JP4363799B2 - タービン組立輸送架台および同架台を用いたタービン組立方法、輸送方法 - Google Patents

タービン組立輸送架台および同架台を用いたタービン組立方法、輸送方法 Download PDF

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    • Y02T50/00Aeronautics or air transport
    • Y02T50/60Efficient propulsion technologies, e.g. for aircraft

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タービンを架台上で組立て、そのまま輸送できるようにするタービン組立輸送架台、同架台を用いたタービン組立方法、およびその輸送方法に係り、特に蒸気タービンのうち高圧タービンまたは中高圧一体タービン等の組立および輸送に好適なタービン組立輸送架台および同架台を用いたタービン組立、輸送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、主に小型クラス、中型クラスの発電設備の輸出先等の現場において容易に据付けを行えるようにするため、タービンを予め工場で組立て、静止部と回転部との間隙確認や調整がほぼ済んだ、完全な組立状態にして出荷する一体輸送組立が多く採用されるようになっている(例えば特開平7−102906号公報、特開平5−149107号公報、特開昭62−267505号公報等)。
【0003】
まず、図7を参照して、従来技術および本発明の適用対象となるタービン構成について、概略的に説明する。この図7に例示したタービン1は、蒸気タービンの高中圧一体タービンであり、大別して静止部であるケーシング2と、回転部であるロータ3とからなっている。ケーシング2は上下の分割体、すなわちケーシング下半部4とケーシング上半部5とにより構成されている。同様にケーシング下半部4は、外部車室下半部4aとその内部に組込まれる内部車室下半部4bとからなり、ケーシング上半部5は、外部車室上半部5aとその内部に組込まれる内部車室下半部5bとからなる。内部車室下半部4bおよび内部車室下半部5bには、ロータ3に蒸気を整流して導く静止部品としての上下分割構造のノズル6がそれぞれ組込まれる。
【0004】
次に図8〜図10を参照して、タービン1の組立ておよび輸送についての従来技術を説明する。図8は組立時に使用される従来の設備構成を示す斜視図であり、図9は図8の一部を拡大して示す断面図である。
【0005】
図7および図8に示すように、タービン1の組立てに際しては従来から、タービン1の組立支持用架台として、工場設備品である基礎定盤11が多用されている。この基礎定盤11は大型ブロック状、例えばボックス状のものであり、その上面が水平な受け面12とされ、ケーシング2のタービン軸方向両端位置に少なくとも1対配置される(図8には、1対の基礎定盤11のうち、一方のみを示している)。この基礎定盤11の上面には、ケーシング2を支持するための1対の離間配置されたケーシング支持台13と、これらのケーシング支持台13間に配置されたロータ軸受支持用の軸受台14とが並列に載置されている。
【0006】
各ケーシング支持台13は、組立てるべきケーシング2をタービン軸方向の各端部位置において、ロータ3を挟む2箇所で支持するものである。これらのケーシング支持台13は、例えば直方体ブロック状に構成され、一側部に上面開口の嵌込み溝15を有し、他側上面が平坦な受け部16とされている。そして、嵌込み溝15にはタービン1のケーシング下半部4の端部に下向きに突設された突起部4cを挿入保持できるとともに、平坦な受け面16には組立て後のケーシング2の端部を搭載保持し、タービン据付時の状態を再現できるようになっている。また、軸受台14は、例えば上面が開口する平面四角形状の枠体17内に上面が開口する半円弧状のリング状受け部材18を保持した構成とされ、上下2分割されたタービン軸受19の下半部分を嵌合保持することができるようになっている。そして、組立てに際しては、まず、ケーシング下半部4をケーシング支持台13に搭載する。この場合、ケーシング下半部4の軸方向各端部のロータ軸に対して対称に2箇所ずつの突起部4cを、計4個のケーシング支持台13の嵌込み溝15内にそれぞれ挿入する。
【0007】
図9は、この嵌込み溝15内への挿入状態を詳細に示している。すなわち、ケーシング下半部4の各突起部4cは、ケーシング支持台13の各嵌込み溝15内に、アッセンブリーキー20に載せた状態で、それぞれ挿入支持させる。そして、このアッセンブリーキー20の厚さを調整することにより、ケーシング下半部4の水平レベルを調整し、各受け部に均等な荷重がかかるように、相対的な位置関係に調整して据付けを行う。次に、据付けられたケーシング下半部4に、上下に2分割されたノズル6等の静止部品のうち下半部側の部品を組込む。
【0008】
その後、図8に示したロータ軸受19を軸受台14に支持させ、このロータ軸受19にロータ3を納め、間隙の計測を行い、静止部品やロータ位置の調整を行って間隙値を適正な値とし、上半部側の部品を組立てる。これにより、軸受台14にロータ軸受19が組込まれた状態で、ロータ3を回転可能に保持することができる。そこで最終的に、ケーシング上半部5をケーシング下半部4に組込み、これらをボルトによって締結することにより組立てを終了し、タービン1が完成する。この時、ケーシング下半部4はケーシング上半部5により支持されることになるため、ケーシング2とケーシング支持台13の受け面16との間にランニングキー21を挿入して、先に挿入していたアッセンブリーキー20を外して、ケーシング2をランニングキー21によって支持させるとともに、ロータ3のフランジ接合等のための高さ調整をする。このように、静止部であるケーシング2と回転部であるロータ3とを、それぞれの支持構造をもって組立てている。
【0009】
なお、発電所等のタービン据付け現場においては、ロータ軸受19がコンクリート基礎等に固定設置される。そこで、上述した組立て後のロータ軸受19をロータ3から外し、かつロータ3をケーシング2内に保持した状態とする。外したロータ軸受19については、組立てたケーシング2とは別送する。この場合、ロータ軸受19による支持を解除する代りに、仮受け用のロータ受けによりロータ3をケーシングに固定する。すなわち、ケーシング2の端部に設けたパッキンケーシングに、ロータ3を仮受けするための固定手段としてロータ受けを組付け、これにより輸送中のロータ固定を行う。つまり、パッキンケーシングはグランドパッキンを保持する部分であり、このグランドパッキンに代えてこれと同一形状のロータ受けを組付け、これによりロータ3を径方向から支持するとともに、ロータ3自体の軸方向の移動を防ぐために、ロータ3を軸方向に一定角度傾斜したボルトにより固定させる機能を持たせる。これによりロータ3がケーシングに対して固定される。そこで、この状態においてケーシング全体を吊り、ロータ3も静止部との位置関係を保ったまま吊上げることができる。
【0010】
次に、輸送について説明する。図10は、上記の如く組立てた後のタービン1を輸送するための輸送用架台22を示すとともに、その輸送用架台22にタービン1を搭載する様子を示している。この図10に示すように、従来適用されていた輸送用架台22は、水平枠状の基体23の各隅角部から支柱24をそれぞれ立設し、これらの支柱24にケーシング2を支持させることができる構成とされている。そして、ロータ3がケーシング2に対して固定された組立て状態において、ケーシング2全体を吊ることにより、ロータ3も静止部との位置関係を保ったままで吊上げ、図10に示すように、吊上げられたタービン1を輸送用架台22に移し替え、このようにして移し替えた状態でケーシング2を出荷、輸送するようにしている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来技術においては、組立て用の架台上で一体に組立てられたタービンが、輸送用の架台に移し変えられて出荷されている。したがって、同一工場内に組立て用のスペースの他に、移し変え作業および輸送用架台を置くためのスペースを確保することが必要であった。
【0012】
また一方において、輸送用の架台もケーシングを受けることができる構造に作成されていることから、組立架台と輸送用架台とにより、同種の構造物を2つ必要としていた。なお、一般に、輸送用架台は用済み後、スクラップとされている。
【0013】
このように、従来では輸送用架台を一時的に置くスペースも必要であり、また輸送用架台はタービンを組立て状態で搭載して輸送する必要から、タービン外形よりも床面積が大きくなっており、組立スペースと同程度のスペースが一時的に必要になる等の問題があった。
【0014】
本発明の目的は、タービンの一体輸送組立を行うに当たり、組立てられたタービンの移し変えをする必要なく、かつ組立に必要な十分な精度を確保しつつ工場スペースを有効に利用することができ、しかも移し変え作業による無駄な工程を無くすることによって工期の短縮が図れる、タービン組立輸送架台および同架台を用いたタービン組立方法、輸送方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者において鋭意研究の結果、従来、タービンの組立て用架台を専用の構成とし、タービン輸送用の架台と明確に区別して製作、使用してきた理由として、架台の寸法精度の問題があることに想到した。すなわち、タービンは大型機械でありながら、ロータの高速回転のために軸の撓み等による振動の発生を極力防止する必要がある。そのため、回転軸の芯合せ精度には1mあたり0.05mm以上の高精度が要求される。また、静止部と回転部との間隙寸法、特に流体シール部等についても高効率を得るために可能な限り高度の寸法設定が必要となる。
【0016】
一方、タービンは極めて大型かつ大重量であるため、その組立て支持用架台は型鋼等の溶接により大掛かりな構成とせざるを得ない。このような大型溶接構造物である組立て用架台にあっては、高さあるいは水平度等について、せいぜい1mあたり0.5mm程度が限界である。したがって、一般的にタービン組立て専用の架台を製作し、その特徴を熟知したうえで、ケーシングの芯出しや支持高さ等の設定について、ケーシング支持部に挿入するキー厚さを変える等の調整作業、シム等の利用等を通じて高精度化を図っているのが現状である。
【0017】
このような現状のもとでは、組立て用架台を専用として作業能率を高めようとするのが一般的である。また、一体輸送組立ての場合には、上述したように、タービンのほぼ全体の組立て終了後に、輸送専用の架台に移し替えるのが一般的である。
【0018】
しかしながら、発明者の着目点は、そのような事情のもとで最近の一体輸送組立てによる出荷数増大により、複数のタービンの同時組立ての要請が多くなり、限られた工場空間内での作業性の問題が散見され、今後も従来の方法を利用すると、スペース利用性あるいは移し替え作業性等のさらなる問題が予想され、それに答えるべきことが将来に亘る課題として想定されたことにある。
【0019】
もし、組立て用架台に係る高寸法精度の要求に適切に対応できると同時に、組立て後のタービン移し替え等の問題を解決できるならば、タービンの一体輸送組立を行うに当たり、工場スペースの有効利用、および無駄な作業の削減や省略による工期の短縮が図れる等、多大な実用的効果が期待できると考えられる。
【0020】
本発明は、かかる着目に基づいてなされたものであり、輸送に使用するための架台に対し、組立てにも適した機能を持たせること、すなわち、高精度を有するタービンケーシングの支持機能、ロータの支持機能を付加させることにより、前記の目的を達成しようとするものである。
【0021】
請求項1に係る発明では、組立てるべきタービンのケーシングを支持するケーシング支持部と、前記タービンのロータを支持するロータ支持部とを一体構成として備え、前記ケーシング支持部にその高さ調整を行うためのケーシング高さ調整機構を設けるとともに、前記ロータ支持部にその支持位置を調整するためのロータ位置調整機構を設け、前記タービンの水平度を保持した状態での組立ておよびその組立て後の固定状態での輸送を可能としたことを特徴とするタービン組立輸送架台を提供する。
【0022】
請求項2に係る発明では、組立てるべきタービンのケーシングをロータ軸方向両端位置付近においてロータに対して対称位置にて計4箇所で支持する柱状のケーシング支持部と、前記ロータをその軸方向両端位置付近において支持するロータ支持部とを同一の基枠に一体構成として備え、前記各ケーシング支持部にそれぞれその高さ調整を行なうためのケーシング高さ調整機構を設けるとともに、前記各ロータ支持部にそれぞれその高さ方向および水平方向の支持位置を調整するためのロータ位置調整機構を設け、前記タービンの水平度を保持した状態での組立ておよびその組立て後の固定状態での輸送を可能としたことを特徴とするタービン組立輸送架台を提供する。
【0023】
請求項3に係る発明では、請求項1または2記載のタービン組立輸送架台において、ケーシング支持部にスイベル機構を設けたことを特徴とするタービン組立輸送架台を提供する。
【0024】
請求項4に係る発明では、請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台において、ロータを固定する固定手段は、当該ロータを、ケーシングに設けられるパッキンケーシング位置にて固定するものであることを特徴とするタービン組立輸送架台を提供する。
【0025】
請求項5に係る発明では、請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台を使用し、そのケーシング支持部にタービンのケーシングを支持させてケーシング高さ調整手段により高さ調整するとともに、ロータ支持部に前記タービンのロータを支持させてロータ位置調整手段により高さおよび水平位置の調整を行ってタービンを組立てることを特徴とするタービン組立方法を提供する。
【0026】
請求項6に係る発明では、請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台を使用し、そのケーシング支持部にタービンのケーシングを支持させてケーシング高さ調整手段により高さ調整するとともに、ロータ支持部に前記タービンのロータを支持させてロータ位置調整手段により高さおよび水平位置の調整を行ってタービンを組立てた後、その組立てたタービンを前記架台に固定して、そのまま輸送することを特徴とするタービン輸送方法を提供する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、蒸気タービンの高中圧一体タービンの組立て輸送を例として、図1〜図7を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態によるタービン組立輸送架台(以下、「架台」という)31を示す斜視図である。この図1に示すように、架台31は例えばI型鋼を連結した水平な四角形状の基枠32を有し、この基枠32の各隅各部にボックス柱状の支柱33を立設し、これらの支柱33の上にケーシング支持部34を設けた構成としている。なお、各支柱33のうち、重量が相対的に大きい中圧タービン側(図1の右側)の2本の支柱33を、高圧タービン側(図1の左側)の2本の支柱33よりも大断面としている。また、各支柱33には補強リブ35が設けてある。
【0029】
互いに対向する高圧タービン側の1対の支柱33間、および中圧側の1対の支柱33間には、それぞれI型鋼からなる水平な梁36が架設され、これらの各梁36のほぼ中央位置の外側面から、これらと直交する方向、すなわち、載置されるロータ軸の方向に沿って水平なロータ支持部37が突設されている。なお、これらのロータ支持部37もI型鋼によって構成され、これらの下部は基枠32に設けた補強リブ38によって支持されている。以上の構成を有する架台31は、大形の型鋼による溶接接合構造とされているので、前述したように、寸法精度は1mあたり0.5mmと必ずしも高いものとならない。
【0030】
このような構成のもとで、本実施形態では、各支柱33に設けるケーシング支持部34が、微小寸法が調整可能な機能をもつ高さ調整機構39を備えた構成としてある。すなわち、各支柱33の上端部に水平なフランジ部40を設け、このフランジ部40の上に2つの支持部をもつブロック状の支持部材41を、高さ調整機構39としてのジャッキ機構によって高さ調整が可能に搭載してある。
【0031】
図2は、このケーシング支持部における支持部材およびジャッキ機構44の一構成例を拡大して示している。図2に示すように、支持部材41は概略直方体状をなす鋼製ブロックからなり、この一側上面にケーシング下半部4を受けるための嵌込み溝42を有するとともに、異なる側の上面を一定の広い平坦面として組込み後のケーシング全体(実際にはケーシング上半部5)を受けることができる平面からなる受け部43を有している。この支持部材41の下面が、ジャッキ機構44によって支持されている。ジャッキ機構44は、例えば直方体状のハウジング45内に油圧式またはネジ式等の動力変換機構を組込み、そのハウジング45側面に操作用の油圧配管またはネジ部等46が突出し、ハウジング45上面側に垂直な昇降支柱47および水平な支持板48を設けた構成となっている。
【0032】
このハウジング45が支柱33の上端のフランジ部40上に搭載され、水平な支持板上48にブロック状の支持部材41が載置されている。図2においては、ケーシング下半部4の端部に下向きに突設した支持用突起部4cを、支持部材41の嵌込み溝42に挿入し、ロータ軸方向に沿う溝両面壁と支持用突起部4cとの間にアキシャルキー49を挿入して、ロータ軸方向両面から支持した状態を示している。同時に、ケーシング2の組立て後に、ケーシング下半部4にボルト締めされたケーシング上半部5の端部を、支持部材上面の受け部43上にランニングキー50を介して搭載した状態を示している。この図2の状態は、後の組立て手順において詳述するが、ケーシング組立て後における輸送時の状態である。
【0033】
図3は、ケーシング支持部34の支持部材41およびジャッキ機構44の他の構成例を拡大して示している。この構成例は、基本的に図2に示した構成例と略同様であるが、スイベル機構51を加えるとともに、それに対応してジャッキ機構44を変形したものである。
【0034】
すなわち、スイベル機構51は、支持部材41の下端を支持する下方膨出湾曲面、例えば球面を有する上スイベル部材52と、この上スイベル部材52の下方膨出曲面に係合する上面窪み状湾曲面を有するとともに下面に傾斜面をもつ下スイベル部材53とを備えている。そして、これらの両部材52、53により自在摺接面を形成してある。また、ジャッキ機構44は、下スイベル部材53の傾斜面と係合する係合斜面を有するスライドキー54を有する。さらに、このスライドキー54を移動させるためのボルト式操作部材55、およびこれを保持するフレーム56を有する。
【0035】
そして、ボルト式操作部材55の回転によりスライドキー54を水平移動させることにより、下スイベル部材53を介して上スイベル部材52を昇降させ、これにより高さ調整を行える機構となっている。この図3に示した状態も図2の場合と同様に、ケーシング組立て後における輸送時の状態である。
【0036】
このように、本実施形態による一体組立輸送用の架台31は、4箇所のケーシング支持部34と2箇所のロータ支持部37、および補強のための柱、梁、リブ等から構成されている。そして、ケーシング支持部34は、ケーシング下半部4を受けるための嵌込み溝42およびケーシング上半部5を組込んだ後にケーシング2を受けるための受け部43を有している。
【0037】
図4は、ロータ支持部37の構成を拡大して示している。このロータ支持部37は、ロータ3を直接支持できる構成としてあり、ロータ軸受に相当する位置に配置される。すなわち、ロータ支持部37を構成する型鋼上に、基板57とこの基板57の上面両端位置から立上る支持壁58とを有する支持フレーム59が搭載され、この支持フレーム59にロータ3を仮受けするためのVブロック60と、そのVブロック60の左右位置調整用の押しボルト機構61と、高さ調整のためのジャッキ機構62とが設けられている。押しボルト機構61はVブロック60の左右に配置されたボルト63を基板57から立上る支持壁58に支持した構成とされ、ジャッキ機構62はVブロック60の下側に配置された例えば2段の楔形ジャッキ板64をホルダ65によって支持し、ホルダ65の側部に調整ねじ66を設けた構成となっている。これにより、Vブロック60の位置、ひいてはロータ3の位置を、上下および左右方向に調整できるようになっている。
【0038】
次に、本実施形態におけるタービン組立て方法について説明する。本実施形態においては、まず、ケーシング下半部4を図1に示すケーシング支持部34の支持部材41に搭載する。この場合、ケーシング下半部4の軸方向各端部の中心線に対して対称位置となる2箇所、計4個の支持部材41の嵌込み溝42内にそれぞれアッセンブリーキー(図9の符号20参照)に載せた状態で挿入支持させることは従来と同様である。しかし、本実施形態では、アッセンブリーキーの厚さ調整やシム厚さを変えることを必ずしも要しない。すなわち、ケーシング2の支持を行う部分に高さを調節するために高さ調整機構39としてのジャッキ機構44を設けているので、これによってケーシング2の水平レベルを調整し、ケーシング支持部34に掛かる荷重を均等にすることができる。したがって、従来ではケーシングをクレーンで吊上げてシムを抜き取り、厚さを削ったり、薄いシムを追加したりして必要な厚さにして取付け、ケーシングを吊り下す等の作業が必要になっていたが、これらの作業は、ケーシング高さ調整機構39としてのジャッキ機構44を設けたことにより、クレーンを使用する必要なく容易に行えるようになる。
【0039】
また、本実施形態では、ケーシング支持部34に球面を持つスィベル機構51を設けたので、球面接触によるスィベル機能が得られ、鉄骨構造物である架台31が捩れ等をもって製造されたり、ケーシング支持部34に捩れが生じている場合等においても、スィベル機構51によってケーシングを常に垂直に支持することができ、ケーシング2自体が捩れることなく据付が行える。
【0040】
この場合、図2に示す構成では、ジャッキ機構44とスイベル機構51とを併用しているが、図3に示した構成の場合には、球状表面を持つスィベル機構51のみで、捩れを解消することができる。また、高さ調節用のジャッキ機構44を使用することにより、架台31の4個のケーシング支持部34の高さが不均一であっても、その調整を行うことができる。すなわち、架台31のケーシング支持部34の高さの違いや捩れを気にする必要なく、適切な状態にケーシングを据付けることが可能である。
【0041】
以上のように、ケーシング2の水平レベルを調整し、各受け部43に均等の荷重がかかるように、相対的な位置関係を調整して据付けを行った後、据付けられたケーシング下半部4に、上下に2分割されたノズル6等の静止部品のうち下半部側の部品を組込む。そして、間隙の計測を行い、静止部品やロータ位置の調整を行って間隙値を適正な値とし、上半部側の部品を組立てる。ロータ3は一旦、ロータ支持部37であるVブロック60に搭載し、この状態でケーシング2との間の位置を確認しておく。なお、ロータ3のケーシング2に対する位置は、ケーシング2のロータ軸方向両端において、ケーシング2とロータ3との間の隙間を左右および下方で計測することによって確認することができる。そして、位置確認後は一旦、ロータ3をケーシング2から抜き外しておく。そして、この状態で、下半部側の静止部品をケーシング下半部4に組込み、その後ロータ3を仮想したピアノ線(図示省略)を渡し、このピアノ線に対して基準となる芯を出す。ピアノ線による基準の芯出しは、ケーシング2の両端のパッキンケーシング取り付け面付近を使用する(後述する図5および図6参照)。
【0042】
その後、取外しておいたロータ3を再びケーシング2に組込み、静止部との間隙を確認して必要な静止部の調整を行い、上半部側部品を組込んだ後、ケーシング上半部5を組立てる。このケーシング組立て方法についてジャッキ機構44で調整できないさらに細かい高さ調整は、図9に示した従来例と同様に、アッセンブリーキー20、アキシャルキー50等を使用する。なお、架台31には、輸送時におけるタービン1と架台31とのロータ軸心と直交する水平面方向のずれを防止するために、図示しないがケーシングの端部に下向に取付けられているセンターキーと呼ばれる部品を、ロータ支持部37に設けたキー溝に嵌合させることにより、ロータ軸と直行する方向に固定する機能も持っている。最終的に、ケーシング上半部5をケーシング下半部4に組込み、これらをボルトによって締結することにより組立てを終了し、タービンが完成する。この時、ケーシング2については、ケーシング下半部4はケーシング上半部5に支持されるためケーシング上半部5とケーシング支持部34の受け部43との間にランニングキー50を挿入する一方、先に挿入していたアッセンブリーキーを外して、ケーシング2をランニングキー50によって支持させる。このように、静止部であるケーシング1と回転部であるロータ3とをそれぞれの支持構造をもって組立てる。これにより、タービンロータ3を回転可能に保持することができる。
【0043】
なお、本実施形態においても、発電所等のタービン据付け現場におけるロータ軸受のコンクリート基礎等への固定設置を考慮して、ロータ軸受をケーシングと別送することは従来と同様である。
【0044】
図5は、ロータ軸受を外した状態でロータ3をケーシング2に固定するための固定手段67を示す断面図であり、図6は図5に示した固定手段67の設置場所を示す断面図である。すなわち、本実施形態では、固定手段67として、仮受け用の第1、第2のロータ受け68、69を使用してロータ3をケーシング2に固定するものである。
【0045】
第1のロータ受け68は、ケーシング2の端部に設けたパッキンケーシング70に、ロータ3を仮受けするためのロータ受け68を組付け、これにより輸送中のロータ固定を行うものである。つまり、図6に示すように、パッキンケーシング70は本来、グランドパッキン71を保持する部材であり、このグランドパッキン71に代えて、図5に示すように、グランドパッキン71と略同一形状のロータ受け68を組付け、これによりロータ3を径方向から支持するようにしたものである。
【0046】
また、第2のロータ受け69は、ロータ3自体の軸方向の移動を防ぐものである。そのために、ロータ3の軸方向に一定角度傾斜したボルトにより構成してロータ3を固定させる機能を持たせたものである。この状態において、ケーシング2全体を吊り、ロータ3も静止部との位置関係を保ったまま吊上げるようにするものである。
【0047】
なお、第1のロータ受け68はケーシング2の内径に合わせたインロー構造となっており、内径はこの部分のロータ径に相当する径となっている。パッキンケーシング70は、ケーシング2に対してこのインロー径によって位置が固定され、パッキンケーシング取付ボルト72によって締付け固定される。このロータ受け68は、パッキンケーシング70の内径部にほぼ完全に一致した状態で当たるようにしてあり、ロータ荷重はロータ受け68およびパッキンケーシング70を通して、ケーシング2で受けている。
【0048】
但し、パッキンケーシング70の内径中心は、実際にロータを支持するロータ軸受の位置とこのパッキンケーシング70の位置でのロータ3の撓みの違いを考慮して、下方向に芯ずれさせておく。ロータ3は本来、ロータ軸受で支持されるが、パッキンケーシング70の位置は、ロータ軸受の位置から多少なりとも離れており、パッキンケーシング70の部位においてはロータ軸受における支持部と異なり、重力による多少の撓みがあるからである。この撓み分をあらかじめ考慮しておき、ロータ3はロータ軸受で支持されているという状態と同様の条件(すなわち、同じ形状に撓んだ状態)に設定しておくものである。
【0049】
また、パッキンケーシング70はケーシング2の内径に合わせて加工されるので、その内径部分はケーシング2の左右方向の芯に厳密に合わせて加工することができる。このようにして、このロータ受け68にロータ3を載せた状態は、ロータ軸受で受けた場合と同条件となり、またケーシング2とロータ3との位置関係においても、芯が出た状況になる。このようにして、ロータ3の位置調整をする必要なく、単にロータ仮受けにセットするだけで、ロータ3の芯出しが完了する。
【0050】
組込みの際には、ロータ3をケーシング2の端部に設けられたパッキンケーシング70にロータ受け68を組み付ける。ロータ受け68は円弧状の部品で、パッキングケーシング70の上下の分割面である水平面から周方向にスライドさせて組込んでいく。この際、ロータ3をロータ軸受で受けた組立位置に保つ必要があるため、ロータ受け68は組立て状態から得られた正確な寸法に加工しておく。
【0051】
また、ロータ受け68をスライド挿入させていく時には、わずかにロータ3を油圧ジャッキ等で押し上げ、ロータ3とパッキンケーシング70との間の隙間をかすかに拡げておく。ロータ受け68が下部に収まったなら、油圧ジャッキ等を緩めてロータ3をロータ受け68で受ける。これにより、ロータ3はロータ軸受で受けたのと同じ位置で支持されることになる。
【0052】
また、第2のロータ受け69としてのボルト72は、ロータ3の異径段差部分に当接するようにする。なお、この場合のパッキンケーシング70aは、正規形状のものではない。ロータ受け68の移動を防止し、またロータ3自体の軸方向の移動を防ぐために、一部に斜面状のねじ穴73を形成し、ロータ3を固定させる機能を持たせたからである。これにより、ロータ3がケーシング2および他の静止部に対して位置が固定され、組立てられる。この状態でケーシング2全体を吊れば、ロータ3も静止部との位置関係を保ったままで吊りあがる。この吊上げ状態でタービンは出荷される。このように、出荷に当たっては、パッキンケーシング70の取付け部にロータ3を固定し、かつケーシング2のセンターキー部や管を架台31に固定するようにして出荷される。なお、発電所サイトに据付けされた後には、図6に示すように、正規のパッキンケーシング70に取り替えられる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、架台31が鉄骨構造物で大型構造であるため機械加工が難しく、ケーシング2の支持部が必ずしも同一の水平レベルで加工された面であるとは限らないことに対し、ジャッキ等によってケーシング2の水平レベルを調整することが有効に行える。また、ケーシング支持部34に球面を持つスィベル機能を持たせているので、例えば鉄骨構造物の架台31が捩れて製造されたり、ケーシング2の支持部が捩れた場合等においても、スィベル機構51によってケーシング2が常に垂直に支持されることになり、ケーシング2が捩れることなく据付が行える。したがって、本実施形態によれば、タービン組立てを従来の基礎定盤で行う場合と同様に、架台31の上で行うことができるとともに、組立品の移し替えを行う手間を削減することができ、しかも輸送架台を仮置きするスペースが不要となり、スペースの節約も図れるようになる。
【0054】
【発明の効果】
以上で詳述したように、本発明によれば、タービン組立を従来の基礎定盤で行う場合と同様に、輸送架台の上で行うことができ、これにより組立品の移し替えを行う手間が削減できるうえ、輸送架台を仮置きするスペースも節約することができる等の優れた効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態によるタービン組立輸送架台を示す斜視図。
【図2】図1に示したケーシング支持部の拡大断面図。
【図3】図2の変形例を示す断面図。
【図4】本発明の一実施形態によるタービン組立輸送架台のロータ支持部を示す拡大断面図。
【図5】本発明の一実施形態による組立、輸送方法を説明するためのロータ仮受け等を示す拡大断面図。
【図6】図5に対応するパッキンケーシング部分を示す拡大断面図。
【図7】本発明の適用対象となるタービン構成を例示する分解斜視図。
【図8】従来の組立て用架台を示す斜視図。
【図9】図8に示した架台のケーシング支持部を示す拡大断面図。
【図10】従来の輸送用架台および輸送方法を示す斜視図。
【符号の説明】
1 タービン
2 ケーシング
3 ロータ
4 ケーシング下半部
5 ケーシング上半部
4a 外部車室下半部
4b 内部車室下半部
5a 外部車室上半部
5b 内部車室下半部
6 ノズル
31 架台
32 基枠
33 支柱
34 ケーシング支持部
35 補強リブ
36 梁
37 ロータ支持部
38 補強リブ
39 高さ調整機構
40 フランジ部
41 支持部材
42 嵌込み溝
43 受け部
44 ジャッキ機構
45 ハウジング
46 ネジ部等
47 昇降支柱
48 支持板
49 アクシャルキー
50 ランニングキー
51 スイベル機構
52 上スイベル部材
53 下スイベル部材
54 スライドキー
55 ボルト式操作部材
56 フレーム
57 基板
58 支持壁
59 支持フレーム
60 Vブロック
61 押しボルト機構
62 ジャッキ機構
63 ボルト
64 楔形ジャッキ板
65 ホルダ
66 調整ねじ

Claims (6)

  1. 組立てるべきタービンのケーシングを支持するケーシング支持部と、前記タービンのロータを支持するロータ支持部とを一体構成として備え、前記ケーシング支持部にその高さ調整を行うためのケーシング高さ調整機構を設けるとともに、前記ロータ支持部にその支持位置を調整するためのロータ位置調整機構を設け、前記タービンの水平度を保持した状態での組立ておよびその組立て後の固定状態での輸送を可能としたことを特徴とするタービン組立輸送架台。
  2. 組立てるべきタービンのケーシングをロータ軸方向両端位置付近においてロータに対して対称位置にて計4箇所で支持する柱状のケーシング支持部と、前記ロータをその軸方向両端位置付近において支持するロータ支持部とを同一の基枠に一体構成として備え、前記各ケーシング支持部にそれぞれその高さ調整を行なうためのケーシング高さ調整機構を設けるとともに、前記各ロータ支持部にそれぞれその高さ方向および水平方向の支持位置を調整するためのロータ位置調整機構を設け、前記タービンの水平度を保持した状態での組立ておよびその組立て後の固定状態での輸送を可能としたことを特徴とするタービン組立輸送架台。
  3. 請求項1または2記載のタービン組立輸送架台において、ケーシング支持部にスイベル機構を設けたことを特徴とするタービン組立輸送架台。
  4. 請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台において、ロータを固定する固定手段は、当該ロータを、ケーシングに設けられるパッキンケーシング位置にて固定するものであることを特徴とするタービン組立輸送架台。
  5. 請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台を使用し、そのケーシング支持部にタービンのケーシングを支持させてケーシング高さ調整手段により高さ調整するとともに、ロータ支持部に前記タービンのロータを支持させてロータ位置調整手段により高さおよび水平位置の調整を行ってタービンを組立てることを特徴とするタービン組立方法。
  6. 請求項1から3までのいずれかに記載のタービン組立輸送架台を使用し、そのケーシング支持部にタービンのケーシングを支持させてケーシング高さ調整手段により高さ調整するとともに、ロータ支持部に前記タービンのロータを支持させてロータ位置調整手段により高さおよび水平位置の調整を行ってタービンを組立てた後、その組立てたタービンを前記架台に固定して、そのまま輸送することを特徴とするタービン輸送方法。
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