JP4366680B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車用変速機として、或は各種産業機械用の変速機として利用するトロイダル型無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図2及び図3に示すトロイダル型無段変速機が知られている。このトロイダル型無段変速機は、入力軸1と同心に入力側ディスク(第一のディスク)2が支持され、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク(第二のディスク)4が固定されている。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6,6が設けられている。各トラニオン6,6は、両端部外側面に上記枢軸5,5を設けている。又、各トラニオン6,6の中心部には変位軸7,7の基端部を支持し、上記枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させる事により、各変位軸7,7の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン6,6に支持された変位軸7,7は、それぞれパワーローラ8,8を回転自在に支持している。そして、各パワーローラ8,8が、上記入力側、出力側両ディスク2,4の間に挟持されている。
【0003】
入力側、出力側両ディスク2,4の互いに対向する内側面2a,4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ8,8の周面8a,8aは、上記内側面2a,4aに当接させている。
【0004】
上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9が設けられ、この押圧装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧自在とされている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成されている。上記カム板10の片側面(図2の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図2の右側面)にも、同様のカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12,12が、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持されている。
【0005】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13によって複数個のローラ12,12が、入力側ディスク2外側面のカム面14に押圧される。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8,8に押圧されると同時に、上記1対のカム面13,14と複数個のローラ12,12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8,8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合、先ず、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5,5を中心として各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ8,8の周面8a,8aが図2に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸7,7を傾斜させる。
【0007】
反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸5,5を中心として上記各トラニオン6,6を揺動させ、各パワーローラ8,8の周面8a,8aが図3に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸7,7を傾斜させる。各変位軸7,7の傾斜角度を図2及び図3にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比が得られる。
【0008】
次に、図4に示すものは、従来のトロイダル型無段変速機の要部を具体的に示した図である。
トラニオン6の中間部に形成した円孔23は、変位軸7を支持している。変位軸7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部21と枢支軸部22とを備えており、支持軸部21が、ラジアルニードル軸受24を介して円孔23に回転自在に支持されている。また、枢支軸部22の先端周囲に、パワーローラ8がラジアルニードル軸受25を介して回転自在に支持されている。
【0009】
一方、パワーローラ8の外側面とトラニオン6の中間部内側面との間には、パワーローラ8の外側面の側から順に、このパワーローラ8に加わるスラスト方向の荷重を支承するスラスト玉軸受26と、外輪30に加わるスラスト荷重を支承するスラストニードル軸受27とが配置されている。スラスト玉軸受26は、パワーローラ8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、パワーローラ8の回転を許容するものである。このスラスト玉軸受26は、複数個ずつの玉29と、各玉29を転動自在に保持する円環状の保持器28と、スラスト軌道輪である円環状の外輪30とから構成されている。各スラスト玉軸受26、26の内輪軌道は、上記各パワーローラ8、8の外側面に、外輪軌道は上記各外輪30,30の内側面にそれぞれ形成されている。
【0010】
スラストニードル軸受27は、レース31と保持器32とニードル33とから構成されている。この様なスラストニードル軸受27は、レース31を上記各トラニオン6、6の内側面に当接させた状態で、この内側面と外輪30の外側面との間に挟持されている。
【0011】
トラニオン6の一端部には、駆動ロッド36が結合されており、この駆動ロッド36の中間部外周面に駆動ピストン(図示せず)が固設されている。
前述したように、変位軸7は、互いに平行で、且つ偏心した支持軸部21及び枢支軸部22とで構成されているが、パワーローラ8を枢支する枢支軸部22の内側には、受入側給油通路41が軸方向に穿設されている。この受入側給油通路41の上流端は、枢支軸部22の基端面35の一部で支持軸部21から外れた部分で開口している。トラニオン6内に設けられた送り込み側給油通路39を通じて送り込まれた潤滑油は、受入側給油通路41の上流端から受入側給油通路41に流入する。
【0012】
ラジアルニードル軸受25に接触する枢支軸部22の先端側外周と、スラスト玉軸受26に対向する中間外周には、受入側給油通路41と連通する第一分岐通路の第一供給穴50と、第二分岐通路の第二供給穴52が形成されている。すなわち、第二供給穴50は、ラジアルニードル軸受25の先端近傍部分で開口し、第二供給穴52は、スラスト玉軸受26の内径側に対向する部分で開口している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したスラスト玉軸受26は、パワーローラ8に加わるスラスト方向の高荷重を支承しつつ、パワーローラ8の高回転を許容するものであるから、十分な潤滑(トラクション油)が必要である。しかし、図4に示す従来の構造は、受入側供給通路41及び第一供給穴50が開口している第一分岐通路の連通部分の断面積、受入側供給通路41及び第二供給穴52が開口している第二分岐通路の連通部分の断面積が略同一面積であり、第二供給穴52から供給される潤滑油量がさほど多くないので、第二供給穴52から供給された潤滑油がスラスト玉軸受26の保持器28の内周側で跳ね返され、周囲に飛散してスラスト玉軸受26の軌道面に達することなく他へ流出してしまう。
そのため、十分にスラスト玉軸受26の潤滑を行なうことができず、スラスト玉軸受26の焼き付き、摩耗、剥離が発生するおそれがあり、信頼性、耐久性の面で問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、パワーローラに加わるスラスト荷重を支承しつつ、パワーローラの回転を許容しているスラスト転がり軸受に対する潤滑油量を増大させることで、焼き付き、摩耗、剥離を抑制することができ、信頼性、耐久性を向上させたトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載のトロイダル型無段変速機は、互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ回転自在に支持された第一、第二のディスクと、これら第一、第二のディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオンと、互いに偏心した支持軸部及び枢支軸部からなり、このうちの支持軸部を上記トラニオンに回転自在に支持し、枢支軸部を前記トラニオンの内側面から突出させた変位軸と、前記枢支軸部の周囲にラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外端面に添設されてこのパワーローラに加わるスラスト荷重を支承するスラスト転がり軸受と、前記枢支軸部の先端外周に配設されてパワーローラに加わるラジアル荷重を支承するラジアル転がり軸受と、前記枢支軸部の内部に設けられた給油通路とを備えたトロイダル型無段変速機において、前記枢支軸部に、前記給油通路から分岐して前記ラジアル転がり軸受に向けて潤滑油を供給する第一分岐通路と、この第一分岐通路とともに前記給油通路から分岐して前記スラスト転がり軸受に向けて潤滑油を供給する第二分岐通路とを設け、前記給油通路は、前記枢支軸部の軸方向に延在し、前記第一、第二分岐通路は、前記給油通路が延在する方向と直交する方向に同一の流路断面積で形成されているとともに、前記第二分岐通路及び前記給油通路が連通する部分の断面積を、前記第一分岐通路及び前記給油通路が連通する部分の断面積より大きく設定した。
【0016】
この請求項1記載の発明によると、スラスト転がり軸受は、パワーローラに加わるスラスト方向の高荷重を支承しつつ、パワーローラの高回転を許容するが、本発明では、給油通路から第二分岐通路に流れ込んだ大量の潤滑油がスラスト転がり軸受に確実に供給され、スラスト転がり軸受の軌道面に達するので、スラスト転がり軸受の焼き付き、摩耗、剥離を抑制することが可能となる。
【0018】
また、給油通路、第一分岐通路及び第二分岐通路を複雑な構造にしなくとも.給油通路から第二分岐通路を介して十分な潤滑油を供給することが可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図1を参照して説明する。なお、図4に示した構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態は、パワーローラ8を枢支する枢支軸部22の内側に、図4で示した同一構成の受入側給油通路41が軸方向に穿設されている。
【0020】
この受入側給油通路41の上流端は、枢支軸部22の基端面35の一部で支持軸部21から外れた部分で開口している。トラニオン6内に設けられた送り込み側給油通路39を通じて送り込まれた潤滑油は、受入側給油通路41の上流端から受入側給油通路41に流入する。
【0021】
ラジアルニードル軸受25に接触する枢支軸部22の先端側外周には、受入側給油通路41と連通する第一分岐通路(図示せず)の第一供給穴60が形成されている。スラスト玉軸受26に対向する枢支軸部22の中間外周には、第二分岐通路(図示せず)の第二供給穴62が形成されている。
【0022】
すなわち、第一、第二分岐通路は、受入側給油通路41が延在する方向と直交する方向に同一の流路断面積で形成されている。
第二分岐通路は、受入側給油通路41の軸線と交差する位置を中心として放射状に延在し、枢支軸部22の中間外周で第二供給穴62が開口している。第一分岐通路は、受入側給油通路41の軸線と交差しない位置から放射状に延在し、枢支軸部22の先端側外周で第一供給穴60が開口している。これにより、前記第二分岐通路及び受入側給油通路41が連通する部分の断面積は、第一分岐通路及び受入側給油通路41が連通する部分の断面積より大きく設定されている。
【0023】
上記構成によると、スラスト玉軸受26は、パワーローラ8に加わるスラスト方向の高荷重を支承しつつ、パワーローラ8の高回転を許容するが、受入側給油通路41から第二分岐通路に流れ込んだ大量の潤滑油が、第二供給穴62からスラスト玉軸受26に確実に供給され、スラスト玉軸受26の軌道面に達するので、スラスト玉軸受26の焼き付き、摩耗、剥離を抑制することが可能となる。
したがって、信頼性、耐久性を向上させたトロイダル型無段変速機を提供することができる。
【0024】
また、受入側給油通路41、第一分岐通路及び第二分岐通路を複雑な構造にしなくとも、受入側給油通路41から第二分岐通路を介して十分な潤滑油を供給することができる
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、パワーローラに加わるスラスト荷重を支承しつつ、パワーローラの回転を許容しているスラスト転がり軸受に対する潤滑油量を増大させることで、焼き付き、摩耗、剥離を抑制することができ、信頼性、耐久性を向上させたトロイダル型無段変速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトロイダル型無段変速機のパワーローラを枢支する軸受構造を示す図である。
【図2】トロイダル型無段変速機の最大減速時の状態を示す図である。
【図3】トロイダル型無段変速機の最大増速時の状態を示す図である。
【図4】従来のトロイダル型無段変速機のパワーローラを枢支する軸受構造を示す図である。
【符号の説明】
2 入力側ディスク(第一ディスク)
4 出力側ディスク(第二ディスク)
5 枢軸
6 トラニオン
7 変位軸
8 パワーローラ
21 支持軸部
22 枢支軸部
25 ラジアルニードル軸受(ラジアル転がり軸受)
26 スラスト玉軸受(スラスト転がり軸受)
28 保持器
29 玉
30 外輪
41 受入側供給通路(給油通路)
60 第一供給穴
62 第二供給穴

Claims (1)

  1. 互いの内側面同士を対向させた状態で、互いに同心に、且つ回転自在に支持された第一、第二のディスクと、これら第一、第二のディスクの中心軸に対し捻れの位置にある枢軸を中心として揺動するトラニオンと、互いに偏心した支持軸部及び枢支軸部からなり、このうちの支持軸部を上記トラニオンに回転自在に支持し、枢支軸部を前記トラニオンの内側面から突出させた変位軸と、前記枢支軸部の周囲にラジアルニードル軸受を介して回転自在に支持された状態で、上記第一、第二の両ディスクの間に挟持されたパワーローラと、このパワーローラの外端面に添設されてこのパワーローラに加わるスラスト荷重を支承するスラスト転がり軸受と、前記枢支軸部の先端外周に配設されてパワーローラに加わるラジアル荷重を支承するラジアル転がり軸受と、前記枢支軸部の内部に設けられた給油通路とを備えたトロイダル型無段変速機において、
    前記枢支軸部に、前記給油通路から分岐して前記ラジアル転がり軸受に向けて潤滑油を供給する第一分岐通路と、この第一分岐通路とともに前記給油通路から分岐して前記スラスト転がり軸受に向けて潤滑油を供給する第二分岐通路とを設け、前記給油通路は、前記枢支軸部の軸方向に延在し、前記第一、第二分岐通路は、前記給油通路が延在する方向と直交する方向に同一の流路断面積で形成されているとともに、前記第二分岐通路及び前記給油通路が連通する部分の断面積を、前記第一分岐通路及び前記給油通路が連通する部分の断面積より大きく設定したことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
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