JP4364955B2 - 曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法、特に、下水等の有機性汚水を活性汚泥により生物処理する際、単一の曝気槽で硝化脱窒及び汚泥の引き抜きを負荷変動に追従させることにより、好気と嫌気を交互に繰り返して硝化と脱窒を促進する曝気槽の性能を安定化することができるようにした曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水等の有機性汚水を活性汚泥により単一の曝気槽を用いて生物処理にて硝化脱窒をする場合、間欠曝気方法が用いられている。
この間欠曝気の方法は、通常タイマにより曝気機の運転と、停止とを交互に行うようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、下水処理場に流入する汚水量や汚水中に含まれる有機物及び窒素の濃度は刻一刻と変化し、負荷変動が著しいが、曝気機をタイマにより運転と、停止とを交互に行う場合、この負荷変動に追従できないため、硝化脱窒性能が安定しないという問題があった。
そこで、本件発明者等は、溶存酸素値(以下、「DO値」という。)を計測しながら、DO値が予め定めた所定の値に達した時に曝気を停止する方法について、各種試験を行い、制御に有効なDO規定値や、確保すべき嫌気時間等を確認したが、曝気装置の制御だけでは、必ずしも硝化脱窒が十分進まない場合があり、汚泥の引き抜きの管理を合わせて行うことが重要であるという結論に達した。
【0004】
本発明は、上記見地に基づき、下水等の有機性汚水を活性汚泥により生物処理する際、単一の曝気槽で硝化脱窒及び汚泥の引き抜きを負荷変動に追従させることにより、好気と嫌気を交互に繰り返して硝化と脱窒を促進する曝気槽の性能を、負荷変動に追従して安定化することができるようにした曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法は、好気と嫌気を交互に繰り返して硝化と脱窒を促進する曝気槽に、曝気装置と汚泥引抜ポンプを設置し、曝気装置を計測センサの計測値が予め定めた値になった時に曝気運転を停止し、嫌気運転に切替えるとともに、該嫌気運転を、タイマ設定値又は計測センサの下限設定値に達した時点で、曝気運転に切替えるように制御し、当該1日又は過去数日間の計算結果のデータに基づいて1日の曝気時間の合計を計算し下記式で示される好気条件下にある汚泥固形物の滞留時間(ASRT)が硝化細菌及び脱窒細菌が系外にウォッシュアウトされない所定の値を保つように、その翌日の汚泥引抜ポンプによる汚泥引抜量を計算して汚泥引抜ポンプの運転制御を行うようにしたことを特徴とする。
ASRT=Ta・V/(24・Qs)
ここで、Ta:1日の曝気時間の合計(hr)
V:曝気槽の容量(m
Qs:1日当たりの汚泥引抜量(m /日)
である。
【0006】
この場合において、計測センサに、溶存酸素計又は酸化還元電位計を用いることができる。
【0007】
この曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法において、曝気装置により曝気を開始すると、溶存酸素計又は酸化還元電位計(以下、「DO計」又は「ORP計」という。)によるDO値又はORP値の計測値は徐々に上昇するが、時間帯によって流入する汚水量や汚水中に含まれる有機物及び窒素の濃度が異なるため、計測値の増減や上昇速度は、負荷に伴って変化する。
【0008】
ここでは、その計測値が所定の値(本明細書において、「規定値」という場合がある。)になった時に、曝気運転から嫌気運転に切替えるようにしているため、負荷の大きい時間帯ほど酸素消費量が大きく、計測値は上昇しにくく、逆に、負荷が小さい時間帯は、短時間で計測値が上昇して嫌気運転に切替わる。
このように、負荷の変動に応じて曝気時間が増減するため、好気条件における有機物の酸化分解や硝化反応を十分進めることができるとともに、嫌気時間をタイマ設定値又は計測センサの下限設定値に達した時点で、曝気運転に切替えるように制御して、十分な脱窒反応を進めることができるため、好気条件と嫌気条件をバランスよく保って、硝化と脱窒を安定して行うことができる。
【0009】
一方、硝化細菌や脱窒細菌は、増殖速度が遅いため、十分な滞留時間を確保しながら、余剰汚泥の引き抜きの管理を行う必要があるが、ここでは、汚泥濃度の安定している曝気槽から定量ポンプを用いて所定量の汚泥を引き抜くようにする。
この場合、汚泥の滞留時間の指標となるSRTは、曝気槽の容量を1日当たりの汚泥引抜量で除した値になることから容易に計算で求めることができる。
ここでは、特に、増殖速度の小さい硝化細菌に着目し、ASRT(好気条件下にある汚泥固形物の滞留時間)を指標として、ASRTが一定となるように汚泥の引き抜きを行うようにする。
ASTRは、SRTと1日当たりの好気時間の割合の積で表されるが、好気時間の割合は、曝気装置が負荷に応じて自動制御されるため、毎日一定量の汚泥を引き抜いた場合は、日々変化する。
そこで、1日の曝気時間の総和を、制御盤内に設けた積算装置により計算し、これを基に演算装置により、ASRTが所定の値を保つために必要な汚泥の引抜量、さらに汚泥引抜ポンプの運転時間を算出し、その算出結果に基づいて、汚泥引抜ポンプの運転を行うため、硝化細菌や脱窒細菌が系外にウォッシュアウトされることなく、硝化脱窒に適切な汚泥の管理を自動的に行うことができる。
【0010】
また、曝気槽から引き抜いた汚泥は、直接脱水することができるが、これにより、余剰汚泥の処理を経済的に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法を実施する設備の一例を示したものある。
ここでは、曝気槽として長円形の形状の循環水路からなる完全混合に近い小規模のオキシデーションデイッチ1を用いるようにしたが、このほか、円形、馬蹄形等の任意の形状の循環水路からなるものや矩形の曝気槽を用いることも可能である。
【0013】
オキシデーションデイッチ1には、曝気装置2、計測センサ3及び汚泥引抜ポンプ5を設置する。
【0014】
ここでは、曝気装置2として、スクリュー形の曝気装置2を2台設けるようにしているが、曝気装置の方式や台数は、これに限定されるものではない。
【0015】
また、計測センサ3は、通常、DO計が用いられるが、ORP計を用いることも可能で、計測センサ3により検出した値は制御盤4に取り込まれ、これにより曝気装置2の運転を制御するように電気的に配線されている。
【0016】
汚泥引抜ポンプ5は、オキシデーションデイッチ1内の余剰汚泥を引き抜くためのもので、この汚泥引抜ポンプ5には、水中ポンプのほか、槽外形のポンプを使用することも可能である。
【0017】
そして、汚泥引抜ポンプ5により引き抜かれた汚泥Cは、汚泥濃縮槽(図示省略)に導入して、濃縮した後、脱水したり場外に搬出することができるが、汚泥濃縮槽で浮上した汚泥が返流水として水処理系に戻ってくることや、経済性を考慮すれば、引き抜いた汚泥を、そのまま脱水処理するのがより好ましい。
【0018】
次に、本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法の動作及び作用を、図2に基づいて説明する。
図2は、時間経過に伴うDO値(ORP値の場合も、基本的な動作及び作用は同様)の変化と曝気装置の動作状態を示したものである。
【0019】
曝気を開始すると、DO値は徐々に上昇するが、時間帯によって流入する汚水量や汚水中に含まれる有機物及び窒素の濃度が異なるため、計測値の増減や上昇速度は、負荷に伴って変化する。
【0020】
ここでは、DO値が規定値になった時に、曝気運転から嫌気運転に切替えを行うよう構成しているが、負荷の大きい時間帯は酸素消費量が大きく、DO値は上昇しにくいため、曝気Aのように曝気時間が長くなるが、負荷が小さい時間帯は、短時間でDO値が上昇して嫌気運転に切替わるため、曝気Bのように曝気時間が短くなる。
このDO値の上昇は、硝化反応の進行と密接に関係しており、硝化が終了した時のDO値を規定値として設定することにより、負荷変動に追従して、曝気時間を自動的に増減することができる。
【0021】
この場合において、嫌気時間は、DOセンサを用いる場合は、タイマで適切な時間を確保するが、ORPセンサの場合は下限値を設定して、下限値に達した時点で曝気を再開する方法を採用することも可能である。すなわち、嫌気条件で進行する脱窒反応については、脱窒速度を考慮して嫌気時間のタイマ値又はORP値の下限値を適切な値に設定することで、好気条件と嫌気条件をバランスよく保ち、硝化と脱窒を安定して行うことができるものとなる。
【0022】
一方、硝化細菌や脱窒細菌は、増殖速度が遅いため、十分な滞留時間を確保しながら、余剰汚泥の引抜管理を行う必要がある。
ここでは、汚泥濃度の安定している曝気槽としてのオキシデーションデイッチ1から、汚泥引抜ポンプ5を用いて所定量の汚泥を引き抜く時、汚泥の滞留時間の指標となるSRTは、オキシデーションデイッチ1の容量をV(m)、1日当たりの汚泥引抜量をQs(m/日)とすると、
SRT=V/Qs (1)
となることから、容易に計算で求めることができる。
【0023】
また、特に、増殖速度の小さい硝化細菌に着目し、ASRTを指標として、必要なASRTの値を予め考慮し、ASRTが一定となるように汚泥の引き抜きを行うようにする。
【0024】
ASRTは、SRTと1日に当たりの好気時間の割合の積で表されため、1日の曝気時間の合計をTa(hr)とすると、(1)式より、
ASRT=SRT×(Ta/24)=Ta・V/(24・Qs) (2)
で表される。
【0025】
そして、曝気装置は、負荷に応じて自動制御されるため、毎日一定量の汚泥を引き抜いた場合は、ASRTが日々変化する。そこで、曝気−嫌気の切替わり状態を監視しながら、1日の曝気時間の総和Taを、制御盤内に設けた積算装置により計算し、これを基に演算装置により、ASRTが所定の値を保つために必要な汚泥の引抜量Qsを計算する。
【0026】
さらに、汚泥引抜ポンプ5の流量から、必要な運転時間Tsを算出し、算出結果に基づいて汚泥引抜ポンプをTs時間運転するようにする。
【0027】
なお、その日のデータを基に、翌日の汚泥引抜ポンプ5の運転を行ったり、数日間の曝気装置2の運転データから、その翌日の汚泥引抜ポンプ5の運転時間を計算して、制御することも可能である。
【0028】
また、汚泥引抜ポンプ5は、短時間であればTs時間連続して運転することも可能であるが、長時間引き抜きを行うとオキシデーションデイッチ1の汚泥濃度が徐々に低下してくるため、通常は、数回に分けて引き抜きを行うことが望ましい。
【0029】
また、汚泥の引抜運転時には、オキシデーションデイッチ1内が十分撹拌混合されて汚泥濃度が均一になっていることが必要であるため、嫌気時間帯も撹拌を行うか、曝気時間帯にのみ、汚泥の引き抜きが行うような制御系を付加する必要がある。
【0030】
【発明の効果】
本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法によれば、負荷の変動に応じて曝気時間が増減するため、好気条件における有機物の酸化分解や硝化反応を十分進めることができるとともに、嫌気時間をタイマ設定値又は計測センサの下限設定値に達した時点で、曝気運転に切替えるように制御して、十分な脱窒反応を進めることができるため、好気条件と嫌気条件をバランスよく保って、硝化と脱窒を安定して行うことができる。
また、1日の曝気時間の総和を、制御盤内に設けた積算装置により計算し、これを基に演算装置により、ASRTが所定の値を保つために必要な汚泥の引抜量、さらに汚泥引抜ポンプの運転時間を算出し、その算出結果に基づいて、汚泥引抜ポンプの運転を行うため、硝化細菌や脱窒細菌が系外にウォッシュアウトされることなく、硝化脱窒に適切な汚泥の管理を自動的に行うことができる。
【0031】
また、計測センサに、溶存酸素計又は酸化還元電位計を用いることにより、刻一刻と変化する硝化反応を正確、かつ迅速に計測することができ、負荷変動に対して曝気時間の増減を自動的に行って、好気条件と嫌気条件をバランスよく保ち、硝化と脱窒を安定して行うことができる。
【0032】
また、曝気槽から引き抜いた汚泥は、直接脱水することにより、余剰汚泥の処理を経済的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法を実施する設備の一例を示す平面図である。
【図2】 本発明の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法の動作及び作用を示す説明図である。
【符号の説明】
1 曝気槽(オキシデーションディッチ)
2 曝気装置
3 計測センサ
4 制御装置
5 汚泥引抜ポンプ
A 汚水
B 汚泥混合液
C 引抜汚泥

Claims (3)

  1. 好気と嫌気を交互に繰り返して硝化と脱窒を促進する曝気槽に、曝気装置と汚泥引抜ポンプを設置し、曝気装置を計測センサの計測値が予め定めた値になった時に曝気運転を停止し、嫌気運転に切替えるとともに、該嫌気運転を、タイマ設定値又は計測センサの下限設定値に達した時点で、曝気運転に切替えるように制御し、当該1日又は過去数日間の計算結果のデータに基づいて1日の曝気時間の合計を計算し下記式で示される好気条件下にある汚泥固形物の滞留時間(ASRT)が硝化細菌及び脱窒細菌が系外にウォッシュアウトされない所定の値を保つように、その翌日の汚泥引抜ポンプによる汚泥引抜量を計算して汚泥引抜ポンプの運転制御を行うようにしたことを特徴とする曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法。
    ASRT=Ta・V/(24・Qs)
    ここで、Ta:1日の曝気時間の合計(hr)
    V:曝気槽の容量(m
    Qs:1日当たりの汚泥引抜量(m /日)
    である。
  2. 計測センサに、溶存酸素計又は酸化還元電位計を用いることを特徴とする請求項1記載の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法。
  3. 曝気槽から引き抜いた汚泥を、直接脱水することを特徴とする請求項1記載の曝気装置と汚泥引抜ポンプの運転制御方法。
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