JP2007051223A - 重質油の改質方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】重質油を超臨界水反応又は亜臨界水反応(超臨界水反応等)をさせてエマルションとする反応工程を含んで、重質油から低粘度の改質油を得る方法において、低粘度化等の改質レベルの向上が期待できる重質油の改質方法及び装置を提供する。
【解決手段】重質油及びpH調節剤を添加することによりpH7.5〜12に調節された超臨界水反応等の原料水を、連続式の反応器16内へ圧送して供給され、超臨界水反応等によりエマルションを生成する反応工程を含む、重質油から低粘度の改質油を連続的に得る重質油の連続改質方法及び装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、重質油から低粘度の改質油を得る方法及び装置に関し、特に、重質油の中で相対的に高比重でありオイルサンド等の改質に好適な重質油の改質方法及び装置に係る。ここで、重質油とは、オイルサンド、重質原油、減圧残渣油(アスファルト)等を含み、それ自体としては、低粘度化等の処理をしなければ、有効利用が困難な重質炭化水素をいう。
そして「重質油」は、石油や石炭と同じ化石資源であって、その埋蔵量は、現状の石油に匹敵すると言われている。このため、次世代の石油系資源として着目されつつある。
しかし、重質油は、水あめのように粘り気があり(高粘度)、また、硫黄含量も高くて、そのまま利用(使用)することができないものが多い。
したがって、低粘度化(分解)及び脱硫等の改質を行って有用物化する必要がある。
その手法として、重質油を超臨界水反応又は亜臨界水反応をさせて、低粘度化(分解)を図ることにより、重質油から低粘度の改質油を得る技術が提案されている。
図1に超臨界水を用いた重質油分解モデル図を示す。
(a)超臨界水又は亜臨界水のエネルギーにより、重質油の分子間結合を分解する。
(b)低粘度化した油分(改質油)が生成するとともに、硫黄分が水に溶け込み油分から離脱する。
(c)エマルションを油水分離して水分を除去することで、脱硫黄された油分を得る。
例えば、特許文献1には、「重質油を反応容器内で超臨界水を含む高温熱水と接触、反応せしめ、より低粘度の油に軽質化」(特許請求の範囲等)する技術が記載され、温度条件は、300〜400℃とし、供給水は必要に応じてアルカリ溶液を使用できる旨記載されている(段落0006参照)。
また、得られた軽質油(改質油)の粘度(50℃)は1500〜1600cP(1.5〜1.6Pa・s)と記載されている(段落0017)。
特許文献2には、「重質油と水とアルカリを混合したエマルジョンを水の超臨界状態の温度及び圧力に維持することにより前記重質油を分解して、炭化水素系ガス、油分、金属酸化物、アルカリ塩及び超臨界水を生成する超臨界反応工程と、
前記超臨界反応工程で得られた分解生成物を水の亜臨界状態又はそれ以下の温度及び圧力に維持して前記分解生成物から炭化水素系ガスと軽質油分と水分を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程で抽出された炭化水素系ガスと軽質油分と水分を気液分離して炭化水素系ガスと軽質油分及び水分とに分離する気液分離工程と、
前記気液分離工程で分離された軽質油分及び水分を軽質油と水に分離する油水分離工程とを含む重質油の発電設備用流体燃料への転換方法。」(請求項1から引用)が記載されている。
なお、本文献におけるアルカリの添加は、硫黄酸化物との反応を予定したものである(段落0010)。
さらに、特許文献3には「有機系高分子およびこれに結合した硫黄成分を含有した油である劣悪燃料にアルカリ水溶液を添加する水溶液添加工程と、
該水溶液添加工程後に前記劣悪燃料を高温高圧状態にして水熱反応を起こさせ前記有機系高分子を分解する水熱反応処理工程とを備えていることを特徴とする劣悪燃料の品質改善方法。」(請求項1から引用)が記載されている。
本文献におけるアルカリ水溶液は上記特許文献2と同様、脱硫を目的としている(段落0017)。
特開平6−279763号公報 特開2000−109850号公報 特開2000−109851号公報
本発明は、重質油を超臨界水反応又は亜臨界水反応(以下「超臨界水反応等」という。)をさせてエマルションとする反応工程を含んで、重質油から低粘度の改質油を得るに際して、低粘度化等の改質レベルの向上が期待できる新規な重質油の改質方法及び装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意開発・研究に努力する過程で、上記反応工程における供給水のpH(水素イオン指数)をアルカリ性域の中間域に調節して行なえば、重質油の超臨界水反応等が促進されて、高度のエマルション化(低粘度化)が進むことを見出して下記構成の本発明に想到した。
連続式の反応器内へ圧送して供給される重質油の超臨界水反応等によりエマルションが生成される反応工程を含んで、重質油から低粘度の改質油を連続的に得る方法において、
前記原料水のpHをpH7.5〜12、望ましくは、pH8.0〜11に調節して反応器へ供給することを特徴とする。
上記重質油の改質方法の場合、重質油のエマルション化が高度に進み、その結果該エマルションを油水分離した場合、後述の実施例に示す如く、改質が進み、低粘度の良質な改質油(軽質油)を得ることができる。また、連続式の反応容器で連続改質を行なうため、バッチ式に比して、常に温度及び圧力を超臨界反応等の領域に制御でき、生産性が良好である。
なお、本発明の反応工程で生成されたエマルションは、油水分離をしなくても、そのまま燃料等に使用できる。
そして、上記原料水のpH調節を、塩基電離指数pKb(−logKb)=3〜5.5のアミン類又はアンモニアから1種又は2種以上選択して行なうことが望ましい。
これらの塩基電離指数のアミン類は、pHを上記特定範囲に安定調節し易くて、超臨界水反応等によるエマルション化が促進される。
また、アミン類又はアンモニアは、苛性ソーダ(NaOH)の場合の如く、反応容器及びその配管を特殊金属材料で形成する必要がない。アミン類又はアンモニアは、苛性ソーダの如く、高温・高圧水中で配管腐食性が高くないためである。
さらに、アミン類は、NaOHに比して水素含有量が大きく、反応工程を経て得られる改質油(軽質油)を高品質化(低粘度化)する作用及び脱硫効果の増大が期待できる。すなわち、不飽和・芳香族炭化水素に水素添加が行なわれ易く、かつ、硫黄成分を硫化水素として系外に排出し易い。
通常、上記反応工程で生成されたエマルションは、油相と水相とに分離させる油水分離工程を経て油相から改質油を得る。
その反応工程で、重質油と水の混合比(質量比)を前者/後者=1/1〜1/10とするとともに、油水分離工程で、強電解質の無機塩を解乳化剤(エマルションブレーカ)として添加することが望ましい。
この場合、生成エマルションは、水中油滴(O/W)型の疎水コロイドとなり、少量の無機塩の添加で、容易に凝集沈殿を起こすため、効率的な油水分離が可能である。
上記分離された無機塩溶解水は、さらに、無機塩回収工程で水を分離させて無機塩溶解水から無機塩を回収し、該無機塩を油水分離工程の無機塩として再利用するとともに、分離水を反応工程の原料水として再利用することが望ましい。
上記構成の重質油の改質方法に使用する重質油改質装置は、下記構成となる。
連続式の反応器内へ圧送して供給される重質油を、超臨界水反応等をさせることにより
重質油から低粘度の改質油を得る装置であって、
pH調節手段を備えた原料水供給装置と、
重質油を、連続的に超臨界水反応等させてエマルションが生成される反応工程に使用する連続式の反応器と、
生成されたエマルションを、強電解質の無機塩を添加して油相と無機塩溶解水である水相とに分離し、油相から改質油を得る油水分離工程に使用する油水分離器と、
無機塩溶解水から水を分離させて無機塩を回収する無機塩回収工程に使用する無機塩回収器と、を備えていることを特徴とする。
上記重質油の改質装置において、さらに、無機塩回収器の分離水を反応器に原料水として供給可能な原料水の循環手段を備えていることが望ましい。
本発明の重質油の改質方法は、重質油のエマルション化が高度に進み、その結果該エマルションを油水分離した場合の改質も進行して、低粘度の良質な改質油(軽質油)を得ることができる。また、本発明の装置は、方法の効果に加えて、連続式の反応容器で連続改質を行なうため、バッチ式に比して、常に温度及び圧力を超臨界反応等の領域に制御でき、生産性が良好となる。
以下、本発明の実施形態を図3に基づいて、詳細に説明する。
本実施形態は、連続式の反応器16内へ圧送して供給される重質油を超臨界水反応又は亜臨界水反応(以下「超臨界水反応」)をさせてエマルションが生成される反応工程と、該反応工程で生成させたエマルションを油水分離して改質油を得る油水分離工程とを含むものである。
上記反応工程において、超臨界水反応等の原料水を、特定範囲のアルカリ性に調節して反応器16へ供給する。
ここで、超臨界水、亜臨界水の圧力・温度範囲を、図2に示す。
すなわち、超臨界水とは、温度及び圧力の双方が、水の臨界温度(374℃)・臨界圧力(22MPa)より上の状態にある水をいい、亜臨界水とは、温度が臨界温度(374℃)より上の状態にあるが、圧力が臨界圧力(22MPa)より下の状態にある水をいう。
超臨界水反応等をさせるには、例えば、反応器内の温度・圧力を、温度:374〜475℃(望ましくは430〜450℃)かつ圧力1〜40MPa(望ましく25〜40MPa)の範囲で、重質油の要求改質特性及び反応器の最適運転条件に応じて適宜設定する。
上記アルカリ性の調節範囲は、pH7.5〜12、望ましくはpH8〜11、さらに望ましくは9.5〜10.5とする。
原料水のpHを、上記範囲にすることにより、エマルション化が特に良好に進むことを本発明者らは、確認している。
pHが12を超える強アルカリ性となると反応器の腐食性が高くなり、逆にpH7.5未満の中性に近くなると、エマルション化が進行せず腐食性も高くなる。
ここで、pH調節剤としては、塩基電離指数pKb(−logKb)=3〜5.5、望ましくは、4〜5のアミン類又はアンモニアから選択することが望ましい。例えば、アンモニア(pKb:4.75)以外に、メチルアミン(pKb:3.75)、ジメチルアミン(pKb:4.75)、トリメチルアミン(pKb:4.20)、アリルアミン(pKb:4.24)、エチレンジアミン(pKb:4.24)、ベンジルアミン(pKb:4.62)等を挙げることができる。なお、各アミン類のpKbは、化学大辞典編集委員会編「化学大辞典1」(昭和37年)共立出版p.312から引用したものである。
そして、重質油と原料水の混合比(質量比)は、エマルション化可能であれば、特に限定されず、重質油が過剰であってもよい。本実施形態では、後述の油水分離の効率化の観点から、水中油滴(O/W)型エマルションを生成させやすい、水過剰、すなわち、重質油/水=1/10〜1/1、望ましくは1/7〜1/1.5、さらに望ましくは1/5〜1/2とする。
ここで、重質油、原料水およびアミン類の混合は、通常、重質油及び原料水を、それぞれ、重質油供給配管12、原料水供給装置の一部を構成する原料水供給配管14で連続式の反応器(水の臨界圧・臨界温度以上とされている)16に、所定の混合比となるように流量比を調節して連続供給をする。このとき、当然、各供給配管12、14は、反応器16へ重質油及び原料水を連続的に圧送するために加圧ポンプ及び加熱器(熱交換器)(共に図示せず。)を備えている。
そして、原料水供給配管14の途中に(加圧ポンプの前・後を問わない。)、pH調節剤添加配管18とpH調節剤タンク19とからなるpH調節手段を接続して、所定のアルカリ性(pH)となるようにpH調節剤を添加する。この構成の場合、pH調節が容易となる。
そして、上記反応器16内の通過時間、すなわち、超臨界水反応等の時間は、それらの反応条件及び要求分解レベルにより異なるが、通常、10〜60min、望ましくは20〜40minとする。
この超臨界水反応等の時間調整は、反応器16内の反応物(重質油/原料水混合物)の流速により通過時間を調節することにより可能となる。また、各加圧ポンプ・冷却器(熱交換器)20及び反応器16の加熱器(図示せず)の出力を適宜調節することにより、設定条件の、超臨界水又は亜臨界水とすることができる。
上記反応工程で生成したエマルション(O/W型)は、反応器16から、冷却器20及び圧力調節弁22を備えたエマルション輸送配管24を介して、エマルションタンク(貯留タンク)26に移送させる。
該貯留タンク26から、随時、油水分離タンク28にエマルションを移送し、強電解質の無機塩(エマルションブレーカ)を添加し、所定時間(60min〜72h)放置して、エマルション粒子相互を凝結させて油相(上相)と水相(下相)に浮上分離させて、油水分離を行なう。このとき、慣用の油水分離装置(オイルセパレータ)が使用可能である(「化学工学協会編「化学工学便覧 改定四版」(昭53−10−25)丸善、p1102〜1103、図14・53、14・54参照)。
ここで、強電解質の無機塩としては、例えば、NaCl又はKClを好適に使用できる。この添加量は、エマルション100部に対して、重質油/原料水の混合比率により異なるが、1〜10部、望ましくは4〜6部とする。
そして、油水分離タンク28の底部から水相(無機塩溶解水)を抜き出し、無機塩回収器30に移送する。
そして、無機塩回収器30では、蒸発又はろ過等の慣用手段で、水を無機塩から分離させて無機塩を回収するとともに、当該無機塩回収後の分離水は、蒸発の場合は凝縮させて、ろ過の場合はそのまま、循環手段としての循環配管32を介して水熱反応の水供給配管14に戻して再度水熱反応に利用する。
次に、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明する。
図3に示す流れ図において、重質油/供給水=2/10の比率となるように重質油供給配管12及び原料水供給配管14の流量を調節しながら、連続式の反応器16にpH調整剤添加配管18を経てNH31000mg/Lを供給し、温度:430℃×圧力:30MPa×反応時間:20minの条件で超臨界水反応を行なった。なお、重質油としては、比重:1.03のものを使用した。
そして、生成したエマルション(O/W型)を貯留タンク26に移送し、該貯留タンク26からエマルションを油水分離タンク28に移し、エマルション100部に対して無機強電解質としてNaCl5部を添加して、300min放置して、油相を水相から浮上分離させた。
そして、上相である油相(改質油・軽質油)を取り出した。こうして得た改質油(軽質油)は、動粘性率(動粘度 50℃):20×10-4m2/s(20cSt)であった。
本発明を利用する超臨界水反応等による重質油の分解モデルを示す説明図である。 超臨界水および亜臨界水の範囲を示す水相図(水の温度/圧力関係図)である。 本発明の重質油の改質方法における一実施形態を示す説明用概念流れ図(フローシート)である。
符号の説明
12・・・重質油供給配管
14・・・原料水供給配管
16・・・連続式反応器
18・・・pH調節剤添加配管
19・・・pH調節タンク
26・・・エマルションタンク(貯留タンク)
28・・・油水分離タンク
30・・・無機塩回収器
32・・・原料水の循環配管

Claims (8)

  1. 連続式の反応器内へ圧送して供給される重質油を超臨界水反応又は亜臨界水反応(以下「超臨界水反応等」という。)をさせてエマルションが生成される反応工程を含んで、重質油から低粘度の改質油を連続的に得る方法において、
    前記超臨界水反応等の原料水のpHを、pH7.5〜12に調節して前記反応器に供給することを特徴とする重質油の改質方法。
  2. 前記原料水のpHを、pH8〜11に調節して前記反応器に供給することを特徴とする請求項1記載の重質油の改質方法。
  3. 前記原料水のpH調節を、塩基電離指数pKb(−logKb)=3〜5.5のアミン類又はアンモニアから選択される1種又は2種以上を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の重質油の改質方法。
  4. さらに、前記エマルションを、油相と水相と分離する油水分離工程を経て前記油相から改質油を回収することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重質油の改質方法。
  5. 前記反応工程で、前記重質油と前記原料水との混合比(質量比)を前者/後者=1/1〜1/10とし、かつ、前記油水分離工程で、強電解質の無機塩を解乳化剤として添加することを特徴とする請求項4記載の重質油の改質方法。
  6. 前記油水分離工程における改質油回収後の無機塩溶解水を、さらに、無機塩回収工程へ送り、該無機塩回収工程で水を分離させて無機塩を回収し、該無機塩を前記油水分離工程の解乳化剤として再利用するとともに、前記分離水を前記反応工程の原料水として再利用することを特徴とする請求項5記載の重質油の改質方法。
  7. 連続式の反応器内へ圧送して供給される重質油を、超臨界水反応等をさせることにより重質油から低粘度の改質油を得る装置であって、
    pH調節手段を備えた原料水供給装置と、
    重質油を、連続的に超臨界水反応等をさせてエマルションが生成される反応工程に使用する連続式の反応器と、
    生成されたエマルションを、強電解質の無機塩を添加して油相と無機塩溶解水である水相とに分離し、油相から改質油を得る油水分離工程に使用する油水分離器と、
    無機塩溶解水から水を分離させて無機塩を回収する無機塩回収工程に使用する無機塩回収器と、
    を備えていることを特徴とする重質油の改質装置。
  8. さらに、前記無機塩回収器で生成する分離水を反応器に原料水として供給可能な原料水の循環手段を備えていることを特徴とする請求項7記載の重質油の改質装置。
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