前記クランプの前記弾性変形部に当接する突起部とを形成した回動部材と、前記回動部材の前記突起部が、前記弾性変形部を押圧するように付勢する付勢部材と、前記第1傾斜面に摺接することで前記回動部材を前記付勢部材に抗して回動させる第2傾斜面と、前記クランプの前記副基部を前記主基部側に向けて押圧する底面とを有し、かつ前記ドアに設けらるドア部材と、から構成されることを特徴としている。
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好適な一実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
尚、後述する説明では本願出願人が特開平9−151856号公報において提案したペリスタリックフィンガ方式であって、各フィンガにより輸液チューブを上流側と下流側のみ完全に潰した閉塞状態にする一方で、閉塞された途中部位については完全に潰さないようにすることで、輸液チューブの肉厚の影響をなくした精度の良い送液を行う輸液方式を前提にしている。しかしながら、この方法に限定されず、完全に潰すことで輸液チューブの蠕動運動を行うように構成されたペリスタリックフィンガ方式の輸液ポンプまたは他の方式の輸液装置にも採用できることも言うまでもない。
【0021】
先ず、図1は第1実施形態のクランプ50を、破線図示の輸液チューブ2とともに示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図、(c)は(a)のA部拡大平面図である。
【0022】
図1において、このクランプ50は、弾性変形可能な例えばナイロン樹脂系の合成樹脂材料を用いて一体射出成型することができる。このクランプ50は、主基部51と、この主基部51から連続形成されるとともに、自然状態(無負荷状態)では図示のようにこの主基部51から離れるように「Uの字」形状に延設される弾性変形部54と、主基部51の長手方向に直交して一体成形される副基部58とから形成されている。
【0023】
そして、主基部51には第1閉塞部52が、また弾性変形部54には、この第1閉塞部52に対向して第2閉塞部53が形成されており、これらの閉塞部の間で輸液チューブ2を閉塞する。
【0024】
弾性変形部54の先端には、係合部54aが形成されており、図示の形状を維持した状態から、指先で矢印D1方向に外力が加わえられると、弾性変形することで、副基部58に形成された溝部58aに係合部54aが係合することで、輸液チューブ2を第1閉塞部52と第2閉塞部53間における閉塞状態に維持するように構成されている。
【0025】
図1(c)において、上記の溝部58aと係合部54aの間には、輸液チューブ2を潰した状態で、内部に通過させるように、所定距離(例えば1mm程度)開口した開口部59が形成される。このために、輸液チューブを予めクランプ50に挿通させる必要がなくなり、かつ不用意にクランプ50から外れることがなくなる。また、溝部58aと係合部54aの間で確実に係合状態を維持できるので、閉塞状態を長時間に渡り維持できることとなる。また、解除するときには、解除面58cに矢印D2方向の外力を加えることで、溝部58aと係合部54aの係合が解除される。
【0026】
図1(a)と図1(b)において、主基部51と弾性変形部54との合わせ部分において、形状部55、56とが形成されており、輸液チューブ2の位置ずれを防止するようにしている。さらに、主基部51の長手方向に沿って挿入ガイド部57が形成されており、後述する輸液装置に対するクランプの装填を簡単に行えるようにしている。副基部58には、把持部58bがさらに形成される。
【0027】
以上のように構成されるクランプ50は、輸液チューブ2を閉塞状態と開放状態にするために単独で使用することもできる。このように単独で使用する場合には、把持部58bを把持し、副基部58を矢印D2側に移動すれば、溝部58bと係合部54aの間の係合を解除することができる。
【0028】
そして、この解除動作に合前後して、弾性変形部54が、図1(a)に図示のように弾性変形により自然状態に戻る結果、第1閉塞部52と第2閉塞部53による輸液チューブ2の閉塞が解除される。
【0029】
図2は、クランプ50を輸液装置1に対して装填する様子を示した外観斜視図である。二点鎖線で図示された輸液チューブ2に対して、上記のようにクランプ50をセットして閉塞状態にした後に、輸液装置1のドア4を開き、クランプ50を回動部材70と本体ベース3との間に形成された開口部に対して挿入ガイド部57を先にして矢印方向にセットし、ドア4を閉じて装填を終了する。
【0030】
以上の操作で、ドア4と本体ベース3との間で輸液チューブ2が挟持状態に保持されると同時に、クランプ5による閉塞状態が解除され、ポンプ機構による送液が可能となる。そして、送液後にドア4を開くと、クランプ5による閉塞状態になり、そのまま取り出すことができるように構成されている。
【0031】
以上のようにドアの開閉動作にともないクランプ5の閉塞及び解除を行う輸液装置について、図3から図7を参照して述べる。
【0032】
図3は、輸液装置1のドア4の前面側に設けられる操作スイッチパネルを図示した輸液装置1の正面図である。本図において、輸液チューブ2の最上流側には所定の薬液を貯蔵した輸液バッグ300が接続されており、輸液チューブ2の途中部位を図示のように輸液装置1にセットする。また、輸液チューブ2のさらに下流側のクレンメ303を介して接続される静脈刺針304が接続されており、この静脈刺針304を患者の静脈に刺針することで、薬液の注入を行なう。
【0033】
このクレンメ303はクランプ50と程同じ機構を果たすものであるが、しばしば装填が忘れられる場合があるので、クランプ50が必要となることとなる。輸液バッグ300は不図示のスタンドポールに吊るされて、ベッド上に横たわる患者に対する精度の高い輸液を可能にしている。
【0034】
また、図3では輸液チューブ2の途中部位を図示のように一時的にセットした後に、ドア4を閉じて、ドアロックレバー7の操作により輸液が開始できるようにした状態が示されている。また表示部は所謂7セグメント数字表示部が全て「8」となる表示となっているが、これは数値及びエラー、「−」などが表示されることを示している。
【0035】
輸液装置1の本体の基部となるとともに本体外周縁部の形状部を形成した本体ベースはアルミダイキャスト製又は剛性を有する樹脂製であり必要な強度と精度を確保する一方で、この本体ベースの左側縁部をその回動中心として開閉自在に設けられるドア4に、操作スイッチと表示部を設けている。
【0036】
すなわち、操作スイッチ類を配置したキーパネル部9と、表示部8とが枠印刷により大別するように設けられている。これらキーパネル部9と表示部8は透明樹脂フィルムの裏面上に所定項目が印刷されるとともに、エンボス加工により前方に円形に突起するように加工された樹脂フィルムにより、不図示の各キーを覆うように接着されて設けられており、薬液などが内部に進入することを防止している。
【0037】
また、上記の各スイッチキーは共通の基板上に実装され、また表示部8のLEDは、自己発光して表示が夜間でも見え易いようにしている。各スイッチキーと表示装置及びランプ類は後述する制御部に対してフレキシブルケーブルを介して接続されており、このケーブルから電力供給及び駆動信号等を伝達するようにして、ドア化粧カバーを設けたドア4の開閉動作にともなう電力供給及び信号伝達が支障なく行えるように構成されている。また、このドア4に設けられるキーパネル部9と表示部8はTTLレベルの電気信号のみを扱う。
【0038】
次に、各スイッチの機能について述べると、図示の左下隅に配設される電源スイッチ15はメイン電源の入/切に使用されるものであり、所定秒(およそ2秒以上)押し続けることで、電源オンとなり、再度所定秒(約3秒以上)押しつづけることで電源オフとなるように制御されており、不用意に電源オン、オフができないように配慮されている。この右隣りのバッテリランプ16は図示のように3段階に表示する緑色発光ダイオードを設けており、電源のオン、オフに関係なく交流または専用の直流電源を接続しているときに点灯して、充電中であることを知らせるようにしており、充電中には充電量をまた内蔵バッテリー使用中には残量を3段階レベルでLED表示するようにしている。
【0039】
また、このバッテリーランプ16の上方には、商用電源か直流電源を使用しているときで、電源がオンの時のみ常時点灯する交流直流ランプ17が設けられている。
【0040】
この上には輸液中に押すことで内蔵のブザーが鳴り、輸液を強制停止するための停止消音スイッチ18が設けられている。この停止消音スイッチ18は警報音が鳴っているときに押すと消音させることができ、また輸液の準備が整い開始可能な状態から所定秒(約2秒以上)押圧しつづけると後述する「スタンバイモード」となり、開始忘れを注意するアラーム状態が解除される状態になるので、例えば手術室内において患者への刺針が完了した状態で待機するときに、輸液開始までの時間中にアラーム発生を行わないようにできるようにしている。この停止消音スイッチ18の左隣りには停止中に橙色で発光するダイオードが点滅するようにした停止表示ランプ21が停止消音スイッチ18と同じ枠で囲むようにして関連付けされて設けられている。
【0041】
この停止消音スイッチ18の右隣りには開始スイッチ19が設けられており、開始スイッチ19を押すことで内蔵のブザーが鳴り、輸液動作を開始し、開始表示ランプ20の緑色発光ダイオードが点滅して動作状態であることを表示するようにしている。停止消音スイッチ18の左隣りには早送りスイッチ36が設けられており、押圧することで押圧している間は、設定された速度(mL/h)よりも早い送液を行なうようにしている。
【0042】
これら各スイッチの上方には、表示部8で囲まれた下方に位置する流量予定量表示部33の表示桁に対応する位置になるように設定手段であるアップダウンスイッチ22が図示のように合計で6個配設されており、これらアップダウンスイッチ22の各桁数に対応した上下ボタンを停止状態で夫々押すことで流量と予定量の設定を設定できるようにしている。このときアップダウンスイッチ22を押すことで0.1mL/h、又は1mL/h単位で表示が変化し、流量設定範囲が最小の1.0〜最大の500mL/hに設定可能となるようにプログラムされている。
【0043】
この流量予定量表示部33の上方には別枠印刷で囲まれた積算量予定量表示部23が配設されている。また、予定量設定範囲は同じくアップダウンスイッチ22の各桁数に対応した上下ボタンを押すことで、1〜9999mLの範囲で設定可能であり、1mL単位で設定するかまたはフリーに設定できるようにプログラムされており、その設定値を記憶するように構成されている。
【0044】
また、輸液された積算量を、積算量表示範囲が0.0〜9999mLの範囲となるように0.1mL、又は1mL単位で表示するようにプログラムされている。これらの流量表示部33はLED表示であり、積算量予定量表示部23もLEDであるため、夜間乃至暗い部屋でも照明なしで見ることができる。
【0045】
また、積算量予定量表示部23の上方には各種のアラーム文字を設けたアラーム表示部が別枠印刷で囲まれるように配設されている。このアラーム表示部は、「完了」の文字を点滅で表示する完了表示部24と、輸液チューブ2の閉塞異常が検出されて正常な輸液ができないときに「閉塞」の文字が点滅するようにして処置を促す閉塞異常表示部26と、ドア4が本体ベース3に対して完全に閉じていないときにその状態がドアスイッチで検出されたときに、「ドア」の文字を点滅させるドア開き表示部27と、輸液チューブ2中に所定長(10mm)以上の長さの気泡が混入したときに「気泡」の印刷文字を点滅表示するようにした気泡異常表示部28と、内蔵バッテリーの電圧が低下したときに「バッテリ」を点滅表示するようにしたバッテリ異常表示部29とが図示のように同じ印刷枠で囲まれるようにして設けられている。
【0046】
このアラーム表示部の左上側には、輸液チューブ2の閉塞検出警報圧力レベルを「H」の高い、「M」の中間、「L」の低いの3段階で緑色表示する発光ダイオードを図示のように左右方向に配設した閉塞圧設定表示部30が設けられており、予め設定された閉塞検出警報圧力レベルを常時点灯表示するようにしている。これら発光ダイオードは同じ実装基板上に発光ダイオードが実装されており、上記のフレキシブルケーブルを介して電力供給を受けるようにしている。
【0047】
また、破線で一部示したドアベース4aはアルミダイキャスト製または剛性のある樹脂製であり、デザイン上のポイントとなる曲面を側面と前面の間に形成するとともに、上面において凸状に突出形成された動作インジケータ6を設けている。この動作インジケータ6の内部には赤色と緑色に発光する発光ダイオードが内蔵されており、動作状態に応じて点灯するようにしている。すなわち、送液中と早送り中は点滅し、スタンバイ機能が働いている時は、赤色と緑色が交互に点滅して、輸液を即座に開始できる状態を知らせるようにしている。
【0048】
次に、図4はドア4を開いた様子を示した正面図であって、輸液チューブ2を装填する前の様子を示すとともに、説明のためにドア4は本体ベース3に対して略面一となるまで開かれた状態を示しているが、ドア4は後述するように所定角度の略105度まで開かれると停止する。また、図5は輸液ポンプ1の横断面図である。図4、図5を参照して、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、輸液装置1は所定材質の樹脂材料からヒケや樹脂流れ痕などがないように特殊射出成形される本体化粧カバー12aにより本体ベース3の四隅を覆うようにして固定するように構成されており、この本体化粧カバー12aを取り外すことで内部の全ての部位に簡単に近づけるようにしている。すなわち、保守組み立ての容易化を考慮した設計となっている。また、この本体化粧カバー12aの上には持ち運びの際に把持するためのハンドル5が固定されている。
【0049】
この輸液装置1の背面には、図中の破線図示の裏面基板13上に実装された不図示の外部通信接続コネクタとヒューズホルダと交流電源コネクタ(レセプタクル)49と不図示のメイン実装基板上に実装されたヒストリースイッチと直流コネクタなどが開口部を介して外部に出るように構成されている。
【0050】
また、図4において、本体ベース3には図示のように略中央部において上下方向に形成される溝部3mを一体形成しており、この溝部3m内に輸液チューブ2をセットするように構成されている。また、この溝部3mの略中間部位には合計で4個のネジ110をプラスドライバーで取り外すことで着脱可能に構成されたポンプ機構100が設けられており、このポンプ機構100が薬液などで汚染されて、フィンガ10−n(1〜5)の動きが悪くなったときに、ポンプ機構100を本体ベース3から取り出し、所定洗剤で洗浄することで薬液を洗い流し、動きが正常に復帰できるように設計されている。このためにポンプ機構100に設けられる各フィンガ10−1、10−2、10−3、10−4、10−5は、耐薬液、薬品性に優れる、例えばポリアセタール樹脂材料等の熱可塑性樹脂から射出成形されている。
【0051】
また、本体ベース3の下方部位には紙面前方に突出する一対の顎部3aが溝部3mを挟むように一体形成されており、図3に示すドア化粧カバー12bを設けたドアベース4を閉じたときにこれらの凸状部である顎部3aの上にドア化粧カバー12bの下方側面が位置することで、何らかの衝撃的な外力が加わったときに、これらの顎部3aで外力を受け止めるようにして、ドア化粧カバー12bとドア4には外力が加わらないように配慮されている。
【0052】
また、本体ベース3の中間の右側部位にはフック59が固定されており、ドアベース4において回動自在に設けられたドアロックレバー7の係止部7a(図4を参照)がこのフック59に対して係止されることで、ドアを本体に対する固定状態に維持するようにしている。
【0053】
また、溝部3mの最上流側に対向する部位となるドアベース4aにはエラストマーから形成されるドアシールゴム66が配設されており、ドア4を閉じたときに本体ベース3は、図示の形状部3jとの間で接合シール面を形成するようにドアシールゴム66が変形するようにして、内部に薬液等が進入することを防止している。また、ドアシールゴム66は、ドアベース4に固定されるチューブ押え板67により脱落防止されて固定される。
【0054】
上記の形状部3jの下方には気泡センサ60が配設されている。この気泡センサ60は、輸液チューブ2内部に混入する気泡の内で、チューブ内における長さが所定長さ(例えば、約10mm)となる所定量(約0.08cc)以上のものが検出されたときに、それ以降の動作を強制的に停止するためのものであり、この気泡検出部である気泡センサ60に対向する位置となるドアベース4a側にはチューブ押え部67bがチューブ押え板67上に一体形成されており、ドアベース4を閉じたときに、輸液チューブ2を不動状態にすることで正確な気泡検出を行えるようにしている。
【0055】
また、この気泡センサ60の下方にはポンプ機構100が位置している。また、このポンプ機構100の下方には閉塞センサ62が配設されており、これに対向するようにドアベース4aに配設された閉塞押え板69とともに、輸液チューブ2を紙面の前後方向に挟持するようにしている。この閉塞センサ62は永久磁石とこの永久磁石の移動位置をアナログ的に検出するためのピックアップとから構成されており、輸液チューブ2の閉塞状態にともなう内圧変化に応じて移動される永久磁石の位置を検出する。このことから、閉塞押え板69は輸液チューブ2のあらゆる方向の内圧変化を規制しないようにする必要があるので、図示の円盤はバネ板(弾性部材)の端部において自由に可動できるように保持される。
【0056】
一方、ポンプ機構100の動作原理は、装着された輸液チューブ2をフィンガ10−1、10−2、10−3、10−4、10−5で押圧して、設定された時間あたりの流量で持続的に輸液するものであって、マイクロコンピュータ(CPU)に記憶した情報によりモーター回転信号を生成し、この回転信号によってモーターを回転させ、ポンプを駆動し、輸液の流量を調節するようにしている。
【0057】
また、フインガ10−1、10−2、10−3、10−4、10−5は上流側から第1フィンガ、第2フィンガ、第3フィンガ、第4フィンガ、第5フィンガの夫々が図示のようにポンプベース101内において紙面前後方向に往復駆動されるように内蔵されている。図示のように第1フィンガ10−1と第4フィンガ10−4の形状は他の第2フィンガ、第3フィンガ、第5フィンガとは異なっている。すなわち第1フィンガと第4フィンガの幅寸法W1は他のフィンガの幅寸法W2より大きく設定されている。また、第1フィンガと第4フィンガの押圧面には凸部が形成されている。
【0058】
このように、各フィンガを全て同じ形状にしないことで、上述したように本願出願人が特開平09−151856号公報において提案したペリスタリックフィンガ方式を実現可能にしている。
【0059】
すなわち、第1フィンガ10−1と第4フィンガ10−4の押圧面に形成された凸部で輸液チューブ2を上流側と下流側のみ完全に圧閉し、他のフィンガ第2フィンガ、第3フィンガで途中部位を完全に潰さないようにすることで、輸液チューブの肉厚の影響をなくした高い精度の送液を可能にしている。第1フィンガと第4フィンガは輸液チューブ2を完全に圧閉するときに輸液チューブ2が左右に広がる状態になるので第1フィンガと第4フィンガの幅寸法W1は他のフィンガの幅寸法W2より大きくしている。尚、第5フィンガ10−5は脈動を補正するためのものである。
【0060】
また、通常の蠕動運動方式の場合には、全てのフィンガ10−nを第2フィンガ10−2と同じものにすることで完全に輸液チューブ2を潰すことで輸液チューブの蠕動運動を行うことができるようになる。
【0061】
次に、ドア4は、本体ベース3に対して上下の一対のヒンジブロック65と破線図示のピン61により左側に向けて開くように構成されており、上述した表示部8、キーパネル部9、動作インジケータ6への通電などを、繰返し曲げに強いフレキシブルケーブル63で行うようにしている。そして、このドアベース4の略中央部位には上記のポンプ機構100に対向するようにして受け板であるバックプレート機構130が配設されている。
【0062】
このバックプレート機構130はポンプ機構100の各フィンガ10−nに対向するように設けられることで、フィンガによる押圧の受け面を形成するものであるが、紙面の前後方向に移動するように設けられており、何らかの過剰負荷が発生したときに紙面裏面側に向けて後退するようにして輸液チューブ2の損傷を防止する機能を備えている。また、上記の第1フィンガ10−1と第4フィンガ10−4は輸液チューブ2を完全に圧閉するので、これらのフィンガに対向するようにしてバックプレート部材131がバックプレートベース132とは個別にされて、紙面の前後方向に移動するように設けられている。
【0063】
再度、図4において、本体ベース3は、図中の破線図示のポンプ機構100を着脱可能に収容するための形状部3tを上記の顎部3a(図3、図5及び図7も併せて参照して)とともに一体形成している。この顎部3aはドア4と同じかやや高く成形されており、ドア4を保護している。また、本体ベース3は各部材の取り付け基部となっており、アルミダイキャスト製の上板部材である上プレート111を図示のように固定することで装置の上面フレーム部分を形成している。また、この上プレート111の背面部分には厚さ1〜2mm前後の鉄板から加工される背面部材である背面プレート112が、上プレート111のネジ孔を設けた取付け部において2本のネジ110で固定されており装置背面側の背面フレーム部分を形成している。また、本体ベース3の下方部分と背面プレート112の間には下板部材である下プレート113がネジ110により固定されており、装置の底面フレーム部分を形成している。こうして、本体ベース3と上プレート111と背面プレート112と下プレート113による頑丈な閉構造の本体フレームが形成されている。または、上プレート111、背面プレート112、下プレート113、及び電池ケース116とが一体成型されていても構わない。
【0064】
以上のように、十分な強度を有する本体ベース3を基準として上下と背面のプレートとで、内蔵される機構と基板とを取り囲むように構成するか、一体化することにより、十分な剛性を確保して、万が一の落下時において機構と回路基板他を保護できるとともに、電磁波などの影響についても最小にできるように配慮している。
【0065】
本体ベース3の形状部3tの上下面部位にはカムシャフト102を回転自在に支持するベアリングを内蔵したベアリングブロック103が固定される。このカムシャフト102の上端の軸体には歯付きプーリ104が不図示のネジで固定される。また、上プレート111には出力軸において上記の歯付きプーリ104よりも小径または同じ大きさの歯付きプーリ107を不図示のネジにより固定したステッピングモータ106が固定されており、各プーリ間に張架される歯付きベルト105によりステッピングモータ106の回転力をカムシャフト102に伝達するように構成されている。また、各プーリのフランジは図示のように片側のみ設けるようにして歯付きベルト105を組み付けるか交換するときにステッピングモータ106を取り外さずに着脱ができるようにしている。
【0066】
また、カムシャフト102の外周面には上記のフィンガ10−nに相当する偏芯カム形状部が精度を確保されてコンピュータ制御加工装置により一体加工されている。カムシャフト102の精度が高いので、寸法精度の良い輸液チューブを用いれば、例えば流量精度±5%以内を保証できることになる。この一体型カムシャフト102は、SUS304などのステンレス鋼から機械加工される。
【0067】
さらに回転検出センサ108は、歯付きプーリ104の上側面に取り付けられた不図示のタイミングディスクを光学的に読み取ることで上記のカムシャフト102の回転位置と回転数を読み取る。このために回転検出センサ108は、上プレート111において一体形成された取付け部111cに固定されている。
【0068】
背面プレート112は、図示のようにモータ106の背後に配設されるとともに電源コネクタ等を実装した裏面基板13の取り付け基部となっている。また、バッテリユニット116はモータ106の下方において上記の下プレート113に形成された開口部113aを介して電池120が交換可能になるように配置されている。このために、本体化粧カバー12aの底部を塞ぐための裏蓋308が下プレート113に対してネジ止めされるように設けられている。また、この裏蓋308には装置全体をスタンドに固定するための固定ネジ孔部材307が固定されている。
【0069】
また、上記のポンプ機構100は形状部3tに対して4本のネジ110で固定された後には、後述するフィンガの小型ラジアルベアリング120がカムシャフト102のカム面102aに当接する状態になるように構成されている。また、上プレート111は歯付きプーリ104を逃げる形状となっており、カムシャフトを固定した状態で上プレート111を固定できるようにして組み立て時においてカムシャフト102を組み立てた後であっても固定できるようにして、順番の不整合が生じないようにしている。バッテリーユニット116は図示のような形状であり下プレート113に固定される。一方、フレキシブルケーブル63は不図示のメイン実装基板14から延設されており、本体ベース3の開口部を通過して図示のように現れるように構成されている。
【0070】
また、プログラムを記憶するとともに所定の制御を司るメイン実装基板は上方に向かうように配設された複数のコネクタを設けており、このメイン実装基板をネジにより上プレート111の側面に上方縁部を固定する。また、このメイン実装基板は、接地パターンを広く設定したり、各電子部品の実装パターンを配慮することで外部ノイズに対して強くなるように配慮されており、ノイズ発生のともなう機器が多数使用される手術室内での使用を可能にしている。
【0071】
次に、図2に示したように、クランプ50を輸液装置1に対して装填するクランプ機構について、図6の立体分解図と、図7の要部拡大外観斜視図を参照して説明する。
【0072】
両図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、先ず、図7を参照して、ドア4にはドア部材41が図示のようにビスにより固定されている。
【0073】
また、開口部33は、二点鎖線で図示のクランプ50を挿入するための開口面積を回動部材70との間に形成している。さらに、クランプ50が装填されたときに溝部3mの左側部材の上に把持部58bが位置するようにして、左右方向のガタ付きを防止するとともに、後述するようにドア部材41との間で把持部58を挟持して不動状態にするようにしている。溝部3mの右側部材は赤色に着色されており、装填のときの目印にしている。
【0074】
次に、図6をさらに参照して、本体ベース3にはステンレス板金製のベース部材90が固定される。このベース部材90は、図示の第1曲げ部91と第2曲げ部92と、この曲げ部92からさらに曲げ加工された端部92aが形成されている。また、ベース部材90には止め輪96を嵌合する溝部93aを形成した軸体93が垂直に圧入及び固定されている。この軸体93に対して所定樹脂材料から一体成形される回動部材70が挿入されて回動自在に軸支される。このために回動部材70の基部71には、軸体93に挿通される孔部74が端部に形成されている。
【0075】
また、基部71には周壁部75が図示のように形成されており、圧縮コイルバネ95を基部71上に収容するとともに端部95aを受け止めるようにしている。圧縮コイルバネ95の端部95bは、上記のベース部材90の第1曲げ部91に当接するようにセットされることで、自然状態で軽く圧縮されてセットされ、この後に止め輪96を軸体93の溝部93aにセットして完成する。さらに突起部が第1曲げ部91と周壁部75に形成されており、圧縮されて完成される付勢部材である圧縮コイルバネ95の内径部に夫々入ることで脱落防止している。
【0076】
この回動部材70の基部71の裏面側からはドアを閉じたときに傾斜面に沿って回動部材70を回動させるようにした第1傾斜面72とクランプ50の弾性変形部54に対して当接する突起部73が形成されている。以上の構成により、回動部材70の突起部73はクランプ50の弾性変形部54を押圧する。
【0077】
一方、ドア部材40は図示の第2傾斜面42と当接面43を一体形成した所定樹脂製である。
【0078】
以上のように構成されるクランプ機構について、図5のX−X線矢視断面図である図8、図9及び図10に基づいて説明する。図8は、クランプ50がセットされた状態を示す。図9は、ドア4が矢印D1方向に途中まで閉じられるか、矢印D2方向に開かれる状態を示す。そして、図10は、ドア4が閉じられてロックされた状態を示す。
【0079】
先ず、図8のように、輸液チューブ2をクランプ50で閉塞状態にした後に、輸液装置1のドア4が開かれ、クランプ50を回動部材70と本体ベース3との間に形成された開口部33を介して挿入ガイド部57を先にしてセットされる。このとき、回動部材70は圧縮コイルバネ95の圧縮力で図示の位置に位置している。
【0080】
これに続き、図9において、ドア4が矢印D1方向に閉じられ始めると、ドア部材40の当接面43がクランプ50の把持部58bを本体ベース3との間で挟持し始める。これに前後して、ドア部材40の第2傾斜面42が回動部材70の第1傾斜面72に当接することで回動部材70を矢印DA方向(時計回転方向)に回動し始める。尚、図9は、ドア4が矢印D1と反対方向に開かれ始める状態をも示す図である。
【0081】
図10において、ドアが完全に閉じられると、回動部材70がさらに回動されて第1傾斜面72から連続形成された凸部72aがクランプ50の解除面58cを押す状態となるので、溝部58aと係合部54aの係合が解除され、弾性変形により弾性変形部54が元の形に戻り、第1閉塞部52と第2閉塞部53による輸液チューブ2の閉塞が解除される。
【0082】
また、図10の状態からドアを図9に示す矢印D2方向に開き始めると、圧縮コイルバネ95により回動部材70は矢印DB方向に回動されて突起部73が弾性変形部54を押すことで、クランプ50により輸液チューブを閉塞し始めて、ドアが開かれると、係合が行われて図8に図示の状態になる。
【0083】
以上の操作で、ドア4と本体ベース3との間で輸液チューブ2が挟持状態に保持されると同時に、クランプ50による閉塞状態が解除され、ポンプ機構による送液が可能となる。そして、送液後にドア4を開くと、クランプ5による閉塞状態になり、そのまま取り出すことができることとなる。
【0084】
以上説明したクランプ50において、輸液チューブ2を強引に引っ張ると、外れる場合があった。そこで、これ以降説明するクランプ150では、一度セットされたクランプが輸液チューブ2から不用意に外れないようにした、さらなる改良を施している。
【0085】
図11(a)は第2実施形態のクランプ150の平面図、(b)は、(a)の側面図、(c)は、(a)の背面図、(d)は、(a)のX-X線矢視断面図である。また、図12(a)は、図11(a)のY-Y線矢視拡大図、(b)はクランプ150に、二点鎖線で図示の輸液チューブ2をセットした後の様子を示した外観斜視図、(c)は、クランプ150に、二点鎖線で図示の輸液チューブ2をセットした後の様子を示した外観斜視図である。
【0086】
先ず、図11(a)、(c)において、このクランプ150は、弾性変形可能な例えばナイロン樹脂系の合成樹脂材料を用いて一体射出成型されることで成型後の自然状態において図示の形状を有している。このクランプ150は、上記の自然状態である無負荷状態では、図示のように主基部151から離れるように湾曲形状に延設される弾性部160を介して主基部151と連続形成される弾性変形部154と、主基部151の上端側から図示のような略C形状に主基部151と連続形成される弾性部161を介して一体成形される副基部158とから形成されている。
【0087】
そして、主基部151には第1閉塞部152が、また弾性変形部154には、この第1閉塞部152に対向して第2閉塞部153が形成されており、これらの閉塞部の間で輸液チューブを閉塞するようにしている(図13参照)。
【0088】
弾性変形部154の先端は、図示のように上記の副基部158に向かうように曲がっており、弾性変形部154の先端には第1係合部154aと第2係合部154bが形成されている。さらに、主基部151と弾性変形部154との合わせ部分において、輸液チューブの半径方向の位置ずれを防止するための形状部155、156が対向して形成されている。さらに、主基部151の長手方向に沿って挿入ガイド部157が形成されており、この挿入ガイド部157から挿入することで輸液装置に対するクランプの装填をだれでも簡単に行えるようにしている。副基部158には、押圧部158cと第1溝部(把持部)158aがさらに形成されている。また、主基部151には矢印マークと「挿入」の文字が一体成型されている。
【0089】
続いて、図11(d)と、図12(a)において、第1係合部154aは、副基部158の底面に形成された第1溝部154aに対して係合する。また、弾性変形部154の先端部分の左右壁面において一対分が形成された第2係合部154b、154bは、副基部158の両側側面に一対分が形成された第2溝部158b、158bに対して係合するように構成されている。
【0090】
以上の構成により、図11、12に示す自然状態では、第1係合部154aは第1溝部158bに対して非係合し、第2係合部154b、154bについても第1溝部158b、158bに対して非係合する状態となる。
【0091】
この自然状態では、図11(a)に示すように副基部158と弾性変形部154の先端部の間に開口部159が形成されるので、図12(b)、(c)に示したように輸液チューブ2を第1閉塞部152と第2閉塞部153の間まで導入することが可能となる。
【0092】
次に、図13は、クランプ150の動作説明のために、正面図と断面図とを併記した図であり、(a)は、輸液チューブ2を開口部159からセットする様子を示し、(b)は輸液チューブ2をセットした後に、指先または専用器具で矢印D1方向に外力を加えることで副基部158に形成された第2溝部158b、158bに第2係合部154b、154bが係合することで、輸液チューブ2を第1閉塞部152と第2閉塞部153との間で軽く押さえた様子を示し、(c)は輸液装置にセットするか、さらに指先で矢印D1方向に外力を加えることで副基部158に形成された第1溝部158aに第1係合部154aが係合することで、輸液チューブ2を第1閉塞部152と第2閉塞部153との間で閉塞状態に維持する様子を示している。
【0093】
先ず、図13(a)において、上記のように副基部158と弾性変形部154の先端部の間には、輸液チューブ2を潰した状態で、内部に通過させるために所定距離(例えば2mm程度)開口した開口部159が形成されている。このため、輸液チューブ2を図示のようにセットできる。
【0094】
この後に、図13(b)において、専用器具などで出荷時において、矢印D1方向に外力を加えることで副基部158に形成された第2溝部158b、158bに第2係合部154b、154bが係合するようにして、輸液チューブ2を第1閉塞部152と第2閉塞部153との間で軽く押さえた状態にする。そして、図13(c)において、輸液装置にセットすることで矢印D1方向に外力が加えられることで、副基部158に形成された第1溝部158aに第1係合部154aが係合する。以上で、輸液チューブ2が第1閉塞部152と第2閉塞部153との間で完全に閉塞される。
【0095】
また、閉塞状態を解除するときには、副基部158の押圧部158cを図13(c)に示す矢印方向に押圧することで、第1溝部158aと第1係合部154aの間の係合が解除されるとともに、弾性変形部154が元の自然状態の形状に戻ることで、図13(b)に示す状態となるので、この状態での輸液が可能となる。
【0096】
以上のように構成されるクランプ150は、輸液チューブ2を閉塞状態と開放状態にするために単独で使用することもできる。このように単独で使用する場合には、図12(a)において、副基部158を矢印D、D方向に広げることで、第2溝部158b、158bと第2係合部154b、154bの間の係合状態を解除することができる。
【0097】
以上のように構成されるクランプ150が挿入されるクランプ機構について、図5のX−X線矢視断面図である図14、図15に基づいて説明する。図14と図15とも、クランプ150がセットされた後の状態を示しており、図14は、ドア4が開かれる状態を示す。そして、図15は、ドア4が閉じられてロックされた状態を示す。両図において、既に説明済みの構成部品については同様の符号を附して説明を割愛する。
【0098】
先ず、図14に図示のように、輸液チューブ2はクランプ150を用いて図13(c)で説明した閉塞状態にされて輸液バッグセットともに提供される。その後に、輸液装置1のドア4を開き、クランプ150を回動部材70と本体ベース3との間に形成された開口部33(図7参照)を介してクランプ150の挿入ガイド部157を先にしてセットする。挿入ガイド部157にはテーパ部157aが設けられており、容易に挿入できるようにしている。このとき、回動部材70は圧縮コイルバネ95の圧縮力で図示の位置に位置している。また、この挿入ガイド部157によりクランプ150が左右逆方向に挿入されることはない。
【0099】
これに続き、図15において、ドア4が閉じられ始めると、第2傾斜面42が回動部材70に当接することで回動部材70を時計回転方向に回動し始める。尚、図15は、ドア4が反対方向に開かれ始める状態をも示す図である。そして、ドア4が完全に閉じられると、回動部材70がさらに回動されると、ドアの底面41が副基部158の押圧面158cを押圧することで、第1溝部158aと第1係合部154aの係合が解除され、弾性変形により弾性変形部154が元の形に戻り、図13(b)の状態となり、第1閉塞部152と第2閉塞部153による輸液チューブ2の閉塞が解除される。
【0100】
以上の操作で、ドア4と本体ベース3との間で輸液チューブ2が挟持状態に保持されると同時に、クランプ150による閉塞状態が自動的に解除され、ポンプ機構による送液が可能となる。そして、送液後にドア4を開くと、クランプ150による閉塞状態(図13(c)の状態)になり、輸液終了後にそのまま取り出すことができることとなり、安全性の高いクランプを提供できる。
【0101】
以上説明したクランプ150において、一旦輸液チューブをセットした後に、輸液チューブ2のクランプ150は、図13(c)に示した状態であるので、ドア4を不用意に開いても輸液チューブ2の閉塞状態が維持され安全性の高いクランプを提供できる。
【0102】
【発明の効果 】
以上説明したように、本発明によれば、輸液チューブを予め挿通状態にする必要がなく、かつ閉塞状態を長時間に渡り維持できるクランプを提供できる。
【0103】
また、ドアの開閉動作のみで、クランプによる輸液チューブの閉塞状態の解除と、再度の閉塞状態にすることができるクランプを用いた輸液装置を提供することができる。
【0104】
さらに、一度セットされたクランプが輸液チューブから不用意に外れることのない、信頼性の高いクランプとクランプを用いた輸液装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態のクランプ50を、破線図示の輸液チューブ2とともに示しており、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線矢視断面図、(c)は(a)のA部拡大平面図である。
【図2】クランプ50を輸液装置1に対して装填する様子を示した外観斜視図である。
【図3】輸液装置1の前面側の操作スイッチパネルの正面図である。
【図4】輸液チューブ2を装填する前の様子を示し、ドアベース4を開いた状態を示した正面図である。
【図5】輸液装置1の横断面図である。
【図6】クランプ50を装填するクランプ機構の立体分解図である。
【図7】図6の完成後の要部拡大外観斜視図である。
【図8】クランプ50が装填された状態を示す、図5のX−X線矢視断面図である。
【図9】ドア4が矢印D1、D2方向に途中まで開閉された状態を示す、図5のX−X線矢視断面図である。
【図10】ドア4が閉じられてロックされた状態を示す、図5のX−X線矢視断面図である。
【図11】(a)は第2実施形態のクランプ150の平面図、(b)は、(a)の側面図、(c)は、(a)の背面図、(d)は、(a)のX-X線矢視断面図である。
【図12】(a)は、図11(a)のY-Y線矢視拡大図、(b)はクランプ150に、二点鎖線で図示の輸液チューブ2をセットした後の様子を示した外観斜視図、(c)は、クランプ150に、二点鎖線で図示の輸液チューブ2をセットした後の様子を示した外観斜視図である。
【図13】クランプ150の動作説明のために、正面図と断面図とを併記した図であり、(a)は、輸液チューブ2を開口部159からセットする様子を示した図、(b)は、輸液チューブ2をセットした後の様子を示した図、(c)は、輸液チューブ2を第1閉塞部152と第2閉塞部153との間で閉塞状態に維持する様子を示してた図である。
【図14】クランプ150が使用される図5のX−X線矢視相当の断面図である。
【図15】クランプ150が使用される図5のX−X線矢視相当の断面図である。
【符号の説明】
1 輸液装置
2 輸液チューブ
3 本体ベース
4 ドア
7 ドアロックレバー
8 表示部
9 キーパネル部
10−nフィンガ
33 開口部
40 ガイド部材
50 クランプ
51 主基部
52 第1閉塞部
53 第2閉塞部
54 弾性変形部
58 副基部
70 回動部材
90 ベース部材
95 圧縮コイルバネ(付勢部材)
100 ポンプ機構
101 ポンプベース
150 クランプ
151 主基部
154 弾性変形部
154a 第1係合部
154b 第2係合部
158 副基部
158a 第1溝部
158b 第2溝部
158c 押圧部

Claims (5)

  1. 輸液チューブ(2)に対して着脱自在に用いられ、前記輸液チューブの途中部位を閉塞状態にするクランプ(150)であって、
    前記クランプ(150)は、
    前記閉塞状態にする一方の第1閉塞部(152)を形成した主基部(151)と、
    前記主基部(151)の長手方向に沿って延設される挿入ガイド部(157)と、
    第1溝部(158a)と第2溝部(158b)とを形成し、前記主基部(151)から弾性変形可能に延設される副基部(158)と、
    前記閉塞状態にする他方の第2閉塞部(153)と、前記第1溝部(158a)に係合することで前記第1閉塞部(152)と前記第2閉塞部(153)との間で前記閉塞状態に維持する第1係合部(154a)と、前記第2溝部(158b)に係合することで前記輸液チューブ(2)の外れを防止する第2係合部(154b)と、を形成し、自然状態では前記第2閉塞部(153)が前記第1閉塞部(152)から離れるように前記主基部(151)から弾性変形可能に延設される弾性変形部(154)と、
    前記主基部(151)と前記弾性変形部(154)との合わせ部分において、輸液チューブ(2)の位置ずれを防止する形状部(155)と、から構成され、
    前記自然状態では、前記第1係合部(154a)は前記第1溝部(158a)に対して非係合し、前記第2係合部(154b)も前記第2溝部(158b)に対して非係合して、前記副基部(158)と前記弾性変形部(154)との間において前記輸液チューブ(2)を前記第1閉塞部(152)と前記第2閉塞部(153)の間まで導入する開口部(159)を形成したことを特徴とするクランプ。
  2. 前記第1溝部(158a)は、前記副基部(158)の端部に形成される底面に形成され、前記第2溝部(158b)は、前記底面から連続形成される内側壁面に一対分が形成され、
    また、前記第1係合部(154a)は、前記弾性変形部(154)の端部に形成される裏面に形成され、前記第2係合部(154b)は、前記弾性変形部(154)の端部に形成される両側側面に一対分が形成され、
    前記第1係合部(154a)の前記第1溝部(158a)に対する係合は、前記副基部(158)の前記主基部(151)側への押圧により解除され、前記第2係合部(154b)の前記第2溝部(158b)に対する係合は、前記内側壁面を広げることで解除されることを特徴とする請求項に記載のクランプ。
  3. 前記副基部(158)は、把持部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ。
  4. 前記クランプ(150)は、弾性変形可能な樹脂材料から一体射出成型されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクランプ。
  5. 請求項に記載のクランプを用いた輸液装置であって、
    前記輸液チューブは、該輸液チューブの外周面を順次押圧して輸液を行うように本体に設けられる輸液手段と、前記本体に開閉自在にされるドアとの間での挟持状態に保持され、
    前記クランプを挿入自在にするクランプ手段は、
    前記挟持状態では前記閉塞状態を解除し、かつ前記ドアを開くと前記閉塞状態にして、前記クランプを取り出し可能にするために、
    前記クランプ手段は、
    前記本体に固定されるベース部材と、
    該ベース部材に固定される軸体回りに回動自在に設けられるとともに、前記クランプを挿入する開口部と、第1傾斜面と、前記クランプの前記弾性変形部に当接する突起部とを形成した回動部材と、
    前記回動部材の前記突起部が、前記弾性変形部を押圧するように付勢する付勢部材と、
    前記第1傾斜面に摺接することで前記回動部材を前記付勢部材に抗して回動させる第2傾斜面と、前記クランプの前記副基部を前記主基部側に向けて押圧する底面とを有し、かつ前記ドアに設けらるドア部材と、
    から構成されることを特徴とするクランプを用いた輸液装置。
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