JP3900764B2 - 重質油の軽質化方法及びその装置 - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超臨界水中で重質油を軽質化する方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油成分のうち硫黄を多く含む重質油はその用途が少なく余剰となりつつある。このため重質油を用途の多いクリーンな軽質油に転換する技術が近年注目されている。従来の重質油を軽質化する方法では、高温高圧の水素ガス雰囲気下で、重質油を高価な貴金属やNi、Mo等の金属触媒に接触させて重質油を熱分解するとともに水素化することにより軽質油に転換し、更に脱硫することによりクリーンな軽質油にしている。
しかし上記従来の方法は、重質油の熱分解と水素化工程で多量の水素を必要とするため、第一に水素製造装置が不可欠であること、第二に水素ガスと一緒に供給された水などの水素以外の物質が金属触媒表面に吸着又は反応する被毒現象によって金属触媒の寿命が短いなどの問題点があった。
【0003】
一方、本出願人は重質油を軽質化して可燃性ガスを生成するために、超臨界水中で水と重質油を反応させることにより重質油を軽質化するガス化方法を提案した(特開平11−246876号公報)。この方法は超臨界水が重質油の重合を抑制する作用があり、コークスの生成量が従来と比較して少ないなどの利点を有していることから有望な方法である。このガス化方法では超臨界水中で重質油を軽質化するときに重質油の熱分解反応や一次生成物に水素が添加する反応などが起きる。前者の熱分解反応では重質油が熱分解して低分子化され、軽質油及び可燃性ガスが生成する。後者の水素添加反応では、上記熱分解反応中に生成した一次生成物のラジカルに水素原子が付加し、これにより熱分解種が安定化する。また熱分解しない安定な分子と活性な水素との反応も生じる。これらの反応は個別的に行われず、互いに併発して複合的に行われ、軽質化が進行する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−246876号公報に示される方法は可燃性ガスを生成することを主目的とし、重質油から軽質油に効率よく転換することができなかった。またこの方法では、超臨界水中での熱分解反応により生成した一次生成物の水素添加反応に必要な水素量が少なく、重質油の軽質化を必ずしも十分に行うことができない問題点があった。
本発明の目的は、軽質油への転換効率が高い重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
本発明の別の発明は、脱硫と軽質化のプロセスを同時に行う重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
本発明の更に別の発明は、コークスの生成量を更に抑える重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、硫黄分を含む重質油と水とを380〜450℃、25〜35MPaに維持された反応器で反応させて重質油を軽質化して軽質油を生成する工程と、軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とにそれぞれ分離する工程とを含む重質油の軽質化方法において、反応器に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給することを特徴とする重質油の軽質化方法である。
請求項1に係る発明では、反応器内に一酸化炭素を圧力供給することにより水性ガスシフト反応を促進させ、十分な転換軽質化を行う。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、分離したガスに硫黄吸収剤を添加してガスに含まれる硫黄分を脱硫する工程を更に含む重質油の軽質化方法である。
請求項2に係る発明では、分離したガスに硫黄吸収剤を加えることにより硫黄分を含まない排ガスを回収することができる。
【0007】
請求項3に係る発明は、図1に示すように、硫黄分を含む重質油と水のエマルジョンを生成するミキサー10と、ミキサー10で生成された重質油エマルジョンに含まれる重質油を380〜450℃、25〜35MPaで軽質化して軽質油を生成する反応器14と、反応器14に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給するポンプ19と、反応器14で生成した軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とに分離する気油水分離器23とを備えた重質油の軽質化装置である。
請求項3に係る発明では、この装置では重質油より生成した混合物をそれぞれ軽質油とガスと水とに分離して、軽質油及びガスをそれぞれ回収する。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明であって、図1に示すように、気油水分離器23で分離した水をポンプ42を介して反応器14とミキサー10にそれぞれ供給するように構成された重質油の軽質化装置である。
請求項4に係る発明では、分離した水にはH2Sが溶解しており、このH2Sが溶解している水は反応器14、ミキサー10にそれぞれ送込まれ、水は反応溶媒として、H2Sは触媒として再利用される。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明であって、図1に示すように、分離したガスに硫黄吸収剤を添加してガスに含まれる硫黄分を脱硫する脱硫器36を更に含む重質油の軽質化装置である。
請求項5に係る発明では、分離したガスを硫黄吸収剤により脱硫して回収する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
重質油の軽質化装置は、図1に示すように、水と重質油を混合するミキサー10を有する。ミキサー10により混合された水と重質油はエマルジョンになる。このエマルジョンは重質油100重量%に対して30〜60重量%の水を添加して調製される。このミキサー10は管路11、ポンプ12及び管路13を介して反応器14下部に設けられた被処理液供給口16に接続される。ミキサー10の外周にはヒーター10aが、またその内部には撹拌器10bが設けられる。反応器14は耐熱耐圧製であり両端が封止され少なくとも600℃の温度と40MPaの圧力に耐え得る円筒体に形成される。反応器14の外周部には保温又は加熱のための図示しないヒータが設けられる。
【0011】
本発明の反応器14内の条件は380〜450℃の温度でかつ25〜35MPaの圧力である。好ましくは380〜420℃、25〜30MPaである。380℃未満、25MPa未満では軽質化が不十分であり、450℃を越えるとコークスが多量に生成する不具合が生じる。また35MPaを越えると反応器14に負担がかかり過ぎるようになる。
本発明の特徴ある構成は反応器14下部にCO供給口17が設けられ、この供給口17に管路18を介してブースターポンプ19が接続されたことにある。COは反応器14内と同圧で供給される。供給するCOの量は被処理液中に含まれる炭素に対するモル比率(以下、CO/Cという。)が0.1〜0.4であることが好ましい。
【0012】
反応器14頂部には生成混合物取出口21が、底部には水供給口22が設けられる。取出口21には気油水分離器23が管路24を介して接続される。管路24の途中には冷却器26が設けられる。気油水分離器23は縦長の密閉したチャンバーであり、上段、中段及び下段にそれぞれガス取出口23a、軽質油取出口23b、水取出口23cが設けられる。分離器23の外壁には、ガス取出口23aと軽質油取出口23bの間に第1パイプ27が接続される。パイプ27の途中には第1レベルゲージ28が設けられ、第1レベルゲージ28は制御装置29の制御入力に接続される。また軽質油取出口23bと水取出口23cの間に第2パイプ31が接続される。パイプ31の途中には第2レベルゲージ32が設けられ、レベルゲージ32は制御装置29の制御入力に接続される。制御装置29の制御出力は後述する電磁弁34、37、39にそれぞれ接続される。また第1パイプ27は分離器23の上段と中段を連通するように、また第2パイプ31は分離器23の中段と下段を連通するようにそれぞれ設けられる。
【0013】
ガス取出口23aは管路33、電磁弁34を介して脱硫器36下部に接続される。軽質油取出口23bは電磁弁37に接続される。分離器23の底部に設けられた水取出口23cは、管路38、電磁弁39、管路41を介してポンプ42に接続され、ポンプ42は管路43、分配弁45、予熱器44を介して反応器14の底部に設けられた水供給口22に接続される。分配弁45とミキサー10との間には管路46が接続される。
脱硫器36の底部には硫黄吸収剤を供給するための供給口46が設けられ、脱硫器36上部には排出管47が設けられ、この排出管47には減圧弁48が接続される。硫黄吸収剤はNaOHやKOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等を代表とするアルカリ水酸化物が含まれる水溶液、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミン類が含まれる水溶液等が挙げられる。
【0014】
このように構成された装置では、重質油と水とを100℃未満(例えば80℃)、0.1〜1MPa(例えば0.5MPa)に維持されたミキサー10で混合し、エマルジョン状の被処理液を調製する。この被処理液をミキサー10から管路11、ポンプ12及び管路13を介して被処理液供給口16より反応器14内に供給する。またCOはブースターポンプ19を介して反応器内の圧力と同圧でCO供給口17より反応器14内に供給する。反応器14内の温度を380〜450℃(例えば400℃)、圧力を25〜35MPa(例えば25MPa)の水の超臨界状態に保つと、被処理液中の重質油は軽質化するとともにCO、H2、CH4、CO2等のガスが発生する。即ち、被処理液中の重質油は熱分解するとともにこの分解により生成した一次生成物に水素が付加される。これにより被処理液から軽質油と水とガスとからなる混合物が生成される。
【0015】
この生成反応は下記に示す水性ガスシフト反応である。
CO + H2O → H2 + CO2 …… (1)
水性ガスシフト反応は、硫化水素を触媒として反応が進行する。即ち、被処理液中の重質油が超臨界水中で熱分解反応によって硫黄及び不安定な低分子を生成する。この硫黄は下記式(2)に示すように、不安定な低分子中の水素と反応して硫化水素を生成する。
S + H2 → H2S …… (2)
硫化水素は下記式(3)に示すように一酸化炭素と反応して活性な水素を発生させ、重質油を軽質油に転換する効率を向上する。また生成した硫黄化合物(COS)は下記式(4)に示すように水と反応して硫化水素に戻り、触媒としてリサイクルされる。
【0016】
CO + H2S → COS + H2 …… (3)
COS +H2O → H2S + CO2 …… (4)
軽質化した生成混合物は生成混合物取出口21から取出され、冷却器26で100℃未満(例えば60℃)に冷却されて気油水分離器23に送られる。分離器23では混合物から軽質油、水、ガスとにそれぞれ分離される。分離器23の内部で生成混合物を静置すると、比重の大きさの順に分離器23の下段に水相、中段に軽質油相、上段にガス相がそれぞれ形成される。ガス−軽質油、軽質油−水の界面の高さを常に一定に維持するために、制御装置29は分離器23外部に設けられた第1、第2レベルゲージ28、32をセンサーとして電磁弁34、37、39を制御する。即ち、ガス量が水又は軽質油の量と比較して増え、ガス−軽質油の界面が上がるときには電磁弁34を開放する。また、反対にガス量が減少し、ガス−軽質油の界面が下がるときには電磁弁37又は39を開放する。分離されたガスは脱硫器36に送られ硫黄吸収剤によってガスに含まれる硫黄分を取除き燃料ガスとして回収される。脱硫器36の底部にはガスと硫黄吸収剤によって生成した硫酸塩が沈降する。この硫酸塩は定期的に脱硫器36から除去される。分離された水にはH2Sが溶解しており、このH2Sが溶解している水はポンプ42から分配弁45を介して反応器14及びミキサー10にそれぞれ送り込まれ、水は反応溶媒として、H2Sは触媒として再利用される。
【0017】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
原油を精製して得られた残油の重質油を試料とした。図1と同様の構造を有する装置を用いて、この重質油を水と混合して重質油エマルジョンの被処理液を調製し、この被処理液を反応器内に供給した後、反応器内にCO/Cモル比率が0.1になるようにCOを供給した。反応器は380℃、25MPaに保つことにより被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油及びガスを反応器内に5分間滞留させた。
なお、実施例2〜4及び比較例1〜2も図1と同様の構造を有する装置を用いて軽質化させた。
【0018】
<実施例2>
CO/Cモル比率が0.3となるようにCOを供給した以外は、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化し、軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<実施例3>
反応器の圧力を35MPaにした以外は、実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の温度条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<実施例4>
実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に30分間滞留させた。
【0019】
<比較例1>
COを供給しない以外は、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<比較例2>
反応器の温度を480℃にした以外は、実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の圧力条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
【0020】
<比較評価>
生成した軽質油の脱硫率、コークスの生成率及び軽質油の炭素一個当たりの水素付着率(以下、H/Cという。)を測定した。実施例1〜4及び比較例1、2の結果を表1に示す。
なお、重質油試料として用いた残油のH/Cは1.47であり、硫黄の含有率は5.6重量%である。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1〜4及び比較例2では一酸化炭素添加のない比較例1と比べると生成した軽質油のH/Cは高くなっており反応器内への一酸化炭素添加が軽質化を促進させることが判る。しかしながら比較例2は反応器内温度を軽質化に最適な温度範囲より高い480℃に設定したために熱分解反応が過剰に起こりコークスを含む残渣が多量に発生した。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、重質油に含まれる硫黄を水性ガスシフト反応の触媒として用い、反応器に特別に一酸化炭素を供給することにより、水性ガスシフト反応を進行させ軽質油への転換効率を高め、更に脱硫と軽質化のプロセスを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重質油の軽質化する装置の構成図。
【符号の説明】
10 ミキサー
14 反応器
19 ポンプ
23 気油水分離器
36 脱硫器
【発明の属する技術分野】
本発明は超臨界水中で重質油を軽質化する方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油成分のうち硫黄を多く含む重質油はその用途が少なく余剰となりつつある。このため重質油を用途の多いクリーンな軽質油に転換する技術が近年注目されている。従来の重質油を軽質化する方法では、高温高圧の水素ガス雰囲気下で、重質油を高価な貴金属やNi、Mo等の金属触媒に接触させて重質油を熱分解するとともに水素化することにより軽質油に転換し、更に脱硫することによりクリーンな軽質油にしている。
しかし上記従来の方法は、重質油の熱分解と水素化工程で多量の水素を必要とするため、第一に水素製造装置が不可欠であること、第二に水素ガスと一緒に供給された水などの水素以外の物質が金属触媒表面に吸着又は反応する被毒現象によって金属触媒の寿命が短いなどの問題点があった。
【0003】
一方、本出願人は重質油を軽質化して可燃性ガスを生成するために、超臨界水中で水と重質油を反応させることにより重質油を軽質化するガス化方法を提案した(特開平11−246876号公報)。この方法は超臨界水が重質油の重合を抑制する作用があり、コークスの生成量が従来と比較して少ないなどの利点を有していることから有望な方法である。このガス化方法では超臨界水中で重質油を軽質化するときに重質油の熱分解反応や一次生成物に水素が添加する反応などが起きる。前者の熱分解反応では重質油が熱分解して低分子化され、軽質油及び可燃性ガスが生成する。後者の水素添加反応では、上記熱分解反応中に生成した一次生成物のラジカルに水素原子が付加し、これにより熱分解種が安定化する。また熱分解しない安定な分子と活性な水素との反応も生じる。これらの反応は個別的に行われず、互いに併発して複合的に行われ、軽質化が進行する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−246876号公報に示される方法は可燃性ガスを生成することを主目的とし、重質油から軽質油に効率よく転換することができなかった。またこの方法では、超臨界水中での熱分解反応により生成した一次生成物の水素添加反応に必要な水素量が少なく、重質油の軽質化を必ずしも十分に行うことができない問題点があった。
本発明の目的は、軽質油への転換効率が高い重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
本発明の別の発明は、脱硫と軽質化のプロセスを同時に行う重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
本発明の更に別の発明は、コークスの生成量を更に抑える重質油の軽質化方法及びその装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、硫黄分を含む重質油と水とを380〜450℃、25〜35MPaに維持された反応器で反応させて重質油を軽質化して軽質油を生成する工程と、軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とにそれぞれ分離する工程とを含む重質油の軽質化方法において、反応器に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給することを特徴とする重質油の軽質化方法である。
請求項1に係る発明では、反応器内に一酸化炭素を圧力供給することにより水性ガスシフト反応を促進させ、十分な転換軽質化を行う。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、分離したガスに硫黄吸収剤を添加してガスに含まれる硫黄分を脱硫する工程を更に含む重質油の軽質化方法である。
請求項2に係る発明では、分離したガスに硫黄吸収剤を加えることにより硫黄分を含まない排ガスを回収することができる。
【0007】
請求項3に係る発明は、図1に示すように、硫黄分を含む重質油と水のエマルジョンを生成するミキサー10と、ミキサー10で生成された重質油エマルジョンに含まれる重質油を380〜450℃、25〜35MPaで軽質化して軽質油を生成する反応器14と、反応器14に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給するポンプ19と、反応器14で生成した軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とに分離する気油水分離器23とを備えた重質油の軽質化装置である。
請求項3に係る発明では、この装置では重質油より生成した混合物をそれぞれ軽質油とガスと水とに分離して、軽質油及びガスをそれぞれ回収する。
【0008】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明であって、図1に示すように、気油水分離器23で分離した水をポンプ42を介して反応器14とミキサー10にそれぞれ供給するように構成された重質油の軽質化装置である。
請求項4に係る発明では、分離した水にはH2Sが溶解しており、このH2Sが溶解している水は反応器14、ミキサー10にそれぞれ送込まれ、水は反応溶媒として、H2Sは触媒として再利用される。
【0009】
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明であって、図1に示すように、分離したガスに硫黄吸収剤を添加してガスに含まれる硫黄分を脱硫する脱硫器36を更に含む重質油の軽質化装置である。
請求項5に係る発明では、分離したガスを硫黄吸収剤により脱硫して回収する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
重質油の軽質化装置は、図1に示すように、水と重質油を混合するミキサー10を有する。ミキサー10により混合された水と重質油はエマルジョンになる。このエマルジョンは重質油100重量%に対して30〜60重量%の水を添加して調製される。このミキサー10は管路11、ポンプ12及び管路13を介して反応器14下部に設けられた被処理液供給口16に接続される。ミキサー10の外周にはヒーター10aが、またその内部には撹拌器10bが設けられる。反応器14は耐熱耐圧製であり両端が封止され少なくとも600℃の温度と40MPaの圧力に耐え得る円筒体に形成される。反応器14の外周部には保温又は加熱のための図示しないヒータが設けられる。
【0011】
本発明の反応器14内の条件は380〜450℃の温度でかつ25〜35MPaの圧力である。好ましくは380〜420℃、25〜30MPaである。380℃未満、25MPa未満では軽質化が不十分であり、450℃を越えるとコークスが多量に生成する不具合が生じる。また35MPaを越えると反応器14に負担がかかり過ぎるようになる。
本発明の特徴ある構成は反応器14下部にCO供給口17が設けられ、この供給口17に管路18を介してブースターポンプ19が接続されたことにある。COは反応器14内と同圧で供給される。供給するCOの量は被処理液中に含まれる炭素に対するモル比率(以下、CO/Cという。)が0.1〜0.4であることが好ましい。
【0012】
反応器14頂部には生成混合物取出口21が、底部には水供給口22が設けられる。取出口21には気油水分離器23が管路24を介して接続される。管路24の途中には冷却器26が設けられる。気油水分離器23は縦長の密閉したチャンバーであり、上段、中段及び下段にそれぞれガス取出口23a、軽質油取出口23b、水取出口23cが設けられる。分離器23の外壁には、ガス取出口23aと軽質油取出口23bの間に第1パイプ27が接続される。パイプ27の途中には第1レベルゲージ28が設けられ、第1レベルゲージ28は制御装置29の制御入力に接続される。また軽質油取出口23bと水取出口23cの間に第2パイプ31が接続される。パイプ31の途中には第2レベルゲージ32が設けられ、レベルゲージ32は制御装置29の制御入力に接続される。制御装置29の制御出力は後述する電磁弁34、37、39にそれぞれ接続される。また第1パイプ27は分離器23の上段と中段を連通するように、また第2パイプ31は分離器23の中段と下段を連通するようにそれぞれ設けられる。
【0013】
ガス取出口23aは管路33、電磁弁34を介して脱硫器36下部に接続される。軽質油取出口23bは電磁弁37に接続される。分離器23の底部に設けられた水取出口23cは、管路38、電磁弁39、管路41を介してポンプ42に接続され、ポンプ42は管路43、分配弁45、予熱器44を介して反応器14の底部に設けられた水供給口22に接続される。分配弁45とミキサー10との間には管路46が接続される。
脱硫器36の底部には硫黄吸収剤を供給するための供給口46が設けられ、脱硫器36上部には排出管47が設けられ、この排出管47には減圧弁48が接続される。硫黄吸収剤はNaOHやKOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2等を代表とするアルカリ水酸化物が含まれる水溶液、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のアルキルアミン類が含まれる水溶液等が挙げられる。
【0014】
このように構成された装置では、重質油と水とを100℃未満(例えば80℃)、0.1〜1MPa(例えば0.5MPa)に維持されたミキサー10で混合し、エマルジョン状の被処理液を調製する。この被処理液をミキサー10から管路11、ポンプ12及び管路13を介して被処理液供給口16より反応器14内に供給する。またCOはブースターポンプ19を介して反応器内の圧力と同圧でCO供給口17より反応器14内に供給する。反応器14内の温度を380〜450℃(例えば400℃)、圧力を25〜35MPa(例えば25MPa)の水の超臨界状態に保つと、被処理液中の重質油は軽質化するとともにCO、H2、CH4、CO2等のガスが発生する。即ち、被処理液中の重質油は熱分解するとともにこの分解により生成した一次生成物に水素が付加される。これにより被処理液から軽質油と水とガスとからなる混合物が生成される。
【0015】
この生成反応は下記に示す水性ガスシフト反応である。
CO + H2O → H2 + CO2 …… (1)
水性ガスシフト反応は、硫化水素を触媒として反応が進行する。即ち、被処理液中の重質油が超臨界水中で熱分解反応によって硫黄及び不安定な低分子を生成する。この硫黄は下記式(2)に示すように、不安定な低分子中の水素と反応して硫化水素を生成する。
S + H2 → H2S …… (2)
硫化水素は下記式(3)に示すように一酸化炭素と反応して活性な水素を発生させ、重質油を軽質油に転換する効率を向上する。また生成した硫黄化合物(COS)は下記式(4)に示すように水と反応して硫化水素に戻り、触媒としてリサイクルされる。
【0016】
CO + H2S → COS + H2 …… (3)
COS +H2O → H2S + CO2 …… (4)
軽質化した生成混合物は生成混合物取出口21から取出され、冷却器26で100℃未満(例えば60℃)に冷却されて気油水分離器23に送られる。分離器23では混合物から軽質油、水、ガスとにそれぞれ分離される。分離器23の内部で生成混合物を静置すると、比重の大きさの順に分離器23の下段に水相、中段に軽質油相、上段にガス相がそれぞれ形成される。ガス−軽質油、軽質油−水の界面の高さを常に一定に維持するために、制御装置29は分離器23外部に設けられた第1、第2レベルゲージ28、32をセンサーとして電磁弁34、37、39を制御する。即ち、ガス量が水又は軽質油の量と比較して増え、ガス−軽質油の界面が上がるときには電磁弁34を開放する。また、反対にガス量が減少し、ガス−軽質油の界面が下がるときには電磁弁37又は39を開放する。分離されたガスは脱硫器36に送られ硫黄吸収剤によってガスに含まれる硫黄分を取除き燃料ガスとして回収される。脱硫器36の底部にはガスと硫黄吸収剤によって生成した硫酸塩が沈降する。この硫酸塩は定期的に脱硫器36から除去される。分離された水にはH2Sが溶解しており、このH2Sが溶解している水はポンプ42から分配弁45を介して反応器14及びミキサー10にそれぞれ送り込まれ、水は反応溶媒として、H2Sは触媒として再利用される。
【0017】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
原油を精製して得られた残油の重質油を試料とした。図1と同様の構造を有する装置を用いて、この重質油を水と混合して重質油エマルジョンの被処理液を調製し、この被処理液を反応器内に供給した後、反応器内にCO/Cモル比率が0.1になるようにCOを供給した。反応器は380℃、25MPaに保つことにより被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油及びガスを反応器内に5分間滞留させた。
なお、実施例2〜4及び比較例1〜2も図1と同様の構造を有する装置を用いて軽質化させた。
【0018】
<実施例2>
CO/Cモル比率が0.3となるようにCOを供給した以外は、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化し、軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<実施例3>
反応器の圧力を35MPaにした以外は、実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の温度条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<実施例4>
実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に30分間滞留させた。
【0019】
<比較例1>
COを供給しない以外は、実施例1と同一の反応条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
<比較例2>
反応器の温度を480℃にした以外は、実施例1と同様にCOを供給し、実施例1と同一の圧力条件で被処理液を軽質化した。軽質化により生成した軽質油を反応器内に5分間滞留させた。
【0020】
<比較評価>
生成した軽質油の脱硫率、コークスの生成率及び軽質油の炭素一個当たりの水素付着率(以下、H/Cという。)を測定した。実施例1〜4及び比較例1、2の結果を表1に示す。
なお、重質油試料として用いた残油のH/Cは1.47であり、硫黄の含有率は5.6重量%である。
【0021】
【表1】
【0022】
実施例1〜4及び比較例2では一酸化炭素添加のない比較例1と比べると生成した軽質油のH/Cは高くなっており反応器内への一酸化炭素添加が軽質化を促進させることが判る。しかしながら比較例2は反応器内温度を軽質化に最適な温度範囲より高い480℃に設定したために熱分解反応が過剰に起こりコークスを含む残渣が多量に発生した。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、重質油に含まれる硫黄を水性ガスシフト反応の触媒として用い、反応器に特別に一酸化炭素を供給することにより、水性ガスシフト反応を進行させ軽質油への転換効率を高め、更に脱硫と軽質化のプロセスを同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の重質油の軽質化する装置の構成図。
【符号の説明】
10 ミキサー
14 反応器
19 ポンプ
23 気油水分離器
36 脱硫器
Claims (5)
- 硫黄分を含む重質油と水とを380〜450℃、25〜35MPaに維持された反応器(14)で反応させて前記重質油を軽質化して軽質油を生成する工程と、
前記軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とにそれぞれ分離する工程とを含む重質油の軽質化方法において、
前記反応器(14)に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給することを特徴とする重質油の軽質化方法。 - 分離したガスに硫黄吸収剤を添加して前記ガスに含まれる硫黄分を脱硫する工程を更に含む請求項1記載の重質油の軽質化方法。
- 硫黄分を含む重質油と水のエマルジョンを生成するミキサー(10)と、
前記ミキサー(10)で生成された重質油エマルジョンに含まれる重質油を380〜450℃、25〜35MPaで軽質化して軽質油を生成する反応器(14)と、
前記反応器(14)に一酸化炭素を25〜35MPaの圧力で供給するポンプ(19)と、
前記反応器(14)で生成した軽質油とガスと水を含む混合物から軽質油とガスと水とに分離する気油水分離器(23)とを備えた重質油の軽質化装置。 - 気油水分離器(23)で分離した水をポンプ(42)を介して反応器(14)とミキサー(10)にそれぞれ供給するように構成された請求項3記載の重質油の軽質化装置。
- 分離したガスに硫黄吸収剤を添加して前記ガスに含まれる硫黄分を脱硫する脱硫器(36)を更に含む請求項3記載の重質油の軽質化装置。
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