JP4994916B2 - 射出成形機および射出成形方法 - Google Patents
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この欠陥を防止するために、射出充填、保圧、冷却、型開閉といった一連の工程において、金型の媒体通路に、型開き後から樹脂の充填完了までの間に熱媒体を供給し、樹脂の充填完了後から型開きまでの間に冷媒体を供給する成形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。これにより、予め樹脂の熱変形温度以上の温度まで加熱した金型に溶融樹脂を充填して樹脂表面の固化を遅らせ、樹脂の充填後、金型を樹脂のガラス転移温度、又は、熱変形温度以下まで冷却してから型開きを行うことができ、上記のような欠陥の発生を抑えることができる。
上記したような射出成形機においては、ポンプは熱媒体供給用と冷媒体供給用とで少なくとも2つが必要であり、これらを常時回転させていたのでは、ポンプを駆動させるための電力消費が大きい。だからといって、熱媒体や冷媒体を供給しないときにはポンプを停止させておき、供給するときにポンプを作動させていたのでは、熱媒体や冷媒体の供給に時間が掛かることになる。
また、ポンプを常に一定回転数で作動させていたのでは、熱媒体や冷媒体を用いて金型の温度をコントロールするにあたり、金型の加熱や冷却に必要以上の熱量を持った熱媒体や冷媒体を循環させている場合もあり、これでは熱媒体や冷媒体を加熱したり冷却するための熱エネルギーが無駄になってしまう。成形対象品の大きさや厚さ等によっても、必要な熱エネルギーは異なるはずであり、この点においても、ポンプを常時回転させている現状においては、熱エネルギーの無駄な消費を抑える余地があると言える。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、消費電力を抑え、省エネルギー化を図ることのできる射出成形機および射出成形方法を提供することを目的とする。
これにより、不要なときにはポンプの回転数を下げ、消費電力を抑えることができる。
また、熱媒体供給量調整部は、一連の射出成形動作中、予め定められた温度勾配でキャビティの温度が変化するよう、ポンプにおける熱媒体の供給量を変動させることができる。付与すべき温度勾配に応じた量の熱媒体を供給することで、これによっても熱エネルギーの無駄な消費を抑え、消費電力を抑えることができる。
高精度・高品質が要求される製品の射出成形を行う場合、射出成形を、一定以下のクリーン度に管理された雰囲気中で行うことがある。この場合、少なくとも金型および金型駆動部を囲い、内部に定められた以上のクリーン度のエアが供給されるクリーンブースチャンバーを備えることがある。この場合、クリーンブースチャンバーを貫通する金型駆動部の一部または射出シリンダと、クリーンブースチャンバーとの隙間から流出するエアを、クリーンブースチャンバー内に循環させることで、高温となる金型駆動部や射出シリンダから流出する熱を有効利用することができる。
図1は射出成形機1と金型と金型温度調整装置30を示す模式図、図2は図1の射出成形機1と金型温度調整装置30の温度とを制御する制御系統を示すブロック図、図3は本発明の金型温度制御方法に従って制御された図1の射出成形機1の各工程に対する射出スクリュストローク、射出圧力、金型温度を示すグラフ(金型温度特性曲線)の一例、図4は図3の金型温度特性曲線を示すグラフに若干の制御要素を加えた一部拡大図である。
固定側金型4の樹脂入り口に当接しているノズルを備えた射出シリンダ6には、射出シリンダ6と一体のフレーム6aが設けられている。このフレーム6aに射出シリンダ6の中心線の両側に対称に、一対の射出駆動サーボモータ12、12が取付けられ、同サーボモータ12、12の出力軸にボールねじ軸8、8が直結されている。射出スクリュ7は、移動フレーム27内で、射出スクリュ回転駆動モータ13によって回転駆動され、射出シリンダ6内の樹脂の回転送り出しと可塑化を行う。
また、固定側金型4、可動側金型5のキャビティ面に接して、複数の金型温度センサ65が樹脂入口からの距離を互いに異ならせて配置されている。図2に示すように、各金型温度センサ65の検出した温度の信号は射出成形制御装置20の金型温度制御部45に送られる。金型温度制御部45では、予め設定された成形条件に基づき、複数の金型温度センサ65で検出された温度の平均温度、又は、特定の位置の金型温度センサ65の検出値を選択し、これを制御温度とする。
低温水タンク23に結合された送出側配管31aと連結配管31bの間には、低温水一次ポンプ(熱媒体供給機構)26Aが設けられ、連結配管31bと低温水配管31cの間には、低温水二次ポンプ(熱媒体供給機構)26Bが設置されている。低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26Bの下流側には、低温水配管31cと配管31dとの間に開閉弁52が設置され、配管31dと供給配管31eとの間には流量調整弁57が設置されている。供給配管31eは固定側金型4の熱媒水通路4aの入口に連結されている。戻り側配管35aは固定側金型4の熱媒水通路出口に連結され、戻り側配管35aと低温水タンク23の接続配管35cとの間には開閉弁55が設置されている。
高温水タンク24の送出側配管41には高温水循環用の高温水ポンプ(熱媒体供給機構)28が設置され、同配管41は開閉弁53を介して配管31d、流量調整弁57、供給配管31eを経て固定側金型4の熱媒水通路4aに連結されている。固定側金型4の熱媒水通路出口に連結された戻り側配管35aから分岐した高温水の配管は、開閉弁54を介して接続配管35bに連結され、同配管35bは高温水タンク24に連結される。
図1に示したように、低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28は、ポンプ回転数を制御する回転数制御装置(熱媒体供給量調整部)70A、70B、71を備えている。これら回転数制御装置70A、70B、71は、金型温度制御部45の制御により、上記したような射出成形の一連の工程中、予め定められたタイミングで低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28のポンプ回転数を変化させる。金型温度制御部45は、具体的には、図3に示すように、低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28のそれぞれを、低温水、高温水を送り出さないときには、ポンプ回転数を予め定めたアイドリング回転数R1とし、低温水、高温水を送り出すときのみ、ポンプ回転数を上昇させて予め定めた定常運転時回転数R2とするように、回転数制御装置70A、70B、71を制御する。
ここで、アイドリング回転数R1<定常運転時回転数R2であり、定常運転時回転数R2は、例えば従来一定回転数としていた低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28と同等の回転数とすることができる。また、アイドリング回転数R1は、低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28の回転数を高めて低温水や高温水を送り出すときに、低温水や高温水を吐出するのに必要な圧力が迅速に得られるような回転数に設定するのが好ましい。また、低温水や高温水を送り出すに際して低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28の回転数をアイドリング回転数R1から定常運転時回転数R2に高めるタイミングは、低温水や高温水を吐出するのに必要な圧力が迅速に得られるよう、低温水や高温水の送り出しを介するタイミングよりも一定時間前から低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26B、高温水ポンプ28の回転数を高めるようにしても良い。
金型の加熱・冷却速度と、金型内の熱媒体の熱伝達率との関係は、既知とすることができる。また、熱媒体の流量と、金型内の熱媒体の熱伝達率との関係も既知とすることができる。そこで、これらの関係に基づき、金型を加熱あるいは冷却するときに、温度変化勾配に応じた高温水、低温水の流量を予め定めておく。そして、図1に示すように流量計72、73で高温水、低温水の流量を検出し、予め定めた流量となるように金型温度制御部45で回転数制御装置70A、70B、71を制御するのである。その結果、その時点で必要な流量に応じて低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26Bや高温水ポンプ28の回転数を制御することで、温度変化勾配に応じた熱エネルギーを金型に対して付与することができ、また、低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26Bや高温水ポンプ28の回転数を必要最小限に抑えることができる。
〔検討例1〕
例えば、一連の射出成形工程のサイクルタイムが50秒、高温水により加熱を行うため、高温水ポンプ28を定常運転時回転数R2で作動させる時間t2が15秒、アイドリング回転数R1で作動させる時間t1が33秒、アイドリング回転数R1から定常運転時回転数R2にポンプ回転数を上げるのに要する時間t3を2秒とする。また、高温水ポンプ28を定常運転時回転数R2の一定回転数で作動させた場合に1サイクルの動作に必要な電力が0.046kwhであったとする。
その場合、高温水ポンプ28を定常運転時回転数R2で作動させる時間t2と立ち上げる時間t3については消費電力を抑えることができないため、t2+t3=17秒の間に必要な電力は、
0.046×17/50=0.01564kwh
となる。
アイドリング回転数R1を、定常運転時回転数R2の50%に設定したとすると、必要な電力は、計測結果により0.0075kwh
となる。
したがって、1サイクルで高温水ポンプ28を作動させるのに必要な電力の合計は、
0.01564+0.0075=0.02314kwh
となり、ポンプの消費電力を50%に抑えることができるのがわかる。さらに、アイドリング時の流量が低下することにより、高温水タンク24での熱交換率が向上することにより、ヒータのON率が減少する。これにより、ヒータの消費電力を0.82kwhから0.75kwhに低減することが可能となる。同様の操作を可動側についても適用することで同等の効果が得られる。
例えば、一連の射出成形工程のサイクルタイムが50秒、低温水により冷却を行うために低温水一次ポンプ26A、低温水二次ポンプ26Bを、それぞれ、定常運転時回転数R2で作動させる時間t2が17秒、アイドリング回転数R1で作動させる時間t1が31秒、アイドリング回転数R1から定常運転時回転数R2にポンプ回転数を上げるのに要する時間t3を2秒とする。また、低温水一次ポンプ26Aを定常運転時回転数R2の一定回転数で作動させた場合に1サイクルの動作に必要な電力が0.079kwh、低温水二次ポンプ26Bを定常運転時回転数R2の一定回転数で作動させた場合に1サイクルの動作に必要な電力が0.043kwhであったとする。低温水一次ポンプ26Aのアイドリング回転数R1が従来の70%、低温水二次ポンプ26Bのアイドリング回転数R1が従来の0%で良いとする。また、冷却速度が2℃/secのときは、冷却能力として従来の運転での流量に対して70%の流量で良いとわかっているとすれば、それにともない低温水一次ポンプ26Aの定常運転時回転数R2は、70%となる。この場合、低温水一次ポンプ26Aの電力は、アイドル時:0.018kwh、定常時:0.014kwhであり、合計すると0.032kwhとなる。低温水二次ポンプ26Bの電力は、アイドル時:0kwh、定常時:0.015kwhとなる。従来は(0.079+0.043=0.122)kwhに対して、0.018+0.014+0.0+0.015=0.047kwhとなり、従来運転から62%低減となる。同様の操作を可動側についても適用することで同等の効果が得られる。
このクリーンブースチャンバー80内には、ファンフィルターユニット等の、フィルタ機能を有してクリーンなエアを吹き出すクリーンエア供給ユニット81が複数備えられている。クリーンブースチャンバー80は、成形されて金型から取り出した成形品をクリーンブースチャンバー80外に搬出するための搬出口80aと、固定ダイプレート2が貫通する貫通口80bとで開口している。このうち、貫通口80bからは、高温の固定ダイプレート2によって加熱されたエアが流出する。そこで、貫通口80bから流出するエアを、クリーンエア供給ユニット81に循環させるよう、循環ダクト82が設けられている。また、搬出口80aについても、搬出口80aから流出するエアをクリーンエア供給ユニット81に循環させる循環ダクト83を設けることもできる。
各クリーンエア供給ユニット81に送り込まれるエアの量は、ダンパー84によって調整可能とされている。各ダンパー84は、射出成形制御装置20によりその開度が制御される。ここで、クリーンブースチャンバー80の内部と外部には気圧計85、86が設けられ、射出成形制御装置20では、クリーンブースチャンバー80内が陽圧(クリーンブースチャンバー80の外部よりも気圧が相対的に高い状態)に保たれるよう、ダンパー84の開度が制御される。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
Claims (4)
- 金型を開閉する金型駆動部と、
前記金型のキャビティに成形材料を射出する射出シリンダと、
前記キャビティの温度を調整するため前記金型に形成された熱媒体通路に熱媒体を供給する熱媒体供給機構であるポンプと、
前記ポンプにおける前記熱媒体の供給量を調整・制御する熱媒体供給量調整部と、
を備え、
前記熱媒体供給量調整部は、前記ポンプの回転数を、前記ポンプで前記熱媒体を供給するときの第一の回転数と、前記ポンプで前記熱媒体を供給しないときの前記第一の回転数よりも低い第二の回転数とで切り替えて制御することを特徴とする射出成形機。 - 前記熱媒体供給量調整部は、一連の射出成形動作中、予め定められた温度勾配で前記キャビティの温度が変化するよう、前記ポンプにおける前記熱媒体の供給量を変動させることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
- 少なくとも前記金型および前記金型駆動部を囲い、内部に定められた以上のクリーン度のエアが供給されるクリーンブースチャンバーが備えられ、
前記クリーンブースチャンバーを貫通する前記金型駆動部の一部または前記射出シリンダと、前記クリーンブースチャンバーとの隙間から流出するエアを、前記クリーンブースチャンバー内に循環させることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形機。 - 金型を開閉する金型駆動部と、
前記金型のキャビティに成形材料を射出する射出シリンダと、
前記キャビティの温度を調整するため前記金型に形成された熱媒体通路に熱媒体を供給する熱媒体供給機構であるポンプと、
前記ポンプにおける前記熱媒体の供給量を調整・制御する熱媒体供給量調整部と、を備えた射出成形機における射出成形方法であって、
前記熱媒体供給量調整部によって、前記ポンプの回転数を、前記ポンプで前記熱媒体を供給するときの第一の回転数と、前記ポンプで前記熱媒体を供給しないときの前記第一の回転数よりも低い第二の回転数とを切り替えて制御して、成形品を製造することを特徴とする射出成形方法。
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