JP4362941B2 - 重質油の硫黄分除去方法及び装置 - Google Patents

重質油の硫黄分除去方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重質油の硫黄分除去方法及び装置に係わり、特に水熱反応を利用して重質油の硫黄分を除去する技術に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
火力発電プラントや化学プラントでは、重油や石炭等の化石燃料を主な燃料としているが、このような化石燃料は硫黄分を含んでいるため、そのままの状態で燃焼させる場合には加温流動化装置及び過大な排ガス脱硫装置が必要になる。一方、近年、超臨界水による水熱反応を利用して重質油の改質技術が検討されているが、脱硫については十分な脱硫率が得られず、事業化レベルに達していないのが現状である。なお、重質油の脱硫に関するものではないが、水熱反応を利用した脱硫技術の一例として、例えば特開平6−287573号公報に記載されている加硫ゴムの脱硫方法がある。
【0003】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、事業化レベルで十分な脱硫率を確保することが可能な重質油の硫黄分除去方法及び装置の提供を目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、重質油の硫黄分除去方法に係わる第1の手段として、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下の水熱反応により重質油の脱硫を行う際に、硫黄分の分離促進剤として粒状の固形物を添加するという手段を採用する。
【0005】
重質油の硫黄分除去方法に係わる第2の手段として、上記第1の手段において、固形物として粒状の無機物を用いるという手段を採用する。
【0006】
重質油の硫黄分除去方法に係わる第3の手段として、上記第1の手段において、固形物として粒状の金属、酸化物もしくは塩を用いるという手段を採用する。
【0007】
重質油の硫黄分除去方法に係わる第4の手段として、上記第1の手段において、固形物として水(H2O)と反応して水素(H2)を生成できる金属を用いるという手段を採用する。
【0008】
重質油の硫黄分除去方法に係わる第5の手段として、上記第1の手段において、固形物として鉄酸化物を用いるという手段を採用する。
【0009】
重質油の硫黄分除去方法に係わる第6の手段として、上記第1〜5いずれかの手段において、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下において粒状の固形物が密集状に充填された充填層の上方から重質油を落下させるという手段を採用する。
【0010】
さらに、重質油の硫黄分除去方法に係わる第7の手段として、上記第1〜第6いずれかの手段において、水熱反応の反応温度を400゜Cに設定するという手段を採用する。
【0011】
一方、本発明では、重質油の硫黄分除去装置に係わる第1の手段として、粒状の固形物が内部に充填され、外部から注入された重質油を亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下で水熱反応させて脱硫化油として出力する水熱反応器と、脱硫化油から水分を除去し改質油として出力する油分分離器とを具備する手段を採用する。
【0012】
また、重質油の硫黄分除去装置に係わる第2の手段として、上記第1の手段において、固形物として粒状の無機物を用いるという手段を採用する。
【0013】
重質油の硫黄分除去装置に係わる第3の手段として、上記第1の手段において、固形物として粒状の金属を用いるという手段を採用する。
【0014】
重質油の硫黄分除去装置に係わる第4の手段として、上記第1の手段において、固形物として水(H2O)と反応して水素(H2)を生成できる金属を用いるという手段を採用する。
【0015】
重質油の硫黄分除去装置に係わる第5の手段として、上記第1の手段において、固形物として鉄酸化物を用いるという手段を採用する。
【0016】
重質油の硫黄分除去装置に係わる第6の手段として、上記第1〜5いずれかの手段において、水熱反応器は粒状の固形物を密集状に充填した充填層を有し、該充填層の上部に重質油を供給して充填層内を落下させるという手段を採用する。
【0017】
重質油の硫黄分除去装置に係わる第7の手段として、上記第1〜第6いずれかの手段において、水熱反応器内の反応温度を400゜Cに設定するという手段を採用する。
【0018】
【作用】
本発明は、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下の水熱反応により重質油の脱硫を行う際に硫黄分の分離促進剤として固形物を添加する点を主な特徴点とするが、このような本発明特有の手段は、以下のような実験事実及びその解釈に基づくものである。
【0019】
図1は、「重油スラッジ」及び「A重油(2号)」を亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下で水熱反応させた場合の試験結果表であり、(a)は重油スラッジの試験結果を、(b)はA重油(2号)の試験結果をそれぞれ示している。すなわち、この表は、300゜C,350゜C,400゜C及び450゜Cの各温度(反応温度)について、反応時間を10分,30分及び60分に設定した場合における水熱反応の結果を示している。なお、この表において、S分(%)は、油分を100%とした場合の硫黄(S)の含有率を示しており、粘度は周囲温度が50〜60゜Cの場合における測定結果である。また、総SS分(%)は、重油スラッジの油分を除くスラッジ成分の総量である。
【0020】
この試験結果(a)から、重油スラッジについては反応温度400゜Cにおいて最もS分が低くなり、かつ反応温度400゜Cにおいても反応時間を30分に設定した場合にS分が最も低くなっていることがわかる。つまり、この場合にS分(%)は、処理前の5.85%に対して2.58%まで低下している。これに対して、A重油(2号)について見ると、各反応温度においてS分(%)に大きな変化が見られないことがわかる。すなわち、この試験によって、同一条件下の水熱反応でも、重油スラッジについては顕著なS分低下が見られ、A重油(2号)についてはS分低下が見られないことが明らかになった。
【0021】
一方、図2は、重油スラッジの蛍光X線分析の測定結果を示す特性図であり、横軸は分光角度(deg)、縦軸は蛍光X線の強度(kcps)である。この蛍光X線分析結果をA重油(2号)と比較すると、重油スラッジにはA重油(2号)に比較して無機物、すなわち金属であるロジウム(Rh),鉄(Fe),カルシウム(Ca),カリウム(K)等及び非金属である珪素(Si)等が多く含まれていることがわかった。本発明者等は、上記重油スラッジとA重油(2号)とのS分低下の差異は、この重油スラッジとA重油(2号)との組成の相違、つまり上記各種金属あるいは非金属の無機物が粒状の固形物として含有している点に原因があると解釈した。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明に係わる重質油の硫黄分除去方法及び装置の一実施形態について説明する。
【0023】
図3は、本実施形態における硫黄分除去装置のプロセス構成図である。この図において、符号Xは重質油、Xaは脱硫化油、Xbは改質油、1は燃料タンク、2は予熱器、3は燃料払出ポンプ、4,5は添加装置、6はミキシングヒータ、7は加圧ポンプ、8は加熱器、9は充填層反応器(水熱反応器)、10はオーバーフロー弁、11は調圧弁、12,13はオリフィス、14は油分分離器、15は排ガス処理装置である。この硫黄分除去装置は、火力発電所の付属設備として設けられており、以下に説明するように火力発電所のボイラの排ガスや補助蒸気を有効利用することにより、重質油Xの脱硫に必要となるエネルギの消費量を極力低減させるように構成されている。
【0024】
燃料タンク1は、上記火力発電所の燃料消費量に見合った量の重質油Xを貯留するものである。この重質油Xは、上述した重油スラッジとほぼ同等の硫黄分(S分)つまり5%前後の硫黄分を含む粗悪燃料である。予熱器2は、燃料タンク1の外周に備えられ、重質油Xを約70゜Cに予熱するものである。燃料払出ポンプ3は、このように予熱状態にある重質油Xを燃料タンク1から払い出すためのものであり、図示しない制御装置によって制御されるようになっている。
【0025】
添加装置4は、燃料払出ポンプ3から吐出された重質油Xに添加剤(液体添加剤)を加えて添加装置5に供給するものである。この添加剤は、OH基を有するアルコール類であり、後段の充填層反応器9における重質油Xの脱硫を促進させるためのものである。添加装置5は、添加装置4から供給された重質油Xに気体添加剤を添加してミキシングヒータ6に供給するものである。この気体添加剤は、例えば一酸化炭素(CO)、水素(H2)等であり、上記液体添加剤と同様に充填層反応器9における重質油Xの脱硫を促進させるためのものである。
【0026】
ミキシングヒータ6は、重質油Xに所定量の水分を添加すると共に、上記各種添加剤(液体添加剤及び気体添加剤)と重質油Xとが均一に混じり合うように重質油Xを加熱して加圧ポンプ7に供給するものである。重質油Xに添加される上記水分は、充填層反応器9内の水蒸気圧を確保して水熱反応を進行させるためのものであり、例えば重質油Xに対して1%程度の微量で良い。加圧ポンプ7は、ミキシングヒータ6から出力された重質油Xを例えば30MPaの圧力まで加圧して加熱器8に供給するものであり、制御装置(図示略)よって制御されるようになっている。加熱器8は、熱源としてボイラの補助蒸気及び油分分離器14から排出されたガスを用いることにより、加圧ポンプ7から供給された重質油Xを約300゜Cまで加熱して充填層反応器9に供給するものである。
【0027】
充填層反応器9は、火力発電所ボイラの排ガスを用いることにより、加熱器8から供給された重質油Xをさらに加熱して亜臨界水条件あるいは超臨界水条件とし、当該反応条件に基づく水熱反応によって重質油Xから硫黄分を分離して脱硫化油Xaを生成するものである。なお、この充填層反応器9の反応条件は、上記図1に示したように、少なくとも反応温度を約400゜Cとした超臨界水条件下が好ましい。
【0028】
さらに詳しく説明すると、この充填層反応器9は、内部に重質油Xを送通させる所定厚の充填層9aを備えると共に、加熱器8から供給された重質油Xを当該充填層9aの上部に供給するように構成されている。すなわち、当該充填層反応器9に供給された重質油Xは、充填層9a内を上方から下方に通過して自然落下するようになっている。
【0029】
上記充填層9aは、重質油X中の硫黄分の分離促進剤として機能するものである。この充填層9aは、上述した粒状の固形物としての無機物(金属あるいは非金属)のいずれか1つあるいは複数の組み合わせから構成されており、このような無機物を粒状にしたものを密集状に充填したものである。また、このような無機物は、重質油Xとの接触面積ができるだけ大きくなるような形状、例えばラヒシリング,ベルルサドル等の形状に形成されている。
【0030】
オーバーフロー弁10は、加熱器8から充填層反応器9に供給された重質油Xの一部を充填層反応器9の入口に戻すものであり、その開口度が制御装置(図示略)によって制御されることにより充填層9aの上部の重質油Xの量を一定に保つためのものである。調圧弁11は、充填層反応器9内の圧力を調節するためのものである。オリフィス12は、上記加熱器8に熱源として供給された水蒸気の圧力を大気圧まで減圧して排ガス処理装置15に供給するものである。もう一方のオリフィス13は、充填層反応器9から取り出された脱硫化油Xaの圧力を10MPa程度に減圧して油分分離器14に供給するものである。
【0031】
油分分離器14は、上記オリフィス13を介して流入した脱硫化油Xaから油分のみを分離し、例えば6MPa程度の送圧で火力発電所に送出すると共に、その他の硫黄分と水分とを含むガス(分離ガス)を加熱器8に熱源として供給するものである。排ガス処理装置15は、オリフィス12を介して加熱器8から供給された上記分離ガス及びボイラの補助蒸気並びに調圧弁11を介して充填層反応器9から供給されるガスを環境基準に適合する状態に改質して大気中に放出するものである。
【0032】
次に、このように構成された硫黄分除去装置の作用について詳しく説明する。本硫黄分除去装置では、火力発電所のボイラの排ガスを充填層反応器9の熱源とすると共にボイラの補助蒸気及び油分分離器14の分離ガスを加熱器8の熱源とすることにより、充填層反応器9内を反応温度約400゜Cとする超臨界水条件としている。
【0033】
充填層反応器9内の水熱反応によって、重質油Xは、炭素(C)と硫黄(S)との分子結合が切断され、脱硫された脱硫化油Xaとして油分分離器14に出力される。この水熱反応は、重質油Xが充填層9aを通過する際、つまり重質油Xが充填層9aを形成する無機物からなる粒状の固形物の表面を蛇行しつつ滴下する際に行われるが、水熱反応の進行に伴って重質油Xの粘度が徐々に低下して硫黄分が分離し易い状態となり、さらに硫黄分が固形物の表面に付着して捕集され易くなる。このようにして重質油Xから分離した硫黄分は、例えば水(H2O)と一酸化炭素(CO)の反応によって生成された水素(H2)と反応することにより、硫化水素(H2S)となり、化学的に安定した状態となる。
【0034】
このようにして充填層反応器9から出力された脱硫化油Xaは、油分の他に水(H2O)、上記硫化水素(H2S)等が含まれるが、オリフィス13において10MPa程度に減圧することにより、水、硫化水素(H2S)等の硫黄分及び水分等が気体となり、油分のみが液体状態になる。油分分離器14では、この気体と液体とを分離することにより、油分のみを改質油Xbとして火力発電所に送出する。
【0035】
本実施形態によれば、充填層反応器9内に無機物からなる粒状の固形物を集積した充填層9aを設け、該充填層9aの上方から重質油Xを自然滴下させるようにしたので、重質油Xが粒状の固形物の表面に接触しつつ滴下する際に硫黄分(S分)が効率良く分離される。
【0036】
また、重質油Xは、表面積を広くするようにラヒシリング,ベルルサドル等の形状に形成された粒状の固形物の表面に接触しつつ蛇行して滴下するので、重質油Xが固形物の表面に接触している時間つまり反応時間を長くすることが可能である。したがって、充填層9aを備えないオートクレープ型反応器に比較して充填層反応器9を小型することが可能であると共に、液体添加剤の添加量を削減して消費量を抑えることが可能である。
【0037】
〔追加事項〕
本発明は、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下の水熱反応により重質油の脱硫を行う際に、硫黄分の分離促進剤として粒状の固形物、例えば各種金属や非金属の無機物を含有させる点を特徴とするが、このような固形物の組成として鉄あるいは鉄酸化物が有用である。また、上記実施形態では、液体添加剤としてOH-基を有するアルコール類を用いたが、もっと広くOH-基に電離する有機化合物であっても良い。また、OH-基に電離するものであれば、有機化合物に限らず無機物であっても良く、すなわちアルカリ性を呈するものであればよい。このようなものとして、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)が有効である。
【0038】
図4は、重質油において硫黄分の殆どを占めるチオフェンについて、鉄(Fe)及び酸化鉄(Fe23)を所定量添加した際の脱硫率を示す実験結果である。実験条件は、チオフェン:1(mol/L)、NaOH:1.5(mol/L)、水溶液25(ml)、気相:アルゴン(Ar)、反応温度:350゜C、また反応時間:30分である。なお、今回の実験で用いたチオフェンは、当業者間で重質油の脱硫を検討するための代替材料としてよく用いられるものである。
【0039】
酸化鉄(Fe23)について見ると、添加量が0〜0.025(mol)の領域では、当該添加量に比例して脱硫率が19%まで上昇するが、この0.025(mol)以上に添加量を増やしても脱硫率は殆ど変化しない。すなわち、0.025(mol)以上の領域では脱硫率が20%近傍で飽和する。なお、図示しないが、上記酸化鉄(Fe23)と同様に鉄酸化物の一種である四酸化三鉄(Fe34)を添加した場合に、上記酸化鉄(Fe23)の場合と同様の反応条件において0.025(mol)の添加量で19%の脱硫率が得られることが確認されている。
【0040】
これに対して鉄(Fe)の場合には、実験範囲内において脱硫率が添加量にほぼ比例して上昇することが確認できた。添加量を0.075(mol)としたとき、脱硫率として87%が得られた。
【0041】
このような実験結果は、以下のように考察される。すなわち、鉄(Fe)は、給水系で溶存酸素濃度が低く、200゜C以上の状態では水(H2O)との間で反応式(1)に示すような反応が進行する。
3Fe+4H2O → Fe34+4H2 (1)
また、この反応によって生成された水素(H2)は、チオフェン中の硫黄S部位を攻撃して、反応式(2)に示すように硫化水素(H2S)と有機物Rとが生成される。
44S+H2 → H2S+R(有機物) (2)
【0042】
さらに、当該硫化水素(H2S)は、以下の反応式(3)に示すように液体添加剤である水酸化ナトリウム(NaOH)と反応して硫化ナトリウム(Na2S)と水(H2O)とを生成し、さらにこの硫化ナトリウム(Na2S)は、反応式(4)に示すように、イオン化してナトリウムイオン(Na+)と硫黄イオン(S2-)とに分離する。
2S+2NaOH → 2H2O+Na2S (3)
Na2S → 2Na++S2- (4)
【0043】
通常、反応式(2)が進行するためには触媒が必要であるが、特に触媒を添加することなく当該反応が進行するのは、以下の要因が考えられる。
▲1▼鉄(Fe)や反応式(1)の反応生成物である四酸化三鉄(Fe34)が水素化触媒の役割を果たしている。
▲2▼亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下で生成された水素(H2)には活性があり、反応の促進に触媒を必要としない。
【0044】
このような鉄(Fe)と同族の元素であるニッケル(Ni)を用いた場合には殆ど脱硫が生じないことが別途確認されたが、これは、ニッケル(Ni)では亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下において水(H2O)と反応して水素(H2)を生成できないためと考えられる。このような考えに基づくと、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下において鉄(Fe)と同様に水素(H2)を生成可能な金属、例えばマグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)あるいは亜鉛(Zn)等も、鉄(Fe)と同様に脱硫が可能であるものと考えられる。
【0045】
このように、チオフェンの脱硫実験によって、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下において水(H2O)と反応して水素(H2)を生成できる金属、つまり鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)あるいは亜鉛(Zn)等が重質油の脱硫において効果的であることが確認されたと共に、このような金属に対して劣るものの、鉄酸化物つまり酸化鉄(Fe23)あるいは四酸化三鉄(Fe34)が効果的であることも確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わる重質油の硫黄分除去方法及び装置によれば、以下のような効果を奏する。
【0047】
(1)重質油の硫黄分除去方法に係わる第1の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第1の発明によれば、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下の水熱反応により重質油の脱硫を行う際に粒状の固形物を添加するので、従来に比較して効率良く重質油を脱硫することが可能であり、十分に事業化レベルの脱硫率を確保することができる。
【0048】
(2)重質油の硫黄分除去方法に係わる第2,第3の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第2、第3の発明によれば、固形物として粒状の無機物あるいは金属を用いるので、重質油と無機物あるいは金属との接触面積を増大させて、効率良く重質油から硫黄分を分離・除去することができる。
【0049】
(3)重質油の硫黄分除去方法に係わる第4の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第4の発明によれば、固形物として水(H2O)と反応して水素(H2)を生成できる金属を用いるので、当該金属の添加量にほぼ比例した脱硫率を得ることができる。
【0050】
(4)重質油の硫黄分除去方法に係わる第5の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第5の発明によれば、固形物として鉄酸化物を用いるので、従来に比較して優れた脱硫率を得ることができる。
【0051】
(5)重質油の硫黄分除去方法に係わる第6の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第6の発明によれば、亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下において重質油を粒状の固形物、無機物あるいは金属からなる充填層に上方から落下させるので、重質油は粒状の固形物、無機物あるいは金属の表面あるいはその空隙を蛇行しながら順次下方に滴下する。したがって、重質油と粒状の固形物、無機物あるいは金属の表面との接触時間つまり反応時間が長くなり、より効率良く重質油から硫黄分を分離・除去することができると共に、水熱反応の反応器を小型化することができる。
【0052】
(6)重質油の硫黄分除去方法に係わる第7の発明及び重質油の硫黄分除去装置に係わる第7の発明によれば、水熱反応の反応温度を400゜Cに設定するので、最も効率良く重質油から硫黄分を分離・除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の原理を説明するための水熱反応の試験結果表である。
【図2】 本発明の原理を説明するための重油スラッジの蛍光X線分析の特性図である。
【図3】 本発明の一実施形態に係わる重質油の硫黄分除去装置のプロセス構成図である。
【図4】 本発明の一実施形態に係わる追加実験の実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
X……重質油
Xa……脱硫化油
Xb……改質油
1……燃料タンク
2……予熱器
3……燃料払出ポンプ
4,5……添加装置
6……ミキシングヒータ
7……加圧ポンプ
8……加熱器
9……充填層反応器(水熱反応器)
10……オーバーフロー弁
11……調圧弁
12,13……オリフィス
14……油分分離器
15……排ガス処理装置

Claims (4)

  1. 亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下の水熱反応により重質油の脱硫を行う際に、硫黄分の分離促進剤として粒状の粒状の鉄(Fe)及び酸化鉄(Fe を添加し、粒状の鉄(Fe)及び酸化鉄(Fe )が密集状に充填された充填層の上方から重質油を落下させることを特徴とする重質油の硫黄分除去方法。
  2. 水熱反応の反応温度を400゜Cとすることを特徴とする請求項1記載の重質油の硫黄分除去方法。
  3. 粒状の鉄(Fe)及び酸化鉄(Fe が内部に充填され、外部から注入された重質油を亜臨界水条件あるいは超臨界水条件下で水熱反応させ脱硫化油として出力する水熱反応器と、
    前記脱硫化油から水分を除去し改質油として出力する油分分離器と、を具備し、
    水熱反応器は、粒状の鉄(Fe)及び酸化鉄(Fe )を充填した充填層を有し、該充填層の上方に重質油を供給して充填層内を落下させることを特徴とする重質油の硫黄分除去装置。
  4. 水熱反応器内の反応温度を400゜Cとすることを特徴とする請求項3記載の重質油の硫黄分除去装置。
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JP3724438B2 (ja) 2002-03-08 2005-12-07 株式会社日立製作所 超臨界水による重質油の処理方法と処理装置及び重質油処理装置を備えた発電システム

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