JP3792856B2 - 有機性汚泥の超臨界水酸化方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水汚泥に代表される有機性廃水の生物処理装置から発生する余剰汚泥等の有機性汚泥の酸化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に下水汚泥等の有機性汚泥は、水分と共にたん白質,脂肪及び炭水化物などの有機物を多量に含むため腐敗し易く、悪臭防止や公衆衛生上の観点から安定化、無害化、減容化が必要とされている。その代表的な有機性汚泥である下水汚泥の発生は全国で約8000万m3 (濃縮汚泥基準:含水率98%)という莫大な量であり、年々増加の傾向にあり、大都市の多くの下水処理場においては、埋め立て地の確保が困難であることから、一般に焼却法を採用して減容化を図り焼却後の灰分を埋め立ている。
【0003】
従来行われている有機性汚泥の焼却法としては、汚泥中の有機物の完全分解や悪臭対策として800℃前後で行われる方法があるが、この温度域では汚泥中の窒素成分や硫黄成分が酸化物を形成し、窒素酸化物・硫黄酸化物となって排ガス中に同伴されることが問題となっている。また、焼却後の灰分も多くの場合は排ガスに同伴されて出てくる。従って、汚泥焼却の設備においては一般に脱硝設備、脱硫設備及び電気集塵機等の排ガス処理設備の設置が不可欠となっている。このように排ガス処理設備を設けることが必要であることから、従来の有機性汚泥の上述の焼却法による設備はコスト(初期投資・維持管理費)が嵩み、あるいは設置面積が広く必要になるという問題があって、その改善が望まれている。更にこの焼却法では燃焼を維持するために補助燃料(重油等)が必要という問題もある。
【0004】
有機性汚泥の他の処理方法としては、200〜300℃・2〜10MPaの亜臨界域で処理を行う湿式酸化法も知られている。この湿式酸化法は、汚泥中の有機物を酸素で酸化する方式のものであり、補助燃料の必要がなく、化学工場廃液、屎尿処理及び下水汚泥の処理として数多くの実績を有している。
【0005】
しかしながら、この方法では多くの場合有機物の分解が完全には行われず、その結果として悪臭の発生や後段にさらに水処理施設が必要になるなどの問題があるためにその改善が望まれている。
【0006】
また、近年注目されている技術として水の臨界温度・臨界圧力(374℃・22MPa)以上の条件で酸化処理を行ういわゆる超臨界水酸化法が提案されている。この超臨界水酸化法は、理論的には有機物の完全分解が可能であり、この方法を有機性汚泥の処理に適用した場合には、有機性汚泥中の炭素成分・窒素成分をそれぞれ二酸化炭素・窒素ガスのように無害なガスとして排出させることができる点で優れている。また、硫黄成分は硫酸イオンとして水中に捕捉することができるため、従来の焼却法で必要とされている後段の排ガス処理施設は不要にできる点でも優れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の超臨界水酸化の処理では、超臨界水の有機物や酸化剤を酸化処理に適した良好な状態に分散できるという優れた分散媒としての性質によって、酸化の反応速度が速い。したがって、分解対象有機物の連続供給を安定して行うことで、補助燃料を供給することなしに、分解対象有機物自体の発熱を利用して反応温度を維持することが可能である。
【0008】
ところで、本発明が対象とする有機性汚泥は酸化することにより発熱する有機物を含んでいるが、その含水率は極めて高い(例えば98%)ので汚泥単位量あたりの発熱量はあまり高くないのが普通である。このため、反応温度を維持する上で、汚泥の保有する発熱量を利用しつつ、不足する熱量を発熱量の高い補助燃料の供給で補うことが一般に考えられる。
【0009】
これに対し本発明者は、汚泥単位量あたりの発熱量は汚泥濃度(有機物量)によって大幅に変化することに着目した。すなわち、汚泥濃度を調製することで汚泥単位量あたりの発熱量を大きくすることによって、補助燃料の供給を低減ないし不要にできる方法について研究を進めた。
【0010】
この研究の過程で、超臨界水酸化処理において汚泥の発熱量のみを利用して反応に必要な最低限の温度を維持するためには、単純には、単位量あたりの発熱量が大きくなるように高濃度にした汚泥を供給すればよいことになるが、一方において汚泥濃度を高くすることは該汚泥の流動性の悪化を招いて超臨界水酸化反応器への汚泥供給が困難になるから、このような一般的な操作の上で支障となる問題を招くことがないようにされなければならない。また他の問題として、例えば仮に極めて高濃度の汚泥の供給が可能であっても、反応器内の温度が高くなりすぎれば、耐圧性,耐久性等についての装置安全上の問題も考慮しなければならない。
【0011】
また、以上の一般的な操作上の問題や、装置の耐久性等の問題とは別に、有機性汚泥を分解対象物とする場合に特有の問題がある。すなわち、下水汚泥に代表される有機性汚泥の処理においては、この汚泥にアンモニア等の比較的難分解性の有機物が含まれるのが普通である。かかる場合、例えば550°C前後の一般的な温度で超臨界水酸化処理を行うと有機性汚泥中の難分解性物質に含まれる有機物・窒素成分の完全分解が行われず超臨界水酸化処理水中に残存し、分解不十分な物質を含む超臨界水酸化処理水を直接放流した場合に周辺環境水の富栄養化を引き起こす虞れがある。
【0012】
これに対し、600℃以上の温度で超臨界水酸化処理を行えば有機性汚泥を完全分解することができる。すなわち、有機物のうちの主に有機体炭素は反応温度550℃以上では完全分解して全て二酸化炭素となるが、550℃より低い反応温度では完全分解されず処理水中にTOC成分として若干残存する。また窒素成分は反応温度600℃以上では完全分解し全て窒素ガスとなるが、600℃より低い温度では完全分解されずに処理水中にアンモニア性窒素として大量に残存することになる。
【0013】
本発明は以上の種々の問題に鑑み、有機性汚泥の超臨界水酸化処理において、汚泥の反応器への供給を確保しつつ、汚泥の発熱量が有機性汚泥の好適な酸化処理のための反応温度の維持に関して不十分であるという問題を解決することを目的としてなされたものである。
【0014】
本発明の別の目的は、補助燃料を供給することなしに有機性汚泥の超臨界水酸化処理を維持することを可能とするところにある。
【0015】
又更に本発明の別の目的は、超臨界水酸化処理を適切な反応温度を維持した所定の条件で行うことで、従来の排ガス処理設備を不要としながら、分解対象物である有機性汚泥中の有機体炭素・窒素成分を完全に分解することができるようにするところにある。
【0016】
本発明の他の目的は、反応器に有機性汚泥を安定供給することができる汚泥濃度の調製方法を提供するところにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は上記した特許請求の範囲の各請求項に記載した発明により達成される。
【0018】
本願請求項1の有機性汚泥の超臨界水酸化方法の発明は、水の臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の条件で、超臨界水の存在下に、有機性汚泥を酸化処理する方法において、超臨界水酸化による汚泥自体の発熱で反応域を600℃以上、好ましくは600〜680℃、最適には640〜660℃に維持できかつ流動性を有する汚泥濃度5〜15重量%に調製した有機性汚泥を該反応域に連続的に供給することを特徴とする。
【0019】
上記構成において、超臨界水酸化処理を600℃以上の温度で行うのは、水の臨界温度374℃以上で行われる超臨界水酸化処理を600°C未満の反応温度で行うと、有機性汚泥中の難分解性物質に含まれる有機体炭素・窒素成分の完全分解が行われずに超臨界水酸化処理水中に残存し、このような分解不十分な物質を含む超臨界水酸化処理水を直接放流すれば周辺環境水の富栄養化を引き起こす虞れがあるのに対し、600℃以上の温度で超臨界水酸化処理を行うことで、有機性汚泥を完全分解することができて有機体炭素・窒素成分を無害なガスとして放出できるからである。このような汚泥自体の発熱によって600℃以上の温度で超臨界水酸化の反応を維持し、かつ反応域への汚泥の吹込を確保するために、反応域に吹き込まれる有機性汚泥の汚泥濃度は一般的には5〜15重量%で、好ましくは8〜12重量%、最適には9〜11重量%の範囲とされる。本発明方法による場合、有機性汚泥に含まれる有機体炭素・窒素成分の完全分解が満足されればよく、反応温度を高くしすぎても反応器の耐久性等の低下を招いたり、また有機性汚泥の流動性が低くなって供給操作に問題を招くので、反応温度は680℃以下、汚泥濃度は15重量%以下とする。
【0020】
なお、上記において汚泥自体の発熱によって600℃以上の温度を維持するというのは、汚泥濃度が上記範囲より小さくなった場合には発熱量を増加させるために一時的に重油等の補助燃料を添加する操作を行う場合を排除するものではない。
【0021】
本発明において被処理原料とされる有機性汚泥としては、通常の下水処理場から排出される下水汚泥や各種の有機性廃水の生物処理装置から排出される余剰汚泥等が包含される。
【0022】
用いられる酸化剤としては、空気、酸素富化ガス等の他、過酸化水素水等の液体酸化剤を用いることもできるが、通常は空気が好ましく用いられる。超臨界水は有機性汚泥に含まれている水が超臨界雰囲気下で超臨界水となるので別途に注入することを省略できる。また、有機性汚泥に硫黄等の酸を生成する成分が含まれている場合にも、これと反応して塩を生成する成分が一般に該有機性汚泥に含まれているので中和剤の添加も特に要しない場合が多い。
【0023】
上記方法を実施するために用いられる装置としては、所定径のパイプを数十mないし100m以上に延設した管状反応器の一端側から有機性汚泥及び酸化剤を吹き込んで超臨界水酸化反応を行わせ、他端側から超臨界水酸化処理後の生成流体を排出する方式、あるいは縦筒型のベッセル型と称される反応器の上部中央から有機性汚泥及び酸化剤を吹き込んで超臨界水酸化反応を行わせ、水及び二酸化炭素等のガス成分からなる生成流体を上部から排出する方式など種々の型の装置を用いることができるが、管状反応器が好ましく採用される。超臨界水酸化処理の反応は、水の臨界圧以上一般的には22〜50MPa、好ましくは22〜25MPaで、一般的には1〜10分、好ましくは1〜2分程度の時間で行われる。
【0024】
請求項2の発明は、上記の発明において、有機性汚泥を250〜450℃、好ましくは300〜400℃、最適には350〜400℃の温度に予熱した後、温度600℃以上の反応域に供給することを特徴とする。
【0025】
本発明の超臨界水酸化においては、限定されるものではないが、600℃以上の反応温度で酸化反応した処理流体の熱量を利用して、熱交換により有機性汚泥と酸化剤を加熱(予熱)することができる。このようにすることで、予熱後の有機性汚泥と酸化剤は反応域に至って速やかに超臨界水酸化反応を行い、酸化反応熱により温度が600℃まで上昇する。この熱量は再び有機性汚泥と酸化剤の予熱に利用され、熱効率のよい酸化処理を行うことができる。管状反応器を用いた超臨界水酸化の処理において予熱を行う場合には、連続した管の始端側部分を予熱部とし、これに続く管内部分を反応域とすることができる。また、始端側部分と終端側部分にそれぞれ熱交換器を設けてこれらの間で熱媒体を循環させることで、始端側熱交換器を予熱器、終端側熱交換器を冷却器とすることもできる。
【0026】
上記の熱交換によって予熱を行う場合、交換熱量を大きくしすぎると熱交換器の容量が膨大になるため、熱交換器出口温度は450℃以下とされる。また反対に、交換熱量が不足すると酸化反応が開始する温度まで上昇しないため、熱交換器出口温度は250℃以上とされるのがよい。
【0027】
また、熱交換器出口温度が上記範囲内にある場合であっても、熱交換器出口温度が比較的低い場合には超臨界水酸化の反応に長い時間を要するためリアクターが大きくなる傾向となり、反対に熱交換器出口温度が比較的高い場合には前述のように大きな熱交換器が必要となるので、反応時間を短くかつ熱交換器を適度な大きさにするには、熱交換器出口での供給流体の温度が水の臨界温度近傍であるように予熱するのが好ましく、汚泥濃度は上記の好ましい濃度範囲8〜12%にすることがよい。
【0028】
この発明によれば、予熱部から反応域に渡って有機性汚泥が確実に温度上昇して安定した超臨界水酸化の処理が行われる。
【0029】
請求項3の有機性汚泥の汚泥濃度調製方法の発明は、上記の超臨界水酸化方法で酸化処理する有機性汚泥の汚泥濃度を、濃縮汚泥と脱水汚泥の混合によって調製することを特徴とする。
【0030】
有機性汚泥の汚泥濃度の調整装置,方法は、上記濃度に調製できるものであれば遠心濃縮法,濾布筒濃縮法など適宜の方式のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、既存の設備として濃縮設備及び脱水設備を有する施設では、本発明の汚泥濃度調製方法はこれらを利用して容易に実施でき、また、濃縮汚泥と脱水汚泥の混合比を制御することで常に安定した汚泥濃度とすることができるので工業的設備では効果が大きい。
【0031】
【発明の実施の形態】
実施形態1
図1は、本発明の方法を実施するための装置の構成概要一例を示したものである。この図1において1は管状反応器であり、水の臨界圧以上の所定圧に加圧され、必要に応じて図示しない一次予熱器で一次予熱された有機性汚泥と、酸化剤(例えば空気)とがその始端側から吹き込まれる。本例のこの管状反応器1は、その始端側の所定範囲に熱交換器2が設けられていて、反応器1の終端部から排出管3に排出された超臨界水酸化処理後の処理流体を該熱交換器2に通すことで、上記により吹き込まれた有機性汚泥をその熱交換器2の出口において250〜450℃の温度まで予熱できるように設けられている。
【0032】
上記のようにして吹き込まれた有機性汚泥は、予熱された後、熱交換器出口から管状反応器1の反応域(図1中に符号11で示した範囲)内に至り、反応温度600℃以上で超臨界水酸化処理される。処理流体は終端部から排出管3に排出されて、熱交換器2を通って例えば100℃程度に冷却された後、自然空冷等で更に温度が低下されて気液分離器4に導かれ、気体と、液体・固体混合物に分離される。気液分離された二酸化炭素,窒素ガス等の気体は、気液分離器4の上部から引き抜かれ、減圧弁5を通して排ガスとして系外に排出される。
【0033】
他方、気液分離された液体(処理水)・固体混合物は、気液分離器4の下部から排出され、減圧弁6で減圧された後、固液分離器8で処理水と固体に分離され、分離された処理水は系外に排出される。
【0034】
なお本例においては、気液分離器4から固液分離器8に処理水・固体混合物を移送する配管7の途中で凝集剤(リン酸イオンの不溶化剤)を添加し、固液分離器8では不溶体として凝集したリン酸成分(リン酸アルミニウム等)を処理灰(固体)として分離するようにしている。
【0035】
これは次の理由による。すなわち有機性汚泥にリン成分が含まれている場合には超臨界水酸化によりリン酸イオンが生成する。このリン酸イオンの殆どは、通常は有機性汚泥に含まれているアルカリ金属以外の金属(Ca,Mg,Fe,Al等)と不溶性の塩を容易に形成して固形物として分離されるが、有機性汚泥によってはリン酸イオンの一部が処理水中に残存する場合がある。そしてこの処理水をそのまま放流すると周辺環境水のリン成分による富栄養化の問題を招く虞れがあるのでこれを解消するためである。凝集剤としては例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等の水酸化物、塩化物、硫酸塩等の凝集剤を用いることができる。凝集剤の添加位置は、酸化処理後の流体であれば特に制限されない。
【0036】
以上の処理によって、有機性汚泥に含まれていた有機炭素及び窒素は二酸化炭素,窒素の無害なガスにまで完全に分解されて排出され、また本例の装置では、リン成分も固体(処理灰)として分離され、処理水から除去することができる。これにより有機性汚泥の酸化処理によって生ずる処理水の放流により周辺環境水の富栄養化を引き起こすという問題が防止でき、また排ガス処理設備も不要とできる。
【0037】
【実施例】
実施例1
[濃縮した有機性汚泥の調製]
下水汚泥を遠心濃縮装置で汚泥濃度5重量%に濃縮した濃縮汚泥と、ベルトプレス式脱水機で汚泥濃度20重量%に脱水した脱水汚泥を、混合攪拌することで汚泥濃度10重量%の有機性汚泥を調製した。この汚泥は十分な流動性があり、既存の一般的ポンプで高圧輸送が可能であった。なおこの有機性汚泥の有機体炭素・窒素・リンの各成分は次の通りであった。
【0038】
下水汚泥(汚泥濃度10重量%)
全有機体炭素: 4%
全窒素 : 0.5%
全リン : 0.2%
[超臨界水酸化処理]
実施形態1の装置を用いて、以下の条件で上記で調製した濃度の有機性汚泥の超臨界水酸化処理を行った。
【0039】
(試験条件)
管状反応器:内径6.8mm、長さ18m
汚泥供給量:30ml/min
酸化剤 :空気
超臨界水酸化処理
予熱温度(熱交換器2の出口温度):370℃
反応温度:650℃
圧力 :25MPa
凝集剤
ポリ塩化アルミニウム(PAC),濃度10%asAl2 O3
添加量:0.05リットル/kgDS
その試験の結果を下記表1に示した。この表1の結果から分かるように、反応温度約650℃で超臨界水酸化処理を行い、凝集剤を添加することにより、処理水中の有機体炭素・全窒素・全リンは全て良好に除去され、処理水は直接放流できる水質となった。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
実施例1の供給流体の予熱温度(熱交換器2出口の温度)を変化させて、その後の有機性汚泥の酸化反応熱で650℃まで昇温するために適切な汚泥濃度との関係を調べ、その結果を図2に示した。図中の四角で囲った範囲が好ましい予熱(熱交換器出口)温度であり、その時の汚泥濃度は図2から明らかなように5〜15重量%であった。
【0042】
なおこの図2から、予熱後の反応域11での温度上昇が速やかに行われて反応時間を短くできると共に、熱交換器として過大とならない装置とできる臨界温度近傍の予熱温度(熱交換器出口温度)とするには、有機性汚泥を汚泥濃度10重量%前後に調製するのが適当であることが分かる。この温度を図2中に太い点線で示した。
【0043】
比較例1
汚泥濃度が低いと発熱量が不足し反応温度が低くなり、その結果、有機性汚泥の超臨界水酸化が不十分となる。
【0044】
このことを確認するために、実施例1において、機械濃縮で汚泥濃度4.9%に調製した汚泥を用い、補助燃料として重油を添加して発熱量を増加させ、375℃まで予熱してその後の酸化反応熱で反応温度650℃まで上昇させるようにしたところ、汚泥lkgに対し特A重油約20gが必要であった。
【0045】
比較例2
脱水装置を用いて汚泥濃度を20重量%に調製したところ、汚泥はケーキ状となって流動性がなくなり、一般的なポンプでは高圧で輸送することが困難であった。
【0046】
なお、このような高濃度の汚泥は高圧輸送が可能であっても、発熱量が大きくなりすぎて反応温度が高くなりすぎるので、装置の安全面で問題となる他、計算上では、一般的な脱水汚泥で生成する濃度20%の汚泥の超臨界水酸化の反応温度を650℃程度とするには、汚泥自体の発熱量との関係で予熱温度を200℃以下としなければならない。しかし、この程度の温度に予熱した汚泥を反応域に供給しても汚泥の酸化反応熱による温度上昇はほとんど見込めない。
【0047】
【発明の効果】
本発明による方法により有機性汚泥の処理をすることにより、従来法と比較して以下の効果が奏される。
【0048】
(1)補助燃料を供給することなしに超臨界水酸化処理を維持することが可能である。
【0049】
(2)有機性汚泥の超臨界水酸化処理を適切な反応温度を維持した所定の条件で行うことができ、処理水中から有機体炭素・窒素成分を確実に除去することができ、また、有機性汚泥にリン成分が比較的高濃度に含まれている場合には、リン成分除去のための不溶化剤を添加することによって、スケールの形成を抑制しながら処理水中のリン成分除去の操作を併せて行うことができ、これらによって処理水を直接放流することが可能となる。
【0050】
(3)従来の排ガス設備が不要で設備コスト、ランニングコストが安価とでき、設備面積も小さなものとできる。
【0051】
(4)濃縮汚泥と脱水汚泥を混合して汚泥濃度を調製する方法によれば、反応域に供給する有機性汚泥の安定供給ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するのに用いる実施形態1の超臨界水酸化処理装置の構成概要を示した図。
【図2】本発明方法によって行われる適当な予熱温度範囲を示した図。
【符号の説明】
1・・・管状反応器、2・・・熱交換器、3・・・排出管、4・・・気液分離器、5・・・減圧弁、6・・・減圧弁、7・・・配管、8・・・固液分離器、9・・・排出管。
【発明の属する技術分野】
本発明は、下水汚泥に代表される有機性廃水の生物処理装置から発生する余剰汚泥等の有機性汚泥の酸化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に下水汚泥等の有機性汚泥は、水分と共にたん白質,脂肪及び炭水化物などの有機物を多量に含むため腐敗し易く、悪臭防止や公衆衛生上の観点から安定化、無害化、減容化が必要とされている。その代表的な有機性汚泥である下水汚泥の発生は全国で約8000万m3 (濃縮汚泥基準:含水率98%)という莫大な量であり、年々増加の傾向にあり、大都市の多くの下水処理場においては、埋め立て地の確保が困難であることから、一般に焼却法を採用して減容化を図り焼却後の灰分を埋め立ている。
【0003】
従来行われている有機性汚泥の焼却法としては、汚泥中の有機物の完全分解や悪臭対策として800℃前後で行われる方法があるが、この温度域では汚泥中の窒素成分や硫黄成分が酸化物を形成し、窒素酸化物・硫黄酸化物となって排ガス中に同伴されることが問題となっている。また、焼却後の灰分も多くの場合は排ガスに同伴されて出てくる。従って、汚泥焼却の設備においては一般に脱硝設備、脱硫設備及び電気集塵機等の排ガス処理設備の設置が不可欠となっている。このように排ガス処理設備を設けることが必要であることから、従来の有機性汚泥の上述の焼却法による設備はコスト(初期投資・維持管理費)が嵩み、あるいは設置面積が広く必要になるという問題があって、その改善が望まれている。更にこの焼却法では燃焼を維持するために補助燃料(重油等)が必要という問題もある。
【0004】
有機性汚泥の他の処理方法としては、200〜300℃・2〜10MPaの亜臨界域で処理を行う湿式酸化法も知られている。この湿式酸化法は、汚泥中の有機物を酸素で酸化する方式のものであり、補助燃料の必要がなく、化学工場廃液、屎尿処理及び下水汚泥の処理として数多くの実績を有している。
【0005】
しかしながら、この方法では多くの場合有機物の分解が完全には行われず、その結果として悪臭の発生や後段にさらに水処理施設が必要になるなどの問題があるためにその改善が望まれている。
【0006】
また、近年注目されている技術として水の臨界温度・臨界圧力(374℃・22MPa)以上の条件で酸化処理を行ういわゆる超臨界水酸化法が提案されている。この超臨界水酸化法は、理論的には有機物の完全分解が可能であり、この方法を有機性汚泥の処理に適用した場合には、有機性汚泥中の炭素成分・窒素成分をそれぞれ二酸化炭素・窒素ガスのように無害なガスとして排出させることができる点で優れている。また、硫黄成分は硫酸イオンとして水中に捕捉することができるため、従来の焼却法で必要とされている後段の排ガス処理施設は不要にできる点でも優れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の超臨界水酸化の処理では、超臨界水の有機物や酸化剤を酸化処理に適した良好な状態に分散できるという優れた分散媒としての性質によって、酸化の反応速度が速い。したがって、分解対象有機物の連続供給を安定して行うことで、補助燃料を供給することなしに、分解対象有機物自体の発熱を利用して反応温度を維持することが可能である。
【0008】
ところで、本発明が対象とする有機性汚泥は酸化することにより発熱する有機物を含んでいるが、その含水率は極めて高い(例えば98%)ので汚泥単位量あたりの発熱量はあまり高くないのが普通である。このため、反応温度を維持する上で、汚泥の保有する発熱量を利用しつつ、不足する熱量を発熱量の高い補助燃料の供給で補うことが一般に考えられる。
【0009】
これに対し本発明者は、汚泥単位量あたりの発熱量は汚泥濃度(有機物量)によって大幅に変化することに着目した。すなわち、汚泥濃度を調製することで汚泥単位量あたりの発熱量を大きくすることによって、補助燃料の供給を低減ないし不要にできる方法について研究を進めた。
【0010】
この研究の過程で、超臨界水酸化処理において汚泥の発熱量のみを利用して反応に必要な最低限の温度を維持するためには、単純には、単位量あたりの発熱量が大きくなるように高濃度にした汚泥を供給すればよいことになるが、一方において汚泥濃度を高くすることは該汚泥の流動性の悪化を招いて超臨界水酸化反応器への汚泥供給が困難になるから、このような一般的な操作の上で支障となる問題を招くことがないようにされなければならない。また他の問題として、例えば仮に極めて高濃度の汚泥の供給が可能であっても、反応器内の温度が高くなりすぎれば、耐圧性,耐久性等についての装置安全上の問題も考慮しなければならない。
【0011】
また、以上の一般的な操作上の問題や、装置の耐久性等の問題とは別に、有機性汚泥を分解対象物とする場合に特有の問題がある。すなわち、下水汚泥に代表される有機性汚泥の処理においては、この汚泥にアンモニア等の比較的難分解性の有機物が含まれるのが普通である。かかる場合、例えば550°C前後の一般的な温度で超臨界水酸化処理を行うと有機性汚泥中の難分解性物質に含まれる有機物・窒素成分の完全分解が行われず超臨界水酸化処理水中に残存し、分解不十分な物質を含む超臨界水酸化処理水を直接放流した場合に周辺環境水の富栄養化を引き起こす虞れがある。
【0012】
これに対し、600℃以上の温度で超臨界水酸化処理を行えば有機性汚泥を完全分解することができる。すなわち、有機物のうちの主に有機体炭素は反応温度550℃以上では完全分解して全て二酸化炭素となるが、550℃より低い反応温度では完全分解されず処理水中にTOC成分として若干残存する。また窒素成分は反応温度600℃以上では完全分解し全て窒素ガスとなるが、600℃より低い温度では完全分解されずに処理水中にアンモニア性窒素として大量に残存することになる。
【0013】
本発明は以上の種々の問題に鑑み、有機性汚泥の超臨界水酸化処理において、汚泥の反応器への供給を確保しつつ、汚泥の発熱量が有機性汚泥の好適な酸化処理のための反応温度の維持に関して不十分であるという問題を解決することを目的としてなされたものである。
【0014】
本発明の別の目的は、補助燃料を供給することなしに有機性汚泥の超臨界水酸化処理を維持することを可能とするところにある。
【0015】
又更に本発明の別の目的は、超臨界水酸化処理を適切な反応温度を維持した所定の条件で行うことで、従来の排ガス処理設備を不要としながら、分解対象物である有機性汚泥中の有機体炭素・窒素成分を完全に分解することができるようにするところにある。
【0016】
本発明の他の目的は、反応器に有機性汚泥を安定供給することができる汚泥濃度の調製方法を提供するところにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は上記した特許請求の範囲の各請求項に記載した発明により達成される。
【0018】
本願請求項1の有機性汚泥の超臨界水酸化方法の発明は、水の臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の条件で、超臨界水の存在下に、有機性汚泥を酸化処理する方法において、超臨界水酸化による汚泥自体の発熱で反応域を600℃以上、好ましくは600〜680℃、最適には640〜660℃に維持できかつ流動性を有する汚泥濃度5〜15重量%に調製した有機性汚泥を該反応域に連続的に供給することを特徴とする。
【0019】
上記構成において、超臨界水酸化処理を600℃以上の温度で行うのは、水の臨界温度374℃以上で行われる超臨界水酸化処理を600°C未満の反応温度で行うと、有機性汚泥中の難分解性物質に含まれる有機体炭素・窒素成分の完全分解が行われずに超臨界水酸化処理水中に残存し、このような分解不十分な物質を含む超臨界水酸化処理水を直接放流すれば周辺環境水の富栄養化を引き起こす虞れがあるのに対し、600℃以上の温度で超臨界水酸化処理を行うことで、有機性汚泥を完全分解することができて有機体炭素・窒素成分を無害なガスとして放出できるからである。このような汚泥自体の発熱によって600℃以上の温度で超臨界水酸化の反応を維持し、かつ反応域への汚泥の吹込を確保するために、反応域に吹き込まれる有機性汚泥の汚泥濃度は一般的には5〜15重量%で、好ましくは8〜12重量%、最適には9〜11重量%の範囲とされる。本発明方法による場合、有機性汚泥に含まれる有機体炭素・窒素成分の完全分解が満足されればよく、反応温度を高くしすぎても反応器の耐久性等の低下を招いたり、また有機性汚泥の流動性が低くなって供給操作に問題を招くので、反応温度は680℃以下、汚泥濃度は15重量%以下とする。
【0020】
なお、上記において汚泥自体の発熱によって600℃以上の温度を維持するというのは、汚泥濃度が上記範囲より小さくなった場合には発熱量を増加させるために一時的に重油等の補助燃料を添加する操作を行う場合を排除するものではない。
【0021】
本発明において被処理原料とされる有機性汚泥としては、通常の下水処理場から排出される下水汚泥や各種の有機性廃水の生物処理装置から排出される余剰汚泥等が包含される。
【0022】
用いられる酸化剤としては、空気、酸素富化ガス等の他、過酸化水素水等の液体酸化剤を用いることもできるが、通常は空気が好ましく用いられる。超臨界水は有機性汚泥に含まれている水が超臨界雰囲気下で超臨界水となるので別途に注入することを省略できる。また、有機性汚泥に硫黄等の酸を生成する成分が含まれている場合にも、これと反応して塩を生成する成分が一般に該有機性汚泥に含まれているので中和剤の添加も特に要しない場合が多い。
【0023】
上記方法を実施するために用いられる装置としては、所定径のパイプを数十mないし100m以上に延設した管状反応器の一端側から有機性汚泥及び酸化剤を吹き込んで超臨界水酸化反応を行わせ、他端側から超臨界水酸化処理後の生成流体を排出する方式、あるいは縦筒型のベッセル型と称される反応器の上部中央から有機性汚泥及び酸化剤を吹き込んで超臨界水酸化反応を行わせ、水及び二酸化炭素等のガス成分からなる生成流体を上部から排出する方式など種々の型の装置を用いることができるが、管状反応器が好ましく採用される。超臨界水酸化処理の反応は、水の臨界圧以上一般的には22〜50MPa、好ましくは22〜25MPaで、一般的には1〜10分、好ましくは1〜2分程度の時間で行われる。
【0024】
請求項2の発明は、上記の発明において、有機性汚泥を250〜450℃、好ましくは300〜400℃、最適には350〜400℃の温度に予熱した後、温度600℃以上の反応域に供給することを特徴とする。
【0025】
本発明の超臨界水酸化においては、限定されるものではないが、600℃以上の反応温度で酸化反応した処理流体の熱量を利用して、熱交換により有機性汚泥と酸化剤を加熱(予熱)することができる。このようにすることで、予熱後の有機性汚泥と酸化剤は反応域に至って速やかに超臨界水酸化反応を行い、酸化反応熱により温度が600℃まで上昇する。この熱量は再び有機性汚泥と酸化剤の予熱に利用され、熱効率のよい酸化処理を行うことができる。管状反応器を用いた超臨界水酸化の処理において予熱を行う場合には、連続した管の始端側部分を予熱部とし、これに続く管内部分を反応域とすることができる。また、始端側部分と終端側部分にそれぞれ熱交換器を設けてこれらの間で熱媒体を循環させることで、始端側熱交換器を予熱器、終端側熱交換器を冷却器とすることもできる。
【0026】
上記の熱交換によって予熱を行う場合、交換熱量を大きくしすぎると熱交換器の容量が膨大になるため、熱交換器出口温度は450℃以下とされる。また反対に、交換熱量が不足すると酸化反応が開始する温度まで上昇しないため、熱交換器出口温度は250℃以上とされるのがよい。
【0027】
また、熱交換器出口温度が上記範囲内にある場合であっても、熱交換器出口温度が比較的低い場合には超臨界水酸化の反応に長い時間を要するためリアクターが大きくなる傾向となり、反対に熱交換器出口温度が比較的高い場合には前述のように大きな熱交換器が必要となるので、反応時間を短くかつ熱交換器を適度な大きさにするには、熱交換器出口での供給流体の温度が水の臨界温度近傍であるように予熱するのが好ましく、汚泥濃度は上記の好ましい濃度範囲8〜12%にすることがよい。
【0028】
この発明によれば、予熱部から反応域に渡って有機性汚泥が確実に温度上昇して安定した超臨界水酸化の処理が行われる。
【0029】
請求項3の有機性汚泥の汚泥濃度調製方法の発明は、上記の超臨界水酸化方法で酸化処理する有機性汚泥の汚泥濃度を、濃縮汚泥と脱水汚泥の混合によって調製することを特徴とする。
【0030】
有機性汚泥の汚泥濃度の調整装置,方法は、上記濃度に調製できるものであれば遠心濃縮法,濾布筒濃縮法など適宜の方式のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、既存の設備として濃縮設備及び脱水設備を有する施設では、本発明の汚泥濃度調製方法はこれらを利用して容易に実施でき、また、濃縮汚泥と脱水汚泥の混合比を制御することで常に安定した汚泥濃度とすることができるので工業的設備では効果が大きい。
【0031】
【発明の実施の形態】
実施形態1
図1は、本発明の方法を実施するための装置の構成概要一例を示したものである。この図1において1は管状反応器であり、水の臨界圧以上の所定圧に加圧され、必要に応じて図示しない一次予熱器で一次予熱された有機性汚泥と、酸化剤(例えば空気)とがその始端側から吹き込まれる。本例のこの管状反応器1は、その始端側の所定範囲に熱交換器2が設けられていて、反応器1の終端部から排出管3に排出された超臨界水酸化処理後の処理流体を該熱交換器2に通すことで、上記により吹き込まれた有機性汚泥をその熱交換器2の出口において250〜450℃の温度まで予熱できるように設けられている。
【0032】
上記のようにして吹き込まれた有機性汚泥は、予熱された後、熱交換器出口から管状反応器1の反応域(図1中に符号11で示した範囲)内に至り、反応温度600℃以上で超臨界水酸化処理される。処理流体は終端部から排出管3に排出されて、熱交換器2を通って例えば100℃程度に冷却された後、自然空冷等で更に温度が低下されて気液分離器4に導かれ、気体と、液体・固体混合物に分離される。気液分離された二酸化炭素,窒素ガス等の気体は、気液分離器4の上部から引き抜かれ、減圧弁5を通して排ガスとして系外に排出される。
【0033】
他方、気液分離された液体(処理水)・固体混合物は、気液分離器4の下部から排出され、減圧弁6で減圧された後、固液分離器8で処理水と固体に分離され、分離された処理水は系外に排出される。
【0034】
なお本例においては、気液分離器4から固液分離器8に処理水・固体混合物を移送する配管7の途中で凝集剤(リン酸イオンの不溶化剤)を添加し、固液分離器8では不溶体として凝集したリン酸成分(リン酸アルミニウム等)を処理灰(固体)として分離するようにしている。
【0035】
これは次の理由による。すなわち有機性汚泥にリン成分が含まれている場合には超臨界水酸化によりリン酸イオンが生成する。このリン酸イオンの殆どは、通常は有機性汚泥に含まれているアルカリ金属以外の金属(Ca,Mg,Fe,Al等)と不溶性の塩を容易に形成して固形物として分離されるが、有機性汚泥によってはリン酸イオンの一部が処理水中に残存する場合がある。そしてこの処理水をそのまま放流すると周辺環境水のリン成分による富栄養化の問題を招く虞れがあるのでこれを解消するためである。凝集剤としては例えばカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)等の水酸化物、塩化物、硫酸塩等の凝集剤を用いることができる。凝集剤の添加位置は、酸化処理後の流体であれば特に制限されない。
【0036】
以上の処理によって、有機性汚泥に含まれていた有機炭素及び窒素は二酸化炭素,窒素の無害なガスにまで完全に分解されて排出され、また本例の装置では、リン成分も固体(処理灰)として分離され、処理水から除去することができる。これにより有機性汚泥の酸化処理によって生ずる処理水の放流により周辺環境水の富栄養化を引き起こすという問題が防止でき、また排ガス処理設備も不要とできる。
【0037】
【実施例】
実施例1
[濃縮した有機性汚泥の調製]
下水汚泥を遠心濃縮装置で汚泥濃度5重量%に濃縮した濃縮汚泥と、ベルトプレス式脱水機で汚泥濃度20重量%に脱水した脱水汚泥を、混合攪拌することで汚泥濃度10重量%の有機性汚泥を調製した。この汚泥は十分な流動性があり、既存の一般的ポンプで高圧輸送が可能であった。なおこの有機性汚泥の有機体炭素・窒素・リンの各成分は次の通りであった。
【0038】
下水汚泥(汚泥濃度10重量%)
全有機体炭素: 4%
全窒素 : 0.5%
全リン : 0.2%
[超臨界水酸化処理]
実施形態1の装置を用いて、以下の条件で上記で調製した濃度の有機性汚泥の超臨界水酸化処理を行った。
【0039】
(試験条件)
管状反応器:内径6.8mm、長さ18m
汚泥供給量:30ml/min
酸化剤 :空気
超臨界水酸化処理
予熱温度(熱交換器2の出口温度):370℃
反応温度:650℃
圧力 :25MPa
凝集剤
ポリ塩化アルミニウム(PAC),濃度10%asAl2 O3
添加量:0.05リットル/kgDS
その試験の結果を下記表1に示した。この表1の結果から分かるように、反応温度約650℃で超臨界水酸化処理を行い、凝集剤を添加することにより、処理水中の有機体炭素・全窒素・全リンは全て良好に除去され、処理水は直接放流できる水質となった。
【0040】
【表1】
【0041】
実施例2
実施例1の供給流体の予熱温度(熱交換器2出口の温度)を変化させて、その後の有機性汚泥の酸化反応熱で650℃まで昇温するために適切な汚泥濃度との関係を調べ、その結果を図2に示した。図中の四角で囲った範囲が好ましい予熱(熱交換器出口)温度であり、その時の汚泥濃度は図2から明らかなように5〜15重量%であった。
【0042】
なおこの図2から、予熱後の反応域11での温度上昇が速やかに行われて反応時間を短くできると共に、熱交換器として過大とならない装置とできる臨界温度近傍の予熱温度(熱交換器出口温度)とするには、有機性汚泥を汚泥濃度10重量%前後に調製するのが適当であることが分かる。この温度を図2中に太い点線で示した。
【0043】
比較例1
汚泥濃度が低いと発熱量が不足し反応温度が低くなり、その結果、有機性汚泥の超臨界水酸化が不十分となる。
【0044】
このことを確認するために、実施例1において、機械濃縮で汚泥濃度4.9%に調製した汚泥を用い、補助燃料として重油を添加して発熱量を増加させ、375℃まで予熱してその後の酸化反応熱で反応温度650℃まで上昇させるようにしたところ、汚泥lkgに対し特A重油約20gが必要であった。
【0045】
比較例2
脱水装置を用いて汚泥濃度を20重量%に調製したところ、汚泥はケーキ状となって流動性がなくなり、一般的なポンプでは高圧で輸送することが困難であった。
【0046】
なお、このような高濃度の汚泥は高圧輸送が可能であっても、発熱量が大きくなりすぎて反応温度が高くなりすぎるので、装置の安全面で問題となる他、計算上では、一般的な脱水汚泥で生成する濃度20%の汚泥の超臨界水酸化の反応温度を650℃程度とするには、汚泥自体の発熱量との関係で予熱温度を200℃以下としなければならない。しかし、この程度の温度に予熱した汚泥を反応域に供給しても汚泥の酸化反応熱による温度上昇はほとんど見込めない。
【0047】
【発明の効果】
本発明による方法により有機性汚泥の処理をすることにより、従来法と比較して以下の効果が奏される。
【0048】
(1)補助燃料を供給することなしに超臨界水酸化処理を維持することが可能である。
【0049】
(2)有機性汚泥の超臨界水酸化処理を適切な反応温度を維持した所定の条件で行うことができ、処理水中から有機体炭素・窒素成分を確実に除去することができ、また、有機性汚泥にリン成分が比較的高濃度に含まれている場合には、リン成分除去のための不溶化剤を添加することによって、スケールの形成を抑制しながら処理水中のリン成分除去の操作を併せて行うことができ、これらによって処理水を直接放流することが可能となる。
【0050】
(3)従来の排ガス設備が不要で設備コスト、ランニングコストが安価とでき、設備面積も小さなものとできる。
【0051】
(4)濃縮汚泥と脱水汚泥を混合して汚泥濃度を調製する方法によれば、反応域に供給する有機性汚泥の安定供給ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するのに用いる実施形態1の超臨界水酸化処理装置の構成概要を示した図。
【図2】本発明方法によって行われる適当な予熱温度範囲を示した図。
【符号の説明】
1・・・管状反応器、2・・・熱交換器、3・・・排出管、4・・・気液分離器、5・・・減圧弁、6・・・減圧弁、7・・・配管、8・・・固液分離器、9・・・排出管。
Claims (3)
- 水の臨界温度以上でかつ臨界圧力以上の条件で、超臨界水の存在下に、有機性汚泥を酸化処理する方法において、超臨界水酸化による汚泥自体の発熱で反応域を600℃以上に維持できかつ流動性を有する汚泥濃度5〜15重量%に調製した有機性汚泥を該反応域に連続的に供給することを特徴とする有機性汚泥の超臨界水酸化方法。
- 請求項1において、有機性汚泥を250〜450℃の温度に予熱した後、温度600℃以上の反応域に供給することを特徴とする有機性汚泥の超臨界水酸化方法。
- 請求項1または2のいずれかの超臨界水酸化方法で酸化処理する有機性汚泥の汚泥濃度を、濃縮汚泥と脱水汚泥の混合によって調製することを特徴とする超臨界水酸化方法に適用する有機性汚泥の汚泥濃度調製方法。
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