JP4363583B2 - リールシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リールシート、特に、釣り用リールの取付脚を釣り竿に装着するためのリールシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
釣り竿には、リールを取り付けるためのナット式のリールシートが設けられている。リールシートは、一般に、シート本体と、移動シート部と、ナット部とを備えている。シート本体は、リールの取付脚の一端側を係止する係止部と、外周部に形成された雄ネジ部とを有している。移動シート部は、シート本体の外周に軸方向に移動自在に配置され、取付脚の他側を係止する係止部を有している。ナット部は、シート本体の雄ネジ部に螺合してシート本体に対して移動自在であり、移動シート部を移動させる。
【0003】
このようなリールシートでは、リールの取付脚の一端側をシート本体の係止部に係止した状態でナット部を回転させ、移動シート部の係止部で取付脚の他端側を係止し、両係止部で取付脚を狭持する。これにより、リールがリールシートを介して釣り竿に固定される。
【0004】
この種のリールシートには、雌雄のネジの嵌め合いをきつくすることなく取付脚を狭持するために、ナット部とシート本体との螺合が緩むのを防止する回り止め機構を備えたものがある。また、この回り止め機構は、ナット部がシート本体に対して回転する際の発音機構ともなっている。
【0005】
この種の回り止め・発音機構は、一般的に、移動シート部とナット部との間に配置されており、回り止めピンと付勢部材とを有している。回り止めピンは移動シート部に軸方向に移動自在に支持されている。そして、ナット部の回り止めピンに対向する側面には回り止め穴が回転方向に複数形成されている。付勢部材は回り止めピンを回り止め穴に向けて付勢している。
【0006】
この回り止め・発音機構では、ナット部を回転させると、回り止めピンがナット部の回り止め穴に対して出入りを繰り返し、回り止めピンが回り止め穴に侵入した状態で回り止め作用が得られる。また、回り止めピンが回り止め穴に対して出入りを繰り返すとき、回り止めピンが回り止め穴に衝突して発音する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の回り止め・発音機構においては、回り止めピン及び付勢部材は、通常、移動シート部の1箇所にのみ配置されている。このため、ナット部は、外周部の一カ所を軸方向に押されることとなり、回転軸芯に対して傾くおそれがある。ナット部が傾くと、回り止めピンの頭部と回り止め穴の凹部の面とが一致しなくなり、回り止めのための機能が低下する。また、発音性能も劣化する。さらに、シート本体に対してねじ込んで行く場合に、スムーズにねじ込んでいくことができない。
【0008】
そこで、ナット部が傾かないように、ナット部とこのナット部が螺合しているシート本体とのはめあい精度を高精度にする必要がある。しかし、ネジを高精度に仕上げることは製造費のコストアップを招く。
【0009】
本発明の目的は、発音機構におけるナット部の傾きを抑えることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るリールシートは、釣り用リールの取付脚を釣り竿に装着するためのものであって、シート本体と、移動シート部と、ナット部と、発音機構とを備えている。
【0011】
シート本体は、取付脚の一端側を係止するための第1係止部を有し、外周部に雄ネジ部が形成されている。移動シート部は、シート本体の外周に軸方向移動自在にかつ相対回転不能に配置されるとともに取付脚の他端側を係止するための第2係止部を有している。ナット部は、シート本体の外周に移動シート部とともに軸方向移動可能でかつシート本体に対して相対回転可能であり、雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されている。発音機構はナット部の内周側に配置されている。
【0012】
そして発音機構は、環状部材と、ピンと、発音部と、付勢部材とを有している。環状部材は、ナット部の内周側に、ナット部に対して相対回転可能にかつシート本体に対して相対回転不能に配置されている。ピンはナット部の内周部及び環状部材の外周部のいずれか一方に半径方向に移動自在に支持されている。発音部は、ナット部の内周部及び環状部材の外周部のいずれか他方に設けられ、それぞれピンが出入り自在な複数の凹部からなる。付勢部材はピンを凹部に向けて付勢している。
【0013】
このリールシートでは、リールの取付脚の一端側を第1係止部に係止させた状態でナット部の雌ネジ部をシート本体の雄ネジ部に螺合させ、このナット部を締め付けると、移動シート部はナット部に押されて軸方向に移動し、この移動シート部の第2係止部が取付脚の他端側と係止する。これにより、リールが釣り竿に固定される。
【0014】
このとき、環状部材はシート本体に対して回転不能であるので、ナット部が回転すると、ナット部と環状部材とが相対回転する。すると、これらに設けられたピンと発音部とが相対回転し、ピンが複数の凹部に対して繰り返し衝突することによってクリック音が発生する。
【0015】
ここでは、ピンは、半径方向に移動するように配置されており、このため、ナット部は、回転軸芯に対して偏芯する方向の力を受けるが、従来のように軸芯に対して傾くようなことはない。したがって、ピンと凹部とは常に同じ姿勢で嵌合することになり、回り止めのための機能低下を抑えることができる。また、発音性能の劣化も抑えることができる。さらに、ネジの螺合は自動調芯の機能も併せ持っているので、従来のようなナット部材の傾きに比較して、ピン及び付勢部材による偏芯はシート本体に対してねじ込む際の妨げになりにくい。
【0016】
発明2に係るリールシートは、発明1のリールシートにおいて、発音機構は、ナット部のシート本体に対する相対回転を一時的に規制して、ナット部のシート本体に対する螺合が緩むのを抑えている。
【0017】
ここでは、発音機構がナット部の緩み止めとしても機能している。
発明3に係るリールシートは、発明1又は2のリールシートにおいて、複数の凹部は回転方向に等間隔で形成されている。
【0018】
このリールシートでは、ナット部を等角度ごとに回り止めすることができる。また、クリック音は一定のテンポで連続的に発生するため、使用者に回り止めが精密に行われているような印象を与えることができる。
【0019】
発明4に係るリールシートは、発明1から3のいずれかリールシートにおいて、発音部は複数の凹部を回転方向に連通する溝をさらに有している。
このリールシートでは、ピンは隣接する凹部間を溝に当接して移動するため、ピンが各凹部に出入りする際の衝撃が少なくなる。このため、発音部の摩耗を抑えることができる。
【0020】
発明5に係るリールシートは、発明1から4のいずれかのリールシートにおいて、発音部はナット部及び環状部材のいずれか他方と別体で形成されて固定されている。
【0021】
このリールシートでは、発音部は、ナット部あるいは環状部材から独立した部材であるため、ナット部あるいは環状部材の設計事項に影響されずに設計することができ、設計の自由度が増す。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の一実施形態が採用されたリールシート1を示す。
このリールシート1は、リール2の取付脚3を係止することでリール2を竿4に装着するものであり、シート本体10と、移動シート部11と、ナット部12と、図2に示されるような発音及び回り止め機構(以下、単に発音機構と記す)13とを備えている。
【0023】
シート本体10は、図2及び3に示されるように、樹脂製の略筒状の部材であり、内周部に竿4が貫通して装着されている。シート本体10は、竿尻側の大径部15と、穂先側の小径部16とを有している。
【0024】
大径部15の竿尻側にはコルク製の竿尻グリップ17が竿4の外周に嵌め込まれている。大径部15の穂先側外周部には、リール2の取付脚3の竿尻側を載置するための載置部21と、取付脚3の竿尻側を係止するための第1係止部20とが形成されている。第1係止部20は、載置部21の竿尻側端部から上方の一部を覆うように載置部21と一体に形成されている。大径部15の第1係止部20と逆側の外周部には、弾性材料からなるシートグリップ23が固定されている。大径部15の小径部16に隣接する外周部には、取付脚3の穂先側を載置するための平坦な載置部25が形成されている。載置部25の幅方向両側には、取付脚3の幅方向の移動を規制するための1対の突起部26,26が載置部25と一体に形成されている。
【0025】
小径部16は、外周部の一部に載置部25からさらに穂先側に延びて小径部16の全長にわたり形成された平坦な載置部30と、穂先側外周部に形成された雄ネジ部31とを有している。また、小径部16の外周部の対向する2箇所には、移動シート部11を回転不能にするための1対の係止溝32,32が小径部16の全長にわたり形成されている。
【0026】
移動シート部11は、内径が小径部16の外径より僅かに大きい筒状の部材であり、シート本体10に対して軸方向に移動自在でかつ相対回転不能である。移動シート部11は、竿尻側内周部に、取付脚3の穂先側を係止するための第2係止部35が形成されている。第2係止部35は、移動シート部11がシート本体10に装着されたときに、載置部30との間に取付脚3の穂先側が挿入される空間が生じるように形成されている。また、第2係止部35は、軸方向及び幅方向長さの異なるものが、移動シート部11の内周部の対向する2箇所に形成されている。移動シート部11の穂先側端部には、ナット部12が連結されるための環状突起11aが形成されている(図5参照)。移動シート部11の穂先側内周部の対向する2箇所には、1対の係止溝32,32に係止するための1対の係止突起36,36が形成されている(図3参照)。
【0027】
ナット部12は、略筒状の部材であり、外周にコルク製の穂先グリップ46が嵌め込まれている。このナット部12は、シート本体10の外周に配置され、移動シート部11とともに軸方向に移動自在で、かつシート本体10に対して相対回転可能である。ナット部12の竿尻側端部には、移動シート部11の環状突起11aに係合する環状凹部45が形成されている(図5参照)。この環状凹部45に環状突起11aが圧入により係合することで、ナット部12は、移動シート部11に対して相対回転自在かつ軸方向相対移動不能に連結され、これにより移動シート部11を一体で軸方向に移動させることができる。環状凹部45の穂先側内周部には、雄ネジ部31に螺合して移動シート部11を移動させるための雌ネジ部44が形成されている。
【0028】
次に、図3から図5により発音機構13について説明する。
発音機構13は、ナット部12をシート本体10に対し所望の位置で回り止めするとともに、ナット部12がシート本体10に対して回転していることを使用者に知らせるためのクリック音を発生する機構である。発音機構13は、ナット部12の内周側に設けられており、リング49と、音出しピン51と、発音部50と、コイルバネ52とを有している。
【0029】
リング49は、ステンレス製の環状部材であり、ナット部12の内周側に相対回転可能に配置されている。リング49には、音出しピン支持穴47が半径方向に形成されており、この音出しピン支持穴47に音出しピン51が移動自在に配置されている。リング49の内周孔41は、雄ネジ部31の断面形状に対応する形状に形成されており、これにより、リング49は雄ネジ部31に対し相対回転不能となる。
【0030】
音出しピン51は、頭部先端が半球状の茸形の部材であり、リング49のピン支持部47内に頭部を発音部50側に向けて配置されている。
コイルバネ52は、音出しピン51の胴部外周に配置されてピン支持部47内に圧縮状態で配置されている。
【0031】
発音部50は、ナット部12の内周部に、リング49の外周面に対向して形成された環状部分である。発音部50には、音出しピン51と対向する位置に複数の音出し穴55が回転方向に等間隔で形成されている。音出し穴55は、球状の凹面を有しており、音出しピン51の頭部が出入り自在になっている。隣接する音出し穴55,55間には、各音出し穴55を連通する溝39が形成されており、この溝39の深さは音出し穴55の深さより浅くなっている。
【0032】
次に、リール2の装着方法について説明する。
まず、ナット部12を緩めてシート本体10との螺合を解除し、ナット部12をシート本体10の穂先側に配置する。そして、リール2の取付脚3の竿尻側を載置部21に載置して第1係止部20に挿入する。また、取付脚3の穂先側を載置部25,30に載置する。つづいて、リール2のサイズに応じた第2係止部35(前述のように上下で適応サイズが異なる)をリール2側に配置した後、ナット部12をシート本体10の雄ネジ部31に螺合させて締め付ける。これにより、移動シート部11がシート本体10の小径部16の外側を竿尻側に移動する。このとき、移動シート部11は、係止溝32と係止突起36とにより回転不能なため、回転せずに軸方向にのみ移動する。
【0033】
ナット部12の回転時には、リング49はその内周孔41がシート本体11に係止しているので回転不能である。したがって、ナット部12に形成された発音部50とリング49とが相対回転する。これにより、音出しピン51が音出し穴55に繰り返し衝突してクリック音が発生する。このとき、ナット部12の回転を止めると、音出しピン51が音出し穴55のいずれかにはまりこみ、ナット部12がシート本体10に対して回り止めされる。
【0034】
ここでは、音出しピン51と発音部50の音出し穴55とは半径方向に対向しているため、音出しピン51は発音部50が形成されたナット部12を内周側から外周側に向けて押すことになる。すなわち、ナット部12は回転軸芯に対して偏芯するような力を受ける。従来の軸方向に移動自在な音出しピンを有する発音機構では、ナット部の1カ所が軸方向に押されるためにナット部が傾くおそれがあったが、本実施形態の構造ではそのような力は生じない。したがって、音出しピン51と音出し穴55とは常に同じ姿勢で互いに圧接することとなり、回り止めの機能が低下することはない。また、発音性能の劣化も防止できる。
【0035】
また、従来の発音機構のようにナット部が傾いた場合は、シート本体とのネジの噛み合い状態が悪くなって、ねじ込みの際にスムーズな噛み合いが得られない場合がある。しかし、この実施形態では、ナット部12は、回転軸芯に対して偏芯させられるような力を受けるだけであり、このような力は、ネジの噛み合いによる自動調芯機能によって打ち消され、したがってねじ込みの際にスムーズな噛み合いを維持できる。
【0036】
また、音出し穴55は等間隔で設けられているため、クリック音は一定のテンポで連続的に発生する。これにより、使用者に回り止めが精密に行われているような印象を与えることができる。
【0037】
また、音出しピン51は、音出し穴55間を溝39に案内されて移動するため、溝39がない場合に比べて、音出しピン51が各音出し穴55に対し出入りする際の衝撃が少なくなる。したがって、発音部50の摩耗を抑えることができる。
【0038】
[他の実施形態]
(a)発音部50は、ナット部12と別体で設けられ、かつナット部12に相対回転不能に固定されてもよい。この場合は、回り止め部50,リング49等の各構成部材を設計する際に、ナット部12の仕様に影響されることなく設計することができる。また、発音機構の部材を交換する際においても他のナット部材12等と独立して交換することができ、交換時のコストを抑えることができる。
【0039】
(b)発音機構13は、上記実施形態とは逆に、ナット部12の内周部に音出しピン51及びコイルバネ52を配置し、リング49に音出し穴55及び溝39を形成してもよい。
【0040】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、発音機構を構成するピンが半径方向に移動して発音部の凹部に衝突するので、ピンによって押されるナット部の傾きが防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態が採用されたリールシートを示す斜視図。
【図2】その縦断面図。
【図3】その分解斜視図。
【図4】図2のIV−IV断面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【符号の説明】
1 リールシート
2 リール
3 取付脚
4 竿
10 シート本体
11 移動シート部
12 ナット部
13 発音機構
20 第1係止部
31 雄ネジ部
35 第2係止部
39 溝
44 雌ネジ部
49 リング
50 発音部
51 音出しピン
52 コイルバネ
55 音出し穴
Claims (5)
- 釣り用リールの取付脚を釣り竿に装着するためのリールシートであって、
前記取付脚の一端側を係止するための第1係止部を有し、外周部に雄ネジ部が形成されたシート本体と、
前記シート本体の外周に軸方向移動自在にかつ相対回転不能に配置されるとともに前記取付脚の他端側を係止するための第2係止部を有する移動シート部と、
前記シート本体の外周に前記移動シート部とともに軸方向移動可能でかつ前記シート本体に対して相対回転可能であり、前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が形成されたナット部と、
前記ナット部の内周側に配置された発音機構とを備え、
前記発音機構は、
前記ナット部の内周側に、前記ナット部に対して相対回転可能にかつシート本体に対して相対回転不能に配置された環状部材と、
前記ナット部の内周部及び前記環状部材の外周部のいずれか一方に半径方向に移動自在に支持されたピンと、
前記ナット部の内周部及び前記環状部材の外周部のいずれか他方に設けられ、それぞれ前記ピンが出入り自在な複数の凹部からなる発音部と、
前記ピンを前記凹部に向けて付勢する付勢部材とを有している、
リールシート。 - 前記発音機構は、前記ナット部の前記シート本体に対する相対回転を一時的に規制して、前記ナット部の前記シート本体に対する螺合が緩むのを抑えている、請求項1に記載のリールシート。
- 複数の前記凹部は回転方向に等間隔に形成されている、請求項1又は2に記載のリールシート。
- 前記発音部は、複数の前記凹部を回転方向に連通する溝をさらに有している、請求項1から3のいずれかに記載のリールシート。
- 前記発音部は、前記ナット部及び環状部材のいずれか他方と別体で形成されて固定されている、請求項1から4のいずれかに記載のリールシート。
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