JP4361459B2 - 射出成形方法及び射出成形機の金型温度調整装置 - Google Patents

射出成形方法及び射出成形機の金型温度調整装置 Download PDF

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Description

本発明は、金型の温度を制御して射出充填成形を行う射出成形機の射出成形方法及び射出成形機の金型温度調整装置に関し、特に、金型の高温時に射出充填を行うことにより成形品の外観面に皺やひけ、そり等の欠陥が生じないようにするための金型温度制御方法及び装置に関する。
射出成形機の射出充填工程において、金型の温度が低い状態にあると、該金型のキャビティ内に充填された溶融樹脂の表面が急速に固化する。この場合、成形品に対する金型のキャビティ面の転写が不十分となり、また、成形品表面に、ウエルドライン、シルバーと呼ばれる欠陥が生じることがある。
該欠陥を防止するために、図5の射出充填、保圧、冷却、型開閉工程に示すように、金型の媒体通路に、型開き後から樹脂の充填完了までの間に熱媒体を供給し、樹脂の充填完了後から型開きまでの間に冷媒体を供給するようにして、予め樹脂の熱変形温度以上の温度まで加熱した金型に溶融樹脂を充填して樹脂表面の固化を遅らせ、樹脂の充填後、金型を樹脂のガラス転移温度、又は、熱変形温度以下まで冷却してから型開きを行う成形方法が提案されている。(例えば、特許文献1)
しかし、このような成形方法は、成形工程サイクルが長くなりがちであるので、金型の温度を急速に上下させる温度制御方式を導入して、成形工程サイクルを短くする方法が種々提案されている。この射出成形方法においては、通常、射出スクリュの射出前進端近辺の位置で充填から保圧に切り換え、保圧時間はタイマーで調整されるが、金型の温度変化の速度変動によって、ばり、ひけ等の欠陥を生じる。
また、上記の射出成形機用の金型加熱冷却切換手段を用いて、安定して外形精度や内部均質性が高くて内部歪のない優れた成形品(光学部品等)を成形できる射出成形方法として、下記の方法が提案されている。
金型のキャビティに樹脂が充填されるときのキャビティの充填圧力と射出成形機のシリンダ圧力との比が0.65〜0.85の条件でキャビティへの樹脂の充填と充填後シリンダの圧力を一定に保つ第1の保圧とを行った後、温度をゆっくり下げ、キャビティの充填圧力がキャビティに樹脂を充填したときの圧力の0.95〜1.20倍以上で且つ、該充填圧力と前記シリンダ圧力との比が0.50〜0.60であるようにシリンダ圧力を上げて該シリンダ圧力を少なくともキャビティ表面温度が樹脂のガラス転移温度以下になるまで一定に保つ第2の保圧とを行う射出成形方法。(例えば、特許文献2)
図6にこの射出成形方法で、樹脂材料にガラス転移温度103℃のポリスチレンを使って厚手の光学部品を成形するときの、射出後の保圧圧力、キャビティ表面温度の1例を示している。図中、2点鎖線で示したものは40℃の金型に210℃のポリスチレンを射出充填したときのキャビティ表面圧力とキャビティ表面温度を示し、実線は金型を予め170℃に加熱し、同じポリスチレンを射出充填したときのキャビティ表面圧力とキャビティ表面温度を示したグラフである。
特開昭60−54828号公報(第2図) 特許第3385491号公報(図2)
特許文献1に紹介された従来例の射出充填成形方法は、既述のように、射出充填、保圧の工程の切り換えは、金型温度に関係なく、射出スクリュの位置で、保圧時間はタイマーで夫々決められるので、金型の温度変化速度が変動したときは、バリ、ひけ等の欠陥を生じる虞がある。
特許文献2に紹介された射出充填成形方法は厚肉成形品のケースでキャビティ内の樹脂圧力をガラス転移温度Tg以下まで保持する場合である。上述の特許文献2に記載の加熱冷却切換装置によれば、金型が設定温度に達するまでに長い時間を要するため、成形サイクルが長くなる不具合が発生する。 また非外観面を有する成形品を成形するとき、外観面に対応する金型キャビティ側のみを加熱冷却するとともに圧力を保持すると、成形品の外観面でひけやバリが生じ、また、外観面側と非外観面側との温度差により成形品全体がそるという問題があり、金型の温度調整は、金型の重量、熱媒体の温度、流速、樹脂材料等を勘案して行う必要があり、射出条件は、金型温度変化に関係なく個別に行われ、従来は試行錯誤と作業者の経験および勘に頼って調整していた。そのため最適な調整を行うことが困難であるとともに、成形不良を低減することが困難であった。
本発明は、このような問題点を解決するために提案されたものであり、金型へ送る高温熱媒体と低温熱媒体の切り換えポイントを適正に捕らえて、成形品の表面の転写性を保持して、バリ、ひけ等の成形不良を防止すると共に、ウエルドライン、シルバー等を無くし、成形サイクルの無駄を減らすような、射出成形方法および射出成形機の金型温度調整装置を提供することを目的としている。
本発明は、以下の各手段を以て課題の解決を図る。
(1)第1の手段の射出成形機の射出成形方法は、金型キャビティを、充填する熱可塑性樹脂の熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱して射出充填成形する成形方法において、射出充填工程のとき、型締め後、金型キャビティの温度が上述の温度(HDT、又はTg)以上になっていることを確認して射出動作を開始し、射出スクリュが設定された充填完了位置に到達したこと、及び金型キャビティが所定温度に到達したことを検知確認して射出充填工程を完了し、保圧工程に切換え、保圧工程は設定保圧時間、及び/又は、設定金型キャビティ温度によって完了することを特徴とする。
(2)第2の手段の射出成形機の射出成形方法は、上記第1の手段の射出成形方法において、射出スクリュが設定された充填完了位置に到達した後、射出スクリュを停止させ、金型温度が予め設定された温度(熱変形温度HDT+α、またはガラス転移温度Tg+α)に到達するまで、射出スクリュ停止位置を保持することを特徴とする。
(3)第3の手段の射出成形機の射出成形方法は、上記第1及び第2の手段の射出成形方法において、金型キャビティ面の複数箇所の温度を複数の温度センサで検出し、検出値が設定値に到達したか否かを、金型キャビティ面における温度センサの位置を考慮し、個別の温度センサの検出値、或いは複数の温度センサの平均検出値を選択して判定できることを特徴とする。
(4)第4の手段の射出成形機の射出成形方法は、上記第1の手段〜第3手段の射出成形方法において、充填中は徐冷、保圧時は急冷になるように冷却水量を多段制御することを特徴とする。
(5)第5の手段の射出成形機の射出成形方法は、上記第1の手段〜第4手段の射出成形方法において、金型温度が所定の設定温度に到達したら金型の樹脂入口のゲートバルブを閉じて冷却工程へ移行するようにしたことを特徴とする。
(6)第6の手段の射出成形機の射出成形方法は、上記第1の手段〜第5手段の射出成形方法において、金型キャビティの非外観面側のキャビティ面温度を、加熱冷却する外観面側のキャビティ面温度の下限温度(TL)以上で樹脂の熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)以下の一定温度に調整するようにしたことを特徴とする。
(7)第7の手段の射出成形機の金型温度調整装置は、金型に設けられた熱媒体通路に所定温度の高温熱媒体と低温熱媒体とを選択的に流すことによって該金型の温度制御を行う射出成形機の金型温度調整装置において、金型キャビティ温度を熱可塑性樹脂の熱変形温度、若しくはガラス転移温度以上に加熱する温度制御手段と、金型キャビティ内面複数箇所の温度を検出する複数の温度センサと、温度センサで検出し、検出値が設定値に到達した場合の判定を、個別の温度センサの検出値か、或いは複数の温度センサの平均検出値かを選択する論理回路手段及び論理回路手段の選択に従って熱媒体の流れを切換制御する熱媒体切換手段とで構成され、上記第1の手段に記載の方法により、射出充填成形することを特徴とする。
(8)第8の手段の射出成形機の金型温度調整装置は、上記第7の手段に記載する金型温度調整装置に射出スクリュのストローク位置の検出手段を備え、上記第2の手段に記載する射出成形方法によって射出充填成形を行うことを特徴とする。
(9)第9の手段の射出成形機の金型温度調整装置は、上記第7及び第8の手段に記載する金型温度調整装置の金型の溶融樹脂供給通路に、ゲートバルブを設置し、上記第5の手段に記載する射出成形方法によって射出充填成形を行うことを特徴とする。
(10)第10の手段の射出成形機の金型温度調整装置は、上記第7〜第9の手段に記載する金型温度調整装置の熱媒体配管から非外観面側の金型の熱媒体配管を分離し、該非外観面側の金型の熱媒体配管に専用の温調器を連結し、該温調器及び上記第7の手段の金型温度調整装置を用い、上記第6の手段に記載する方法により金型温度を制御して射出充填成形することを特徴とする。
(11)第11の手段の射出成形機の金型温度調整装置は、上記第7〜第10の手段に記載する金型温度調整装置の外観面側金型の熱媒体通路に流れる熱媒体量を多段制御する熱媒体量制御手段を備え、上記第4に記載の方法で冷却水量を多段制御することを特徴とする。
請求項1及び請求項7に係わる発明は、成形機の金型温度調整に上記第1及び第7の手段を採用しているので、金型に充填された樹脂は(保圧工程で)加圧されたまま冷却されて収縮を防止し、熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)を通過して同温度以下の温度になるので、成形品の変形を抑制することができる。
請求項2及び請求項8に係わる発明は、成形機の金型温度調整に上記第2及び第8の手段を採用しているので、型温が予め設定された温度(HDT+α、またはTg+α)に到達するまで、射出スクリュは止まった状態で、樹脂は金型内で流動停止となり、キャビティ面に接触している樹脂が固化し始め、スキン層が生成される。その段階で保圧工程に移行するので、加圧による金型パーティング面への溶融樹脂漏れを抑制し、成形品にバリが生じることを防ぐことができる。
請求項3に係わる発明は成形機の金型温度調整に、上記第3の手段を採用しているので、金型に樹脂を射出充填したとき、スプルーの出口からの距離や肉厚の差、成形品の形状によるキャビティ面の温度差を平均化し、金型温度検出の優先位置、或いは金型温度の最低温度等を選択して設定値に到達の可否を判定することができる。
請求項4及び請求項11に係わる発明は成形機の金型温度調整に、上記第4及び第11の手段の金型調整方法を採用しているので、樹脂充填中は徐冷して充填中は金型が冷え過ぎないように、保圧時は急冷するようにして成形サイクル時間を短くすることができる。
請求項5及び請求項9に係わる発明は成形機の金型温度調整に、上記第5及び第9の手段を採用しているので、樹脂供給通路が閉じられ、成形品にひけが生じないようにする効果がある。
請求項6及び請求項10に係わる発明は成形機の金型温度調整に、上記第6及び第10の手段を採用し、非外観面側の金型温度を、外観面側のキャビティの下限温度(TL)以上で樹脂の熱変形温度HDT、又はガラス転移温度Tg以下の一定温度にしてあり、成形品の冷却中に金型は外観面側の温度と非外観面側の温度の温度差により、そりが低減し、外観面側の下限温度が非外観面側より低いことから、外観面側のスキン層が先にできるので、成形品外観面のひけを防止する効果がある。
本発明の射出成形方法及び射出成形機の金型温度調整装置の実施形態は、射出成形機の成形工程中に、外観面側金型(意匠面側金型)は加熱、冷却し、非外観面側金型(コア側金型)は一定温度に調整し、熱媒体に水を使用した例であり、以下、図に基づいて説明する。図1は射出成形機と金型と金型温度調整装置を示す模式図、図2は図1の射出成形機と金型温度調整装置の温度とを制御する制御系統を示すブロック図、図3は本発明の金型温度制御方法に従って制御された図1の射出成形機の各工程に対する射出スクリュストローク、射出圧力、金型温度を示すグラフ(金型温度特性曲線)の一例、図4は図3の金型温度特性曲線を示すグラフに若干の制御要素を加えた一部拡大図である。
図1により射出成形機1の型締装置と射出ユニット10と金型温度調整装置30の構成について説明する。 まず、型締装置の構成を説明する。 基台18に固定ダイプレート2が固設され、固定ダイプレート2に外観面側金型(意匠面側金型)4が取付けられ、外観面側金型4に対向する非外観面側金型(コア側金型)5は、基台18に敷設されたガイドレール19にガイドされ、リニアベアリングを介して固定ダイプレート2に対向して移動する可動ダイプレート3に取付けられている。可動ダイプレート3の移動(金型開閉移動)には油圧駆動の油圧シリンダ22が用いられる。
固定ダイプレート2に内蔵する複数の型締油圧シリンダ2a内で摺動するラム16に直結し、片端部にねじ溝を有する複数のタイバー15が可動ダイプレート3の貫通孔を貫通し、可動ダイプレート3の反金型側に設置された複数の半割りナット17がタイバー15のねじ溝15aに係合してタイバー15の引張方向を固定拘束する。油圧切換弁21は、射出成形機制御装置20の指令により、型開閉の油圧シリンダ22、型締油圧シリンダ2aの駆動等の油圧を切換える役割を有している。
外観面側金型4には金型を加熱、冷却するための熱媒水通路4aが通り、熱媒水通路4aは金型温度調整装置30の熱媒水の出口、入口に連結されている。熱を早く伝達して金型キャビテイ面を急速に加熱冷却するため、外観面側金型4の熱媒水通路4aはキャビテイにできるだけ近い位置に配設してある。外観面側金型4のキャビテイ面に接して、複数の金型温度センサ65が樹脂入口からの距離を変えて配置されている。各温度センサ65の検出した温度の信号は射出成形機制御装置20の金型温度制御部45に送られ成形条件によって平均温度、又は、特定の位置のセンサの検出値を選択して制御温度とする。
非外観面側金型5にも熱媒水通路5aが通り、この通路5aは温調器38に通じる配管に連結され、同金型5の温度が設定温度に保たれるように、温調器38に取付けてある温調器温度センサ66の検出値を設定値と比較して温調器38のヒータ発熱量と冷却水の注入量を制御している。
射出ユニット10は電動型である。射出動作時、外観面側金型4の樹脂入り口に当接しているノズルを備えた射出シリンダ6には、射出シリンダ6と一体のフレーム6aが設けられ、このフレーム6aに射出シリンダ6の中心線の両側に対称に、一対の射出駆動サーボモータ12、12が取付けられ、同サーボモータ12、12の出力軸にボールねじ軸8、8が直結される。射出スクリュ7は移動フレーム27に軸方向を拘束され、回転方向は自由に取付けられ、移動フレーム27の中央に固設された射出スクリュ回転駆動モータ13の出力軸に直結されて回転駆動され、射出シリンダ6内の樹脂の回転送り出しと可塑化を行う。
移動フレーム27に対称に一対のボールねじナット9、9が取付けられ、このボールねじナット9、9にボールねじ軸8、8が螺合している。一対の射出駆動サーボモータ12、12が同期回転駆動されることにより、射出スクリュ7は射出シリンダ6の中を軸方向に前後進して樹脂の射出動作を行う。ボールねじナット9の1つは射出圧検出センサ11を介して移動フレーム27に取付けられており、射出圧検出センサ11は射出圧を検出し、射出成形機制御装置20にその信号を伝達する。
射出ユニット10は、外観面側金型4と非外観面側金型5が型締されることによって形成された金型キャビテイの中に溶融樹脂を射出する。成形品が冷却固化した後は、非外観面側金型5は外観面側金型4との型締結合を解き、移動用の油圧シリンダ22の作動により外観面側金型4から離れて成形品を取出すようになっている。
射出成形機制御装置20は成形工程のプログラムに従って、油圧切換弁12を切換えて射出成形機1の各工程を受け持つそれぞれの型締油圧シリンダ2aに作動油を送り、射出ユニット10の射出駆動サーボモータ12、12に電流を送って射出スクリュ7を前後進させ、射出スクリュ7の射出スクリュ回転駆動モータ13に電流を送って樹脂の可塑化を指示する。
金型温度調整装置30について説明する。 低温水タンク23は低温水を設定低温に調整する冷媒及び熱媒配管を内蔵する熱交換器である。低温水タンク23に取付けられた低温水温度センサ63が同タンク23内の水温を検出し、その検出値の信号を受けた金型温度制御部45が冷媒量を制御して水温を設定温度に維持する。低温水タンク23に結合された送出側配管31aと低温水配管31cの間には、低温水ポンプ26が設置され、低温水配管31cと配管31dとの間には開閉弁52が設置され、配管31dと供給配管31eとの間には流量調整弁57が設置され、供給配管31eは外観面側金型4の熱媒水通路4aの入口に連結されている。戻り側配管35aは外観面側金型4の熱媒体通路出口に連結され、戻り側配管35aと低温水タンク23の接続配管35cとの間には開閉弁55が設置してある。
高温水タンク24は高温水を設定高温に調整するヒータを内蔵した熱交換器であり、高温水の温度を検出する高温水温度センサ64が取付けられている。この高温水温度センサ64が高温水タンク24内の水温を検出し、その検出値の信号を受けた金型温度制御部45が、高温水タンク24のヒータの発熱量を制御して高温水温を設定温度に維持する。高温水タンク24の送出側配管41には高温水循環用の高温水ポンプ28が設置され、同配管41は開閉弁53を介して配管31d、流量調整弁57、供給配管31eを経て外観面側金型4の熱媒水通路4aに連結されている。外観面側金型4の熱媒水通路出口に連結された戻り側配管35aから分岐した高温水の配管は、開閉弁54を介して接続配管35bに連結され、同配管35bは高温水タンク24に連結される。
開閉弁52、55を閉じ、開閉弁53、54を開き、高温水ポンプ28を回すことにより外観面側金型4の熱媒体通路4aに高温水を流して外観面側金型4を加熱することができる。このとき、低温水ポンプ26の回転を続け、連結配管31bを経て水圧調整弁61を通すことにより高い設定水圧を維持するようにすれば、連結配管36によりこの水圧が回収タンク25を経て高温水タンク24に伝えられるので、高温水の飽和蒸気圧を高め、高温水の温度を100℃以上に調整保持することができる。
また、開閉弁53、54を閉じ、高温水ポンプ28を止めて高温水の還流を停止して閉じ込め、開閉弁52、55を開くことにより外観面側金型4に低温水を還流して外観面側金型4を冷却することができる。
配管44により高温水タンク24と連結している熱回収タンク25は、外観面側金型4、非外観面側金型5の熱媒体通路容積と高温水の送出側配管41、同配管41との連結部以降の配管31d、及び高温水側に分岐するまでの戻り側配管35aと、接続配管35bの管内容積の合計より多い容積を有していて、上部に高温水タンク24に連結する高温水入口を有し、下部に連結配管36と結合する低温水入口を有し、タンク内に収容された高温水と低温水の混合を抑制する手段を備えた縦円筒形のタンクである。
金型温度調整装置30内の開閉弁52〜55の開閉は、射出成形機制御装置20に内蔵して射出成形機制御と連携する金型温度制御部45によって制御される。図2に示すように、部品のブロックが接しているものは、機械的に内蔵又は当接していることを示し、太線は熱媒水配管によって結合するものを示し、細線は電気信号線及び電流配線を示している。
金型温度制御部45は制御処理ユニット(CPU)と設定値、実測値、表示画像等を記憶する記憶手段、入出力回路及び熱水流量制御回路を内蔵している。また、作業者に画像が見える位置に、射出成形機制御装置20に画像表示手段(画像パネル)46が設置され、成形機制御のみならず、画像切換操作により、金型温度制御部45の制御の実態が表示される。画像表示手段46の傍らに熱媒水温度・熱媒水流量の設定手段47が設けられている。
外観面側金型4の温度を検出する金型温度センサ65の検出値は、金型温度制御部45において各工程にセットされた金型温度の設定値と比較され、設定値と合致したとき射出成形機制御装置20に次の成形工程への移動を指示し、又は、金型温度調整装置30に外観面側金型4に送る熱媒体の変更、又は、加熱冷却工程変更のタイミングを決めるタイマーのセットを指示する。
射出成形機1の成形工程とこれに連携する金型温度調整装置30の工程、作用について、以下に図3と図4を参照しながら説明する。 型閉から型締の工程において、金型温度調整装置30の開閉弁53、54を開、開閉弁52、55を閉、高温水タンク24の高温水を外観面側金型金型4へ供給し、キャビティ周りの金型温度を充填する熱可塑性樹脂の熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱する。(図3、図4は熱変形温度HDTで表示せず、ガラス転移温度Tgで表している)
射出充填工程は、キャビティ周りの金型温度が上述のHDT、又はTg以上の設定温度THになっていることを確認して、射出成形機1の射出動作を開始する。金型温度がキャビティ設定温度TH又は、同THより低い設定値に到達したと同時に、金型温度調整装置30の開閉弁53を閉じ、開閉弁52を開にして低温水を外観面側金型4へ供給し、同金型4の熱媒体通路4a内の高温水を押し出して、低温水に置き換える。押し出された高温水は高温水タンク24へ回収される。射出スクリュ7が設定された充填完了時のスクリュ位置LSに到達したこと、及び充填完了時のキャビティ温度TSを検知、表示して射出充填工程を完了する。なお、充填完了時のキャビティ基準温度TS1と良品温度範囲ΔTS1を予め設定しておき、検知したキャビティ温度TSとの比較により成形品の良否判定を行うこともできる。
待機工程は、射出スクリュ7が設定された充填完了時のスクリュ位置LSに到達した後、射出駆動サーボモータ12、12を止めて射出スクリュ7を停止させ、金型温度が予め設定された温度(熱変形温度HDT+α、またはガラス転移温度Tg+α)に到達するまで、射出スクリュ停止位置を保持し、この設定温度に達したら保圧工程に切換える。αは樹脂の種類によって予め設定する保圧開始温度とガラス転移温度または熱変形温度HDTとの温度差である。保圧完了時の金型温度を予め設定された温度TbとORの条件で、成形品の形状、肉厚等から経験的に求められる保圧時間に余裕時間を付加して、保圧工程限度タイマーTBを設定して保圧工程を制御する。温度Tbは、保圧完了の起点となるキャビティ設定温度であって、熱変形温度(HDT)またはガラス転移温度(Tg)付近の温度とする。同タイマーTBは、保圧工程限度タイマーとして使用するが、温度変化が遅くて保圧工程限度を超える場合に、次工程に移行するためにセットするものである。この待機工程に入るとき、開閉弁54を閉じ、開閉弁55を開いて、金型の冷却に移行する。
保圧工程は、保圧工程限度タイマーTBの設定時間が経過後、又は、設定金型キャビティ温度が設定温度Tbに達したことの確認によって、或いは両方の信号を確認して完了し、冷却工程に切り換えられる。冷却開始から工程限度タイマーT2の設定時間後、金型温度調整装置30は、開閉弁53と開閉弁55を開いて高温水を外観面側金型4へ送り、同金型4内の低温水の置換えが行われる。
冷却工程は、金型温度センサ65が検出した外観面側金型4のキャビティ温度が成形品の樹脂材料が固化して取出し可能となるキャビティ温度TLに到達するまで続き、この温度TLにおいて型開、続いて成形品取出しが行われる。成形工程側の冷却工程が終わった外観面側金型4の温度TLの時点からタイマーで設定された工程限度タイマーT3の設定時間後に、開閉弁55を閉じ、開閉弁54を開いて、外観面側金型4内の高温水による低温水の置換えを終え、高温水の循環による金型加熱に入る。
また、図4に示したように、射出成形工程において、射出充填工程と待機工程では熱媒水を供給する配管31dに設置してある流量調整弁57を操作して低温水の流量を絞って外観面側金型4の冷却を遅らせ、保圧工程になった時、流量調整弁57を十分に開いて低温水量を増加する等、冷却水量を多段制御して外観面側金型4の冷却を速めることも可能であり、成形サイクルを短縮することができる。
また、図4に示すように、射出成形工程の開始前に外観面側金型4の樹脂供給スプルーに設置されたゲートバルブ14を開き、保圧完了の設定温度Tbに到達したら、冷却工程へ移行する前にゲートバルブ14を閉じるようにして成形品にひけが生じないようにすることができる。
成形工程において、外観面側金型4は、上記のように金型温度調整装置30により成形工程に平行して、キャビティ面の温度を検出しながら加熱冷却の温度制御を行うが、非外観面側金型5は、図1に示すように、専用の温調器38を通った熱媒水を配管32,33、温調水ポンプ34の循環で温度調整され、図4に示すように、外観面側金型4のキャビティ面温度の下限温度であるキャビティ温度TL以上で樹脂の熱変形温度HDT、若しくはガラス転移温度Tg以下の一定温度であるキャビティ温度TM2を保つようにしている。同温度TM2は、温調器温度センサ66からの温度信号値を設定温度であるキャビティ温度TM2と比較し、金型温度制御部45において温調器38のヒータの発熱量及び冷却水注入量を調整することにより設定温度に保つことができる。
図3、図4に示したような金型温度制御を行って、相当な大サイズで外観面と非外観面を有する成形品を射出充填成形した実施例について説明する。
供試体樹脂材料 :ABS
ガラス転移温度 :Tg=80〜90℃
ヒートサイクル :TL=60℃ TH=120〜130℃
成形品の主要寸法 :1270mm×740mm×30mm(薄型テレビ枠)
[成形テスト結果]
(1)充填完了を金型温度で制御せずに、スクリュ位置のみで制御する従来方法では、充填時にバリ、ひけが発生する欠陥が発生した。本発明による成形では、所定のスクリュストロークで充填完了して、スクリュを停止位置に保持し、Tg+α=105℃において保圧開始とした成形テストを実施したところ、充填時のバリ、ひけは見られなかった。
(2)保圧完了時のキャビティ温度の変化とバリ発生状況の比較(表1参照)
Figure 0004361459

保圧完了時の温度Tbによってバリの発生状況が変化する。従って、キャビィティ温度をガラス転移温度の付近の温度90℃によって保圧完了することでバリの発生を防止することができた。
(3) 非外観面側の金型温度を変えて、成形品の外観面のひけとそりの比較(表2参照)
Figure 0004361459

非外観面側の温度を外観面側の下限温度より上げることで、外観面側のスキン層が先に生成されるので、非外観面側のみが収縮して外観面のひけとそりを防止できる。なお、熱媒体は熱水の例を示したが、加熱油、水蒸気等の熱媒体を用いても同様の効果が有り、熱水に限定するものではない。
本発明の実施の形態に係る射出成形機と金型と金型温度調整装置を示す模式図である。 図1の射出成形機と金型温度調整装置の温度とを制御する制御系統を示すブロック図である。 本発明の金型温度制御方法に従って制御された図1の射出成形機の各工程に対する射出ストローク、射出圧力、金型温度を示すグラフの一例である。 図3の金型温度特性曲線を示すグラフに若干の制御要素を加えた一部拡大図である。 従来例(特許文献1)における射出成形機の成形工程に対する金型温度制御方法を併記した図である。 別の従来例(特許文献2)における射出成形機の金型温度制御方法に従って制御された金型キャビティの温度を示すグラフである。
符号の説明
1 射出成形機
4 外観面側(意匠面側)金型
5 非外観面側(コア側)金型
10 射出ユニット
20 射出成形機制御装置
23 低温水タンク
24 高温水タンク
25 回収タンク
26 低温水ポンプ
28 高温水ポンプ
30 金型温度調整装置
38 温調器
45 金型温度制御部
46 画像表示手段
47 熱媒水温度・流量設定手段
57 流量調整弁
65 金型温度センサ
66 温調器温度センサ

Claims (11)

  1. 金型キャビティを、充填する熱可塑性樹脂の熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱して射出充填成形する成形方法において、射出充填工程のとき、型締め後、金型キャビティの温度が上述の温度(HDT、又はTg)以上になっていることを確認して射出動作を開始し、射出スクリュが設定された充填完了位置に到達したこと、及び金型キャビティが所定温度に到達したことを検知確認して射出充填工程を完了し、保圧工程に切換え、保圧工程は設定保圧時間、及び/又は、設定金型キャビティ温度によって完了することを特徴とする射出成形方法。
  2. 射出スクリュが設定された充填完了位置に到達した後、射出スクリュを停止させ、金型温度が予め設定された温度(熱変形温度HDT+α、またはガラス転移温度Tg+α)に到達するまで、射出スクリュ停止位置を保持することを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
  3. 金型キャビティ面の複数箇所の温度を複数の温度センサで検出し、検出値が設定値に到達したか否かを、金型キャビティ面における温度センサの位置を考慮し、個別の温度センサの検出値、或いは複数の温度センサの平均検出値を選択して判定できることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形方法。
  4. 充填中は徐冷、保圧時は急冷になるように冷却水量を多段制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の射出成形方法。
  5. 金型温度が所定の設定温度に到達したら金型の樹脂入口のゲートバルブを閉じて冷却工程へ移行するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形方法。
  6. 金型キャビティの非外観面側のキャビティ面温度を、加熱冷却する外観面側のキャビティ面温度の下限温度(TL)以上で樹脂の熱変形温度(HDT)、若しくはガラス転移温度(Tg)以下の一定温度に調整するようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の射出成形方法。
  7. 金型に設けられた熱媒体通路に所定温度の高温熱媒体と低温熱媒体とを選択的に流すことによって該金型の温度制御を行う射出成形機の金型温度調整装置において、
    金型キャビティ温度を熱可塑性樹脂の熱変形温度、若しくはガラス転移温度以上に加熱する温度制御手段と、金型キャビティ内面複数箇所の温度を検出する複数の温度センサと、温度センサで検出し、検出値が設定値に到達した場合の判定を、個別の温度センサの検出値か、或いは複数の温度センサの平均検出値かを選択する論理回路手段及び論理回路手段の選択に従って熱媒体の流れを切換制御する熱媒体切換手段とで構成され、上記請求項1に記載の方法により、射出充填成形することを特徴とする射出成形機の金型温度調整装置。
  8. 請求項7に記載する金型温度調整装置に射出スクリュのストローク位置の検出手段を備え、上記請求項2に記載する射出成形方法によって射出充填成形を行うことを特徴とする射出成形機の金型温度調整装置。
  9. 請求項7または8に記載する金型温度調整装置の金型の溶融樹脂供給通路にゲートバルブを設置し、上記請求項5に記載する射出成形方法によって射出充填成形を行うことを特徴とする射出成形機の金型温度調整装置。
  10. 請求項7〜9のいずれか一つに記載する金型温度調整装置の熱媒体配管から非外観面側の金型の熱媒体配管を分離し、該非外観面側の金型の熱媒体配管に専用の温調器を連結し、該温調器及び前記請求項7の金型温度調整装置を用いて請求項6に記載する方法により金型温度を制御して射出充填成形することを特徴とする射出成形機の金型温度調整装置。
  11. 請求項7〜10のいずれか一つに記載する金型温度調整装置の外観面側金型の熱媒体通路に流れる熱媒体量を多段制御する熱媒体量制御手段を備え、請求項4に記載の方法で冷却水量を多段制御することを特徴とする射出成形機の金型温度調整装置。
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