JP5029902B2 - 計量中断サックバック - Google Patents

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本発明は、射出成形機によりプラスチック部品を成形する工程において、計量工程の途中でサックバック動作を行うことにより、計量工程と型開工程を同時に行う複合動作を可能とする動作方法に関するものである。
射出成形機によりプラスチック部品を成形する一連の工程は、金型にホットランナーが装備されていない(コールドランナーでありバルブゲートの装着不可)一般的な金型を用いる場合、図4の上図に示すようになる。まず金型を閉じて型締め力を負荷する型閉工程から始まり、スクリューが前進し溶融樹脂を金型キャビティ内に射出充填して樹脂圧力を保持する射出・保圧工程、樹脂を冷却固化させるための冷却工程、冷却工程と同時に始まりスクリューが回転して固体状の樹脂ペレットをノズル側へ移送しながら溶融しスクリューの前部に貯留する計量工程、金型を開く型開工程、そして成形品を金型から取り外し機外に搬出する押出・取出工程から構成されており、これらで1回の成形サイクルをなす。
従来の油圧式の射出成形機においては、機械を駆動する油圧源が一つであったため、型開工程と計量工程を同時に行うことは困難であった。そのため、樹脂を金型から取り外せる(金型を開くことができる)状態まで冷却固化する冷却工程が終わっても、スクリューが回転し樹脂を溶融、貯留する計量工程が終わっていない場合は、計量工程の完了を待って型開工程に移行していた。
近年多く生産されるようになったスクリューの回転を電気モータで行う方式の射出成形機においては、スクリュー回転用と型開閉用の駆動源が別となるため、計量工程と型開工程の複合(同時)動作が容易となった。それにより、図4の下図が示すよう、シャットオフバルブの開閉動作をともなって、計量工程が終わっていなくても冷却工程が終わるとすぐに型開工程を開始する複合動作が行われ、成形サイクルタイムの短縮が図られている。
この複合動作のための制御方法は、特許文献1などに開示されている。
また近年、金型から取り外された後は製品となるキャビティ部と切り離され、廃材となり捨てられるコールドランナーをなくすため、金型内のランナー周辺にヒーターを埋め込んでホットランナーとし、ランナーからキャビティ内に溶融樹脂を注入する部分であるゲートを開閉可能なバルブゲートとする方式の金型が増えている。
さらに、プラスチック部品の大型化に対応するため、キャビティ内での溶融樹脂の流動長が短くなるように、ゲートを多点方式とする金型が頻繁に用いられるようになっている。
このようなホットランナーとバルブゲートを装備した金型を用いた成形工程においては、図4の下図に示されているシャットオフバルブの開閉のタイミングにて、同様にバルブゲートを開閉することにより、成形サイクルタイムの短縮が可能な複合動作も行うことができる。(シャットオフバルブの開閉は、行っても行わなくてもよい。)
特公平06−22841号公報
しかしながら、金型内にバルブゲートを装備するためには、開閉可能な構造のゲート、それを開閉動作するためのシリンダー、さらに開閉動作の確認を行うリミットスイッチを装着する必要があり、金型内部の構造が非常に複雑となる。また、金型を交換する際、金型と成形機間での配線、配管の接続および取り外しが増えるため、金型製作そしてメインテナンスが非常に困難なものとなる。
それにより、ホットランナーは装備しているが、バルブゲートは未装着な金型が多々使用されている。
ホットランナーは装備しているがバルブゲートを未装着な金型を用いた場合の通常動作(複合動作を用いない)における成形工程は、図1の上図に示すようになる。計量工程完了後にサックバック動作(スクリューの回転を停止するとともにシャットオフバルブを開き、スクリューを一定距離後退させ、シャットオフバルブを閉じる)を行い、その後金型を開いている。
型を開く前にサックバック動作を行う理由は、射出・保圧工程が完了し射出圧力を0に落としてシャットオフバルブを閉じても、ホットランナー内の樹脂圧力が抜け切きらない、あるいは温度上昇により溶融樹脂が膨張することがあり、金型が開いた瞬間にゲートからホットランナー内の樹脂が溢れ出て、「樹脂ダレ」や「糸引き」が発生する可能性があるからである。(図5を参照)
「樹脂ダレ」や「糸引き」が発生した場合、金型が開いている間にそれらが固化し、金型を閉じる際に挟んで金型を損傷することになる。それを防ぐためには、成形運転を止めてオペレータが「樹脂ダレ」や「糸引き」を取り除く必要があり、生産性を低下させる。
よって、「樹脂ダレ」や「糸引き」の発生を防ぐため、型を開く前に、シャットオフバルブが開いた状態でサックバックし、スクリュー前部及びホットランナー内部の樹脂圧力を下げておく必要がある。(大気圧以下に下げることが好ましい)
このような理由により、計量工程を行いながら金型を開ける複合動作を使用することができないので、図1の上図のような、計量工程の完了後にサックバック動作を行い、その後型開工程を行わざるを得なく、サイクルタイムの短縮が図れなかった。
本発明では、ホットランナーは装備しているがバルブゲートは未装着である金型を用いて成形する場合においても、複合動作が可能な射出成形機の動作方法の実現を意図している。
以上の課題を解決するために、本発明では、
ホットランナーは装備しているがバルブゲートは未装着な金型を用いた成形動作方法であって、射出・保圧工程が完了すると冷却工程と計量工程を同時に開始し、計量工程より先に冷却工程が完了した場合、スクリューの回転を停止するとともにシャットオフバルブを開き、スクリューを一定距離後退させ、シャットオフバルブを閉じ、その後残りの計量工程と型開工程を同時に開始する動作方法とした。
本発明では、下記のような優れた効果を発揮する。
(1)ホットランナーは装備しているがバルブゲートは未装着である金型を用いる場合であっても、計量工程と型開工程を同時に行う複合動作が可能となり、サイクルタイムの短縮が図れる。
(2)金型内部の構造等を複雑にするバルブゲートの装着を必要としなくなる。
以下、図面に基づいて、本発明に係る、射出成形機での計量中断サックバック及び複合動作を使用した成形動作方法、ならびにその装置について説明する。図1〜図3はいずれも本発明の実施例に係り、図1は通常動作と本発明による複合動作(計量中断サックバック使用)における成形工程を表す図、図2は金型装置、射出装置及び油圧回路を表す図、図3は金型を開いた時の樹脂等の状態を表す図である。
まず図2において、左上には金型装置が示されており、固定プラテン1には固定金型4が、また可動プラテン2には可動金型5が取付けられている。可動プラテン2は、図示せぬ型開閉装置により動作し、型開閉動作や型締め力の負荷が行われる。金型が閉じた状態で、固定金型4と可動金型5の間には空間であるキャビティ8が形成され、そこに溶融樹脂が射出充填され固化することによりプラスチック部品を成形できる。固定金型4には溶融樹脂の通路であるホットランナー6が設けられ、周囲にはヒーター9が埋め込まれて溶融樹脂が固化しないように温度制御されている。ホットランナー6からキャビティ7に通じる先端部分はゲート7であり、多くの金型ではホットランナー6内より流路径が細くなっている。
金型装置の右側に示されている射出装置は、主にノズル12、バレル11、スクリュー15、射出シリンダー16、軸受けボックス19及び計量用電気モータ21から構成されており、図示せぬノズルタッチ機構によって、ノズル12の先端部が固定金型4の樹脂流入口に押し付けられている。ノズル12には、シャットオフバルブ13が設けられており、図示せぬ駆動装置により90°の回転動作を行って、溶融樹脂の通路を開閉することができる。スクリュー15は、軸受けボックス19に回転自在に支持されるとともに計量用電気モータ21の回転軸と接続されて、バレル11の内部で回転運動が可能である。バレル11の周囲にはヒーターが巻かれており、樹脂が溶融する温度に制御されている。
そして、スクリュー15が回転すると、図示せぬホッパー口から入ってきた固体状の樹脂ペレットは、前方に移送されながらバレル11の内部で溶融し、スクリュー15の前部(ノズル12側)に貯留される。(この時スクリュー15は後退する。)
また、射出シリンダー16のロッド側室に圧油が導入されると、軸受けボックス19、計量用電気モータ21及びスクリュー15が金型側に前進し、貯留された溶融樹脂を金型内に射出充填することが可能になっている。
軸受けボックス19には、位置センサー23が取付けられ、スクリュー15のバレル11内での位置を、精度良く測定できるようになっている。
油圧供給源31は、電気モータにより回転する油圧ポンプや流量調整弁、圧力調整弁などから構成されており、所望の流量及び圧力の作動油を供給することができる。油圧供給源31から、射出前後進切替弁32を介して、射出シリンダー16のロッド室18及びヘッド室17へと回路接続され、射出前後進切替弁32を切替えることによりスクリュー15の前進及び後退が可能になっている。また、射出前後進切替弁32とロッド室18の間にはサーボ弁33が接続されており、ロッド室18に送り込む作動油の流量を微調整することにより、スクリュー15の前進速度さらには溶融樹脂の射出充填速度を微妙に制御可能となっている。サーボバルブ33はオイルタンクB35とも回路接続されているので、計量工程においては、ロッド室18からオイルタンクB35に流出する作動油の流量を調整し、スクリュー15が後退する際の抵抗(いわゆる背圧)を制御できるようになっている。さらに、射出前後進切替弁32はオイルタンクA34とも連絡しており、ヘッド室17またはロッド室18から出てくる作動油を、オイルタンクA34に戻すことができる。
ヒーター9、射出前後進切替弁32、計量用電気モータ21、位置センサー23などの機器は、図示せぬ射出成形機用のコントローラと電気的に接続されており、操作盤からオペレータにより入力された運転条件に基づいて、コントローラが射出成形機全体の動作制御を行なう。
操作盤には、計量中断サックバックの「使用」と「不用」が選択できるようになっている。計量中断サックバックの使用が可能な金型であり、複合動作を行いたい場合は、「使用」を選択し、そうでない場合は「不用」を選択する。さらに、「計量中断サックバックストローク」、「計量中断サックバック速度」、「計量中断サックバック圧力」の値を設定できるようになっている。計量中断サックバックの「使用」が選択されている場合は、それらの値にもとづいて動作制御される。
ここで、「計量中断サックバックストローク」の値を適切に設定することが重要で、ノズル12及びホットランナー6内部の溶融樹脂の圧力が、大気圧より若干低い圧力(負圧)まで下がるような値に設定する。
次に、図1の下の図を用い、ホットランナーは装備しているがバルブゲートが未装着な金型での成形において、複合動作(計量中断サックバック使用)を行う成形工程について説明する。
成形工程は、まず型閉工程から始まり、可動プラテン2が動作して金型が閉じられた後、型締め力が負荷される。この時、シャットオフバルブ13は閉じられている。
次の射出・保圧工程では、シャットオフバルブ13が開かれた後、スクリュー15が前進しキャビティ8内に溶融樹脂が射出充填される。
この工程では、油圧供給源31から作動油の吐出が開始されるともに、射出前後進切替弁32のaソレノイドが励磁され、作動油はサーボバルブ33の方へ流れる。サーボバルブ33は、設定された射出速度になるように、位置センサー23からの測定速度をフィードバックしながら弁開度を調整され、速度制御が行なわれる。スクリュー15が前進し、キャビティ8内に溶融樹脂がほぼ充填されると、ロッド室18の圧力が上昇するので、図示せぬ圧力センサーでそれを検知し、速度制御から圧力制御に切替える。圧力制御に切替えられると、設定された圧力に保持するようサーボバルブ33の開度は調整される。そして、設定された圧力保持時間が経過すると、圧力は0まで落とされた後、シャットオフバルブ13が閉じられるとともに射出前後進切替弁32は消磁され、射出・保圧工程は終了する。この圧力を保持する時間は、キャビティ8内におけるゲート7周辺部の樹脂が固化し、スクリュー15前部の樹脂圧力がキャビティ8内に伝播しなくなるまでの時間で決められる。
射出・保圧工程が終了すると、冷却工程と計量工程が同時に始まる。
冷却工程では、キャビティ8内の樹脂が型を開けることが可能な状態に固化するまで、金型は閉じられ続ける。
計量工程では、計量用電気モータ21によりスクリュー15が回転し、樹脂を前方に移送しながら溶融させる。移送されてスクリュー15前部に貯留された溶融樹脂の圧力により、スクリュー15は後退する。この時、ロッド室18からオイルタンクB35に流出する作動油の流量を、サーボバルブ33で絞ることにより背圧を立てて、スクリュー15の後退速度を遅くし、樹脂の溶融状態の向上や混練性を高める。
設定された冷却時間が経過し冷却工程が完了すると、計量中断サックバックのために、スクリュー15の回転を一旦停止して、シャットオフバルブ13を開き、スクリュー15の位置を位置センサー23により測定、記憶する。次に、サーボバルブ33は、ロッド室18とオイルタンクB35が連通する方向に最大限開かれるとともに、射出前後進切替弁32のbソレノイドを励磁し、油圧供給源31からヘッド室17に作動油を送り込む。この時、油圧供給源31から吐出される作動油の流量は、設定された「計量中断サックバック速度」に、また圧力の上限は設定された「計量中断サックバック圧力」の値に対応する。そして、後退するスクリュー15の位置を位置センサー23の測定値より監視し、設定された「計量中断サックバックストローク」の距離後退すると、射出前後進切替弁32のbソレノイドを消磁するとともにシャットオフバルブ13を閉じて、計量中断サックバックを終了する。
その後、スクリュー15の回転を始めて計量工程を再開するとともに、可動プラテン2を開き型開工程を開始し、複合動作となる。
設定された距離金型が開くと、型開工程は完了する。次の押出・取出工程では、キャビティ8内で固化したプラスチック成形部品を可動金型5から押し出し、取出装置などを使って機外に運び出す。
また、スクリュー15が設定された位置まで後退すると、スクリュー15の回転は止められ計量工程は終了する。
金型を開いた時の樹脂等の状態を図3に示す。キャビティ8内で固化した樹脂は、可動金型5に貼り付いて固定金型4から離れる。またこの時、ホットランナー6内の溶融樹脂は先に行われた計量中断サックバック動作により大気圧より低く(負圧)になっているため、ゲート7部から大気圧に押され内側に引っ込み、「樹脂ダレ」や「糸引き」を起こすことはない。よって、その後可動金型5からプラスチック成形部品が取り外されると、次の型閉じ動作を支障無く行うことができる。
押出・取出工程と計量工程の両方が終了すると、次の成形サイクルのスタートとなり、型閉工程が連続的に開始される。
このように、計量中断サックバックを行うことにより、型開工程と計量工程の同時進行(計量工程より型開工程が先に終了した場合は、押出・取出工程と計量工程の同時進行)が可能で、ホットランナーは装備しているがバルブゲートを未装着な金型を使用した成形であっても、成形サイクルタイムを短縮することができ、生産性の向上が図れる。
本実施例では、スクリュー回転とスクリュー前後進の駆動源を別の電気モータとしているため、複合動作を容易に実現できる。
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
例えば、本実施例においては、スクリューの前後進は油圧シリンダーにより行う構成になっているが、サーボモータとボールねじを用いたいわゆる電動方式の射出前後進装置であってもよい。
本発明の実施例に係る成形工程を説明する図である。 本発明の実施例に係る金型装置、射出装置、油圧回路を説明する図である。 本発明の実施例に係り、金型を開いた時の状態を表す図である。 従来のホットランナーの無い金型での成形工程を表す図である。 従来のホットランナーは装備しているがバルブゲートの無い金型による成形において、サックバック動作を行わずに金型を開いた時の状態を表す図である。
符号の説明
1 固定プラテン
2 可動プラテン
4 固定金型
5 可動金型
6 ホットランナー
7 ゲート
8 キャビティ
9 ヒーター
11 バレル
12 ノズル
13 シャットオフバルブ
15 スクリュー
16 射出シリンダー
17 ヘッド側油室
18 ロッド側油室
19 軸受けボックス
21 計量用電気モータ
23 位置センサー
31 油圧供給源
32 射出前後進切替弁
33 サーボ弁
34 オイルタンクA
35 オイルタンクB

Claims (1)

  1. ホットランナーは装備しているがバルブゲートは未装着な金型を用いた成形における射出成形機の動作方法であって、
    射出・保圧工程が完了すると冷却工程と計量工程を同時に開始し、計量工程より先に冷却工程が完了した場合、スクリューの回転を停止するとともにシャットオフバルブを開き、前記スクリューを一定距離後退させ、前記シャットオフバルブを閉じ、その後残りの計量工程と型開工程を同時に開始することを特徴とする射出成形機の動作方法。
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