JP4367600B2 - 空気入りタイヤの加硫成形用金型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りタイヤの加硫成形用金型に係わり、更に詳しくは成形タイヤの故障本数を低減させることが出来ると共に、金型のベントホールに対する加硫時の詰まりを無くしてメンテナンス回数を低減させることを可能とした空気入りタイヤの加硫成形用金型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、タイヤ加硫成形用金型には、加硫時に未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)と金型との間のエアーや、加硫時に発生するガス等を抜くために、ベントホールと呼称される気抜き穴(以下ベントホールと言う)が多数形成されている。
【0003】
前記未加硫タイヤと金型との間に、エアーや加硫時に発生したガスが残った状態で加硫した場合に、エアー溜まり,またはガス溜まりによりタイヤ表面に凹部ができ、これが製品タイヤの故障(一般にライト故障と言われている)の原因となっている。
【0004】
ところで、金型に加工した多数のベントホールには、加硫時にエアーやガスが抜けた後に溶融したゴムが流れ込み、これが図6に示すように、加硫成形後のタイヤWの表面に多数のひげ状の突起物S(一般にスピューと呼称され、以下スピューと言う)として形成される。
【0005】
従って、加硫成形後のタイヤWの表面、特に踏面部Waに形成されたスピューSは、タイヤの外観向上等の目的から専用の機械等で除去する作業を行っており、またスピューSの除去を容易にするためと外観向上等の目的から、前記ベントホールの内径を細くして対応している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、ベントホールの径を細くし、タイヤWの表面に形成されるスピューSを小径のものにしようとした場合、加硫後に金型からタイヤWを離型させる際、スピューSの引っ張り強度がベントホールの内面との摩擦係数に対して不足し、タイヤ離型時にスピューSが途中から切れてしまい、スピューSの一部がベントホール内に残ってしまう。その結果、ベントホールが詰まり、加硫時にはエアーや加硫時に発生したガスが排出されずに、上記のようなタイヤのライト故障が発生する。
【0007】
従って、このようなライト故障が起こらないようにするために、金型内面のクリーニングやベントホールを細いドリル等を用いて短期間にメンテナンスをする必要があり、このためタイヤ加硫の生産性を向上させることが出来ないと言う問題があった。
【0008】
この発明の目的は、ベントホールの詰まりを防止してタイヤ加硫の生産性を向上させることが出来ると共に、メンテナンスを低減させ、製品タイヤの故障本数を低減させることが出来る空気入りタイヤの加硫成形用金型を提供することにある。
【0011】
上記目的を達成するため、この発明の空気入りタイヤの加硫成形用金型は、空気入りタイヤの加硫成形用金型に形成されたベントホール内に、中心部に貫通穴を備えたベントピースを埋設して成る加硫成形用金型であって、前記ベントピースは、長手方向を熱膨張率の異なる少なくとも二種類以上の耐熱性非接着材料で段階的または直線的に形成し、前記ベントホール内に、ベントピースを前記加硫成形用金型の内側が熱膨張率が小さくなるように位置させて埋設したことを要旨とするものである。
【0012】
このように、金型のベントホール内に、長手方向を熱膨張率の異なる耐熱性非接着材料で段階的または直線的に形成したベントピースを加硫成形用金型の内側が熱膨張率が小さくなるように位置させて埋設したことで、タイヤ離型時に、ベントホール内にひげ状の突起物の切断片が残ることなく完全に離脱させることが出来、この結果、ベントホールが詰まることがなく、金型のメンテナンスの回数を低減させ、製品タイヤの故障本数を低減させることが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づきこの発明の実施の形態を説明する。
【0014】
なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。
【0015】
図1は、この発明の一実施形態を示すタイヤ加硫成形用の分割金型の一部縦断斜視図を示し、この金型1のタイヤ踏面部(トレッド部)を成形する部分には、多数の分割されたピース2が配設され、このピース2の側面と、タイヤWのショルダー部及びサイド部を成形する金型部分3には、未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)と金型1との間のエアーや、加硫時に発生するガス等を抜くための多数のベントホール4が形成されている。
【0016】
このベントホール4は、成形するタイヤの金型により異なるが、この発明の実施形態では、内径Dが1.0 mm〜3.0mm の円筒状の貫通孔が金型内面側1aから背面側1bまで形成され、このベントホール4は、金型内面側1aを大径に形成すると共に、これに連続して金型1の背面側1bが小径となるように段状に形成し、この段差部4aに後述する2段構成の耐熱性非接着材料5a,5bから成る円筒状のベントピース5が係止できる構造になっている。
【0017】
この発明の実施形態では、特にタイヤのショルダー部及びサイド部を成形する金型部分3のベントホール4に、図1及び図2に示すように、長手方向を熱膨張率の異なる2段構成の耐熱性非接着材料5a,5bから成るベントピース5が埋設されている。
【0018】
前記ベントーピース5は、この実施形態では、前記ベントホール4に嵌合するように、外径1.0 mm〜3.0mm 、中心部の貫通孔6の内径が、1.0mm 以下、好ましくは、0.5mm 〜0.8mm 、全長が8.0mm 〜15mmの円筒状に形成され、前記耐熱性非接着材料5a,5bとしては、ステンレス等の金属、セラミックス、PTFE等の樹脂材料、鉱石のうちの何れかから選ばれた少なくとも一つ以上の材料、またはこれらを組み合わせて構成するものである。
【0019】
なお、この実施形態のベントーピース5では、熱膨張率が小さい耐熱性非接着材料5aとして、金属材料としてステンレス材料を使用し,また熱膨張率が大きい耐熱性非接着材料5bとして、樹脂材料としてフッ素系ポリテトラフルオロエチレン、またはパーフルオロアロキシレジン等を使用しているが、特にこのような材料には限定されるものではない。
【0020】
更に、ベントーピース5の耐熱性非接着材料5a,5bの熱膨張の比率としては、1〜3割程度の相違した材料を組み合わせて使用することが好ましく、熱膨張率が小さい耐熱性非接着材料5aは、長さ2.0mm 〜5.0mm に形成すると共に、金型1の内面側1aに位置させ、熱膨張率が大きい耐熱性非接着材料5bは、ベントーピース5の全長(8.0mm 〜15mm)の5割以上に形成すると共に、金型1の背面側1bとなるように位置させて埋設させるものである。
【0021】
また、この実施形態のベントピース5は、熱膨張率の異なる同径の耐熱性非接着材料5a,5bを直列に二段構成として形成してあるが、二段以上の構成にすることも可能であり、更に同一もしくは熱膨張率の異なる耐熱性非接着材料5a,5bの肉厚を長手方向に変化させて、加熱時に膨張率を変化させるように構成することも可能である。
【0022】
以上のように、金型1のベントホール4を構成することで、常温時には図2に示すように、ベントピース5の耐熱性非接着材料5a,5bの貫通孔6の内径は同一径となっていても、加硫時には図3に示すように、耐熱性非接着材料5a,5bの熱膨張率の差によって、貫通孔6の内径は図の鎖線に示すように、金型1の背面側1bに行くに従って小径(細径)となる。
【0023】
この結果、加硫時にタイヤWのショルダー部及びサイド部Wbに形成されるひげ状の突起物S(スピューS)は、図4及び図5に示すように、先端から基端部にかけて横断面積が拡大する、換言すれば先端が細く、基端部が太い突起物Sとなる。
【0024】
従って、金型1から加硫成形されたタイヤWを離型させる際、突起物Sの引っ張り強度がベントホール4の内面との摩擦係数に対して不足することがなくなり、タイヤ離型時に突起物Sが途中から切れてしまうと言う問題も解消され、突起物Sの一部がベントホール6内に残ってしまうと言うこともなくなるため、ベントホール6が詰まりもなくなり、加硫時にはエアーや加硫時に発生したガスは確実に排気され、タイヤのライト故障等も確実に防止させることが出来る。
【0025】
なお、この実施形態では、タイヤの加硫成形用金型について説明したが、このような金型に限定されず、樹脂材料の成形型や、食品類の型等、あらゆる成形型に応用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】
この発明は、上記のように前記ベントピースは、長手方向を熱膨張率の異なる少なくとも二種類以上の耐熱性非接着材料で段階的または直線的に形成し、前記ベントホール内に、ベントピースを前記加硫成形用金型の内側が熱膨張率が小さくなるように位置させて埋設したので、タイヤ離型時に、ベントホール内にひげ状の突起物の切断片が残ることなく完全に離脱させることが出来、この結果、ベントホールが詰まることがなく、金型のメンテナンスの回数を低減させ、製品タイヤの故障本数を低減させることが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示すタイヤ加硫成形用の分割金型の一部縦断斜視図である。
【図2】この発明の常温時におけるベントホール内に埋設されたベントピースの断面図である。
【図3】この発明の加硫時におけるベントホール内に埋設されたベントピースの断面図である。
【図4】この発明の一実施形態を示すタイヤ加硫成形用金型で成形されたタイヤの断面図である。
【図5】タイヤのショルダー部及びサイド部に形成されたひげ状の突起物の拡大断面図である。
【図6】従来のタイヤ加硫成形用金型で成形されたタイヤの断面図である。
【符号の説明】
1 金型 1a 金型内面側
1b 背面側 2 ピース
3 金型部分 4 ベントホール
4a 段差部
5 ベントピース 5a,5b 耐熱性非接着材料
6 貫通孔 W タイヤ
Wa ショルダー部及びサイド部 S ひげ状の突起物(スピュー)

Claims (6)

  1. 空気入りタイヤの加硫成形用金型に形成されたベントホール内に、中心部に貫通穴を備えたベントピースを埋設して成る加硫成形用金型であって、前記ベントピースは、長手方向を熱膨張率の異なる少なくとも二種類以上の耐熱性非接着材料で段階的または直線的に形成し、前記ベントホール内に、ベントピースを前記加硫成形用金型の内側が熱膨張率が小さくなるように位置させて埋設して成る空気入りタイヤの加硫成形用金型。
  2. 前記ベントホールは、金型内面側を大径に形成すると共に、これに連続して成形用金型の背面側を小径となるように段状に形成した請求項1に記載の空気入りタイヤの加硫成形用金型。
  3. 前記耐熱性非接着材料が、金属材料、セラミックス、樹脂材料、鉱石のうちの何れかから選ばれた少なくとも一つ以上の材料である請求項1または2に記載の空気入りタイヤの加硫成形用金型。
  4. 前記ベントピースを、熱膨張率の異なる金属材料または樹脂材料で形成する請求項1,2または3に記載の空気入りタイヤの加硫成形用金型。
  5. 前記ベントピースを、熱膨張率の異なる金属材料と樹脂材料とを組み合わせて形成した請求項1,2または3に記載の空気入りタイヤの加硫成形用金型。
  6. 前記ベントピースを、一端側から他端側に向かって肉厚を変化させ、長さ方向において熱膨張率が異なるように構成した請求項1,2,3,4または5に記載の空気入りタイヤの加硫成形用金型。
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